説明

気泡除去装置

【課題】
一定の容積をもったトラップ容器に液溜まりをつくり、下層部から溶液を取り出す気泡除去装置において、トラップ容器内に定期的に溜まった気泡を自動的に検知でき、その気泡を排出する操作が容易な気泡除去装置を提供する。また、溶液の組成および流速を変化させることなく気泡を分離除去できて、低コストかつ小型の気泡除去装置を提供する。
【解決手段】
液体貯槽7からの配管に接続する液体入口部3と、送液先への配管に接続する液体出口部4と、気泡を排出する気泡出口部5とを有する密閉型のトラップ容器2と、前記トラップ容器2内の液位を検知する液面センサ6と、前記トラップ容器2の液体出口部4からの配管に接続する送液ポンプ16と、を備えた気泡除去装置1により、容易に気泡を分離除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に混在する気泡を除去する気泡除去装置に関するものであり、とくに化学分析に用いる溶液や、診断機器用薬剤のなかに含まれる気泡を除去するために好適に使用できるものである。
【背景技術】
【0002】
分析用の溶液や診断機器用薬剤中に気泡が混入していると、測定結果が正しく得られない場合がある。例えば、液体クロマトグラフィーでは、気泡がポンプ内に入ると溶液の供給速度や溶液量が不安定になることがある。さらに分離カラムに気泡が入ると、充填剤に付着しカラム内の流動状態を不均一・不安定にして溶出ピークを変形させることがある。また、検出器に気泡が入るとベースラインの乱れが生じることがある。
【0003】
このために、分析機器や診断機器においては、溶液中の気泡発生を防ぐ様々な脱気装置や、気泡を分離除去する装置が採用されている。
【0004】
脱気装置としては、例えば、分析用溶液を一定の真空度に減圧した脱気容器内に通すことで、溶液中の気泡の溶解度を下げ、送液したまま気泡の発生を防ぐ装置がある。この脱気装置を分析機器や診断機器に搭載する場合、脱気装置自体の体積が大きいことが課題となり、またコストがかかるといった問題がある。
【0005】
また、溶液中に混在する気泡を分離除去するために、一定の容積をもった容器内に溶液を流し込むことで、その容器内で重力による気液分離を促し、下層部に溜まった溶液を取り出す気泡トラップを用いる装置も一般に採用されている。
【0006】
特許文献1は、カラム流出液中の気泡を除去して検出器に導くとき好適に使用される脱気装置を開示している。この装置は、送液ポンプから圧送される液体を導入するトラップ容器を基本構造としており、気泡の除去のためのトラップ容器に、カラム流出液を受け入れる液体導入口と、その容器下層部に溜まった液体を検出器側に導く電磁弁付き液体導出口と、容器上部に溜まった気泡を大気に開放するための電磁弁付き大気開放口とを備えている。この装置は、さらにトラップ容器に液面センサを取り付けて、容器下部に溜まった液体を自動的に検出器側に導くように制御する。すなわち、液面センサが液体を検知したときは、液体導出口の電磁弁を開き、大気開放口の電磁弁を閉じて流出液を検出器側に導く。一方、容器内に気泡が充満し液面が低下して、液面センサが液体を検知しなくなったときは、液体導出口の電磁弁を閉じ、大気開放口の電磁弁を開いて気泡を抜くように構成されている。
【0007】
この特許文献1に開示されている脱気装置は、送液ポンプの下流に設置するため、流路の一部に、気液界面を介在させ、送液ポンプから圧送される液体に伝達された圧力が、気液界面の圧縮性によって変動し、流速が変動するという欠点を有する。したがって、背圧を発生する分析カラムに送液する場合には、脱気装置を送液ポンプの下流に設置するのは適当ではない。また、特許文献1の脱気装置は、気泡の放出のためにトラップ容器を大気に開放するので、蒸発によって液の組成が変化する場合が考えられる。液の組成が変化すると、たとえば糖尿病診断に利用されるグリコヘモグロビンの分離分析においては、pHのわずかな変動により分離パターンが変わり、正確な測定ができない。そして、特許文献1の脱気装置は、充満した気泡を大気開放しているときは液体の導出が停止し、脱気量の程度により停止の期間が変動するので、あらかじめ設定した流速での送液や定量注入には向いていない。
【0008】
【特許文献1】特開2001−058105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一定の容積をもったトラップ容器に液溜まりをつくり下層部から溶液を取り出す気泡除去装置は、コストが安いというメリットはあるが、トラップ容器内に溜まった気泡を定期的に除去する作業が必要であり、この作業は煩雑な手作業で行われる場合が多い。容器内に溜まった気泡を取り除くこの作業を怠ると、気泡が測定機器内に入ってしまい、トラブルの原因となる。そこで、本発明は、トラップ容器内に定期的に溜まった気泡を自動的に検知でき、その気泡を排出する操作が容易な気泡除去装置を提供することを目的とする。
【0010】
さらに従来の気泡除去装置には、上記のように、装置の小型化、低コスト化という課題、定量注入性の向上という課題、溶液の組成の変動を防ぐという課題が残されている。そこで本発明はこれらの課題を解決した気泡除去装置を提供する。
【0011】
また、トラップ容器内の気泡を排出しているときに液体の導出が停止する気泡除去装置では、気泡排出量の程度により停止の期間が変動するので、あらかじめ設定した流速での送液や定量注入ができないという課題が残されている。そこで本発明は、測定の途中においても送液ポンプを停止させずに気泡の排出をおこなうことができる気泡除去装置を提供することも目的の1つとする。
【0012】
本発明の気泡除去装置は、定量精度の高い送液系を実現するのに有用なものである。したがって本発明は、とくに液体クロマトグラフィーにおいて、カラムに気泡が混入することのない送液系を実現するのに有用な気泡除去装置を提供することも目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、液体中に含まれている気泡を除去する装置であって、
液体貯槽からの配管に接続する液体入口部と、送液先への配管に接続する液体出口部と、気泡を排出する気泡出口部と、を有する密閉型のトラップ容器と、
トラップ容器内の液位を検知する液面センサと、
トラップ容器の液体出口部からの配管に接続する送液ポンプと、
を備えた気泡除去装置である。
【0014】
送液ポンプによる送液先としては、たとえば気泡が混入することを嫌う液体クロマトグラフ用カラムのほかにフロー方式の各種分光分析計、電気化学検出器等が挙げられる。
【0015】
トラップ容器自体は、液体入口部と液体出口部と気泡出口部を有する容器状のものであり、配管を流動してきた液体の流れを滞留させる効果をもつものならばその形や設置方向に限定はない。それ自体に動力源も機械的運動部材も備えておらず、簡単な構造をなしており、安価に製造することができる。トラップ容器の容量は、液体貯槽の容量、送液すべき液体の流速、送液目的が液体クロマトグラフィーならば分析時間等を考慮して適宜決められる。
【0016】
液体入口部、液体出口部および気泡出口部をトラップ容器のどの位置に取り付けるかについて、まず液体入口部はトラップ容器のどの位置に取り付けても構わない。液体入口部がトラップ容器内の液面上にあっても液面下にあっても差し支えない。通常は、密閉したトラップ容器頭部から配管チューブを挿入するか、トラップ容器の側面に穴を開けて液体貯槽からの配管を接続する。液体出口部は気泡を取り除いた液体を取り出す出口であるから、その先端が液面下に位置するように配置すればよい。たとえば、ガラス瓶の頭部から密閉ゴム栓等を介して送液チューブをガラス瓶底部まで達するように構成してもよいし、プラスチック製容器の底部に穴を開け、送液ポンプに通じる配管を接続するようにしてもよい。気泡出口部は液面より高い位置、通常はトラップ容器頭部に配置する。送液ポンプにより送液しているときは、気泡出口部を閉じておく。気泡出口部は気泡の手動排気のために注射器等をピンチコックを介して接続したり、自動排気のために電磁バルブを介して吸引ポンプに接続したりしてもよい。
【0017】
トラップ容器を構成する本体の材質は、送液する液体と反応を起こさないものであれば特に制限はなく、たとえば塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール等の合成樹脂容器や、磁器製、金属製、ガラス製の容器等が挙げられる。
【0018】
液体入口部、液体出口部および気泡出口部の設置個数に制限はなく、それぞれが少なくとも一つずつあればよい。たとえば、一つのトラップ容器に対して、同じ液体が入った液体貯槽を複数接続するための複数の液体入口部を設置してもよいし、複数の送液先に送液できるように複数の液体出口部を設置してもよい。手動による気泡排出のための気泡出口部と、電磁バルブを介した自動的気泡排出のための気泡出口部との両方を備えていてもよい。
【0019】
本発明に係る気泡除去装置で使用される液位を検知する液面センサは、室内の気泡量または液体量が一定量以上あるかないかを検知できるものであればよく、使用状況に応じて種々のセンサが適宜選択される。たとえば、使用される液体が緩衝液等の電解質であれば、二本のセンサ電極をトラップ容器内に差込み、電極間に流れる電流を測定することで目的が果たせる。トラップ容器内に液体が十分ある場合には、センサ間に電流が流れ、気泡が溜まってくると、センサ電極の一方が気泡中に露出することとなり、電極間に電流が流れなくなる。また、使用される液体が非電解質であれば、トラップ容器内の気泡が一定量以上になり、トラップ容器内の液面が低下することで、逆止弁またはフロート弁のように液体が流出する出口に栓をするような構造のものが例として挙げられる。さらにまた、トラップ容器の一方の側面から光ビームを当て、反対側の側面にフォトセンサを配置することによって、液体の有無を検知する方式の液面センサを例示することができる。なおこの際には、トラップ容器の少なくとも一部を光透過性の材質にする必要がある。
【0020】
液面センサのセンシング部位ををトラップ容器のどの位置に設定するかについては、限定するものではなく、気泡排出の仕方や送液条件により適宜決められる。たとえば、液面センサのセンシング部位をトラップ容器の比較的上部の位置に取り付ける場合は、送液中に気泡が混入する危険性をより少なくすることができる。送液ポンプとしてシリンジポンプを使用するならば、液面センサの設定位置にある液面からワンストローク分液面が下降しても、気泡が液体出口部に達しないようにすることにより、ある吸引ストローク後の液面が液面センサの設定位置を下回ったときでも、シリンジポンプに収容された液体は送液先に送り出すことが可能となる。一方、液面センサの設定位置を液体出口部に近い比較的下部の位置にする場合は、送液流速が低く、気泡がトラップ容器に溜まる速度が低い条件において、気泡排出の回数を減らすことができるという利点がある。
【0021】
本発明に係る気泡除去装置においては、液体貯槽からの液体に対して気泡の除去を行ない送液先に送液する際に、送液ポンプはトラップ容器と送液先との間、すなわちトラップ容器の下流側に配置して使用される。そして送液のためには、送液ポンプの吸引による圧力の低下を液体貯槽のなかの液体に伝達する必要があるので、間に配置するトラップ容器は液体入口部と液体出口部以外は密閉して運転する。運転の経過につれて、トラップ容器内では、重力により気液分離されて生じた気泡のかたまりがトラップ容器の上部に溜まってくる。そのまま測定を継続すると、液体出口部から気泡が送液ポンプ側ひいては送液先に混入してさまざまなトラブルを引き起こす。したがって、トラップ容器内に気泡が溜まった場合には、気泡出口部から密閉状態のままシリンジ等でトラップ容器内の気泡を吸引排出する等の操作が行われる。排出された気泡の体積量だけ、液体入口部から液体がトラップ容器内に満たされ、気泡除去装置の継続使用が可能となる。本発明では、トラップ容器内の気泡が一定量以上溜まったことを検知するために、トラップ容器内の液位を検知する液面センサを設ける。液面センサを警報手段に連動させることにより、シリンジ等で気泡を吸引排出する手動操作の開始時期を確実に知ることができる。しかし、後述するように液面センサからの検知信号に基づいて自動的に気泡の排出を行なうことで、より操作者の負担を軽減することが可能となる。
【0022】
本発明において、送液ポンプとは別に気泡を排出する吸引ポンプ、ストップバルブおよびそれを制御する制御部を設け、液面センサをこの制御部に接続することにより、トラップ容器内の気泡が一定量以上溜まり液面が低下したとき、自動的にストップバルブが開き吸引ポンプが作動して気泡を排出するように気泡除去装置を構成することができる。たとえば、トラップ容器内の気泡の排出が進み液面が上昇したら、吸引ポンプを自動的に停止させるように制御する。この吸引ポンプ、ストップバルブおよび制御部を設ける構成においては、送液ポンプと気泡排出のための吸引ポンプとが独立に作動するので、気泡排出の最中にも送液ポンプを停止することなく一定流速の安定した送液を継続することができる。この吸引ポンプ、ストップバルブおよび制御部を設ける構成においては、使用する送液ポンプには気泡が混入しにくい。したがって、気泡が混入しても動作不良に陥らないシリンジポンプやチューブポンプのほかに、デュアルプランジャー往復動型ポンプやダイヤフラム型ポンプ、ガス圧駆動式ポンプ等、使用できるポンプに制限はない。連続送液が可能なポンプを好適に使用できる。
【0023】
また、本発明に係る気泡除去装置において、液体出口部と送液ポンプとをつなぐ配管の途中に、気泡出口部に連通する流路を有する流路切り替えバルブを備え、さらに、液面センサからの信号に応じて流路切り替えバルブの動作を制御する制御部を備えた気泡除去装置を構成することができる。この流路切り替えバルブおよび制御部を備える構成によれば、液体出口部からの送液が進行するにつれて、トラップ容器の上部に溜まった気泡を排出するために、送液ポンプに通じる流路を液体出口部から気泡出口部に切り替える。たとえば、送液ポンプとして、逆止弁を備えたシリンジポンプを使用しているとき、液面が一定水準を下回ったことが液面センサにより検知された場合には、その回の送液ストロークが終わってから、流路切り替えバルブを気泡出口部とシリンジポンプとが連通するように切り替えたのち、同じシリンジポンプで気泡を吸引し廃棄ラインに排出する。廃棄ラインへの排出は、送液ポンプと送液先とをつなぐ配管の途中に別の流路切り替えバルブを設け、液体出口部と気泡出口部との流路切り替えバルブの切り替えと同時に作動させるようにしてもよい。気泡を排出することにより、排出された気泡の体積量だけ、液体貯槽から液体入口部を通って液体がトラップ容器内に入る。液面センサが一定水準を超える液面を検知するまで気泡の排出が繰り返される。こうしてトラップ容器内に液体が再度充填されると、制御部は流路切り替えバルブを切り替えて再び液体出口部から液体を送液する状態を再構築する。なお、この際、液面センサが液面を検知したら直ちに流路切り替えバルブを切り替えるのでなく、液面検知の時点から、廃棄ラインから液体が出てくるまで、すなわちトラップ容器内、送液ポンプおよび廃棄ラインが液体で充満するまでの容量と時間を把握しておき、トラップ容器内から完全に気泡が除かれるまで気泡排出を続けることにより、気泡除去容量を最大限に利用するようにしてもよい。トラップ容器内、送液ポンプおよび廃棄ラインから完全に気泡が除かれるまで気泡排出を続けることは、流路切り替えバルブを送液先に切り換えたときに、送液先へ気泡が侵入するのを最小限にするためにも有用である。
【0024】
このように液面センサの信号を制御部に送り、流路切り替えバルブの動作を制御することにより、トラップ容器内の気泡の除去を自動的に行い、気泡除去装置を継続して使用することができる。この構成によれば、気泡出口部と液体出口部とを流路切り替えバルブにより切り替えることで、送液ポンプが、気泡の排出を行なう吸引ポンプを兼ねることが可能となる。この場合、気泡排出中は送液ポンプに気泡が侵入するわけであるが、ポンプを通過した気泡のかたまりは廃棄ラインに排出され、送液先には侵入しない。一つのポンプで気泡の排出と送液を実施するこの構成において好適に使用できるポンプは、気泡が混入しても動作不良に陥らないシリンジポンプ、チューブポンプ等である。送液ポンプとしてシリンジポンプを使用する場合、本発明に係る気泡除去装置は、とくに液体クロマトグラフィー用カラムに対して定量精度の高い送液を与えるのに有用である。
【0025】
また、送液ポンプとして、チューブポンプ等の連続して送液するポンプを使用する場合は、送液中、液面センサが液面の低下を検知したら、直ちに液体出口部と気泡出口部とを流路切り替えバルブの動作を制御して切り替え、気泡出口部から気泡を排出させるように制御することで、トラップ容器内に液体を再度充填させることが可能となる。このように、液体出口部からの送液の期間と、気泡出口部からの気泡排出の期間とが交互に繰り返され、その間送液ポンプは動き続ける。気泡排出の間送液は停止するが、停止する頻度が少なく、送液する時間が十分に長くなるようにトラップ容器の容量、液面センサの位置、気泡排出の時間を調節することにより、一定流速が必要な送液系を提供することができる。また、比較的低流速で長時間送液する溶液中の特定成分を連続モニタするグルコースセンサ等のバイオセンサ、電気化学的検出器、分光学的検出器等の各種フロースルー型検出器を使用する送液系において、トラップ容器に溜まった気泡を自動的に排出する機能をもった本発明の気泡除去装置はとくに有用である。
【0026】
送液ポンプが、気泡の排出を行なう吸引ポンプを兼ねる構成において、気泡出口部から気泡を吸引排出すると、液体貯槽から液体がトラップ容器内に流入してくるので、液面が上昇することが期待されるが、ときには液面が上昇してこない場合がある。これは、液体貯槽中の送液すべき液体が枯渇している可能性を意味する。すなわち、気泡出口部から気泡を吸引排出する所定時間を超えてなお、液面センサから一定の液位に満たない検知信号を制御部が受けたとき、制御部は送液ポンプの運転を停止するように、および/または警報を発するように気泡除去装置を構成することができる。このように構成された気泡除去装置は、診断機器等に使用される薬剤の液切れを監視し、薬剤の交換時期を知らせるためのモニターとしても好適に使用することができる。
【0027】
本発明に係る気泡除去装置は、送液先が液体クロマトグラフ用カラムである場合、とくに有用である。送液ポンプが、気泡の排出を行なう吸引ポンプを兼ねる構成において、気泡を排出しているときは送液先への送液は停止しているので、定量性にすぐれた一様な流動状態を長時間継続することはできない。しかし、グリコヘモグロビンの分離分析に代表される、数分の分析時間で精密な定量性を必要とする液体クロマトグラフィーにおける送液系を実現するために、本発明に係る気泡除去装置は必要にして十分な手段を提供する。すなわち、トラップ容器の容量を適切に設計することにより、送液の1サイクルの間に1回以上の測定を終了させることが十分に可能であり、測定の途中において送液ポンプを停止させず、精密な定量性をもった送液を行なうことができる。また、気泡排出のサイクルの後に再び送液のサイクルが始まったとき、容易に新たな分析を実施することができる。
【発明の効果】
【0028】
密閉型のトラップ容器と液面センサを備えた本発明に係る気泡除去装置を用いることで、送液先に送液すべき液体の組成を変えることなく気泡を除去することが可能である。これにより、たとえばグリコヘモグロビンの分離分析においては、pHのわずかな変動等で分離パターンが変わってしまうといったことを防ぐことができる。またトラップ容器内に溜まった気泡を自動的に検知でき、気泡が測定機器内に入ってしまうトラブルの回避も可能となり、その気泡を排出する操作が容易となる。
【0029】
本発明の気泡除去装置は、送液ポンプをトラップ容器の下流に配置して使用するため、トラップ容器内の気液界面に送液ポンプからの圧力がかかることがなく、送液ポンプの定量注入性を確保することができる。
【0030】
送液ポンプとは別に気泡を排出する吸引ポンプ、ストップバルブおよびそれらを制御する制御部とを設ける構成においては、送液ポンプと気泡排出のための吸引ポンプとが独立に作動するので、気泡排出の最中にも送液ポンプを停止することなく一定流速の安定した送液を継続することができる。
【0031】
気泡出口部と液体出口部とを流路切り替えバルブにより切り替えることで、送液ポンプが、気泡の排出を行なう吸引ポンプを兼ねることが可能となる。したがって装置の小型化が容易になり、また液面センサの信号を制御部に送り流路切り替えバルブの動作を制御することにより、トラップ容器内の気泡の排出を自動的に行い、気泡除去装置を継続して使用することができる。送液ポンプとしてシリンジポンプを使用する場合は、とくに液体クロマトグラフィー用カラムに対して定量精度の高い送液を与えるのに有用である。
【0032】
さらに気泡を吸引排出する所定時間を超えてなお液面が一定の水準に復帰しないとき、制御部が送液ポンプの運転を停止するように、および/または警報を発するように気泡除去装置を構成することができる。このように構成された気泡除去装置は、診断機器等に使用される薬剤の液切れを監視し、薬剤の交換時期を知らせるためのモニターとしても好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図面等により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら図面等に記載した発明に限定されるものではない。
【0034】
図1は、本発明に係る気泡除去装置1の構成および使用形態の一例を示す。本発明に係る気泡除去装置1は、送液先に送液すべき液体を収容した液体貯槽7と送液先との配管の途中に設けられる。液体貯槽7からの配管に接続する液体入口部3からトラップ容器2内に入った液体中に混入している気泡は、トラップ容器2の上層に分離され、トラップ容器の下層部に溜まった液体は、液体出口部4を通って送液ポンプ11により、送液先に送られる。一方、時間の経過とともにトラップ容器内の気泡量は徐々に増加しトラップ容器内の液面が下がってくる。ある一定の量まで液面が下がったところを、液面センサ6で検知する。制御部10は液面センサ6から液面低下を示す信号を受信したとき、ストップバルブ14を開き吸引ポンプ13を作動させ、トラップ容器上部に設けた気泡出口部5から気泡を廃棄ラインに排出する。気泡の除去が進み液面が上昇し、制御部10が液面センサ6から液面上昇を示す信号を受信したら、吸引ポンプ13を停止させるように制御する。このストップバルブ、吸引ポンプおよび制御部を設ける構成においては、送液ポンプ11と気泡排出のための吸引ポンプ13とが独立に作動するので、気泡排出の最中にも送液ポンプ11を停止することなく一定流速の安定した送液を継続することができる。
【0035】
図2は、本発明に係る気泡除去装置1の構成および使用形態の別の一例を示す。図2においては、気泡出口部5に連通する流路8を有する流路切り替えバルブ9を設け、制御部10に接続する。また、送液先の手前の配管上に廃棄ラインへの流路切り替えバルブ12を設け、制御部10に接続する。さらに、制御部10は送液ポンプの動作をモニター・制御できるようにしておいてもよい。
【0036】
送液ポンプが逆止弁15を備えたシリンジポンプ16であり、送液先が液体クロマトグラフ用カラムである場合における本発明に係る気泡除去装置の実施の形態を図2およびフローチャート図3により説明する。ステップS1は、制御部10が液面センサ6から液面低下を示す信号を受信しているかどうかの判断を示す。液面が低下していないときステップS2に進む。S2において変数Nに0を代入する。変数Nとは気泡の吸引排出を連続して何回実施したかを表す気泡排出回数のことであり、液体貯槽の液切れを検知するために使用する。つぎに、流路切り替えバルブ9および12が送液用の位置にあるかどうかをステップS3で判断する。もしそうなっていなければ流路切り替えバルブ9を液体出口部4側に、および/または流路切り替えバルブ12を送液先に切り替える(S4)。このとき、流路切り替えバルブ12の切り替えタイミングを、流路切り替えバルブ9の流路切り換えタイミングよりも数秒遅らせて送液を開始することにより、送液流路内に残留しているかもしれない気泡を廃棄ラインに放出することもできる。流路切り替えバルブの設定確認または切り替えの後、シリンジポンプ16でトラップ容器から液を吸引し(S5)、送液先に吐出して液体クロマトグラフ分析を実施する(S6)。この実施の形態においては、シリンジポンプのワンストロークで1回分(1試料)の分析を実施する。ステップS7において、いま実施した分析が最後の試料ならば終了し、そうでなければステップS1に戻る。S1において、今度は液面が所定位置よりも低下しているとすると、つぎに気泡排出回数Nが所定回数に達していないかどうかを判断する(S8)。ここで、所定回数とは、トラップ容器の容量、液面センサの設置位置、シリンジポンプのストローク容量等によって決められる定数であり、その回数だけトラップ容器の気泡出口部から吸引しても、液体貯槽から液体がトラップ容器の所定液面を超えるまで流れ込まないこと、すなわち液体貯槽の液切れを検知するための判断基準である。もし気泡排出回数Nが所定回数に達しているならば液体貯槽の液切れを意味する警報を発するように構成している(S9)。
【0037】
気泡排出回数Nが所定回数に達していないならば、つぎに流路切り替えバルブ9および12が気泡排出用の位置にあるかどうかをステップS10で判断する。もしそうなっていなければ流路切り替えバルブ9を気泡出口部5側に、および/または流路切り替えバルブ12を廃棄ラインへと切り替える(S11)。流路切り替えバルブの設定確認または切り替えの後、シリンジポンプ16でトラップ容器の気泡出口部から気泡を吸引し(S12)、廃棄ラインに排出する(S13)。つぎに気泡排出回数Nをカウントアップし(S14)再び液面検知のステップS1に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る気泡除去装置の構成および使用形態の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る気泡除去装置の構成および使用形態の別の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る気泡除去装置の一実施形態における動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 気泡除去装置
2 トラップ容器
3 液体入口部
4 液体出口部
5 気泡出口部
6 液面センサ
7 液体貯槽
8 流路
9 流路切り替えバルブ
10 制御部
11 送液ポンプ
12 流路切り替えバルブ
13 吸引ポンプ
14 ストップバルブ
15 逆止弁
16 シリンジポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に含まれている気泡を除去する装置であって、
液体貯槽からの配管に接続する液体入口部と、送液先への配管に接続する液体出口部と、気泡を排出する気泡出口部と、を有する密閉型のトラップ容器と、
トラップ容器内の液位を検知する液面センサと、
トラップ容器の液体出口部からの配管に接続する送液ポンプと、
を備えた気泡除去装置。
【請求項2】
気泡出口部にストップバルブおよび吸引ポンプを備え、さらに、液面センサからの信号に応じてストップバルブおよび吸引ポンプの動作を制御する制御部を備えた請求項1に記載の気泡除去装置。
【請求項3】
液体出口部と送液ポンプとをつなぐ配管の途中に、気泡出口部に連通する流路を有する流路切り替えバルブを備え、さらに、液面センサからの信号に応じて流路切り替えバルブの動作を制御する制御部を備えた請求項1に記載の気泡除去装置。
【請求項4】
送液ポンプがシリンジポンプである請求項3に記載の気泡除去装置。
【請求項5】
制御部がさらに、液面センサからの信号に基づいて送液ポンプの運転および停止、および/または警報の発生を行なう請求項2または3に記載の気泡除去装置。
【請求項6】
送液ポンプによる送液先が液体クロマトグラフ用カラムである請求項1乃至5のいずれかに記載の気泡除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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