説明

水中の油分濃度測定方法および装置

【課題】簡便なしくみで、水中の油分濃度を測定できる方法および装置を提供する。
【解決手段】水中の全有機炭素(TOC)濃度を測定する全有機炭素(TOC)濃度計10を備え、予め、水中の油分をノルマルヘキサンにて抽出して測定した場合の油分濃度と、全有機炭素(TOC)濃度と、の実測結果に基づいて作成してある回帰線により決まる関係を記憶させてある演算処理装置20を備え、試料である水中の全有機炭素(TOC)濃度を、演算処理装置20に入力すると、該演算処理装置内で、前記回帰線に基づいて、油分濃度を算出し、出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の油分濃度測定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場排水や河川水に油分が混入する場合がある。そのまま放置しておくと環境保護上問題があるため、これら水中の油分を測定し、対策をとる必要がある。よって、測定は迅速にできた方が好ましいことはいうまでもない。
【0003】
工場排水や河川水中の油分濃度測定方法として、JIS K0102「工場排水試験方法」に規定するような、四塩化炭素やノルマルヘキサンの溶媒に試料水を混合させて油分抽出し、濃度測定する方法が知られている。
【0004】
ところが、四塩化炭素を用いる方法は、大気中に放出された四塩化炭素がオゾン層を破壊する、として、昨今の環境保護の気運の高まりから、次第に用いることができなくなりつつある。
【0005】
一方、ノルマルヘキサンを用いる方法は、そのような問題はないかわりに、多くの場合、手作業になる。
【0006】
ノルマルヘキサンを用いる方法を自動化したものとして、特許文献1のものがある。図3に示すごとく、大まかにいえば、抽出層にてノルマルヘキサンと攪拌混合した液体に適宜塩析剤を加えて加熱分解し、水分を分離(脱水)した後、ノルマルヘキサンを蒸発させ、油分の質量を測定する、という一連のプロセスを自動化したものである。
【0007】
なお、後述の発明を実施するための最良の形態との関係で、特許文献2,特許文献3にここで言及しておく。
【特許文献1】特開2001−133450号公報
【特許文献2】特開平07−287006号公報
【特許文献3】特開平03−031759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法は、非常に大がかりで高価な装置を必要とする上、測定に時間がかかる問題があった。
【0009】
本発明は、従来技術のかような問題に鑑みてなされたものであり、簡便なしくみで、水中の油分濃度を測定できる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
1.水中の全有機炭素(TOC)濃度を測定し、予め、水中の油分をノルマルヘキサンにて抽出して測定した場合の油分濃度と、全有機炭素(TOC)濃度と、の実測結果に基づいて作成してある回帰線により決まる関係から、油分濃度を算出することを特徴とする水中の油分濃度測定方法。
2.水中の全有機炭素(TOC)濃度を測定する全有機炭素(TOC)濃度計を備え、予め、水中の油分をノルマルヘキサンにて抽出して測定した場合の油分濃度と、全有機炭素(TOC)濃度と、の実測結果に基づいて作成してある回帰線により決まる関係を記憶させてある演算処理装置を備え、試料である水中の全有機炭素(TOC)濃度を、演算処理装置に入力すると、該演算処理装置内で、前記回帰線に基づいて、油分濃度を算出し、出力することを特徴とする水中の油分濃度測定装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡便なしくみで、水中の油分濃度を測定できる方法および装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、水中の全有機炭素(TOC)濃度を測定し、予め、水中の油分をノルマルヘキサンにて抽出して測定した場合の油分濃度と、全有機炭素(TOC)濃度と、の実測結果に基づいて作成してある回帰線により決まる関係から、油分濃度を算出する。
【0013】
これにより、簡便なしくみで、水中の油分をノルマルヘキサンにて抽出して測定したとした場合の油分濃度を得ることができる。
【0014】
全有機炭素(TOC)濃度は、例えば、特許文献2、特許文献3に記載のような方法により測定すればよいが、それらに限るものではない。
【0015】
予め測定した、水中の油分をノルマルヘキサンにて抽出して測定した場合の油分濃度と、全有機炭素(TOC)濃度と、を表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
両者の相関関係を回帰して直線化した、回帰直線のようすを図1に示す。相関係数0.91と強い相関があることがわかる。
【実施例】
【0018】
本発明の水中の油分濃度測定装置を具現化したものの一例について、その内部での制御のブロック線図を図2に示す。試料である水(試料水)中の全有機炭素(TOC)濃度を、全有機炭素(TOC)濃度計10にて測定し、予め、水中の油分をノルマルヘキサンにて抽出して測定した場合の油分濃度と、全有機炭素(TOC)濃度と、の実測結果に基づいて作成してある回帰線により決まる関係を記憶させてある演算処理装置20に入力し、該演算処理装置20内で、前記回帰線に基づいて、油分濃度を算出し、出力する。
【0019】
以上の通りであるが、本発明は、上記の実施の形態や実施例にて言及した形態や例に限られるものではない。例えば、水の種類によって上記の関係は別々のものを用いるようにしてもよいし、回帰線は直線でなくて曲線によるものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一つの実施の形態について説明するための線図
【図2】本発明の一つの実施の形態について説明するための線図
【図3】従来技術について説明するための線図
【符号の説明】
【0021】
10 全有機炭素(TOC)濃度計
20 演算処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の全有機炭素(TOC)濃度を測定し、予め、水中の油分をノルマルヘキサンにて抽出して測定した場合の油分濃度と、全有機炭素(TOC)濃度と、の実測結果に基づいて作成してある回帰線により決まる関係から、油分濃度を算出することを特徴とする水中の油分濃度測定方法。
【請求項2】
水中の全有機炭素(TOC)濃度を測定する全有機炭素(TOC)濃度計を備え、予め、水中の油分をノルマルヘキサンにて抽出して測定した場合の油分濃度と、全有機炭素(TOC)濃度と、の実測結果に基づいて作成してある回帰線により決まる関係を記憶させてある演算処理装置を備え、試料である水中の全有機炭素(TOC)濃度を、演算処理装置に入力すると、該演算処理装置内で、前記回帰線に基づいて、油分濃度を算出し、出力することを特徴とする水中の油分濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−128263(P2009−128263A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305275(P2007−305275)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】