説明

水中の化学物質を測定及び制御する全固体蛍光光度計の使用方法

固体蛍光光度計を使用し、水系に加えられ、水系に存在する化学物質の濃度を測定し、制御する方法。固体蛍光光度計を用いて、水系に存在する生物学的物質を測定し、制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、一般的に、水系に加えられて存在する化学物質の濃度を測定及び制御する方法における固体蛍光光度計の使用に関する。
【0002】
本発明の背景
Alfano他に発行された米国特許第6,255,118号は、発光ダイオードか半導体ダイオードレーザを励起源とする固体蛍光光度計を利用して工業システム中の科学物質の濃度を監視して制御する方法を開示しており、この特許は、工業システムに加えた化学物質に対する、当該工業システムに公知の割合で加えた蛍光トレーサの濃度を決定するのに固体蛍光光度計を用いている。この特許は本明細書で参照される。
【0003】
本発明の概要
本発明は、水系に加えられた一又はそれ以上の化学物質の濃度を測定するための方法を提供する。この方法は、発光ダイオードか半導体レーザダイオードのどちらかである一又はそれ以上の励起源を有する固体蛍光光度計を利用している。発光ダイオードは、約255nmから約365nm、又は520nmから約940nmの波長を有する光を発する。また、この蛍光光度計は、水系の励起からの蛍光を受けて、検出器が受けた蛍光量に比例して出力信号を生成する一又はそれ以上の検出器を有する。水系に加える化学物質に対して公知の割合で当該水系に蛍光トレーサを加える。水系に加える化学物質は、蛍光特性を有する。上記の蛍光光度計を用いて、蛍光トレーサの蛍光又は水系に加える化学物質の蛍光を検出する。蛍光光度計は、検出した蛍光に比例する出力信号を生成するようにプログラムされている。選択的に、水系に加える化学物質の投与量の制御は、蛍光光度計によって検出した前記蛍光トレーサ又は化学物質からの出力信号に基づく。
【0004】
本発明は、水系中の一又はそれ以上の化学物質の濃度を測定する方法を提供する。この方法は、発光ダイオード又は半導体レーザダイオードである一又はそれ以上の励起源を有する固体蛍光光度計を利用している。この蛍光光度計は、水系の励起からの蛍光を受ける一又はそれ以上の検出器を有し、検出器が受けた蛍光量に比例して出力信号を生成する。この蛍光光度計は、水系に存在する化学物質の蛍光発光を検出するのに用いられる。この蛍光光度計は、検出した蛍光に比例する出力信号を生成するようプログラムされている。選択的に、水系の化学物質の濃度の制御は、蛍光光度計によって検出された前記蛍光化学物質からの出力信号に基づく。
【0005】
また、本発明は、水系中の一又はそれ以上の生物学的物質の蛍光測定方法に関するものであり、これは発光ダイオード又は半導体レーザである一又はそれ以上の励起源を有する固体蛍光光度計を利用している。蛍光光度計は、水系の励起からの蛍光を受ける一又はそれ以上の検出器を有し、検出器が受けた蛍光量に比例して出力信号を生成する。蛍光光度計は上記のように、水系中にある生物学的美質の蛍光を検出するのに用いられる。蛍光光度計は、検出した前記蛍光生物学的物質に比例する出力信号を生成するようプログラムされている。選択的に、水系の生物学的物質の濃度の制御は、蛍光光度計によって検出される前記蛍光生物学的物質からの出力信号に基づく。
【0006】
本発明の更なる特徴及び利点は、本発明の好ましい実施例の詳細な説明に記載されると共に、ここから明らかになるであろう。
【0007】
好ましい実施例の説明
本特許明細書を通して、以下の用語は、指示されている意味を有する:
【0008】
「約」は、ほとんど、又は等しいことを意味する。
【0009】
「水系」は、民生又は工業用途の水系を意味する。
【0010】
「NDSA」は、ナフタレンジスルホン酸を意味する。
【0011】
「BSA」は、ウシ血清アルブミンを意味する。
【0012】
「EWL」は、卵白リゾチームを意味する。
【0013】
「NADH」は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを意味する。
【0014】
「NADPH」は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を意味する。
【0015】
「LED」は、発光ダイオードを意味する。
【0016】
「生物学的物質」は、生命体、又は生命体から誘導された物質を意味する。
【0017】
「化学処理」は、水系に対して化学物質を添加して、所望の効果を得るようにするプロトコルを意味する。
【0018】
本発明の半導体レーザダイオード又は発光ダイオード蛍光光度計機器は、いくつかの工業及び民生水用途に好適に使用できる。これらの用途には、限定はされないが、冷却水系、ボイラー水系、パルプスラリ、セラミックスラリ、廃棄物処理、鉱業、農業、油田用途、飲料又は飲料水供給、逆浸透膜系、市販及び民生熱水供給及び装置、水泳用プール及び温泉、遊園地の乗り物、食品加工、及び人口噴水が挙げられる。
【0019】
一の実施例では、前記固体蛍光光度検出器が、シリコンフォトダイオードである。別の実施例では、前記固体検出器が光電子増倍管である。
【0020】
別の実施例では、固体蛍光光度計を用いて、水系の生物学的物質を測定する。
【0021】
更なる別の実施例では、生物学的物質は:アミノ酸;NADH;核酸;トリプトファン、チロシン;アデニン三リン酸;カルシウムジピコリナート;NAD(P)H;フラビン;ポルフィリン;3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン;キヌレニン(kyurenine);セロトニン;フェニルアラニン;ドーパミン;ヒスタミン;ビタミンA;p−アミノ安息香酸;ビタミンB12;エストロゲン;アデニン二リン酸;アデニン;アデノシン;ウシ血清アルブミン;卵白リゾチーム;ナフタレンジスルホン酸;微生物;毒素;胞子;ウイルス;藻;菌類;及びタンパク質から成る群より選択される。
【0022】
例えば、280nmLEDは、生命体によって産生するタンパク質の一般的なアミノ酸であるトリプトファンを蛍光定量的に検出し、340nmLEDは、細胞代謝と関連したNAD(P)H/NAD(P)率を検出し、散乱で膜蒸着及び生物膜生成を検出することができる。
【0023】
別の実施例では、蛍光染料が前記水系に加えられる。蛍光染料は、水系中で生物学的物質と反応する。反応した蛍光染料は、蛍光光度計で分析される。米国特許第6,329,165号及び第6,440,689号の双方は、この手順を記載しており、これは本明細書で参照されている。一の実施例では、525nmLEDが、レザズリン及びレゾルフィンを蛍光定量的に検出する。
【0024】
別の実施例では、蛍光光度計によって検出された前記化学物質からの出力信号に応じて、水系中に化学処理を施す。一の実施例では、この化学処理は、殺菌、生物静力学(biostatic)、又はその他の微生物制御剤である。殺菌剤及び生物静力学制御剤は共に、限定はされないが、以下の化合物:次亜ハロゲン酸;ハロゲン放出化合物;ハロスルフォナート(halosulufamates);二酸化塩素;オゾン;過酸化化合物(peroxygen compounds);ジブロモニトリロプロピオンアミド(dibromonitrilopropionamide);イソチアゾリン;第4級化合物、グルタルアルデヒド;トリアジン;及び、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体及びポリアルキルグリコシド等の表面活性剤;を含む。
【0025】
別の実施例では、有効量の化学処理剤を前記水系に添加して、前記水系の微生物又は汚染を防止する。
【0026】
別の実施例では、生物学的物質が、約260nmから約350nmの励起波長で蛍光発光する。
【0027】
生物学的物質に加えて、水処理に用いられる蛍光トレーサ等のその他の化学物質を測定してもよい。いくつかのポリマ及びその他の化学的活性剤は、固体LED又はレーザダイオードが放射する領域で、天然蛍光発光を示す。本発明のデバイスは、DAXADポリマ、又はナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒドナトリウム塩共重合体;NexGuardポリマ、又はアクリル酸/スチレンスルホン酸共重合体、及びその低分子量の分解副生成物と共に、ナフタレンジスルホン酸、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ヒドロキノン、没食子酸、ピロガロール、スルホン化アントラセン(sulfonated anthracenes)、及び濃度指示薬(米国特許第5,435,969号、本明細書で参照される)又は標識ポリマ(米国特許第5,171,450号及び第6,645,428号、本明細書で参照される)の形である蛍光標識ポリマを測定するように作られている。
【0028】
以下の例は、本発明の好ましい実施例及び利用を記載するためにあり、本明細書に添付されている特許請求の範囲で別途記載されない限り、本発明を限定することを意味しない。
【0029】

例1:
トリプトファンは、タンパク質の蛍光成分の内の1種であるアミノ酸である。タンパク質は生物の必須要素であるので、生命体又は生命体によって引き起こされる残留タンパク質汚染を検出することに興味がある場合に、このような蛍光種を検出できることは有用である。以下の表は、異なる低レベルのアミノ酸であるトリプトファンに対するLEDベースの検出器の反応を示す。
【0030】


【0031】
例2:
蛍光アミノ酸含有タンパク質の一例は、ウシ血清アルブミン(BSA)、即ちウシの血液の成分である。以下の表は、LEDベースの蛍光検出器からBSAに対する比例反応を示す。これは、産業システムの生物学的汚染の成分であるタンパク質の検出、又は食肉加工装置のタンパク質汚染の検出に有用である。
【0032】


【0033】
例3:
蛍光アミノ酸含有タンパク質のものひとつの例は、卵白のリゾチーム、即ち雌鳥の卵の成分である。以下の表は、LEDベースの蛍光検出器を用いたEWLを示す。この装置は、食品加工におけるタンパク質汚染の検出で、又は微生物からのタンパク質汚染の検出に用いられる。
【0034】


【0035】
例4:
生命体の構成要素は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドである。NADHとして知られているこの物質は、細胞の化学的酸化還元反応に関与し、全ての生命体に存在するが、死後急速に減少する。従って、生物学的汚染における生命体の存在の標識としてNADHを検出できることは有用である。以下のチャートは、340nmで蛍光励起するLED検出器によるNADHの検出を示す。
【0036】


【0037】
例5:
以下の表及びチャートは、生きている緑膿菌の一連の試料の含有レベルを試験するためのLED蛍光検出系の使用を示す。これらのデータは、280nm及び340nmの励起波長で1mL当たり約1000個である細菌の蛍光検出の閾値を示す。
【0038】


【0039】
例6:
以下の表は、280nmLEDを用いたNDSAの蛍光のデータを示す。
【0040】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系に加えられる一又はそれ以上の化学物質の濃度の測定方法において、前記方法が:
a)固体蛍光光度計を提供するステップであって、前記蛍光光度計が:
i)特定の方向に光を向ける一又はそれ以上の固体励起源であって、前記励起源が、発光ダイオード又は半導体レーザダイオードであり、前記発光ダイオードが約255nmから約365nm、又は約520nmから940nmの波長を有する光を発し、又は前記半導体レーザダイオードが約340nmから約600nmの波長を有する固体励起源と;
ii)励起による試料の蛍光発光を受けて、受けた蛍光量に比例する出力信号を生成する一又はそれ以上の検出器と;
を具えるステップと;
b)水系を用意するステップであって、蛍光トレーサが、前記化学物質に対する公知の割合で前記水系に加えられるか、前記水系に加えられる前記化学物質が蛍光特性を有するステップと;
c)前記蛍光光度計を用いて、蛍光トレーサの蛍光又は前記水系の化学処理剤の蛍光を検出するステップと;
d)前記蛍光光度計をプログラムして、前記検出した蛍光に比例する出力信号を生成するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法が、前記蛍光光度計によって検出された前記蛍光トレーサ又は前記化学物質による前記出力信号に基づいて、前記水系に加えられる前記化学物質の投与量を制御するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記化学物質が:ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒドナトリウム塩共重合体;アクリル酸/スチレンスルホン酸共重合体、及び、その分解副生成物低分子量ポリマ又は脱スルホン酸ポリマと共に、ナフタレンジスルホン酸、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ヒドロキノン、没食子酸、ピロガロール、スルホン化アントラセン(sulfonated anthracenes)、及び蛍光標識ポリマ;からなる群より選択され、前記水系に加えられることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記水系が、逆浸透膜系;冷却水系、ボイラー水系、パルプスラリ、セラミックスラリ、廃棄物処理、鉱業、農業、油田用途、飲料又は飲料水供給、逆浸透膜系、市販及び民生熱水供給及び装置、水泳用プール及び温泉、遊園地の乗り物、食品加工、及び人口噴水からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
水系中の一又はそれ以上の化学物質の濃度の測定方法において、前記方法が:
a)固体蛍光光度計を用意するステップであって、前記蛍光光度計が:
i) 特定の方向に光を向ける一又はそれ以上の励起源であって、前記励起源が発光ダイオード又は半導体レーザダイオードである励起源と;
ii)励起による試料の蛍光発光を受けて、蛍光量に比例する出力信号を生成する一又はそれ以上の検出器と;
を具えるステップと;
b)水系を提供するステップと;
c)前記蛍光光度計を用いて、前記水系の前記化学物質の蛍光を検出するステップと;
d)前記蛍光光度計をプログラムして、前記検出した蛍光に比例する出力信号を生成するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記発光ダイオード又は半導体レーザダイオードが、約260nmから約350nmの波長を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法が、前記蛍光光度計で検出される前記蛍光化学物質による前記出力信号に基づいて前記水系の前記化学物質の濃度を制御するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法が、前記蛍光光度計で検出された前記化学物質による出力信号に応じて、前記水系に対する効果的な量の化学処理剤を提供するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項5に記載の方法において、前記化学物質が、生物学的材料であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記生物学的材料が:アミノ酸;NADH;核酸;トリプトファン、チロシン;アデニン三リン酸;カルシウムジピコリナート;NAD(P)H;フラビン;ポルフィリン;3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン;キヌレニン(kyurenine);セロトニン;フェニルアラニン;ドーパミン;ヒスタミン;ビタミンA;p−アミノ安息香酸;ビタミンB12;エストロゲン;アデニン二リン酸;アデニン;アデノシン;ウシ血清アルブミン;卵白リゾチーム;ナフタレンジスルホン酸;微生物;毒素;胞子;ウイルス;藻;菌類;及びタンパク質;から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法において、前記化学処理剤が:殺菌制御剤、生物静力学制御剤、及び微生物制御剤からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記水系が、逆浸透膜;冷却水系、ボイラー水系、パルプスラリ、セラミックスラリ、廃棄物処理、鉱業、農業、油田用途、飲料又は飲料水供給、逆浸透膜系、市販及び民生熱水供給及び装置、水泳用プール及び温泉、遊園地の乗り物、食品加工、及び人口噴水から成る群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記検出器が、シリコンフォトダイオードであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項5に記載の方法において、前記検出器が、シリコンフォトダイオードであることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法において、前記検出器が、光電子増倍管であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項5に記載の方法において、前記検出器が、光電子増倍管であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項8に記載の方法において、前記有効量の化学処理剤が、前記水系に加えられて、前記水系の微生物又は汚染を防止することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法において、前記殺菌制御剤及び生物静力学制御剤が:次亜ハロゲン酸;ハロゲン放出化合物;ハロスルフォナート(halosulufamates);二酸化塩素;オゾン;過酸化化合物(peroxygen compounds);ジブロモニトリロプロピオンアミド(dibromonitrilopropionamide);イソチアゾリン;第4級化合物、グルタルアルデヒド;トリアジン;表面活性剤、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体;及びポリアルキルグリコシド;からなる群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、前記水系に加えられる前記化学物質が、前記水系に存在する生物学的材料と反応可能な蛍光染料であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記蛍光染料が:レザズリン;及びレゾルフィン;から成る群より選択されることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2008−541047(P2008−541047A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510040(P2008−510040)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/015677
【国際公開番号】WO2006/118876
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】