説明

気相中でのイソシアネートの製造方法

【課題】大工業的規模で気相中で第一級アミンとホスゲンとの反応によってイソシアネートを製造するための方法を提供する。
【解決手段】第一級アミンおよびホスゲンを管状反応器中でアミンの沸騰温度を上廻る温度で気相中で反応させ、反応体の流れをノズル装置により反応空間内に流入させ、それによって1つの反応体の流れを反応空間の軸線に対して平行に整列されたn≧1個のノズルを介して反応空間に供給し、第2の反応体の流れを、ノズルを取り囲む自由空間を介して反応空間に供給する。
【効果】200時間の試験時間後、TDA供給管路内の圧力と凝縮工程からのガス出口での圧力との圧力差は、11ミリバールであり、したがって大規模な工業的測定装置の測定精度の範囲内で不変のままであった。検査は、固体の沈殿物を示さなかった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相応する第一級アミンとホスゲンとを気相中で反応させることによって第一級イソシアネートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネートは、大量に製造されており、主にポリウレタンを製造するための出発物質として役立っている。このイソシアネートは、通常、相応するアミンとホスゲンとの反応によって製造される。イソシアネートを製造するための1つの技術は、アミンをホスゲンと気相中で反応させることである。アミンとホスゲンとを気相中で反応させることによってイソシアネートを製造するために様々な方法が、当該技術水準から公知である。
【0003】
英国特許第1165831号明細書には、イソシアネートを気相中で反応させるための方法が記載されており、この場合蒸気状アミンとホスゲンとの反応は、150℃〜300℃の温度で、機械的攪拌機を装備した管状反応器中で実施され、加熱ジャケットを介して温度制御することができる。英国特許第1165831号明細書中に開示された反応器は、薄膜蒸発器に類似しており、この薄膜蒸発器の攪拌機は、反応空間内に流入するガスと反応空間内に存在するガスとを混合し、一方で、また、管壁上でのポリマー材料の形成を阻止するために加熱ジャケットによって取り囲まれている管状反応器の壁をブラッシングする。このような形成は、熱伝達を困難にする。英国特許第1165831号明細書の教示によれば、反応空間内に流入する反応体(エダクト)流の混合は、専ら攪拌機を毎分約1000回転で運転することによって達成される。この攪拌機は、反応器の壁を通過するシャフトにより外部から駆動される。英国特許第1165831号明細書中に開示された方法の欠点は、反応器の壁を通過するシャフトにより外部から駆動される高速型攪拌機の使用にあり、それというのもホスゲンが使用される場合、このような攪拌機には、安全性の理由のために反応器をシールするための極めて高い費用が必要とされるからである。別の欠点は、使用される回転速度が高いにも拘わらず長い混合時間をまねく攪拌機によってのみガスの混合が達成されることにある。この長い混合時間は、反応体の幅広い接触時間分布を生じ、この接触時間分布は、欧州特許出願公開第570799号明細書の教示によれば、さらに固体の望ましくない形成をまねく。
【0004】
欧州特許出願公開第289840号明細書には、アミンを円筒状の空間内で可動部材なしに攪乱流で200℃〜600℃の温度で10-4秒程度の反応時間に亘って気相ホスゲン化することによって(環状)脂肪族ジイソシアネートを製造することが記載されている。反応器の壁を通過する駆動装置を装備した可動部材を取り除くことによって、ホスゲンが流出する危険が減少される。欧州特許出願公開第289840号明細書の教示によれば、ガス流は、管状反応器の一端でノズルおよびノズルと混合管との間の環状間隙を通して反応器中に導入され、それによって混合される。従って、欧州特許出願公開第289840号明細書には、さらに混合技術の開発について開示されている。ガスの混合は、有利には英国特許第1165831号明細書に開示された攪拌機の代わりに静的混合装置、即ちノズルおよび環状間隙によって行なわれる。欧州特許出願公開第289840号明細書の教示によれば、この欧州特許出願公開明細書中に開示された方法の実施が可能であるためには、管状反応器の寸法決定および反応空間内での流速が、少なくとも2500、好ましくは少なくとも4700のレイノルズ数によって特性決定された攪乱流が反応空間内で優勢であるように存在することは、本質的なことである。欧州特許出願公開第289840号明細書の教示によれば、この攪乱は、一般に、ガス状反応成分が90m/秒を上廻る流速で反応空間を通過する場合に保証される。円筒状の空間(管)内での攪乱流のために、壁に隣接した流体要素を無視した場合には、管内での比較的良好な流れの等分配および比較的狭い滞留時間分布が達成される。欧州特許出願公開第570799号明細書の記載によれば、この事実は、固体の形成の減少をまねく。欧州特許出願公開第289840号明細書中に開示された方法の欠点は、殊に芳香族アミンが場合により極めて長い混合時間および極めて長い反応管中でのみ使用される場合に、必要とされる高い流速がアミンの完全な反応に必要とされる滞留時間を実現させることにある。
【0005】
欧州特許出願公開第570799号明細書には、芳香族ジイソシアネートの製造方法が開示されており、この場合、関連したジアミンとホスゲンとの反応は、管状反応器中で、ジアミンの沸騰温度より高い温度で、0.5〜5秒の反応体の平均接触時間内で実施される。前記開示に記載されているように、長すぎる反応時間と短すぎる反応時間の双方は、固体の望ましくない形成をまねく。従って、平均接触時間からの平均偏差が6%未満の方法が開示されている。
【0006】
この接触時間分布の維持は、4000を上廻るレイノルズ数または100を上廻るボーデンシュタイン数(Bodenstein number)によって特性決定された管の流れ中での反応を実施することによって達成される。欧州特許出願公開第570799号明細書の教示によれば、それによって約90%の栓流が達成される。全ての流れの体積部は大部分が同じ流動時間を有し、したがって全ての体積部の滞留時間は、ほぼ等しく、反応成分間での接触時間分布の予想される最も少ない広がりが起こる。
【0007】
しかし、また、欧州特許出願公開第570799号明細書の教示によれば、方法が実地で実施される場合に平均滞留時間からのずれは、反応成分を混合するのに必要とされる時間によって本質的に測定され、欧州特許出願公開第570799号明細書には、反応成分が依然として均一に混合されないままであれば、反応成分と接触しえないままのガス体積は、なお反応空間内に存在し、したがって前記混合に依存して、体積部の流動時間が同じ場合には、反応成分の異なる接触時間が得られる。従って、欧州特許出願公開第570799号明細書の教示によれば、反応成分の混合は、0.1〜0.3秒の時間で10-3の分離度を生じ、この場合この分離度は、混合の不完全さの基準として役立つ(例えば、Chem.-Ing,-Techn. 44(1972), p. 1051 et seq,; Appl. Sci. Res. (the Hague) A3(1953), p. 279参照)。欧州特許出願公開第570799号明細書には、原理的に可動混合構成成分および静的混合構成成分を有する混合ユニットを基礎とする公知方法を、適正に短い混合時間を発生させるために使用しうることが開示されている。欧州特許出願公開第570799号明細書の記載によれば、ジェットミキサーの原理(Chemical-Ing-Techn. 44(1972)p. 1055, Fig.10)の使用は、殊に十分に短い混合時間を提供する。
【0008】
ジェットミキサーの原理(Chemical-Ing-Techn. 44(1972)p. 1055, Fig.10)で、2つの反応体の流れIおよびIIは、管状反応器に供給される。反応体の流れIは、中心のノズルを介して供給され、および反応体の流れIIは、中心のノズルと管状反応器の壁との間の環状空間を介して供給される。この記載内容では、反応体の流れIの流速は、反応体の流れIIの流速と顕著に比較されている。更に、ノズル直径に依存する時間および複数の反応体の流速の差に依存する時間の後、または相応する行程の後、反応体の完全な混合が達成される。
【0009】
ジェットミキサーの原理の欠点は、しばしば管状反応器として構成されている反応器の寸法が増大されると、しばしば平滑なジェットノズルとして構成されている混合ノズルの寸法も増大させることが必要になることである。しかし、平滑なジェットノズルの直径が増大された場合には、中心のジェットの混合速度は、必要とされるよりいっそう大きな拡散通路のために減少され、したがって混合時間は、相応して延長される。更に、逆混合の危険が増加し、上記したように第一級アミンとホスゲンとを気相中で反応させた場合には、この逆混合は、ポリマー不純物の形成をまねき、したがって反応器中での固体のケーキングをまねく。従って、第一級アミンの気相ホスゲン化を大工業的規模で使用される方法に変更した場合には、幾何学的寸法を大工業的規模に適している寸法の程度に簡単に変更することは、不可能である。それというのも、内部管の直径は、必要とされる短い混合時間での反応体の混合が付加的な基準なしではもはや不可能であるような程度に増大させなければならないからである。その理由は、それ故に、ジェットミキサーの原理(Chemical-Ing-Techn. 44(1972)p. 1055, Fig.10)を用いて基本的に欧州特許出願公開第570799号明細書に開示されたような気相ホスゲン化のために管状反応器を使用して流れの最適化の方向に対して正しい角度で長い距離をもつことは、静的混合装置のさらなる開発による反応体流の混合を改善することを目的とする膨大な数の出願の対象であるからである。
【0010】
欧州特許出願公開第1526129号明細書の教示によれば、中心のノズル内の反応体の流れの攪乱が増加することは、反応体の混合、ひいては気相反応全般に対してプラスの影響を及ぼす。よりいっそう良好に混合された結果として、副生成物を形成する傾向は、減少し、滞留時間、ひいては必要とされる反応器の構造長さは、著しく短縮される。欧州特許出願公開第1526129号明細書には、渦巻きコイルが中心ノズル中の攪乱を発生させる取付け要素として使用される場合に、元来の長さの42%に混合帯域を短縮することが開示されている。
【0011】
欧州特許出願公開第1555258号明細書の教示によれば、第一級アミンの気相ホスゲン化で反応器の寸法の増加およびこれに関連する、混合時間の延長の結果としての混合ノズルの寸法の増加を生じる欠点は、1つの反応体の流れが同心的に配置された環状間隙を介して高速度で他の反応体の流れに注入される場合に排除されることができる。欧州特許出願公開第1555258号明細書の教示によれば、この事実は、混合のための短い拡散通路および極めて短い混合時間を生じる。欧州特許出願公開第1555258号明細書には、こうして気相中での第一級アミンとホスゲンとの反応は、望ましいイソシアネートのための高い選択性で実施されてよく、ポリマー不純物の形成およびケーキングが著しく減少されることが教示されている。また、欧州特許出願公開第1555258号明細書には、混合点での成分の比較可能な速度で、著しく短い反応空間は、常用の平滑なジェットノズルが使用される場合よりも反応系中で最大温度を達成するのに必要とされることが開示されている。従って、第一級アミンをホスゲンと反応させて相応するイソシアネートを生じることは、公知技術水準と比較して著しく短い反応器中で実施されることができる。開示された方法の欠点は、中心の流れが中心の環状間隙に亘って極めて均一に分布されなければならず、第2の反応体の流れが外部の環状空間内および内部の環状空間内で極めて均一に分布されなければならず、反応空間内での不安定な反応方法が回避されなければならないことにある。この不安定な反応方法は、欧州特許出願公開第1362847号明細書の教示によれば、温度が変動すること、および反応空間内で温度分布が非対称であることから検出することができる。2つの反応体の流れに必要とされる極めて均一な分布は、構造の点で高価である。更に、工業的規模のイソシアネートの合成中に完全には除去することができない極めて少量の固体の形成は、環状間隙の閉塞をまねき、したがってイソシアネートプラントの有効性を減少させる。
【0012】
欧州特許出願公開第1449826号明細書の教示によれば、反応器の寸法を増大させること、およびこれに関連して、混合ノズルの寸法が増大することから生じる欠点は、中心の流れを幾つかのノズルを介して分配することによって回避することができる。欧州特許出願公開第1449826号明細書には、相応するジアミンのホスゲン化によるジイソシアネートの製造法が開示されており、この場合には、場合により不活性ガスまたは不活性の溶剤の蒸気で希釈された蒸気状ジアミン、およびホスゲンは、200℃〜600℃の温度に別々に加熱され、混合され、および管状反応器中で反応される。この方法では、管状反応器の軸線と平行に整列されたn≧2の数のノズルは、n個のノズルを介して管状反応器に供給されるジアミンを含有する流れおよび残りの自由空間を介して管状反応器に供給されるホスゲンの流れを有する管状反応器中に配置されている。欧州特許出願公開第1449826号明細書の教示によれば、同じ断面積を有する1個のノズル(個々のノズル)と比較した混合時間の短縮化は、ここに開示された方法によって達成される。著しく短い混合時間により、反応体の接触時間の分布に対してプラスの影響が存在する。反応体の接触時間と同じ、著しく短い混合時間は、必要とされる反応空間内での滞留時間著しく短縮し、著しく短い長さの反応空間の使用を可能にする。
【0013】
欧州特許出願公開第1449826号明細書中に開示された方法を大規模の工業的寸法に変更すると、必要とされる短い混合時間は、例えば他の選択可能なノズル配置が混合装置として使用される場合であってもWO 2008/055898の教示により必要とされているように、反応空間内への反応体の相応して増加された流入速度によってのみ達成することができる。増加された流入速度の欠点は、殊に芳香族アミンが使用される場合に、アミンの完全な反応に必要とされる滞留時間を実現させる高い流速は、極めて長い混合時間および極めて長い反応管中でのみ可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】英国特許第1165831号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第570799号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第289840号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1526129号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1555258号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1362847号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1449826号明細書
【特許文献8】WO 2008/055898
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Chem.-Ing,-Techn. 44(1972), p. 1051 et seq
【非特許文献2】Appl. Sci. Res. (the Hague) A3(1953), p. 279
【非特許文献3】Chemical-Ing-Techn. 44(1972)p. 1055, Fig.10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の対象は、反応体の同じ流入速度で混合ユニットの閉塞の同時の低い危険を有する反応体の急速な混合を含む、大工業的規模で気相中で第一級アミンとホスゲンとの反応によってイソシアネートを製造するための方法を可能にすることであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
意外なことに、第一級アミンおよびホスゲンを管状反応器中でアミンの沸騰温度を上廻る温度で気相中で反応させ、反応体の流れをノズル装置により反応空間内に流入させ、それによって1つの反応体の流れを反応空間の軸線に対して平行に整列されたn≧1個のノズルを介して反応空間に供給し、第2の反応体の流れを、ノズルを取り囲む自由空間を介して反応空間に供給する方法によって前記目的を達成することが可能であった。反応空間は、少なくとも1つの可動の混合装置を備えている。
【0018】
意外なことに、ジェットミキサーの原理と可動の混合装置との組合せによって、大工業的規模での反応体の寸法および単数の混合ノズル/複数の混合ノズルの寸法の増大は、反応体の流入速度の増加なしに、または閉塞に敏感なノズル構成の使用なしに反応体の流れの十分に短い混合時間で達成されてもよい。静的混合装置と可動の混合装置との有利な組合せは、当業者によって予想することができなかった。それというのも、公知技術水準によれば、可動の混合装置の使用は、急速な気相反応には有利であることが証明されていなかったからである。
【0019】
本発明には、相応する第一級アミンとホスゲンとの反応によって第一級イソシアネートを製造する方法を提供する。前記方法で、第一級アミンは、アミンの沸騰温度を上廻る温度で管状反応器中でホスゲンと反応され、反応空間を有する前記管状反応器中で、
a)ホスゲンを含有する少なくとも1つの反応体の流れPおよびアミンを含有する少なくとも1つの反応体の流れAを、管状反応器の回転軸と平行に整列されたn≧1個の数のノズルおよびこのノズルを取り囲む自由空間を含むノズル装置を介して反応空間に供給し、および
b)反応体の流れAまたはPの1つをノズルを介して反応空間に供給し、他の反応体の流れをノズルを取り囲む自由空間を介して反応空間に供給し、および
c)反応空間は、少なくとも1つの可動の混合装置を備えている。
【0020】
管状反応器は、通常、本質的に流れ方向に対して回転対称である反応空間を有する。本明細書中で"回転対称"は、従来技術(例えば、WO 2007/028715A1、p.3,1.28以降参照)によれば、本体または空間、本明細書中では反応空間、が回転軸を中心に回転した場合に回転対称を有することを意味する。これは、例えば回転軸に対し2回対称(C2)、回転軸に対し3回対称(C3)または回転軸に対し4回対称(C4)、または有利に完全回転対称(C∞)であることができる。従って、例えば楕円に近似した領域は、回転軸に対し2回対称である。もう1つの例として、円に近似した領域は、完全回転対称である。
【0021】
特に好ましくは、本発明に使用される管状反応器は、場合によっては断面でのみ、流れ方向に拡大し、流れ方向に一定のままであり、および/または流れ方向に減少する、貫流横断面領域を有するものである。
【0022】
卵形であるかまたは任意の望ましい閉鎖された平面状多角形から構成された流動断面を有する反応空間は、好ましくはないが、しかし、原理的には可能でもある。
【0023】
本発明の記載内容で、"管状反応器の軸線に対して平行に整列されたノズル"は、特殊なノズルの中心軸線の整列と反応器の中心軸線の整列との角度のずれが5°未満、有利に3.5°未満であることを意味するものと理解すべきである。
【0024】
本発明の好ましい実施態様において、管状反応器の軸線に対して平行に整列されたn個のノズルは、nが1を上廻る正の整数である場合に、有利に同じ直径を有する。個々のノズルは、特に有利には、生産の公差の枠組みの中で構成上同一である。
【0025】
管状反応器の軸線に対して平行に整列されたn個のノズルは、nが1を上廻る正の整数である場合に、好ましくは反応器の軸線を取り囲む環状のリング上に配置されている。もう1つの実施態様において、nが2を上廻る個々のノズルが使用される場合には、n−1個の個々のノズルは、同心的に配置されたノズルを取り囲む環状リング上に配置されていてよい。殊に、管状反応器の軸線に対して平行に整列されたn個のノズルは、nが1を上廻る正の整数である場合に、回転対称に配置されている。
【0026】
本発明の別の実施態様において、管状反応器の軸線に対して平行に整列されたn個のノズルは、nが少なくとも1の正の整数である場合に、可撓性または硬質の接続片を介して反応体の流れのノズルの入口にそれぞれ接続されている。硬質の接続片は、パイプライン片であることができ、可撓性の接続片は、例えばホースまたは好ましくは補償器であることができる。
【0027】
本発明による方法の別の好ましい実施態様において、アミン(即ち、アミンを含有する少なくとも1つの反応体の流れ)は、管状反応器の軸線に対して平行に整列されたn個のノズルを介して反応器に供給され、この場合nは、少なくとも1の正の整数である。この実施態様において、ホスゲン(即ち、ホスゲンを含有する少なくとも1つの反応体の流れ)は、ノズルを取り囲む空間内、即ち反応器の壁によって区別された空間内および少なくとも1つのアミン用ノズル内に導入される。アミンの流れが1つだけのノズルを介して反応空間に供給される場合、即ちn=1、には、このノズルは、好ましくは反応器中の反応空間の長手方向の軸線上に同心的に配置されている。
【0028】
本発明による方法の別の好ましい実施態様において、ホスゲン(即ち、ホスゲンを含有する少なくとも1つの反応体の流れ)は、管状反応器の軸線に対して平行に整列されたn個のノズルを介して反応器に供給され、この場合nは、少なくとも1の正の整数である。この実施態様において、アミン(即ち、アミンを含有する少なくとも1つの反応体の流れ)は、ノズルを取り囲む空間内、即ち反応器の壁によって区別された空間内および少なくとも1つのホスゲン用ノズル内に導入される。ホスゲンの流れが1つだけのノズルを介して反応器に供給される場合、即ちn=1、には、このノズルは、好ましくは反応器中の反応空間の長手方向の軸線上に同心的に配置されている。
【0029】
本発明による方法において、反応体の流れは、有利に反応空間内に連続的に供給され、好ましくは、2〜20、よりいっそう好ましくは3〜15、特に好ましくは4〜12の速度比で反応空間内に流入する。好ましくは、管状反応器の軸線に対して平行に整列されたn個のノズルを介して反応空間に供給される反応体の流れは、よりいっそう高い流速で反応器中に流入する。この反応体の流れは、特に好ましくはアミン含有の反応体の流れAである。
【0030】
本発明による方法の特殊な実施態様において、管状反応器の軸線に対して平行に整列されたn≧1個のノズルまたはn=1に対して反応器中に有利に同心的に配置されたノズルは、1つの角度で流れの中に導入された、付加的な攪乱流発生部材、例えばコイル、渦巻きコイル、または環状または方形の板を装備していてよい。
【0031】
更に、本発明による方法の好ましい実施態様において、反応器の壁によって区別された、ノズルを取り囲む自由空間およびn≧1個のノズルは、この空間の全断面に亘って前記空間内での流れの速度を平均化する、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個の流れ等化器および/または流れ整流器を備えている。例えば、穿孔トレイ、スクリーン、燒結金属、フリットまたはばら材料、有利に穿孔トレイは、流れ等化器として使用されることができる。例えば、欧州特許出願公開第1362847号明細書に開示されているように、流れ整流器としてのハネカム構造体および管状構造体の使用は、同様に可能である。
【0032】
静的混合装置とは異なり、本発明の範囲内の可動の混合装置は、回転するかまたは振動によって可動する要素を意味するものと理解すべきである。適した混合装置の例は、攪拌機、例えばプロペラ型攪拌機、角形羽根攪拌機(angled blade stirrers)、ディスク型攪拌機、インペラ式攪拌機、クロスアーム型攪拌機(cross-arm stirrers)、アンカー型攪拌機、ブレードまたはグリッド型攪拌機、コイル型攪拌機およびのこぎり歯ブレード型攪拌機(toothed disc stirrers)を含む。この攪拌機は、シャフト上に取り付けられた、1個以上のウィング、ブレード、ディスク、アームまたはアンカーを有していてよい。ウィングまたはブレードは、好ましい。ウィング、ブレード、ディスク、アンカーまたはアンカーは、シャフトに沿って種々の位置に取り付けられていてよく、好ましくは、シャフトに沿って同じ位置に取り付けられている。前記のウィング、ブレード、ディスク、アンカーまたはアンカーは、特に好ましくはシャフトの端部に取り付けられている。好ましくは、可動の混合装置は、1個を上廻るウィングまたは1個を上廻るブレードを有する。ウィングまたはブレードは、ある角度をなしてかまたは真っ直ぐに設置されていてよく、および任意の望ましい形状または曲線を有することができる。
【0033】
可動の混合装置の回転速度は、低速であってもよいし、高速であってもよく、この場合高速は、毎分1000回転(rpm)を上廻るものとして定義され、低速は、毎分1000回転を下廻るものとして定義される。可動の混合装置は、好ましくは低速回転を有する。
【0034】
少なくとも1つの可動の混合装置は、種々の方法によって駆動させることができる。殊に、前記の可動の混合装置は、外部の駆動装置によって駆動されることができるか、或いは反応空間に供給された反応体の少なくとも1つのパルスを使用することによって駆動されることができる。特に好ましくは、少なくとも1つの可動の混合装置は、特殊な混合装置の可動の取付け部材、例えばシャフトが反応器の壁を貫通しないように駆動される。これは、熱いホスゲンガスが使用される場合に安全性の視点から特に重要である。
【0035】
本発明の範囲内の外部の駆動装置は、反応器の外側に配置されている駆動装置を意味するものと理解すべきである。適当な外部の駆動装置の例は、モーター、殊に電気モーターを含み、この場合駆動エネルギーは、好ましくは可動の混合装置に間接的に伝達される(即ち、可動の混合装置の可動要素は、反応器の壁を貫通していない)。本明細書中で挙げることができる適当な間接的な駆動手段は、例えば電磁結合された駆動装置である。
【0036】
反応体の流れの少なくとも1つのパルスは、少なくとも1つの可動の混合装置を駆動させるために使用されてもよい。このために、一面で、管状反応器の回転軸と平行に整列されたn≧1の数のノズルによって、および/またはノズルを取り囲む自由空間によって反応空間内に流入した反応体の流れAおよび/またはPのパルスは、可動の混合装置を駆動させるために使用されることができ、即ちこの場合には、反応空間内での流れのパルスは、反応空間内で可動の混合装置を駆動させるために使用される。反応空間内の少なくとも1つの可動の混合装置は、好ましくは少なくとも1つのシャフトを介して駆動プロペラに結合されていてもよく、この場合この駆動プロペラは、反応空間の外側にある。好ましくは、駆動プロペラは、流れ方向に反応空間内への流入前に、殊に反応体の流れAおよび/または反応体の流れPの中に存在する。殊に、好ましい実施態様において、駆動プロペラは、管状反応器の軸線と平行に整列されたn≧1の数のノズルを介して供給された反応体の流れの中に存在する。別の好ましい実施態様において、駆動プロペラは、ノズルを取り囲む自由空間の領域を通して供給される反応体の流れの中に存在する。
【0037】
駆動プロペラは、1つ以上のウィング、ブレード、ディスク、アームまたはアンカーを有することができる。ウィングまたはブレードは、好ましい。好ましくは、駆動プロペラは、1つを上廻るウィングまたは1つを上廻るブレードを有し、これらは、好ましくはある角度をなしてシャフト上に取り付けられている。
【0038】
1つを上廻る可動の混合装置が使用される場合には、幾つかの可動の混合装置は、好ましくは同じ方法によって駆動され、即ち可動の混合装置は、好ましくは外部の駆動装置によって駆動されるか、或いは反応体の流れの少なくとも1つのパルスを使用することによって駆動される。好ましくは、それぞれの可動の混合装置は、別々の駆動プロペラを有するが、しかし、1つの駆動プロペラが幾つかの可動の混合装置を駆動することも考えられる。好ましくは、外部の駆動装置は、1つの可動の混合装置だけを駆動するが、しかし、1つの外部の駆動装置が幾つかの可動の混合装置を駆動することも考えられる。好ましくは、それぞれの可動の混合装置は、1つの駆動プロペラに結合されているが、しかし、それぞれの可動の混合装置が1つを上廻る駆動プロペラによって駆動されることも考えられる。
【0039】
可動の混合装置は、反応空間内に存在する。本発明の範囲内で、反応空間は、管状反応器の軸線と平行に整列されたn≧1の数のノズルからの流れの方向で流れの出口から開始し、この場合nは、少なくとも1の正の整数である。管状反応器の軸線と平行に整列されたn≧1の数のノズルからの流れの出口で、反応体の流れの混合は、気相中の反応速度により開始し、この場合第一級アミンのホスゲン化は、直ちに開始する。
【0040】
少なくとも1つの可動の混合装置は、反応帯域中の任意の望ましい位置に配置されていてよい。好ましくは、少なくとも1つの可動の混合装置は、流れ方向に5×D未満、特に好ましくは3×D未満、反応空間の開始部から離れている。本明細書の範囲内で、Dは、ノズルからの出口開口のレベルで反応空間の最大直径を表わす。幾つかの可動の混合装置が反応帯域中に存在する場合には、前記の可動の混合装置は、好ましくは反応帯域中で同じ位置を有する。
【0041】
可動の混合装置は、反応器の軸線に対して同心的に配置されていてよいが、しかし、反応器の軸線に関連して可動の混合装置の偏心配置も考えられる。
【0042】
1つを上廻る可動の混合装置が反応空間内で使用される場合には、前記の可動の混合装置は、好ましくは反応器の軸線の周囲の環状リング上に配置されている。もう1つの実施態様において、可動の混合装置は、同心は位置された可動の混合装置の周囲の環状リング上に配置されていてよい。1つを上廻る可動の混合装置が使用される場合には、この可動の混合装置の配置は、好ましくは対称的である。
【0043】
別の好ましい実施態様において、反応器は、反応空間の軸線と平行に整列されたn>1の数のノズルおよびm≧1の数の可動の混合装置を有し、但し、nおよびmは、それぞれ正の整数であり、この場合全体の配置は、好ましくは対称的である。別の特に好ましい実施態様において、反応空間の軸線と平行に整列されたn>1の数のノズルおよびm≧1の数の可動の混合装置の配置は、好ましくは反応器の軸線に関連して対称的であり、但し、nおよびmは、それぞれ正の整数であるものとする。
【0044】
少なくとも1つの可動の混合装置のウィング、ブレード、ディスク、アームまたはアンカーは、種々の長さを有することができる。完全な回転対称によって特性決定された反応空間が使用される場合には、最大長は、反応器の直径の半分によって制限されている。これとは異なり、回転軸に対し2回対称C2によって特性決定された反応空間内が使用される場合には、前記の取付け部材の最大長は、よりいっそう短い反応器の直径の半分の直径から生じる。好ましくは、ウィング、ブレード、ディスク、アームまたはアンカーは、反応空間の壁から0.01×D、特に好ましくは0.1×Dの距離を有し、この場合Dは、上記に定義された意味を有する。
【0045】
反応空間内の少なくとも1つの可動の混合装置によって、1つの反応体の流れが反応空間の軸線と平行に整列されたn≧1の数のノズルを介して反応空間に供給され、および第2の反応体の流れが残りの反応空間を介して反応空間に供給されるような複数の反応体を混合することは、改善される。
【0046】
反応空間の軸線と平行に配置された少なくとも1つのノズルの軸線上に少なくとも1つの可動の混合装置が配置されている場合には、改善された混合は、管状反応器の軸線と平行に整列されたノズルを離れる反応体の噴流が発散され、したがって自由空間を離れる反応体の流れとよりいっそう急速に混合するという事実に基づくものである。
【0047】
反応器が反応空間の軸線と平行に整列されたn>1の数のノズルおよびm≧1の数の可動の混合装置(この場合、nおよびmは、それぞれ正の整数であり、好ましくは反応器の軸線に関連して対称的に配置されている)を有する実施態様の場合には、m≧1の数の可動の混合装置は、攪乱を増大させかつ流れをねじることによって反応体のガス流の混合を強化するという効果を有する。
【0048】
反応空間内の少なくとも1つの可動の混合装置のために、それによって生じる噴流の混合速度を減少させることなく、および混合時間を延長させかつ接触時間を拡大させる不利な結果を生じることなく、反応体の入口速度が同じである複数のノズルの直径を増大させることが可能である。特に、低速運転する可動の混合装置は、混合帯域を40%にまで短縮することができる適切で付加的な攪乱を発生させることは、意外なことである。
【0049】
有利に分解なしに気相中に変換することができる第一級アミンは、本発明による方法に使用されることができる。1〜15個の炭素原子を有する脂肪族もしくは脂環式の炭化水素を基礎とするアミン、殊にジアミンは、特に好適である。殊に適したアミンは、1,6−ジアミノヘキサン、1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン(IPDA)および4,4′−ジアミノジシクロヘキシルアミンである。1,6−ジアミノヘキサン(HAD)は、特に有利に使用される。
【0050】
有利に分解なしに気相中に変換することができる芳香族アミンは、本発明による方法に同様に有利に使用されることができる。好ましい芳香族アミンの例は、トルエンジアミン(TDA)、殊に2,4−TDAおよび2,6−TDAならびにそれらの混合物;ジアミノベンゼン;ナフチルジアミン(NDA);および2,2′−、2,4′−もしくは4,4′−メチレンジフェニルジアミン(MDA)またはこれらの異性体混合物である。トルエンジアミン(TDA)、殊に2,4−TDAおよび2,6−TDAならびにそれらの混合物は、特に好ましい。
【0051】
本発明による方法を実施する前に、出発アミンは、通常、蒸発され、200℃〜600℃、好ましくは200℃〜500℃、特に好ましくは250℃〜450℃に加熱され、場合によっては不活性ガス、例えばN2、HeまたはAr、または不活性溶剤、例えば芳香族炭化水素の蒸気、場合によってはハロゲン置換分、例えばクロロベンゼンまたはo−ジクロロベンゼンで希釈された形で反応空間に供給される。
【0052】
出発アミンの蒸発は、任意の公知の蒸発装置中で実施されることができる。好ましい蒸発システムは、少ない作業含量が高い循環出力で流下薄膜型蒸発器上に導かれ、アミンが熱に晒されることを最少化するために、不活性ガスまたは不活性溶剤の蒸気が場合によっては前記システムに供給されるようなシステムである。
【0053】
本発明の最も好ましい実施態様の1つにおいて、少ない作業含量が少なくとも1つのマイクロ熱交換器またはマイクロ蒸発器上に循環されるような蒸発システムは、使用される。アミンを蒸発させるのに適した熱交換器の使用は、例えば欧州特許出願公開第1754698号明細書中に開示されている。欧州特許出願公開第1754689号明細書の段落[0007]〜[0008]および[0017]〜[0039]に開示された装置は、好ましくは本発明による方法に使用される。
【0054】
蒸気状アミンは、なおアミンの蒸発されていない液滴(エーロゾル)を含有することができる。しかし、蒸気状アミンは、好ましくはアミンの蒸発されていない液滴を実質的に含有せず、即ちアミンの全質量に対してアミン0.5質量%以下、特に好ましくはアミン0.05質量%以下は、蒸発されていない液滴の形で存在し、アミンの残りの部分は、蒸気の形で存在する。特に好ましくは、蒸気状アミンは、アミンの蒸発されていない液滴を全く含有しない。
【0055】
アミンの蒸発および過熱は、好ましくは蒸気状アミンの流れ中での蒸発されていない液滴を回避させるために幾つかの工程で実施される。液滴分離器が蒸発システムと過熱システムおよび/または液滴分離器としても機能する蒸発装置との間に含まれているような多工程での蒸発および過熱工程は、特に好ましい。適当な液滴分離器は、例えば"Droplet Separation", A. Buerkholz, VCH Verlaggesellschaft, Weinheim - New York - Basel - Cambridge, 1989に記載されている。流れ方向に最後の過熱器を離れた後に、意図された温度に過熱された種々のアミンは、好ましくは0.01〜60秒、さらに好ましくは0.01〜30秒、特に好ましくは0.01〜15秒の平均滞留時間で反応器または反応のためのノズル装置に供給される。液滴が再度形成される危険は、この場合には技術的基準、例えば放射による損失を回避させるのに適した絶縁により妨げられる。反応器の運転時間は、実質的に液滴不含の蒸気状アミンの流れが反応器中への流入前に発生することによって著しく増加される。
【0056】
本発明による方法において、反応されるアミノ基に関連してホスゲンを使用することは、有利である。好ましくは、ホスゲンとアミノ基とのモル比1.1:1〜20:1、有利に1.2:1〜5:1が存在する。また、ホスゲンは、200℃〜600℃の温度に加熱され、場合によっては不活性ガス、例えばN2、HeまたはAr、または不活性溶剤の蒸気で(例えば芳香族炭化水素の蒸気、場合によってはハロゲン置換分、例えばクロロベンゼンまたはo−ジクロロベンゼンなしにかまたは前記ハロゲン置換分を用いて)希釈された形で反応空間に供給される。
【0057】
本発明による方法において、別々に加熱された反応体は、前記の記載と同様に管状反応器の反応空間内にノズル装置を介して導入され、好ましくは適当な反応時間を考慮して断熱的に反応される。更に、イソシアネートは、好ましくは反応混合物を相応するカルバミン酸クロリドの分解温度を上廻る温度に冷却することによって凝縮される。
【0058】
アミンとホスゲンとを完全に反応させて相応するイソシアネートを生じるために必要とされる滞留時間は、使用されるアミン基の性質、出発温度、反応空間内での断熱による温度の上昇分、アミンとホスゲンとのモル比、不活性ガスでの反応成分の任意の希釈度および選択される反応圧力に依存して0.05〜15秒である。
【0059】
特殊なシステムに対する完全な反応のための最小の滞留時間(使用されるアミン、出発温度、断熱的な温度上昇分、反応体のモル比、希釈ガス、反応圧力を基礎に決定された)は、20%未満、好ましくは10%未満の限度を超え、二次的反応生成物、例えばイソシアヌレートおよびカルボジイミドの形成は、十分に回避されることができる。
【0060】
好ましくは、反応空間もノズル装置も加熱表面を有さず、この場合この加熱表面は、熱に晒される可能性があり、二次反応、例えばイソシアヌレートまたはカルボジイミドの形成をまねき、或いは冷却表面を有さず、この場合この冷却表面は、沈殿物の形成を引き起こす凝縮を生じうる。ホスゲン反応体およびアミン反応体は、好ましくはこうして、放射および伝導による任意の損失を除いて断熱的に反応される。この意味において、混合ユニットおよび反応器中での断熱的な温度上昇は、単に反応体の流れの温度、組成および相対的に計量された量ならびに混合ユニット中および反応器中での滞留時間により確認される。
【0061】
本発明による方法の好ましい実施態様において、必要とされる反応条件下で使用される反応器の処理能力は、毎時アミン1tを上廻り、好ましくは毎時アミン2〜50t、特に好ましくは毎時アミン2〜12tである。これらの値は、特に好ましくはトルエンジアミンに適用される。この意味において、処理能力は、前記の単位時間当たりの処理能力によるアミンが反応器中で反応されうることを意味する。
【0062】
ホスゲン化反応が反応空間内で行なわれた後、好ましくは少なくとも1つのイソシアネート、ホスゲンおよび塩化水素を含むガス状の反応混合物は、有利に形成されたイソシアネートを含有していない。これは、既に他の気相ホスゲン化法(欧州特許出願公開第0749958号明細書)のために推奨されたように、例えば反応空間を連続的に離れる混合物を、反応空間を離れた後の不活性溶剤中での凝縮に掛けられることによって実施されることができる。
【0063】
しかし、好ましくは、凝縮は、本発明による方法に使用される反応空間が少なくとも1つの帯域を有し、この帯域内に1つ以上の好ましい液体("急冷液")の流れがアミンとホスゲンとの反応の中断のために噴霧され、相応するイソシアネートを生じるような方法によって実施される。このようにして、欧州特許出願公開第1403248号明細書の記載と同様に、ガス混合物の急冷は、冷却表面の使用なしに実施されることができる。
【0064】
本発明による方法のことに好ましい実施態様において、少なくとも1つの帯域(冷却帯域)は、例えば欧州特許出願公開第1403248号明細書に開示されているように、急冷段階に組み込まれる。本発明によることに好ましい実施態様において、2つ以上の冷却帯域が使用され、これらの冷却帯域は、欧州特許出願公開第1935875号明細書中の構成および操作に関連する開示と同様に、急冷段階に組み込まれ、および操作される。
【0065】
1つ以上の急冷段階を有する反応器の1つ以上の冷却帯域の組み込まれた組合せ(欧州特許出願公開第1935875号明細書に開示された)の代わりに、幾つかの反応器の冷却帯域と急冷段階との組み込まれた組合せも可能である。しかし、少なくとも1つの冷却帯域を有する反応器と急冷段階との組み込まれた組合せは、よりいっそう好ましい。
【0066】
選択された冷却法の性質にも拘わらず、少なくとも1つの冷却帯域の温度は、有利にイソシアネートに相応する塩化カルバモイルの分解温度を上廻るように選択される。イソシアネートおよび必要に応じてアミン蒸気流および/またはホスゲン蒸気流中で希釈剤として共用される溶剤は、大規模に凝縮されるかまたは大規模に溶剤中に溶解され、一方、場合によっては希釈剤として共用される過剰のホスゲン、塩化水素および不活性ガスは、凝縮または溶解されることなく、大規模に凝縮段階または急冷段階を通過する。80〜200℃、好ましくは80〜180℃の温度に維持された溶剤(例えば、クロロベンゼンおよび/またはジクロロベンゼン)、または前記温度範囲内に維持されたイソシアネートまたはイソシアネートとクロロベンゼンおよび/またはジクロロベンゼンとの混合物は、ガス状反応混合物からのイソシアネートの選択的な単離に特に好適である。所定の温度、圧力および組成での物理的データーに基づいて、当業者であれば、どの位の質量含量のイソシアネートが急冷段階で凝縮するか、或いは凝縮なしに急冷段階を通過するのかを簡単に見積もることができる。同様に、希釈剤が急冷液中での凝縮または溶解なしに急冷段階を通過する際に、場合によっては使用される過剰のホスゲン、塩化水素および不活性ガスの質量含量はどの位なのかを見積もることは、簡単である。
【0067】
本発明にとって好ましい、実質的に逆流なしに反応空間を通過する流れとしてのガス状の反応混合物の流れの発生は、反応空間に亘る圧力勾配によって保証されている。この圧力勾配は、好ましくは混合前の反応体の供給管路と凝縮または急冷段階からの出口との間に存在する。好ましくは、混合前の反応体の供給管路中の絶対圧力は、200〜3000ミリバールであり、凝縮または急冷段階後の絶対圧力は、150〜2500ミリバールである。しかし、前記の直接の流れおよび反応体の良好な混合を保証するために、反応空間を介する反応体の供給管路と凝縮または急冷段階後との圧力差を有利に少なくとも50ミリバールに維持することは、望ましい。
【0068】
凝縮または急冷段階を離れるガス混合物は、好ましくは適当な洗浄液での下流のガス洗浄中に残留するイソシアネートを含有せず、さらに好ましくは当業者に好適であることが知られている任意の方法で過剰のホスゲンを含有していない。これは、冷却トラップによるか、不活性溶剤(例えば、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼン)中への吸収によるか、または活性炭上での吸着および加水分解によって実施することができる。ホスゲン回収段階を通過した塩化水素ガスは、任意の公知方法で再循環させて、ホスゲン合成に必要とされる塩素を回収するのに適している。更に、ガス洗浄のために使用された後に得られた洗浄液は、好ましくは少なくとも一部分が反応空間の相応する帯域中のガス混合物を冷却するための急冷液として使用される。
【0069】
その後に、イソシアネートは、好ましくは凝縮または急冷段階からの溶液または混合物を蒸留により後処理することによって純粋な形で製造される。
【0070】
次の実施例は、本発明の特殊な実施態様を詳説するために記載されたものである。
【実施例】
【0071】
実施例1:攪拌機なしの冷たい流れのモデル
空気を周囲条件下で5.5m/秒の速度で内径54mmの管に貫流させる。この管は、40mmの直径を有するノズルに開口し、このノズル中で空気速度は、10m/秒であった。空気は、ノズルから自由噴流として開いた半空間内に流出した。有効な噴流発散角度を測定するために、煙霧状のエーロゾルを噴霧器により空気流に添加し、167mmの噴流直径を、ノズル口から下流717mmの位置でビデオ測定技術により測定した。この噴流直径は、変換時に10.1゜(全角度)のノズル噴流の有効な発散角度に対応していた。こうして測定された有効な発散角度を、ノズルの混合効率の基準として使用した。所定の外部の流れ(ノズルを取り囲む環状空間の直径)を仮定して、噴流と外部の流れから混合通路を計算することができた。
【0072】
実施例2:攪拌機を有する冷たい流れのモデル
空気を周囲条件下で5.5m/秒の速度で実施例1で使用されたような内径54mmの管に貫流させる。管の軸線上には、回転可能に取り付けられたシャフトが存在し、このシャフトの流れに面する端部には、45゜の角度で取り付けられた6個のブレードを備えかつ50mmの直径を有するプロペラが固定されていた。プロペラの下流で、管は、40mmの直径を有するノズル中に開口し、空気は、ノズルから自由噴流として開いた半空間内に流出した。管の軸線上のシャフトは、ノズル口から下流20mmの位置に延在していた。この位置で、ノズル口を離れるガス流の方向に対して平行に整列された6個のブレードを備えかつ40mmの直径を有する攪拌機が取り付けられていた。流れに面するシャフトの端部でのプロペラは、流れによって運動を引き起こし、この運動をシャフトを介してノズルの下流の攪拌機に伝達する。遠心分離的に輸送する攪拌機の場合、10m/秒の軸線方向の速度でノズルを離れる空気は、回転の軸線から外側方向に向けられた半径方向の速度成分を獲得する。有効な噴流発散角度を測定するために、煙霧状のエーロゾルを噴霧器により駆動プロペラの上流の空気流に添加し、253mmの噴流直径を、ノズル口から下流717mmの位置でビデオ測定技術により測定した。この噴流直径は、変換時に16.9゜のノズル噴流の有効な発散角度に対応していた(全角度)。所定の外部の流れ(ノズルを取り囲む環状空間の直径)を仮定して、実施例1の発散角度と比較してノズル噴流の著しく大きな前記発散角度は、噴流と前記の外部の流れとの相応して短い混合通路を生じた。一定であると仮定されたノズルを取り囲む環状空間の直径から、混合通路の長さの比は、次の式により計算された:
【数1】

【0073】
この場合、実施例2のための混合通路の長さは、実施例1のための混合通路の長さの60%にすぎず、即ち攪拌機は、混合通路の長さを40%短縮する効果を有していた。
【0074】
実施例3:TDAのホスゲン化(本発明による):
蒸気状の2,4−トルエンジアミンと蒸気状の2,6−トルエンジアミンとの混合物(80:20)1.9t/時間を反応体の流れAとしてノズルを介して回転対称の反応空間に供給し、ホスゲンおよびガス状HClを反応体の流れPとしてノズルを取り囲む自由区間を介して回転対称の反応空間に供給した。反応体の流れAおよびPをそれぞれ別々に300℃を上廻るように加熱した。ノズルの下流で、反応空間は、取り付けられたシャフトを介してノズルに取り付けられた攪拌機を有し、この場合この攪拌機は、ノズルを離れる流れのパルスによって駆動された。シャフトは、反応器の壁を通過していなかった。攪拌機は、円形に亘って均一に分布した6個のブレードを備えていた。反応空間内での反応は、10秒未満の滞留時間内で断熱的に行なわれ、約430℃の反応器の出口温度が確認された。ガス混合物は、凝縮段階を通過し、それによって約165℃のガス温度に冷却された。得られた凝縮物を蒸留工程に供給し、純粋なTDLを生じた。凝縮されていないガス状混合物をその後の洗浄工程でo−ジクロロベンゼンで洗浄し、副生成物のHClを吸収によって過剰のホスゲンから分離した。洗浄工程で得られたo−ジクロロベンゼンを凝縮工程で使用した。
【0075】
TDA供給管路内の圧力と凝縮工程からのガス出口での圧力との圧力差は、供給管路からの方向をもったガス流を達成するために10ミリバールであった。
【0076】
200時間の試験時間後、圧力差は、11ミリバールであり、したがって大規模な工業的測定装置の測定精度の範囲内で不変のままであった。検査は、固体の沈殿物を示さなかった。
【0077】
本発明を、説明を目的として前記において詳説したが、このような詳細は単にこの目的のためだけものであり、請求項により限定され得るものを除き、当業者によって本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく変法が作られることができると理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一級アミンを第一級アミンの沸騰温度を上廻る温度で管状反応器中でホスゲンと反応させることにより第一級イソシアネートを製造する方法において、反応空間を有する前記管状反応器中で、
a)ホスゲンを含有する少なくとも1つの反応体の流れPおよびアミンを含有する少なくとも1つの反応体の流れAを、管状反応器の回転軸と平行に整列された1個以上のノズルおよびこのノズルを取り囲む自由空間を含むノズル装置を介して反応空間に供給し、および
b)反応体の流れAまたはPの1つを1つ以上のノズルを介して反応空間に供給し、他の反応体の流れを1つ以上のノズルを取り囲む自由空間を介して反応空間に供給し、および
c)反応空間が、少なくとも1つの可動の混合装置を備えていることを特徴とする、第一級イソシアネートを製造する方法。
【請求項2】
少なくとも1つの可動の混合装置は、攪拌機である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの混合装置は、管状反応器の壁を通過する可動の取付け部材を備えていない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの混合装置は、外部の駆動装置を有していない、請求項1記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの混合装置は、反応体の流れAまたはPの少なくとも1つのパルス化によって駆動される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの混合装置は、電磁結合により外部の駆動装置と結合されている、請求項1記載の方法。
【請求項7】
アミンを含有する少なくとも1つの反応体の流れAを1つ以上のノズルを介して反応空間に供給し、ホスゲンを含有する少なくとも1つの反応体の流れPを1つ以上のノズルを取り囲む自由空間を介して反応空間に供給する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
アミンとホスゲンとの反応を断熱的な反応方法によってもたらす、請求項1記載の方法。
【請求項9】
反応空間は、実質的に回転対称であり、この反応空間の全長に亘って流れ方向に拡大し、流れ方向に一定のままであり、および/または流れ方向に減少する、貫流横断面領域を有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
反応空間は、実質的に回転対称であり、および貫流横断面領域が流れ方向に拡大し、流れ方向に一定のままであり、および/または流れ方向に減少する、部分を有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,4−トルエンジアミンおよび/または2,6−トルエンジアミン、メチレンジフェニルジアミン、ナフチルジアミンまたはこれらの混合物を、第一級アミンとして使用する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
反応器は、毎時アミン1tを上廻る処理能力を有する、請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2010−143899(P2010−143899A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−284052(P2009−284052)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(504213548)バイエル マテリアルサイエンス アクチエンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】