説明

水中の殺菌方法、水中殺菌装置及びそれを用いた冷蔵庫

【課題】簡単な構成でコストを削減して利便性を向上できる水中の殺菌方法及び水中殺菌装置を提供する。
【解決手段】イオン発生部31によりH+(H2O)m(mは任意の自然数)から成る正イオンとO2-(H2O)n(nは任意の自然数)から成る負イオンとを大気中で発生して両イオンを水中に導くことにより水中の殺菌を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中の微生物やウィルスを殺菌する殺菌方法及び水中殺菌装置に関する。また、本発明は水中の微生物やウィルスを殺菌する水中殺菌装置を用いた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水中の殺菌方法は特許文献1、2に開示されている。特許文献1に記載される殺菌方法は水タンクに貯水された水中にオゾンを供給して微生物やウィルスを殺菌する。オゾンは人体に有害であるとともに寿命が長いため、水中に残存したオゾンを除去装置により除去した後の水が利用される。
【0003】
また、特許文献2に記載される殺菌方法は流水の通路内に紫外線ランプを配置し、紫外線を照射して微生物やウィルスを殺菌する。また、水タンクに貯水された貯水中に薬剤を注入して微生物やウィルスを殺菌する方法も従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−193394号公報(第2頁−第5頁、第1図)
【特許文献2】特開平11−104631号公報(第2頁−第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のオゾンによる水中の殺菌方法によると、水中に残存するオゾンを除去する除去装置を必要とする。また、寿命の長いオゾンが水タンク等から漏れると周囲に蓄積して人体に影響するため、オゾンの漏洩防止対策や周囲に蓄積したオゾンを除去する装置を必要とする。従って、装置全体が複雑になるとともにコストが大きくなる問題があった。
【0006】
また、上記従来の紫外線による水中の殺菌方法によると、紫外線によって流水の通路等を形成する樹脂が劣化するため、樹脂の保護対策を必要とする。このため、装置が複雑になる問題があった。
【0007】
また、上記従来の薬剤による水中の殺菌方法によると、殺菌した水を飲料や製氷等の用途に用いることができないため、利用者の利便性が悪くなる問題があった。
【0008】
本発明は、簡単な構成でコストを削減して利便性を向上できる水中の殺菌方法及び水中殺菌装置を提供することを目的とする。また本発明は、簡単な構成でコストを削減して利便性を向上できる水中殺菌装置を備えた冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の水中の殺菌方法は、正イオンと負イオンとを大気中で発生して水中に導くことにより水中の殺菌を行うことを特徴としている。この構成によると、大気中で発生した正イオン及び負イオンが互いに化学反応して酸化力の高い活性種が生成される。イオンにより生成した活性種は水中に導かれて溶解し、水中の微生物やウィルスを殺菌する。
【0010】
また本発明は、上記構成の水中の殺菌方法において、前記正イオンがH+(H2O)m(mは任意の自然数)であり、前記負イオンがO2-(H2O)n(nは任意の自然数)であることを特徴としている。この構成によると、大気中で発生したH+(H2O)m及びO2-(H2O)nの化学反応によって活性種である過酸化水素(H22)やヒドロキシラジカル(・OH)が生成される。
【0011】
また本発明は、上記構成の水中の殺菌方法において、水中に気泡を形成し、前記正イオン及び前記負イオンを該気泡に含ませて水中に導くことを特徴としている。この構成によると、気泡に含まれた活性種が気泡と水との界面で微生物やウィルスに接触して殺菌を行う。気泡が水から分離されると気泡に含まれた活性種が水中に溶け込んで微生物やウィルスを殺菌する。
【0012】
また本発明は、上記構成の水中の殺菌方法において、前記気泡の直径を1μm以下にしたことを特徴としている。この構成によると、気泡が水から分離する分離時間が数時間になり、殺菌効果を向上することができる。
【0013】
また本発明は、上記構成の水中の殺菌方法において、前記正イオン及び前記負イオンにより生成されるH22または・OHを水中に導くことを特徴としている。
【0014】
また本発明の水中殺菌装置は、正イオンと負イオンとを大気中で発生するイオン発生部と、前記イオン発生部で発生したイオンを水中に導く導入部とを備えたことを特徴としている。この構成によると、イオン発生部によって正イオン及び負イオンが大気中で発生する。イオン発生部により発生したイオンは導入部によって水中に導かれる。この時、正イオン及び負イオンが互いに化学反応して酸化力の高い活性種が生成される。イオンにより生成した活性種は水中に導かれて溶解し、水中の微生物やウィルスを殺菌する。
【0015】
また本発明の水中殺菌装置は、前記正イオンがH+(H2O)m(mは任意の自然数)であり、前記負イオンがO2-(H2O)n(nは任意の自然数)であることを特徴としている。この構成によると、大気中で発生したH+(H2O)m及びO2-(H2O)nの化学反応によって活性種である過酸化水素(H22)やヒドロキシラジカル(・OH)が生成される。
【0016】
また本発明は、上記構成の水中殺菌装置において、前記導入部により水中に気泡を形成し、前記正イオン及び前記負イオンを該気泡に含ませて水中に導くことを特徴としている。この構成によると、気泡に含まれた活性種が気泡と水との界面で微生物やウィルスに接触して殺菌を行う。気泡が水から分離されると気泡に含まれた活性種が水中に溶け込んで微生物やウィルスを殺菌する。
【0017】
また本発明は、上記構成の水中殺菌装置において、前記導入部がエアーポンプを有することを特徴としている。この構成によると、イオン発生部で発生したイオンがエアーポンプをにより気泡に含まれて水中に導かれる。
【0018】
また本発明は、上記構成の水中殺菌装置において、前記イオン発生部で発生したイオンを前記エアーポンプに導く送風ファンを設けたことを特徴としている。この構成によると、イオン発生部で発生したイオン送風ファンによって気流に含まれて流通し、エアーポンプに導かれる。エアーポンプにより気泡に含まれたイオンが水中に導かれる。
【0019】
また本発明は、上記構成の水中殺菌装置において、前記導入部が隔離して水中に浸漬される第1通路及び第2通路を有し、前記正イオンが第1通路を流通して前記負イオンが第2通路を流通することを特徴としている。この構成によると、イオン発生装置で発生した正イオンは第1通路を流通し、気泡に含まれて水中に導かれる。イオン発生装置で発生した負イオンは第2通路を流通し、気泡に含まれて水中に導かれる。正イオンを含む気泡と負イオンを含む気泡とが水中で衝突すると気泡内で活性種を生成し、水中を殺菌する。
【0020】
また本発明の冷蔵庫は、上記各構成のいずれかに記載の水中殺菌装置と、前記水中殺菌装置によって貯水が殺菌される水タンクと、前記水タンクから給水される製氷皿とを備え、前記製氷皿を冷却して製氷することを特徴としている。この構成によると、水タンクに貯水されると、水中殺菌装置によって水タンク内の貯水が殺菌される。殺菌された貯水は製氷皿に給水され、冷却して製氷が行われる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、正イオンと負イオンとを大気中で発生して水中に導くので、両イオンから生成される活性種が水中に溶解して水中の微生物やウィルスが殺菌される。従って、簡単な構成且つ低コストで水中の微生物やウィルスを殺菌することができる。また、殺菌した水を飲料や製氷に用いることができ、利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態の水中殺菌装置を示す側面断面図
【図2】本発明の第1実施形態の水中殺菌装置のイオン発生部を示す斜視図
【図3】本発明の第1実施形態の水中殺菌装置を有する製氷装置を備えた冷蔵庫を示す側面断面図
【図4】本発明の第1実施形態の水中殺菌装置を有する製氷装置を示す側面断面図
【図5】本発明の第1実施形態の水中殺菌装置による殺菌効果を試験した状態を示す模式図
【図6】本発明の第1実施形態の水中殺菌装置による殺菌効果を試験した結果を示す図
【図7】本発明の第2実施形態の水中殺菌装置を示す側面断面図
【図8】本発明の第2実施形態の水中殺菌装置のイオン発生部を示す斜視図
【図9】本発明の第3実施形態の水中殺菌装置を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の水中殺菌装置を示す側面断面図である。水中殺菌装置26は両端を開口した筒状の送風路30を有している。送風路30の一端には送風ファン32が配され、他端にはエアーポンプ33が配される。送風ファン32によりエアーポンプ33に向かう気流が送風路30内に発生する。
【0024】
エアーポンプ33は給気管36が延出され、送風路30内の空気を所定の流量で給気管36に送出する。エアーポンプ33は例えば、ダイヤフラム式エアーポンプにより形成され、給気管36が浸漬された水中に気泡を形成することができる。
【0025】
送風路30内には気流の流通方向に沿ってイオン発生部31が配される。図2はイオン発生部31の斜視図を示している。イオン発生部31は印刷電極型に構成され、アルミナ誘電体312の表面に配置された放電電極311とアルミナ誘電体312内に埋め込まれた対向電極313とを有している。放電電極311は例えば、約1cm×3cmの矩形に形成され、網目状のパターンを有している。放電電極311と対向電極31の間隔は例えば、約0.2mmに形成される。
【0026】
放電電極311及び対向電極313は高圧電源314に接続される。高圧電源314は正と負の高圧パルス電圧(例えば、周波数60Hz、尖頭電圧約2kV)を交互に生成し、放電電極311と対向電極313との間に印加する。この時、放電電極311の表面において沿面放電により生成されたプラズマによって空気中の酸素(O2)や水(H2O)等の分子がエネルギーを受ける。
【0027】
電極間の印加電圧が正電圧の場合は空気中の水分子が電離して水素イオン(H+)を生成する。この水素イオンが溶媒和エネルギーにより空気中の水分子とクラスタリングしてH+(H2O)m(mは任意の自然数)から成る正イオンを主として発生する。電極間の印加電圧が負電圧の場合は空気中の酸素分子または水分子が電離して酸素イオンO2-を生成する。この酸素イオンが溶媒和エネルギーにより空気中の水分子とクラスタリングしてO2-(H2O)n(nは任意の自然数)から成る負イオンを主として発生する。
【0028】
この時、正電圧の印加によって水素イオン(H+)の生成エネルギーである5.12eV以上のエネルギーを与える必要がある。負電圧の印加によって酸素イオン(O2-)の生成エネルギーである0.44eV以上のエネルギーを与える必要がある。一方、空気中の窒素から生成される人体に有害な窒素酸化物のイオン(NO2-、 NO3-)の生成エネルギーは9.76eVである。このため、9.76eVのエネルギーを与える電圧よりも低い印加電圧にする必要がある。また、オゾン(O3)の生成エネルギーは5.12eVであり、エネルギーが増加するとオゾンの発生量も増加する。
【0029】
従って、放電電極311と対向電極313との間に印加される正電圧は5.12eV以上且つ5.12eV近傍のエネルギーを与える電圧に設定される。また、放電電極311と対向電極313との間に印加される負電圧は正電圧と同様に5.12eV以上且つ5.12eV近傍のエネルギーを与える電圧にすることができる。該負電圧を0.44eV以上5.12eV未満のエネルギーを与える電圧に設定するとより望ましい。これにより、人体に無害なオゾンや窒素酸化物の発生を抑制してH+(H2O)m及びO2-(H2O)nを主に発生させることができる。
【0030】
+(H2O)m及びO2-(H2O)nは空気中で式(1)〜(3)に示すように、衝突により酸化力の大きい活性種であるヒドロキシラジカル(・OH)や過酸化水素(H22)を生成する。ここで、m’、n’は任意の自然数である。
【0031】
+(H2O)m+O2-(H2O)n→・OH+1/2O2+(m+n)H2O ・・・(1)
+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2-(H2O)n+O2-(H2O)n’
→ 2・OH+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(2)
+(H2O)m+H+(H2O)m’+O2-(H2O)n+O2-(H2O)n’
→ H22+O2+(m+m'+n+n')H2O ・・・(3)
【0032】
後述するように、ヒドロキシラジカルや過酸化水素から成る活性種はエアーポンプ33によって水中に供給され、水中の微生物やウィルスを殺菌する。従って、送風路30、送風ファン32、エアーポンプ33及び給気管36はイオン発生部31で発生したイオンを水中に導く導入部を構成する。
【0033】
図3は上記構成の水中殺菌装置26を有する製氷装置5を備えた冷蔵庫1の側面断面図を示している。冷蔵庫1は上方から順に冷蔵室2、冷凍室3、野菜室4が配される。製氷装置5は冷蔵室3内に設置された水タンク6と冷凍室4内に設置された製氷皿7とを有している。冷凍室4内には製氷皿7の下方に貯氷容器8が設けられる。
【0034】
図4は製氷装置5の詳細を示す側面断面図である。水タンク6は注水を行う注水部21が上面に設けられ、数回の製氷に用いられる水を貯水する。水タンク6には給水ポンプ22を接続した給水パイプ25が取り付けられる。給水パイプ25の一端は水タンク6の底面近傍に配して貯水に浸漬され、他端は製氷皿7の上方に配される。給水ポンプ22の駆動によって矢印Aに示すように給水パイプ25を介して製氷皿7に給水される。製氷皿7に供給された水は冷却により製氷され、所定の離氷動作により貯氷容器8内に脱落して貯氷される。
【0035】
水タンク6の天井面には前述の水中殺菌装置26が取り付けられる。水中殺菌装置26の給気管36は水タンク6の貯水に浸漬される。イオン発生部31で発生したイオンやイオンから生成される活性種は送風ファン32によってエアーポンプ33に導かれる。そして、エアーポンプ33によってイオン及び活性種を含む気泡Bが水中に導かれる。この時、気泡B内で正イオン及び負イオンによって活性種が順次生成される。
【0036】
水中の気泡Bが消滅するとヒドロキシラジカルや過酸化水素から成る活性種は水中に溶解する。水中に溶解した活性種によって細菌等の微生物の細胞膜やウィルスの外郭を破壊してその増殖能力を喪失させる。これにより、水中の微生物やウィルスを殺菌することができ、衛生的な氷を得ることができる。
【0037】
また、気泡B内の活性種は気泡Bと水との界面で微生物やウィルスと接触して殺菌を行う。活性種は水中に溶解するよりも気泡内に留まる方が消滅が遅くなる。このため、活性種を気泡に含んで水中に導くことによって活性種による殺菌を長時間行うことができ、殺菌力を向上させることができる。
【0038】
直径が数nm〜数mm程度の気泡Bはエアーポンプ33の吐出側に連続気泡多孔質体等を設けることにより、容易に形成することができる。気泡Bの大きさが小さい程、水中に供給される気泡Bの総表面積が大きくなるとともに、気泡Bが水から分離して消滅する分離時間が長くなる。これにより、活性種を長く保持して気泡の広い範囲の界面で殺菌することができ、殺菌効果を向上することができる。気泡Bの直径を1μm以下にすると分離時間が数時間になるため、殺菌効果をより向上することができる。
【0039】
尚、気泡Bの大きさを可変する装置を設けてもよく、エアーポンプ33の流量を可変してもよい。エアーポンプ33の流量を可変すると、水に溶解する活性種の量を調節することができる。これにより、水中に存在する微生物やウィルスの多い環境や少ない環境等の状況に応じて、適切な量の活性種を水に溶解させることができる。エアーポンプ33の流量の可変は駆動電圧、駆動電圧波形、駆動電流波形を変化させて行うことができる。また、給気管36に流量制御弁を設けてエアーポンプ33の流量を可変してもよい。
【0040】
図5は本実施形態の水中殺菌装置26による殺菌効果を確認する試験状態を模式的に示している。水中殺菌装置26は水タンク35内に給気管36を浸漬し、容積が1.7Lの密閉容器40内に水中殺菌装置26及び水タンク35が配される。イオン発生部31で発生したイオンは送風ファン32によりエアーポンプ33に導かれ、エアーポンプ33により水タンク35内に導かれる。
【0041】
水タンク35内には水1mLあたり約107個の大腸菌を混入させている。イオン発生部31の駆動開始時及び駆動開始から3時間、7時間、24時間経過時の菌液をそれぞれ採取する。そして、採取した菌液をペトリフィルムに1mL塗布して37度恒温槽で24時間培養した後の総菌数を数えている。また、比較のために、イオン発生部31を駆動せずに水タンク35を設置時及び設置後3時間、7時間、24時間経過時も同様に総菌数を数えている。
【0042】
表1及び図6は上記の試験結果を示している。図6において、縦軸は総菌数(単位:CFU)を示しており、横軸は時間(単位:Hr)を示している。また、図中、Dはイオン発生部31を駆動した状態を示し、Eはイオン発生部31を駆動しない状態を示している。
【0043】
【表1】

【0044】
表1及び図6によると、イオン発生部31を駆動しない場合の初期の総菌数が1.47×107CFUである。そして、3時間後、7時間後は107CFUオーダーの総菌数が存在し、24時間後には1.11×106CFUへと自然減衰した。一方、イオン発生部31を駆動した場合は、初期の総菌数が1.47×107CFUであり、3時間後には106CFUオーダーに減少し、7時間後にはほぼ0CFUに減少した。
【0045】
この結果から、大気中で発生した正イオンH+(H2O)m及び負イオンO2-(H2O)nを水中に導いて水中の大腸菌が殺菌されたことがわかる。
【0046】
本実施形態によると、正イオンと負イオンとを大気中で発生して水中に導くので、両イオンから生成される活性種が水中に溶解して水中の微生物やウィルスが殺菌される。従って、簡単な構成且つ低コストで水中の微生物やウィルスを殺菌することができる。また、薬剤を補充する必要もなく、殺菌した水により衛生的な氷を作成することができ、利便性を向上することができる。
【0047】
また、正イオンがH+(H2O)mであり、負イオンがO2-(H2O)nであるので、活性種であるH22または・OHを生成して水中の微生物やウィルスを確実に殺菌することができる。
【0048】
また、水中に気泡Bを形成し、正イオン及び負イオンを気泡Bに含ませて水中に導くので、イオンから生成される活性種による殺菌を長時間行うことができ、殺菌力を向上させることができる。
【0049】
また、気泡Bの直径を1μm以下にしたので、気泡Bが水から分離する分離時間が数時間になり、殺菌効果をより向上することができる。
【0050】
また、正イオン及び負イオンにより生成されるH22または・OHから成る活性種を水中に導くので、活性種の酸化力によって微生物やウィルスを殺菌することができる。
【0051】
次に、図7は第2実施形態の水中殺菌装置を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図4に示す第1実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。水中殺菌装置27は一端を開口した筒状の送風路66を有している。送風路66の開口端には送風ファン32が配され、他端には二方向に分岐する第1通路61、第2通路62が設けられる。第1、第2通路61、62は水中に浸漬され、それぞれ先端にエアーポンプ63、64が配される。エアーポンプ63、64は例えば、ダイヤフラム式エアーポンプにより形成され、水中に気泡Bを形成することができる。
【0052】
送風路66内には第1、第2通路61、62の上流側にイオン発生部60が配される。図8はイオン発生部60の斜視図を示している。イオン発生部60は基板604上に対向電極601及び放電電極602a、602bが取り付けられる。放電電極602a、602bは所定の間隔で針状に形成される。対向電極601は放電電極602a、602bの周囲に配され、放出孔603を形成する。
【0053】
一方の放電電極602aには高圧電源314から正電圧が印加され、他方の放電電極602bには高圧電源314から負電圧が印加される。これにより、放電電極602a、602bの先端部と対向電極601の間で放電が起こり、プラズマが発生する。生成されたプラズマにより空気中の酸素(O2)及び水(H2O)等の分子がエネルギーを受けて電離する。これにより、正イオンとしてH+(H2O)m(mは任意の自然数)と、負イオンとしてO2-(H2O)n(nは任意の自然数)とを発生して放出孔603から放出する。
【0054】
放電電極602aは第1通路61に臨んで配され、放電電極602bは第2通路62に臨んで配される。このため、放電電極602aから発生した正イオンは第1通路61を流通し、エアーポンプ63によって気泡Bに含まれて水中に導かれる。放電電極602bから発生した負イオンは第2通路62を流通し、エアーポンプ64によって気泡Bに含まれて水中に導かれる。従って、送風路66、送風ファン32、第1、第2通路61、62、エアーポンプ63、64はイオン発生部60で発生したイオンを水中に導く導入部を構成する。
【0055】
正イオンを含む気泡Bと負イオンを含む気泡Bとは水中で衝突し、H+(H2O)m及びO2-(H2O)nから活性種であるヒドロキシラジカルや過酸化水素を生成する。これにより、水中に溶解した活性種や気泡B内に生成された活性種によって水中の微生物やウィルスが殺菌される。
【0056】
本実施形態によると、第1実施形態と同様に、正イオンと負イオンとを大気中で発生して水中に導くので、両イオンから生成される活性種が水中に溶解して水中の微生物やウィルスが殺菌される。従って、簡単な構成且つ低コストで水中の微生物やウィルスを殺菌することができる。また、薬剤を補充する必要もなく、殺菌した水により衛生的な氷を作成することができ、利便性を向上することができる。
【0057】
また、第1、第2通路61、62によって正イオンと負イオンとを隔離して水に導くことにより、クラスタリングする前のイオンの再結合による消滅を抑制することができる。従って、イオンを高濃度で保つことができ、殺菌効率をより高めることができる。
【0058】
尚、本実施形態のイオン発生部60を第1実施形態の水中殺菌装置26に設けてもよい。
【0059】
次に、図9は第3実施形態の水中殺菌装置を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図4に示す第1実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態のエアーポンプ33(図1参照)に替えて水ポンプ55及びエジェクタ50が設けられる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0060】
送風路30の一端には送風ファン32が配され、イオン発生部31の下流側にはエジェクタ50が配される。エジェクタ50の一端には水ポンプ55を介して水タンク35と接続される流入管57が導出される。エジェクタ50の他端には水タンク35の貯水に浸漬される流出管56が導出される。エジェクタ50には流路を絞られた絞り部50aが形成され、絞り部50aの周面には送風路30に臨む空気の流入口51が設けられる。
【0061】
水ポンプ55の駆動によって水タンク35内の水が流入管57を介してエジェクタ50に流入し、流出管56を介して水タンク35に送出されて循環する。エジュクタ50の絞り部50aを通過する水は流速が増加して圧力が低下する。この時、絞り部50aに設けた流入口51を介して送風路30内のイオン及び活性種を含む空気がエジェクタ50に吸込まれる。これにより、イオン及び活性種を含む気泡Bが水中に導かれる。従って、送風路30、送風ファン32、エジェクタ50、水ポンプ55、流入管57、流出管56はイオンを水中に導入する導入部を構成する。
【0062】
これにより、水中に溶解した活性種や気泡B内に生成された活性種によって水中の微生物やウィルスが殺菌される。
【0063】
本実施形態によると、第1実施形態と同様に、正イオンと負イオンとを大気中で発生して水中に導くので、両イオンから生成される活性種が水中に溶解して水中の微生物やウィルスが殺菌される。従って、簡単な構成且つ低コストで水中の微生物やウィルスを殺菌することができる。また、薬剤を補充する必要もなく、殺菌した水により衛生的な氷を作成することができ、利便性を向上することができる。
【0064】
また、水タンク35の貯水の循環経路に設けられるエジェクタ50が送風路30内に配置されるので、水中に気泡Bを容易に形成することができる。
【0065】
尚、第2実施形態のイオン発生部60を本実施形態の水中殺菌装置28に設けてもよい。
【0066】
第1〜第3実施形態において、イオンや活性種を気泡Bに含んで水中に導いているが、イオンや活性種を含む気流を水面に向けて送出してイオンや活性種を水中に導いてもよい。これにより、活性種が水中に溶解して水中の微生物やウィルスを殺菌することができる。この時、水面の波立ちによって気流と水との接触面積が増加し、イオンや活性種が水中に取り込まれやすくなる。
【0067】
また、水中殺菌装置26、27、28により殺菌した水を飲料用や蒸気調理等に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によると、製氷装置を備えた冷蔵庫、飲料水浄化装置、蒸気調理器等に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室
3 冷凍室
4 野菜室
5 製氷装置
6 水タンク
7 製氷皿
8 貯氷容器
21 注水部
22 給水ポンプ
25 給水パイプ
26、27、28 水中殺菌装置
30 送風路
31、60 イオン発生部
32、65 送風ファン
33、63、64 エアーポンプ
35 水タンク
40 密閉容器
50 エジェクタ
55 水ポンプ
61 第1通路
62 第2通路
311、602a、602b 放電電極
312 アルミナ誘電体
313、601 対向電極
314 高圧電源
603 放出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正イオンと負イオンとを大気中で発生して水中に導くことにより水中の殺菌を行うことを特徴とする水中の殺菌方法。
【請求項2】
前記正イオンがH+(H2O)m(mは任意の自然数)であり、前記負イオンがO2-(H2O)n(nは任意の自然数)であることを特徴とする請求項1に記載の水中の殺菌方法。
【請求項3】
水中に気泡を形成し、前記正イオン及び前記負イオンを該気泡に含ませて水中に導くことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水中の殺菌方法。
【請求項4】
前記気泡の直径を1μm以下にしたことを特徴とする請求項3に記載の水中の殺菌方法。
【請求項5】
前記正イオン及び前記負イオンにより生成されるH22または・OHを水中に導くことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の水中の殺菌方法。
【請求項6】
正イオンと負イオンとを大気中で発生するイオン発生部と、前記イオン発生部で発生したイオンを水中に導く導入部とを備えたことを特徴とする水中殺菌装置。
【請求項7】
前記正イオンがH+(H2O)m(mは任意の自然数)であり、前記負イオンがO2-(H2O)n(nは任意の自然数)であることを特徴とする請求項6に記載の水中殺菌装置。
【請求項8】
前記導入部により水中に気泡を形成し、前記正イオン及び前記負イオンを該気泡に含ませて水中に導くことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の水中殺菌装置。
【請求項9】
前記導入部がエアーポンプを有することを特徴とする請求項8に記載の水中殺菌装置。
【請求項10】
前記イオン発生部で発生したイオンを前記エアーポンプに導く送風ファンを設けたことを特徴とする請求項9に記載の水中殺菌装置。
【請求項11】
前記導入部が隔離して水中に浸漬される第1通路及び第2通路を有し、前記正イオンが第1通路を流通して前記負イオンが第2通路を流通することを特徴とする請求項6〜請求項10のいずれかに記載の水中殺菌装置。
【請求項12】
前記正イオン及び前記負イオンにより生成されるH22または・OHを水中に導いたことを特徴とする請求項6〜請求項11のいずれかに記載の水中殺菌装置。
【請求項13】
請求項6〜請求項12のいずれかに記載の水中殺菌装置と、前記水中殺菌装置によって貯水が殺菌される水タンクと、前記水タンクから給水される製氷皿とを備え、前記製氷皿を冷却して製氷することを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−115777(P2012−115777A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268541(P2010−268541)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】