説明

水を滅菌するための抗菌性材料

本発明は、抗菌剤(A)およびキャリア(B)を含んでなる粒子からなる抗菌性材料に関し、抗菌性材料は顆粒材料であり;粒子の少なくとも90%w/wはDIN66165−1/−2の方法による測定で1.0mm以上8.0mm以下の範囲の粒度を有し;粒子の少なくとも90%w/wは8以下の縦横比Rを有し;抗菌剤(A)は元素銀ナノ粒子を含んでなり;抗菌剤(A)は抗菌性材料上に0.001%w/w以上2%w/w以下の範囲の量で存在し;キャリア(B)はポリアミドを含んでなるポリマーであり;キャリア(B)は抗菌性材料上に98%w/w以上99.999%w/w以下の範囲の量で存在する。本発明はさらに、顆粒抗菌性材料を含んでなる物品に関し、顆粒抗菌性材料または物品を含んでなる装置に関する。本発明はまた、顆粒抗菌性材料を調製する方法、ならびに水処理システム/装置、水濾し器、水泳プール、渦流浴、水供給容器、貯水中における、および飲料水の処理のための顆粒抗菌性材料、または顆粒抗菌性材料を含んでなる物品または装置の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、抗菌剤およびキャリアを含んでなる粒子からなる抗菌性材料、より詳細にはその中での微生物の成長を抑制することで水を滅菌するのに使用し得る抗菌性材料に関する。本発明は、抗菌性材料を含んでなる物品、および抗菌性材料または物品を含んでなる装置にさらに関する。本発明はまた、抗菌性材料を調製する方法にも関し、ならびに、水処理システム/装置、水濾し器、水泳プール、渦流浴、水供給容器、貯水における、および飲料水処理のためのa)抗菌性材料、b)物品、およびc)装置の使用にも関する。
【0002】
今日、地球上の10億人を超える人々が、清潔な飲料水を入手できずにいる。地球の70%は水であるが、この水の2.5%のみが飲用目的に利用できる。残りは塩水であり、飲用に適さない。安全でない水と基本的衛生の欠如により全ての病気と疾患の80%が引き起こされ、毎年、戦乱を含めたあらゆる形態の暴力よりも多くの人々を死なせている。発展途上国の多数の人々、特に女性と子供は、彼らを病気にする可能性が高い水を取りに行くために、毎日3時間以上歩いている。日々費やされるこれらの時間は、彼らが学校に行ったり働いたりすることを妨げるので重大である。特に子供は安全でない水の影響を被りやすい。安全でない水と基本的衛生の欠如のために、毎週40,000人を超える子供が死亡している。これらの死亡の90%は5才未満の子供に関わる。近い将来に予期される人口の迅速な成長から判断すると、問題は深刻化することが予想される。したがって地球上のより多数の人々が飲料水をより容易に入手できるようにする解決策が求められている。そのことにより、疾患の広がりが著しく制限され人々の生活の質が改善する。
【0003】
滅菌しなければ飲むことが安全でない水の滅菌(水中に生息する微生物の増殖抑制)は、この問題の解決策を提供する鍵である。既知の水の滅菌技術は、a)水の煮沸、b)塩素および銀錠剤の使用、c)ヨウ素の使用、d)濾過、およびe)濾過およびハロゲン使用の組み合わせである。残念なことに、これらの水の滅菌法のいずれもが、高い抗菌効率、低コストで容易な保守、特定の抗菌剤に関連したヒトに対する健康リスクがない(例えばヨウ素は甲状腺を患っている人々、妊婦および子供には推奨されない)、小規模および大規模双方に拡大縮小でき、小規模(家庭)および大規模(村、町など)の水滅菌プロジェクト双方における実施を可能にするなどの主要パラメータの組み合わせを提供しない。
【0004】
抗菌剤とは、本発明の文脈においても、微生物を死滅させまたはその成長を遅延させる薬剤、化学種、化学物質、またはその他の物質を意味する。抗菌剤としては、抗細菌剤、抗ウィルス剤、抗真菌剤、および抗寄生虫剤が挙げられる。銀は抗菌剤として長らく知られている。銀の抗菌効率は、活性化学種の性質および濃度、細菌タイプ、活性化学種の表面積、細菌濃度、活性化学種を消費してその活性を低下させる化学種の濃度および/または表面積、不活性化機序などに左右される。
【0005】
米国特許第5011602号明細書は、水を滅菌する(その中の微生物の増殖を抑制する)のに適した抗菌性材料を開示する。米国特許第5011602号明細書で開示される抗菌性材料は、抗菌剤(イオン、および銀、銅、亜鉛、水銀、鉛、スズなどの金属化合物)を含有するキャリア(非晶質アルミノケイ酸塩、活性粘土、合成または天然結晶性アルミノケイ酸塩、シリカゲル、アルミナ、海泡石、粘土質物質)と、キャリアを取り囲み水および微生物を通過させる多孔性布帛とを含んでなる。前記布帛は、上述した理由から望ましくない粘泥形成を引き起こし得る汚染物質を濃し取るために用いられる。
【0006】
米国特許第5011602号明細書は、抗菌性材料の布帛外への漏出を防止する解決策を提供するが、抗菌性材料の重量に耐えるのに十分な機械的強度を有するべきである布帛を作製するために特別な注意を要する。さらに布帛はまた、a)抗菌性材料を出入りする水および微生物の自由流れと、b)経時的な水および粘泥中の汚染物質による布帛の孔詰まりとの均衡を保つために、適正サイズの孔も有さなくてはならない。水汚染物質は地球全域において同じ性質ではなく、水中で同一濃度でもないことを考慮すると、材料の物理的、化学的、および機械的特性の微調整はより一層困難になる。さらに布帛の孔は、水汚染物質と粘泥によってやがては目詰まりするので、米国特許第5011602号明細書の抗菌性材料は、新しいものと交換されなくてはならない。さらに例えば布帛/抗菌性材料の誤用/拙劣な使用、または布帛の構造的な欠陥、布帛の偶発的破れのために、米国特許第5011602号明細書の(抗菌剤を含有する)キャリアが布帛から漏出した場合、キャリアは水中に拡散して、微生物は含まないと思われているが実際は拡散した担体材料を含む水を最終的に飲むヒトに対して、さらなる健康リスクをもたらす。またこのような解決策が対費用効果が高く、例えば大きなヒト集団に水を提供するのに欠かせない大型水容器または貯水槽のために容易に規模拡大できると想像することも困難である。
【0007】
家庭および/または地域貯水槽において、頑強で、対費用効果が高く、容易に規模拡大して現在の増強された抗菌性活性を維持し、抗菌性有効性の簡単な追跡が組み込まれて、ヒトに健康リスクをもたらさない、水の備蓄を滅菌するための解決策を提供することは有利であろう。
【0008】
本発明の目的は、米国特許第5011602号明細書で特定されたような問題または不都合のいくつかまたは全てを解決することである。
【0009】
したがって概して本発明によると、抗菌剤(A)およびキャリア(B)を含んでなる粒子からなる抗菌性材料が提供され、
a.抗菌性材料は顆粒材料であり;
b.粒子の少なくとも90%w/wはDIN66165−1/−2の方法による測定で1.0mm以上8.0mm以下の範囲の粒度を有し;
c.粒子の少なくとも90%w/wは8以下の縦横比Rを有し;
d.抗菌剤(A)は元素銀ナノ粒子を含んでなり、その元素銀ナノ粒子はキャリア(B)中に混合され;
e.抗菌剤(A)は抗菌性材料上に0.001%w/w以上2%w/w以下の範囲の量で存在し;
f.キャリア(B)はポリアミドを含んでなり;
g.キャリア(B)は抗菌性材料上に98%w/w以上99.999%以下の範囲の量で存在する。
【0010】
本発明の効果は、少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、なおもより好ましくは少なくとも3つ、最も好ましくは少なくとも4つ、または5つの以下の利点を示す抗菌性材料を提供することである。
i)頑強であり;
ii)望まれない沈積物の浄化が容易であり;
iii)増強された抗菌活性を有し;
iv)容易に規模拡大されて維持され;
v)その抗菌活性を経時的に追跡するのが簡単であり;
vi)健康リスクをもたらさない。
【0011】
「頑強な」とは、使用中に構造的完全性を保つ抗菌性材料を意味する。
【0012】
「望まれない沈積物の浄化が容易である」とは、藻類などの望まれない沈積物が抗菌性材料表面に全く付着し得ないか、またはその表面に付着したら容易に除去し得るので、例えば10rpm程度の穏やかな振盪の助けによって、抗菌性材料が容易な浄化および/または自己浄化特性を示すことを意味する。
【0013】
「増強された抗菌活性」とは、抗菌性材料が抗菌活性をより長期間にわたって示すことを意味する。
【0014】
「容易に規模拡大され維持される」とは、抗菌性材料が、その製造に特定の修正を加えることなく家庭または大規模地域用途で使用し得て、その維持管理のために専門技術要員が必要でないことを意味する。
【0015】
「その抗菌活性を経時的に追跡するのが簡単である」とは、抗菌性材料が、その抗菌活性変化と直接関連する視覚的退色を提供することを意味する。
【0016】
「健康リスクをもたらさない」とは、抗菌性材料がなおも活性でありながら、水中の抗菌性材料によって放出される銀濃度が低いことを意味する。世界保健機関(World Health Organization;WHO)、および「飲料水中の銀(Silver in Drinking Water)」[元々は飲料水の質のガイドライン(Guidelines for drinking−water quality)第2版、第2巻、衛生基準およびその他の支援情報(Health criteria and other supporting information)(WHO、ジュネーブ(Geneva)1996年)中で公表された]に関する報告の結論によれば、飲料水の細菌学的品質を保持するために銀塩を使用する場合、最大0.1mg/リットルまでの銀濃度が健康リスクなしに許容され得る。
【0017】
米国特許第5011602号明細書は、本発明による抗菌性材料およびその有利な効果について述べていない。
【0018】
本発明では、抗菌性材料は抗菌剤を含んでなる材料であり、抗菌性材料は、a)微生物、およびb)水および/または酸素に接すると、それらを死滅させおよび/またはそれらの増殖を抑制することで不活化する。抗菌性材料が微生物および/または水および/または酸素または上記のいずれにも曝露しない場合、明らかにその抗菌性効果は示されないが、それはなおも本発明の文脈で抗菌性材料と称される。抗菌性材料が微生物および/または水および/または酸素または上記のいずれにも曝露しない場合、それはなおも抗菌活性を示すことができ抗菌性用途に適する。
【0019】
粒子は、a)後述される寸法を有して、b)その輸送および特性に関して1つの単位として挙動する小さな物体と定義される。本発明の文脈では、顆粒、粒子、およびグレインという用語は同義的に使用される。
【0020】
顆粒材料は、粒子が相互作用する度にエネルギー損失によって特徴付けられる、離散した固形巨視的粒子の集塊である(最も一般的な例はグレインが衝突した際の摩擦であろう)。顆粒材料を構成する構成物は、熱運動ゆらぎを被らないように十分大きくなくてはならない。したがって顆粒材料中のグレインサイズの下限は、約1μmである。本発明の文脈で、顆粒材料とは、後述される方法による測定で、粒度が1mm以上8mm以下の範囲の顆粒を含んでなる材料を指す。
【0021】
粒子は、例えばそれらの粒度およびその範囲に関して、異なる様式で分類され得る。粒子クラスの限界を定義する粒度範囲は、例えば米国で使用されるウェントワース区分(Wentworth scale)(またはウッデン−ウェントワース(Udden−Wentworth))で命名されており、C.K.Wentworthによる「古典的沈降物の等級スケールおよびクラス用語(A scale of grade and class terms for clastic sediments)」、J.Geology 30:377〜392(1922年)で報告されている。ウェントワース区分を表1に要約して記載する。
【0022】
【表1】



【0023】
【表2】



【0024】
ウェントワース区分に従って、本発明は以下の粒子クラス分類に属する顆粒材料に言及する。極粗粒砂および/または極細粒礫および/または細粒礫および/またはそれらの混合物。好ましくは本発明の粒子は、巨礫、大礫、極粗粒礫、粗粒礫、中粒礫、粗粒砂、中粒砂、細粒砂、極細粒砂、シルト、粘土、コロイドに分類されない。本発明による顆粒材料が砂または類似物でなく、ポリマーベースであることは明らかであろう。
【0025】
顆粒材料は、製薬産業、農業、およびエネルギー生産などの多様な用途において商業的に重要である。顆粒材料のいくつかの例は、ナッツ、石炭、砂、米、コーヒー、コーンフレーク、肥料、およびボールベアリングである。
【0026】
実際には、真の顆粒材料は常に多分散性であり、それは集合体中の粒子が異なるサイズを有することを意味する。粒径分布概念は、この多分散性を反映する。粒子集合体について、特定の平均粒度が必要であることが多い。このような平均粒度を定義するいくつかの異なる方法がある。
【0027】
顆粒材料の粒径分布(PSD)は、グレイン粒度分布としてもまた知られており、サイズに従って選別された存在する粒子の相対量を定義する値または数学関数の一覧である。「粒度」および「粒径分布」という用語は、本発明の文脈で顆粒材料に関して同義的に使用される。しかし明らかに分かるように「粒度」という用語を個々の粒子に関して使用する場合、これは「粒径分布」の意味を有することを意図せず、粒子それ自体のサイズを意味する。
【0028】
材料のPSDは、その物理的、化学的、および機械的特性のために重要であり得る。例えばそれは顆粒材料の強度および耐荷特性、化学反応に関与する固形分反応性に影響し得て、それは十分に制御される必要がある。粒度および/またはPSDを表現する方法は、通常それを測定する方法によって定義される。粒度および粒径分布を測定するいくつかの方法がある。それらのいくつかは光に基づき、別のものは超音波、または電界、または重力、または遠心分離に基づく。
【0029】
本発明による顆粒材料の粒度を測定するのに使用される方法は、ふるい分析である。ふるい分析は、DIN66165−1/−2に記載される方法に従って実施された。それによれば、顆粒材料は異なる大きさのふるい上で分離される。したがってPSDは、例えば1.4mm〜1.6mmの大きさのふるいを使用した場合の「1.4mm〜1.6mmの範囲の粒度を有するサンプル顆粒材料の%」などのように、離散サイズ範囲の観点から定義される。
【0030】
本発明の顆粒材料の粒度は、DIN66165−1/−2によって測定される。好ましくは顆粒材料の90%は1.0mm以上8.0mm以下の範囲であり、より好ましくは顆粒材料の95%は1.0mm以上8.0mm以下の範囲であり、なおもより好ましくは顆粒材料の97%は1.0mm以上8.0mm以下の範囲であり、なおもより好ましくは顆粒材料の98%は1.0mm以上8.0mm以下の範囲であり、なおもより好ましくは顆粒材料の99%は1.0mm以上8.0mm以下の範囲であり、なおもより好ましくは顆粒材料の100%は1.0mm以上8.0mm以下の範囲である。
【0031】
本明細書に範囲で示されるあらゆるパラメーターの全ての上方および下方境界では、限界値は各パラメーターの各範囲内に含まれるものと理解される。本明細書に記載されるパラメーターの最小および最大値のあらゆる組み合わせを使用して、本発明の様々な実施態様および選択のパラメーター範囲を定義してもよい。
【0032】
特に断りのない限り、例えば材料、粒子、顆粒、粒度、ポリアミド、ナノ粒子、カチオンなどの用語の複数形態の本明細書における用法は単数形を含むものと理解され、逆もまた然りである。
【0033】
顆粒材料の粒子は、例えば球面、錐体、円柱(本発明ではロッドまたはロッド様という用語は、粒子の形状に関して使用される場合、円柱という用語と同義的に使用される)、米粒様、八面体、立方体、平板状または不規則などの様々な形状であり得る。本発明の文脈では、物体の形状は形状の縦横比Rによって定義される。縦横比は、その最大寸法(L)と最小寸法(S)との比率と定義される。
R=L/S(数式1)
【0034】
縦横比Rは、光学的顕微鏡検査によって測定し得る、最大寸法対最小寸法の比率などの三次元または二次元形状の2つの特徴的な寸法に適用される。
【0035】
好ましくは、Rは8以下であり、より好ましくはRは6以下であり、なおもより好ましくはRは5以下であり、最も好ましくはRは4以下である。暗黙的にRは1以上である。好ましくはRは1以上5以下の範囲であり、より好ましくはRは1以上4以下の範囲である、なおもより好ましくはRは1以上3以下の範囲である、最も好ましくはRは1以上2以下の範囲である。
【0036】
一実施態様では、抗菌性材料の顆粒は、球状および/または円柱状(円柱状の代案の用語はロッド様である)および/または米粒様形状および/または楕円体である。
【0037】
本発明の別の実施態様では、粒子の少なくとも90%w/wは、本明細書に記載されるようなUAF/OCA30の方法による測定で、30°以下の水中摩擦角(水中で測定される摩擦角)を有する[「UAF/OCA30法:水中摩擦角(UAF)を測定する方法(Method UAF/OCA30:Method for measuring the underwater angle of friction(UAF))」の24頁32行の実施例を参照されたい]。
【0038】
本発明の粒子の水中摩擦角(UAF)は、粒子および表面の双方を水に浸し、直径5.0cmの25mlの水の円柱によって生じる圧力に等しい水圧を双方にかけて、粒子を直径5.0cmの丸いポリスチレン表面にのせた際に、粒子が滑り始める面からの角度のn回の測定値の算術平均である。UAFは水中で測定される。UAFを測定するためには、DataPhysics Instruments GmbHの製造するビデオベースの半自動接触角度計OCA30を使用した。上記装置は、固形物の濡れ挙動の半自動測定において、ならびに系列試験および系統立った分析において典型的に使用される。本発明の文脈においては、この装置を使用して、多様な形状および粒度で提供される本発明の顆粒材料の顆粒の水中摩擦角を正確に測定した。
【0039】
直径が5.0cmで高さが少なくとも3.0cmのポリスチレン円柱状容器には、25ml(ミリリットル)の水を装填し得る。サンプル粒子を水中に浸して、同時に容器壁に接触するように容器の底周辺に沈め得る。次に容器をOCA30の測定台上に適切に固定し得る。測定台にはソフトウェア制御モーターが付いており、YおよびZ軸方向に調節可能であり、正確なサンプル位置決めのために調節可能である。引き続いて測定台の傾斜を開始する。測定台の傾斜速度は2.7°/秒であった。測定台の傾斜は、インラインビデオカメラによって追跡される。サンプル粒子がその最初の位置から測定台の非傾斜側に向けて滑り始める角度は、インラインビデオカメラ録画によって記録し得る。顆粒材料から無作為に選択された粒子について、毎回、測定をさらにn−1回繰り返す(nは顆粒材料あたりの総測定数を表す)。上述のように記録された角度を平均化し(角度の値を合計してnで除する)、測定値の平均値を個々の粒子の水中摩擦角として報告する。このようにして測定された顆粒材料粒子の摩擦角は、その下でこれらの粒子がそれらの一連のユニークな特性を示す、水性環境をより良好にシミュレートする。現実の条件では、顆粒材料が被る水圧は水中摩擦角の測定で使用されるものを超え得る。それでもなお粒子の頑強さを考えると、直径5.0cmの25mlの水の円柱により生じる圧力よりも高い水圧は、それらの容易な浄化および/または自己浄化特性を増強するであろう。
【0040】
水中摩擦角は、本発明の抗菌性材料の粒子が動き始める、外力量の測定値である。特定の形状および形態の粒子に対する(より)低い水中摩擦角は、相対的に(より)小さな外力を受けた際に、粒子が動き始めることを意味する。特定の形状および形態の粒子に対する(より)高い水中摩擦角は、相対的に(より)大きな外力を受けた際に、粒子が動き始めることを意味する。
【0041】
好ましくは水中摩擦角は30°以下であり、より好ましくは水中摩擦角は29°以下であり、なおもより好ましくは水中摩擦角は28°以下であり、なおもより好ましくは水中摩擦角は27°以下であり、最も好ましくは水中摩擦角は26°以下である。一般に水中摩擦角は1°以上であり、適切には水中摩擦角は2°以上、または3°以上であり、水中摩擦角が4°以上、または5°以上であっても依然として問題ない。
【0042】
別の一実施態様では本発明は、粒子の少なくとも90%w/wが30°以下の水中摩擦角(UAF)を有する抗菌性材料を提供する。好ましくは粒子の少なくとも95%w/wは30°以下の水中摩擦角(UAF)を有し、より好ましくは粒子の少なくとも98%w/wは30°以下の水中摩擦角(UAF)を有し、最も好ましくは粒子の100%w/wは30°以下の水中摩擦角(UAF)を有する。本明細書では、UAFは本明細書に記載されるUAF/OCA30の方法によって測定された[「UAF/OCA30法:水中摩擦角(UAF)を測定する方法」の24頁32行の実施例を参照されたい]。
【0043】
本発明では、顆粒抗菌性材料は、顆粒から構成されて抗菌剤を含んでなる材料を指す。本発明の文脈では、「顆粒抗菌性材料」および「顆粒である抗菌性材料」という用語は同義的に使用される。
【0044】
粒子の容易な浄化および/または自己浄化は、例えば抗菌性材料を含有する物品/装置を振盪させることにより、および/または粒子を相互に動かす振盪または振動の他の手段によって達成し得る。出願人らは特定の理論によって拘束されないが、粒子の運動は機械的摩擦によって、さもなければ抗菌性材料の抗菌性潜在力を制限するかもしれないあらゆる沈積物を互いの表面からこすり取ると考えられる。粒子の水中摩擦角が低いほど、粒子、または同一粒子の一定量がより容易に動き始め、したがって最小の外力でそれらの間の摩擦、および引き続くそれらの表面の望まれない沈積物の浄化を増強させる。このようにして本発明の粒子は、容易な浄化および/または自己浄化特性を示し得て、抗菌活性を増強させる。
【0045】
抗菌剤(A)は、抗菌性材料上に0.001%w/w以上2%w/w以下の範囲の量で存在する。より好ましくは抗菌剤は抗菌性材料上に0.01%w/w以上1.5%w/w以下の範囲の量で存在し、なおもより好ましくは抗菌剤は抗菌性材料上に0.1%w/w以上1.0%w/w以下の範囲の量で存在する。
【0046】
本発明では、抗菌剤は元素銀(Ag°)ナノ粒子を含んでなる。本発明の文脈では、元素銀ナノ粒子という用語は、元素銀(Ag°)含んでなる粒子を指し、適切には1nm(ナノメートル)以上100nm以下の範囲の平均粒度を有する。
【0047】
元素銀ナノ本発明の粒子は、好ましくは主に銀(Ag°)を含んでなり、すなわちそれらは90%w/w以上が銀であり、好ましくは95%w/w以上が銀であり、より好ましくは98%w/w以上が銀であり、なおもより好ましくは99%w/w以上が銀であり、最も好ましくは99.4%w/w以上が銀であり、なおも最も好ましくは100%w/wが銀である。好ましくは、元素銀ナノ粒子は、元素Al、またはFeまたはSiまたはそれらの対応するイオン、またはそれらの組み合わせを有さない。
【0048】
元素銀ナノ粒子は、好ましくは銀を含んでなる化合物を熱分解して製造される。
【0049】
本発明の文脈では、銀を含んでなる化合物という用語は、、例えばAg、Ag+2などの銀をカチオンとして含んでなるあらゆる化合物を意味する。少なくとも1つは銀カチオンでなくてはならないが、化合物それ自体はカチオン化学種以外を有してもよい。銀を含んでなる化合物として本発明の文脈で特徴付けられる一般タイプの化合物の数例は、銀酸化物、銀水酸化物、銀塩類、銀錯体、銀包接化合物などである。好ましくは銀を含んでなる化合物は、例えば硝酸銀、塩化銀、酢酸銀、トリフルオロ酢酸銀などの銀塩、または銀塩混合物である。より好ましくは、銀を含んでなる化合物は、硝酸銀、酢酸銀、トリフルオロ酢酸銀、およびそれらの混合物からなる化合物群から選択される。
【0050】
元素銀ナノ粒子は、例えば球状、八面体、円錐、立方体、平板状または不規則などをはじめとするあらゆる形状であってもよい。好ましくは、元素銀ナノ粒子は、別の無機分子粒子または活性炭素および/またはその他の金属イオン/無機イオンに吸着されずおよび/またはそれと結合せず、無機分子粒子または活性炭素の一部を構成する別の金属/無機イオンと交換されない。
【0051】
元素銀ナノ粒子の平均粒度は、透過電子顕微鏡法(TEM)によって測定し得る。元素銀ナノ粒子(APSN)の平均粒度は、次のように定義される数平均粒度である。
APSN=(Σ)/(ΣNi)(数式2)
式中、
は寸法が1mm(長さ)×1mm(幅)、層厚さが70〜100nmの範囲、直径がDの3個のミクロトームサンプル(切片)中に存在する全元素銀ナノ粒子の数である。3個のミクロトームクロトーム切片は、顆粒材料の3個の無作為に選択された粒子中で作成される。
【0052】
本発明の好ましい一実施態様では、元素銀ナノ粒子は100nm以下の平均粒度を有する。好ましくは元素銀ナノ粒子の平均粒度は1nm以上、より好ましくは5nm以上、最も好ましくは10nm以上である。好ましくは元素銀ナノ粒子の平均粒度は100nm以下、より好ましくは95nm以下、最も好ましくは90nm以下である。
【0053】
元素銀ナノ粒子は、キャリア(B)中に混合される。「元素銀ナノ粒子」および「ナノ粒子」という用語は、本発明の文脈で同義的に使用される。本発明の元素銀ナノ粒子は、キャリア(B)中に混合されると、分散または会合するものとして特徴付けられ得る。本発明では、他の元素銀ナノ粒子と接触または結合していない元素銀ナノ粒子は、非会合ナノ粒子分散と称される。本発明では、少なくとも1つの他の元素銀ナノ粒子と接触または結合している元素銀ナノ粒子は、「会合ナノ粒子」と称される。
【0054】
元素銀ナノ粒子の%分散度(%DOD)および会合度(%DOA)は、APSNの測定について上述したようなサンプル要件に従って、透過電子顕微鏡法(TEM)によって測定し得る。
【0055】
キャリア(B)内の元素銀ナノ粒子の%DODと%DOAの関係は、次のとおりである。
%DOD=100−%DOA(式3)
【0056】
元素銀ナノ粒子の%DOAは、APSNの測定について上述したようなサンプル要件に従って、透過電子顕微鏡法(TEM)によって測定し得る。%DOAは次のとおり測定される。
%DOA=100×(Nconnected/N)(式4)
式中、
は寸法が1mm(長さ)×1mm(幅)で層厚さが70〜100nmの範囲の3個のミクロトームサンプル(切片)中に存在する元素銀ナノ粒子の数であり、Nconnectedは少なくとも1つの他の元素銀ナノ粒子に結合する個別の銀ナノ粒子の総数を表す。3個のミクロトームクロトーム切片は、顆粒材料の3個の無作為に選択された粒子中で作成される。
【0057】
APSNおよび%DOAは、同一のまたは異なる3個のミクロトームサンプルから測定し得る。好ましくは、APSNおよび%DOAは、同一の3個のミクロトームサンプルから測定される。
【0058】
本発明の好ましい一実施態様では、元素銀ナノ粒子は50%よりも低く、より好ましくは40%よりも低く、なおもより好ましくは30%よりも低く、最も好ましくは28%よりも低く、例えば25%よりも低い%会合度を有する。
【0059】
本発明の好ましい一実施態様では、元素銀ナノ粒子は50%よりも高く、より好ましくは60%よりも高く、なおもより好ましくは70%よりも高く、最も好ましくは72%よりも高く、例えば75%よりも高い%分散度を有する。
【0060】
さらに別の一実施態様では、本発明は、元素銀ナノ粒子が100nm以下の平均粒度、および50%よりも低い%会合度を有する、抗菌性材料を提供する。
【0061】
キャリア(B)とは、その中に抗菌剤(元素銀ナノ粒子)が分散しているポリマー組成物を意味する。好ましくはキャリア(B)は、吸着、結合、またはイオン交換を通じて、本発明の元素銀ナノ粒子を保持しない。
【0062】
本発明の文脈では、キャリア(B)は、2つ以上のポリマー、すなわちポリアミドおよび1つ以上のその他のポリマーを含んでなり得る。好ましくはキャリア(B)はポリアミドのみを含んでなり、他のポリマーを含まない。好ましくはキャリア(B)は、例えばエポキシ、β−ヒドロキシアルキルアミド、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、ブロックイソシアネート、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂(メラミン)などのいかなる架橋剤も含まない。
【0063】
本発明の文脈では、ポリマーは、典型的に共有化学結合によって結合する反復する構造単位から構成される、大型分子(巨大分子)である。ポリマーという用語が多様な特性がある大きなクラスの天然および合成材料を指してもよい一方で、本発明の文脈ではポリマーという用語は、天然でなく合成材料のみについて既述するのに使用される。
【0064】
本発明によると、キャリア(B)はポリアミドを含んでなる。原則としてポリアミドは、(O=)C−NH−(アミド)結合によって結合するモノマー単位を含有するポリマーである。アミド結合は、アミノ基とカルボン酸または酸塩化物基との縮合反応から作成し得る。通常は水、または塩化水素である小分子は、ポリアミドの合成中に除去される。ポリマーは、アミノ基およびカルボン酸基を含んでなるモノマーから構成され得て(後者はアミノ酸と称される)、またはポリマーは、一方には2つのアミノ基があり、他方には2つのカルボン酸または酸塩化物基がある、2つの異なる二官能性モノマーから構成され得る。ポリアミドはまた、出発モノマーとして環式アミド(ラクタム)から合成され得る。ラクタムを出発モノマーとして使用する場合、ポリアミドの合成中に水または塩化水素は除去されない。ポリアミドは例えば羊毛および絹などのタンパク質のように天然に生じ得て、また例えばナイロン、アラミドなどのようにステップ成長重合を通じて人工的に製造し得るが、本発明では、ポリアミドという用語は、人工的に(合成的に)調製されたポリアミドのみを指し、天然に生じたものを指さない。本発明の文脈ではポリアミドという用語は、ナイロンという用語と同義的に使用される。
【0065】
本発明による抗菌性材料中でキャリアとして使用されるポリアミドは、a)少なくとも1つのジアミン構成要素と少なくとも1つのジカルボン酸構成要素との、またはb)少なくとも1つのラクタムの重縮合反応生成物または残留物を含んでなってもよい。ジカルボン酸の代わりに、またはそれとの併用で、その無水物もまた使用し得ることは、当業者には明らかであろう。以下、ジカルボン酸はまた、その無水物も意味する。
【0066】
本発明で使用されるポリアミドは、適切には1つのタイプのジアミンと1つのタイプのジカルボン酸から調製され得るか、またはポリアミドは例えば1つのタイプのジアミンと組み合わせられた2つ以上のタイプのジカルボン酸から調製され得るか、またはそれは1つのタイプのジカルボン酸と2つ以上のタイプのジアミンから調製され得るか、またはそれは2つ以上のタイプのジアミンと2つ以上のタイプのジカルボン酸との組み合わせから調製され得る。しかし1〜2つのジアミンと1〜2つのジカルボン酸から調製されたポリアミドを使用することが好ましく、より好ましくは1つのジアミンと1つのジカルボン酸から調製されたポリアミドが使用される。ポリアミドはまた、ラクタムまたはラクタム混合物からも調製され得る。好ましくはポリアミドは1つのラクタムから調製される。ポリアミドはまた、アミノ酸またはアミノ酸混合物から調製されてもよい。好ましくはポリアミドは、1つのアミノ酸から調製される。
【0067】
適切なジカルボン酸としては、例えば3〜約40個の炭素原子を有するジカルボン酸;より好ましくは、好ましくは8〜14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸、好ましくは4〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、および/または好ましくは8〜12個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸から選択されるジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸は分枝、非直鎖または直鎖であってもよい。好ましくは、ジカルボン酸は直鎖である。適切なジカルボン酸の例は、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、フェニレンジ(オキシ酢酸)、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸および/またはアゼライン酸である。好ましいジカルボン酸は、アゼライン酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびドデカン二酸である。
【0068】
ジアミンは、例えば脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族または芳香族種であり得る。ジアミン構成要素は、例えば2〜50個の炭素原子、より好ましくは2〜30個の炭素原子、最も好ましくは2〜20個の炭素原子、例えば2〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンを含んでなってもよい。脂肪族ジアミンはまた、分子中に芳香族基もまた含有してもよい。芳香族アミンがあると、ポリアミドのガラス転移温度は非常に高くなり得る。したがって脂肪族および芳香族脂肪族アミンを使用することが好ましい。脂肪族アミンとは、アミン基が脂肪族鎖と直接共役している化合物を意味する。芳香族アミンとは、アミン基が芳香族環構造と直接共役している化合物を意味する。脂肪族ジアミンはまた、例えばピペラジンなどの脂環式ジアミンも含む。適切な脂肪族ジアミンの例としては、例えばイソホロンジアミン、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,12−ドデシレンジアミン、1,4シクロヘキサンビスメチルアミン、ピペラジン、p−キシリレンジアミンおよび/またはm−キシリレンジアミンが挙げられる。アミン構成要素はまた、分枝構成要素を含んでなり、分枝ポリアミドを提供してもよい。適切な例としては、例えばジ−エチレン−トリアミン、ジ−アルキレン−テトラミン、ジ−アルキレン−ペンタミン、ジ−ヘキサメチレン−トリアミンなどのジ−アルキレン−トリアミンと、例えば1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、トリメリット酸無水物、およびピロメリット酸無水物などの多官能性酸と、例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸などの多官能性アミノ酸とが挙げられる。好ましいジアミンは、ジアミノブタン、m−キシリレンn−ジアミン、トリメチルヘキサメチレン−ジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサンジメチレンジアミン、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタンである。
【0069】
ラクタム(ラクトン+アミドという語から派生した名詞)は、環式アミドである。接頭辞は、環の中に幾つの炭素原子(カルボニル部分を別として)が存在するかを示す。β−ラクタム(カルボニルの外に2個の炭素原子、合計4つの環原子)、γ−ラクタム(3および5)、δ−ラクタム(4および6)。好ましいラクタムは、カプロラクタムおよびラウリンラクタムである。
【0070】
アミノ酸は、アミンおよびカルボキシルの双方を含有する官能基分子である。本発明の文脈では、これらの分子は以下の一般式(I)で書かれる。
【化1】



式中、
nは0以上50以下の範囲の整数であり、好ましくはnは0以上40以下の範囲の整数であり、より好ましくはnは0以上30以下の範囲の整数であり、なおもより好ましくはnは0以上28以下の範囲の整数であり、最も好ましくはnは0以上20以下の範囲の整数であり、例えばnは0以上18以下の範囲の整数であり;R1、、R、R、R、およびRは独立して水素であり得、および/または1〜50、より好ましくは1〜30、なおもより好ましくは1〜20、最も好ましくは1〜10、例えば1〜6個の炭素原子を含んでなる有機置換基であり得る。
【0071】
好ましくは本発明のポリアミドを調製するのに使用されるアミノ酸は、11−アミノウンデカン酸である。
【0072】
本発明によるポリアミドは、非晶質、または半結晶質であり得る。本発明の文脈では、半結晶質ポリアミドとは、ISO11357−1/−3による測定で少なくとも1つの規定された融解ピークと、融解温度(T)(℃)を有する半結晶質ポリアミドを意味する(加熱および冷却速度は10℃/分に等しい)。適切には、融解温度は150℃以上370℃以下の範囲、より好ましくは160℃以上350℃以下の範囲、なおもより好ましくは165℃以上330℃以下の範囲である。半結晶質ポリアミドはまた、少なくとも1つのガラス転移温度(T)も有し得る。ガラス転移温度(T)(ISO11357−2による測定)は、好ましくは20℃以上、なおもより好ましくは30℃以上、最も好ましくは35℃以上である。好ましくはガラス転移温度(T)は250℃以下、より好ましくは240℃以下、なおもより好ましくは230℃以下、最も好ましくは220℃以下である。本発明の文脈では、非晶質ポリアミドとは、ポリアミドがガラス転移温度(T)のみを有することを意味する。好ましくはポリアミドは半結晶質である。
【0073】
半結晶質ポリアミドの場合、それらの融解温度(T)を超えると、ナイロンなどの熱可塑性物質は非晶質固体または粘稠な流体であり、その中では鎖はランダムコイルに近い。T未満では、非晶質領域が層状結晶領域と交互にある。非晶質領域は弾性に寄与し、結晶性領域は強度と剛性に寄与する。結晶化度は、組成の詳細、ならびにナイロンの種類に左右される。ナイロンが工業用吐糸管孔を通して繊維に押し出されると、個々のポリマー鎖は粘稠な流れのために整列する傾向がある。その後に冷延伸を施すと、繊維はさらに整列してその結晶化度が増大し、材料は追加的引張強度を得る。実際には、ナイロン繊維はほとんどの場合、高速の加熱ロールを使用して延伸される。ブロックナイロンは、形成中の剪断応力のために表面近辺以外は結晶性がより低い傾向がある。
【0074】
容易に染色され得るポリアミドを含んでなるキャリア(B)中に抗菌剤が分散され、同時にキャリア(B)が水と直接接触することにより、抗菌活性の追跡が容易になる。ナイロン粒子は、ナイロンのタイプに応じて典型的に無色または白色である。元素銀ナノ粒子のポリアミド中への分散は、本発明の顆粒材料粒子を黄色にする。本発明の顆粒材料を非滅菌水に浸漬して放置すると、それは抗微生物性を示す。本明細書で説明されるように、Agカチオンの漸進的放出のために元素銀ナノ粒子の平均粒度が低下することから、顆粒抗菌性材料の抗菌活性は経時的に低下していくであろう。結果として、抗菌性材料顆粒の黄色はそれが完全に退色するまで経時的に色褪せ、キャリア(B)として使用されるナイロンのタイプ次第で無色または白色どちらかの顆粒をもたらす。異なる色調の黄色を経る、黄色から白色または無色いずれかへの漸進的推移は、視覚的に追跡し得る。これは高価で高機能の装置、または専門要員を使用することなく、例えば抗菌性材料の交換などの時宜にかなった維持管理を可能にし、ひいては最終使用者のための適切な抗菌性保護を確実にすることから、本発明の非常に有用で際立った特徴である。本発明の抗菌性材料が容器で取り囲まれる場合(例えば抗菌性材料が浄水器の一部である)であっても、粒径の貫通孔を通じて退色をなおも視覚的に追跡し得るように容器を製造でき、容器は顆粒をその中になおも包含する。
【0075】
ポリアミドは、例えば直鎖またはほぼ直鎖、分枝、高度分枝、星状または樹枝状構造を有してもよい。好ましくはポリアミドは、直鎖またはほぼ直鎖または分枝であり、なおもより好ましくはポリアミドは直鎖またはほぼ直鎖である。
【0076】
好ましくは、本発明のポリアミド(非晶質または半結晶質で、耐衝撃性改良剤、難燃剤、充填材、耐衝撃性改良剤、可塑剤、ガラス繊維や無機繊維やナノ充填材などの強化材などを含まない純粋の)は、以下の7つの特性の内、少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つを有し、より好ましくは少なくとも6つを有し、最も好ましくは少なくとも7つを有し、例えば8つを有する。
1.密度(kgr/m:キログラム/立方メートル)(ISO1183による測定)が、1010以上3000以下の範囲、より好ましくは1015以上2000以下の範囲、なおもより好ましくは1020以上1800以下の範囲、なおもより好ましくは1020以上1600以下の範囲、最も好ましくは1020以上1500以下の範囲であり、例えば1020以上1400以下の範囲である。
2.破断点伸び(または名目上の破断点応力)(%)(ISO527−1/−2による測定)が、少なくとも5%以上、より好ましくは少なくとも10%以上、なおもより好ましくは少なくとも12%以上、なおもより好ましくは少なくとも15%以上である。破断点伸びが500%以下、より好ましくは400%以下、なおもより好ましくは300%以下、最も好ましくは300%以下である。
3.引張降伏応力(MPa)(ISO527−1/−2による測定、MPaをpsiに変換するには145を乗ずる)が、少なくとも15MPa以上、より好ましくは少なくとも20MPa以上、なおもより好ましくは少なくとも25MPa以上、なおもより好ましくは少なくとも30MPa以上である。引張降伏応力が、200MPa以下、より好ましくは150MPa以下、なおもより好ましくは130MPa以下、最も好ましくは120MPa以下である。
4.曲げ弾性(MPa)(ISO178による測定)が少なくとも900MPa以上、より好ましくは少なくとも950MPa以上、なおもより好ましくは少なくとも1000MP以上、なおもより好ましくは少なくとも1050MPa以上である。曲げ弾性が6000MPa以下、より好ましくは5800MPa以下、なおもより好ましくは5700MPa以下、最も好ましくは5500MPa以下である。
5.曲げ強度(MPa)(ISO178による測定)が少なくとも10MPa以上、より好ましくは少なくとも20MPa以上、なおもより好ましくは少なくとも30MPa以上、なおもより好ましくは少なくとも40MPa以上である。曲げ強度が2000MPa以下、より好ましくは1900MPa以下、なおもより好ましくは1800MPa以下、最も好ましくは1700MPa以下である。
6.23℃におけるノッチ付シャルピー衝撃強度(KJ/m:キロジュール/平方メートル)(ISO179/1eAによる測定)が、少なくとも2KJ/m以上、より好ましくは少なくとも3KJ/m以上、なおもより好ましくは少なくとも4KJ/m以上、なおもより好ましくは少なくとも5KJ/m以上である。ノッチ付シャルピー衝撃強度が250KJ/m以下、より好ましくは200KJ/m以下、なおもより好ましくは190KJ/m以下、最も好ましくは180KJ/m以下である。
7.0.45MPaにおけるたわみ温度(℃)(ISO75−1/−2による測定)が、130℃以上300℃以下の範囲、より好ましくは135℃以上290℃以下の範囲、なおもより好ましくは140℃以上280℃以下の範囲であり、最も好ましくは145°以上260℃以下の範囲である。
8.数平均分子量(M)(ISO16014−3による測定、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールを溶出剤とする)が、少なくとも8000グラム/mol以上、より好ましくは少なくとも10000グラム/mol以上、なおもより好ましくは少なくとも12000グラム/mol以上、なおもより好ましくは少なくとも15000グラム/mol以上である。好ましくはMが少なくとも100000グラム/mol以下、なおもより好ましくは少なくとも80000グラム/mol以下、なおもより好ましくは少なくとも60000グラム/mol以下、なおもより好ましくは少なくとも50000グラム/mol以上である。
【0077】
好ましくは抗菌性材料は、少なくとも5%の破断点伸び、少なくとも15MPaの引張降伏応力、少なくとも900MPaの曲げ弾性、少なくとも10MPaの曲げ弾性、および少なくとも2KJ/mのノッチ付シャルピー衝撃強度を有する。
【0078】
ポリアミドの分子量およびそれに伴う粘度は、特に押し出しが溶融加工技術として使用される場合、粒子の所望の端部形状および粒度に従った役割を果たし得る。例えば3mmを超える直径のロッドのためには、中〜高粘度等級が使用され、不均一な収縮によって引き起こされる空隙および亀裂を回避するために緩慢な凝固が必須である。より複雑な構造が必要である場合、ポリアミドの押し出しは、一連の相互連結開口鋳型へのポリアミドの押し出しを伴う。
【0079】
本発明のポリアミドは、好ましくは熱可塑性ポリアミドである。熱可塑性直鎖ポリアミドまたはそれらの組成物は、部品を製造またはまたは加工する際に硬化を要さず[分子量増大を通じて進行する化学反応、最終的にポリマー鎖は共に結合(架橋)して、無限の分子の網状組織になる(網状組織形成)]、唯一必要な熱は、ポリアミドの融解または融合を完了するのに必要な熱だけである。熱可塑性直鎖ポリアミドまたはそれらの組成物は、硬化を要さないことから、例えばエポキシ、β−ヒドロキシアルキルアミド、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)、ブロックイソシアネート、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂(メラミン)などの架橋剤を含まない。熱可塑性直鎖ポリアミドを加熱しても粘稠な液体から固体、または弾性ゲルまたはゴムへの不可逆的転換を起こさない。特徴的により高い数平均分子量(M)を有する熱可塑性直鎖ポリアミドは、一般に熱硬化性ポリアミドとして知られている。
【0080】
キャリア(B)は、2つ以上のポリマーを含んでなり得る。キャリア(B)は、ポリアミド群の配合物、および/またはポリアミドまたはポリアミド群とその他のポリマーとの配合物を含んでなり得る。ポリマー配合物の使用は、2種の材料の特性の均衡を得るため、または水分取り込みを低下させるためであり得る。ナイロン−6,6とポリ(酸化フェニレン)との配合物が最も大きな成功を収めているが、ナイロン−6,6およびナイロン−6とポリエチレンまたはポリプロピレンとの配合物もまた使用してもよい。好ましくはキャリア(B)は、本発明のポリアミドから調製されるポリアミド配合物を含んでなる。
【0081】
本発明によると、キャリア(B)はまた、添加剤を含んでなり得る。キャリア(B)の一部を形成し得る添加剤としては、潤滑剤、結晶核物質、安定剤、耐衝撃性改良剤、難燃剤、耐衝撃性改良剤、充填材、可塑剤、ガラス繊維や無機繊維やナノ充填材などの強化材などの当業者に一般に知られている添加剤が挙げられる。後者(ナノ充填材)は、その中でナノメートルサイズのケイ酸塩層がポリアミド中に均一に分散して、非常に低レベル(例えば5%)で高レベルの強化をもたらす材料である。層タイプの粘土ミネラルを加工して層を分離させ、それらをポリマー構造物中に組み込めるようにする(割込み)。初期開発はナイロン重合中の組み込みを伴ったが、現在は押し出し配合経路が開発されている。この技術の幾つかの利点は、低密度および等方性収縮である。添加剤はまた、高分子性であり得る。
【0082】
好ましくはキャリア(B)はポリマーおよび添加剤のみを含んでなり、より好ましくはキャリア(B)は1種のポリマーおよび添加剤のみを含んでなり、なおもより好ましくはキャリア(B)はポリアミドおよび添加剤を含んでなり、例えばキャリア(B)は1種のポリアミドのみを含んでなり、他のポリマーおよび添加剤を含まない。
【0083】
さらに別の好ましい実施態様では、顆粒材料の粒度は1.5mm以上5.0mm以下の範囲であり、縦横比Rは1.0以上6.0以下の範囲であり、粒子は2以上28°以下の範囲の水中摩擦角を有し、抗菌剤(A)の量は抗菌性材料上で0.001%w/w以上1.8%w/w以下の範囲であり、キャリア(B)の量は抗菌性材料上で98.2%w/w以上99.999%w/w以下の範囲である。
【0084】
さらに別の好ましい実施態様では、キャリア(B)は、ナイロン−6、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−6,6、ナイロン−4,6、ナイロン−6,9、ナイロン−6,12、ナイロン−66、ナイロン−6T、ナイロン−6−6−T、ナイロン−4−6−T、ナイロン−MXD、ナイロン−6T,6I、ナイロン−MXD−6、ナイロン−PDA−T、ナイロン−6−3−T(ポリアミドNDT/INDT)、ナイロン−6I、ナイロン−6−G、ナイロン−12−G、ナイロン−12とポリ−THF(PEBAX)のブロック共重合体、ポリフタルアミドの群、またはそれらの混合物から選択されるポリアミドである。好ましくはポリアミドは、ナイロン−6、ナイロン−4,6またはナイロン−6,6、およびそれらの混合物からなる群から選択される。典型的な熱可塑性直鎖ポリアミドは、例えばAkulon、Stanyl、Zytel、Celanese、Vydyne、Capron、Ultramid、Grillon、Nycoa、Rilsan、Amodel、Orgalloy、Technyl、Durethan、Vestamid、Trogamid、Technyl、Radilon、Leona、Novamid、Reny、Arlen、Amilan、Ube Nylon、Unitika、Grillamid、Grivory、Beetle、Polynilなどの商品名の下に市販されるものである。好ましくは発明のポリアミドは、Zytel、またはAkulonまたはStanylまたはそれらの混合物であり、より好ましくはAkulonまたはStanylまたはそれらの混合物がキャリアとして使用され、なおもより好ましくはAkulonまたはStanylがキャリア(B)として使用される。
【0085】
本発明はまた、
a.ポリアミドと、カチオンとして銀を含んでなる化合物とを乾燥混合することによりプレミックスを形成するステップと;
b.プレミックスを混合して、
i)ポリアミドを分解することなく流れさせるのに適し、
ii)化合物を分解するのに適する
時間および温度で加熱するステップと;
c.押し出して冷却し切断するステップと;
d.粒度が8mmよりも小さく1mmを超える顆粒を収集するステップ
を含んでなる、本発明による顆粒抗菌性材料を調製する方法を提供する。
【0086】
ナイロンは、従来の装置上で当業者に知られている設定により押し出し得る。本発明はこれらの設定のみに限定されるものではないが、例えば以下がナイロン押し出しのための設定であり得る。押し出し機の駆動装置は、一連のスクリュー速度にわたり連続して変動できるべきである。ナイロンは低スクリュー速度で高トルクを要することが多い;典型的な出力要件は30mmの機械では7.5kWのモーター、または60mmのものでは25kWである。ナイロンスクリューが必要であり、冷却してはならない。圧縮比は、例えばナイロン−6,6およびナイロン−6では3.5:1〜4:1;ナイロン−11およびナイロン−12では3:1〜3.5:1である。スクリューの長さ対直径比は15:1を超えるべきであり、ナイロン−6,6では少なくとも20:1、ナイロン−12では25:1が推奨される。ほとんどの押し出し操作は、高溶融強度を与えて押し出し物の形状を保つために、高粘度(高分子量)ナイロンを必要とする。
【0087】
このようにして製造された顆粒抗菌性材料は、例えば水差しなど小規模/家庭用途で、および/または大規模共用貯水槽で直接使用し得て、増強された抗菌活性と水の効果的な滅菌を提供する。
【0088】
さらに別の実施態様では、本発明は、上述の方法(21頁、15〜25行)によって入手されたおよび/または入手可能な材料を提供する。
【0089】
別の実施態様では、本発明は、本発明の顆粒抗菌性材料と、顆粒抗菌性材料を包含する被覆体とを含んでなる物品を提供する。本発明の文脈で、物品とは、目的を果たすように、または特別な機能を果たすようにデザインされたクラスの個々の物体または品目または要素であり、独立型であり得る。被覆体は、可撓性、折り畳み式、ドレープ性、または硬質であってもよい。被覆体は、金属、木材、ガラス、プラスチック、テキスタイル、セラミック、それらの混合物などから製造し得る。被覆体は、開放バッグなどの開放構造、または蓋で閉鎖される缶などの閉鎖構造を有してもよい。被覆体は水を保持できてもよく、したがって例えば容器などのように非水透過性であり、または被覆体は水を通過してもよく、したがって例えばテキスタイルからできたバッグ、または有孔キャニスターなどのように水透過性である。被覆体は適切には、テキスタイルまたは有孔の金属シートなどの多孔性構造を有する材料から製造される。例示的な被覆体としては、容器、バッグ、バスケット、ボール、ケース、ボックス、バッグ、バスケット、ディスク、ケース、カード箱などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0090】
別の一実施態様では、本発明は、被覆体が容器である、本明細書に記載される物品を提供する。本発明によると、容器は水を保持できる被覆体である。例示的な容器としては、カートン、ボトル、缶、ジャー、バイアル、ジェリー缶、カプセル、無孔キャニスター、貯蔵タンク、雨水タンクが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0091】
さらに別の実施態様では、本発明は被覆体が多孔性水透過性被覆体である、本明細書に記載される物品を提供し、その多孔性水透過性被覆体は、顆粒抗菌性材料が多孔性水透過性被覆体からあふれるのを防ぐような直径の孔を有する。
【0092】
さらなる一実施態様では、本発明は、被覆体が顆粒抗菌性材料が多孔性水透過性被覆体からあふれるのを防ぐような直径の孔を有する多孔性水透過性被覆体である本発明による物品;または本発明の抗菌性顆粒材料;のどちらかを含有する1つの部品を含んでなる部品のアセンブリーからなる装置を提供する。本発明によると、装置は、特定の目的を果たすようにまたは特定機能を果たすようにデザインされた機材または機序であり、2つ以上の部品からなり得る(部品のアセンブリー)。例えば装置は、水処理のために、特に飲料水の処理のために使用される器具、または処理水を使用する器具であり得る。
【0093】
特定の一実施態様では、本発明による装置は可変容量を有する拡張可能な槽を含んでなる浄水装置であり、その中では貯水槽表面の少なくとも一部はフィルター領域を含んでなり、フィルター領域は水透過性であって、フィルター領域が水に浸漬された際、水が集水槽に入れるようにする。装置は、集水槽容量を増大させる力を与えるための機械駆動拡張手段をさらに含んでなってもよく、それによってフィルター領域を通して水を集水槽内に引き入れる。このような装置については、参照によって本明細書に援用する国際公開第2009/073994号パンフレットに記載される。使用時には集水装置を浸漬して拡張手段を解放し、フィルター領域を通して水を集水装置に引き入れる。浄水装置は、拡張可能集水槽内に存在する、本発明による顆粒抗菌性材料と共に提供し得る。ひとたび集水装置が浸漬されて拡張手段が解放されると、水は濾過によって浄化されるだけでなく、顆粒抗菌性材料によってさらに滅菌もされ、したがって顆粒抗菌性材料による滅菌がなおもより効果的になる。
【0094】
さらに別の実施態様では、本発明は、水処理のための、および特に飲料水の処理のための
a)本発明による顆粒抗菌性材料;または
b)本発明による物品;または
c)本発明による装置
の使用を提供する。例示的な使用としては、水処理システム/器具、水濾し器、水泳プール、渦流浴、水供給容器、貯水槽、雨水槽、皿洗い機が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
さらなる一実施態様では、本発明は、抗菌用途のための本発明による顆粒抗菌性材料の使用を提供し、その中で顆粒抗菌性材料は、顆粒抗菌性材料が抗菌活性を示せる量および形態で使用される。
【0096】
本発明のさらに別の態様は、本明細書に記載される実施例1〜4による抗菌性材料である。
【0097】
本発明のさらなる態様およびその好ましい特徴は、本明細書の特許請求の範囲で示される。
【0098】
本発明をここで、以下の非限定的実施例によって例証する。
【0099】
[実施例]
[分析法および技術]
[顆粒材料の粒度の測定]
顆粒材料の粒度は、DIN66165−1/−2に記載される方法に従って、Retsch AS200 Controlふるい分け機上で測定した。DIN66165−1/−2に記載のふるい分析のパラメーターを下に示す。
ふるい運動 三次元
振幅 1.5mm
ふるい間隔 10秒間
ふるいタイプ 乾燥
ふるい時間 10分間
【0100】
[キャリア(B)の特性の測定]
キャリア(B)の密度は、ISO1183によって測定した。キャリア(B)の融解温度(℃)は、ISO11357−1/−3によって測定した(加熱および冷却速度は10℃/分に等しい)。キャリア(B)のガラス転移温度(℃)(T)は、ISO11357−2によって測定した(加熱および冷却速度は10℃/分に等しい)。キャリア(B)の破断点伸び(%)は、ISO527−1によって測定した。キャリア(B)の曲げ弾性(MPa)は、ISO178によって測定した。キャリア(B)のノッチ付シャルピー衝撃強度(KJ/m)は、ISO179/1eAによって測定した。キャリア(B)の引張降伏応力(MPa)は、ISO527−1/−2(MPaをpsiに変換するには145を乗じる)によって測定した。0.45MPaにおけるキャリア(B)のたわみ温度(℃)はISO75−1/−2によって測定し、キャリア(B)の数平均分子量(M)は1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールを溶出剤としてISO16014−3によって測定した。
【0101】
[元素銀ナノ粒子の粒度測定]
元素銀ナノ粒子の粒度および%会合度は、透過電子顕微鏡(TEM)タイプの「EFTEM LEO 912」(Leo Co.)上で測定した。TEM調査は、70〜100nmの層厚さを有するミクロトーム切片上で実施した。
【0102】
元素銀ナノ粒子(APSN)の平均粒度は、以下の等式に従って判定した。
APSN=(Σ)/(ΣNi)
式中、
は寸法が1mm(長さ)×1mm(幅)、層厚さが70〜100nmの範囲、直径がDの3個のミクロトームサンプル(切片)中に存在する元素銀ナノ粒子の数である。3個のミクロトームクロトーム切片は、顆粒材料の3個の無作為に選択された粒子中で作成した。
【0103】
[元素銀ナノ粒子の%会合度の測定]
元素銀ナノ粒子の%会合度(%DOA)は、次のように測定した。
%DOA=100×(Nconnected/N
式中、
Nは寸法が1mm(長さ)×1mm(幅)で層厚さが70〜100nmの範囲の3個のミクロトームサンプル(切片)中に存在する元素銀ナノ粒子の数であり、Nconnectedは少なくとも1つのその他の元素銀ナノ粒子に結合する個別の銀ナノ粒子の総数を表す。3個のミクロトームクロトーム切片は、顆粒材料の3個の無作為に選択された粒子中で作成した。
【0104】
APSNおよび%DOAは、同一の3個のミクロトームサンプルから測定した。
【0105】
[UAF/OCA30の方法:水中摩擦角(UAF)を測定する方法]
本発明の粒子の水中摩擦角(UAF)は、粒子および表面の双方を水に浸し、直径5.0cmの25mlの水の円柱によって生じる圧力に等しい水圧を双方にかけて、粒子を直径5.0cmの丸いポリスチレン表面にのせた際に、粒子が滑り始める面からの角度のn回の測定値の算術平均である。
【0106】
UAFは水中で測定した。UAFを測定するためには、DataPhysic Instruments GmbHの製造するビデオベースの半自動接触角度計OCA30を使用した。OCA30装置は、固形物の濡れ挙動の半自動測定において、ならびに系列試験および系統立った分析において、典型的に使用される。本発明の文脈においては、この装置を使用して、多様な形状および粒度で提供される本発明の顆粒材料の顆粒の水中摩擦角を正確に測定した。
【0107】
ポリスチレン円柱状容器[5.0cm×2.0cm、(直径)×(高さ)]に、25mlの水を装入した。サンプル粒子を水中に浸して、それが容器壁に接触するように容器の底周辺に沈めた。次に容器をOCA30の測定台上に適切に固定した。測定台にはソフトウェア制御モーターが付いており、YおよびZ軸方向に調節可能であり、正確なサンプル位置決めのために調節可能である。引き続いて測定台の傾斜を開始する。測定台の傾斜速度は27°/秒であった。測定台の傾斜は、インラインビデオカメラによって追跡される。サンプル粒子がその最初の位置から測定台の非傾斜側に向けて滑り始める角度は、インラインビデオカメラ録画によって記録される。顆粒材料から無作為に選択された粒子について、毎回、測定をさらに4回繰り返す(顆粒材料あたり合計で5回の測定)。上述のように記録された角度を平均化し(角度の値を合計して5で除する)、これら5つの測定の平均値を個々の粒子の水中摩擦角として報告する。
【0108】
[抗菌活性を評価する方法]
[i)24時間後に抗菌活性を評価する方法]
大腸菌(E.coli)ATCC株および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC株を用いて、24時間にわたり抗菌活性試験を実施した。
【0109】
室温(23℃)で振盪(320rpm)しながら、約10cfu/mlの細菌を含有する50mlリン酸緩衝液(5mM、pH=7.0)に、本発明の抗菌性材料(5グラム)を添加した。振盪を室温で24時間にわたり継続した。この時間後に、溶液を緩衝溶液で希釈(10および100倍)して、0.1mlをペトリ皿内のLB寒天培地(LB寒天、1Lあたり10グラムのBactoトリプトン;5グラムのBacto酵母抽出物;5グラムのNaCl;15グラムのBacto寒天)上に塗布し、cfu(コロニー形成単位)/mlを記録して報告した。cfu/mlが高いほど、試験された抗菌性材料の抗菌活性は低い。
【0110】
[ii)長期抗菌活性を評価する方法]
大腸菌(E.coli)ATCC株を用いて、90日間にわたり長期抗菌活性試験を実施した。
【0111】
本発明の抗菌性材料(5グラム)を1000mlの水道水に添加した。試験された各顆粒材料について、このように調製した一連の3つの混合物(本発明の顆粒材料と水道水)を調製した。上記混合物の調製完了時をこの実験の0時とした。実験期間の全体を通じ、週に2回水道水を新しくした。
【0112】
30日後に混合物の1つの水を除去して、室温(23℃)で振盪(320rpm)しながら、約10cfu/mlの細菌を含有する50mlリン酸緩衝液(5mM、pH=7.0)に顆粒材料を添加した。振盪を室温で24時間にわたり継続した。この時間後に、溶液を緩衝溶液で希釈(10および100倍)して、0.1mlをペトリ皿内のLB寒天培地(LB寒天、1Lあたり10グラムのBactoトリプトン;5グラムのBacto酵母抽出物;5グラムのNaCl;15グラムのBacto寒天)上に塗布し、cfu(コロニー形成単位)/mlを記録して報告した。30日後の抗菌活性を評価するために用いたのと同じ手順を60日および90日後に残りの2つの混合物で繰り返した(1つは60日後の測定に使用し、もう1つは90日後の測定に使用した)。
【0113】
cfu/mlが高いほど、試験された抗菌性材料の抗菌活性は低い。
【0114】
[Akulon(商標)F223−D[キャリア(B)]の特性]
Akulon(商標)F223−D(ナイロン−6)を本発明の状況においてキャリア(B)として使用した。乾燥Akulon(商標)F223−Dは以下の特性を有した。
:220℃;
:60℃;
:20000グラム/mol;
密度:1130kg/m
破断点伸び:20%;
引張降伏応力:85MPa;
曲げ弾性:2600MPa;
曲げ強度:100MPa;
23℃におけるノッチ付シャルピー衝撃強度:8KJ/m
0.45MPaにおけるたわみ温度:185℃。
【0115】
[参考顆粒非抗菌性材料(参考例A)、比較非顆粒抗菌性(比較例A)、および新しい顆粒抗菌性材料(実施例1〜4)の調製]
[参考例A:参考顆粒非抗菌性材料]
Akulon(商標)F223−D粒質物を80℃で一晩乾燥させた。引き続いて(B).24RM6503スクリュー、2mm×3mmダイ、標準冷却槽、4個の収集ユニット、および造粒機(ScheerタイプSGS50E)を装着した二軸スクリュー押出し成形機Berstorff ZE25/48Dに、乾燥Akulon(商標)F223−D粒質物を投入した。温度設定は80、240、250、260、280、280、および290℃であった。滞留時間は160秒に設定した。
【0116】
押し出し時に、収集された白色ロッド様顆粒(参考非抗菌性材料)のサイズは、およそ2mm×3.5mm(直径×長さ)であった。
【0117】
これらの顆粒の縦横比(R)は1.75に等しかった。
【0118】
[比較例A:比較非顆粒抗菌性材料]
硝酸銀(500グラム)を500mlの水に溶解した。このように製造した硝酸銀水溶液の一部(200ml)をタンブラー内の(あらかじめ80℃で一晩乾燥させた)5kgのAkulon(商標)F223−D粒質物上に散布した。転回中、硝酸銀水溶液はAkulon(商標)F223−D粒質物に吸収されて、混合物は転回時に易流動性を保った。引き続いて、このように製造した混合物を(B).24RM6503スクリュー、2mm×3mmダイ、標準冷却槽、4個の収集ユニット、および造粒機(ScheerタイプSGS50E)を装着した二軸スクリュー押出し成形機Berstorff ZE25/48Dに投入した。温度設定は80、240、250、260、280、280、および290℃であった。滞留時間は160秒に設定した。押し出し時に、収集された白色ロッド様粒質物粒子のサイズは、およそ2mm×3.5mm(直径×長さ)であった。次にグレインを240℃で3分間熱圧して、各100mm×100mm×1mm(長さ×幅×高さ)サイズの成形シートにした。
【0119】
成形シートをダイヤモンド鋸刃で切断して、各10mm×20mm×1mm(長さ×幅×高さ)サイズの黄色小板を得た。
【0120】
これらの小板の縦横比(R)は20.00に等しかった。
【0121】
[実施例1:新しい顆粒抗菌性材料]
硝酸銀(500グラム)を500mlの水に溶解した。このように製造した硝酸銀水溶液の一部(200ml)を稼働中のタンブラー内の(あらかじめ80℃で一晩乾燥させた)5kgのAkulon(商標)F223−D粒質物上に散布した。転回中、硝酸銀水溶液はAkulon(商標)F223−D粒質物に吸収されて、混合物は転回時に易流動性を保った。引き続いて、このように製造した混合物を(B).24RM6503スクリュー、2mm×3mmダイ、標準冷却槽、4個の収集ユニット、および造粒機(ScheerタイプSGS50E)を装着した二軸スクリュー押出し成形機Berstorff ZE25/48Dに投入した。温度設定は80、240、250、260、280、280、および290℃であった。滞留時間は160秒に設定した。
【0122】
押し出し時に、収集された黄色ロッド様顆粒のサイズは、およそ2mm×3.5mm(直径×長さ)であった。
【0123】
これらの顆粒の縦横比(R)は1.75に等しかった。
【0124】
銀の量は顆粒材料の1.25%w/wであった。
【0125】
DIN66165−1/−2に記載される方法に従って、ふるい分析により、実施例1の抗菌性材料の粒度を測定した。サンプルサイズは13.17グラムであり、ふるい重量損失は0.00グラムであった。実施例1顆粒材料ふるい分析の結果を表2に示す。
【0126】
【表3】



【0127】
ふるい分析結果から計算される実施例1の顆粒材料のx(Q=10.0%)、x(Q=50.0%)、x(Q=90.0%)値、X(平均粒度)、およびXの標準偏差またはスパン値は次のとおりであった。
x(Q=10.0%):1.807mm;
x(Q=50.0%):1.896mm;
x(Q=90.0%):1.985mm;
(平均粒度):1.898mm、標準偏差:0.094。
【0128】
a.実施例1の顆粒材料のロッド様(2mm×3.5mm)顆粒、および
b.比較例Aの非顆粒材料の小板(20mm×10mm×1mm)
の水中摩擦角は、本明細書に記載されるUAF/OCA−30の方法によって測定した。結果を表3に示す。
【0129】
【表4】



【0130】
表3から、水容器に浸した際に、比較例Aの抗菌性材料小板と比較して、実施例1の抗菌性材料のロッド様顆粒がより容易に動くことは明らかである。
【0131】
元素銀ナノ粒子の平均粒度(本明細書に記載されるように測定された)は、約20nmであった。
【0132】
元素銀ナノ粒子の%会合度(%DOA)は、40%よりも低かった。
【0133】
[実施例2:新しい顆粒抗菌性材料]
Akulon(商標)F223−D粒質物を80℃で一晩乾燥させた。稼働中のタンブラー内で、パラフィン油(Akulon(商標)F223−D粒質物の0.25%w/w)を乾燥Akulon(商標)F223−D粒質物上に散布した。乾燥Akulon(商標)F223−D粒質物がパラフィン油で覆われた特定時間経過後に、(粉末形態)硝酸銀(Akulon(商標)F223−D粒質物の2%w/w)を先に述べたようにパラフィン油で覆われた乾燥Akulon(商標)F223−D顆粒表面に硝酸銀を付着させるのに十分な時間にわたり、パラフィン油で覆われた乾燥Akulon(商標)F223−D粒質物上に散布した。このように製造した混合物は転回時に易流動性を保った。引き続いて、このように製造した混合物を前述の(B).24RM6503スクリュー、2mm×3mmダイ、標準冷却槽、4個の収集ユニット、および造粒機(ScheerタイプSGS50E)を装着した二軸スクリュー押出し成形機Berstorff ZE25/48Dに投入した。温度設定は80、240、250、260、280、280、および290℃であった。滞留時間は160秒に設定した。
【0134】
押し出し時に、収集された黄色ロッド様顆粒のサイズは、およそ2mm×3.5mm(直径×長さ)であった。
【0135】
これらの顆粒の縦横比(R)は1.75に等しかった。
【0136】
銀の量は顆粒材料の1.25%w/wであった。
【0137】
[実施例3:新しい顆粒抗菌性材料]
Akulon(商標)F223−D粒質物をドライアイスで冷却して粉砕した。Akulon(商標)F223−Dフラフがこのようにして製造され、それを80℃で一晩乾燥させた。稼働中のタンブラー内で、(粉末形態の)硝酸銀(Akulon(商標)F223−D粒質物の2%w/w)を乾燥Akulon(商標)F223−Dフラフ上に散布した。転回中、硝酸銀は適度にAkulon(商標)F223−Dフラフと混合し、比較的均質な混合物が得られた。混合物は転回時に易流動性を保った。引き続いて、このように製造した混合物を(B).24RM6503スクリュー、2mm×3mmダイ、標準冷却槽、4個の収集ユニット、および造粒機(ScheerタイプSGS50E)を装着した二軸スクリュー押出し成形機Berstorff ZE25/48Dに投入した。温度設定は80、240、250、260、280、280、および290℃であった。滞留時間は160秒に設定した。
【0138】
押し出し時に、収集された黄色ロッド様顆粒のサイズは、およそ2mm×3.5mm(直径×長さ)であった。
【0139】
これらの顆粒の縦横比(R)は1.75に等しかった。
【0140】
銀の量は顆粒材料の1.25%w/wであった。
【0141】
[実施例4:新しい顆粒抗菌性材料]
Akulon(商標)F223−D粒質物を80℃で一晩乾燥させた。稼働中のタンブラー内で、パラフィン油(Akulon(商標)F223−D粒質物の0.10%w/w)を乾燥Akulon(商標)F223−D粒質物上に散布した。乾燥Akulon(商標)F223−D粒質物がパラフィン油で覆われた特定時間経過後に、(粉末形態)硝酸銀(Akulon(商標)F223−D粒質物の160ppmw/w)を先に述べたようにパラフィン油で覆われた乾燥Akulon(商標)F223−D顆粒表面に硝酸銀を付着させるのに十分な時間にわたり、パラフィン油で覆われた乾燥Akulon(商標)F223−D粒質物上に散布した。このように製造した混合物は転回時に易流動性を保った。引き続いて、このように製造した混合物を前述の(B).24RM6503スクリュー、2mm×3mmダイ、標準冷却槽、4個の収集ユニット、および造粒機(ScheerタイプSGS50E)を装着した二軸スクリュー押出し成形機Berstorff ZE25/48Dに投入した。温度設定は80、240、250、260、280、280、および290℃であった。滞留時間は160秒に設定した。
【0142】
押し出し時に、収集された黄色ロッド様顆粒のサイズは、およそ2mm×3.5mm(直径×長さ)であった。
【0143】
これらの顆粒の縦横比(R)は1.75に等しかった。
【0144】
銀の量は顆粒材料の100ppm(=0.01%w/w)であった。
【0145】
[実施例5:経時的に銀放出]
室温(23℃)で穏やかに振盪しながら、顆粒抗菌性材料(5グラム)を50mlの水に懸濁した。水溶液中の銀カチオン(CAg+)濃度を原子吸光によって経時的に測定した。
【0146】
実施例1、実施例2、および実施例3それぞれの顆粒抗菌性材料について、水溶液中の銀カチオン(CAg+)濃度を測定した。表4は実施例1〜3の顆粒材料の経時的銀放出を表す。
【0147】
【表5】



【0148】
表4に示すデータから、水溶液中の銀カチオン(CAg+)濃度はおよそ24時間で安定するので、それが平衡状態に達することは明らかである。これは本明細書で説明したように健康リスクなしに許容され得る、世界保健機関(WHO)による最大推奨濃度である0.1mg/L(ミリグラム/リットル)未満にCAg+を保つ、顆粒抗菌性材料のユニークな特質を実証する重要な所見である。さらにこの現象は、顆粒抗菌性材料を調製する3つの方法(実施例1〜3)に依存しない。
【0149】
[実施例6〜10:24時間後の参考例Aおよび実施例1〜4の顆粒材料の抗菌活性のアセスメント]
参考例Aおよび実施例1〜4の顆粒材料の抗菌活性のアセスメントを本明細書に記載される方法に従って実施した(25頁28行の実施例「i)24時間後に抗菌活性を評価する方法」を参照されたい)。参考例Aおよび実施例1〜4の顆粒抗菌性材料の抗菌活性の結果を表5に示す(実施例6〜10)。
【0150】
【表6】



【0151】
表5に示すデータから、全ての大腸菌(E.coli)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、それぞれ実施例1〜4の顆粒材料に24時間曝露された後に死滅したので、本発明の顆粒材料が抗菌活性を示すことは明らかである。
【0152】
実施例11:参考例Aおよび実施例1の顆粒材料の長期の抗菌活性のアセスメント
参考例Aおよび実施例1の顆粒材料の長期の抗菌活性のアセスメントを本明細書に記載される方法に従って実施した(26頁5行の実施例「ii)長期の抗菌活性を評価する方法」を参照されたい)。3ヶ月までの(cfu/ml対時間)を表6に示す。
【0153】
【表7】



【0154】
表6に示すデータから、全ての大腸菌(E.coli)が実施例1の顆粒材料に曝露した後に死滅したので、本発明の顆粒材料が長期の抗菌活性を提供することは明らかである。
【0155】
実施例1の材料の顆粒の色は90日後にも依然として黄色であり、新たに調製された粒子の黄色色調からの視覚的に検査できる偏差がなかったことを示す。
【0156】
[実施例12〜13:実施例比較例Aおよび実施例1の顆粒材料の容易な浄化および/または自己浄化のアセスメント]
[実施例12]
エルレンマイアーフラスコに、比較例Aの顆粒材料(5グラム)および1000mlの水道水を装入した。エルレンマイアーフラスコを自動振盪機に載せた後、フラスコが直射日光に曝されるようにそれらを共に窓台に載せた。実験期間中、フラスコに10rpmで穏やかな連続的振盪を与えた。2週間および1ヶ月の期間後に、フラスコを藻類の徴候について検査した。2週間後、比較例Aの抗菌性材料小板に藻類の徴候があった。1ヶ月後には藻類は、比較例Aの抗菌性材料の小板表面の大部分を覆った。
【0157】
[実施例13]
エルレンマイアーフラスコに、実施例1の顆粒材料(5グラム)および1000mlの水道水を装入した。エルレンマイアーフラスコを自動振盪機に載せた後、フラスコが直射日光に曝されるようにそれらを共に窓台に載せた。実験期間中、フラスコに10rpmで穏やかな連続的振盪を与えた。2週間および1ヶ月の期間後に、フラスコを藻類の徴候について検査した。2週間後には、実施例1の抗菌性材料のロッド様顆粒には藻類はなかった。1ヶ月後でさえも、実施例1の抗菌性材料の顆粒の表面を覆う藻類はなかった。
【0158】
実施例12および13の結果を比較すると、縦横比Rが1.75のロッド様顆粒からなる実施例1の顆粒材料は、縦横比Rが20.00の小板からなる比較例Aの抗菌性材料よりも、増強された容易な浄化および自己浄化特質を示すことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.抗菌性材料が顆粒材料であり;
b.前記粒子の少なくとも90%w/wがDIN66165−1/−2の方法による測定で1.0mm以上8.0mm以下の範囲の粒度を有し;
c.前記粒子の少なくとも90%w/wが8以下の縦横比Rを有し;
d.抗菌剤(A)が元素銀ナノ粒子を含んでなり、前記元素銀ナノ粒子がキャリア(B)中に混合され;
e.前記抗菌剤(A)が抗菌性材料上に0.001%w/w以上2%w/w以下の範囲の量で存在し;
f.前記キャリア(B)がポリアミドを含んでなり;
g.前記キャリア(B)が抗菌性材料上に98%w/w以上99.999%w/w以下の範囲の量で存在する
ことを特徴とする、抗菌剤(A)およびキャリア(B)を含んでなる粒子からなる抗菌性材料。
【請求項2】
前記粒子の少なくとも90%w/wが、30°以下の水中摩擦角を有する、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記ナノ粒子が、100nm以下の平均粒度および50%よりも低い%会合度を有する、請求項1または請求項2に記載の材料。
【請求項4】
前記顆粒材料の前記粒度が1.5mm以上5.0mm以下の範囲であり、前記縦横比Rが1.0以上6.0以下の範囲であり、前記粒子が2°以上28°以下の範囲である水中摩擦角を有し、前記抗菌剤(A)の量が抗菌性材料上で0.001%w/w以上1.8%w/w以下の範囲であり、前記キャリア(B)の量が抗菌性材料上で98.2%w/w以上99.999%w/w以下の範囲である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記ポリアミドが、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−4,6、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
a.ポリアミドと、カチオンとして銀を含んでなる化合物とを乾燥混合することによりプレミックスを形成するステップと;
b.前記プレミックスを混合して、
i)前記ポリアミドを分解することなく流れさせるのに適し、
ii)前記化合物を分解するのに適する
時間および温度で加熱するステップと;
c.押し出して冷却し切断するステップと;
d.粒度が8mmよりも小さく1mmを超える前記顆粒を収集するステップ
を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の顆粒抗菌性材料を調製する方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の顆粒抗菌性材料と、前記顆粒材料を含有する被覆体とを含んでなる物品。
【請求項8】
前記被覆体が容器である、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記被覆体が多孔性水透過性被覆体であり、前記多孔性水透過性被覆体が、前記顆粒抗菌性材料が前記多孔性水透過性被覆体からあふれ出すのを妨げるような直径の孔を有する、請求項7に記載の物品。
【請求項10】
請求項9に記載の物品、または請求項1〜5のいずれか一項に記載の顆粒抗菌性材料を含有する、1つの部品を含んでなる部品のアセンブリーからなる装置。
【請求項11】
水処理のための、特に飲料水の処理のための
a)請求項1〜5のいずれか一項に記載の顆粒抗菌性材料;または
b)請求項7〜9のいずれか一項に記載の物品;または
c)請求項10に記載の装置
の使用。
【請求項12】
前記顆粒抗菌性材料が、前記顆粒抗菌性材料がその抗菌活性を示せる量および形態で使用される、抗菌性用途のための請求項1〜5のいずれか一項に記載の顆粒抗菌性材料の使用。

【公表番号】特表2013−501018(P2013−501018A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523264(P2012−523264)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060056
【国際公開番号】WO2011/015429
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】