説明

水上側被覆材

【課題】屋根材付き太陽光発電パネルによる効果を阻害することなく、その水上側に雪がたまることを防ぎ、施工が簡単である水上側被覆材を提供する。
【解決手段】水下側に下段の屋根材付き太陽光発電パネルの水上嵌合部に嵌合する嵌合部が形成され、嵌合部から水上側へ延出された被覆面が形成され、被覆面から延出された面戸部が形成され、排水板の山部に固定する止着部を有しており、水上側被覆材が排水板の山部に固定されたときに、排水板の山部と山部との間に面戸部が折り下げられ、面戸部の水上側端部と排水板谷部との間には排水隙間部が形成される水上側被覆材を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根材付き太陽光発電パネルに組み合わせることができる水上側被覆材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術について、図5から図7A及び図7Bにより説明する。
【0003】
図5は、出願人が特願2011−507486として出願した「屋根材付き太陽光発電パネル及び屋根材付き軒先材」における図5をもとにしたものである。この出願においては、最も上段に取り付ける屋根材付き太陽光発電パネルにおける水上側の納めが課題であった。とくに、豪雪地帯で屋根材付き太陽光発電パネルを設置する場合、最も上段に取り付けた屋根材付き太陽光発電パネルの水上側に雪がたまる。そのため、屋根材付き太陽光発電パネルに積雪荷重による流れ方向への力がかかる上、その雪が凍結することによるすがもれの恐れがあった。
【0004】
この図5の技術に対し、図6、又は図7A及び図7Bに示すような技術の応用が考えられる。図6、図7A及び図7Bは、太陽光発電パネルを屋根上に固定したところに雨水を浸入させないようにする、水切りの技術である。
【0005】
図6は、波形金属板12に太陽電池パネル18を取り付けた取付において、水切り金属板10で波形金属板12の上流側開口部12aを遮蔽する技術である。
【0006】
図7A及び図7Bは、太陽電池パネル付き屋根構造において、モジュール用水切部材26に係合片部26dが形成されていて、そこが、横フレーム20の係合部23に係合され、固着板部26aで固着する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4478240号
【特許文献2】特許第3499725号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5に、図6の技術を応用した場合、力板20を取り付け、そこに水切り金属板10を係止することになる。そのため、施工に手間がかかる。また、水切り金属板10が、波形金属板12の上流側開口部12aを遮蔽してしまうので、屋根材付き太陽光発電パネルの効果である排水・換気が阻害されてしまう。
【0009】
図5に、図7A及び図7Bの技術を応用した場合、モジュール用水切部材26のほかに、縦フレーム用水切り部材32などが必要である。このように、部材数が多くなり、また、雨仕舞を考慮してそれらを複雑な組合せとする必要があるので、施工に手間がかかってしまう。さらに、図7A及び図7Bの技術は、係合片部26dと係合部23との間に間隔があり、固着板部26aから止着具を打ち込んで、モジュール用水切部材を固定しておかないと、それらを係合できない。これは、係合片部26dの下に、縦フレーム用水切部材32を圧着させることが目的であるためである。
【0010】
このほか、図5に、図7A及び図7Bの技術を応用した場合でも、図6の技術を応用した場合と同様、屋根材付き太陽光発電パネルの水上側を、モジュール用水切り部材26や縦フレーム用水切り部材32などで遮蔽してしまうので、排水・換気が阻害されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の水上側被覆材は、水下側が屋根材付き太陽光発電パネルに、下面側が排水板に組み合わされるものである。
【0012】
本願の水上側被覆材に組み合わされる屋根材付き太陽光発電パネルは、山部と谷部と軒棟方向に連通する空間とが形成された屋根材と、水上側に水上嵌合部が形成された枠体とを有している。
【0013】
本願の水上側被覆材に組み合わされる排水板は、山部と谷部と軒棟方向に連通する空間とを有しており、屋根材の水上側に重ねられる。
【0014】
本願の水上側被覆材は、下段の屋根材付き太陽光発電パネルの水上嵌合部に嵌合する嵌合部が水下側に形成され、嵌合部から水上側へ延出された被覆面が形成され、被覆面から延出されて排水板の山部と山部との間に折り下げられる面戸部が形成されている。
【0015】
本願の水上側被覆材は、排水板の山部に固定する止着部を有している。
【0016】
本願の水上側被覆材が、排水板の山部に固定されたときに、排水板の山部と山部との間に面戸部が折り下げられ、面戸部の水上側の端部と排水板谷部との間には排水隙間部が形成されている。
【発明の効果】
【0017】
本願の水上側被覆材は、嵌合部を下段の屋根材付き太陽光発電パネルの水上嵌合部に嵌合させて止着部で排水板に固定するだけ、もしくは、あらかじめ止着部で排水板に固定しておいて嵌合部を下段の屋根材付き太陽光発電パネルの水上嵌合部に嵌合させて排水板を屋根上に固定するだけで取り付けられるので、必要な部材が少なくて済み、現場施工の簡素化が図れる。
【0018】
また、本願の水上側被覆材は、屋根材付き太陽光発電パネルの水上側に積もった雪を、面戸部及び被覆面によって、太陽光発電パネル上(受光面)へ、さらに軒下へと導くことができる。その結果、積雪荷重による流れ方向への力を低減でき、凍結によるすがもれを防ぐことができる。
【0019】
さらに、本願の水上側被覆材は、面戸部の水上側の端部と排水板の谷部との間に排水隙間部を形成することによって、雪解け水を下段の屋根材付き太陽光発電パネルの軒棟方向に連通する空間を通じて排水することができる。それと同時に、排水隙間部によって、下段の屋根材付き太陽光発電パネルであたためられた空気を換気できるので、太陽光発電パネルの温度上昇を防ぎ、発電効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の水上側被覆材の実施例である。
【図2】本発明の水上側被覆材と組み合わされる排水板の実施例である。
【図3】本発明の水上側被覆材の取り付け例の説明図である。
【図4】本発明の水上側被覆材を応用した排水板付き水上側被覆材の実施例である。
【図5】従来技術の説明図である。
【図6】従来技術の説明図である。
【図7A】従来技術の説明図である。
【図7B】従来技術の説明図である。
【実施例】
【0021】
本願の水上側被覆材、それを組み合わせる排水板及び屋根材付き太陽光発電パネルの実施例について、図1から図5により説明する。図1は、本願の水上側被覆材の実施例の説明図である。図2は、本願の水上側被覆材と組み合わされる排水板の実施例の説明図である。図3は、本願の水上側被覆材の取り付け例の説明図である。図4は、本願の水上側被覆材と排水板とを一体化した排水板付き水上側被覆材の実施例の説明図である。図5は、従来技術の説明図であるが、本願の水上側被覆材と組み合わされる屋根材付き太陽光発電パネルの実施例である。
【0022】
まず、本願の水上側被覆材、それと組み合わせられる屋根材付き太陽光発電パネル及び排水板の実施例について、図1から図3及び図5で説明する。
【0023】
本願の水上側被覆材1は図3に示すように、水下側が屋根材付き太陽光発電パネルBと組み合わされるものである。また、本願の水上側被覆材1は、下面側が排水板2と組み合わされるものである。
【0024】
本願の水上側被覆材1と組み合わされる屋根材付き太陽光発電パネルBの具体例として、図5のようなものがあげられる。山部51と谷部52と軒棟方向に連通する空間とが形成された屋根材5と、水上側に水上嵌合部61が形成された枠体6とを有している。屋根材5は、山部51と谷部52とを交互に形成した波状のものでもよいし、谷部52を広くした形状又は、谷部52を狭くした形状でもよい。
【0025】
排水板2は図2に示すように、山部21と谷部22と軒棟方向に連通する空間とを有している。排水板2は、図3のように屋根材5に重ねて組み合わせたときに排水ができれば、山部21と谷部22とを交互に形成した波状のものでもよいし、谷部22を広くした形状又は、谷部22を狭くした形状でもよい。なお、排水板2として、下段の屋根材付き太陽光発電パネルBの屋根材5と同じ形状のものを使用するとよい。
【0026】
排水板2は図3に示すように、下段に取り付けた屋根材付き太陽光発電パネルBの屋根材5の水上側に重ねられる。図5に示した屋根材付き太陽光発電パネルBに本願の発明を応用する場合、屋根材付き太陽光発電パネルBは、屋根材5の水上側に止着部53を形成しているので、この上に図3に示すように排水板2の水下側を重ねる。重ねることによって、下段の屋根材5の止着部53を上から覆う状態になるので、下段の屋根材付き太陽光発電パネルBの取り付けにおける止水処理等が不要になる。
【0027】
水上側被覆材1は図1及び図4に示すように、水下側に下段の屋根材付き太陽光発電パネルBの水上嵌合部61に嵌合する嵌合部11が形成され、嵌合部11から水上側へ延出された被覆面12が形成され、被覆面12から延出されて排水板2の山部21と山部21との間に折り下げられる面戸部13が形成され、排水板2の山部21に固定する止着部141を有している。図1及び図4の実施例では、排水板2の山部21に当接する当接面14が設けられている。そして、当接面14に止着部141を形成している。
【0028】
嵌合部11は、下段の屋根材付き太陽光発電パネルBの水上嵌合部61に嵌合する形状を形成している。嵌合部11が下段の水上嵌合部61と嵌合することによって、本願の水上側被覆材1が上方にはずれないように組み合わされている。たとえば、図3のように、嵌合部11を下段の水上嵌合部61と屋根材5との間に差し込むように組み合わせ、下段の水上嵌合部61が嵌合部11を上から押さえている状態となるのが望ましい。このような形状の組合せとすることによって、施工しやすく、負圧に強い構造とすることができる。
【0029】
被覆面12は、嵌合部11から水上側へ延出されて排水板2を被覆する。被覆面12の水下側の端部は、下段の屋根材付き太陽光発電パネルBの受光面(上面)よりやや高い位置であることが望ましい。そうすることによって、本願の水上側被覆材1から下段の屋根材付き太陽光発電パネルBの受光面へと、雪をためることなく、導くことができる。もし、被覆面12の水下側の端部が、下段の屋根材付き太陽光発電パネルBの受光面よりも低いと、そこに雪がたまる可能性があり、効果を十分に得られないことが考えられる。また、被覆面12の水下側の端部が、下段の屋根材付き太陽光発電パネルBの受光面よりも著しく高いと、本願の水上側被覆材1を取り付けた際に、被覆面12上を雪が滑落するだけの傾斜を形成させる必要があるために水上側被覆材1そのものが大型化してしまったり、意匠性が損なわれたりすることもありうる。
【0030】
面戸部13は、被覆面12から延出されて排水板2の山部21と山部21との間に折り下げられる。図3のように、被覆面12の水上側端縁が排水板2の山部21に面で当接するように折り曲げて当接面14を形成し、そこからさらに延出されて排水板2の山部21と山部21との間に折り下げられた面戸部13を形成するとよい。
【0031】
また、面戸部13は、山部21と山部21との間の断面に合わせた形状にすることによって、下方に折り下げた状態で取り付けやすく、かつ雪が大量に入り込むことを防止する面戸としての役割を果たすようにできる。
【0032】
止着部141は、図3のとおり、排水板2の山部21に当接する部分である当接面14に形成する。ただし、排水板2の山部21に当接する部分である当接面14すべてに止着部141を形成する必要はなく、当接面14のうち、止着しやすく、また、強度的に適切な箇所に止着部141を形成すればよい。
【0033】
止着部141は、たとえば図3のように、被覆面12から延出して面戸部13までの間の当接面14に形成してもよいし、後述する図4のように被覆面12の下面側に形成した当接面14に形成してもよい。
【0034】
排水板2の山部21に当接する部分を面状にした当接面14とすることによって、本願の水上側被覆材1を排水板2に載置しても、排水板2を損傷させたり、変形させたりしにくくできる。そのため、当接面14を形成し、そこを止着部141を形成することによって、本願の水上側被覆材1を排水板2に安定した状態で固定することができる。
【0035】
水上側被覆材1が、排水板2の山部21に固定されたときに、面戸部13の水上側の端部と排水板2の谷部22との間には排水隙間部3が形成されている。この排水隙間部3は、排水・換気が可能であって、面戸部13が雪が大量に入り込むのを防止することができれば、大きさは問わない。また、面戸部13の水上側の端部も排水隙間部3の効果を妨げなければいかなる形状であってもよい。
【0036】
水上側被覆材1の取り付けについて、図3で説明する。まず、下段の屋根材付き太陽光発電パネルBの屋根材5の水上側に、排水板2の水下側を重ねて固定しておく。
【0037】
次に、本願の水上側被覆材1を取り付ける。水上側被覆材1の嵌合部11を屋根上に取り付けた屋根材付き太陽光発電パネルBの水上嵌合部61に嵌合して、止着部141に止着具4を打ち込んで排水板2の山部21に止着する。
【0038】
このように、水上側被覆材1の表面側から排水板2の山部21へ止着具4を打ち込んで固定する場合は、止着具4としてパッキン付きビスを用いるなど、止着具4を貫通させたことによる水漏れがないようにした方がよい。
【0039】
また、当接面14と排水板2の山部21との間にシーラー材を挟み込む方法も有効である。なお、止着方法については、屋根上に止着した結果、積雪荷重、風荷重に耐えられる程度の強度が確保できれば、止着具4を使わない方法でもよい。
【0040】
次に、本願の水上側被覆材1と排水板2とを一体化した実施例について、図4で説明する。屋根上への設置に先立ち、排水板2の山部21の裏面側から止着部141へと止着具4を打ち込んで、本願の水上側被覆材1と排水板2とが一体化された排水板付き水上側被覆材Aとする。このように排水板付き水上側被覆材Aとすることによって、屋根上での設置作業をさらに簡素化することができる。
【0041】
この場合、設置作業は、屋根上に取り付けた屋根材付き太陽光発電パネルBの水上嵌合部61に、嵌合部11を嵌合し、排水板2を屋根上に固定するだけである。
【0042】
また、図4の実施例では、被覆面12の下面側に止着部141を形成しているので、止着具4を打ち込んだ部分が表面に露出しない構造である。そのため、止水処理が不要になり、さらに屋根上での手間を省くことができる。
【0043】
次に、本願の水上側被覆材1の成形について、図1及び図4で説明する。本願の水上側被覆材1は、図1のように折板加工によって成形してもよいし、図4のように押出成形加工によって成形してもよい。
【0044】
そのほか、水上側被覆材1は、それ自体の大きさや、組み合わせる屋根材付き太陽光発電パネル、排水板等の形状などによっては、複数の部材に分けて成形し、一体化して水上側被覆材1の形状としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
A 排水板付き水上側被覆材
1 水上側被覆材
11 嵌合部
12 被覆面
13 面戸部
14 当接面
141 止着部
2 排水板
21 山部
22 谷部
3 排水隙間部
4 止着具
B 屋根材付き太陽光発電パネル
5 屋根材
51 山部
52 谷部
53 止着部
6 枠体
61 水上嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水下側が屋根材付き太陽光発電パネルに、
下面側が排水板に組み合わされる水上側被覆材であって、

前記屋根材付き太陽光発電パネルは、
山部と谷部と軒棟方向に連通する空間とが形成された屋根材と、
水上側に水上嵌合部が形成された枠体とを有しており、

前記排水板は、
山部と谷部と軒棟方向に連通する空間とを有しており、
前記屋根材の水上側に重ねられ、

前記水上側被覆材は、
水下側に下段の屋根材付き太陽光発電パネルの水上嵌合部に嵌合する嵌合部が形成され、
該嵌合部から水上側へ延出された被覆面が形成され、
該被覆面から延出された面戸部が形成され、
前記排水板の山部に固定する止着部を有しており、

水上側被覆材が排水板の山部に固定されたときに、
排水板の山部と山部との間に面戸部が折り下げられ、
該面戸部の水上側端部と排水板谷部との間には排水隙間部が形成される

水上側被覆材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公開番号】特開2013−53432(P2013−53432A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191417(P2011−191417)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000129079)株式会社カナメ (14)
【Fターム(参考)】