説明

水を単体ガスに使用箇所で安価かつカーボンフリーに解離して水素関連発電を行う方法と装置

水を単体水素に分解するプラズマフィールドを生成する装置が提供される。得られた単体水素は、発電用に直接使用することもできるし、貯蔵してエネルギー源としてあるいは一般製品として使用することもできる。本発明の装置は、単体水素を実際に製造する現場に設置可能である。さらに本装置を使用すれば、正味有効エネルギー出力を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年7月6日に出願された米国暫定特許出願第60/929,643号に係わる優先権を主張するものであり、その全内容を本明細書に参考文献として引用する。本発明は、態様の一つにおいて、容積プラズマフィールドを発生させて水を単体水素と残留水とに解離する装置に関する。別の態様の一つでは、本発明は、水を単体水素と残留水とに解離する方法に関する。さらに別の態様の一つでは、本発明はプラズマフィールドで形成された水素からのエネルギー生産に関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年の間、水素はエネルギー源として重要性を増してきた。長い間、水素は、将来の再生可能な無公害エネルギー源のための優れた源であると目されてきた。エネルギーと輸送用に使用される石油は、ますます高価となっている。例えば、米国は毎年、外国から輸入される石油に何千億ドルも支出している。
【0003】
水素は、無色、無臭、無味、無毒であるが故に、今日一般的に使用されている他のどのような燃料とも相異なっている。水素は、燃料電池に使用するのに好ましい燃料である。排出物は唯一水と少しの熱だからである。同様に、水素が内燃機関で燃焼されるときも、生起される唯一の排出物は、水と熱である。さらに、水素は、大型発電プラントや他の大抵のエネルギーシステムで使用される炭化水素ベースの燃料を代替使用するのに望ましい燃料でもある。
【0004】
水素は単体であり、しかも宇宙で最も豊富な単体である。水素は、水に存在しており、しかもすべての生物に水や他の形で見出される。また、それは、最も簡単かつ最も軽い元素であり、1個の陽子と1個の電子のみから構成されている。水素は我々の身近に満ちているが、自由に動き回る形、すなわち、単体の形で見出されることはほとんどない。他の元素と結合して、水や砂糖や炭化水素や炭水化物のような通常見られるものと化している。
【0005】
単体水素の約95%は現在、製油所で天然ガスの「水蒸気改質」によって製造されている。残念なことに、水蒸気改質プロセスは、再生可能でない化石燃料を使用し、炭素を高濃度で含む排出物を生成する。従って、望ましいことは、経済開発とクリーンエネルギー生産の長期目標としては、風力または太陽エネルギー、バイオマス(植物)のような再生可能エネルギー源から、または水からも水素を製造することである。
【0006】
水素生産に最も望ましい再生可能エネルギー源3種のうち2種は、バイオマスと水である。現在知られているプロセスを使用する限り、いずれも効率的でない。水素生産速度は遅く、容積収率も小さい。
【0007】
バイオマス(すなわち、植物材料)は、再生可能エネルギー源であり、有機プロセスを使用すれば環境に優しい方法で水素がクリーンに製造される。米国の大抵の州には、豊富なバイオマス資源がある。これには、砂糖ダイコン工場や缶詰工場やエタノールおよびバイオディーゼル生産工場からの廃棄物が含まれる。長期観点で行われている実証プロジェクトが示しているのは、水素製造には将来的に有機バイオマス法(酵素や触媒や発酵や藻を使用)が再生可能に使用し得るということである。砂糖含有量の多い廃棄物からは最も多くの水素が製造され、初期段階の生産規模施設からは5〜10年以内に水素製造が限定的ではあるが可能と考えられている。
【0008】
水は、「電解」プロセスを利用して水素を製造するのに使用できる。電解では、水素は、水に電流を通じて水素と酸素の解離を起させることによって製造される。しかし、このプロセスは相当程度の電力を必要とし、電力の最も普通の源(すなわち、石炭、石油またはガスの燃焼)を使用するとき、少なくともある程度の汚染物が生成される。電力が風力または太陽エネルギーで製造されれば、水素製造に際して、汚染物が生成されることは実質的にない。残念なことに、風力またはソーラーによる電力は豊富とはいえないので、水素製造に利用可能の主要電源は主として化石燃料であり、炭素ベースの汚染排出物が生成される。政府および産業の目標は、大量の水素と水素関連の電力を発生する、より効率的かつより汚染物低排出のシステムと方法を見出すことである。
【0009】
現在の水素製造方法では、水素製造コストが高く、容量も限られているのでエネルギー源として水素を多量に使用することは限定されている。エネルギー源として石炭、重油、ディーゼル油、ガソリン、および天然ガスの使用と競争するに足る十分な水素製造能力も流通システムも存在しない。技術自体は、電力プラント、加熱装置、および産業設備を化石燃料でなく水素を燃焼するように改造するために容易に利用可能であるが、水素の入手可能性が限定されているので、環境性能に優れ、国のエネルギーの石油依存性を低下させるという水素の特徴があるにもかかわらず、水素の大幅使用は、制約されている。
【0010】
また、長い間認識されてきていることであるが、車から生ずる重大な汚染を含む多くの輸送問題は、水素製造の効率を向上し、大量製造をより低コストで行うことに対して有効な答えが見出されるならば、少なくなり、あるいは皆無となると考えられる。今日の内燃機関を水素燃料使用に転換することは全く実行可能であり、そのような転換はプロパンや天然ガスを駆動源とする車に対してはすでに普通に行われていることである。しかし、水素への容易なアクセスが困難ということが、重大な制約因子となっている。また、化石燃料に水素を混合するということも、次のステップの初期段階と考えられている。この方式では、独立の流通システムが必要でないからである。確かに、化石燃料に水素を添加すれば、性能を向上させ、汚染を減少させることができる。しかし、そのような簡易ステップでさえも、水素の製造と流通に係わる容量規模の限定、高コスト、リスク故に前向きに進めることが妨げられている。
【0011】
容量に関しては、米国で現在毎年製造されている水素の量は、約100万台の水素駆動の車を約3日間動かすに足るだけと報告されている。水素を十分な容量で製造することが可能であってさえも、水素の輸送と流通が使用を制約するとも考えられる。水素は、製造後、ガスとして圧縮され、あるいは冷却されて(−253℃)液体にされ、重い円筒容器に収納され、次に使用箇所まで輸送されなければならない。水素を圧縮し、貯蔵し、輸送するということは、大きな量を最終使用ポイントに動かそうとするとき、流通システムにおける多くの費用、安全に対する危険、および多量の書類作成を本質的にもたらす。現在利用可能な技術では、水素使用の増加に伴って、インフラストラクチャ、生産、および流通のシステムが、劇的に増加しなければならない必要性が生じる。別には、新技術を新しく見出し、水素製造の効率向上と水素流通の簡素化とを両方とも行わなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国暫定特許出願第60/929,643号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
コストは、水素プロセス、特に再生可能エネルギーをベースとする水素発生プロセスの使用を制約する重大な要因である。現在、再生可能エネルギー源から水素を製造するのは、化石燃料から水素を製造するのに較べて数倍のコストが必要である。そして、化石燃料から水素を製造するには、(エネルギー出力ベースで)数倍のコストが掛かっている。明白なことは、産業界が再生可能エネルギー源から水素を製造することによって環境効果を改良しようとすると(化石燃料と比較して)、水素製造コストは、将来的にスパイラル状に上昇するのみという恐れがあるということである。本発明の装置と方法の主目的は、化石燃料と再生可能エネルギー源双方に対比して、水素製造と水素関連発電のときに生ずるコストと汚染とを低減することである。
【0014】
したがって、水素を効率的かつ経済的に製造する装置と方法であり、水素の使用ポイントに近接して水素を製造する能力を備える装置と方法を提供することは、望ましいと考えられる。また、水素関連の発電源を提供することも、望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、水の解離による水素製造の方法と装置、および解離された水素からのエネルギー生産に関する。本発明では、高度の熱と高度のエネルギーを含むプラズマ域を生成し得るプラズマ発生器が使用される。プラズマ発生器は、現場で水を単体水素に解離するのに使用し、水素の容易な供給源とすることができる。また、プラズマ発生器は、水素関連の発電を行うのにも使用できる。プラズマ(すなわち、物質の第四状態)環境を利用することにより、結合された自由エネルギーを水分子から解放し得る。水の解離は、下記の平衡化学式に従って高温で進行する。
【化1】

【0016】
水(g)が生成する標準ギブズ(Gibbs)自由エネルギーは、−228.61キロジュール/モルで、この解離を起こさせるにはエネルギーがシステムに入力されなければならないことを示す。また、これは、温度が高ければ高いほど、解離がより完全であり、残留HOは、より少なくなることを示す。
【0017】
本発明の装置と方法では、水の解離は、非常に高い温度(通常9,000℃超)、かつ物質の第四状態、すなわち、プラズマの雰囲気で生じる。この高温プラズマアークのユニークな本質故に、分子のエネルギーレベルを新しいエネルギー状態に変え得る。プラズマアークから得られる生成物は、プラズマアークに導入された水の極めて高率の解離から得られる多量の単体の水素と酸素とを含有する。得られる水素と酸素は、修正生成自由エネルギーで存在する。また、単体の水素と酸素に加えて、原料をアークに導入するのに補助となるように使用された物質、例えば、水蒸気や不活性ガスも生成物流に含まれる。好ましくは、原料をアークに導入するのに補助となるように使用される物質は、更なる処理を行わずして水素を燃料として使用可能な物質である。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態では、方法と装置は、水素ベースの燃料(例えば、水)を使用し、解離反応がミリセカンドで生じ得る環境で単体水素を生成し、発電を行う。また、好ましい実施の形態では、電力が使用され、自立した反応容積が確立される。装置と方法の利点をフルに活用すれば、プロセスで消費された電力に対して原料を高スループットで装入し得る。正味収量は、水分子の中にロックされたエネルギーの解放による出力パワー(BTU基準)の利得である。
【0019】
本発明の装置は、通常、陰極1個以上、好ましくは陰極1個と、陽極1個以上とを備える。実施の形態の一つでは、装置は陰極1個と、この陰極の周りに等間隔で円形パターンに配置された陽極3個とを備える。陽極は、陰極と陽極の間に円柱状の電導フィールドを構成可能のように陰極からある距離で離れて設置される。陰極と陽極の各電極の間には、そして陰極と陽極(複数を含む)を囲むカラーの間には、装置の運転に当たっては冷却剤の流れが得られるような手段が設けられる。
【0020】
陰極電極は、普通、円筒状本体と一般に円錐形状の上部とから成り、上部は導電チップとなっている。陰極は、陰極用の第一ガス流路と水蒸気用の外側の第二流路とを形成するカラーで囲まれている。
【0021】
運転では、電流が陰極と陽極(複数を含む)の間に流され、高熱、高エネルギーの電磁誘導封じ込めフィールドが形成され、水が単体の水素と酸素のガスに効率的に転化される。ガス、好ましくはアルゴンのような不活性ガスが、電導チップへの遮蔽ガスとして、陰極カラー内に形成された第一通路を通って陰極のチップへ送られる。導電チップは、好ましくはタングステンチップである。ガスは、高度にイオン化され、円柱状プラズマが形成される。水蒸気が、カラーの第二通路を通って供給され、プラズマ領域の封じ込めフィールドに押し込まれる。この領域の温度は最も高い(通常20,000°F〜40,000°F)。水はここで、単体の水素と酸素とに解離される。
【0022】
得られた水素は、エネルギーの目的で水素関連電力を発生させるのに、あるいは化学供給原料として使用できる。また、本発明の目的は、上で議論されたような従来の水素製造に関連した製造制約問題を解決し、高コストを低減することである。また、本発明の目的は、本発明の装置内に水素を作り出すのに必要な電力を発生するために燃焼される化石燃料の使用を劇的に低減することである。そして、本発明の装置と方法のさらなる目的は、水素炎(発火した水素ガス)を形成することである。水素炎は、従来のエネルギーシステムのすべての形式、例えば、発電装置や炉(すなわち、家庭にある小さいユニットから大きな産業システムまで)やさらに他のタイプの可燃性燃料で作動する他の大抵の機器を運転するに十分な熱を供給し得る。本発明のさらなる目的は、化石燃料、または他の炭素ベースの可燃性燃料よりも低い運転コストで、上に記載したように、熱を発生させる利点をすべて達成し、発電に関連した炭素ベースの排出物をすべて本質的に皆無とすることである。
【0023】
本発明の装置と方法の別の目的の一つは、水素の製造と水素関連の発電とを使用のポイントで、すなわち、オンデマンドで可能なようにして、水素を圧縮して流通システムで輸送する必要性をなくすことである。しかし、所望ならば、本発明の装置と方法で製造された水素は、効率的に、大容量で、しかも低価格で圧縮し、貯蔵し、輸送し得る。
【0024】
上に記載された目的と利点はすべて、極めて高い熱エネルギー封じ込めフィールドを確立するユニークな装置と方法で達成される。この領域には、高エネルギー封じ込めフィールドへの入口となる少なくとも一つのユニークな絞りポイントが形成される。本発明の装置では、一定の容量の空気または不活性ガス(すなわち、アルゴン)で希釈された計量済み水蒸気が、ユニークな入口絞りポイントから直接的に高エネルギー封じ込めフィールドに送られる。水蒸気は、即座に単体ガスの水素と酸素とに(数ミリセカンドで)解離される。次に、分離された単体のガスは、高熱エネルギーフィールドから排出され、それらのガスは、燃料として燃やされ、仕事(または電力)のための熱を発生し得る。別法として、それらのガスは、分離して、今後の仕事(または発電)のために貯蔵したり、または様々な用途のために一般製品として販売したりし得る。
【0025】
本発明の装置と方法は、エネルギーを得るために使用し得るメカニズムに関するどのような特定の理論や説明にも縛られないが、本発明者らが行ってきた運転と定量的試験は、高エネルギープラズマ発生装置の運転で得られた効率が、本発明の構造と運転方法に関連した特有なものであり、これまで見出されていなかった簡易化されたプロセスの結果であるとの強固な考えを導くものである。本発明者らは、本発明の構造が確かに、新規で、より効率的で、高度に簡易化された装置であり、「ハイドリノ(Hydrino)」と称されるユニークな形のサイズ縮小の水素原子(小さな電子軌道を有する水素原子)を生産し得るものであるという証拠が強いと信じている。ハイドリノの存在、および関連する新規分野の科学は、最近になって、別の、新しいプラズマ加熱の触媒技術の発展で探索され、明らかになったものである。本発明に係わる発見以前は、ハイドリノは、ハイドリノを形成させるための触媒を要する複雑な装置を使用する別の技術を使用してはじめて生成されたのである。一般に、ハイドリノを生成する触媒作用プロセスは、カリウム触媒を利用して、通常サイズの水素原子からサイズ縮小の水素原子を形成させるプロセスに基づいている。通常、水素は「基底状態」(通常の状況下で最も低いエネルギーレベルの原子の状態)で環境に存在している。量子力学(QM)では、それはN=1状態と称される。通常、原子の許されたエネルギー状態は、1,2,3,4,・・・などの整数値に合うようになっている(これが「量子」という言葉の意味)。単純に理解すれば、数が大きければ大きいほど、エネルギー状態が、より高位ということである。水素原子が、より高位の状態(「励起」状態とも称される)にあったとすると、次は、より低位の状態に落ち、寸法サイズが減少し(電子軌道が原子の中心方向に移動し)、その結果エネルギーが放出される。通常、これは光のフォトン(光子)として起こり、原子の観測された線スペクトル放出は、これらの状態遷移に対応する。
【0026】
現在知られているように、主として水素から構成される太陽のUV線スペクトルは、古典的な量子力学で完全に説明されているわけではない。しかし、太陽の紫外域スペクトルは、ハイドリノという新しい分野を理解することによって説明できると考えられる。ここでは、1/2,1/3,1/4,1/5,・・・などの分数の量子状態が存在すると提案されている。これらのエネルギー遷移は太陽のUVスペクトルに合致している。サブ量子原子は非放射性であるから、ハイドリノという新技術と分野は、多くの銀河が高回転数で回っているにもかかわらず重力で銀河を結び付けて飛び散って行かないようにしている「暗黒物質」に関して、ある一つの説明を提供し得る。現在、ハイドリノを生産すると考えられているプロセスはすべて、複雑な接触熱プロセスを利用しており、これらのプロセスは、加熱され、外部的に反応し、反応を駆動するプラズマにされている。触媒として塩基性カリウムを使用することが通常知られている。しかし、これらの触媒プロセスの操作で示されたことは、それらのハイドリノ「サブ基底状態」遷移で放出されたエネルギーは、単に理論上のもののみでではなく、結果としては、どのような既知の化学ベースのエネルギー反応(特に炭素ベースの燃料の反応)よりも大きいということである。放出されたエネルギーは、核分裂ほど大きくはないが、化学反応で放出されて生成したエネルギーよりはるかに大きいものである。それは、それ自体で成り立つ全く新しいカテゴリーである。
【0027】
本発明の方法とプロセスでは、試験の間に発見されたことであるが、基本エネルギー反応は、触媒誘導ハイドリノから生ずる新規分野で報告された反応と同じであるように見える。しかし、「サブ基底状態」の水素原子、すなわち、ハイドリノと見られるものを形成して、大量のエネルギーを放出するためにも、どのような触媒も本発明の装置とプロセス内では使用する必要はまったくないのである。水を水素と酸素の単体ガスに解離するユニークな装置、方法、およびプロセスを発見したことにより、本発明の発明者らは、極めて多くの試験を行って、今や信じるに至ったことは、ハイドリノの生成は、可能であり、本発明の装置を使用して生成される高エネルギープラズマ封じ込めフィールド内で再現可能であるという追加的確証を得たということである。しかし、触媒プロセスとは相異なり、通常の水素からサブ基底状態までの状態の変化は、高エネルギー反応ゾーン内のプラズマ内部に直接的に水蒸気を導入する本装置のユニークな能力の極めて効率的な結果である。
【0028】
このことは、観測され、記録された正味のエネルギー出力レベルでさらに確認され、図6の下に記載の表に詳細が示されており、図4と5にはグラフとして示されている。それらの結果は、装置の初期的試験の際に驚きをもたらしたものであった。そのとき観測されたのは、放出されたエネルギーが、図3に示されているように数学的に予測されたモデルよりもはるかに超越したものであった。本発明者らが考えることは、単体ガスへの水の解離と燃焼の間のエネルギー放出には二つのレベルがあるということである。単体水素ガスの典型的燃焼熱が一つあり、「サブ基底状態」ハイドリノの生成の結果として放出される追加エネルギーがある。最終的結果は、本発明の水素エネルギー放出プロセスが全体として、極めて有効エネルギー発生性であり、試験が示すところでは、放出されるエネルギーが、高エネルギープラズマ発生フィールドの全操作を維持するために消費されたエネルギーに比較して少なくとも+200%(または以上)となり得るということである。
【0029】
上で議論されたように、本発明の装置の操作では、水蒸気は、高エネルギープラズマ発生フィールド内に入り、直ちにそれを囲む極めて強力な磁界とプラズマの発生した封じ込めフィールドを通過する何兆もの励起自由電子との双方に曝される。磁界により、水蒸気は完全にその中に封じ込まれ、捕捉された水蒸気は次に電子の流れに曝され、同時に極めて高速度まで加速される。イメージし得ることは、水蒸気分子が、電子嵐として考え得るものによって文字通りバラバラにされることである。電子嵐は、本質的に何兆もの自由電子の濃密な竜巻状の「霧」であり、水の分子を爆撃し、引き裂くのである。電子と強力な磁界が水蒸気分子に作用すると、水素と酸素の原子は解離し、水素原子の電子軌道が「正常」軌道レベルから縮退した「分数」軌道レベルまで潰れるにつれて、ハイドリノが形成される。このようなことが起こるにつれて、上に記載のように、各水素原子電子の軌道が「正常」から「分数」へ変化することによって顕著なエネルギー放出が生じ、さらに水素ガスの通常燃焼から放出されるエネルギーが追加される。その上、ハイドリノ原子は、永久運動と見え得るが、実はそうではない反応で絶えず平衡に達しようとしている。
【0030】
エネルギープラズマ発生器フィールドでは、エネルギーが水素原子から放出され、そして正常な電子軌道が分数軌道に縮退するとき、電子は原子中心により近くで回転し、原子は、より低いエネルギー状態に落ち、その際にエネルギーを放出する。次にその後、反応の連鎖で、「失われた」エネルギーは、結局、プラズマ発生器排出ガスが地球大気に到着する太陽光線エレメントと反応した後に低レベル熱として環境に戻る。その反応では、プラズマ発生器からは、残留「サブ基底状態」水素(ハイドリノ)含有の湿った空気が環境中に排出される。環境中で、太陽からの光子が吸収され、水素電子軌道が「分数」準位から「正常」準位まで戻り、そのポイントで水素原子は平衡に達する。このプロセスを経過し、太陽から光子を獲得すると、水素原子は、従って不自然な低いエネルギー「サブ基底状態」から正常な「基底状態」へと戻され、典型的な最小エネルギー準位に戻る。極めて興味深いことには、プラズマの高エネルギー発生フィールド反応の内部でなくなったエネルギーは、実際には失われていない。エネルギーは保たれるが、地球から取り戻されるのではなく、太陽から取り戻されるのである。全プロセスは、水蒸気をプラズマ発生フィールドに供給する必要性だけで達成される。どのような触媒も必要なく、発生するエネルギーと比較して少量の電力があればよい。全プロセスは、主要な部分で有効エネルギー発生性であり、しかも環境面にクリーンである。
【0031】
従って、本発明の目的の一つは、高熱、かつ高エネルギーのフィールドを使用して水を単体の水素ガスと酸素ガスに効率的に解離する装置と方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、水素関連の電源を提供することである。本発明の他の目的および利点は、本発明の以下の詳細な説明に基づけば当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】単体の水素と酸素を製造するために水を解離する高熱、かつ高エネルギーのプラズマ発生器を作製するのに単一の陰極と単一の陽極を使用する本発明装置の実施の形態の一つを示す図である。
【図2】単体の水素と酸素を製造するために水を解離する高熱、かつ高エネルギーのプラズマ発生器を作製する本発明の装置の第二の実施の形態を示す図である。
【図3A】本発明の装置の実施の形態の一つの操作効率の詳細計算を示す表である。
【図3B】本発明の装置の実施の形態の一つの操作効率の詳細計算を示す表である。
【図4】本発明の装置の実施の形態の一つから得られたプラズマアークにおける熱の流れ対時間と出力を示すチャートである。
【図5】本発明の装置の実施の形態の一つから得られたプラズマアークにおける熱の流れ対時間と出力を示すチャートである。
【図6A】本発明の装置の実施の形態の一つの運転パラメータと結果を総括する表である。
【図6B】本発明の装置の実施の形態の一つの運転パラメータと結果を総括する表である。
【図6C】本発明の装置の実施の形態の一つの運転パラメータと結果を総括する表である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の態様の一つは、単体水素を水素含有物質、好ましくは液状物質から、例えば、水からの解離によって効率的に製造する装置と方法に関する。本装置は、高温かつ高エネルギーのプラズマ放電を起こし、いわゆる封じ込めフィールドを形成する。水蒸気のような水素源が、プラズマカラムに導入される。水の分子が単体の水素と酸素に解離される。得られた水素は、発電用に使用し得るが、あるいは捕集し、貯蔵すれば、燃料、例えば、内燃機関用燃料として使用し得る。
【0034】
図1を参照すると、本発明の高熱・高エネルギープラズマ発生器(1)の実施の形態の一つの図面が示されている。プラズマ発生器(1)は、電力を使用して作動するように構成され、1個以上の陽極電極(2)とそれらを囲むカラー(図示せず)と、1個以上の陰極電極(3)とそれらを囲むカラー(24)を備え、電極には電源が接続される。本発明の好ましい実施の形態の一つでは、本装置は、1個の陰極電極と3個の陽極電極を備え、各陽極は陰極の周りに円形パターンに配置される。
【0035】
図1に示されるように、陽極電極(2)と陰極電極(3)は、好ましくは、円筒状部分と円錐状チップ域を備える。好ましい実施の形態では、陽極電極(2)と陰極電極(3)の本体部分と円錐部分は、絶縁性材料、例えば、耐高温性セラミック材料から構成される。導体材料を使用する場合は、電気経路から絶縁するようにしなければならない。陽極電極と陰極電極は、電気を伝えるチップ(14、27)を備える。このチップは、電気溶接チップまたは商用プラズマ発生装置に一般に使用されるどのような材料からでも作製し得る。好ましい実施の形態では、陽極電極と陰極電極は、高導電性タングステンで作製される。陰極チップは、電極の中心からワイヤまたは他の接続手段で電源に接続される。電気は、ネジ式コネクタを通さずにチップに流すことが好ましい。
【0036】
通電すると、陰極電極(3)のチップ(14)と1個以上の陽極電極(2)のチップ(27)との間に電界が発生する。電気は、以下に詳細に記載のように高エネルギー伝達カラム(プラズマ発生フィールド)を生成するのに十分な電圧と電流で陽極と陰極に流される。本発明の実施の形態の一つでは、電気は、約40〜60Vの電圧と約100〜130Aの電流で流される。
【0037】
電気アークが確立されると、強力な磁気誘導円形伝達カラムが形成され、高エネルギー封じ込めフィールド(5)が発生される。この高エネルギー封じ込めフィールド(5)は、高度に荷電された電界と可変する強力な磁界の両状態を示す。電界と磁界の双方の効果によって電子の急速な動きが発生し、生じた高熱により、カラムの中に押し込まれた物質またはガスを封じ込めるように作用する高エネルギーバリアが形成される。冷却回路が、陰極電極(3)と陽極電極(2)の両方に、また陰極カラー(24)と陽極カラー(図示せず)にも同様に設けられる。陰極チップ冷却用入口管(6)と陰極チップ冷却用出口管(7)は、電極のチップを冷却するために陰極電極(3)の内部の部分を通る冷却剤の流れに対して経路を提供する。同様に、陽極冷却用入口管(8)と陽極冷却用出口管(9)は、陽極電極(2)の内部の部分を通る冷却剤の流れに対して経路を提供する。さらに、陰極カラー(24)は、冷却剤入口(25)経由で流れ込み、そして冷却剤出口(26)経由で外に流出する冷却剤によって冷却される。
【0038】
陰極と陽極に冷却作用を提供するには、適切ならどのような流体でも使用し得る。好ましくは、非水系冷却剤が冷却剤として使用される。例えば、プロピレングリコールとエチレングリコールとの非水系混合液のようなものである。特に好ましい実施の形態では、上記非水系冷却剤は、プロピレングリコール約70重量%とエチレングリコール約30重量%とから成り、適切な添加物も必要に応じて加えられる。非水系冷却剤を使用すると、本発明の装置の運転にユニークな利点が得られる。高沸点(390°F)の水を含まない冷却剤を使用すると、電極の電流「終点」のポイントで生ずる高い熱フラックスの箇所で熱伝達速度を増大させることが可能となり、陰極と陽極のカラー内で生じるホットスポットが回避され、陰極カラーの供給チャンネル(11)内に水蒸気の「フラッシング(瞬時蒸発)」が起こらないで済むのである。従って、水蒸気供給が逆戻りするような機会が生じることは完全に排除される。このユニークな機能が存在するので、本発明の能力として、高圧スチーム使用の必要性とは対照的に、本発明のプラズマ発生フィールドの中に低圧の冷たい水を導入することが可能となる。
【0039】
陰極電極は、陰極カラー(24)で囲まれる。陰極カラー(24)は、好ましくは、一体のユニットとして構成されるが、所望ならば、複数のピースで作製することもできる。陰極カラーは、第一壁(28)と第二壁(29)を備える。陰極カラーの第一壁(28)は、陰極電極の壁と平行となるような形を有し、流れ(13)が流れる第一流路(10)が形成される。また、陰極カラー(24)は、第一壁(28)と第二壁(29)の間に第二流路(11)を形成する追加的チャンネルを備える。給水源が水気化器(12)に接続されている。水気化器(12)は、陰極電極(3)を囲むカラー本体に備えられている第二流路(11)に対しライン(15)経由で水蒸気を注入する。第二流路(11)からは、プラズマ反応帯(5)に向けて直接的に水蒸気が送られる。第一流路(10)は、不活性ガス供給源、好ましくはアルゴン供給源に接続されている。流れ(13)が流れる第一流路(10)には、不活性ガスを供給・輸送して、陰極(3)のチップ部分(14)を周囲の空気と酸素から遮蔽する。陽極電極は、陰極カラーと同じような設計が施されている陽極カラー(図示せず)で囲まれている。
【0040】
運転に当たって、電力が高エネルギープラズマ発生器(1)に供給されると、極めて高エネルギーの放電状態が、陰極電極(3)と1個以上の陽極電極(2)の間に電気アークとして発生する。電気アークの磁界の作用で高エネルギー封じ込めフィールド(5)が形成されるが、これは、内側に丸まって収縮し、領域(B)では大略円錐形状の部分が形成される。
【0041】
電気アークの着火とほぼ同時に、不活性ガス、好ましくはアルゴンが第一流路(10)経由で陰極チップ領域(14)に送られる。本発明の実施の形態の一つでは、アルゴンは約8〜10標準立方フィート/秒の流量で送られる。また、陽極電極チップ部へも、陽極カラー(図示せず)内の内部チャンネル経由で遮蔽用アルゴンガスが供給される。陰極カラー経由で供給された不活性ガスは、収縮した封じ込めフィールド領域(B)に引き込まれ、プラズマの最も高温となるポイント、すなわち、プラズマ「バブル」(22)となる領域の周りに入って行く。まさにそのポイントで、不活性ガスは極めてイオン化された状態、すなわち、プラズマを形成する。プラズマは、封じ込めフィールドを超高速度で上昇して行く。同様に、水蒸気は、水蒸気発生装置(12)内で発生後、第二流路(11)経由で陰極チップ領域(14)に導入され、収縮領域(B)の箇所の封じ込めフィールド(5)に引き込まれ、あるいは封じ込められる。封じ込めフィールドに供給される水の量は、装置のサイズに依存する。以下に記載の図4〜6に示される試験に使用された実施の形態では、水蒸気供給流量は約0.2075グラム/分であった。
【0042】
水蒸気は、プラズマカラム底部のプラズマバブル(22)の周りの20,000°F〜40,000°Fの最も高熱の封じ込めフィールドに直ちに曝される。
【0043】
水蒸気分子は、ミリセカンドの超短時間で単体ガスの水素(19)と酸素(20)に解離される。両ガスは、反応生起領域(18)内とその周りに存在する極めて高熱の状態によって、解離された状態にあり、極めて高速でエネルギー封じ込めフィールド(5)を通過する。ガスは、フィールド(5)を囲む磁気封じ込め壁でフィールド内に維持される。ガス(19)と(20)は、封じ込めフィールド(5)を通過するにつれて、温度が継続的に下がり、その後周辺領域(C)に隣接した端部の箇所でフィールド(5)端部から出て行く。
【0044】
まさにこのポイントでこそ、本発明の方法と装置の最終的結果である臨界的で、ユニークな事象が起こるのである。2種のガス(19)と(20)が、より冷温の周辺状態(C)を通過するにつれて、急速に温度が下がる。温度レベルは依然として十分に高く、ガス混合物が水に再形成しない温度(通常3,000°F以上)までは下がる。しかし、その温度は、着火が生ずる(21)臨界的温度レベル(通常7,000°F以下)にあり、高レベルのエネルギー(23)が放出され、仕事がなされる。他者が行った試験・研究によれば、水素と酸素のガスは、3、000°F〜10,000°Fの温度では単体状態であり、ガスは分離したり、抜き出したりして、燃焼の前に貯蔵し得ることが示されている。
【0045】
さて、図2を参照すると、本発明のユニークな技術を使用して作動するように構成されたシステムの実施の形態の一つが示されている。図2に示されているシステムは、本発明の高熱・高エネルギーで水素と水素関連の発電を行う封じ込めユニット(31)の多くの可能な構造の一つである。封じ込めユニット(31)の壁(41)は、固形材料、通常、金属で作られる。好ましくは、封じ込めユニット(31)は不導電体である。封じ込めユニットは、不導電体化した、または、絶縁化した銅、真鍮、アルミニウムで、あるいはセラミックで作製することができる。封じ込めユニット(31)は、一端が蓋で塞がれた中空の円筒で、幾つかの適切に作動する高エネルギー源供給ユニット(32)、例えば、高エネルギーレーザ、高周波電磁波トランスミッタ、マイクロ波発振器、または高エネルギー電磁石などを使用して作動するような構造になっている。この構造は、2基の高エネルギー供給ユニットを使用するように示されているが、しかし、別法として、ただ1基の高エネルギー供給ユニットでも、またはどのような複数基の高エネルギー源ユニットを配列したもので構成することも可能である。高エネルギー供給ユニットに使用するのに利用可能な電源は極めて多数ある。エネルギー源は、本発明のプロセスを使用して水素発生反応領域(33)で約20,000°F〜40,000°Fの最大熱レベルを発生させる能力がなければならず、このようにして高度に励起された電子と陽子を内包する容器が形成される。
【0046】
水素発生反応領域(33)は、円筒状壁(41)内で高エネルギー封じ込めユニット(31)を通過するように封じ込めユニット(31)内に確立された高熱・高エネルギーフィールド(34)によって作られる。封じ込めユニット(31)は、通常、低温側入口(36)と高温側出口(37)を備える冷却ジャケット(35)で囲まれている。冷却には様々な冷却媒体が使用され得る。封じ込めユニット(31)に発生されるのは高熱であるので、冷却媒体は、好ましくは、非水系冷却剤であり、それに適切な添加物が加わったものである。
【0047】
水ベース原料を導入して水素と酸素に変換するため、外部の水源から液状の水を水気化器(38)に供給する。水気化器からは、水蒸気が、好ましくは常温で、水素発生反応領域(33)に直接延びる水蒸気導管(39)経由で送られる。別法としては、加熱された水または水蒸気が、反応領域へ供給される。水蒸気導管の端には、蒸気出口ノズル(40)があり、ここから直接水素発生領域(33)に水蒸気が放出される。封じ込めユニット(31)の円筒状壁(41)は、封じ込めユニット(31)の水蒸気導管(39)端でキャップ(42)により封じられる。また、端部キャップ(42)は、封じ込めユニット(31)に外の空気を調節して導入するための1個以上のオリフィス(43)を取り付けることが可能である。また、さらに、端板オリフィス(43)と同様に、調節用のオリフィスを導管とともに設け、調節された量の不活性ガス(すなわち、アルゴン)を封じ込めユニット(31)に導入することもできる。
【0048】
運転を行うと、高エネルギー供給ユニット(32)によって、壁(41)から封じ込めユニット(31)に至るエネルギーフィールドが発生させられる。高エネルギーフィールドによって、約20,000°F〜40,000°Fの範囲の温度環境が生まれる。高エネルギーかつ高温のフィールド(34)が、封じ込めユニット(31)の内部を通って、(A)の箇所のオープン端領域に向かって流れる。エネルギーフィールド(34)は、封じ込めユニット(31)のセンターラインに向かって蓄積し、その最も近いポイントで最も高い温度(上で議論したように約20,000°F〜40,000°F)に達し、水素反応発生領域(33)が形成される。封じ込めユニット(31)の損傷を保護するため、冷却ジャケット(35)が壁(41)に対して設けられ、そのジャケット(35)には冷却剤(好ましくは非水系処方物)が冷却剤入口と出口(36)と(37)経由で入出する。水源は、水の気化器(38)の入口に接続され、水の気化器(38)は水を水蒸気に変え、水蒸気を水蒸気導管(39)に通し、水蒸気出口(40)から直接的に極めて高熱の水素発生領域(33)に放出する。水蒸気(水の分子)は、単体ガス、すなわち、水素(44)と酸素(45)に即座に変えられ、分離される。ガスは、エネルギーフィールド(34)内の極端な高熱により分離されたまま、封じ込めユニット(31)を通り抜けながら温度が下がり、次いで端部から周辺領域(A)に出る。領域(A)では、周囲条件に曝されて温度がさらに急速に低下し続ける。
【0049】
まさにこのポイントでこそ、本発明の方法と装置の最終的結果である臨界的で、ユニークな事象が起こるのである。2種のガス(44)と(45)が、より冷温の周辺状態(A)を通過するにつれて、温度が下がるが、温度レベルは依然として十分に高く、2種のガスが水に再形成しない温度(図1に関して記載したように)に至る。しかし、その温度は、着火が起こる臨界的温度レベル(A−1)である。そのポイントで、燃焼(46)が起こり、高レベルのエネルギー(47)が放出され、仕事がなされる。
【0050】
図3A,Bは、本発明の発明者らが構成したベンチスケール試験の運転に基づく数学上の計算に係わる表であり、BTUベースでエネルギー利得(正味利得パワー)可能性の定量化を示す。計算の結果が示すところによると、5KWhレベルの想定エネルギーでHOの処理を行いながら、プラズマアークを運転するとき、正味の結果として、エネルギーの利得が得られるということである。特に結果が示すところによると、Btuベースでエネルギー消費量が122万8,320Btuで、水素の形での発生パワーが377万9,214Btuとなるであろうということである。この計算時点では、まだ実際の利得は完全に定量化されたというわけではなかったが、このことについては、以下の記載と図4,5,6で詳しく議論するものとする。しかし、この初期研究と計算の結果は、利得は強くポジティブであった。計算に示されているように、エネルギー消費量が仮に倍増しても、あるいは発生エネルギーが半分になったとしても、正味は、極めてポジティブの結果となるであろう。
【0051】
以下に、装置の実施の形態の一つの試験概要について説明する。
【0052】
試験研究は、本発明に基づいて構成された装置で行われた。製作された設備は、本明細書ではイオン化ガス反応器(「IGR」)と称される。IGRを使用する試験に当たって、エネルギーポテンシャルの利得とIGRの中で発生したエネルギー源(BTU/時間ベース)に関する詳細な説明とに新しい発見があった。さらに、試験パラメータ、変数、および結果に対するテンプレートを表計算ソフトで作成し、実験的に得られたデータの解釈をサポートした。最終的には、正確なエネルギー収支フォーマットを作成し、すべてのIGR試験結果を定量化した。次に、一連の試験を行い、以下を実施した。
【0053】
(a)エネルギー入力とエネルギー出力の源を較正し、エネルギー収支を可能とすること。
【0054】
(b)エネルギー発生フィールドの中に注入された水によって、IGRの中に、発生した正確なエネルギーを決定すること。
【0055】
(c)重水(ヂュウテリウム)添加の水がエネルギー発生の増加を示すかどうかを測定し、水素と重水素の相互反応の有無を決定すること
【0056】

入出力エネルギーの源を較正するため、熱収支テンプレートを新たに作成した。含まれる項目は、以下の通りである。
【0057】
(i)IGRへの電気エネルギー入力(反応フィールド維持のため)
【0058】
(ii)非水系冷却回路経由で電極から出る熱
【0059】
(iii)IGRシステム周りから排出された空気の流れから出る加熱された空気
【0060】
(iv)壁周りから周囲の部屋に対流で出る熱
【0061】
(v)注入した水の蒸発潜熱
【0062】
(vi)系に入る空気の湿度と比熱の変化
【0063】
(vii)周囲の室内空気からIGR装置周りに入る熱のエネルギー
【0064】
試験は、図1に示されているタイプの装置を使用して行った。試験で使用された装置の寸法の幾つかは以下の通りであった。陰極電極(3)と陰極カラー(24)から構成される陰極本体アセンブリは、円筒状本体部分の直径が3インチで、陰極アセンブリ上部の円錐部分が60度のテーパであった。上部円錐の高さは、1.5インチ。チップ端(14)の箇所の陰極本体アセンブリ表面の直径は1.25インチ。陰極電極と陽極電極各々の直径は0.5インチ。第一流路(10)の幅は約0.018インチで、第二流路(11)の幅は約0.14インチ。陰極電極チップは、チップ端(14)の箇所の陰極本体アセンブリ表面の先に約0.0625インチだけ伸びたものであった。陰極電極と陽極電極の間の距離は、スタートアップ時に約0.5インチで、装置運転後は約1.0インチに増加した。装置は約5kWの電力で運転された。理解されることであるが、より大きい装置も、本明細書に提供された教示と実施の形態を使用して、より多い電力向けに構成し得る。
【0065】
図6A〜Cは、運転パラメータと図4と5に示された結果を得るために行われた試験の際に得られた結果を示す。IGRシステムは、IGRに水を連続供給するように構成した。最初、装置は発生フィールド内に注入されたアルゴンガスで運転し、平衡に達した後、水蒸気をIGRに導入した。結果は、熱収支テンプレートから作成したグラフとして図4に示される。
【0066】
システムは、約30分後に安定した平衡(所与時間に入熱または出熱があっても温度が上がらなかったポイント)に達した。そのポイントで、水蒸気をIGRのプラズマ内に導入した。次に入力を少しだが増加した(反応器の運転特性の変化のため)。次に、その時、パワー出力(BTU/時間)は実質的にポジティブに変化し、230万BTU/時間の正味増加が、反応を維持するに必要なすべてのエネルギーを凌駕して、IGRで発生した。
【0067】
次に、確認試験として、部屋の換気装置を動かすことにより、周囲の室温を低下させた。過剰の室内空気によって、装置への入口空気が冷却され、装置の内部空気と排出される空気の量が低下し、熱安定平衡状態が変化した。反応器の入口、出口の量、および温度がどの程度低下したかを正確に定量化し、記録した後、部屋の換気装置を停止した。反応器の安定した平衡状態が回復し、230万BTU/時間という正味のBTU/時間ベースのパワー利得に戻った。この確認試験で観測された結果が、図4に示され、この事象を示している。
【0068】
追加実験を行った。普通の水を最初、IGRに注入した。次にジュウテリウム:水が1:50の比の「重水」添加水(ジュウテリウム)注入に替えて行った。この試験の結果が、図5に示される。安定した平衡状態に達した後(42分後)、水を注入したところ、IGRに正味のエネルギー発生利得があり、次に、もう一度約35分後に安定した平衡状態に達した。そのポイントで、重水添加の普通の水(ヂュウテリウム:水が1:50の比)を反応器に注入したが、観測された発生エネルギーに有意の追加的利得はなかった。
【0069】
試験終了近く、IGRへのアンペア数を手動で増加した。結果が示すところによると、システムへの入出力は増加したが、IGR内のパワーの正味発生に相違はなかった。
【0070】
結論として、一連のこの定量化試験群の際に到達した結果は、本発明の装置とプロセスを使って、水を水素と酸素に解離すると、所要(消費)エネルギーを凌駕してエネルギーの正味利得(BTU/時間ベース)が得られ、IGR反応が維持されるというユニークな発見を明確にサポートする。そして、驚くべきことに、観測されたエネルギー利得は、図3で数学的に予測された(計算された)エネルギー利得を超えるものであった。
【0071】
以上、好ましい実施の形態が示され、説明されたが、特許請求の範囲に記載された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、様々な部分的修正を前記の方法と装置に加え得る。従って、本発明は、実施の形態を例として記載されたものであり、それによって限定されるものではないことが、理解されなければならない。
【符号の説明】
【0072】
1 高エネルギープラズマ発生器、2 陽極電極、3 陰極電極、4,34 高エネルギーフィールド、5 封じ込めフィールド、6,8 陰極・陽極冷却用入口管、7,9 陰極・陽極冷却用出口管、10 第一流路、11 第二流路、12,38 水気化器、13,15,16,17 流れライン、14,27 チップ、18 反応生成領域、21,46 着火(燃焼)、22 プラズマバブル、19,44 単体水素、20,45 単体酸素、23,47 高レベルエネルギー、24 陰極カラー、25 冷却剤入口、26 冷却剤出口、28 第一壁、29 第二壁、31 封じ込めユニット、32 高エネルギー供給装置、33 水素発生反応領域、35 冷却ジャケット、36 低温冷却剤入口、37 高温冷却剤出口、39 水蒸気導管、40 水蒸気出口ノズル、41 壁、42 端部キャップ、43 オリフィス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸素を製造する装置において、
(a)陰極電極と、陰極電極を囲み、第一壁と第二壁を有して第一流路と第二流路を形成する電極カラーとを有する陰極アセンブリ、および
(b)陽極電極と、陽極電極を囲み、少なくとも1個の流路を形成する電極カラーとを有する少なくとも1個の陽極アセンブリを備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1の装置において、陰極電極が円筒状本体部分と導電チップを有する円錐状鼻部分とを有することを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2の装置において、円筒状本体部分と円錐状鼻部分が、耐高温セラミックまたは絶縁化された金属から製作され、チップがタングステンから製作されることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1の装置が、冷却液を使用して陰極電極と陽極電極を内部的に冷却する手段をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4の装置において、冷却剤が非水系冷却剤であることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1の装置が、水蒸気発生装置をさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1の装置において、複数の陽極電極が陰極アセンブリから等距離に配置されることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1の装置において、電極カラーが、銅、真鍮またはセラミック材料の一種から製作されることを特徴とする装置。
【請求項9】
水素を製造する装置において、
(a)近接基部と末端部とを有する中空円筒であって、前記円筒の基部の口がキャップで覆われ、前記円筒の末端部の口が開いている中空円筒と、
(b)中空円筒に運転可能に接続され、中空円筒の内部内に高エネルギーフィールドを発生させる少なくとも1個の高エネルギー供給源と、
(c)高エネルギーフィールド内の中空円筒の内部に水蒸気を供給する手段とを備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9の装置が、中空円筒を囲む冷却ジャケットをさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項9の装置において、水蒸気を中空円筒に供給する手段が、水の気化器を備えることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項9の装置において、高エネルギー供給源が、レーザ、高周波電磁波トランスミッタ、マイクロ波発振器、および高エネルギー電磁石から成る群から選択されることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12の装置において、中空円筒が、絶縁化された銅、絶縁化された真鍮、絶縁化されたアルミニウム、またはセラミック材料から成る群から選択されることを特徴とする装置。
【請求項14】
水素と酸素を製造する方法において、
(a)陰極電極と、陰極電極を囲み、第一壁と第二壁を有して第一流路と第二流路を形成する電極カラーとを有する陰極アセンブリ、および陽極電極と、陽極電極を囲み、少なくとも1個の流路を形成する電極カラーとを有する少なくとも1個の陽極アセンブリを提供するステップと、
(b)陰極に電力を供給し、陰極電極と少なくとも1個の陽極電極との間に電気の流れを形成して、磁気誘導電気封じ込めフィールドを形成するステップと、
(c)第一流路経由で電気封じ込めフィールドに不活性ガスの流れを供給し、陰極電極のチップ近くにプラズマを形成するステップと、
(d)第二流路経由で電気封じ込めフィールドと陰極電極のチップ近くのプラズマに水蒸気の流れを供給し、単体の水素と酸素を製造するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14の方法において、不活性ガスがアルゴンであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15の方法において、アルゴンが、電極当たり毎時8〜10標準立方フィートの流量で供給されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15の方法において、水蒸気が、水気化器を使用して供給されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項14の方法が、
(e)単体の水素と酸素とが、電気封じ込めフィールドを出るときに着火させ、単体水素からエネルギーを放出させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項14の方法が、
(f)電気封じ込めフィールドで製造された単体の水素と酸素とを分離し、捕集し、そして貯蔵するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18の方法が、
(g)単体の水素と酸素で発生したエネルギーを発電に使用するステップをさらに含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2010−532744(P2010−532744A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516179(P2010−516179)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/069353
【国際公開番号】WO2009/009496
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(510006691)エヴァコ エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】