説明

気泡発生装置

【課題】気泡の発生量および気泡径のそれぞれを調節することができる気泡発生装置を提供する。
【解決手段】本発明の気泡発生装置によれば、液体供給装置2によるチャンバ1への液体の流入量Qcおよび気体供給装置4によるチャンバ1への気体の流入量Qsが調節される。これにより、チャンバ1への気体の流入圧力の降下量ΔPに対する、チャンバ1への液体の流入圧力Pcの比率x=(Pc/ΔP)が調節される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に気泡を発生するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気泡発生装置に関する研究結果が報告されている(非特許文献1および2参照)。
【0003】
たとえば、有底円筒状の容器の内部で気泡の旋回流を発生させた上で容器の開口から流出させる装置が提案されている(特許文献1および2参照)。気泡の旋回流を発生させるため、容器の側壁に設けられている液体導入孔から液体が供給されるとともに、容器の底板に設けられた気体導入孔から気体が供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表特許公報WO00/69550
【特許文献2】特許第3776909号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】張替 亮ほか「溝付ノズルを用いた旋回式マイクロバブル発生装置に関する研究」、日本機械学会、関東支部ブロック合同講演会2007 講演論文集(2007)、第199頁〜第200頁
【非特許文献2】P.C.Perera et.al., “Effect of Scale on Performance and Stability of Vortex Amplifier”, The Society of Instrument and Control Engineers, Japan, FLUCOME TOKYO 85 (1985)、第255頁〜第260頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体の浄化または製品の洗浄など、気泡または気泡混じりの液体の利用目的に応じて気泡の発生形態はさまざまに調節されることが好ましいが、その調節手法については改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、気泡の発生量および気泡径のそれぞれを調節することができる気泡発生装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、チャンバと、液体供給装置と、気体供給装置とを備え、前記液体供給装置により前記チャンバに液体が流入されるとともに、前記気体供給装置により前記チャンバに気体が流入されることにより、前記チャンバにおいて発生した気泡混じりの液体が前記チャンバから流出されるように構成されている気泡発生装置に関する。
【0009】
前記課題を解決するための本発明の気泡発生装置は、前記液体供給装置による前記チャンバへの液体の流入量Qcおよび前記気体供給装置による前記チャンバへの気体の流入量Qsの調節を通じて、前記チャンバへの気体の流入圧力の降下量ΔPに対する、前記チャンバへの液体の流入圧力Pcの比率x=(Pc/ΔP)が調節されていることを特徴とする。
【0010】
本発明は、チャンバへの気体の流入圧力の降下量ΔPに対する、チャンバへの液体の流入圧力Pcの比率である圧力比率x=(Pc/ΔP)に応じて、気泡発生量(単位時間当たりの気泡発生個数)および気泡径のそれぞれが変化するという発明者の知見に基づいてなされた。具体的には、圧力比率xが低いほど気泡径が大きくなるとともに気泡発生量が少なくなるのに対して、圧力比率xが高いほど気泡径が小さくなるとともに気泡発生量が多くなる傾向がある。
【0011】
このため、チャンバへの液体流入量Qcおよび気体流入量Qsの調節を通じて当該比率xが調節されることにより、気泡発生量および気泡径のそれぞれが所望の数値範囲に調節されうる。
【0012】
たとえば、気泡発生量y1が第1関数f1(x)により定義され、気泡径y2が第2関数f2(x)により定義されている場合について考察する。この場合、気泡発生量y1を範囲[y1L,y1H]に収めるとともに、気泡径y2を範囲[y2L,y2H]に収めるためには、圧力比率xは範囲[f1-1(y1L),f1-1(y1H)]および[f2-1(y2H),f2-1(y2L)]の重なり範囲に収まるように調節されればよい。「f1-1」は第1関数f1の逆関数を意味し、「f2-1」は第2関数f2の逆関数を意味する。
【0013】
なお、気体流入圧力の降下量ΔPは、チャンバに対する気体の流入圧力と、気泡のチャンバからの流出圧力との差分を意味する。この降下量ΔPは、チャンバの気泡流出側が大気に開放されている場合、チャンバに対する気体流入圧力Psに一致する。物理量の「調節」とは、当該物理量がフィードフォワード制御されることのほか、当該物理量がその計測値に基づいてフィードバック制御されることをも意味する。
【0014】
前記チャンバは、環状の第1空間と、前記環の内周側において、前記環の接線方向成分を有する方向にのびているスリットを介して前記第1空間に連続する第2空間と、前記液体供給装置により供給される液体を、前記第1空間に対して前記環の接線方向成分を有する方向に流入させる液体導入部と、前記気体供給装置により供給される気体を、前記第1空間に対して一または複数箇所から流入させる気体導入部と、前記第2空間を前記チャンバの外部に連通させる気泡流出部とを備えていてもよい。
【0015】
当該構成の気泡発生装置によれば、環状の第1空間に対して当該環の接線方向成分を有する方向に液体を流入させることにより、当該液体を第1空間に沿って環状に流すことができる。さらに、第1空間を環状に流れる液体を、スリットを通じて第2空間に流入させることにより、当該液体を第2空間において旋回させた上で、チャンバの外部に流出させることができる。
【0016】
この結果、第1空間において、環状に流れている液体のせん断力によって気体を微細化させることにより、気泡を発生させることができる。また、スリットにおいて第1空間および第2空間の液体の圧力降下または流速低下によって生じるせん断力によって、気泡の微細化が図られる。さらに、第2空間において、旋回している液体のせん断力によって気泡のさらなる微細化が図られる。
【0017】
このように、気泡の微細化を図りながら、前記のようにチャンバへの液体流入量Qcおよび気体流入量Qsの調節を通じて当該比率xが調節されることにより、気泡発生量および気泡径のそれぞれが所望の数値範囲に調節されうる。
【0018】
前記第2空間は、前記環の接線方向に垂直な方向について、前記気泡流出部に向かって一部が隆起している板状に形成されていてもよい。
【0019】
当該構成の気泡発生装置によれば、一部が盛り上がった板状に形成された第2空間において、スリットを介して当該板の縁から流入してきた気泡混じりの液体を旋回させながら、当該盛り上がり部分の頂部に向かって案内することができる。これにより、前記のように旋回流によって微細化された気泡を気泡流出部からチャンバの外部に円滑に流出させることができる。
【0020】
前記第1空間はドーナツ型のトーラス状に形成され、前記スリットは前記トーラスの内周側の経線に沿って当該トーラスの小円径よりも幅狭に形成され、前記第2空間は前記トーラスの回転軸方向から見て円形状に形成され、前記気泡流出部は、前記トーラスの回転軸方向について前記第2空間から前記チャンバの外部に向かって設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態としての気泡発生装置の構成説明図。
【図2】チャンバの斜視図。
【図3】チャンバの構成部品の説明図。
【図4】図2のIV−IV線における断面図。
【図5】本発明の気泡発生装置の機能説明図。
【図6】気泡発生装置による気泡の発生状況に関する説明図。
【図7】気泡径および圧力比率の関係説明図。
【図8】気泡発生個数および圧力比率の関係説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本発明の一実施形態としての気泡発生装置)
本発明の一実施形態としての気泡発生装置は、図1に示されているように、チャンバ1と、水等の液体をチャンバ1に供給する液体供給装置2と、空気等の気体をチャンバ1に供給する気体供給装置4とを備えている。
【0023】
チャンバ1は、図2に示されているように略円柱状であり、図3(a)に示されている第1部品11、第2部品12および第3部品13によって構成されている。
【0024】
図3(a)に示されている略円盤状の第1部品11の一方の側面は平坦である一方、第2部品12に対向する他方の側面には環状縁部110の径方向内側に、環状縁部110よりも軸方向に窪んでいる円形状の凹部112が形成されている。環状縁部110には、第1部品11を軸方向に貫通するとともに、周方向に等間隔に配置された複数(たとえば4つ)の円形状の貫通孔111が形成されている。
【0025】
凹部112の中心部には、第1部品11を軸方向に貫通する気体導入孔113が形成されている。第1部品11には、一方の側面から突出するように気体導入孔113に連続する気体導管114が取り付けられている。凹部112は第2部品12の側面とともに気体導入空間S0を形成する(図4参照)。
【0026】
図3(a)および図3(b)に示されている略円盤状の第2部品12の第1部品11に対向する一方の側面は平坦である一方、第3部品13に対向する他方の側面には、環状縁部120の径方向内側に断面略半円形状の環状溝部122が形成されている。環状溝部122は、第3部品13に略鏡映対称に形成されている環状溝部132(後述)と合わさって第1空間S1を形成する(図4参照)。縁部120には、第2部品12を軸方向に貫通するとともに、周方向に等間隔に配置された複数(たとえば4つ)の円形状の貫通孔121が形成されている。
【0027】
第2部品12の環状縁部120の一部がその接線方向に断面略半円形状に切り欠かれて切欠部が形成されている。この切欠部は、第3部品13にほぼ鏡映対称に形成されている切欠部(後述)と合わさって液体流入孔123を形成する。第2部品12には、環状溝部122の接線方向外側に向かうように、液体流入孔123に連続する液体導管124が取り付けられている。液体流入孔123に、第1空間S1に対する液体の流入方向または流入速度を調節するためのガイドベーンが設けられていてもよい。
【0028】
環状溝部122には、第2部品12を軸方向に貫通するとともに、周方向に等間隔に配置された複数(たとえば12個)の円形状の気体流入孔125が形成されている。気体流入孔125の形状として、三角形状、矩形または楕円形状など、任意の形状が採用されてもよい。また、軸方向から見て気体流出孔125が、Y字形状または十字形状などの部材によって分割されていてもよい。
【0029】
第2部品12には、環状溝部122の径方向内側に略円形状の案内部126が形成されている。案内部126は径方向外側においては平坦であって環状縁部120よりも軸方向に低くなっている一方、その中心部には当該平坦部よりも軸方向に高くなっている隆起部128が形成されている。案内部126は、後述する第3部品13に形成されている案内部136と合わさって第2空間S2を形成する(図4参照)。
【0030】
図3(a)に示されている略円盤状の第3部品13の一方の側面は平坦である一方、第2部品12に対向する他方の側面には、環状縁部130の径方向内側に断面略半円形状の環状溝部132が形成されている。縁部130には、第3部品13を軸方向に貫通するとともに、周方向に等間隔に配置された複数(たとえば4つ)の円形状の貫通孔131が形成されている。
【0031】
第3部品13の環状縁部130の一部がその接線方向に断面略半円形状に切り欠かれて切欠部が形成されている。この切欠部は、前記のように第2部品12にほぼ鏡映対称に形成されている切欠部と合わさって液体流入孔123を形成する。
【0032】
第3部品13には、環状溝部132の径方向内側に略円形状の案内部136が形成されている。案内部136は径方向外側においては平坦であって環状縁部130よりも軸方向に低くなっている一方、その中心部には気泡流出孔133が形成されている。案内部136は、前記のように第2部品12に形成されている案内部126と合わさって第2空間S2を形成する(図4参照)。第3部品13には、一方の側面から突出するように気泡流出孔133に連続する気泡導管134が取り付けられている。
【0033】
第1部品11、第2部品12および第3部品13が同軸に重ね合わせられた上で、それぞれの貫通孔111、121および131を通るボルトBと、ナットNとが締結されることにより、図2に示されているチャンバ1が形成される。このように形成されたチャンバ1は、図4に示されているように、気体導入空間S0と、第1空間S1と、第2空間S2とを有する。
【0034】
気体導入空間S0は、略円盤状または円柱状の空間であり、気体導入孔113を通じて気体導管114に連通している。第1空間S1は、ドーナツ型のトーラス状(円を軸回りに回転させることによって得られる形状)であり、液体流入孔123(図3(a)(b)参照)を通じて液体導管124に連通しているとともに、気体流入孔125を通じて気体導入空間S0に連通している。第2空間S2は、トーラスの内周側において、トーラスの経線方向にのびているスリットを介して第1空間S0に連通しているとともに、気泡流出孔133を通じて気泡導出管134に連通している。第2空間S2は、トーラスの回転軸方向について、気泡流出孔133に向かって一部が隆起している板状に形成されている。
【0035】
4つの異なるサイズのチャンバ1が試作された。ここで、第1空間S1の断面円径(トーラスの小円径)を「d1」、第1空間S1および第2空間S2を連続させるスリットの幅、ひいては第2空間S2の高さを「d2」、トーラスの大円径を「D」と表わす。また、液体流入孔123または液体導管124の径を「df1」、気体流入孔125の径を「df2」、気泡導出孔133の径を「df3」と表わす(図3(b)、図4参照)。
【0036】
第1のチャンバ1ではd1=8[mm]、d2=4[mm]、D=62[mm]、df1=8[mm]、df2=8[mm]かつdf3=10[mm]である。第2のチャンバ1ではd1=30[mm]、d2=11.5[mm]、D=187[mm]、df1=24[mm]、df2=24[mm]かつdf3=31[mm]である。第3のチャンバ1ではd1=60[mm]、d2=24[mm]、D=360[mm]、df1=48[mm]、df2=48[mm]かつdf3=60[mm]である。第4のチャンバ1ではd1=120[mm]、d2=96[mm]、D=720[mm]、df1=96[mm]、df2=96[mm]かつdf3=120[mm]である。
【0037】
(本発明の気泡発生装置の機能)
液体供給装置2によって、トーラス状または環状の第1空間S1に対して当該トーラスの接線方向に液体を流入させる。これにより、液体が第1空間S1に沿って環状に流れる。さらに、第1空間S1を環状に流れる液体を、スリットを通じて第2空間S2に流入させることにより、当該液体を第2空間S2においてトーラスの回転軸回りに旋回させた上で、気泡流出孔133を通じてチャンバ1の外部に流出させることができる。この旋回流は、隆起部128により気体流出孔133に向かってトーラスの回転軸方向に案内される。
【0038】
その一方、気体供給装置4によって、気体導入孔113を通じて気体導入空間S0に対して空気を流入させる。これにより、気体が気体導入空間S0から気体導入孔125を通じて第1空間S1に流入する。
【0039】
この結果、第1空間S1において、環状に流れている液体のせん断力によって気体を微細化させることにより、気泡を発生させることができる。また、スリットにおいて第1空間S1および第2空間S2の液体の圧力降下または流速低下によって生じるせん断力によって、気泡の微細化が図られる。さらに、第2空間S2において、旋回している液体のせん断力によって気泡のさらなる微細化が図られる。
【0040】
液体供給装置2によるチャンバ1への液体の流入量Qcおよび気体供給装置4によるチャンバ1への気体の流入量Qsが調節されることにより、チャンバ1への気体の流入圧力の降下量ΔPに対する、チャンバ1への液体の流入圧力Pcの圧力比率x=(Pc/ΔP)が調節される。
【0041】
図5(a)には、前記4つのチャンバのうち、最も小型の第1のチャンバを用いた実験により得られた、気体としての空気の流入量Qsと、液体としての水の流入量Qcと、圧力比率xとの関係が示されている。液体流入圧力Pcの増加、すなわち接線流の増加に伴い、チャンバ1の内部における旋回流または渦流の勢いは強くなり、圧力降下ΔPの増大で気体流入量または軸流量Qsが減少する。ターンダウン状態になると気体流入量Qsは0となり、接線流のみが存在する。
【0042】
気泡発生装置はターンダウン状態に近い状態で用いられる。これは、旋回流または渦流のせん断力によって、第1空間S1で形成されたバブルが第2空間S2を経てさらに微細化またはせん断されるためである。
【0043】
図5(b)には、圧力比率xと、液体流入量Qcに対する気体流入量Qsの流入量比率y=(Qc/Qs)との関係が示されている。当該関係はy=7.38(x−0.60)2という近似式により表わされるが、本実施形態ではこの近似式にしたがって液体流入量Qcおよび気体流入量Qsが調節される。
【0044】
(本発明の気泡発生装置の作用効果)
本発明は、チャンバ1への気体の流入圧力の降下量ΔPに対する、チャンバ1への液体の流入圧力Pcの比率である圧力比率x=(Pc/ΔP)に応じて、気泡発生量(単位時間当たりの気泡発生個数)および気泡径のそれぞれが変化するという発明者の知見に基づいてなされた。具体的には、圧力比率xが低いほど気泡径が大きくなるとともに気泡発生量が少なくなるのに対して、圧力比率xが高いほど気泡径が小さくなるとともに気泡発生量が多くなる傾向がある。
【0045】
このため、チャンバへの液体流入量Qcおよび気体流入量Qsの調節を通じて当該比率xが調節されることにより、気泡発生量および気泡径のそれぞれが所望の数値範囲に調節されうる。
【0046】
たとえば、気泡発生量y1が第1関数f1(x)により定義され、気泡径y2が第2関数f2(x)により定義されている場合、気泡発生量y1を範囲[y1L,y1H]に収めるとともに、気泡径y2を範囲[y2L,y2H]に収めるためには、圧力比率xは範囲[f1-1(y1L),f1-1(y1H)]および[f2-1(y2H),f2-1(y2L)]の重なり範囲に収まるように調節される。
【0047】
図6(a)〜(d)のそれぞれには、チャンバ1が水槽に入れられている状態で、異なる液体流入量Qcおよび気体流入量Qsに応じてカメラにより撮影された気泡発生の様子が示されている。カメラのシャッタースピードは(1/2500)[s]である。カメラにより得られた気泡の写真に基づき、当該気泡の径がマイクロスコープを用いて計測された。
【0048】
図6(a)には圧力比率x=0.8、液体流入量Qc=56×10-6[m3/s]、気体流入量Qs=82×10-6[m3/s]における気泡発生の様子が示されている。この場合、気泡径は0.50〜2.0[mm]の範囲で分布していた。また、最小径0.50[mm]の気泡に換算した場合の1秒当たりの気泡発生個数は約16万であり、最大径2.0[mm]の気泡に換算した場合の1秒当たりの気泡発生個数は約2450である。
【0049】
図6(b)には圧力比率x=1.0、液体流入量Qc=57×10-6[m3/s]、気体流入量Qs=53×10-6[m3/s]における気泡発生の様子が示されている。この場合、気泡径は0.25〜0.30[mm]の範囲で分布していた。また、最小径0.25[mm]の気泡に換算した場合の1秒当たりの気泡発生個数は約80万であり、最大径0.30[mm]の気泡に換算した場合の1秒当たりの気泡発生個数は約47万である。
【0050】
図6(c)には圧力比率x=1.2、液体流入量Qc=58×10-6[m3/s]、気体流入量Qs=42×10-6[m3/s]における気泡発生の様子が示されている。この場合、気泡径は0.15〜0.20[mm]の範囲で分布していた。また、最小径0.15[mm]の気泡に換算した場合の1秒当たりの気泡発生個数は約297万であり、最大径0.20[mm]の気泡に換算した場合の1秒当たりの気泡発生個数は約130万である。
【0051】
図6(d)には圧力比率x=1.4、液体流入量Qc=60×10-6[m3/s]、気体流入量Qs=11×10-6[m3/s]における気泡発生の様子が示されている。この場合、気泡径は0.05〜0.10[mm]の範囲で分布していた。また、最小径0.05[mm]の気泡に換算した場合の1秒当たりの気泡発生個数は約2100万であり、最大径0.10[mm]の気泡に換算した場合の1秒当たりの気泡発生個数は約263万である。
【0052】
図7には圧力比率xおよび気泡径の関係が示されている。図7から明らかなように圧力比率xが低いほど、すなわち、気体流入量Qsが多いほど気泡径は大きくなる傾向がある。図8には圧力比率xおよび気泡発生個数の関係が示されている。図8から明らかなように、圧力比率xが高いほど、すなわち、気体流入量Qsが少ないほど気泡発生個数は多くなる傾向がある。
【0053】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では第1空間S1に対してトーラスの接線方向に液体が流入されたが(図3(a)(b)参照)、他の実施形態として第1空間S1に対して、トーラスの接線方向成分を有するベクトルにより表わされるあらゆる方向(たとえば、当該接線方向に対して10°〜20°程度の角度をなす方向)に液体が流入されてもよい。
【0054】
前記実施形態では第1空間S1に対してトーラスの回転軸方向に気体が流入されたが(図3(a)(b)参照)、他の実施形態として第1空間に対して、トーラスの回転軸方向成分を有するベクトルにより表わされるあらゆる方向(たとえば、当該回転軸方向に対して10°〜20°程度の角度をなす方向)に気体が導入されてもよい。
【0055】
チャンバ1として、さまざまな形状のチャンバが採用されてもよい。たとえば、チャンバが底板および天板を有する円筒状に形成され、チャンバに対して当該円筒の接線方向に液体が流入されることにより、液体の旋回流がチャンバの内部空間に形成され、底板に設けられた空気流入孔からチャンバに空気が導入され、この空気が旋回流のせん断力によって気泡が発生し、この気泡が天板に設けられた気泡流出孔から導出されてもよい。
【0056】
本発明の気泡発生装置は、たとえば、便器等の対象物体の洗浄水として、気泡混じりの液体を供給するために用いられる。この場合、効率的な洗浄を達成可能な範囲(実験等により求められる。)に気泡径および気泡発生量が含まれるように、液体流入量Qcおよび気体流入量Qsが調節される。
【符号の説明】
【0057】
1‥チャンバ、2‥液体供給装置、4‥気体供給装置、S1‥第1空間、S2‥第2空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、液体供給装置と、気体供給装置とを備え、前記液体供給装置により前記チャンバに液体が流入されるとともに、前記気体供給装置により前記チャンバに気体が流入されることにより、前記チャンバにおいて発生した気泡混じりの液体が前記チャンバから流出されるように構成されている気泡発生装置であって、
前記液体供給装置による前記チャンバへの液体の流入量Qcおよび前記気体供給装置による前記チャンバへの気体の流入量Qsの調節を通じて、前記チャンバへの気体の流入圧力の降下量ΔPに対する、前記チャンバへの液体の流入圧力Pcの比率x=(Pc/ΔP)が調節されていることを特徴とする気泡発生装置。
【請求項2】
請求項1記載の気泡発生装置において、
前記チャンバは、
環状の第1空間と、
前記環の内周側において、前記環の接線方向成分を有する方向にのびているスリットを介して前記第1空間に連続する第2空間と、
前記液体供給装置により供給される液体を、前記第1空間に対して前記環の接線方向成分を有する方向に流入させる液体導入部と、
前記気体供給装置により供給される気体を、前記第1空間に対して一または複数箇所から流入させる気体導入部と、
前記第2空間を前記チャンバの外部に連通させる気泡流出部とを備えていることを特徴とする気泡発生装置。
【請求項3】
請求項2記載の気泡発生装置において、
前記第2空間は、前記環の接線方向に垂直な方向について、前記気泡流出部に向かって一部が隆起している板状に形成されていることを特徴とする気泡発生装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の気泡発生装置において、
前記第1空間はドーナツ型のトーラス状に形成され、
前記スリットは前記トーラスの内周側の経線に沿って当該トーラスの小円径よりも幅狭に形成され、
前記第2空間は前記トーラスの回転軸方向から見て円形状に形成され、
前記気泡流出部は、前記トーラスの回転軸方向について前記第2空間から前記チャンバの外部に向かって設けられていることを特徴とする気泡発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−194326(P2011−194326A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64449(P2010−64449)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名:日本機械学会 関東支部ブロック合同講演会 2009 前橋 主催者名:日本機械学会 開催日:平成21年9月26日および27日
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】