水中放電装置
【課題】直流電源を用いながら安定した放電を行うことができる水中放電装置を提供する。
【解決手段】水中放電装置には、水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)と、電極対(64,65)のうちの一方の電極(64)のみを内部に収容する収容部(72,73)と、電極対(64,65)の間の電流経路を形成するための開口(74)とを有する絶縁部材(71)と、絶縁部材(71)の開口(74)を覆う気体相(B)を形成する気体形成部(74,80)とが設けられる。
【解決手段】水中放電装置には、水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)と、電極対(64,65)のうちの一方の電極(64)のみを内部に収容する収容部(72,73)と、電極対(64,65)の間の電流経路を形成するための開口(74)とを有する絶縁部材(71)と、絶縁部材(71)の開口(74)を覆う気体相(B)を形成する気体形成部(74,80)とが設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で放電を行う水中放電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中で放電を行う水中放電装置が知られており、種々の用途に適用されている。特許文献1には、この種の水中放電装置が開示されている。この水中放電装置は、水中に浸漬される電極対と、この電極対にパルス高電圧を印加するパルス電源とを備えている。パルス電源から電極対にパルス電圧が印加されると、電極対の間で水中放電が行われる。この放電に伴い、水中では、水酸ラジカル等の活性種が生成する。この活性種により、水中に含まれる液中の有機物等が分解されて除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−326261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したパルス電源を用いた水中放電装置では、電源の複雑化、大型化、高コスト化を招いてしまう。また、パルス電源方式では、水中での放電に伴い騒音や衝撃波が大きくなってしまう。一方、このような問題を解決するために、電極対に常に所定の電圧を印加する直流電源を用いることが考えられる。しかしながら、直流電源を用いる場合、水中での漏れ電流の影響により、電極対の間の電流密度が小さくなってしまい、安定した放電を行うことができないという問題が生じる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、直流電源を用いながら安定した放電を行うことができる水中放電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、水中放電装置を対象とし、水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、該電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)と、上記電極対(64,65)のうちの一方の電極(64)のみを内部に収容する収容部(72,73)と、上記電極対(64,65)の間の電流経路を形成するための開口(74)とを有する絶縁部材(71)と、該絶縁部材(71)の開口(74)を覆う気体相(B)を形成する気体形成部(74,80)とを備えている。
【0007】
第1の発明では、電極対(64,65)の電源として、直流電源(70)が用いられる。このため、水中放電装置の電源の簡素化、小型化、低コスト化が図られる。また、放電に伴う騒音の低減、放電に伴う衝撃波の抑制が図られる。一方、このように直流電源(70)を用いて常に電極対(64,65)に所定の電圧を印加すると、例えばパルス電源と比較して、水中での漏れ電流が大きくなり、所望とする放電を行うことが困難となる。
【0008】
そこで、本発明では、電極対(64,65)のうちの一方の電極(64)のみを絶縁部材(71)の収容部(72,73)に収容し、絶縁部材(71)の開口(74)に電極対(64,65)の電流経路を形成している。これにより、絶縁部材(71)の開口(74)における電流密度が高くなり、漏れ電流が小さくなる。更に、本発明では、気体形成部(74,80)によって形成された気体相(B)が、絶縁部材(71)の開口(74)を覆う状態となる。つまり、電極対(64,65)の間の電流経路には、開口(74)を塞ぐようにして気体相(B)が介在する。これにより、電極対(64,65)の間の漏れ電流が更に抑制され、電極対(64,65)の間では所望とする放電電圧が確保される。その結果、電極対(64,65)の間では、気体相(B)の気体が絶縁破壊してストリーマ放電が生じる。その結果、気体相(B)付近では、ストリーマ放電に伴って水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、上記気体形成部(74,80)は、上記電極対(64,65)の間の電流経路を絞ることでジュール熱によって水を気化させて上記気体相(B)を生成する上記開口(74)であることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、絶縁部材(71)の開口(74)自体が気体形成部を構成する。つまり、絶縁部材(71)の開口(74)が絞られると、電極対(64,65)の間の電流経路が狭くなり、この電流経路の電流密度が小さくなる。これにより、開口(74)内のジュール熱が大きくなり、この開口(74)内の水が気化して蒸発する。その結果、開口(74)付近では、この開口(74)を覆うように気体相(B)が形成される。
【0011】
第3の発明では、空気供給機構(80)が気体形成部を構成する。つまり、空気供給機構(80)は、一方の電極(64)を収容する収容部(72,73)内に空気を供給する。この空気は、絶縁部材(71)の開口(74)を通じて収容部(72,73)の外部へ流出する。これにより、開口(74)には、空気供給機構(80)から供給された空気によって、気体相(B)が形成される。
【0012】
以上のように、本発明では、第2の発明のように、電極対(64,65)の間のジュール熱を消費することなく、気体相(B)が形成される。よって、水中放電装置の省エネ性の向上が図られる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、上記絶縁部材(71)には、上記収容部(72,73)内の電極と、該収容部(72,73)との間に空間(S)が形成され、上記空気供給機構(80)は、上記空間(S)に連通する空気供給路(81)と、該空気供給路(81)に設けられる空気ポンプ(82)とを含むことを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、空気ポンプ(82)で搬送された空気が、空気供給路(81)を通じて空間(S)へ供給される。このため、本発明では、絶縁部材(71)の収容部(72,73)の空間(S)も空気で満たされ易くなる。その結果、電極対(64,65)の間のジュール熱が、空間(S)内の水の気化に消費されてしまうことを未然に回避できる。
【0015】
第5の発明では、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、上記絶縁部材(71)には、複数の上記開口(74)が形成され、上記複数の開口(74)のそれぞれに、上記気体相(B)が形成されることを特徴とする。
【0016】
第5の発明では、絶縁部材(71)に複数の開口(74)が形成され、各開口(74)が対応する気体相(B)によって覆われる。このため、本発明では、各開口(74)の気体相(B)付近でそれぞれストリーマ放電が行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、直流電源(70)を用いてストリーマ放電を行っているので、例えばパルス電源と比較して、電源部の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、パルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまう。これに対し、直流電源(70)を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【0018】
また、本発明では、電極対(64,65)の一方の電極(64)を絶縁部材(71)の収容部(72,73)で覆い、更に電極対(64,65)の間の電流経路を形成する開口(74)を気体相(B)によって覆うようにしている。これにより、本発明では、電極対(64,65)の間での漏れ電流を最小限に抑えることができるため、直流電源(70)を用いても気体相(B)付近で安定したストリーマ放電を行うことができる。従って、気体相(B)付近では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素を安定して生成でき、例えばこれらの成分を水の浄化に利用することができる。
【0019】
第2の発明では、電極対(64,65)の間の電流経路のジュール熱を利用して、開口(74)内に気体相(B)を形成するようにしている。このため、気体相(B)を形成するための特別な機器を設ける必要がないため、装置構造の簡素化を図ることができる。
【0020】
第3の発明では、空気供給機構(80)によって気体相(B)に空気を供給することで、気体相(B)を形成するようにしている。このため、気体相(B)の生成にジュール熱が消費されることがないため、電力消費量を低減できる。
【0021】
第4の発明では、絶縁部材(71)の収容部(72,73)の空間(S)にも空気を供給することで、空間(S)内にも気体相を形成できる。これにより、空間(S)内において、ジュール熱によって水が気化されることを抑制でき、電力消費量を低減できる。また、空間(S)内を空気で満たすようにすると、この空間(S)においてもストリーマ放電を行うことができる。その結果、空間(S)では、放電に伴ってイオン風を生成できるため、このイオン風を利用して活性種や過酸化水素等の拡散を促すことができる。
【0022】
第5の発明では、複数の開口(74)の各気相部(B)付近でそれぞれストリーマ放電を行うことができる。従って、ストリーマ放電に伴って生成される活性種等を広範囲且つ多量に生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、実施形態1に係る給湯システムの全体構成を示す配管系統図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図5】図5は、実施形態2に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図6】図6は、実施形態2に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図7】図7は、実施形態1の変形例に係る水浄化ユニットの全体構成図である。
【図8】図8は、実施形態1の変形例に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図9】図9は、実施形態2の変形例に係る水浄化ユニットの全体構成図である。
【図10】図10は、実施形態3に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図11】図11は、実施形態3に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図12】図12は、実施形態3の変形例に係る水浄化ユニットの全体構成図である。
【図13】図13は、実施形態2の変形例に係る絶縁ケーシングの蓋部の平面図である。
【図14】図14は、その他の実施形態に係る給湯システムの全体構成を示す配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0025】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る放電ユニット(62)は、給湯システム(10)に搭載されている。まず、給湯システム(10)の全体構成について、図1を参照しながら説明する。給湯システム(10)は、浴槽(U1)やシャワー(U2)へ温水を供給するシステムである。給湯システム(10)は、いわゆるヒートポンプ式の給湯器であり、熱源ユニット(30)と給湯ユニット(40)とを有している。
【0026】
熱源ユニット(30)は、圧縮機(31)と加熱熱交換器(32)と膨張弁(33)と室外熱交換器(34)とを備えている。熱源ユニット(30)では、圧縮機(31)、加熱熱交換器(32)、膨張弁(33)、及び室外熱交換器(34)が冷媒配管を介して順に接続され、閉回路となる冷媒回路(11)が構成される。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素が充填されている。
【0027】
加熱熱交換器(32)は、一次側伝熱部(32a)と二次側伝熱部(32b)とを有している。一次側伝熱部(32a)は、圧縮機(31)と膨張弁(33)との間の高圧ラインに接続されている。二次側伝熱部(32b)は、給湯ユニット(40)側の第1循環流路(13)に接続されている。加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒と、二次側伝熱部(32b)を流れる水とが熱交換する。室外熱交換器(34)の近傍には、ファン(35)が設けられている。室外熱交換器(34)では、その内部を流れる冷媒と、ファン(35)が送風する室外空気とが熱交換する。
【0028】
冷媒回路(11)では、圧縮機(31)が運転されて冷媒が循環することで、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。即ち、冷媒回路(11)では、圧縮機(31)で圧縮された冷媒が、一次側伝熱部(32a)で放熱し、膨張弁(33)で減圧される。減圧された冷媒は、室外熱交換器(34)で蒸発し、圧縮機(31)に吸入される。この冷凍サイクルは、冷媒としての二酸化炭素を臨界圧力以上まで圧縮する、いわゆる超臨界サイクルである。
【0029】
給湯ユニット(40)は、給湯タンク(41)と内部熱交換器(42)とを備えている。
【0030】
給湯タンク(41)は、縦長の円筒状の密閉容器で構成されている。給湯タンク(41)には、円筒形の周壁部(41a)と、周壁部(41a)の上側を閉塞する頂壁部(41b)と、周壁部(41a)の下側を閉塞する底壁部(41c)とが形成されている。給湯タンク(41)には、第1循環流路(13)と第2循環流路(14)と供給流路(15)とが接続されている。また、給湯タンク(41)には、該給湯タンク(41)内へ水道水を適宜補給する、給水路(20)も接続されている。これらの流路(13,14,15,20)は、給湯タンク(41)と連通する水流路(12)を構成している。
【0031】
第1循環流路(13)の始端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の下部に接続され、給湯タンク(41)内の底壁部(41c)寄りに開口している。第1循環流路(13)の終端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の上部に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。第1循環流路(13)には、第1ポンプ(43)が設けられている。第1ポンプ(43)は、第1循環流路(13)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。第1循環流路(13)には、第1ポンプ(43)の下流側に二次側伝熱部(32b)が接続されている。
【0032】
第2循環流路(14)の始端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の下部に接続され、給湯タンク(41)内の底壁部(41c)寄りに開口している。第2循環流路(14)の終端は、給湯タンク(41)の頂壁部(41b)に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。第2循環流路(14)には、第2ポンプ(44)が設けられている。第2ポンプ(44)は、第2循環流路(14)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。第2循環流路(14)には、第2ポンプ(44)の下流側に内部熱交換器(42)の第1伝熱管(42a)が接続されている。
【0033】
内部熱交換器(42)は、第1伝熱管(42a)と第2伝熱管(42b)とを有している。第1伝熱管(42a)は、第2循環流路(14)に接続されている。第2伝熱管(42b)は、供給流路(15)の第3循環流路(16)に接続されている。
【0034】
供給流路(15)は、主供給路(17)、第1分岐路(18)、第2分岐路(19)、及び第3循環流路(16)を含んでいる。
【0035】
主供給路(17)の始端は給湯タンク(41)の頂壁部(41b)に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。主供給路(17)の終端側は、第1分岐路(18)と第2分岐路(19)とに分岐している。主供給路(17)には、第3ポンプ(45)が設けられている。第3ポンプ(45)は、主供給路(17)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。
【0036】
第1分岐路(18)の終端は、第3循環流路(16)を介して浴槽(U1)と連通している。つまり、第1分岐路(18)は、浴槽(U1)側へ温水を供給するための浴槽側供給路を構成している。第1分岐路(18)には、第1開閉弁(46)が設けられている。第2分岐路(19)の終端は、シャワー(U2)と接続している。つまり、第2分岐路(19)は、シャワー(U2)へ温水を供給するシャワー側供給路を構成している。第2分岐路(19)には、第2開閉弁(47)が設けられている。
【0037】
第3循環流路(16)は、浴槽(U1)内の水を循環させる浴槽循環流路を構成している。第3循環流路(16)は、供給循環路(16a)と返送循環路(16b)とを有している。供給循環路(16a)の流出端は、浴槽(U1)の内部における上方寄りに開口している。返送循環路(16b)の流入端は、浴槽(U1)の内部における下方寄りに開口している。供給循環路(16a)には、第4ポンプ(48)が設けられている。第4ポンプ(48)は、主供給路(17)側の水、又は返送循環路(16b)側の水を浴槽(U1)内へ供給する搬送機構である。返送循環路(16b)には、内部熱交換器(42)の第2伝熱管(42b)が接続され、該第2伝熱管(42b)の下流側に第3開閉弁(49)が設けられている。
【0038】
内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水と、第2伝熱管(42b)を流れる水とが熱交換する。給湯ユニット(40)では、返送循環路(16b)を流れる水と比較すると、第2循環流路(14)を流れる水の温度の方が高くなる。このため、内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水の熱が、第2伝熱管(42b)を流れる水へ付与される。つまり、第2伝熱管(42b)は、第3循環流路(16)を流れる水を加熱する加熱部を構成している。
【0039】
〈水浄化ユニットの詳細構造〉
給湯システム(10)は、水浄化ユニット(60)を備えている。水浄化ユニット(60)は、水中でのストリーマ放電によって水中に過酸化水素等の浄化成分を生成し、この浄化成分によって水の浄化を行うものである。水浄化ユニット(60)は、水浄化タンク(61)と放電ユニット(62)とを有している(図2を参照)。
【0040】
水浄化タンク(61)は、水流路(12)の水が流入する水浄化流路を構成している。本実施形態の水浄化タンク(61)は、密閉型の容器状に形成され、第3循環流路(16)に接続されている。具体的に、水浄化タンク(61)には、流入管(51)及び流出管(52)が接続され、これらの配管(51,52)が供給循環路(16a)と繋がっている。即ち、水浄化タンク(61)は、第3循環流路(16)において、加熱部である第2伝熱管(42b)の下流側に配設されている。流入管(51)と流出管(52)とは、銅管で構成されている。流入管(51)は、その内壁から銅イオンを生成することで、水浄化タンク(61)に銅イオンを供給するイオン供給部を構成している。
【0041】
放電ユニット(62)は、水中でストリーマ放電を行うための水中放電装置を構成している。放電ユニット(62)は、放電電極(64)及び対向電極(65)とからなる電極対(64,65)と、この電極対(64,65)に電圧を印加する電源部(70)と、放電電極(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0042】
電極対(64,65)は、水中でストリーマ放電を生起するためのものである。放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に配置されている。放電電極(64)は、上下に扁平な板状に形成されている。放電電極(64)は、電源部(70)の正極側に接続されている。放電電極(64)は、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。
【0043】
対向電極(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。対向電極(65)は、放電電極(64)の上方に設けられている。対向電極(65)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(66)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。対向電極(65)は、放電電極(64)と略平行に配設されている。対向電極(65)は、電源部(70)の負極側に接続されている。対向電極(65)は、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。
【0044】
電源部(70)は、電極対(64,65)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。即ち、電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(70)のうち、対向電極(65)が接続される負極側は、アースと接続されている。また、電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0045】
絶縁ケーシング(71)は、水浄化タンク(61)の底部に設置されている。絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。ケース本体(72)及び蓋部(73)は、放電電極(64)を内部に収容する収容部を構成している。
【0046】
ケース本体(72)は、角型筒状の側壁部(72a)と、該側壁部(72a)の底面を閉塞する底部(72b)とを有している。放電電極(64)は、底部(72b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、放電電極(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、放電電極(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0047】
図2及び図3に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電界の形成が許容されている。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74)は、電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0048】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(放電電極(64))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(74)を有する絶縁部材を構成している。
【0049】
加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0050】
−給湯システムの運転動作−
給湯システム(10)の基本的な運転動作について図1を参照しながら説明する。この給湯システム(10)では、浴槽内へ温水を供給する「給湯運転」と、浴槽内の水を循環させながら加熱する「追い焚き運転」とが行われる。
【0051】
〈給湯運転〉
給湯運転では、熱源ユニット(30)の圧縮機(31)が運転され、冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。給湯ユニット(40)では、第1ポンプ(43)及び第3ポンプ(45)が運転され、第2ポンプ(44)及び第4ポンプ(48)が停止状態となる。また、第1開閉弁(46)、第2開閉弁(47)が開放状態となり、第3開閉弁(49)は閉鎖状態となる。
【0052】
第1ポンプ(43)が運転されると、給湯タンク(41)内の水が第1循環流路(13)へ流出する。この水は、加熱熱交換器(32)の二次側伝熱部(32b)を流れる。加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒の熱が、二次側伝熱部(32b)を流れる水へ放出され、この水が所定温度まで加熱される。加熱された水は、第1循環流路(13)を経由して給湯タンク(41)内に流入する。これにより、給湯タンク(41)内部には、所定温度の温水が蓄えられる。
【0053】
第3ポンプ(45)が運転されると、給湯タンク(41)内の水(温水)は、主供給路(17)に流出し、第1分岐路(18)と第2分岐路(19)とに分流する。第1分岐路(18)を流れた水は、第3循環流路(16)の供給循環路(16a)に流入する。この水は、水浄化タンク(61)を通過した後、浴槽(U1)内へ放出される。これにより、浴槽(U1)内に所定温度の温水が供給される。一方、第2分岐路(19)を流れた水は、シャワー(U2)側に供給される。
【0054】
〈追い焚き運転〉
追い焚き運転では、熱源ユニット(30)の圧縮機(31)が運転され、冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。給湯ユニット(40)では、第1ポンプ(43)、第2ポンプ(44)、及び第4ポンプ(48)が運転される。また、第1開閉弁(46)が閉鎖状態となり、第2開閉弁(47)及び第3開閉弁(49)が開放状態となる。
【0055】
第1ポンプ(43)が運転されると、給湯タンク(41)内の水が第1循環流路(13)を流れる。これにより、第1循環流路(13)の水は、加熱熱交換器(32)で加熱されて給湯タンク(41)へ返送される。
【0056】
第2ポンプ(44)が運転されると、給湯タンク(41)内の水は、第2循環流路(14)へ流出する。この水は、内部熱交換器(42)の第1伝熱管(42a)を流れる。内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水の熱が、第2伝熱管(42b)を流れる水へ放出される。第1伝熱管(42a)で放熱した水は、第2循環流路(14)を経由して給湯タンク(41)内に流入する。
【0057】
第4ポンプ(48)が運転されると、浴槽(U1)の水は第3循環流路(16)の返送循環路(16b)へ吸い込まれる。返送循環路(16b)を流れた水は、内部熱交換器(42)で加熱された後、水浄化タンク(61)を通過して浴槽(U1)へ供給される。これにより、浴槽(U1)内の水の温度が徐々に高くなっていく。
【0058】
−水浄化ユニットの運転動作−
本実施形態の給湯システム(10)では、水浄化ユニット(60)が運転されることで、水流路(12)を流れる水の浄化がなされる。このような水浄化ユニット(60)による水の浄化動作について詳細に説明する。なお、この水浄化動作は、上述した「給湯運転」や「追い焚き運転」時に実行される。
【0059】
水浄化ユニット(60)の運転の開始時には、図2に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。放電電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されるとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0060】
開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気体相としての気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(65)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(64)との間に気泡(B)が介在する。従って、この状態では、気泡(B)が、放電電極(64)と対向電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0061】
以上のようにして、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、水浄化タンク(61)内の水中では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって水浄化タンク(61)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、水浄化タンク(61)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上できる。
【0062】
また、上述したように、水浄化タンク(61)には、流入管(51)から溶出した銅イオンが供給される。過酸化水素と銅イオンの存在下では、フェントン反応により、銅イオンが触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸ラジカルによる水の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0063】
以上のようにして、水中に拡散した水酸ラジカル等の活性種は、水中に含まれる被処理成分(例えばアンモニア等)を酸化分解して水の浄化に利用される。また、水中に拡散した過酸化水素は、水の殺菌に利用される。「給湯運転」や「追い焚き運転」では、このような水浄化動作が適宜実行され、浄化された水が浴槽(U1)に供給される。これにより、本実施形態の給湯システム(10)では、浴槽(U1)内の清浄度が保たれる。
【0064】
−実施形態1の効果−
実施形態1では、直流電源(70)を用いてストリーマ放電を行っているので、例えばパルス電源と比較して、電源部の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、パルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまう。これに対し、直流電源(70)を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【0065】
実施形態1では、放電電極(64)を絶縁ケーシング(71)で収容し、電極対(64,65)の電流経路を形成する開口(74)を気泡(B)で覆うようにしている。これにより、電極対(64,65)の間では、漏れ電流を最小限に抑えることができる。従って、直流電源(70)で常に所定の直流電圧を電極対(64,65)に印加する構成であっても、気泡(B)の近傍で安定したストリーマ放電を行うことができる。その結果、気泡(B)付近では、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素を安定して生成でき、水の浄化効率を向上できる。
【0066】
更に、実施形態1では、電極対(64,65)の間の電流経路のジュール熱を利用して、開口(74)内に気泡(B)を形成している。このため、気泡(B)を形成するための特別な機器を設ける必要がないため、装置構造の簡素化を図ることができる。
【0067】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る給湯システム(10)は、上述した実施形態1と放電ユニット(62)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0068】
図5に示すように、実施形態2の放電ユニット(62)には、空気供給機構(80)が設けられている。空気供給機構(80)は、開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成するための気泡形成部を構成している。具体的に、空気供給機構(80)は、空気供給路(81)と、該空気供給路(81)に接続される空気ポンプ(82)とを備えている。空気供給路(81)は、流入端が空気中に開口し、流出端は、絶縁ケーシング(71)を貫通して空間(S)に開口している。
【0069】
実施形態2において、水浄化動作が開始されると、空気ポンプ(82)が運転されて空気供給路(81)から空間(S)へ空気が供給される。本実施形態では、空気ポンプ(82)が運転されて所定の設定時間が経過した後に、直流電源(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加される。この際、空間(S)の空気は、開口(74)より絶縁ケーシング(71)の外部へ流出するため、この開口(74)に気泡(B)が形成されてストリーマ放電が行われる(図6を参照)。
【0070】
実施形態2では、開口(74)内において水の気化にジュール熱が消費されてしまうことが抑制される。その結果、実施形態2では、ジュール熱の消費に伴って直流電源(70)の消費電力が大きくなってしまうことが回避され、省エネ性の向上が図られる。
【0071】
また、実施形態2では、空気ポンプ(82)から供給された空気が、空間(S)内にも溜まり込むことになる。従って、実施形態2では、空間(S)内の水がジュール熱によって気化されてしまうことも抑制できる。更に、空間(S)内を完全に空気で満たすようにすると、電極対(64,65)の間の漏れ電流を一層効果的に回避できる。また、空間(S)でもストリーマ放電を生起させることができ、これに伴いイオン風の発生を促進できる。その結果、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素を一層効果的に水中に拡散させることができる。
【0072】
〈実施形態1や2の変形例〉
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図7及び図8に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(64)及び対向電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0073】
この変形例においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0074】
また、図7及び図8に示す構成において、実施形態2の空気供給機構(80)を採用することもできる(図9を参照)。この構成では、空気供給機構(80)から供給された空気を各開口(74)に送ることで、各開口(74)でジュール熱を消費することなく気泡(B)をそれぞれ形成することができる。従って、ジュール熱の消費に伴って省エネ性が損なわれてしまうことを回避できる。
【0075】
《発明の実施形態3》
実施形態3に係る給湯システム(10)は、上述した実施形態1や2と放電ユニット(62)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1や2と異なる点を主として説明する。
【0076】
図10に示すように、実施形態3の放電ユニット(62)は、水浄化タンク(61)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態3の放電ユニット(62)は、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組立てられている。
【0077】
実施形態3の絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(73)とを有している。
【0078】
実施形態3のケース本体(72)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から水浄化タンク(61)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部から更に水浄化タンク(61)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。また、ケース本体(72)には、環状凸部(78)の先端側に先端筒部(79)が形成されている。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0079】
実施形態3の蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0080】
放電電極(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態3では、放電電極(64)のうち水浄化タンク(61)とは反対側の端部が、水浄化タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、水浄化タンク(61)の外部に配置される電源部(70)と、放電電極(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0081】
放電電極(64)のうち水浄化タンク(61)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図10に示す例では、放電電極(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(水浄化タンク(61)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0082】
対向電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、水浄化タンク(61)の壁部に固定されて放電ユニット(62)を保持する固定部を構成している。放電ユニット(62)が水浄化タンク(61)に固定された状態では、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が浸水された状態となる。
【0083】
対向電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、水浄化タンク(61)内の水中に浸漬している。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(65a)と内側筒部(65c)と連接部(65d)の間には、ケース本体(72)の先端筒部(79)が内嵌している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、対向電極(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、水浄化タンク(61)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0084】
対向電極(65)は、電極本体(65a)の一部が水浄化タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(70)と対向電極(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0085】
−水浄化ユニットの運転動作−
実施形態3の給湯システム(10)においても、水浄化ユニット(60)が運転されることで、水流路(12)を流れる水の浄化がなされる。
【0086】
水浄化ユニット(60)の運転の開始時には、図10に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇していく。
【0087】
図10に示す状態から、電極対(64,65)へ更に直流電圧が継続して印加されると、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(図11を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、放電電極(64)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、水中では、水酸ラジカルや過酸化水素を生成され、これらの成分が水の浄化に利用される。
【0088】
〈実施形態3の変形例〉
上記実施形態3の構成において、図12に示すように、実施形態2の空気供給機構(80)を採用するようにしてもよい。この構成では、開口(74)や空間(S)において、ジュール熱によって水が気化されてしまうことを抑制でき、省エネ性を向上できる。
【0089】
また、上記実施形態3では、円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成しているが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。図13に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0090】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0091】
〈給湯システムの構成〉
上記実施形態の給湯システム(10)を図14に示すような、他の方式としてもよい。
【0092】
具体的に、図14に示す例の給湯システム(10)は、加熱熱交換器(32)と第1ポンプ(43)とが、熱源ユニット(30)や給湯ユニット(40)と異なるユニット(ハイドロボックス(30a))に収容されている。また、この例では、給湯タンク(41)の内部に、コイル型熱交換器(13a)が収容されている。コイル型熱交換器(13a)は、給湯タンク(41)の底壁部(41c)寄りに配設されている。コイル型熱交換器(13a)では、熱媒体としての水が流れる伝熱管が、給湯タンク(41)の周壁部(41a)に沿うように螺旋状に形成されている。コイル型熱交換器(13a)は、一端が第1循環流路(13)の始端に接続し、他端が第1循環流路(13)の終端に接続している。
【0093】
図14に示す給湯システム(10)では、加熱熱交換器(32)で加熱された水が、コイル型熱交換器(13a)を流れる。これにより、コイル型熱交換器(13a)の伝熱管を流れる水の熱が、伝熱管の外部へ放出される。その結果、給湯タンク(41)内に貯留された水が加熱され、温水が生成される。
【0094】
〈放電ユニットの構成>
上述した各実施形態の電源部(70)には、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0095】
また、上述した各実施形態では、電源部(70)の正極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の負極に対向電極(65)を接続している。しかしながら、電源部(70)の負極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の正極に対向電極(65)を接続することで、電極対(64,65)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【0096】
〈イオン供給部の構成〉
上述した各実施形態では、水浄化タンク(61)の流入管(51)を銅管とすることで、流入管(51)を銅イオンのイオン供給部としている。しかしながら、イオン供給部としては、例えば鉄イオンを生成する鉄製の配管を用いることもできる。鉄イオンも銅イオンと同様、過酸化水素の存在下でフェントン反応を促進させるため、水酸ラジカルの生成量を増大できる。
【0097】
銅管や鉄管は、水浄化タンク(61)と連通する水流路(12)であれば、他の箇所に設けることもできる。具体的に、上記実施形態1や2においては、例えば内部熱交換器(42)の少なくとも第2伝熱管(42b)を銅管で構成することができる。また、例えば銅片や鉄片を水浄化タンク(61)内に浸漬することで、これらをイオン供給部とすることもできる。
【0098】
〈水浄化タンクの配置〉
上記実施形態と異なる位置に水浄化タンク(61)を接続してもよい。具体的には、第1循環流路(13)、第2循環流路(14)、供給流路(15)、給水路(20)等に水浄化タンク(61)を接続してもよい。
【0099】
〈水中放電装置の用途〉
上述した水中放電装置(62)は、給湯システム(10)の水を浄化する用途に適用されている。しかしながら、水を浄化するものであれば、他の用途に適用することもできる。これらの用途としては、例えば空気調和装置のドレン水の浄化、加湿器の加湿タンク水の浄化、除湿器で補足された水の浄化等があげられる。また、水中放電装置(62)は、ストリーマ放電によって得られた水を所定の洗浄対象に供給ないし噴霧することで、この洗浄対象を洗浄する用途に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上説明したように、本発明は、所定の利用対象へ温水を供給する給湯システムに関し、特に給湯システムの水流路を流れる水を浄化する対策について有用である。
【符号の説明】
【0101】
10 給湯システム
62 放電ユニット(水中放電装置)
64 放電電極(電極対)
65 対向電極(電極対)
70 電源部(直流電源)
71 絶縁ケーシング(絶縁部材)
72 ケース本体(収容部)
73 蓋部(収容部)
74 開口(気体形成部)
80 空気供給機構(気体形成部)
81 空気供給路
82 空気ポンプ
B 気体相(気泡)
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で放電を行う水中放電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中で放電を行う水中放電装置が知られており、種々の用途に適用されている。特許文献1には、この種の水中放電装置が開示されている。この水中放電装置は、水中に浸漬される電極対と、この電極対にパルス高電圧を印加するパルス電源とを備えている。パルス電源から電極対にパルス電圧が印加されると、電極対の間で水中放電が行われる。この放電に伴い、水中では、水酸ラジカル等の活性種が生成する。この活性種により、水中に含まれる液中の有機物等が分解されて除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−326261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したパルス電源を用いた水中放電装置では、電源の複雑化、大型化、高コスト化を招いてしまう。また、パルス電源方式では、水中での放電に伴い騒音や衝撃波が大きくなってしまう。一方、このような問題を解決するために、電極対に常に所定の電圧を印加する直流電源を用いることが考えられる。しかしながら、直流電源を用いる場合、水中での漏れ電流の影響により、電極対の間の電流密度が小さくなってしまい、安定した放電を行うことができないという問題が生じる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、直流電源を用いながら安定した放電を行うことができる水中放電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、水中放電装置を対象とし、水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、該電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)と、上記電極対(64,65)のうちの一方の電極(64)のみを内部に収容する収容部(72,73)と、上記電極対(64,65)の間の電流経路を形成するための開口(74)とを有する絶縁部材(71)と、該絶縁部材(71)の開口(74)を覆う気体相(B)を形成する気体形成部(74,80)とを備えている。
【0007】
第1の発明では、電極対(64,65)の電源として、直流電源(70)が用いられる。このため、水中放電装置の電源の簡素化、小型化、低コスト化が図られる。また、放電に伴う騒音の低減、放電に伴う衝撃波の抑制が図られる。一方、このように直流電源(70)を用いて常に電極対(64,65)に所定の電圧を印加すると、例えばパルス電源と比較して、水中での漏れ電流が大きくなり、所望とする放電を行うことが困難となる。
【0008】
そこで、本発明では、電極対(64,65)のうちの一方の電極(64)のみを絶縁部材(71)の収容部(72,73)に収容し、絶縁部材(71)の開口(74)に電極対(64,65)の電流経路を形成している。これにより、絶縁部材(71)の開口(74)における電流密度が高くなり、漏れ電流が小さくなる。更に、本発明では、気体形成部(74,80)によって形成された気体相(B)が、絶縁部材(71)の開口(74)を覆う状態となる。つまり、電極対(64,65)の間の電流経路には、開口(74)を塞ぐようにして気体相(B)が介在する。これにより、電極対(64,65)の間の漏れ電流が更に抑制され、電極対(64,65)の間では所望とする放電電圧が確保される。その結果、電極対(64,65)の間では、気体相(B)の気体が絶縁破壊してストリーマ放電が生じる。その結果、気体相(B)付近では、ストリーマ放電に伴って水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、上記気体形成部(74,80)は、上記電極対(64,65)の間の電流経路を絞ることでジュール熱によって水を気化させて上記気体相(B)を生成する上記開口(74)であることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、絶縁部材(71)の開口(74)自体が気体形成部を構成する。つまり、絶縁部材(71)の開口(74)が絞られると、電極対(64,65)の間の電流経路が狭くなり、この電流経路の電流密度が小さくなる。これにより、開口(74)内のジュール熱が大きくなり、この開口(74)内の水が気化して蒸発する。その結果、開口(74)付近では、この開口(74)を覆うように気体相(B)が形成される。
【0011】
第3の発明では、空気供給機構(80)が気体形成部を構成する。つまり、空気供給機構(80)は、一方の電極(64)を収容する収容部(72,73)内に空気を供給する。この空気は、絶縁部材(71)の開口(74)を通じて収容部(72,73)の外部へ流出する。これにより、開口(74)には、空気供給機構(80)から供給された空気によって、気体相(B)が形成される。
【0012】
以上のように、本発明では、第2の発明のように、電極対(64,65)の間のジュール熱を消費することなく、気体相(B)が形成される。よって、水中放電装置の省エネ性の向上が図られる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、上記絶縁部材(71)には、上記収容部(72,73)内の電極と、該収容部(72,73)との間に空間(S)が形成され、上記空気供給機構(80)は、上記空間(S)に連通する空気供給路(81)と、該空気供給路(81)に設けられる空気ポンプ(82)とを含むことを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、空気ポンプ(82)で搬送された空気が、空気供給路(81)を通じて空間(S)へ供給される。このため、本発明では、絶縁部材(71)の収容部(72,73)の空間(S)も空気で満たされ易くなる。その結果、電極対(64,65)の間のジュール熱が、空間(S)内の水の気化に消費されてしまうことを未然に回避できる。
【0015】
第5の発明では、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、上記絶縁部材(71)には、複数の上記開口(74)が形成され、上記複数の開口(74)のそれぞれに、上記気体相(B)が形成されることを特徴とする。
【0016】
第5の発明では、絶縁部材(71)に複数の開口(74)が形成され、各開口(74)が対応する気体相(B)によって覆われる。このため、本発明では、各開口(74)の気体相(B)付近でそれぞれストリーマ放電が行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、直流電源(70)を用いてストリーマ放電を行っているので、例えばパルス電源と比較して、電源部の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、パルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまう。これに対し、直流電源(70)を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【0018】
また、本発明では、電極対(64,65)の一方の電極(64)を絶縁部材(71)の収容部(72,73)で覆い、更に電極対(64,65)の間の電流経路を形成する開口(74)を気体相(B)によって覆うようにしている。これにより、本発明では、電極対(64,65)の間での漏れ電流を最小限に抑えることができるため、直流電源(70)を用いても気体相(B)付近で安定したストリーマ放電を行うことができる。従って、気体相(B)付近では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素を安定して生成でき、例えばこれらの成分を水の浄化に利用することができる。
【0019】
第2の発明では、電極対(64,65)の間の電流経路のジュール熱を利用して、開口(74)内に気体相(B)を形成するようにしている。このため、気体相(B)を形成するための特別な機器を設ける必要がないため、装置構造の簡素化を図ることができる。
【0020】
第3の発明では、空気供給機構(80)によって気体相(B)に空気を供給することで、気体相(B)を形成するようにしている。このため、気体相(B)の生成にジュール熱が消費されることがないため、電力消費量を低減できる。
【0021】
第4の発明では、絶縁部材(71)の収容部(72,73)の空間(S)にも空気を供給することで、空間(S)内にも気体相を形成できる。これにより、空間(S)内において、ジュール熱によって水が気化されることを抑制でき、電力消費量を低減できる。また、空間(S)内を空気で満たすようにすると、この空間(S)においてもストリーマ放電を行うことができる。その結果、空間(S)では、放電に伴ってイオン風を生成できるため、このイオン風を利用して活性種や過酸化水素等の拡散を促すことができる。
【0022】
第5の発明では、複数の開口(74)の各気相部(B)付近でそれぞれストリーマ放電を行うことができる。従って、ストリーマ放電に伴って生成される活性種等を広範囲且つ多量に生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、実施形態1に係る給湯システムの全体構成を示す配管系統図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図5】図5は、実施形態2に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図6】図6は、実施形態2に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図7】図7は、実施形態1の変形例に係る水浄化ユニットの全体構成図である。
【図8】図8は、実施形態1の変形例に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図9】図9は、実施形態2の変形例に係る水浄化ユニットの全体構成図である。
【図10】図10は、実施形態3に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図11】図11は、実施形態3に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図12】図12は、実施形態3の変形例に係る水浄化ユニットの全体構成図である。
【図13】図13は、実施形態2の変形例に係る絶縁ケーシングの蓋部の平面図である。
【図14】図14は、その他の実施形態に係る給湯システムの全体構成を示す配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0025】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る放電ユニット(62)は、給湯システム(10)に搭載されている。まず、給湯システム(10)の全体構成について、図1を参照しながら説明する。給湯システム(10)は、浴槽(U1)やシャワー(U2)へ温水を供給するシステムである。給湯システム(10)は、いわゆるヒートポンプ式の給湯器であり、熱源ユニット(30)と給湯ユニット(40)とを有している。
【0026】
熱源ユニット(30)は、圧縮機(31)と加熱熱交換器(32)と膨張弁(33)と室外熱交換器(34)とを備えている。熱源ユニット(30)では、圧縮機(31)、加熱熱交換器(32)、膨張弁(33)、及び室外熱交換器(34)が冷媒配管を介して順に接続され、閉回路となる冷媒回路(11)が構成される。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素が充填されている。
【0027】
加熱熱交換器(32)は、一次側伝熱部(32a)と二次側伝熱部(32b)とを有している。一次側伝熱部(32a)は、圧縮機(31)と膨張弁(33)との間の高圧ラインに接続されている。二次側伝熱部(32b)は、給湯ユニット(40)側の第1循環流路(13)に接続されている。加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒と、二次側伝熱部(32b)を流れる水とが熱交換する。室外熱交換器(34)の近傍には、ファン(35)が設けられている。室外熱交換器(34)では、その内部を流れる冷媒と、ファン(35)が送風する室外空気とが熱交換する。
【0028】
冷媒回路(11)では、圧縮機(31)が運転されて冷媒が循環することで、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。即ち、冷媒回路(11)では、圧縮機(31)で圧縮された冷媒が、一次側伝熱部(32a)で放熱し、膨張弁(33)で減圧される。減圧された冷媒は、室外熱交換器(34)で蒸発し、圧縮機(31)に吸入される。この冷凍サイクルは、冷媒としての二酸化炭素を臨界圧力以上まで圧縮する、いわゆる超臨界サイクルである。
【0029】
給湯ユニット(40)は、給湯タンク(41)と内部熱交換器(42)とを備えている。
【0030】
給湯タンク(41)は、縦長の円筒状の密閉容器で構成されている。給湯タンク(41)には、円筒形の周壁部(41a)と、周壁部(41a)の上側を閉塞する頂壁部(41b)と、周壁部(41a)の下側を閉塞する底壁部(41c)とが形成されている。給湯タンク(41)には、第1循環流路(13)と第2循環流路(14)と供給流路(15)とが接続されている。また、給湯タンク(41)には、該給湯タンク(41)内へ水道水を適宜補給する、給水路(20)も接続されている。これらの流路(13,14,15,20)は、給湯タンク(41)と連通する水流路(12)を構成している。
【0031】
第1循環流路(13)の始端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の下部に接続され、給湯タンク(41)内の底壁部(41c)寄りに開口している。第1循環流路(13)の終端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の上部に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。第1循環流路(13)には、第1ポンプ(43)が設けられている。第1ポンプ(43)は、第1循環流路(13)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。第1循環流路(13)には、第1ポンプ(43)の下流側に二次側伝熱部(32b)が接続されている。
【0032】
第2循環流路(14)の始端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の下部に接続され、給湯タンク(41)内の底壁部(41c)寄りに開口している。第2循環流路(14)の終端は、給湯タンク(41)の頂壁部(41b)に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。第2循環流路(14)には、第2ポンプ(44)が設けられている。第2ポンプ(44)は、第2循環流路(14)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。第2循環流路(14)には、第2ポンプ(44)の下流側に内部熱交換器(42)の第1伝熱管(42a)が接続されている。
【0033】
内部熱交換器(42)は、第1伝熱管(42a)と第2伝熱管(42b)とを有している。第1伝熱管(42a)は、第2循環流路(14)に接続されている。第2伝熱管(42b)は、供給流路(15)の第3循環流路(16)に接続されている。
【0034】
供給流路(15)は、主供給路(17)、第1分岐路(18)、第2分岐路(19)、及び第3循環流路(16)を含んでいる。
【0035】
主供給路(17)の始端は給湯タンク(41)の頂壁部(41b)に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。主供給路(17)の終端側は、第1分岐路(18)と第2分岐路(19)とに分岐している。主供給路(17)には、第3ポンプ(45)が設けられている。第3ポンプ(45)は、主供給路(17)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。
【0036】
第1分岐路(18)の終端は、第3循環流路(16)を介して浴槽(U1)と連通している。つまり、第1分岐路(18)は、浴槽(U1)側へ温水を供給するための浴槽側供給路を構成している。第1分岐路(18)には、第1開閉弁(46)が設けられている。第2分岐路(19)の終端は、シャワー(U2)と接続している。つまり、第2分岐路(19)は、シャワー(U2)へ温水を供給するシャワー側供給路を構成している。第2分岐路(19)には、第2開閉弁(47)が設けられている。
【0037】
第3循環流路(16)は、浴槽(U1)内の水を循環させる浴槽循環流路を構成している。第3循環流路(16)は、供給循環路(16a)と返送循環路(16b)とを有している。供給循環路(16a)の流出端は、浴槽(U1)の内部における上方寄りに開口している。返送循環路(16b)の流入端は、浴槽(U1)の内部における下方寄りに開口している。供給循環路(16a)には、第4ポンプ(48)が設けられている。第4ポンプ(48)は、主供給路(17)側の水、又は返送循環路(16b)側の水を浴槽(U1)内へ供給する搬送機構である。返送循環路(16b)には、内部熱交換器(42)の第2伝熱管(42b)が接続され、該第2伝熱管(42b)の下流側に第3開閉弁(49)が設けられている。
【0038】
内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水と、第2伝熱管(42b)を流れる水とが熱交換する。給湯ユニット(40)では、返送循環路(16b)を流れる水と比較すると、第2循環流路(14)を流れる水の温度の方が高くなる。このため、内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水の熱が、第2伝熱管(42b)を流れる水へ付与される。つまり、第2伝熱管(42b)は、第3循環流路(16)を流れる水を加熱する加熱部を構成している。
【0039】
〈水浄化ユニットの詳細構造〉
給湯システム(10)は、水浄化ユニット(60)を備えている。水浄化ユニット(60)は、水中でのストリーマ放電によって水中に過酸化水素等の浄化成分を生成し、この浄化成分によって水の浄化を行うものである。水浄化ユニット(60)は、水浄化タンク(61)と放電ユニット(62)とを有している(図2を参照)。
【0040】
水浄化タンク(61)は、水流路(12)の水が流入する水浄化流路を構成している。本実施形態の水浄化タンク(61)は、密閉型の容器状に形成され、第3循環流路(16)に接続されている。具体的に、水浄化タンク(61)には、流入管(51)及び流出管(52)が接続され、これらの配管(51,52)が供給循環路(16a)と繋がっている。即ち、水浄化タンク(61)は、第3循環流路(16)において、加熱部である第2伝熱管(42b)の下流側に配設されている。流入管(51)と流出管(52)とは、銅管で構成されている。流入管(51)は、その内壁から銅イオンを生成することで、水浄化タンク(61)に銅イオンを供給するイオン供給部を構成している。
【0041】
放電ユニット(62)は、水中でストリーマ放電を行うための水中放電装置を構成している。放電ユニット(62)は、放電電極(64)及び対向電極(65)とからなる電極対(64,65)と、この電極対(64,65)に電圧を印加する電源部(70)と、放電電極(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0042】
電極対(64,65)は、水中でストリーマ放電を生起するためのものである。放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に配置されている。放電電極(64)は、上下に扁平な板状に形成されている。放電電極(64)は、電源部(70)の正極側に接続されている。放電電極(64)は、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。
【0043】
対向電極(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。対向電極(65)は、放電電極(64)の上方に設けられている。対向電極(65)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(66)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。対向電極(65)は、放電電極(64)と略平行に配設されている。対向電極(65)は、電源部(70)の負極側に接続されている。対向電極(65)は、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。
【0044】
電源部(70)は、電極対(64,65)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。即ち、電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(70)のうち、対向電極(65)が接続される負極側は、アースと接続されている。また、電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0045】
絶縁ケーシング(71)は、水浄化タンク(61)の底部に設置されている。絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(73)とを有している。ケース本体(72)及び蓋部(73)は、放電電極(64)を内部に収容する収容部を構成している。
【0046】
ケース本体(72)は、角型筒状の側壁部(72a)と、該側壁部(72a)の底面を閉塞する底部(72b)とを有している。放電電極(64)は、底部(72b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、放電電極(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、放電電極(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0047】
図2及び図3に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電界の形成が許容されている。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74)は、電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0048】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(放電電極(64))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(74)を有する絶縁部材を構成している。
【0049】
加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0050】
−給湯システムの運転動作−
給湯システム(10)の基本的な運転動作について図1を参照しながら説明する。この給湯システム(10)では、浴槽内へ温水を供給する「給湯運転」と、浴槽内の水を循環させながら加熱する「追い焚き運転」とが行われる。
【0051】
〈給湯運転〉
給湯運転では、熱源ユニット(30)の圧縮機(31)が運転され、冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。給湯ユニット(40)では、第1ポンプ(43)及び第3ポンプ(45)が運転され、第2ポンプ(44)及び第4ポンプ(48)が停止状態となる。また、第1開閉弁(46)、第2開閉弁(47)が開放状態となり、第3開閉弁(49)は閉鎖状態となる。
【0052】
第1ポンプ(43)が運転されると、給湯タンク(41)内の水が第1循環流路(13)へ流出する。この水は、加熱熱交換器(32)の二次側伝熱部(32b)を流れる。加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒の熱が、二次側伝熱部(32b)を流れる水へ放出され、この水が所定温度まで加熱される。加熱された水は、第1循環流路(13)を経由して給湯タンク(41)内に流入する。これにより、給湯タンク(41)内部には、所定温度の温水が蓄えられる。
【0053】
第3ポンプ(45)が運転されると、給湯タンク(41)内の水(温水)は、主供給路(17)に流出し、第1分岐路(18)と第2分岐路(19)とに分流する。第1分岐路(18)を流れた水は、第3循環流路(16)の供給循環路(16a)に流入する。この水は、水浄化タンク(61)を通過した後、浴槽(U1)内へ放出される。これにより、浴槽(U1)内に所定温度の温水が供給される。一方、第2分岐路(19)を流れた水は、シャワー(U2)側に供給される。
【0054】
〈追い焚き運転〉
追い焚き運転では、熱源ユニット(30)の圧縮機(31)が運転され、冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。給湯ユニット(40)では、第1ポンプ(43)、第2ポンプ(44)、及び第4ポンプ(48)が運転される。また、第1開閉弁(46)が閉鎖状態となり、第2開閉弁(47)及び第3開閉弁(49)が開放状態となる。
【0055】
第1ポンプ(43)が運転されると、給湯タンク(41)内の水が第1循環流路(13)を流れる。これにより、第1循環流路(13)の水は、加熱熱交換器(32)で加熱されて給湯タンク(41)へ返送される。
【0056】
第2ポンプ(44)が運転されると、給湯タンク(41)内の水は、第2循環流路(14)へ流出する。この水は、内部熱交換器(42)の第1伝熱管(42a)を流れる。内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水の熱が、第2伝熱管(42b)を流れる水へ放出される。第1伝熱管(42a)で放熱した水は、第2循環流路(14)を経由して給湯タンク(41)内に流入する。
【0057】
第4ポンプ(48)が運転されると、浴槽(U1)の水は第3循環流路(16)の返送循環路(16b)へ吸い込まれる。返送循環路(16b)を流れた水は、内部熱交換器(42)で加熱された後、水浄化タンク(61)を通過して浴槽(U1)へ供給される。これにより、浴槽(U1)内の水の温度が徐々に高くなっていく。
【0058】
−水浄化ユニットの運転動作−
本実施形態の給湯システム(10)では、水浄化ユニット(60)が運転されることで、水流路(12)を流れる水の浄化がなされる。このような水浄化ユニット(60)による水の浄化動作について詳細に説明する。なお、この水浄化動作は、上述した「給湯運転」や「追い焚き運転」時に実行される。
【0059】
水浄化ユニット(60)の運転の開始時には、図2に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。放電電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されるとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0060】
開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気体相としての気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(65)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(64)との間に気泡(B)が介在する。従って、この状態では、気泡(B)が、放電電極(64)と対向電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0061】
以上のようにして、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、水浄化タンク(61)内の水中では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって水浄化タンク(61)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、水浄化タンク(61)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上できる。
【0062】
また、上述したように、水浄化タンク(61)には、流入管(51)から溶出した銅イオンが供給される。過酸化水素と銅イオンの存在下では、フェントン反応により、銅イオンが触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸ラジカルによる水の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0063】
以上のようにして、水中に拡散した水酸ラジカル等の活性種は、水中に含まれる被処理成分(例えばアンモニア等)を酸化分解して水の浄化に利用される。また、水中に拡散した過酸化水素は、水の殺菌に利用される。「給湯運転」や「追い焚き運転」では、このような水浄化動作が適宜実行され、浄化された水が浴槽(U1)に供給される。これにより、本実施形態の給湯システム(10)では、浴槽(U1)内の清浄度が保たれる。
【0064】
−実施形態1の効果−
実施形態1では、直流電源(70)を用いてストリーマ放電を行っているので、例えばパルス電源と比較して、電源部の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、パルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまう。これに対し、直流電源(70)を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【0065】
実施形態1では、放電電極(64)を絶縁ケーシング(71)で収容し、電極対(64,65)の電流経路を形成する開口(74)を気泡(B)で覆うようにしている。これにより、電極対(64,65)の間では、漏れ電流を最小限に抑えることができる。従って、直流電源(70)で常に所定の直流電圧を電極対(64,65)に印加する構成であっても、気泡(B)の近傍で安定したストリーマ放電を行うことができる。その結果、気泡(B)付近では、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素を安定して生成でき、水の浄化効率を向上できる。
【0066】
更に、実施形態1では、電極対(64,65)の間の電流経路のジュール熱を利用して、開口(74)内に気泡(B)を形成している。このため、気泡(B)を形成するための特別な機器を設ける必要がないため、装置構造の簡素化を図ることができる。
【0067】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る給湯システム(10)は、上述した実施形態1と放電ユニット(62)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0068】
図5に示すように、実施形態2の放電ユニット(62)には、空気供給機構(80)が設けられている。空気供給機構(80)は、開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成するための気泡形成部を構成している。具体的に、空気供給機構(80)は、空気供給路(81)と、該空気供給路(81)に接続される空気ポンプ(82)とを備えている。空気供給路(81)は、流入端が空気中に開口し、流出端は、絶縁ケーシング(71)を貫通して空間(S)に開口している。
【0069】
実施形態2において、水浄化動作が開始されると、空気ポンプ(82)が運転されて空気供給路(81)から空間(S)へ空気が供給される。本実施形態では、空気ポンプ(82)が運転されて所定の設定時間が経過した後に、直流電源(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加される。この際、空間(S)の空気は、開口(74)より絶縁ケーシング(71)の外部へ流出するため、この開口(74)に気泡(B)が形成されてストリーマ放電が行われる(図6を参照)。
【0070】
実施形態2では、開口(74)内において水の気化にジュール熱が消費されてしまうことが抑制される。その結果、実施形態2では、ジュール熱の消費に伴って直流電源(70)の消費電力が大きくなってしまうことが回避され、省エネ性の向上が図られる。
【0071】
また、実施形態2では、空気ポンプ(82)から供給された空気が、空間(S)内にも溜まり込むことになる。従って、実施形態2では、空間(S)内の水がジュール熱によって気化されてしまうことも抑制できる。更に、空間(S)内を完全に空気で満たすようにすると、電極対(64,65)の間の漏れ電流を一層効果的に回避できる。また、空間(S)でもストリーマ放電を生起させることができ、これに伴いイオン風の発生を促進できる。その結果、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素を一層効果的に水中に拡散させることができる。
【0072】
〈実施形態1や2の変形例〉
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図7及び図8に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(64)及び対向電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0073】
この変形例においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0074】
また、図7及び図8に示す構成において、実施形態2の空気供給機構(80)を採用することもできる(図9を参照)。この構成では、空気供給機構(80)から供給された空気を各開口(74)に送ることで、各開口(74)でジュール熱を消費することなく気泡(B)をそれぞれ形成することができる。従って、ジュール熱の消費に伴って省エネ性が損なわれてしまうことを回避できる。
【0075】
《発明の実施形態3》
実施形態3に係る給湯システム(10)は、上述した実施形態1や2と放電ユニット(62)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1や2と異なる点を主として説明する。
【0076】
図10に示すように、実施形態3の放電ユニット(62)は、水浄化タンク(61)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態3の放電ユニット(62)は、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組立てられている。
【0077】
実施形態3の絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(73)とを有している。
【0078】
実施形態3のケース本体(72)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から水浄化タンク(61)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部から更に水浄化タンク(61)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。また、ケース本体(72)には、環状凸部(78)の先端側に先端筒部(79)が形成されている。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0079】
実施形態3の蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0080】
放電電極(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態3では、放電電極(64)のうち水浄化タンク(61)とは反対側の端部が、水浄化タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、水浄化タンク(61)の外部に配置される電源部(70)と、放電電極(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0081】
放電電極(64)のうち水浄化タンク(61)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図10に示す例では、放電電極(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(水浄化タンク(61)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0082】
対向電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、水浄化タンク(61)の壁部に固定されて放電ユニット(62)を保持する固定部を構成している。放電ユニット(62)が水浄化タンク(61)に固定された状態では、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が浸水された状態となる。
【0083】
対向電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、水浄化タンク(61)内の水中に浸漬している。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(65a)と内側筒部(65c)と連接部(65d)の間には、ケース本体(72)の先端筒部(79)が内嵌している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、対向電極(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、水浄化タンク(61)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0084】
対向電極(65)は、電極本体(65a)の一部が水浄化タンク(61)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(70)と対向電極(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0085】
−水浄化ユニットの運転動作−
実施形態3の給湯システム(10)においても、水浄化ユニット(60)が運転されることで、水流路(12)を流れる水の浄化がなされる。
【0086】
水浄化ユニット(60)の運転の開始時には、図10に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇していく。
【0087】
図10に示す状態から、電極対(64,65)へ更に直流電圧が継続して印加されると、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(図11を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、放電電極(64)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、水中では、水酸ラジカルや過酸化水素を生成され、これらの成分が水の浄化に利用される。
【0088】
〈実施形態3の変形例〉
上記実施形態3の構成において、図12に示すように、実施形態2の空気供給機構(80)を採用するようにしてもよい。この構成では、開口(74)や空間(S)において、ジュール熱によって水が気化されてしまうことを抑制でき、省エネ性を向上できる。
【0089】
また、上記実施形態3では、円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成しているが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。図13に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0090】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0091】
〈給湯システムの構成〉
上記実施形態の給湯システム(10)を図14に示すような、他の方式としてもよい。
【0092】
具体的に、図14に示す例の給湯システム(10)は、加熱熱交換器(32)と第1ポンプ(43)とが、熱源ユニット(30)や給湯ユニット(40)と異なるユニット(ハイドロボックス(30a))に収容されている。また、この例では、給湯タンク(41)の内部に、コイル型熱交換器(13a)が収容されている。コイル型熱交換器(13a)は、給湯タンク(41)の底壁部(41c)寄りに配設されている。コイル型熱交換器(13a)では、熱媒体としての水が流れる伝熱管が、給湯タンク(41)の周壁部(41a)に沿うように螺旋状に形成されている。コイル型熱交換器(13a)は、一端が第1循環流路(13)の始端に接続し、他端が第1循環流路(13)の終端に接続している。
【0093】
図14に示す給湯システム(10)では、加熱熱交換器(32)で加熱された水が、コイル型熱交換器(13a)を流れる。これにより、コイル型熱交換器(13a)の伝熱管を流れる水の熱が、伝熱管の外部へ放出される。その結果、給湯タンク(41)内に貯留された水が加熱され、温水が生成される。
【0094】
〈放電ユニットの構成>
上述した各実施形態の電源部(70)には、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0095】
また、上述した各実施形態では、電源部(70)の正極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の負極に対向電極(65)を接続している。しかしながら、電源部(70)の負極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の正極に対向電極(65)を接続することで、電極対(64,65)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【0096】
〈イオン供給部の構成〉
上述した各実施形態では、水浄化タンク(61)の流入管(51)を銅管とすることで、流入管(51)を銅イオンのイオン供給部としている。しかしながら、イオン供給部としては、例えば鉄イオンを生成する鉄製の配管を用いることもできる。鉄イオンも銅イオンと同様、過酸化水素の存在下でフェントン反応を促進させるため、水酸ラジカルの生成量を増大できる。
【0097】
銅管や鉄管は、水浄化タンク(61)と連通する水流路(12)であれば、他の箇所に設けることもできる。具体的に、上記実施形態1や2においては、例えば内部熱交換器(42)の少なくとも第2伝熱管(42b)を銅管で構成することができる。また、例えば銅片や鉄片を水浄化タンク(61)内に浸漬することで、これらをイオン供給部とすることもできる。
【0098】
〈水浄化タンクの配置〉
上記実施形態と異なる位置に水浄化タンク(61)を接続してもよい。具体的には、第1循環流路(13)、第2循環流路(14)、供給流路(15)、給水路(20)等に水浄化タンク(61)を接続してもよい。
【0099】
〈水中放電装置の用途〉
上述した水中放電装置(62)は、給湯システム(10)の水を浄化する用途に適用されている。しかしながら、水を浄化するものであれば、他の用途に適用することもできる。これらの用途としては、例えば空気調和装置のドレン水の浄化、加湿器の加湿タンク水の浄化、除湿器で補足された水の浄化等があげられる。また、水中放電装置(62)は、ストリーマ放電によって得られた水を所定の洗浄対象に供給ないし噴霧することで、この洗浄対象を洗浄する用途に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上説明したように、本発明は、所定の利用対象へ温水を供給する給湯システムに関し、特に給湯システムの水流路を流れる水を浄化する対策について有用である。
【符号の説明】
【0101】
10 給湯システム
62 放電ユニット(水中放電装置)
64 放電電極(電極対)
65 対向電極(電極対)
70 電源部(直流電源)
71 絶縁ケーシング(絶縁部材)
72 ケース本体(収容部)
73 蓋部(収容部)
74 開口(気体形成部)
80 空気供給機構(気体形成部)
81 空気供給路
82 空気ポンプ
B 気体相(気泡)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、
上記電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)と、
上記電極対(64,65)のうちの一方の電極(64)のみを内部に収容する収容部(72,73)と、上記電極対(64,65)の間の電流経路を形成するための開口(74)とを有する絶縁部材(71)と、
上記絶縁部材(71)の開口(74)を覆う気体相(B)を形成する気体形成部(74,80)とを備えている水中放電装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記気体形成部(74,80)は、上記電極対(64,65)の間の電流経路を絞ることでジュール熱によって水を気化させて上記気体相(B)を生成する上記開口(74)であることを特徴とする水中放電装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記気体形成部(74,80)は、上記収容部(72,73)内に空気を供給する空気供給機構(80)であることを特徴とする水中放電装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記絶縁部材(71)には、上記収容部(72,73)内の電極と、該収容部(72,73)との間に空間(S)が形成され、
上記空気供給機構(80)は、上記空間(S)に連通する空気供給路(81)と、該空気供給路(81)に設けられる空気ポンプ(82)とを含むことを特徴とする水中放電装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つにおいて、
上記絶縁部材(71)には、複数の上記開口(74)が形成され、
上記複数の開口(74)のそれぞれに、対応する上記気体相(B)が形成されることを特徴とする水中放電装置。
【請求項1】
水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)と、
上記電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)と、
上記電極対(64,65)のうちの一方の電極(64)のみを内部に収容する収容部(72,73)と、上記電極対(64,65)の間の電流経路を形成するための開口(74)とを有する絶縁部材(71)と、
上記絶縁部材(71)の開口(74)を覆う気体相(B)を形成する気体形成部(74,80)とを備えている水中放電装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記気体形成部(74,80)は、上記電極対(64,65)の間の電流経路を絞ることでジュール熱によって水を気化させて上記気体相(B)を生成する上記開口(74)であることを特徴とする水中放電装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記気体形成部(74,80)は、上記収容部(72,73)内に空気を供給する空気供給機構(80)であることを特徴とする水中放電装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記絶縁部材(71)には、上記収容部(72,73)内の電極と、該収容部(72,73)との間に空間(S)が形成され、
上記空気供給機構(80)は、上記空間(S)に連通する空気供給路(81)と、該空気供給路(81)に設けられる空気ポンプ(82)とを含むことを特徴とする水中放電装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つにおいて、
上記絶縁部材(71)には、複数の上記開口(74)が形成され、
上記複数の開口(74)のそれぞれに、対応する上記気体相(B)が形成されることを特徴とする水中放電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−75981(P2012−75981A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220928(P2010−220928)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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