説明

水上輸送方法

【解決手段】 液体、粘稠体、粉粒体などの内容物12を充填して密封した袋体5を、多数連結して筏状連結体4を形成し、当該筏状連結体4を水上に浮遊させた状態で船舶2により曳航する。前記袋体5が、筒状織布6に気密性の皮膜層7を形成したものであり、その筒状織布が中央部に大径部8を有し、両端の径が縮小して小径部9を形成したものであることが好ましい。
【効果】 筏状連結体4における個々の袋体5は互いに独立しており、一部のものに損傷が生じて内容物12に海水が混入したとしても、他の袋体に充填した内容物には影響がない。また輸送先において連結を解除して個別の袋体に分離すれば、その個々の袋体を倉庫などに保管し、又はトラックなどで陸上輸送が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体、粘稠体、粉粒体などを水上で輸送する方法に関するものであって、これらの被輸送物を袋体に充填し、この袋体を水上に浮遊させた状態で船舶で曳航して輸送する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被輸送物を水上で輸送する場合には、当該被輸送物を船舶に積載して運搬するのが一般的であった。しかしながら水不足などの際に大量の飲料水を輸送する場合などにおいては、単なる水を輸送するために大型のタンカーを必要とすることとなり、極めて不経済であった。
【0003】
そこで小型の船舶で大量の水などを輸送する方法として、特開平6−135376号公報に示されるように、大型のタンクに水などの被輸送物を充填し、これを水上に浮遊させて船舶で曳航して輸送することが考えられた。さらに特開2002−249096号公報に示されるように、柔軟な袋体を使用することも検討されている。
【0004】
図1は、これらの方法により現実に水を大量輸送する方法として実用化が検討されているものを示すものであって、1は柔軟な袋体よりなる水タンク1であって、この水タンク1に水を充填して密封し、牽引ワイヤー3を介してタグボート2などの船舶で曳航するものである。
【0005】
この方法は常時は水タンク1を折り畳んでコンパクトに収納することができると共に、必要が生じたときには、一時に大量の水を安価に輸送することができるものとして、将来性が期待されている。
【0006】
しかしながらこの方法においては、水タンク1が柔軟な袋体よりなるものであるため、曳航中に流木や水中生物と衝突し、水タンク1が傷付いて内容物の水に海水が混入する可能性がある。通常の船舶であれば少々の衝撃で傷付くことはないが、柔軟な袋体を使用するためにわずかな衝撃で傷付く可能性がある。
【0007】
飲料水に海水が混入すれば飲用に供することは不可能であり、また工業用水などに流用することも困難であって、水不足の対策として輸送された大量の飲料水が無駄になることとなり、極めて不経済である。
【0008】
また大容量の水タンク1により水を輸送した場合、輸送先においてはその水タンク1から水を取り出して給水車などに移す必要があるが、その間水タンク1を取水施設に繋留しておく必要があり、輸送効率が悪い。
【特許文献1】特開平6−135376号公報
【特許文献2】特開2002−249096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、大量の水を水上輸送することができると共に、輸送した水が無駄になることが少なく、且つ輸送した水を速やかに必要な箇所に移送することのできる水上輸送方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して本発明は、液体、粘稠体、粉粒体などの内容物を充填して密封した袋体を、多数連結して筏状連結体を形成し、当該筏状連結体を水上に浮遊させた状態で船舶により曳航することを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、前記袋体が、筒状織布の内面、外面又は内外面に気密性の皮膜層を形成したものであることが好ましい。この場合においては、前記筒状織布が、中央部に大径部を有し、両端の径が縮小して小径部を形成していることが好ましい。
【0012】
また本発明においては、前記袋体に、それらを連結するための連結手段を取り付けたものであることが好ましい。その場合前記連結手段としては、袋体の表面に止着されたベルトとするのが適当である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水などの内容物を充填した袋体を多数連結して筏状連結体を形成し、その筏状連結体を曳航して内容物を輸送するので、筏状連結体における個々の袋体は互いに独立しており、それらの袋体のうちの一部のものに損傷が生じ内容物に海水が混入したとしても、他の袋体に充填した内容物には影響がなく、大部分の内容物を有効に利用することができ、無駄が少ない。
【0014】
また本発明によれば、個々の袋体を連結して筏状連結体を形成しているので、輸送先において連結を解除して個別の袋体に分離すれば、その個々の袋体を倉庫などに保管し、又はトラックなどに搭載して所望の場所に運搬することができ、大型の水タンク1を長期間繋留する必要がなく、また速やかに内容物を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を図面に基づいて説明する。図2は本発明により水上輸送する状態を示すものであって、4は筏状連結体であって、内容物を充填した袋体5を多数連結して形成されており、牽引ワイヤー3を介して前記タグボート2などの船舶により曳航されるようになっている。
【0016】
この明細書においては、主として水を輸送するものとして説明するが、本発明において袋体5に充填する内容物としては、水に限らず種々の液体を充填することもでき、その他粘稠体や粉粒体を充填して本発明を適用することもできる。
【0017】
また袋体5に収容する内容物12は、全て同一のものであっても良いが、袋体5ごとに異なる内容物を収容することもでき、複数種のものを混合する恐れなく同時に搬送することも可能である。
【0018】
図3は本発明における袋体5の一例を示すものであって、この袋体5は筒状織布6の内面に気密性の皮膜層7が形成されており、前記筒状織布6は中央部に大径部8が形成され、両端部の径を絞って小径部9が形成されている。
【0019】
なお皮膜層7は、図面の例では筒状織布6の内面に形成されているが、外面に形成してもよく、また内外両面に形成することもできる。要するに袋体5内の内容物12を外部の水と完全に遮断することができればよい。
【0020】
そしてその小径部9の内側には閉塞部材10が嵌合され、外側から金属ベルト11などにより締め付けて、袋体5の両端が閉塞され、内部の内容物12が密封されている。なお袋体5の両端を閉塞する手段は特に限定されるものではなく、例えば袋体5内に内容物12を充填した後両端を縫製して閉塞することもできる。また一方の端部に適宜のバルブを設けて、内容物12を出し入れ可能とすることも好ましいことである。
【0021】
13は袋体5の筒状織布6の大径部8の側面に止着されたベルトであって、大径部8の周方向に2乃至6箇所程度取り付けられている。このベルト13は筒状織布6に縫合などにより強固に止着されている。
【0022】
而して前記筏状連結体4は、この袋体5を前記ベルト13を使用して長さ方向及び幅方向に多数連結して形成されており、必要であれば上下方向にも数段重ねて連結することもできる。袋体5の連結は前記ベルト13を互いに接続して連結することができる。ベルト13のみで連結しても良いが、筏状連結体4の周方向にベルトを掛け回すなど、他の連結手段と併用することもできる。
【0023】
また筏状連結体4を形成する袋体5の個数は、数十乃至数百が適当であるが、その数は限定されるものではなく、また輸送すべき内容物12の量に応じて、連結する袋体5の個数を自由に増減することができる。
【0024】
本発明は、この袋体5に内容物12を充填して密封し、この袋体5を多数連結して筏状連結体4を形成し、この筏状連結体4を水上に浮上させ、ベルト13に牽引ワイヤー3を繋ぎ、タグボート2などにより所望の目的地まで曳航する。このとき筏状連結体4には必要に応じて、緩衝体14や標識灯15を付属せしめるのが好ましい。
【0025】
内容物12が水である場合には、水の比重は海水より小さいので問題はないが、見掛け比重か海水より大きい内容物12を輸送する場合や、袋体5自体が比重の大きい材料で作られている場合には、筏状連結体4の適宜の箇所に適宜の数の浮体を取り付けたり、袋体5への内容物12の充填量を減らして空間を残したりすることにより、車両繋留具4を水上に浮上させることができる。
【0026】
また目的地に到着したならば、ベルト13の接続を解いて個別の袋体5に分離する。これにより個々の袋体5は、内容物12を充填したままで倉庫に保管したり、トラックなどに搭載してさらに陸上輸送することが可能である。また袋体5にベルト13を止着しておけば、そのベルト13は袋体5を水から引き上げたりトラックなどに搭載する際の、スリングとして使用することもできる。
【0027】
本発明によれば個々の袋体5は独立して内容物12が充填されており、その袋体5を多数連結して筏状連結体4を形成しているので、個々の袋体5は他の袋体5から独立しており、一つの袋体5に損傷が生じて内容物12に水が混入して利用不可能となったとしても、他の大多数の袋体5には影響がなく、有効に利用することができる。
【0028】
また袋体5に個別に複数種の内容物12を充填することにより、一回の輸送で複数種の被輸送物をそれぞれ必要な量ずつ輸送することができ、極めて効率よく水上輸送を行うことができる。
【0029】
また前述のように、到着した目的地において筏状連結体4を解体して個別の袋体5に分離することにより、内容物12を袋体5に充填したままで倉庫などに保管することができ、またさらに陸上輸送することも可能である。
【0030】
従って到着地において内容物12の取り出し作業をする必要がなく、長時間に亙って港湾施設を占有することがない。また内容物12を排出した後の巨大な水タンク1を撤収したり搬送したりする必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の水上輸送方法を示すものであって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明により水上輸送する筏状連結体の平面図
【図3】本発明における袋体の中央縦断面図
【符号の説明】
【0032】
2 タグボート
3 牽引ワイヤー
4 筏状連結体
5 袋体
6 筒状織布
7 皮膜層
8 大径部
9 小径部
12 内容物
13 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体、粘稠体、粉粒体などの内容物(12)を充填して密封した袋体(5)を、多数連結して筏状連結体(4)を形成し、当該筏状連結体(4)を水上に浮遊させた状態で船舶(2)により曳航することを特徴とする、水上輸送方法
【請求項2】
前記袋体(5)が、筒状織布(6)の内面、外面又は内外面に気密性の皮膜層(7)を形成したものであることを特徴とする、請求項1に記載の水上輸送方法
【請求項3】
前記筒状織布(6)が、中央部に大径部(8)を有し、両端の径が縮小して小径部(9)を形成していることを特徴とする、請求項2に記載の水上輸送方法
【請求項4】
前記袋体(5)に、それらを連結するための連結手段を取り付けたことを特徴とする、請求項1に記載の水上輸送方法
【請求項5】
前記連結手段が、袋体の表面に止着されたベルト(13)であることを特徴とする、請求項4に記載の水上輸送方法

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−40157(P2009−40157A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205788(P2007−205788)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)