説明

気泡発生装置

【課題】 空気取り入れ管の設置工事そのものを省略可能としつつも、漏水発生のおそれを解消し得る気泡発生装置を提供する。
【解決手段】 空気取り入れ部51を浴槽の循環アダプタの後端面から突出するように配設し、先端ノズルに連通する接続管53に接続する。吸気通路513に対し浴槽側の下流側位置に逆流防止弁部54を、吸気開口514側の上流側位置に閉止手段55を介装する。閉止体551を高吸水膨張樹脂で形成し、逆流防止弁部54に閉変換異常が生じて水の流出が到達したとしても、その水を吸水して膨張することにより吸気開口514を完全閉止させるようにする。逆流防止弁部54と閉止手段55との間に通気性防水シートを介装させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に設けられて浴槽内の浴槽水中に微小な気泡を吐出させる気泡発生装置に関し、特に設置のための施工の省略化及び漏水発生のおそれの解消を図り得る技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽内から浴槽水を取り出した後に再び浴槽内に戻すという循環作動をさせ、その循環水を浴槽内に戻す際の吐出流に基づく負圧を利用して空気を循環水中に取り込み、これにより、気泡が混合された状態にして浴槽内に吐出させるという気泡発生装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、湯水の循環路の吐出口近傍に空気取り入れ管の下流端を連通接続する一方、空気取り入れ管の上流端である吸気口を浴槽の上方位置に設置すること、そして、空気取り入れ管の途中に電磁弁を介装すること、が提案されている。
【0004】
特許文献2では、空気取り入れ管(吸気管)の上端である吸気口を浴槽のフランジ下の空間内に開口するように設置させるものの、漏水防止のためにその吸気口を閉付勢する逆止弁を設けるようにすることが提案されている。
【0005】
いずれの提案技術も、空気取り入れ管の先端にある吸気口から浴槽水が流出したり漏水したりすることを阻止するために対策がなされたものであり、そのために吸気口を上方位置に設定し、なおかつ、電磁弁や逆止弁を介装している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1−19425号公報
【特許文献2】実開平8−182717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、浴槽内に気泡を吐出させるための循環流として、図9に例示するように追い焚き機能を有する給湯器200に対し戻り路31を通して浴槽1から浴槽水を戻し、所定温度まで追い焚きした上で、往き路32を通して浴槽に供給するという追い焚き循環路3の循環流を利用し、加えて、循環アダプタ400に対し気泡発生機能を付設することにより気泡発生装置を構成するという開発・改良が出願人により行われている。
【0008】
しかしながら、循環アダプタ400の浴槽1への設置工事とは別に、その循環アダプタ400に対する空気取り入れのために吸気口801や逆止弁802を備えた空気取り入れ管803を浴室外に設置する工事が必要となる。一方、特許文献2の提案技術の如く浴槽1のフランジ下の空間に空気取り入れ管を設置する場合(図示省略)であっても、そのための設置工事が必要になる上に、逆止弁は異物の噛み込み等に起因して完全には閉止状態に変換しない事態が発生するおそれも考えられ、このような異常事態発生に起因する漏水発生のおそれも考えられるという不都合を抱えている。このような異常事態発生に対処するために、特許文献1の提案技術の如く電磁弁を介装するとなると、機器の費用のみならず作動制御のための対策も必要となる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空気取り入れのための設置工事そのものを省略可能にした場合であっても、漏水発生のおそれを確実に解消し得る気泡発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、浴槽の壁面から浴槽内に吐出される湯水の吐出流に臨んで先端部位が開口し、上記吐出流による負圧を受けて上記先端部位から空気が取り込まれるように配設される気泡発生装置を対象にして、次の特定事項を備えるようにした。すなわち、上記先端部位に連通して外部空間から空気を取り入れるための空気取り入れ部に、上記先端部位側からの水の流出を受けて空気取り入れ部内の吸気通路を閉止する閉止手段を介装する。そして、上記閉止手段として、高吸水性膨張樹脂により形成された閉止体を備えるようにし、この閉止体が水を吸水して体積が膨張することにより吸気通路を遮断して閉止する構成とする(請求項1)。
【0011】
この発明の場合、浴槽の側から先端ノズル部を経て空気取り入れ部に水が到達した場合であっても、閉止体がその水を吸水して膨張する結果、吸気通路を遮断して閉止することになるため、外部空間への漏水発生を確実に阻止することが可能になる。これにより、空気取り入れ部を含めた気泡発生装置の全体を入浴使用時の通常の浴槽水位よりも下方位置(例えば浴槽に付設される循環アダプタの位置)に設置したとしても、浴槽水が空気取り入れ部を通して外部に流出したり漏水したりするという事態が発生するおそれはない。このため、従来の如く、空気取り入れ管を浴槽水位よりも上方位置に別途設置する必要はなく、そのための設置工事そのものを省略することが可能となる上に、そのような設置工事を省略した場合であっても、漏水発生のおそれを確実に解消し得る気泡発生装置を提供し得ることになる。なお、「浴槽の壁面から浴槽内に吐出される湯水」とある湯水の吐出は、壁面と面一の位置から吐出される場合だけに限らず、壁面位置から浴槽内側に多少飛び出た位置から湯水が吐出される場合(例えば後述の循環アダプタの前面カバーの位置から吐出)、壁面位置から多少凹んだ窪み位置から湯水が吐出される場合も含むものである。さらに、「吐出流に臨んで先端部位が開口」とは、吐出流に対しその流れ方向に直交する方向から臨んで先端部位が開口する場合、吐出流に対しその流れ方向と同じ向きから臨んで先端部位が開口する場合、あるいは、吐出流に対しその流れ方向に斜め方向から臨んで先端部位が開口する場合等を含む趣旨である。
【0012】
本発明の気泡発生装置において、上記空気取り入れ部に、上記閉止手段よりも上記先端部位側の位置に介装された逆流防止弁部を備えることとし、上記逆流防止弁部として、上記吐出流による負圧を受けたときには上記先端部位側への空気の流通を許容する一方、先端部位側からの水の流れを受けたときには吸気通路を閉止する構成とすることができる(請求項2)。この場合には、浴槽の側から空気取り入れ部に水が到達した場合であっても、まず、逆流防止弁部によってそれ以上の流出を阻止することが可能となる。しかも、この逆流防止弁部に閉変換異常等の異常事態が万一発生して、さらに水が流出したとしても、閉止手段の閉止体がその水を吸水して膨張する結果、吸気通路を完全に塞いで閉止することになる。このため、閉止体を用いた最終段階における閉止手段に加えて、その前段階において逆流防止弁部による逆流防止が図られるため、これら二重の漏水防止対策によって、空気取り入れ部からの漏水発生をより一層確実に阻止することが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の気泡発生装置において、上記閉止手段に、上記閉止体を収容するように上記吸気通路に介装された弁室を備えることとし、上記閉止体を、上記吐出流による負圧を受けたときには上記先端部位側への空気の流通を許容する一方、先端部位側からの水の流れを受けたときには吸気通路を閉止するように上記弁室内を移動可能に配設させるようにすることができる(請求項3)。この場合には、浴槽の側からの水が空気取り入れ部の閉止手段まで到達した場合であっても、閉止体が逆流防止のための弁体として即座に移動すると共に、閉止体がその水を吸水して膨張する結果、吸気通路を完全に塞ぐことになるため、漏水発生をより一層確実に阻止することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明の気泡発生装置によれば、浴槽の側から先端ノズル部を経て空気取り入れ部に水が到達した場合であっても、閉止体がその水を吸水して膨張する結果、吸気通路を遮断して閉止することができ、外部空間への漏水発生を確実に阻止することができるようになる。これにより、空気取り入れ部を含めた気泡発生装置の全体を例えば浴槽に付設される循環アダプタの位置などの入浴使用時の通常の浴槽水位よりも下方位置に設置したとしても、浴槽水が空気取り入れ部を通して外部に流出したり漏水したりするという事態の発生を確実に阻止することができる。このため、従来の如く、空気取り入れ管を浴槽水位よりも上方位置に別途設置する必要はなく、そのための設置工事そのものを省略することができる上に、そのような設置工事を省略した場合であっても、漏水発生のおそれを確実に解消し得る気泡発生装置を提供することができることになる。
【0015】
特に、請求項2によれば、浴槽の側から空気取り入れ部に水が到達した場合であっても、まず、逆流防止弁部によってそれ以上の流出を阻止することができる。しかも、この逆流防止弁部に閉変換異常等の異常事態が万一発生して、さらに水が流出したとしても、閉止手段の閉止体がその水を吸水して膨張する結果、吸気通路を完全に塞いで閉止することができる。このため、閉止体を用いた最終段階における閉止手段に加えて、その前段階において逆流防止弁部による逆流防止を図ることができ、これら二重の漏水防止対策によって、空気取り入れ部からの漏水発生をより一層確実に阻止してフェールセーフを実現させることができるようになる。
【0016】
又、請求項3によれば、浴槽の側からの水が空気取り入れ部の閉止手段まで到達した場合であっても、閉止体が逆流防止のための弁体として即座に移動すると共に、閉止体がその水を吸水して膨張する結果、吸気通路を完全に塞ぐことになるため、漏水発生をより一層確実に阻止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る気泡発生装置を適用した風呂システムの例を示す説明図である。
【図2】実施形態に係る気泡発生装置が適用された追い焚き循環用の循環アダプタの斜視図である。
【図3】図2のA−A線断面説明図である。
【図4】図2の循環アダプタを用いた追い焚き運転の作動原理を示す説明図である。
【図5】図2の循環アダプタを用いた気泡発生運転の作動原理図を示す図4対応図である。
【図6】図3の空気取り入れ部の拡大説明図であり、図6(a)は気泡発生運転における状態を示し、図6(b)は追い焚き循環運転における状態を示し、図6(c)は逆止弁に閉止異常が生じたときにおける状態を示す。
【図7】空気取り入れ部について他の実施形態を示す拡大説明図であり、図7(a)は空気取り入れ部を上方に向くように90度角度を変えたものを示し、図7(b)はさらに通気性防水シートを追加介装したものを示す。
【図8】追い焚き循環路を利用して循環アダプタに気泡発生機能を付与した例を示す図1対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示す風呂システムは、浴槽1と、風呂用の追い焚き循環機能を備えた給湯器2と、戻り路31及び往き路32からなり浴槽1及び給湯器2を互いに接続する追い焚き循環配管3と、実施形態に係る気泡発生装置5を内蔵・付設した循環アダプタ4とを備えて構成されたものである。
【0020】
給湯器2は、例えば、追い焚き用熱交換器21と、これを加熱する燃焼バーナ22とを備えているものである。なお、給湯器2としては、追い焚き加熱用の構成を備えていれば、追い焚き用と給湯用とに互いに独立した缶体を備えた2缶2水式のものであるか、追い焚き用と給湯用とを共用する1缶2水式であるか、あるいは、温水循環式暖房回路が組み込まれて、その高温水を熱源とする液−液熱交換器により追い焚き加熱されるものであるかの別は問わず、いずれのものでも適用可能である。
【0021】
浴槽1には、その一側壁面の底部近傍に循環アダプタ4が貫通した状態で設置され、この循環アダプタ4に対し、追い焚き循環配管3の戻り路31の上流端と、往き路32の下流端とが接続されている。そして、給湯器2内の循環ポンプ23が作動されると、浴槽1内の浴槽水(湯又は水)が循環アダプタ4及び戻り路31を通して給湯器2の熱交換器21に戻され、次いで、往き路32及び循環アダプタ4を通して浴槽1内に吐出される、という循環流が生じて循環作動されることになる。この循環作動の際に、燃焼バーナ22が燃焼作動されると、浴槽1から戻された浴槽水が所定温度まで加熱されて追い焚きされる追い焚き運転モードになり、燃焼バーナ22が非燃焼状態のままであると、浴槽水による循環流のみが生じて気泡発生運転モードとなる。
【0022】
循環アダプタ4は、浴槽1に対しその内側に配設される前面カバー体41(図2も参照)と、主として浴槽1の外側に配設されるアダプタ本体42とが一体化されて組み付けられるものであり、戻り路31に接続される戻り用接続口421と、往き路32に接続される往き用接続口422とがアダプタ本体42の後端から突出されるとともに、アダプタ本体42の後端面には空気取り入れ部51が設けられている。
【0023】
前面カバー体41には、追い焚き運転モードと気泡発生運転モード(バブル温浴運転モード)との切換えを行うための切換レバー431を備えた後述の切換弁機構43が組み込まれる他、外周側にドーナッツリング状に広がるフィルタ部材410が装着されている。又、前面カバー体41の前面上部位置には気泡を含む循環水が吐出又は噴出される前面吐出口411が開口形成される一方、前面下部位置には半月状の案内開口412から切換レバー431が円弧状に往復移動可能に突出されている。
【0024】
図3は気泡発生装置5が組み込まれた循環アダプタ4を図2のA−A線における断面図として示すものであり、図4又は図5は循環アダプタ4の詳細構造を省略して原理的な構造を示すものである。
【0025】
まず、循環アダプタ4の概略構造について主として図4又は図5を参照しつつ説明する。循環アダプタ4は、前述の循環ポンプ23の作動により浴槽1内から浴槽水を吸い込んで戻り路31に流すための吸い込み流路44と、往き路32からの循環水(浴槽水)を浴槽1内にそのまま流す追い焚き吐出流路45と、同様に往き路32からの循環水に対し気泡を巻き込んだ状態で浴槽1内に吐出する気泡吐出流路46と、上記往き路32からの循環水を追い焚き吐出流路45の側に流す(追い焚き運転モード)か、気泡吐出流路46の側に流す(気泡発生運転モード)かのいずれかに切換える切換弁機構43とを備えている。
【0026】
吸い込み流路44は、図4又は図5に矢印Rで示すように、フィルタ部材410を介して前面カバー体41の外周領域から吸い込まれた浴槽水を合流させた後に戻り用接続口421まで導くように延びている。追い焚き吐出流路45は、図4に矢印Gで示すように、往き用接続口422からの循環水を分流室451に導いた後に開閉切換口452を通して前面カバー体41の下側に導き、その下側領域の外周面に開口する追い焚き吐出口453から浴槽1内に吐出するように延びている。
【0027】
気泡吐出流路46は、図5に矢印Bで示すように、往き用接続口422からの循環水を上記分流室451を介して分流路461に導いた後、噴出孔462から旋回室463に噴出させて旋回室463に旋回流を生じさせて空気を巻き込み、巻き込んだ気泡と共に循環水を気泡吐出口464及び前面吐出口411を経て浴槽1内の前方に向けて吐出させるように延びている。上記旋回室463はその内周面が円筒状に形成され、上記噴出孔462はその旋回室463に対し接線方向に分流室からの循環水を噴出させるように開口されている。この噴出孔462からの循環水の噴出により旋回室463内に気泡吐出口464の側に向かう旋回流が生じ、この旋回流に伴い気泡発生装置5の後述の先端ノズル部52に対し負圧が作用することにより、先端ノズル部52から空気が旋回流に巻き込まれ、この結果、微小な気泡が混合した状態の循環水が浴槽1内に吐出されることになる。
【0028】
切換弁機構43は、前端に切換レバー431が固定されて分流室451を突き抜けるように配置された切換軸432と、この切換軸432の途中に設けられた第1切換弁433及び第2切換弁434と、第1切換弁432を挟んで配置された形状記憶合金製バネ435及びバイアスバネ436とを備えて構成されている。この切換弁機構43は、分流室451に供給される循環水の温度の高低如何によって追い焚き運転モードと気泡発生運転モードとの自動切換が可能であると共に、切換レバー431の切換操作によっても追い焚き運転モードと気泡発生運転モードとの切換が可能となっている。例えば、分流室451に供給される循環水の温度が追い焚き用の高温(例えば80℃)であれば形状記憶合金製バネ435が伸長し、これにより第1切換弁433が分流路461を遮断する一方、第2切換弁434が開閉切換口452を開放した追い焚き運転モードに自動切換される(図4に示す状態参照)。一方、循環水の温度が上記の追い焚き用の高温よりも低温であれば形状記憶合金製バネ435が縮小し、これにより第1切換弁433が分流路461を開放する一方、第2切換弁434が開閉切換口452を遮断した気泡発生運転モードに自動切換される(図5に示す状態参照)。又、切換レバー431の切換操作により切換軸432を回転作動させることによっても、同様に追い焚き運転モードと気泡発生運転モードとに切換操作し得るようになっている。
【0029】
次に、気泡発生装置5について説明すると、図3に示すように、外部から吸気するための空気取り入れ部51と、空気取り入れ部51から吸気した空気を旋回室463に対し噴出させる先端部位としての先端ノズル部52と、空気取り入れ部51が取り付けられて空気取り入れ部51から先端ノズル部52までを連通させる接続管部53とを備えている。先端ノズル部52は内孔が所定の微小径(例えば0.6mmの直径)に形成されたオリフィス構造を備え、半球状の先端を備えている。
【0030】
空気取り入れ部51は、図6に詳細を示すように、互いに連結された筒状のケース511,512内の吸気通路513に対し、接続管53の側である下流側位置に外部空間側への水の逆流を阻止する逆流防止弁部54が介装され、外部空間に臨む先端の吸気開口514の側である上流側位置に異常事態発生時のフェールセーフ用の閉止手段55が配設されている。ここで、異常事態発生時とは次のような事態の発生を想定したものである。本来は逆流防止弁部54により逆流がたとえ発生してもそれ以上の流出・漏水が阻止されるようになっているものの、例えば逆流防止弁部54に異物等の噛み込みが発生したなどの閉変換異常に起因して逆流防止弁部54が逆流防止のために閉変換しようとしても完全に閉止した状態にはならないおそれが考えられる。このような場合には、逆流防止弁部54を通過して上流側へ漏水が流出してしまうような事態が発生するおそれがあると考えられ、かかる異常事態発生時に対処するために閉止手段55を設けたものである。
【0031】
逆流防止弁部54は、水圧を受けて撓むような例えばゴム製の円盤状の弁体541を備えたものである。弁体541は、ケース511内に区画形成された弁室542に配設され、弁室542の上流側壁面に開口する小径の連通孔543(吸気通路513の一部を構成する)を開閉変換するように構成されている。すなわち、弁室542の下流側壁面には弁体541が密着するのを阻止して空気が流通するための隙間を確保するための複数のリブ544,544,…が周方向に間隔を隔てて形成され、弁室542の上流側壁面にはその中央部位が弁体541の側に膨出し、この膨出した中央部位に連通孔543が開口されている。
【0032】
そして、気泡発生運転モードのときには、旋回室463(図3又は図5参照)から作用する負圧によって水圧は作用しないため、弁体541は連通孔543から離れてリブ544,544,…の側に位置し、これにより、連通孔543は開状態(図6(a)参照)を維持することになる。一方、気泡発生運転モード以外の追い焚き運転モードでは浴槽1(図1参照)側からの水圧を受けて弁体541は連通孔543に対し押し付けられ、これにより、連通孔543は閉状態(図6(b)参照)を維持することになって、吸気開口514の側への水の流出は阻止される。
【0033】
閉止手段55は、高吸水性膨張樹脂により形成された円盤状の閉止体551を備えたものであり、万一の漏水が逆流防止弁部54から流れてくると、閉止体551がその水を吸水して膨張する結果、吸気開口514への連通孔553(吸気通路513の一部を構成する)を塞いで遮断するようになっている。すなわち、閉止体551は、ケース512内に区画形成された弁室552に配設され、この弁室552の下流側壁面には閉止体551が密着するのを阻止して空気が流通するための隙間を確保するための複数のリブ554,554,…が周方向に間隔を隔てて形成され、弁室552の下流側壁面にはその中央部位が閉止体551の側に膨出し、この膨出した中央部位に連通孔553が開口されている。
【0034】
そして、気泡発生運転モードのときには、旋回室463(図3又は図5参照)から負圧が作用するため、弁体551は連通孔553から離れてリブ554,554,…の側に位置し、これにより、連通孔553は開状態(図6(a)参照)を維持して吸気開口514から空気が取り入れられることになる(図6(a)の点線の矢印参照)。一方、気泡発生運転モード以外の追い焚き運転モードでは浴槽1(図1参照)側からの水圧を受けて逆流防止弁部54の弁体541が連通孔543を閉状態(図6(b)参照)に変換することで閉止体551は吸水することなくそれまでの状態を維持する。
【0035】
このように閉止手段55は、上記の弁体541と形成素材が異なるものの、逆流防止弁部54とほぼ同様の逆止弁構造を備え、閉止体551が膨張するまでは逆流防止のための作動をする。このため、万一、逆流防止弁部54での逆流防止機能が損なわれて漏水が弁室552に到達すれば、その水圧を受けて閉止体551が即座に連通孔553を覆うように移動して連通孔553を閉止すると共に、閉止体551がその漏水を吸水して膨張する結果、連通孔553を完全に塞いで遮断し(図6(c)参照)、吸気開口514からの漏水発生を確実に阻止することになる。
【0036】
このように作動する閉止体551の形成素材である高吸水性膨張樹脂の例として次のようなものを採用すればよい。すなわち、例えば、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)にポリアクリル酸ナトリウムを混合することにより高吸水性膨張樹脂(高吸水性膨張ゴム)としたものを用いればよい。このような高吸水性膨張樹脂の素材の例としては、具体的には「トーリック水膨張ゴム」(株式会社田崎アサヒの製品名)が挙げられる。この高吸水性膨張樹脂の例の場合、例えば、水中に浸漬すると水を吸水して早期に体積が200〜300%膨張することになる。この体積膨張の結果、連通孔553を完全に塞いでしまうことになるため、漏水発生や漏水が持続するような事態の発生や浴槽水が外部に流出するような事態の発生を確実に回避することができるようになる。
【0037】
以上の実施形態の場合、浴槽1の側から先端ノズル部52を経て空気取り入れ部51に水が到達しても、逆流防止弁部54によってそれ以上の流出を阻止することができる。この逆流防止弁部54に閉変換異常等の異常事態が万一発生して吸気開口514の側に水が流出して閉止手段55まで到達した場合であっても、閉止体551が逆流防止のための弁体として即座に作動すると共に、閉止体551がその水を吸水して膨張する結果、連通孔553を完全に塞いで遮断して吸気開口514からの漏水発生を確実に阻止することができる。これにより、空気取り入れ部51を含めた気泡発生装置5の全体が循環アダプタ4に一体に付設されて空気取り入れ部51の吸気開口514が浴槽2内に貯留された浴槽水の水位よりも下側に位置していても、浴槽水が空気取り入れ部51を通して外部に流出したり漏水したりするという事態が発生するおそれはなく、不測の事態発生を回避することができる。このため、従来の空気取り入れ管803(図8参照)の場合のように浴槽水位よりも上方であって浴室外の壁に設置するというような設置工事そのものを省略することができる。
【0038】
又、漏水発生のおそれの回避については、閉止体551を用いた最終段階における閉止手段55に加えて、その前段階において逆流防止弁部54を設けているため、これら二重の漏水防止対策によってより一層の確実化を図ることができる。
【0039】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態において、高吸水性膨張樹脂として具体的に例示したもの以外の高吸水性膨張樹脂を用いて構成してもよい。
【0040】
又、上記実施形態では、負圧により吸い込んだ気泡を担持させて浴槽内に吐出させる湯水の吐出流として、追い焚き循環路3の循環流を利用した例を示したが、循環流に限らず、例えば浴槽からはオーバーフロー排水させるだけで浴槽に対しては単に供給して浴槽内に吐出させるための水流、いわゆる掛け流し方式での湯水の供給水流を利用するようにしてもよい。
【0041】
上記実施形態では、気泡発生装置5として先端ノズル部52から空気取り入れ部51までを循環アダプタ4の中心軸に沿って延ばした例を示したが、これに限らず、例えば図7(a)に例示したように、連通管53がアダプタ本体42から外部に出た位置から上向きに屈曲させ、その屈曲させた上端に空気取り入れ部51を装着するようにしてもよい。つまり、吸気通路513が吸気開口514から下向きに延びるように配置したものである。
【0042】
逆流防止弁部54と、閉止手段55との間に、さらなる漏水防止対策のための構成を追加するようにしてもよい。この場合、空気取り入れ部51に対し最終段階の閉止手段55の前段階において2段階の漏水防止対策を具備させ得ることになる。このような追加の漏水防止対策の一例として図7(b)に示すように、空気は透過するものの水は透過させない通気性防水シート56を吸気通路513を仕切るように介装させるものが挙げられる。この通気性防水シート56としては、気体分子は透過するが液体の水分子は透過させない程度の微細な多孔質樹脂、例えばPTFE(ポリテトラフルオラエチレン)により形成したシートに対し、強度維持のためのバックアップシート(例えば不織布)を接合させたものを用いればよい。この場合には、浴槽1の側から侵入する水は、第1段階目に逆流防止弁部54によりそれ以上の流出が阻止され、この逆流防止弁部54に閉変換異常が生じたときでも第2段階目の通気性防水シート56によりそれ以上の流出が阻止され、この通気性防水シート56が万一にも破れたときでも第3段階目の閉止手段55によってそれ以上の流出が最終的に完全に阻止されることになる。これにより、漏水発生防止について、より一層高いフェールセーフを実現させることができる。
【0043】
さらに、上記実施形態では、循環アダプタ4が浴槽1の一側の壁面に設置された例を示したが、これに限らず、気泡発生装置5が付設された循環アダプタ4を浴槽1の底側の壁面(底壁面)に設置し、気泡を含む吐出流が浴槽水に対し上向きに吐出されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 浴槽
5 気泡発生装置
51 空気取り入れ部
52 先端ノズル(先端部位)
54 逆流防止弁部
55 閉止手段
56 通気性防水シート
551 閉止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の壁面から浴槽内に吐出される湯水の吐出流に臨んで先端部位が開口し、上記吐出流による負圧を受けて上記先端部位から空気が取り込まれるように配設される気泡発生装置であって、
上記先端部位に連通して外部空間から空気を取り入れるための空気取り入れ部には、上記先端部位側からの水の流出を受けて空気取り入れ部内の吸気通路を閉止する閉止手段が介装され、
上記閉止手段は、高吸水性膨張樹脂により形成された閉止体を備え、この閉止体は水を吸水して体積が膨張することにより吸気通路を遮断して閉止するように構成されている
ことを特徴とする気泡発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気泡発生装置であって、
上記空気取り入れ部は、上記閉止手段よりも上記先端部位側の位置に介装された逆流防止弁部を備え、
上記逆流防止弁部は、上記吐出流による負圧を受けたときには上記先端部位側への空気の流通を許容する一方、先端部位側からの水の流れを受けたときには吸気通路を閉止するように構成されている、気泡発生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の気泡発生装置であって、
上記閉止手段は上記閉止体を収容するように上記吸気通路に介装された弁室を備え、
上記閉止体は、上記吐出流による負圧を受けたときには上記先端部位側への空気の流通を許容する一方、先端部位側からの水の流れを受けたときには吸気通路を閉止するように上記弁室内を移動可能に配設されている、気泡発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−92406(P2011−92406A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249103(P2009−249103)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】