水上浮上型太陽電池発電装置
【課題】太陽電池を確実に水上に浮上させることができ、コストダウンが可能な水上浮上型太陽電池発電装置を提供する。
【解決手段】水上浮上型太陽電池発電装置1は、水上Wに1本以上並べた柱状の発泡材11で構成されるフロート10を備え、フロート10の発泡材11の上部には、太陽電池2が搭載されており、例えば発泡材11は、円柱部材、円筒部材または断面楕円の部材であり、例えば発泡材11の材質が、架橋発泡ポリオレフィンである。
【解決手段】水上浮上型太陽電池発電装置1は、水上Wに1本以上並べた柱状の発泡材11で構成されるフロート10を備え、フロート10の発泡材11の上部には、太陽電池2が搭載されており、例えば発泡材11は、円柱部材、円筒部材または断面楕円の部材であり、例えば発泡材11の材質が、架橋発泡ポリオレフィンである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上浮上型太陽電池発電装置に関し、特に例えば海上、湖やダム等の水上に太陽電池(太陽電池パネルともいう)を浮上させるための水上浮上型太陽電池発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンエネルギーの利用拡大に伴い、太陽電池の設置対象が住宅地の屋根上やビルの屋上に拡大してきている。電力会社等では、発電所跡地や埋立地などに太陽電池を設置し、メガワット規模の大規模電力発電を実施してきている。現在の太陽電池の単位面積当たりの出力は0.05〜0.12KWであることから、太陽電池を傾斜架台に配置した場合には1メガワットの発電面積は、1MW÷0.1KW/m2÷0.3 =33333m2 (敷地占有率0.3、太陽電池の出力を0.1KW/m2とした場合)となり、太陽電池の設置には広大な用地が必要となる。
また、太陽電池には高い構造物や樹木などの陰が位置しないように、太陽電池を設置する必要がある。
【0003】
一方、太陽電池の設置用地を確保するため、太陽電池を水上に設置する検討が行なわれてきたが、未だ本格的な採用には至っていない(特許文献1を参照。)。また、太陽電池を設置するために、金属フロートを使用した構造も提案されている(特許文献2を参照。)。さらに、太陽電池の設置するために、発泡樹脂水上フロートを連結させている例もある(特許文献3を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−173212号公報
【特許文献2】特開2002−118275号公報
【特許文献3】特開2004−63497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、太陽電池の発電効率が5〜12%と低いため、大きな発電量を得るには、広い面積に太陽電池を設置する必要があるが、従来考えられてきた洋上設置型太陽電池は大きな発電向けを想定しておらず、小型の発電向けのものであった。
この洋上設置型の太陽電池設置構造は、発泡樹脂性フロートを複数個配置し、その上に骨格を形成するフレームと天板を配置したものである。フロート上にフレームや台座を配置する場合、太陽電池の重量により台座やフレームが撓まぬように台座やフレームの強度を設計する必要がある。このため、強固な材料とする必要があり、材料重量の増加や材料コストのアップに繋がる。
【0006】
大規模発電を行なうためには、太陽電池を搭載する面積を確保する必要があるが、現状のようにフレームや天板を配置した構造の場合には、浮上発電設備が大型化して重量も大きくなるため、フロートサイズが大型となってしまう。もしくは、浮上型太陽電池装置の台数を増やすことで発電量を得る方法となると、浮上型太陽電池装置の台数を増やす必要が出てくる。
【0007】
また、金属製フロートを使用した構造の場合は、長尺品の製造が困難になるため、大規模発電用太陽電池を構築するためには、多数の水上設置太陽電池発電装置を設置する必要がありコストがアップする。従来は太陽電池パネルの面積を大きくするためには、水上フロート設備を連結する必要があり、接続箇所で受光ロスが生じていた。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、太陽電池を確実に水上に浮上させることができ、受光ロスを少なくし、コストダウンが可能な水上浮上型太陽電池発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解消するために、本発明の水上浮上型太陽電池発電装置は、水上に1本以上並べた柱状の発泡材で構成されるフロートを備え、前記フロートの前記発泡材の上部には、太陽電池を搭載させたことを特徴とする。上記構成によれば、太陽電池を確実に水上に浮上させることができ、受光ロスを少なくし、コストダウンが可能である。
【0010】
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記発泡材は、円柱部材、円筒部材または断面楕円の部材であることを特徴とする。上記構成によれば、発泡材が円柱部材、円筒部材または断面楕円の部材であっても、太陽電池を確実に水上に浮上させることができ、単純な形状の部材を用いるので生産性も良く、コストダウンが図れる。
【0011】
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記水上に異なる外径の前記発泡材を複数本並べて構成された前記フロートの上部には、前記太陽電池を搭載させたことを特徴とする。上記構成によれば、フロートの上には太陽電池を傾けて搭載することができ、太陽電池は水上に対する傾斜角度である受光角度を付けることが、比較的容易にできる。
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記発泡材の材質が、架橋発泡ポリオレフィンであることを特徴とする。上記構成によれば、受光ロスを少なくし、低コストで水上浮上型太陽電池発電装置を構築することができる。
【0012】
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記発泡材の中に、前記太陽電池により発電された電気を伝送するためのケーブルを収納させたことを特徴とする。上記構成によれば、本発明の発泡材の一部をケーブルに置き換えることにより、ケーブル保護用管路などの余分な資材を使用する必要がなくなる。
【0013】
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記太陽電池が、アモルファス太陽電池フィルムから成ることを特徴とする。上記構成によれば、アモルファス型の太陽電池は円柱形状の発泡体の複数本並べた凹凸のある上部の形状に追随することができ、受光効率を上げることができる。アモルファス型の太陽電池と組み合わせることで軽量化が可能である。また、発泡材と太陽電池の隙間への風の侵入を小さくすることが可能となり、水上浮上型太陽電池発電装置が風により移動することを低減させることが可能となる。
【0014】
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記ケーブルには防水コネクタを使用したことを特徴とする。上記構成によれば、ケーブルは防水コネクタを用いて外部に防水をしながら電気的に接続できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽電池を確実に水上に浮上させることができ、受光ロスを少なくし、コストダウンが可能な水上浮上型太陽電池発電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の水上浮上型太陽電池発電装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す水上浮上型太陽電池発電装置のフロートを示す斜視図である。
【図3】各発泡材が互いに溶着により固定されたフロートの例を示す正面図である。
【図4】発泡材の全面もしくは紫外線の受光面に対して、耐紫外線用塗料を塗布している例を示すフロートの正面図である。
【図5】耐紫外線性を有した袋またはシート材等の耐紫外線性を有する保護材に円形状の発泡材を収納した例を示すフロートの正面図である。
【図6】太陽電池がフロートの発泡材に対して固定金具を用いて固定されている実施形態を示す図である。
【図7】図6に示す2組の固定金具を用いて、太陽電池がフロートに固定されている例を示す正面図である。
【図8】本発明のさらに別の実施形態を示す正面図である。
【図9】可とう性を有するアモルファスシリコン型の太陽電池が、フロートに装着されている実施形態を示す正面図である。
【図10】水上浮上型太陽電池発電装置の発泡材の一部に電力ケーブルを内蔵した構造を示す正面図である。
【図11】防水コネクタの構造例を示す図である。
【図12】外径が大きく異なる大小の発泡材を交互に組み合わせている実施形態を示している正面図である。
【図13】断面楕円形状を有する発泡材のフロートの上部に、可とう性を有する太陽電池を搭載した例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の水上浮上型太陽電池発電装置の実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す水上浮上型太陽電池発電装置のフロートを示す斜視図である。
図1に示す水上浮上型太陽電池発電装置1は、海上、湖やダム等の水上Wに太陽電池2を設定して浮上させるために用いられる。
【0018】
図1では、水上浮上型太陽電池発電装置1は、フロート10を有している。フロート10の上面側には、太陽電池2が搭載されている。太陽電池2は太陽電池モジュールあるいは太陽電池パネルともいう。
図2に示す例では、架橋ポリエチレン製の円柱状の発泡材11を例えば5本横に並べることで構成されたフロート10を示している。図2に示すように、フロート10は5本の発泡材11により構成されているが、特に本数は限定されない。
【0019】
図2に示す各発泡材11は、同じ外径を有する部材である。発泡材11の製造方法については特に限定しないが、発泡材11は量産性を考慮して押出成形で製造するのが好ましい。発泡方法は特には限定せず、窒素ガスあるいは不活性ガスによる発泡方法、発泡材による方法等がある。
発泡材の材質は押出成形できる樹脂であればよく、熱可塑性樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル等が可能であるが、これらの中でも、耐候性、比重、コスト、量産性の面から、発泡材の材質はポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。強度の点から、樹脂は架橋しているのが好ましく、電子線架橋、有機過酸化物等の架橋剤により架橋できる。
【0020】
架橋発泡ポリエチレンの発泡材11は、1本以上の円柱の部材、円筒(パイプ)の部材、断面楕円の柱状の部材などの形状を有しており、架橋発泡ポリエチレンの発泡材11の1種類もしくは複数種類を横方向に筏状に並べて発泡材11同士を全長に渡り接合させることで、フロート10を構成することができる。上記以外の形状に押出し異形成形した断面四角、三角、星型等の柱状発泡体でも筏状に並べて接合できれば太陽電池の搭載は可能であるが、生産性、コスト等を考慮すると、円柱の部材、円筒(パイプ)の部材、断面楕円の柱状の部材などの形状が好ましい。複数の円柱の部材、円筒(パイプ)の部材、断面楕円の柱状の部材の発泡材11同士の接合は、接着材による接合方式も考えられるが、耐水性、信頼性の面から、熱溶着方式による接合を行なうことが望ましい。
【0021】
10KWの発電を行なう水上浮上型太陽発電装置1としては、太陽電池2の発電効率10%とすると、
10KW÷0.1KW/m2÷0.3 =333m2
の面積が必要となる。この場合に、発泡材11の長さSは135m、発泡材11により構成されるフロート10の幅Tを2.5mとする。円形状の発泡材11の外径は50cmとする。
【0022】
図3は、各発泡材11が互いに溶着により固定されたフロート10の例を示す正面図である。各発泡材11は例えば熱溶着方式により熱溶着部分11Aを用いて溶着させる。これにより、各発泡材11は、金具等の固定具を用いずに、互いに確実に固定することができる。
【0023】
図4は、発泡材11の全面もしくは紫外線の受光面に対して、耐紫外線塗料12を塗布している例を示すフロートの正面図である。
発泡材11の表面密度を高めることにより、発泡材11の表面の外傷や劣化を防ぐことは可能であるが、本発明の実施形態では、発泡材11は屋外で使用するために、紫外線による発泡材11の劣化が予想される。このため、発泡材11の全面もしくは紫外線の受光面に耐紫外線用塗料12を塗布する。耐紫外線用塗料12としては特には限定しないが、シリコン配合型の塗料などを使用することができる。
【0024】
図5は、耐紫外線性を有した袋またはシート材等の耐紫外線性を有する保護部材13に円形状の発泡材11を収納した例を示すフロートの正面図である。別の紫外線による劣化対策として、接合していない発泡材11を遮光性のシートもしくは袋のような保護部材13に収納させることができる。発泡材11を、遮光性を有する袋の保護部材13に収納させる場合は、あらかじめ袋に円筒状の発泡材11を入れる仕切りをつけておき、接合前の単体の発泡材を1本もしくは複数本ずつ袋の中に収納することで筏状のフロート10を形状させる。
【0025】
遮光性シートは遮光性を有するシート材のような保護部材13により発泡材11を覆い被せることにより、発泡材11を紫外線から遮ることが可能である。遮光性シートの材質については、合成樹脂や金属等である。遮光性を有する袋は前記の遮光性シートを長手方向に袋状に加工したものである。なお、発泡材11の材料に予め耐紫外線材料を含んで成形することもできる。
【0026】
図1に示すように、フロート10の上面側に搭載する太陽電池2としては、シリコン系では、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体系では、単結晶化合物半導体、多結晶化合物半導体を使用することができる。また太陽電池2としては、有機系では、色素増感型、色素薄膜型などを使用することができる。
アモルファス太陽電池としては、アモルファス太陽電池フィルムを用いることができ、例えば、フィルム状の薄膜の内側に、トップセルとして「アモルファスシリコン(a-Si)太陽電池」を、ボトムセルに「アモルファスシリコンゲルマニウム(a-SiGe)太陽電池」を用いた二層構造のもの(富士電機株式会社製)を使用することができる。
【0027】
太陽電池2の質量は、表1に例示するように、アモルファスシリコン型で1kg/m2となる。発電効率5%とすると1m2での発電量は0.05KWとなり、1KWあたりの質量は20kgとなる。したがって、10KWを発電する太陽電池の質量は200kgとなる。
【表1】
【0028】
架橋発泡ポリエチレンの発泡材11は、円柱状の部材、円筒(パイプ)状の部材、断面楕円の柱状の部材などの形状を有しているが、この架橋発泡ポリエチレンの発泡材11の外径は 10cm〜120cmが好ましい。図13に示すような断面楕円の部材の発泡材11の場合には、長径は50〜120cm、短径は10〜50cmが好ましい。
なお、蓄電用バッテリーを設置する場合、バッテリーは重量が重いため、発泡材11上ではなく、陸地に設置することを想定している。また、蓄電しないで発電した電力のみを送電することを想定しているので、バッテリーは設置する必要がないので、バッテリーは特に図示していない。
【0029】
一方、外径50cmの発泡材11の浮力は、表2に示す通り、314kgf/m2となる。このため、表1に記載されているいずれの種類の太陽電池へも十分な安全率を有して適用可能となる。発泡材11の外径は、表1に示す搭載される太陽電池2の単位面積あたりの質量から浮力を計算し、発泡材11の外径を決定した。
【表2】
【0030】
図6は、太陽電池2がフロート10の発泡材11に対して固定金具20を用いて固定されている実施形態を示す図である。
図6に示すように、固定金具20は、発泡材把持部21と、ボルト22と、ナット23,24,25,26を有している。発泡材把持部21は、第1締め付け型金具31と第2締め付け型金具32と取り付け部33,34を有している。第1締め付け型金具31と第2締め付け型金具32はほぼC字型を有しており、第1締め付け型金具31は取り付け部33に固定され、第2締め付け型金具32は取り付け部34に固定されている。
【0031】
取り付け部33,34が互いに密着した状態でボルト22に通されてナット23,24により保持されている。これにより、第1締め付け型金具31と第2締め付け型金具32は、発泡材11を挟むようにして締め付けて固定されている。ボルト22は、2つのナット25,26により太陽電池2に対して固定されている。
【0032】
図7は、図6に示す2組の固定金具20,20を用いて、太陽電池2がフロート10に対して平行に固定されている例を示している。
図7に示すように、左右の固定金具20,20が、フロート10の左右両側の発泡材11,11に対して締め付けられることで、太陽電池2が、フロート10に対して平行に固定されている。なお、固定金具20の発泡材把持部21と、ボルト22と、ナットは水中における電食腐食を避けるために、ステンレス製もしくは非金属製樹脂材料で作られている。
【0033】
図8は、本発明のさらに別の実施形態を示す正面図である。
図8では、例えば5本の発泡材11A,11B,11C,11D,11Eが並列に並べられているが、各発泡材11A,11B,11C,11D,11Eの外径は、発泡材11A,11B,11C,11D,11Eの順に大きくなるように変化させている。発泡材11A,11B,11C,11D,11Eの外径は、例えば10,20,30,40,50cmである。
【0034】
このように異なる外径を有する複数本の発泡材11A,11B,11C,11D,11Eを並列に配置してフロート10を構成することで、このフロート10に搭載される太陽電池2は、約10度の受光角度θを得ることができる。このように、異なる外径の円柱形状の発泡体11を組み合わせることにより、太陽電池2は傾斜角度である受光角度θを付けることが、比較的容易にできる。この受光角度θは、太陽電池2が水上Wに対して形成される角度である。
太陽光の受光効率を向上させるため、外径の異なる複数本の発泡材は傾斜させるように並べる。傾斜角度は、受光効率が良いと推奨されている受光角度θ=10度〜40度に配置する。ただし、受光角度θがゼロ度の場合でも受光効率が若干低下するだけで設置自体に問題はない。
【0035】
図9は、可とう性を有するアモルファスシリコン型の太陽電池2が、フロート10に装着されている実施形態を示す正面図である。
図9に示すアモルファスシリコン型の太陽電池2は、曲げることが可能であることから、円形状の発泡材11A〜11Gの上側に張り付ける。これにより、発泡材と太陽電池2の隙間への風の侵入を小さくすることが可能となり、水上浮上型太陽電池発電装置1が風により移動することを低減させることが可能となる。また、アモルファス型の太陽電池は円柱形状の発泡体の複数本並べた凹凸のある上部の形状に追随することができ、受光効率を上げることができる。アモルファス型の太陽電池と組み合わせることで軽量化が可能である。
【0036】
図10は、水上浮上型太陽電池発電装置1の発泡材の一部に電力ケーブル40を内蔵した構造を示す正面図である。
図10に示すように、太陽電池2により発電された電気は、電力ケーブル40により伝送させるために、電力ケーブル40を配置する必要がある。そこで、発泡材11の一部に電力ケーブル40を収納させる。また、図1に示すように、その電力ケーブル40の端末には電気接続箱42と防水コネクタ41を設けている。この防水コネクタ41を使用したフロート10の構造を採用すれば、別の電力ケーブルを配置せずに、防水型構造の電力ケーブルが配置できる。太陽電池により発電した電力を伝送させるための電力ケーブルを、本発明の発泡材の一部を電力ケーブルに置き換えることにより、ケーブル保護用管路などの余分な資材を使用する必要がなくなるためコストダウンが可能となる。
【0037】
このように、太陽電池の面積が広いことから太陽電池モジュール毎に発電した電力を伝送させるための電力ケーブルを配置する必要がある。発泡材の一部を電力ケーブルに置き換えることにより、ケーブル保護用管路などの余分な資材を使用する必要がなくなる。ケーブルの外周に直接発泡材を被覆しても良いし、発泡材パイプにケーブルを挿入しても良い。ケーブルは通常の電力ケーブルであればよく、特に限定されるものではない。また、電力ケーブルと機器との接合箇所には、防水コネクタを使用することができる。
【0038】
図11は、防水コネクタ41の構造例を示している。防水コネクタ41は、ピン45、カバーナット46、ピンカバー47を有しており、ピン45とケーブル40が電気的にしかも機械的に接続する。これにより、電力ケーブル40は防水コネクタ41を用いて外部に防水をしながら電気的に接続できる
図12は、外径が大きく異なる大小の発泡材11M、11Nを交互に組み合わせている実施形態を示している正面図である。図12では、これらの発泡材11M、11Nにより形成される凸凹上の筏状のフロート10の上には太陽電池2が搭載されている。
【0039】
発泡材11M、11Nは、前記実施形態と同様に紫外線対応として、耐紫外線塗料の塗布を塗布するか、もしくは耐紫外線性を有する保護部材に内蔵させる。発泡材11M、11Nにより形成される凸凹の角度θ2は、太陽光の受電が最も効率よいといわれている10度から40度に配置する。凸凹の角度θ2が10度よりも小さいと、太陽電池パネルへの太陽光の入射角が小さくなるため、真南の方位に30度の受光角度の場合と比較すると発電効率は、5%程度悪くなるため好ましくない。凸凹の角度θ2が40度よりも大きいと、太陽光電池パネルへの入射角度が大きすぎるため、真南の方位の場合と比較して3%程度悪くなるため好ましくない。
【0040】
図12に示すフロート10の表面に単結晶シリコン型の太陽電池2を設置する。外径が小さい発泡材11Nの外径は30cmであり、外径が大きい発泡材11Mの外径は50cmとする。これらの発泡材11M、11Nを交互に配置することで、太陽電池2を例えば受光角26.6度に配置することができる。(tan-1((0.5-0.3)/0.5+0.3m))=26.6°)
また、6個の外径が小さい発泡材11Nと、7個の外径が大きい発泡材11Mに取り付けられる太陽電池2の受光面積は、(0.5+0.3)÷con26.6°×7=6.26m2となる。53.1mの長さで製造することにより、10KWの発電が可能となる。(333m2÷6.27 m2=53.1m)
【0041】
本発明の実施形態では、太陽電池をフロートに直接搭載することができるために、低コストで水上浮上型太陽電池発電装置を構築することができる。押出成形により円柱形状の発泡材に成形することで、長手方向に長いフロートを設置することができる。これにより、接続箇所の少ない太陽電池を設置することができる。太陽電池の接続を少なくすることで、従来の接続箇所が多い太陽電池よりも受光効率を向上させることができる。特にアモルファス太陽電池は接続箇所を少なくすることができ、本発明に有用である。
【0042】
異なる外径の円柱形状の発泡体を組み合わせることにより、太陽電池パネルに傾斜を付けることが比較的容易にできる。アモルファス型の太陽電池は円柱形状の発泡体の複数本並べた凹凸のある上部の形状に追随することができ、受光効率を上げることができる。アモルファス型の太陽電池と組み合わせることで軽量化が可能である。
図13は、断面楕円形状を有する発泡材11Rのフロートの上部に、可とう性を有する太陽電池2を搭載した例を示す斜視図である。
【0043】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、発泡材の断面形状は、図示例に限定されず、太陽電池が搭載できれば、断面矩形の部材、断面ひし形の部材等であっても良い。また、本発明の各実施形態は、任意に組み合わせて構成することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 水上浮上型太陽電池発電装置
2 太陽電池
10 フロート
11 発泡材
11A 熱溶着部分
12 耐紫外線塗料
41 防水コネクタ
42 電気接続箱
W 水上(水面上)
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上浮上型太陽電池発電装置に関し、特に例えば海上、湖やダム等の水上に太陽電池(太陽電池パネルともいう)を浮上させるための水上浮上型太陽電池発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンエネルギーの利用拡大に伴い、太陽電池の設置対象が住宅地の屋根上やビルの屋上に拡大してきている。電力会社等では、発電所跡地や埋立地などに太陽電池を設置し、メガワット規模の大規模電力発電を実施してきている。現在の太陽電池の単位面積当たりの出力は0.05〜0.12KWであることから、太陽電池を傾斜架台に配置した場合には1メガワットの発電面積は、1MW÷0.1KW/m2÷0.3 =33333m2 (敷地占有率0.3、太陽電池の出力を0.1KW/m2とした場合)となり、太陽電池の設置には広大な用地が必要となる。
また、太陽電池には高い構造物や樹木などの陰が位置しないように、太陽電池を設置する必要がある。
【0003】
一方、太陽電池の設置用地を確保するため、太陽電池を水上に設置する検討が行なわれてきたが、未だ本格的な採用には至っていない(特許文献1を参照。)。また、太陽電池を設置するために、金属フロートを使用した構造も提案されている(特許文献2を参照。)。さらに、太陽電池の設置するために、発泡樹脂水上フロートを連結させている例もある(特許文献3を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−173212号公報
【特許文献2】特開2002−118275号公報
【特許文献3】特開2004−63497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、太陽電池の発電効率が5〜12%と低いため、大きな発電量を得るには、広い面積に太陽電池を設置する必要があるが、従来考えられてきた洋上設置型太陽電池は大きな発電向けを想定しておらず、小型の発電向けのものであった。
この洋上設置型の太陽電池設置構造は、発泡樹脂性フロートを複数個配置し、その上に骨格を形成するフレームと天板を配置したものである。フロート上にフレームや台座を配置する場合、太陽電池の重量により台座やフレームが撓まぬように台座やフレームの強度を設計する必要がある。このため、強固な材料とする必要があり、材料重量の増加や材料コストのアップに繋がる。
【0006】
大規模発電を行なうためには、太陽電池を搭載する面積を確保する必要があるが、現状のようにフレームや天板を配置した構造の場合には、浮上発電設備が大型化して重量も大きくなるため、フロートサイズが大型となってしまう。もしくは、浮上型太陽電池装置の台数を増やすことで発電量を得る方法となると、浮上型太陽電池装置の台数を増やす必要が出てくる。
【0007】
また、金属製フロートを使用した構造の場合は、長尺品の製造が困難になるため、大規模発電用太陽電池を構築するためには、多数の水上設置太陽電池発電装置を設置する必要がありコストがアップする。従来は太陽電池パネルの面積を大きくするためには、水上フロート設備を連結する必要があり、接続箇所で受光ロスが生じていた。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、太陽電池を確実に水上に浮上させることができ、受光ロスを少なくし、コストダウンが可能な水上浮上型太陽電池発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解消するために、本発明の水上浮上型太陽電池発電装置は、水上に1本以上並べた柱状の発泡材で構成されるフロートを備え、前記フロートの前記発泡材の上部には、太陽電池を搭載させたことを特徴とする。上記構成によれば、太陽電池を確実に水上に浮上させることができ、受光ロスを少なくし、コストダウンが可能である。
【0010】
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記発泡材は、円柱部材、円筒部材または断面楕円の部材であることを特徴とする。上記構成によれば、発泡材が円柱部材、円筒部材または断面楕円の部材であっても、太陽電池を確実に水上に浮上させることができ、単純な形状の部材を用いるので生産性も良く、コストダウンが図れる。
【0011】
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記水上に異なる外径の前記発泡材を複数本並べて構成された前記フロートの上部には、前記太陽電池を搭載させたことを特徴とする。上記構成によれば、フロートの上には太陽電池を傾けて搭載することができ、太陽電池は水上に対する傾斜角度である受光角度を付けることが、比較的容易にできる。
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記発泡材の材質が、架橋発泡ポリオレフィンであることを特徴とする。上記構成によれば、受光ロスを少なくし、低コストで水上浮上型太陽電池発電装置を構築することができる。
【0012】
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記発泡材の中に、前記太陽電池により発電された電気を伝送するためのケーブルを収納させたことを特徴とする。上記構成によれば、本発明の発泡材の一部をケーブルに置き換えることにより、ケーブル保護用管路などの余分な資材を使用する必要がなくなる。
【0013】
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記太陽電池が、アモルファス太陽電池フィルムから成ることを特徴とする。上記構成によれば、アモルファス型の太陽電池は円柱形状の発泡体の複数本並べた凹凸のある上部の形状に追随することができ、受光効率を上げることができる。アモルファス型の太陽電池と組み合わせることで軽量化が可能である。また、発泡材と太陽電池の隙間への風の侵入を小さくすることが可能となり、水上浮上型太陽電池発電装置が風により移動することを低減させることが可能となる。
【0014】
本発明の水上浮上型太陽電池発電装置では、前記ケーブルには防水コネクタを使用したことを特徴とする。上記構成によれば、ケーブルは防水コネクタを用いて外部に防水をしながら電気的に接続できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽電池を確実に水上に浮上させることができ、受光ロスを少なくし、コストダウンが可能な水上浮上型太陽電池発電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の水上浮上型太陽電池発電装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す水上浮上型太陽電池発電装置のフロートを示す斜視図である。
【図3】各発泡材が互いに溶着により固定されたフロートの例を示す正面図である。
【図4】発泡材の全面もしくは紫外線の受光面に対して、耐紫外線用塗料を塗布している例を示すフロートの正面図である。
【図5】耐紫外線性を有した袋またはシート材等の耐紫外線性を有する保護材に円形状の発泡材を収納した例を示すフロートの正面図である。
【図6】太陽電池がフロートの発泡材に対して固定金具を用いて固定されている実施形態を示す図である。
【図7】図6に示す2組の固定金具を用いて、太陽電池がフロートに固定されている例を示す正面図である。
【図8】本発明のさらに別の実施形態を示す正面図である。
【図9】可とう性を有するアモルファスシリコン型の太陽電池が、フロートに装着されている実施形態を示す正面図である。
【図10】水上浮上型太陽電池発電装置の発泡材の一部に電力ケーブルを内蔵した構造を示す正面図である。
【図11】防水コネクタの構造例を示す図である。
【図12】外径が大きく異なる大小の発泡材を交互に組み合わせている実施形態を示している正面図である。
【図13】断面楕円形状を有する発泡材のフロートの上部に、可とう性を有する太陽電池を搭載した例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の水上浮上型太陽電池発電装置の実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す水上浮上型太陽電池発電装置のフロートを示す斜視図である。
図1に示す水上浮上型太陽電池発電装置1は、海上、湖やダム等の水上Wに太陽電池2を設定して浮上させるために用いられる。
【0018】
図1では、水上浮上型太陽電池発電装置1は、フロート10を有している。フロート10の上面側には、太陽電池2が搭載されている。太陽電池2は太陽電池モジュールあるいは太陽電池パネルともいう。
図2に示す例では、架橋ポリエチレン製の円柱状の発泡材11を例えば5本横に並べることで構成されたフロート10を示している。図2に示すように、フロート10は5本の発泡材11により構成されているが、特に本数は限定されない。
【0019】
図2に示す各発泡材11は、同じ外径を有する部材である。発泡材11の製造方法については特に限定しないが、発泡材11は量産性を考慮して押出成形で製造するのが好ましい。発泡方法は特には限定せず、窒素ガスあるいは不活性ガスによる発泡方法、発泡材による方法等がある。
発泡材の材質は押出成形できる樹脂であればよく、熱可塑性樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル等が可能であるが、これらの中でも、耐候性、比重、コスト、量産性の面から、発泡材の材質はポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。強度の点から、樹脂は架橋しているのが好ましく、電子線架橋、有機過酸化物等の架橋剤により架橋できる。
【0020】
架橋発泡ポリエチレンの発泡材11は、1本以上の円柱の部材、円筒(パイプ)の部材、断面楕円の柱状の部材などの形状を有しており、架橋発泡ポリエチレンの発泡材11の1種類もしくは複数種類を横方向に筏状に並べて発泡材11同士を全長に渡り接合させることで、フロート10を構成することができる。上記以外の形状に押出し異形成形した断面四角、三角、星型等の柱状発泡体でも筏状に並べて接合できれば太陽電池の搭載は可能であるが、生産性、コスト等を考慮すると、円柱の部材、円筒(パイプ)の部材、断面楕円の柱状の部材などの形状が好ましい。複数の円柱の部材、円筒(パイプ)の部材、断面楕円の柱状の部材の発泡材11同士の接合は、接着材による接合方式も考えられるが、耐水性、信頼性の面から、熱溶着方式による接合を行なうことが望ましい。
【0021】
10KWの発電を行なう水上浮上型太陽発電装置1としては、太陽電池2の発電効率10%とすると、
10KW÷0.1KW/m2÷0.3 =333m2
の面積が必要となる。この場合に、発泡材11の長さSは135m、発泡材11により構成されるフロート10の幅Tを2.5mとする。円形状の発泡材11の外径は50cmとする。
【0022】
図3は、各発泡材11が互いに溶着により固定されたフロート10の例を示す正面図である。各発泡材11は例えば熱溶着方式により熱溶着部分11Aを用いて溶着させる。これにより、各発泡材11は、金具等の固定具を用いずに、互いに確実に固定することができる。
【0023】
図4は、発泡材11の全面もしくは紫外線の受光面に対して、耐紫外線塗料12を塗布している例を示すフロートの正面図である。
発泡材11の表面密度を高めることにより、発泡材11の表面の外傷や劣化を防ぐことは可能であるが、本発明の実施形態では、発泡材11は屋外で使用するために、紫外線による発泡材11の劣化が予想される。このため、発泡材11の全面もしくは紫外線の受光面に耐紫外線用塗料12を塗布する。耐紫外線用塗料12としては特には限定しないが、シリコン配合型の塗料などを使用することができる。
【0024】
図5は、耐紫外線性を有した袋またはシート材等の耐紫外線性を有する保護部材13に円形状の発泡材11を収納した例を示すフロートの正面図である。別の紫外線による劣化対策として、接合していない発泡材11を遮光性のシートもしくは袋のような保護部材13に収納させることができる。発泡材11を、遮光性を有する袋の保護部材13に収納させる場合は、あらかじめ袋に円筒状の発泡材11を入れる仕切りをつけておき、接合前の単体の発泡材を1本もしくは複数本ずつ袋の中に収納することで筏状のフロート10を形状させる。
【0025】
遮光性シートは遮光性を有するシート材のような保護部材13により発泡材11を覆い被せることにより、発泡材11を紫外線から遮ることが可能である。遮光性シートの材質については、合成樹脂や金属等である。遮光性を有する袋は前記の遮光性シートを長手方向に袋状に加工したものである。なお、発泡材11の材料に予め耐紫外線材料を含んで成形することもできる。
【0026】
図1に示すように、フロート10の上面側に搭載する太陽電池2としては、シリコン系では、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体系では、単結晶化合物半導体、多結晶化合物半導体を使用することができる。また太陽電池2としては、有機系では、色素増感型、色素薄膜型などを使用することができる。
アモルファス太陽電池としては、アモルファス太陽電池フィルムを用いることができ、例えば、フィルム状の薄膜の内側に、トップセルとして「アモルファスシリコン(a-Si)太陽電池」を、ボトムセルに「アモルファスシリコンゲルマニウム(a-SiGe)太陽電池」を用いた二層構造のもの(富士電機株式会社製)を使用することができる。
【0027】
太陽電池2の質量は、表1に例示するように、アモルファスシリコン型で1kg/m2となる。発電効率5%とすると1m2での発電量は0.05KWとなり、1KWあたりの質量は20kgとなる。したがって、10KWを発電する太陽電池の質量は200kgとなる。
【表1】
【0028】
架橋発泡ポリエチレンの発泡材11は、円柱状の部材、円筒(パイプ)状の部材、断面楕円の柱状の部材などの形状を有しているが、この架橋発泡ポリエチレンの発泡材11の外径は 10cm〜120cmが好ましい。図13に示すような断面楕円の部材の発泡材11の場合には、長径は50〜120cm、短径は10〜50cmが好ましい。
なお、蓄電用バッテリーを設置する場合、バッテリーは重量が重いため、発泡材11上ではなく、陸地に設置することを想定している。また、蓄電しないで発電した電力のみを送電することを想定しているので、バッテリーは設置する必要がないので、バッテリーは特に図示していない。
【0029】
一方、外径50cmの発泡材11の浮力は、表2に示す通り、314kgf/m2となる。このため、表1に記載されているいずれの種類の太陽電池へも十分な安全率を有して適用可能となる。発泡材11の外径は、表1に示す搭載される太陽電池2の単位面積あたりの質量から浮力を計算し、発泡材11の外径を決定した。
【表2】
【0030】
図6は、太陽電池2がフロート10の発泡材11に対して固定金具20を用いて固定されている実施形態を示す図である。
図6に示すように、固定金具20は、発泡材把持部21と、ボルト22と、ナット23,24,25,26を有している。発泡材把持部21は、第1締め付け型金具31と第2締め付け型金具32と取り付け部33,34を有している。第1締め付け型金具31と第2締め付け型金具32はほぼC字型を有しており、第1締め付け型金具31は取り付け部33に固定され、第2締め付け型金具32は取り付け部34に固定されている。
【0031】
取り付け部33,34が互いに密着した状態でボルト22に通されてナット23,24により保持されている。これにより、第1締め付け型金具31と第2締め付け型金具32は、発泡材11を挟むようにして締め付けて固定されている。ボルト22は、2つのナット25,26により太陽電池2に対して固定されている。
【0032】
図7は、図6に示す2組の固定金具20,20を用いて、太陽電池2がフロート10に対して平行に固定されている例を示している。
図7に示すように、左右の固定金具20,20が、フロート10の左右両側の発泡材11,11に対して締め付けられることで、太陽電池2が、フロート10に対して平行に固定されている。なお、固定金具20の発泡材把持部21と、ボルト22と、ナットは水中における電食腐食を避けるために、ステンレス製もしくは非金属製樹脂材料で作られている。
【0033】
図8は、本発明のさらに別の実施形態を示す正面図である。
図8では、例えば5本の発泡材11A,11B,11C,11D,11Eが並列に並べられているが、各発泡材11A,11B,11C,11D,11Eの外径は、発泡材11A,11B,11C,11D,11Eの順に大きくなるように変化させている。発泡材11A,11B,11C,11D,11Eの外径は、例えば10,20,30,40,50cmである。
【0034】
このように異なる外径を有する複数本の発泡材11A,11B,11C,11D,11Eを並列に配置してフロート10を構成することで、このフロート10に搭載される太陽電池2は、約10度の受光角度θを得ることができる。このように、異なる外径の円柱形状の発泡体11を組み合わせることにより、太陽電池2は傾斜角度である受光角度θを付けることが、比較的容易にできる。この受光角度θは、太陽電池2が水上Wに対して形成される角度である。
太陽光の受光効率を向上させるため、外径の異なる複数本の発泡材は傾斜させるように並べる。傾斜角度は、受光効率が良いと推奨されている受光角度θ=10度〜40度に配置する。ただし、受光角度θがゼロ度の場合でも受光効率が若干低下するだけで設置自体に問題はない。
【0035】
図9は、可とう性を有するアモルファスシリコン型の太陽電池2が、フロート10に装着されている実施形態を示す正面図である。
図9に示すアモルファスシリコン型の太陽電池2は、曲げることが可能であることから、円形状の発泡材11A〜11Gの上側に張り付ける。これにより、発泡材と太陽電池2の隙間への風の侵入を小さくすることが可能となり、水上浮上型太陽電池発電装置1が風により移動することを低減させることが可能となる。また、アモルファス型の太陽電池は円柱形状の発泡体の複数本並べた凹凸のある上部の形状に追随することができ、受光効率を上げることができる。アモルファス型の太陽電池と組み合わせることで軽量化が可能である。
【0036】
図10は、水上浮上型太陽電池発電装置1の発泡材の一部に電力ケーブル40を内蔵した構造を示す正面図である。
図10に示すように、太陽電池2により発電された電気は、電力ケーブル40により伝送させるために、電力ケーブル40を配置する必要がある。そこで、発泡材11の一部に電力ケーブル40を収納させる。また、図1に示すように、その電力ケーブル40の端末には電気接続箱42と防水コネクタ41を設けている。この防水コネクタ41を使用したフロート10の構造を採用すれば、別の電力ケーブルを配置せずに、防水型構造の電力ケーブルが配置できる。太陽電池により発電した電力を伝送させるための電力ケーブルを、本発明の発泡材の一部を電力ケーブルに置き換えることにより、ケーブル保護用管路などの余分な資材を使用する必要がなくなるためコストダウンが可能となる。
【0037】
このように、太陽電池の面積が広いことから太陽電池モジュール毎に発電した電力を伝送させるための電力ケーブルを配置する必要がある。発泡材の一部を電力ケーブルに置き換えることにより、ケーブル保護用管路などの余分な資材を使用する必要がなくなる。ケーブルの外周に直接発泡材を被覆しても良いし、発泡材パイプにケーブルを挿入しても良い。ケーブルは通常の電力ケーブルであればよく、特に限定されるものではない。また、電力ケーブルと機器との接合箇所には、防水コネクタを使用することができる。
【0038】
図11は、防水コネクタ41の構造例を示している。防水コネクタ41は、ピン45、カバーナット46、ピンカバー47を有しており、ピン45とケーブル40が電気的にしかも機械的に接続する。これにより、電力ケーブル40は防水コネクタ41を用いて外部に防水をしながら電気的に接続できる
図12は、外径が大きく異なる大小の発泡材11M、11Nを交互に組み合わせている実施形態を示している正面図である。図12では、これらの発泡材11M、11Nにより形成される凸凹上の筏状のフロート10の上には太陽電池2が搭載されている。
【0039】
発泡材11M、11Nは、前記実施形態と同様に紫外線対応として、耐紫外線塗料の塗布を塗布するか、もしくは耐紫外線性を有する保護部材に内蔵させる。発泡材11M、11Nにより形成される凸凹の角度θ2は、太陽光の受電が最も効率よいといわれている10度から40度に配置する。凸凹の角度θ2が10度よりも小さいと、太陽電池パネルへの太陽光の入射角が小さくなるため、真南の方位に30度の受光角度の場合と比較すると発電効率は、5%程度悪くなるため好ましくない。凸凹の角度θ2が40度よりも大きいと、太陽光電池パネルへの入射角度が大きすぎるため、真南の方位の場合と比較して3%程度悪くなるため好ましくない。
【0040】
図12に示すフロート10の表面に単結晶シリコン型の太陽電池2を設置する。外径が小さい発泡材11Nの外径は30cmであり、外径が大きい発泡材11Mの外径は50cmとする。これらの発泡材11M、11Nを交互に配置することで、太陽電池2を例えば受光角26.6度に配置することができる。(tan-1((0.5-0.3)/0.5+0.3m))=26.6°)
また、6個の外径が小さい発泡材11Nと、7個の外径が大きい発泡材11Mに取り付けられる太陽電池2の受光面積は、(0.5+0.3)÷con26.6°×7=6.26m2となる。53.1mの長さで製造することにより、10KWの発電が可能となる。(333m2÷6.27 m2=53.1m)
【0041】
本発明の実施形態では、太陽電池をフロートに直接搭載することができるために、低コストで水上浮上型太陽電池発電装置を構築することができる。押出成形により円柱形状の発泡材に成形することで、長手方向に長いフロートを設置することができる。これにより、接続箇所の少ない太陽電池を設置することができる。太陽電池の接続を少なくすることで、従来の接続箇所が多い太陽電池よりも受光効率を向上させることができる。特にアモルファス太陽電池は接続箇所を少なくすることができ、本発明に有用である。
【0042】
異なる外径の円柱形状の発泡体を組み合わせることにより、太陽電池パネルに傾斜を付けることが比較的容易にできる。アモルファス型の太陽電池は円柱形状の発泡体の複数本並べた凹凸のある上部の形状に追随することができ、受光効率を上げることができる。アモルファス型の太陽電池と組み合わせることで軽量化が可能である。
図13は、断面楕円形状を有する発泡材11Rのフロートの上部に、可とう性を有する太陽電池2を搭載した例を示す斜視図である。
【0043】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、発泡材の断面形状は、図示例に限定されず、太陽電池が搭載できれば、断面矩形の部材、断面ひし形の部材等であっても良い。また、本発明の各実施形態は、任意に組み合わせて構成することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 水上浮上型太陽電池発電装置
2 太陽電池
10 フロート
11 発泡材
11A 熱溶着部分
12 耐紫外線塗料
41 防水コネクタ
42 電気接続箱
W 水上(水面上)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に1本以上並べた柱状の発泡材で構成されるフロートを備え、前記フロートの前記発泡材の上部には、太陽電池を搭載させたことを特徴とする水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項2】
前記発泡材は、円柱部材、円筒部材または断面楕円の部材であることを特徴とする請求項1に記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項3】
前記水上に異なる外径の前記発泡材を複数本並べて構成された前記フロートの上部には、前記太陽電池を搭載させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項4】
前記発泡材の材質が、架橋発泡ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項5】
前記発泡材の中に、前記太陽電池により発電された電気を伝送するためのケーブルを収納させたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項6】
前記太陽電池が、アモルファス太陽電池フィルムから成ることを特徴とする請求項5記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項7】
前記ケーブルには防水コネクタを使用したことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項1】
水上に1本以上並べた柱状の発泡材で構成されるフロートを備え、前記フロートの前記発泡材の上部には、太陽電池を搭載させたことを特徴とする水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項2】
前記発泡材は、円柱部材、円筒部材または断面楕円の部材であることを特徴とする請求項1に記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項3】
前記水上に異なる外径の前記発泡材を複数本並べて構成された前記フロートの上部には、前記太陽電池を搭載させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項4】
前記発泡材の材質が、架橋発泡ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項5】
前記発泡材の中に、前記太陽電池により発電された電気を伝送するためのケーブルを収納させたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項6】
前記太陽電池が、アモルファス太陽電池フィルムから成ることを特徴とする請求項5記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【請求項7】
前記ケーブルには防水コネクタを使用したことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の水上浮上型太陽電池発電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−66200(P2011−66200A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215531(P2009−215531)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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