説明

気液反応装置

【課題】分離膜を介して、体積比の大きい液体と気体の安定した気液反応を、連続的に、効率的に行うことができる気液反応装置を提供する。
【解決手段】液体タンク51の液体を液体供給部4により気液反応部1の上部に送り、他方、気体を気体供給部2により気液反応部1の下部へ送り、もって、液体と気体とを気液反応部の内部圧力を調整しながら対向流としてその内部で気液反応させ、反応後に発生した気体を、気液反応部1の上部の分離膜11の下部に気層を保持しながら、分離膜11を介し、反応後の気体を気体処理部3に送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体と気体を化学的に反応させる気液反応装置に係り、特に、当該反応を効率的に行うための気液分離機能を備えた気液反応装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
一般に、気液反応では、液体の体積量に対して気体の体積量が10〜2000倍以上多い化学反応が多い。かかる気液反応の具体例として一例をあげると、例えば、紫外線照射と酸化チタンの触媒反応を利用し、p-クロロフェノール(固体を溶解した液体)と酸素(気体)が反応して二酸化炭素(気体)と水(液体)と塩酸(液体)が生成する反応がある。なお、これを化学反応式で示すと、2ClC6HOH+13O→12CO2+4H2H2O+2HClとなる。この反応は、2モルのp-クロロフェノールと13モルの酸素の反応により、12モルの二酸化炭素と4モルの水と2モルの塩酸が生成される化学反応である。
【0003】
これらを、その体積を含めて示すと、269mLの体積を持つ2モルのp-クロロフェノール(密度=1.98g/mLとして算出)と、291.2Lの体積を持つ13モルの酸素との反応により、268.8Lの体積を持つ12モルの二酸化炭素と、72mLの体積を持つ4モルの水と、そして、61.8mLの体積を持つ2モルの塩酸(密度=1.18g/mLとして算出)とが生成したことになる。反応前のp-クロロフェノールと酸素との体積量を比較すると、p-クロロフェノール269mLに対し、酸素291.2Lであり、これら両者の体積比は、1:1083と大きくなり、即ち、その間の体積差が非常に大きいことが分かる。
【0004】
ところで、従来の気液反応装置では、例えば下記の特許文献1にも記述されるように、反応させる液体と気体とを、その内部に微細粒子を充填した反応容器に導入することで、気液反応を効率良く行える気液反応装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−209973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術においては、上述したように、その内部に微細粒子を充填した反応容器内に液体と気体を導入して化学反応をさせるが、しかしながら、液体と気体の導入口が同一の方向に設けられている。このことは、即ち、容器内に導入される液体と気体とが、互いに、同一の流速となる構造である。しかしながら、上述したように、気液反応には液体と気体の体積比が大きい反応が多いため、上記の従来技術になる気液反応装置では、導入される液体と気体の流速が同一となり、これでは化学反応に必要な体積量を接触させることは不可能であるという問題があった。
【0007】
また、化学反応後に発生した気体は、例えば、分離膜によって気体のみが排出されるが、しかしながら、当該分離膜面に液体が付着して液層を形成すると、排気したい気体が当該分離膜まで到達し難くなり、そのため、十分に分離できないという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、より具体的には、体積比の大きい液体と気体の化学反応をさせることが可能で、かつ、反応後に発生した気体を分離膜を介して、連続的に、気液反応部の外部に排出することを可能とし、もって、気液反応を効率的に行うことができる気液反応装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上述した目的を達成するため、まず、液体と気体を化学的に反応させる気液反応装置であって、前記液体と気体とを反応させる気液反応部と、前記気液反応部の内部に配置され、前記反応によって発生した反応後気体を前記液体から分離する分離膜と、前記気液反応部に前記気体を供給する気体供給部と、前記気液反応部に前記液体を供給する液体供給部と、前記分離膜により分離された反応後の気体を、大気中に排出可能な成分値にまで下げる気体処理部と、更に、前記気液反応部において前記気体と反応した後の反応液を蓄える反応液タンクとを備えたものにおいて、前記気体処理部が、前記気液反応部の上部に配管により接続され、前記分離膜が、前記気液反応部の内部であって、前記気体処理部が接続される配管よりも下部に配置され、かつ、前記気液反応部の内部に配置された前記分離膜よりも下部において、前記気液反応部における気液反応後の液体を、前記気液反応部から前記反応液タンクに排出するための配管を配置すると共に、当該配管の下部には、前記気体供給部が配管により接続されている気液反応装置が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、前記に記載した気液反応装置において、前記気体供給部は、前記気液反応部へ供給する気体を微細な気泡として供給することが好ましい。そして、本発明では、更に、前記気液反応部の内部圧力を予め設定した値以下にする内部圧力調整手段を備えていることが好ましい。
【0011】
より具体的には、本発明では、前記内部圧力調整手段は、前記気液反応部の内部圧力を測定する手段と、前記気液反応部へ供給する液体の流量を調整する手段と、制御部とを備えており、前記制御部は、測定した圧力値が予め設定した値より高い場合には、前記液体流量調整手段により前記液体の流量を制御することにより、前記気液反応部の内部圧力を予め設定した値以下にすることが、又は、前記内部圧力調整手段は、前記気液反応部の内部圧力を測定する手段と、前記気液反応部へ供給する気体の流量を調整する手段と、制御部とを備えており、前記制御部は、測定した圧力値が予め設定した値より高い場合には、前記気体流量調整手段により前記気体の流量を制御することにより、前記気液反応部の内部圧力を予め設定した値以下にすることが好ましい。
【0012】
或いは、本発明では、前記内部圧力調整手段は、前記気液反応部の内部における前記分離膜の下部に形成された気体の層を検出する手段と、前記気液反応部へ供給する液体の流量を調整する手段と、制御部とを備えており、前記制御部は、前記検出手段により検出された前記分離膜の下部の気体の層の有無に基づいて、前記液体流量調整手段により前記液体の流量を制御することにより、前記気液反応部の内部圧力を予め設定した値以下にすることが、又は、前記内部圧力調整手段は、前記気液反応部の内部における前記分離膜の下部に形成された気体の層を検出する手段と、前記気液反応部へ供給する気体の流量を調整する手段と、制御部とを備えており、前記制御部は、前記検出手段により検出された前記分離膜の下部の気体の層の有無に基づいて、前記気体流量調整手段により前記気体の流量を制御することにより、前記気液反応部の内部圧力を予め設定した値以下にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
即ち、上述した本発明の気液反応装置によれば、体積比の大きい液体と気体の化学反応をさせることが可能で、かつ、反応後に発生した気体を分離膜を介して、連続的に、気液反応部の外部に排出することを可能とし、もって、気液反応を効率的に行うことが可能となるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例(実施例1)になる気液反応装置の全体構成を示す図である。
【図2】上記気液反応装置における気液反応部における気体と液体との流れを示す一部拡大断面図である。
【図3】本発明の分離膜から排出する反応後気体流量の一例を示す図である。
【図4】本発明の他の実施例(実施例2)になる気液反応装置の全体構成を示す図である。
【図5】本発明の更に他の実施例(実施例3)になる気液反応装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態になる気液反応装置について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
まず、添付の図1には、本発明の一実施例(実施例1)になる気液反応装置の全体の概略構成が示されており、この図1において、符号51は液体タンクを示しており、当該液体タンク51の内部には、気体と反応するための液体が溜められている。なお、この液体は、液体タンク51より配管41を介して、液体供給部4によって吸込まれ、その後、配管43、バルブ21を通って、気液反応部1の外周壁上部に送られる。なお、バルブ21と気液反応部1との間の配管43には、圧力計61が設けられ、もって、配管43内の圧力を測定できるように構成されている。
【0017】
一方、気体供給部2には、パイプ49が配管されており、もって、気体を当該気体供給部2の内部に供給できるように構成されている。更に、気体供給部2には、その他の配管48も配管されており、これにより、当該気体供給部2に送られた気体は、この配管48を介して気液反応部1の下部、望ましくは、底部に送られるように接続されている。
【0018】
そして、図からも明らかなように、上記気液反応部1の内部において、その上部には、所謂、分離膜11が配置され、そして、この分離膜11は、例えば、繊維から構成され、液体と気体とを反応させた後に発生した気体のみを分離するものである。即ち、上記気液反応部1の内部において、当該分離膜11により分離した気体を気液反応部1より排出するため、配管45が配置されており、そして、当該配管45は気体処理装置3に接続され、更に、気体処理装置3には、その後方において、配管46に導かれている。即ち、上記の構成によれば、液体供給部4によって上記気液反応部1の上部に送られた液体は、配管48により気液反応部1の下部より、望ましくは、底部より送られた気体と接触して反応し、その後、当該気液反応部1の下部に接続した配管47を介して、反応液タンク53へ送られる。
【0019】
また、当該装置の一部には、制御部31が設けられている、当該制御部31は、上記圧力計61からの信号(検出圧力)を入力しており、もって、バルブ21の開閉動作を制御することが出来るようになっている。
【0020】
次に、上記にその構成を説明した気液反応装置の運転について、上記の図1と共に、添付の図2をも参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0021】
なお、最初に、気液反応部1において、反応させる液体と気体の流れを対向流とすることについて説明する。
【0022】
まず、液体タンク51内に液体を投入し、この液体を、配管41を介して、上記液体供給部4により吸引する。この吸引された液体は、配管43を通り、更には、上記制御部31によりその開閉が制御されるバルブ21を経て上記気液反応部1の上部へ導かれ、もって、予め設定された流量で供給される。そして、図2にも示すように、供給される液体の液面が気液反応部1の上部に設けられた分離膜11に達する手前の予め定めた位置、例えば、図に「h」で示す距離だけ分離膜11の下面から下がった位置に至る時点で、当該液体の供給を止める。このようにすることにより、それを通して気体が供給される配管48の内部、更には、気体供給部2の内部にも液体が充満される(図1を参照)。
【0023】
次に、上記液体との反応に使用する気体を、上記配管49から気体供給部2へ送る。この送られた気体は、上記気体供給部2の内部で微細な気泡となり、そして、この微細な気泡となった気体が、配管48を介して、上記気液反応部1の下部より、連続的に供給される。このことにより、液体よりも密度の小さい微細気泡の気体は、その浮力により、気液反応部1の上部の分離膜11まで達する。そして、この微細気泡となった気体が分離膜11まで達した時点で、再度、液体供給部4により、液体を供給し始める。なお、このようにして、即ち、微細な気泡として液体と気体とを気液反応部1に供給することによれば、上記分離膜11の下部には、確実に、気体の層を形成することが可能となる。
【0024】
一方、上記分離膜11は、同一圧力で、液体よりも気体を、その体積流量として10〜1000倍程度、多く流すことができるものを使用している。このように、分離膜11では気体を多く流すことができるが、しかしながら、当該分離膜11に液体が付着してその下面に液体の層が形成されると、気体が分離膜11に届き難くなり、そのため、気体が分離し難くなる。しかし、上述したように、分離膜11の下部と液体との間に気層を設けることによれば、気体を分離し易くなる。また、分離膜11の下部に液層ができた状態で気液反応部1内の圧力を上げると、分離膜11を液体が押す力が強くなり、そのため、分離膜11の繊維間に液体が入り込み、気体が分離膜面にたどり着き難くなる。そのため、分離膜11の下部に液層ができた場合には、気液反応部1内の圧力を減少させて分離膜11の下部と液体との間に気層を作り易くする必要がある。
【0025】
そこで、本発明では、気体を気液反応部1に供給し、そして、微細な気泡が分離膜11まで達したら、上記液体供給部4を稼動して、液体を予め定めた流量で供給する。このように液体を供給することにより、気液反応部1では、液体はその上部から下部へ向かって流れ、他方、気体は微細な気泡となり、その浮力により、気液反応部1の下部から上部へ向かって流れることになる。この時、気液反応部1内では、液体は、当該気液反応部1の内部に入った直後から微細な気泡の気体と反応し、この反応を進ませながら、気液反応部1の下部まで流れて行く。
【0026】
即ち、図2にも示すように、配管43より送られた液体は、気液反応部1の内部において、図に符号「e」で示す液流のように、当該気液反応部1の上部から下部に向かって流れ、そして、配管48より送られる反応するための気体「a」と反応し、この反応の結果、気体「b」が発生する。そして、反応後の気体「a」と「b」は、符号「c」及び「d」で示す矢印の方向に移動する。具体的には、これらの気体「a」と「b」は、図示のように、互いに、上記分離膜11に向って、上方向に移動する。即ち、反応により発生した反応後の気体「b」は、その後、上昇し、そして、分離膜11の下部の気層に達し、もって、当該分離膜11を介して配管45へと排出される。
【0027】
なお、上述した微細な気泡を形成するための気体の流量は、液体が気液反応部1に配管されている配管47に達する前に、その反応が終了する程度の流量としておく。また、反応が終了した液体は、気液反応部1から、配管47を介して、反応液タンク53に送られ、そこで蓄えられる。更に、液体と気体の反応後に発生する気体は、分離膜11、更には、配管45を介して、気体処理部3において排出可能な気体に処理され、その後、配管46を通して大気へ放出される。また、上述した分離膜11の下部に形成される気層の幅「h」は、微少な空間であれば足り、例えば、1〜10mm程度であっても、十分に気体を効率よく分離できることが確認されている。
【0028】
上述したように気液反応部1に供給することによれば、液体と気体の流れを、これらを反応させる気液反応部1の内部で、対向流とすることができる。即ち、液体を重力の方向に流し、他方、気体を重力と反対方向に流すことにより、気体の流速を液体の流速よりも速くすることができ、それ故、液体と気体の体積比の大きい反応を可能にすることが出来る。
【0029】
次に、液体と気体を反応させる気液反応部1内の圧力を調整しながら、上記分離膜11の下部に気層を形成し、もって、連続的に反応後の気体を気液反応部1の外部に排出することについて説明する。
【0030】
即ち、上述した構成の気液反応装置において、液体供給部4及び気体供給部2により、気液反応部1の内部に液体や気体を供給すると、当該気液反応部1内の圧力が上昇する。この圧力が上昇すると、気液反応部1の内部において液体と反応して発生した気体の内部圧力が変わらないため、気泡は、外部の圧力が増した分だけ、その径が圧力差により小さくなる。そして、その径が小さくなると、気泡は、その上昇速度が遅くなり、分離膜11にまで達する時間が増大する。このように、分離膜11の下部に気層がでるまでの時間が増大すると、分離膜11の下部には液層が形成され易くなる。なお、分離膜11の下部に液層ができると、上述したように、気体が分離膜11より排出されず、その結果、液体及び気体が供給されている気液反応部1の内部圧力が更に上昇する。そこで、気液反応部1内の圧力は圧力計61により測定して制御部31に送られる。そして、制御部31では、気液反応部1内の圧力が予め設定した圧力よりも上昇した場合、例えば、上記バルブ21を閉じるように制御信号を出力し、もって、バルブ21を閉じるように制御する。このようにすることにより、気液反応部1の内部圧力を制御することが可能となる。
【0031】
なお、反応後に発生した気体は、上述したように、気液反応部1の内部圧力が高くなると、その上昇速度は遅くなるが、しかしながら、分離膜11に到達する。そうすると、分離膜11の下部には気層が形成され、そして、気体は当該分離膜11から排出され、配管45へ導かれる。このように、気体が分離膜11から排出されると、気液反応部1の内部圧力は低下する。そして、この圧力は圧力計61により検出され、制御部31によりバルブ21を開くように制御信号が出され、もって、バルブ21を開くように制御する。
【0032】
このように、本実施例によれば、気液反応部1において、反応させる液体と気体の流れを対向流とすると共に、気液反応部1の内部圧力を制御することにより、分離膜11の下部に、常に、所望の幅の気層を形成し、連続的に反応後の気体を気液反応部1の外部に排出することによれば、液体と気体の反応後に発生する気体を効率よく分離、排出でき、かつ、安定した気液反応を実現することが出来る。
【0033】
更に、添付の図3は、上述した本発明の効果を実際に確認するために行った、分離膜11下部の気層の有無による、反応後の排出気体流量を示したものであり、横軸に時間を取ると共に、その縦軸には余剰空気流量を示している。
【0034】
まず、図3(A)は、分離膜11の下部に上述した気層が保持されていない場合の余剰空気量の変化を示す。この場合、分離膜11の下部に気層が形成されるまでの間は、反応後の排出気体の流量は無く(即ち、余剰空気流量=0)、そのため気液反応部1の内部圧力が上がり、その後、反応後の気体が分離膜11に達して分離膜11の下部に気層を形成すると、気液反応部1の内部が高圧となった分の反応後の排出気体流量(余剰空気流量)が多く排出されることとなり、即ち、気液反応部1内で圧力変動が生じ、安定した運転が出来ないことが分かる。
【0035】
一方、分離膜11の下部に気層が保持されている場合には、反応後の気体は直ちに分離膜11から排出される。即ち、反応後の排出気体流量が安定し、もって、圧力変動の無い安定した運転が可能となる。
【0036】
なお、上記の実施例では、分離膜11の下部に気層が保持するため、気液反応部1の内部圧力を圧力計61により検出し、もって、制御部31によりバルブ21を開くことにより分離膜11の下部に気層を形成するものと説明したが、しかしながら、本発明では、これに限定されることなく、他の手法を使っても良い。
【実施例2】
【0037】
即ち、添付の図4には、本発明の他の実施例(実施例2)になる気液反応装置の構成が示されている。なお、この図4に示す実施例2において、上記図1に示した実施例1と異なる点は、図1ではバルブ21により気液反応部1に供給する液体の流量を制御していたが、図2の構造においては、それに代え、バルブ23を、上記気体供給部2へ気体を供給する配管48の途中に設け、もって、気液反応部1に供給する気体の流量を、当該バルブ23によって制御していることにある。なお、その他の構成については上記実施例1と同様であり、ここでは、記載の重複を避けるため、その説明は省略する。
【0038】
このように、気液反応部1に供給する気体の供給量を調整することによっても、やはり、気液反応部1の内部圧力上昇を抑えることができる。即ち、この実施例2の構造によっても、上記実施例1と同様、液体と気体の反応後に発生する気体を効率よく分離、排出でき、かつ、安定した気液反応を実現することが出来る。
【実施例3】
【0039】
更に、添付の図5には、本発明の他の実施例(実施例3)になる気液反応装置の構成が示されている。この図5に示す実施例3の構成が、上記図1に示した実施例1の構造と異なる点は、上記図1ではバルブ21により液体の流量を制御していたのに対し、図5に示す構成においては、気層を検出することが出来るセンサ65により、分離膜11の下部に形成される気層を直接測定し、そして、当該気層検出センサ65の検出信号に基づき、気層が無くなったと判断すると、前記制御部31によりバルブ21へ信号を出し、液体供給部4から供給される液体の流量を調節するようにする。又は、ここでは図示しないが、上記図4に示す実施例2と同様に、上記気体供給部2へ気体を供給する配管48の途中に設け、もって、気液反応部1に供給する気体の流量を、当該バルブ23によって制御してもよい。
【0040】
なお、この場合、上述した気層を検出するセンサ65としては、例えば、光の屈折率の違いを検知できるセンサなどを利用することによれば、分離膜11の下部に形成される気層を測定することが可能である。このようにすることによっても、上記の実施例1と同様、気液反応部1の内部圧力の上昇を抑えることができる。即ち、上記実施例1と同様、液体と気体の反応後に発生する気体を効率よく分離、排出でき、かつ、安定した気液反応を実現することが出来る。
【0041】
以上に詳述した説明からも明らかなように、本発明によれば、液体と気体とを反応させる気液反応部に、液体と気体とを、気液反応部の内部圧力を調整しながら対向流として流し、そして、当該反応後に発生した気体を、気液反応部の上部に設けた分離膜により分離して、気液反応部外部に排出するようにしたことにより、液体と気体を対向流で気液反応部に流すことで体積比の大きい液体と気体の化学反応をさせることが出来、反応後に発生した気体を分離膜の下部に気層をつくるように流量を制御して、反応後に発生した気体を分離膜を介して連続的に気液反応部外部に排出することにより、効率的な気液反応を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1…気液反応部、2…気体供給部、3…気体処理部、4…液体供給部、11…分離膜、21,23…バルブ、31…制御部、41,43,45,46,47,48,49…配管、51…液体タンク、53…反応液タンク、61…圧力計、65…気層検出センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と気体を化学的に反応させる気液反応装置であって、
前記液体と気体とを反応させる気液反応部と、
前記気液反応部の内部に配置され、前記反応によって発生した反応後気体を前記液体から分離する分離膜と、
前記気液反応部に前記気体を供給する気体供給部と、
前記気液反応部に前記液体を供給する液体供給部と、
前記分離膜により分離された反応後の気体を、大気中に排出可能な成分値にまで下げる気体処理部と、
更に、前記気液反応部において前記気体と反応した後の反応液を蓄える反応液タンクとを備えたものにおいて、
前記気体処理部が、前記気液反応部の上部に配管により接続され、
前記分離膜が、前記気液反応部の内部であって、前記気体処理部が接続される配管よりも下部に配置され、かつ、
前記気液反応部の内部に配置された前記分離膜よりも下部において、前記気液反応部における気液反応後の液体を、前記気液反応部から前記反応液タンクに排出するための配管を配置すると共に、当該配管の下部には、前記気体供給部が配管により接続されていることを特徴とする気液反応装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載した気液反応装置において、前記気体供給部は、前記気液反応部へ供給する気体を微細な気泡として供給することを特徴とする気液反応装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載した気液反応装置であって、更に、前記気液反応部の内部圧力を予め設定した値以下にする内部圧力調整手段を備えていることを特徴とする気液反応装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載した気液反応装置において、前記内部圧力調整手段は、前記気液反応部の内部圧力を測定する手段と、前記気液反応部へ供給する液体の流量を調整する手段と、制御部とを備えており、前記制御部は、測定した圧力値が予め設定した値より高い場合には、前記液体流量調整手段により前記液体の流量を制御することにより、前記気液反応部の内部圧力を予め設定した値以下にすることを特徴とする気液反応装置。
【請求項5】
前記請求項3に記載した気液反応装置において、前記内部圧力調整手段は、前記気液反応部の内部圧力を測定する手段と、前記気液反応部へ供給する気体の流量を調整する手段と、制御部とを備えており、前記制御部は、測定した圧力値が予め設定した値より高い場合には、前記気体流量調整手段により前記気体の流量を制御することにより、前記気液反応部の内部圧力を予め設定した値以下にすることを特徴とする気液反応装置。
【請求項6】
前記請求項3に記載した気液反応装置において、前記内部圧力調整手段は、前記気液反応部の内部における前記分離膜の下部に形成された気体の層を検出する手段と、前記気液反応部へ供給する液体の流量を調整する手段と、制御部とを備えており、前記制御部は、前記検出手段により検出された前記分離膜の下部の気体の層の有無に基づいて、前記液体流量調整手段により前記液体の流量を制御することにより、前記気液反応部の内部圧力を予め設定した値以下にすることを特徴とする気液反応装置。
【請求項7】
前記請求項3に記載した気液反応装置において、前記内部圧力調整手段は、前記気液反応部の内部における前記分離膜の下部に形成された気体の層を検出する手段と、前記気液反応部へ供給する気体の流量を調整する手段と、制御部とを備えており、前記制御部は、前記検出手段により検出された前記分離膜の下部の気体の層の有無に基づいて、前記気体流量調整手段により前記気体の流量を制御することにより、前記気液反応部の内部圧力を予め設定した値以下にすることを特徴とする気液反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−88033(P2011−88033A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241257(P2009−241257)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】