説明

水中補修システム及びこれを用いた水中補修方法

【課題】プール内壁の被補修部に当て板を溶接して補修する補修作業を狭隘部でも実施することができる具体的な構成を実現し、これによって溶接部に噴き出し穴が生じるのを防止することができる水中補修システム、及びこれを用いた水中補修方法を提供する。
【解決手段】当て板4をプール内壁2の被補修部に配置して支持する当て板支持装置6と、当て板4のガス抜き穴4aに閉止プラグ5を取り付けるプラグ取付装置7と、当て板支持装置6で支持された当て板4の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ、気相空間における当て板4の周縁部を溶接し、その後、プラグ取付装置7で当て板4のガス抜き穴4aに取り付けられた閉止プラグ5の全体を覆うように気相空間を形成しつつ、閉止プラグ5の周縁部を溶接する水中溶接装置8と、当て板支持装置6、プラグ取付装置7、及び水中溶接装置8を遠隔操作する制御装置10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原子力発電所や使用済燃料貯蔵施設等に設置された燃料貯蔵プールに係わり、特に、プール内壁の被補修部に当て板を溶接して補修する水中補修システム及びこれを用いた水中補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば原子力発電所や使用済燃料貯蔵施設等に設置された燃料貯蔵プールは、コンクリート壁にライング板(金属板)を内張りした構造となっている。このプール内壁の被補修部を補修する方法として、例えば、プール内の燃料を全て移設し、プール内の水を排出した後、作業者がプール内に入って補修作業を行う方法がある。あるいは、例えば、プール内に作業室を形成するための放射線遮蔽設備を仮設し、この作業室内の水を気体に置換した後、作業者が作業室内に入って補修作業を行う方法がある。これらの方法では、プール内から移設した燃料を保管する設備や放射線遮蔽設備等が必要であるばかりか、作業時間が膨大となる。
【0003】
そこで、例えば、プール内壁に対向する側面に開口部を有するチャンバと、このチャンバをプール内壁に所定圧力で押圧するチャンバ保持機構と、チャンバ内の水をアルゴン等の気体に置換する気体注入機構とを備え、チャンバ内に、パッチ支持機構、溶接トーチ、溶接トーチ移動機構、溶加材送給機構、及び監視機構等を収納した水中溶接装置が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。そして、例えばプール内壁の被補修部にパッチ(当て板)を溶接して補修する場合、気体注入機構でチャンバ内に気相空間を形成しつつ、パッチ支持機構でプール内壁の被補修部にパッチを押圧し、このパッチの周縁部を溶接トーチで溶接するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平3−146268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。
すなわち、上記水中溶接装置は、パッチ支持機構、溶接トーチ、溶接トーチ移動機構、溶加材送給機構、及び監視機構等をチャンバ内に収納するため(言い換えれば、少なくとも当て板の全体を覆うように気相空間を形成するため)、その小型化には限界があり、例えばプール内壁の被補修部の近傍に構造物が設置された場所(狭隘部)で用いることが困難であった。このような狭隘部でも当て板の溶接作業を実施するためには、例えば、当て板の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ溶接する小型の水中溶接装置を採用することが考えられる。ところが、このタイプの水中溶接装置を用いて当て板の周縁部を溶接する場合、当て板とプール内壁との隙間に水が存在し、この水が溶接熱で加熱され蒸発するので溶接部に噴き出し穴が生じる虞がある。そこで、当て板にガス抜き穴を形成して対応する方法が考えられるものの、この場合、当て板の周縁部の溶接後、当て板のガス抜き穴に閉止プラグを取り付ける必要が生じる。
【0006】
本発明の目的は、上記の事柄に基づいてなされたものであり、その目的は、プール内壁の被補修部に当て板を溶接して補修する補修作業を狭隘部でも実施することができる具体的な構成を実現し、これによって溶接部に噴き出し穴が生じるのを防止することができる水中補修システム、及びこれを用いた水中補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、プール内壁の被補修部に当て板を溶接して補修する水中補修システムであって、前記当て板を前記プール内壁の被補修部に配置して支持する当て板支持装置と、前記当て板のガス抜き穴に閉止プラグを取り付けるプラグ取付装置と、前記当て板支持装置で支持された前記当て板の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ、前記気相空間における前記当て板の周縁部を溶接し、その後、前記プラグ取付装置で前記当て板のガス抜き穴に取り付けられた前記閉止プラグの全体を覆うように気相空間を形成しつつ、前記閉止プラグの周縁部を溶接する水中溶接装置と前記当て板支持装置、前記プラグ取付装置、及び前記水中溶接装置を遠隔操作する制御装置とを備える。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明は、当て板支持装置、水中溶接装置、及びプラグ取付装置を制御装置で遠隔操作して、プール内壁の被補修部に当て板を溶接して補修する水中補修方法であって、前記当て板支持装置により、前記当て板を前記プール内壁の被補修部に配置して支持する手順と、前記水中溶接装置により、前記当て板支持装置で支持された前記当て板の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ前記気相空間における前記当て板の周縁部を溶接する手順と、前記プラグ取付装置により、前記プール内壁の被補修部に取り付けられた前記当て板のガス抜き穴に閉止プラグを取り付ける手順と、前記水中溶接装置により、前記当て板のガス抜き穴に取り付けられた前記閉止プラグの全体を覆うように気相空間を形成しつつ前記閉止プラグの周縁部を溶接する手順とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プール内壁の被補修部に当て板を溶接して補修する補修作業を狭隘部でも実施することができる具体的な構成を実現し、これによって溶接部に噴き出し穴が生じるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の水中補修システムの一実施形態の構成の一部を燃料貯蔵プールとともに表す概略図である。また、図2は、プール内壁の被補修部に溶接する当て板の構造を表す斜視図である。
【0011】
この図1において、燃料貯蔵プール1は、コンクリート壁にライニング板(金属板)が内張りされた構造であり、プール内壁2の近傍に冷却水配管3が設けられた場所(狭隘部)を有している。本実施形態の水中補修システムは、このような狭隘部にあるプール内壁2の被補修部(例えば、後述の図7〜11に示すライニング板の継目2aに生じた欠陥等)に当て板4(板状の補修部材)を溶接して補修する補修作業を目的としたものである。
【0012】
当て板4は、プール内壁2(ライニング板)と同じ金属材料からなり、その周縁部は、溶接性を考慮して、表側(図2中紙面に向かって手前側)部分に斜面が形成され裏側(図2中紙面に向かって奥側)部分にルート面が形成されている。なお、当て板4の周縁部に斜面を形成することにより、当て板4とプール壁2との段差を滑らかにするという効果も得られている。
【0013】
また、例えば当て板4の周縁部を溶接する際に当て板4とプール内壁2との隙間にある水が蒸発して溶接部に噴出穴が生じるのを防止するため、当て板4の中央部にはガス抜き穴4a(詳細には、当て板4を貫通したネジ穴)が形成されており、このガス抜き穴4aにネジ止め可能な閉止プラグ5が用意されている。閉止プラグ5は、当て板4(言い換えれば、ライニング板)と同じ金属材料からなり、当て板4のガス抜き4aに螺合するネジ部5aと、このネジ部5aの一方側端部に形成された板状のヘッド部5bとで構成されている。閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部は、溶接性を考慮して、表側部分に斜面が形成され裏側部分にルート面が形成されている。
【0014】
水中補修システムは、当て板4をプール内壁2の被補修部に配置して支持する当て板支持装置6(後述の図3参照)と、当て板4のガス抜き穴4aに閉止プラグ5を取り付けるプラグ取付装置7(後述の図4参照)と、当て板4の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ当て板4の周縁部を溶接したり、また閉止プラグ5のヘッド部5bの全体を覆うように気相空間を形成しつつ閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部を溶接したりする水中溶接装置8(図1及び後述の図5参照)と、オペレーションフロア9に設置され、当て板支持装置6、プラグ取付装置7、及び水中溶接装置8を遠隔操作する制御装置(制御・監視盤)10とを備えている。また、オペレーションフロア9には、当て板支持装置6、プラグ取付装置7、及び水中溶接装置8をプール1内に降ろすためのクレーン11が設置されている。次に、当て板支持装置6、プラグ取付装置7、及び水中溶接装置8の詳細を順に説明する。
【0015】
図3は、当て板支持装置6の全体構造を表す斜視図である。
【0016】
この図3において、当て板支持装置6は、略板状のサイドフレーム12L,12Rと、これらサイドフレーム12L,12Rに例えば2つずつ(すなわち計4つ)設けられた本体固定機構13と、サイドフレーム12L,12Rの間に配置され、サイドフレーム12L,12RにY軸方向移動機構を介し接続された略板状のセンタフレーム14と、センタフレーム14にX軸方向移動機構を介し設けられた支持フレーム15と、この支持フレーム15にZ軸方向に回動可能に設けられ、当て板4を支持する当て板支持アーム16とを備えている。
【0017】
本体固定機構13は、吸着パット13a及びエジェクタ13bを有し、エジェクタ13bは、ホース(図示せず)を介しオペレーションフロア9上のポンプユニット(図示せず)から水が供給されるようになっている。また、ポンプユニットからエジェクタ13bへの水の供給が制御装置10によって制御されている。そして、例えばエジェクタ13bに水が供給された場合は、エジェクタ13bがサイドフレーム12L,12Rの表側(図中紙面に向かって奥側)に水を噴出し、吸着パット13a内に負圧を生じさせる。これにより、吸着パット13aがプール内壁2に吸着し、サイドフレーム12L,12Rをプール内壁2に固定する。一方、例えばエジェクタ13bへの水の供給が停止された場合は、吸着パット13a内が正圧となり、サイドフレーム12L,12Rをプール内壁2から離脱させる。なお、例えば複数の本体固定機構13の間においてプール内壁2に段差がある場合、本体固定機構13とサイドフレーム12L(又は12R)との間にプレート等を取り付けて対応するようにしてもよい。
【0018】
Y軸方向移動機構は、詳細を図示しないが、サイドフレーム12L,12Rに設けられた左右の水圧アクチュエータを有している。これら左右の水圧アクチュエータは、オペレーションフロア9上のポンプユニットからホース(図示せず)を介し供給された水によって駆動するものであり、制御装置10によって水圧アクチュエータへの水の供給が制御されている(なお、後述する他の水圧アクチュエータも同様)。そして、例えば左右の水圧アクチュエータを同じ作動量で駆動させた場合は、サイドフレーム12L,12Rに対しセンタフレーム14を姿勢維持したままY軸方向に移動させ、一方、例えば左右の水圧アクチュエータを異なる作動量で駆動させた場合は、サイドフレーム12L,12Rに対しセンタフレーム14を傾けるように移動させる。X軸方向移動機構は、詳細を図示しないが、水圧アクチュエータを有し、この水圧アクチュエータの駆動により、センタフレーム14に対し支持フレーム15をX軸方向に移動させる。したがって、制御装置10は、前述したX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構の駆動により、当て板支持アーム16で支持された当て板4の位置(詳細には、プール内壁2の被補修部に対する当て板4のX軸方向及びY軸方向の位置)を調整するようになっている。
【0019】
当て板支持アーム16の先端部には、当て板4を保持するための当て板保持ユニット17が着脱可能に設けられている。当て板保持ユニット17は、中央部に開口を有する保持フレーム18a(後述の図7参照、但し、例えば略コの字の板状に形成してもよい)と、この保持フレーム18aの表側(図中紙面に向かって奥側)に設けられ、当て板支持アーム16の先端部に上側(図中上側)から挿嵌可能な係合部18bと、保持フレーム18aの上側及び側方側(図中左右両側)に設けられた当て板ガイド18cと、保持フレーム18aの裏側(図中紙面に向かって手前側)に設けられ当て板4を保持する例えば4つの当て板保持機構19(図7参照)とを備えている。当て板保持機構19は、吸着パット及びエジェクタを有し、エジェクタは、ホース(図示せず)を介しオペレーションフロア9上のポンプユニットからの水が供給されるようになっている。また、ポンプユニットからエジェクタへの水の供給が制御装置10によって制御されている。そして、例えばエジェクタに水が供給された場合は、エジェクタが水を噴出し、吸着パット内に負圧を生じさせる。これにより、吸着パットが当て板4を吸着して保持するようになっている。一方、例えばエジェクタへの水の供給が停止された場合、吸着パット内が正圧となり、吸着パットが当て板4を離すようになっている。
【0020】
当て板支持アーム16の先端側には、当て板保持ユニット17の保持フレーム18aの開口に位置し、当て板保持機構19と干渉しないで当て板4の中央部に当接可能な当て板押付部20(図7参照)が設けられている。また、支持フレーム15には、当て板支持アーム16をZ軸方向に回動させる当て板押付機構21(図7参照)が設けられている。当て板押付機構21は、水圧アクチュエータ22を有し、この水圧アクチュエータ22の駆動により、支持フレーム15に対し当て板支持アーム16をZ軸方向に回動させる。これにより、例えば、当て板押付部20を当て板4の中央部に当接して、当て板4をプール内壁2に押し付けるようになっている。これにより、当て板保持ユニット17を取り外して当て板4の周縁部の一部を溶接可能な状態にすることができるようになっている。
【0021】
なお、当て板保持ユニット17には操作ケーブル(図示せず)が接続されており、例えばオペレーションフロア9上の作業員が操作ケーブルを引っ張ることにより、当て板保持ユニット17の係合部18bが当て板支持アーム16の先端部から外れるようになっている。また、当て板保持ユニット17は、当て板支持装置6から取り外した状態でも使用することができ、例えばプール1内に落下した当て板4を回収する場合等に用いることができる。
【0022】
センタフレーム14の中央部には、当て板4を照らす照明23と、当て板4をY軸方向から撮像する監視カメラ24とが設けられ、サイドフレーム12R(又は12Lでもよい)には、当て板4をX軸方向から撮像する監視カメラ(図示せず)が設けられている。監視カメラ24等の映像は、信号線(図示せず)を介し制御装置10に送信され監視モニタ(図示せず)に表示される。これにより、作業者は、当て板4の位置等を目視確認できるようになっている。
【0023】
センタフレーム14における当て板支持アーム16よりサイドフレーム12L側(図中左側)には、接触子25を有する検出器26Lと、検出器26LをX軸方向に移動させる検出器移動機構27Lと、検出器26LをY軸方向に移動させる検出器移動機構28Lとが設けられている。検出器移動機構27Lは、水圧アクチュエータ29を有し、この水圧アクチュエータ29の駆動により、センタフレーム14に対し検出器26LをX軸方向に移動させる。検出器移動機構28Lは、水圧アクチュエータ30を有し、この水圧アクチュエータ30の駆動により、センタフレーム14に対し検出器26LをY軸方向に移動させるようになっている。検出器26Lは、接触子25をZ軸方向に移動させる駆動機構(図示しないが、例えばバネや水圧アクチュエータを用いて駆動する機構)を有し、接触子25を当て板4やプール内壁2にそれぞれ当接させたときの接触子25のZ軸方向の位置を検出する。そして、検出26Lは、その検出値を信号線(図示せず)を介し制御装置10に出力するようになっている。
【0024】
同様に、センタフレーム14における当て板支持アーム16よりサイドフレーム12R側(図中右側)には、接触子25を有する検出器26Rと、検出器26RをX軸方向に移動させる検出器移動機構27Rと、検出器26RをY軸方向に移動させる検出器移動機構28Rとが設けられている。これら検出器26R及び検出器移動機構27R,28Rは、上述した検出器26L及び検出器移動機構27L,28Lと同様であるため、説明を省略する。
【0025】
制御装置10は、検出器移動機構27L,28Lの駆動により検出器26Lの接触子25のX軸方向及びY軸方向の位置を制御し、検出器26Lから入力した接触子25のZ軸方向の位置をX軸方向及びY軸方向の位置と関連づけて記憶する。また、検出器移動機構27R,28Rの駆動により検出器26Rの接触子25のX軸方向及びY軸方向の位置を制御し、検出器26Rから入力した接触子25のZ軸方向の位置をX軸方向及びY軸方向の位置と関連づけて記憶する。そして、当て板4に当接した接触子25のZ軸方向位置とプール内壁2に当接した接触子23のZ軸方向位置との差分を演算し、この差分から予め記憶された当て板4の厚み寸法を差し引くことにより、当て板4とプール内壁2との隙間寸法を演算し、その演算値を監視モニタに表示するようになっている。
【0026】
図4は、プラグ取付装置7の全体構造を表す斜視図である。
【0027】
この図4において、プラグ取付装置7は、略コの字の板状の本体フレーム31と、この本体フレーム31に設けられた例えば4つの本体固定機構32と、本体フレーム31にX軸方向移動機構を介し設けられたスライドフレーム33と、このスライドフレーム33にY軸方向移動機構34を介し設けられ、閉止プラグ5を支持するプラグ支持アーム35とを備えている。
【0028】
本体固定機構32は、吸着パット32a及びエジェクタ32bを有し、エジェクタ32bは、ホース(図示せず)を介しオペレーションフロア9上のポンプユニットからの水が供給されるようになっている。そして、例えばエジェクタ32bに水が供給された場合は、エジェクタ32bが水を噴出し、吸着パット32a内に負圧を生じさせる。これにより、吸着パット32aがプール内壁2に吸着し、本体フレーム31をプール内壁2に固定する。一方、例えばエジェクタ32bへの水の供給が停止された場合は、吸着パット32a内が正圧となり、本体フレーム31をプール内壁2から離脱させる。なお、例えば複数の本体固定機構32の間においてプール内壁2に段差がある場合、本体固定機構32と本体フレーム31との間にプレート等を取り付けて対応するようにしてもよい。
【0029】
X軸方向移動機構は、詳細を図示しないが、水圧アクチュエータを有し、この水圧アクチュエータの駆動により、本体フレーム29に対しスライドフレーム31をX軸方向に移動させる。Y軸方向移動機構34は、水圧アクチュエータ36を有し、この水圧アクチュエータ36の駆動により、スライドフレーム33に対しプラグ支持アーム35をY軸方向に移動させる。したがって、制御装置10は、前述したX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構34の駆動により、プラグ支持アーム35で支持された閉止プラグ5の位置(詳細には、当て板4のガス抜き穴4aに対する閉止プラグ5のX軸方向及びY軸方向の位置)を調整するようになっている。
【0030】
プラグ支持アーム35は、スライドフレーム33にY軸方向移動機構34を介し設けられたアーム起端部35aと、このアーム起端部35aに回動ステー35b及び一対の連結ステー35cを介しZ軸方向に回動可能に連結されたアーム回動部35dと、このアーム回動部35dの先端部に設けられ、閉止プラグを保持し略Z軸廻りに回転可能なプラグ回転部35eとで構成されている。
【0031】
プラグ支持アーム35のプラグ回転部35eには、閉止プラグ5のヘッド部5bが嵌合する凹部(図示せず)が形成されており、閉止プラグ5のネジ部5aを支持可能なプラグ支持機構37が設けられている。プラグ支持機構37は、閉止プラグ5のネジ部5aに係合するとともに、プラグ回転部35eとの間で閉止プラグ5のヘッド部5bを遊嵌する係合部37aと、この係合部37aを略Y軸方向に移動させる駆動機構とを有している。この駆動機構は、詳細を図示しないが、水圧アクチュエータを有し、この水圧アクチュエータの駆動により、係合部37aを移動させて閉止プラグ5のヘッド部5bに係合させるか、若しくは離脱させるようになっている。すなわち、例えば閉止プラグ5のネジ部5aが当て板4のガス抜き穴4aに螺合していない取付状況の準備段階では、係合部37aを閉止プラグ5のネジ部5aに係合させて閉止プラグ5を支持し、一方、例えば閉止プラグ5のネジ部5aが当て板4のガス抜き穴4aに螺合した取付状況の途中段階では、最終段階で係合部37aが邪魔となるため、係合部37aを閉止プラグ5のネジ部5aから離脱させるようになっている。
【0032】
プラグ支持アーム35のアーム起端部35aには、回動ステー35bを介しアーム回動部35dをZ軸方向に回動させるプラグ押付機構が設けられている。プラグ押付機構は、詳細を図示しないが、水圧アクチュエータを有し、この水圧アクチュエータの駆動により、アーム起端部35aに対しアーム回動部35dをZ軸方向に回動させる。これにより、閉止プラグ5を当て板4のガス抜き穴4aに押し付ける力、又は閉止プラグ5を当て板4のガス抜き穴4aから引き抜く力を付与するようになっている。
【0033】
プラグ支持アーム35のアーム回動部35dには、プラグ回転部35eを回転させるプラグ回転機構38が設けられている。プラグ回転機構38は、アーム回動部35dに設けられた例えば一対の水圧アクチュエータ39A,39Bを有している。そして、例えば上述したプラグ押付機構によって押し付け力を付与しつつ、プラグ回転機構38の水圧アクチュエータ39Aを駆動してプラグ回転部35eを正方向に回転させることにより、閉止プラグ5を当て板4のガス抜き穴4aに取り付けることができる。一方、例えばプラグ押付機構によって引き抜き力を付与しつつ、プラグ回転機構38の水圧アクチュエータ39Bを駆動してプラグ回転部35eを逆方向に回転させることにより、閉止プラグ5を当て板4のガス抜き穴4aから取り外すことができるようになっている。
【0034】
スライドフレーム33には、閉止プラグ5を照らす照明40と、閉止プラグ5をX軸方向から撮像する監視カメラ41とが設けられ、プラグ支持アーム35のアーム回動部35dには、閉止プラグ5をY軸方向から撮像する監視カメラ(図示せず)が設けられている。監視カメラ41等の映像は、信号線(図示せず)を介し制御装置10に送信されて監視モニタに表示される。これにより、作業者は、閉止プラグ5の位置や取付作業状況等を目視確認できるようになっている。
【0035】
図5は、水中溶接装置8の全体構造を表す斜視図であり、図6は、水中溶接装置8の隔壁内の概略構造を表す部分拡大図である。
【0036】
これら図5及び図6において、水中溶接装置8(本実施形態では、固体隔壁式水中乾式TIG溶接装置と称するもの)は、略枠状の本体フレーム42と、この本体フレーム42の下側(図5中下側)に設けられ、冷却水配管3に着座する一対の着座フレーム43L,43Rと、これら着座フレーム43L,43Rにそれぞれ接続され、上下複数箇所でプール内壁2に当接して本体フレーム42の姿勢をプール内壁2に対し平行とする姿勢調整機構44L,44Rと、着座フレーム43L,43Rにそれぞれ設けられ、冷却水配管3をクランプするクランプ機構45L,45Rとを備えている。
【0037】
姿勢調整機構44L(又は44R、以降、この段落の括弧内の対応同じ)は、着座フレーム43L(又は43L)に接続され、上下方向に延在する一対のローラアーム46aと、これらローラアーム46aの両側端部にそれぞれ回転可能に軸支されたローラ46bとを有している。そして、上下のローラ46bがプール内壁2に当接することで、本体フレーム42の姿勢がプール内壁2に対し平行となる。クランプ機構45L(又は45R、以降、この段落の括弧内の対応同じ)は、着座フレーム43L(又は43L)に回動可能に設けられた把持アーム47aと、この把持アーム47aを回動させる空圧アクチュエータ47bとを有している。空圧アクチュエータ47bは、ホースを介しオペレーションフロア9から供給された空気によって駆動するものであり、制御装置10によって空圧アクチュエータ47bへの空気の供給が制御されている(なお、後述する他の空圧アクチュエータも同様)。そして、空圧アクチュエータ47bの駆動により、把持アーム47aが回動して冷却水配管3をクランプする。その結果、本体フレーム42の姿勢をプール内壁2に対し平行としつつ、本体フレーム42を冷却水配管3に固定するようになっている。
【0038】
また、水中溶接装置8は、本体フレーム42の枠内に配置され、本体フレーム42にX軸方向移動機構を介し設けられた第1スライド部48と、本体フレーム42の枠内に配置され、第1スライド部48にY軸方向移動機構を介し設けられた第2スライド部49と、この第2スライド部49に第1のZ軸方向移動機構を介し設けられた溶接ユニット50と、本体フレーム42の枠内に配設され溶接ワイヤ(溶加材)を収納するワイヤボックス51と、本体フレーム42の枠内に配設された電源ボックス52とを備えている。
【0039】
X軸方向移動機構は、詳細を図示しないが、電動アクチュエータ(詳細には、制御装置10から信号線を介し出力された電気信号によって駆動するものである。なお、後述する他の電アクチュエータも同様)を有し、この電動アクチュエータの駆動により、本体フレーム42に対し第1スライド部をX軸方向に移動させるようになっている。Y軸方向移動機構は、詳細を図示しないが、電動アクチュエータを有し、この電動アクチュエータの駆動により、第1スライド部48に対し第2スライド部49をY軸方向に移動させるようになっている。第1のZ軸方向移動機構は、詳細を図示しないが、電動アクチュエータを有し、この電動アクチュエータの駆動により、第2スライド部49に対し溶接ユニット50をZ軸方向に移動させる。したがって、制御装置10は、前述した第1のZ軸方向移動機構の駆動により、後述する溶接ユニット50の隔壁53を当て板4やプール内壁2に押し付け、前述したX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構の駆動により、溶接ユニット50をX軸方向及びY軸方向に移動させるようになっている。
【0040】
溶接ユニット50は、本体フレーム42(及び冷却水配管3)とプール内壁2との間に配置されるケーシング54と、このケーシング54の下方側(図5中下側)におけるプール内壁2に対向する面に立設され、当て板4の局部及び閉止プラグ5の全体を覆うように気相空間を形成するための環状の隔壁53とを備えている。隔壁53は、先端側部分に形成され弾力性があり摩擦力が少ないカーボンフェルトと、基端側部分に形成され弾力性がありかつカーボンフェルトに比べ透過性が低いスポンジとで構成されている。
【0041】
ケーシング54には、隔壁53の内部に連通する開口が形成されており、その開口付近には、溶接トーチ55、ワイヤノズル56、照明57、及び監視カメラ58が収納されている(図6参照)。
【0042】
ワイヤボックス51には、ホース59等を介し溶接ユニット50のワイヤノズル56に溶接ワイヤを供給するワイヤ供給機構が設けられている。溶接ワイヤ供給機構は、詳細を図示しないが、電動アクチュエータを有し、この電動アクチュエータの駆動により、溶接ワイヤをワイヤノズル56に供給して溶接トーチ55の先端近傍に導出させるようになっている。
【0043】
また、ワイヤボックス51は、オペレーションフロア9からホースを介し不活性ガス等(詳細には、不活性ガス及び乾燥空気のうち少なくとも一方を選択可能)が供給されており、ワイヤノズル56は、ホース59等を介しワイヤボックス51から不活性ガス等が供給されて、隔壁53の内部に不活性ガス等を噴出するようになっている。また、ケーシング54内にも、ワイヤボックス51に不活性ガス等を供給するホースとは別系統のホースを介し不活性ガス等が供給されるようになっている。これにより、隔壁53をプール内壁2に押し付けた状態にて隔壁53の内部に気相空間を形成することができ、この隔壁53内における当て板4の周縁部や閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部を溶接トーチ55で溶接することができるようになっている。なお、制御装置10は、不活性ガスの圧力及び流量と乾燥空気の圧力及び流量をそれぞれ制御するようになっている。
【0044】
また、当て板4の周縁部や閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部を溶接する溶接方向(本実施形態では、X軸方向及びY軸方向の2方向)に対応するため、溶接トーチ55に対するワイヤノズル56の位置を切り換えるワイヤ位置切換機構が設けられている。ワイヤ位置切換機構は、詳細を図示しないが、空圧アクチュエータを有し、この空圧アクチュエータの駆動により、溶接トーチ55に対するワイヤノズル56の位置(言い換えれば、溶接ワイヤの供給位置)を切り換える。すなわち、例えばX軸方向に溶接する場合は、溶接トーチ55に対する溶接ワイヤの供給位置を図6に示す左側位置に切り換え、一方、例えばY軸方向に溶接する場合は、後述の図11に示す上側位置に切り換えるようになっている。
【0045】
監視カメラ58は、ワイヤノズル56の位置も含め隔壁53の内部(詳細には、プール内壁2、当て板4、閉止プラグ5、又は溶接トーチ55等)を撮像し、その映像は信号線を介し制御装置10に送信されて監視モニタに表示される。なお、監視カメラ58の前方には、光を軽減するフィルタカバーの開閉機構(図示せず)が設けられており、溶接作業の準備段階、中断段階、及び終了段階だけでなく、強い光が発せられる溶接作業中の状況も撮像できるようになっている。
【0046】
溶接トーチ55は、例えばアーク電極(タングステン電極)を有するアーク溶接方式のものであり、この溶接トーチ55をZ軸方向に移動させる第2のZ軸方向移動機構が設けられている。第2のZ軸方向移動機構は、詳細を図示しないが、電動アクチュエータを有し、この電動アクチュエータの駆動により、ケーシング54に対し溶接トーチ55をZ軸方向に移動させるようになっている。
【0047】
制御装置10は、例えばアーク溶接におけるアーク長を一定に保つことを目的としてアーク電圧制御(AVC:Arc Voltage Control)を行う場合、アーク電圧の検出値と予め設定された基準電圧とを比較し、これに応じて第2のZ軸方向移動機構を駆動して溶接トーチ55のZ軸方向位置を制御し、またワイヤ供給機構による溶接ワイヤの供給速度を制御するようになっている。
【0048】
また、制御装置10は、例えば当て板4とプール内壁2との隙間寸法を検出する場合、上述した第2のZ軸方向移動機構(並びに上述したX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構等)を駆動して溶接トーチ55を当て板4やプール内壁2に当接させる。このとき、溶接トーチ55が当て板4やプール内壁2に当接すると電気的に導通される事象を利用して、第2のZ軸方向移動機構(並びに上述したX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構等)を自動停止させている。そして、制御装置10は、当て板4やプール内壁2にそれぞれ当接させたときの溶接トーチ55のZ軸方向の位置を演算し、この溶接トーチ55のZ軸方向の位置をX軸方向及びY軸方向の位置と関連づけて記憶する。そして、当て板4に当接した溶接トーチ55のZ軸方向位置とプール内壁2に当接した溶接トーチ55のZ軸方向位置との差分を演算し、この差分から予め記憶された当て板4の厚み寸法を差し引くことにより、当て板4とプール内壁2との隙間寸法を演算し、その演算値を監視モニタに表示するようになっている。
【0049】
また、制御装置10は、例えば当て板4の周縁部や閉止プラグの周縁部を溶接した溶接部のノド厚を検出する場合、上述した第2のZ軸方向移動機構(並びに上述したX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構等)を駆動して溶接トーチ55を溶接部の止端に当接させる。このとき、溶接トーチ55が溶接部に当接すると電気的に導通される事象を利用して、第2のZ軸方向移動機構(並びに上述したX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構等)を自動停止させている。そして、制御装置は10、溶接部の止端にそれぞれ当接させたときの溶接トーチ55のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の位置を演算して記憶する。そして、溶接部の止端に当接した溶接トーチ55の位置に基づき溶接部のノド厚を演算し、その演算値を監視モニタに表示するようになっている。
【0050】
なお、上記において、水中溶接装置8のワイヤノズル56は、特許請求の範囲記載の隔壁の内部にガスを供給するガス供給手段を構成し、かつ、溶接トーチの近傍に溶加材を供給する溶加材供給手段を構成する。また、水中溶接装置8のX軸方向移動機構、第1スライド部、Y軸方向移動機構、第2スライド部、及び第1のZ軸方向移動機構は、溶接ユニットを移動させる第1の溶接移動機構を構成する。また、水中溶接装置8の第2のZ軸方向移動機構は、溶接トーチを移動させる第2の溶接移動機構を構成する。
【0051】
次に、本実施形態の水中補修システムを用いた水中補修方法を図7〜図12により説明する。この水中補修方法は、大別して、当て板の配置工程、当て板の仮付工程、当て板の溶接工程、閉止プラグの取付工程、及び閉止プラグの溶接工程を有する。
【0052】
(1)当て板の配置工程(図7参照)
作業者は、オペレーションフロア9上にて、まず、当て板4の外観に異常がないことを確認する。なお、当て板4の設置面(裏面)の形状は、プール内壁2の被補修部に合わせることが好ましい。また、当て板4の厚み寸法を計測し、その計測値を制御装置10に入力し記憶させる。
【0053】
そして、制御装置10によって、当て板支持装置6の当て板支持アーム16の先端部に取り付けられた当て板保持ユニット17の当て板保持機構19を駆動させ、当て板保持機構19の吸着パットが当て板4を吸着して保持する。その後、作業者は、クレーン11で当て板支持装置6をプール1内に降ろし、当て板支持装置6で保持された当て板4をプール内壁2の被補修部へ配置する。そして、制御装置10によって当て板支持装置6の本体固定機構13を駆動させ、本体固定機構13の吸着パット13aがプール内壁2に吸着し、当て板支持装置6を固定する。このとき、作業者は、本体固定機構13にそれぞれホース(図示せず)を介し接続された圧力計(図示せず)により吸着パット13a内の圧力を確認し、これによって全ての本体固定機構13の吸着パット13aがプール内壁2に吸着したかどうかを確認する。
【0054】
そして、作業者は、監視モニタに表示された当て板支持装置6の監視カメラ24等の映像により当て板4の位置を確認し、必要に応じ、制御装置10によって当て板支持装置6のX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構を駆動させて当て板支持アーム16を移動し、当て板4のX軸方向及びY軸方向の位置を調整する。そして、制御装置10によって当て板支持装置6の当て板押付機構21を駆動させて当て板支持アーム16を回動し、当て板押付部20を当て板4の中央部に当接させて当て板4をプール内壁2に押し付ける。そして、作業者は、当て板4がプール内壁2に押し付けられた状態を監視モニタで確認した後、当て板保持ユニット17を当て板支持装置6から取り外して回収する。
【0055】
そして、例えば当て板4の4隅を含め複数箇所における当て板4とプール内壁2との隙間寸法を検出することを意図して、制御装置10によって検出器移動機構27L,28L又は27R,28Rを駆動させて検出器26L又は26RのX軸方向及びY軸方向の位置を制御し、検出器26L又は26Rの接触子25が当て板4やプール内壁2に当接したときのZ軸方向位置を検出する。制御装置10は、それら検出結果及び予め記憶された当て板4の厚み寸法に基づき、当て板4とプール内壁2との隙間寸法を演算し、その演算値を監視モニタに表示する。これにより、作業者は、例えば当て板4とプール内壁2との隙間寸法が大きくて溶接できない状況になっていないかどうかを確認する。
【0056】
(2)当て板の仮付工程(図8参照)
作業者は、クレーン11で水中溶接装置8をプール1内に降ろし、水中溶接装置8を冷却水配管3に着座させる。このとき、水中溶接装置8の溶接ユニット50内への水の侵入を最小限とするため、溶接ユニット50のケーシング54内に乾燥空気を供給するとともに、ワイヤノズル56等を介し溶接ユニット50の隔壁53内に乾燥空気を供給する。また、作業者は、監視モニタに表示された水中溶接装置8の監視カメラ58の映像により溶接ユニット50の位置を確認し、水中溶接装置8の配置を調整する。その後、制御装置10によって水中溶接装置8のクランプ機構45L,45Rを駆動させて把持アーム47aが冷却水配管3をクランプし、水中溶接装置8を固定する。
【0057】
そして、制御装置10によって水中溶接装置8の第1のZ軸方向移動機構を駆動させ、溶接ユニット50の隔壁53を当て板4やプール内壁2に押し付ける。これにより、隔壁53内に乾燥空気が充満し、気相空間が形成される。そして、制御装置10によって溶接ユニット50(詳細には、隔壁53及びケーシング54)へ供給する乾燥空気を不活性ガスに切り換え、その後、X軸方向移動機構及びY軸方向移動機構等を駆動させて溶接ユニット50を移動させつつ、隔壁53内における当て板4の周縁部の複数箇所を溶接トーチ55で溶接し、当て板4を仮付けする。また、作業者は、監視モニタに表示された水中溶接装置8の監視カメラ58の映像により、当て板4の周縁部に溶接された溶接ビードに異常がないかどうかを確認する。
【0058】
(3)当て板の溶接工程(図9参照)
水中溶接装置8の溶接ユニット50へ供給する不活性ガスを乾燥空気に切り換えた後、制御装置10によって水中溶接装置8のクランプ機構45L,45Rを駆動させて把持アーム47aのクランプを解除し、水中溶接装置8をプール内壁2の被補修部から一旦離脱させる。その後、制御装置10によって当て板支持装置6の本体固定機構13を停止させ、当て板支持装置6を回収する。そして、上述と同様の手順にて、再び、水中溶接装置8を冷却水配管3に固定し、溶接ユニット50の隔壁53を当て板4やプール内壁に押し付ける。
【0059】
そして、例えば当て板4の4隅を含め複数箇所における当て板4とプール内壁との隙間寸法を検出することを意図して、制御装置10によって水中溶接装置8のX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構を駆動させて溶接トーチ55のX軸方向及びY軸方向の位置を制御し、第2のZ軸方向移動機構(及び第1のZ軸方向移動機構)を駆動させて当て板4やプール内壁2に当接させたときの溶接トーチ55のZ軸方向位置を演算する。制御装置10は、それら演算値及び予め記憶された当て板4の厚み寸法に基づき、当て板4とプール内壁2との隙間寸法を演算し、その演算値を監視モニタに表示する。これにより、作業者は、例えば当て板4とプール内壁2との隙間寸法が大きくて溶接できない状況になっていないかどうかを確認する。
【0060】
そして、例えば当て板4の周縁部に初層溶接(第1層溶接)を行うことを意図して、作業者は、監視モニタに表示された水中溶接装置8の監視カメラ58の映像により溶接トーチ55の位置を確認しつつ、制御装置10によってX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構を駆動させて溶接トーチ55を溶接開始位置から溶接線に沿って溶接終了位置まで移動させ、その溶接通過点を制御装置10に記憶させる(教示作業)。その後、溶接アークが発生しない状態の溶接トーチ55を制御装置10に記憶された溶接通過点に基づいて移動させ、事前確認する。そして、溶接ユニット50へ供給する乾燥空気を不活性ガスに切り換え、当て板4の周縁部に初層溶接を行わせる。
【0061】
その後、作業者は、監視モニタに表示された水中溶接装置8の監視カメラ58の映像により、当て板4の周縁部に溶接された初層溶接ビードに異常がないかどうかを確認する。また、上述と同様の手順にて、水中溶接装置8の溶接ユニット50へ供給する不活性ガスを乾燥空気に切り換え、水中溶接装置8をプール内壁2の被補修部から一旦離脱させる。その後、オペレーションフロア9からプール1内に水中カメラ(図示せず)を降ろし、この水中カメラの映像により当て板4の周縁部に溶接された初層溶接ビードに異常がないかどうかを確認する。そして、上述と同様の手順にて、再び、水中溶接装置8を冷却水配管3に固定し、溶接ユニット50の隔壁53を当て板4やプール内壁に押し付ける。
【0062】
そして、例えば当て板4の周縁部に積層溶接(第2層溶接)を行うことを意図して、作業者は、監視モニタに表示された水中溶接装置8の監視カメラ58の映像により溶接トーチ55の位置を確認しつつ、制御装置10によってX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構を駆動させて溶接トーチ55を溶接開始位置から溶接線に沿って溶接終了位置まで移動させ、その溶接通過点を制御装置10に記憶させる(教示作業)。その後、溶接アークが発生しない状態の溶接トーチ55を制御装置10に記憶された溶接通過点に基づいて移動させ、事前確認する。そして、溶接ユニット50へ供給する乾燥空気を不活性ガスに切り換え、当て板4の周縁部に積層溶接を行わせる。
【0063】
その後、作業者は、監視モニタに表示された水中溶接装置8の監視カメラ58の映像により、当て板4の周縁部に溶接された積層溶接ビードに異常がないかどうかを確認する。そして、当て板4の周縁部における溶接作業が全て終了したら(なお、上記においては第2層溶接までの場合を例にとって説明したが、上述と同様の手順を繰り返して第3層溶接以降を行ってもよい)、水中溶接装置8の溶接ユニット50へ供給する不活性ガスを乾燥空気に切り換える。
【0064】
そして、例えば当て板4の周縁部に溶接された積層溶接部のノド厚を検出することを意図して、制御装置10によって水中溶接装置8のX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構を駆動させて溶接トーチ55のX軸方向及びY軸方向の位置を制御し、第2のZ軸方向移動機構(及び第1のZ軸方向移動機構)を駆動させ、積層溶接部の止端に当接させたときの溶接トーチ55の位置を演算する。制御装置10は、それら演算値に基づき積層溶接部のノド厚を演算し、その演算値を監視モニタに表示する。これにより、作業者は、当て板4の周縁部に溶接された積層溶接部のノド厚が適切であるかどうかを確認する。その後、上述と同様の手順にて、水中溶接装置8をプール内壁2の被補修部から一旦離脱させる。
【0065】
(4)閉止プラグの取付工程(図10参照)
作業者は、オペレーションフロア9上にて、プラグ取付装置7のプラグ支持アーム35のプラグ回動部35eに閉止プラグ5を保持させる。その後、クレーン11でプラグ取付装置7をプール1内に降ろし、プラグ取付装置6で保持された閉止プラグ5を当て板4のガス抜き穴4aへ配置させる。そして、制御装置10によってプラグ取付装置7の本体固定機構32を駆動させ、本体固定機構32の吸着パット32aがプール内壁2に吸着し、プラグ取付装置7を固定する。このとき、作業者は、本体固定機構32にそれぞれホース(図示せず)を介し接続された圧力計(図示せず)により吸着パット32a内の圧力を確認し、これによって全ての本体固定機構32の吸着パット32aがプール内壁2に吸着したかどうかを確認する。
【0066】
そして、作業者は、監視モニタに表示されたプラグ取付装置7の監視カメラ41等の映像により閉止プラグ5の位置を確認し、必要に応じ、制御装置10によってプラグ取付装置7のX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構34を駆動させてプラグ支持アーム35を移動し、閉止プラグ5のX軸方向及びY軸方向の位置を調整する。そして、制御装置10によってプラグ取付装置7のプラグ押付機構を駆動させてプラグ支持アーム35のアーム回動部35dを回動し、閉止プラグ5を当て板4のガス抜き穴4に押し付ける。作業者は、監視モニタに表示されたプラグ取付装置7の監視カメラ41等の映像により、閉止プラグ5が当て板4のガス抜き穴4aに押し付けられた状態を確認する。その後、制御装置10によってプラグ取付装置7のプラグ回転機構38を駆動させてプラグ回転部35eを回転させ、閉止プラグ5のネジ部5aを当て板4のガス抜き穴4aに螺合させる。このとき、作業者は、監視モニタに表示されたプラグ取付装置7の監視カメラ41等の映像により閉止プラグ5の取付状況を確認し、取付状況の途中段階になると、プラグ支持機構37の係合部37aを閉止プラグ5のネジ部5aから離脱させる。そして、閉止プラグ5を当て板4のガス抜き穴4aに取り付けた後、制御装置10によってプラグ取付装置7の本体固定機構32を停止させ、プラグ取付装置7を回収する。
【0067】
(5)閉止プラグの溶接工程(図11及び図12参照)
上述と同様の手順にて、再び、水中溶接装置8を冷却水配管3に固定し、溶接ユニット50の隔壁53を当て板4に押し付ける。そして、例えば閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部に初層溶接(第1層溶接)を行うことを意図して、作業者は、監視モニタに表示された水中溶接装置8の監視カメラ58の映像により溶接トーチ55の位置を確認しつつ、制御装置10によってX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構を駆動させて溶接トーチ55を溶接開始位置から溶接線に沿って溶接終了位置まで移動させ、その溶接通過点を制御装置10に記憶させる(教示作業)。その後、溶接アークが発生しない状態の溶接トーチ55を制御装置10に記憶された溶接通過点に基づいて移動させ、事前確認する。そして、溶接ユニット50へ供給する乾燥空気を不活性ガスに切り換え、閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部に初層溶接を行わせる。
【0068】
その後、作業者は、監視モニタに表示された水中溶接装置8の監視カメラ58の映像により、閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部に溶接された初層溶接ビードに異常がないかどうかを確認する。また、上述と同様の手順にて、水中溶接装置8の溶接ユニット50へ供給する不活性ガスを乾燥空気に切り換え、水中溶接装置8をプール内壁2の被補修部から一旦離脱させる。その後、オペレーションフロア9からプール1内に水中カメラを降ろし、この水中カメラの映像により閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部に溶接された初層溶接ビードに異常がないかどうかを確認する。そして、上述と同様の手順にて、再び、水中溶接装置8を冷却水配管3に固定し、溶接ユニット50の隔壁53を当て板4に押し付ける。
【0069】
そして、例えば閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部に積層溶接(第2層溶接)を行うことを意図して、作業者は、監視モニタに表示された水中溶接装置8の監視カメラ58の映像により溶接トーチ55の位置を確認しつつ、制御装置10によってX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構を駆動させて溶接トーチ55を溶接開始位置から溶接線に沿って溶接終了位置まで移動させ、その溶接通過点を制御装置10に記憶させる(教示作業)。その後、溶接アークが発生しない状態の溶接トーチ55を制御装置10に記憶された溶接通過点に基づいて移動させ、事前確認する。そして、溶接ユニット50へ供給する乾燥空気を不活性ガスに切り換え、閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部に積層溶接を行わせる。
【0070】
その後、作業者は、監視モニタに表示された水中溶接装置8の監視カメラ58の映像により、閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部に溶接された積層溶接ビードに異常がないかどうかを確認する。そして、閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部における溶接作業が全て終了したら(なお、上記においては第2層溶接までの場合を例にとって説明したが、上述と同様の手順を繰り返して第3層溶接以降を行ってもよい)、水中溶接装置8の溶接ユニット50へ供給する不活性ガスを乾燥空気に切り換える。
【0071】
そして、例えば閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部に溶接された積層溶接部のノド厚を検出することを意図して、制御装置10によって水中溶接装置8のX軸方向移動機構及びY軸方向移動機構を駆動させて溶接トーチ55のX軸方向及びY軸方向の位置を制御し、第2のZ軸方向移動機構(及び第1のZ軸方向移動機構)を駆動させ、積層溶接部の止端に当接させたときの溶接トーチ55の位置を演算する。制御装置10は、それら演算値に基づき積層溶接部のノド厚を演算し、その演算値を監視モニタに表示する。これにより、作業者は、閉止プラグ5のヘッド部5bの周縁部に溶接された積層溶接部のノド厚が適切であるかどうかを確認する。その後、上述と同様の手順にて、水中溶接装置8を回収する。
【0072】
以上のようにして、本実施形態においては、プール内壁2の被補修部に当て板4を溶接して補修する補修作業を狭隘部でも実施することができる具体的な構成を実現し、これによって溶接部に噴き出し穴が生じるのを防止することができる。また、プール1内の燃料を移設したりプール1内に放射線遮蔽設備を仮設したり、大量の水を抜く必要がなく、作業時間の短縮化を図ることができる。また、当て板支持装置6、水中溶接装置7、及びプラグ取付装置8を遠隔操作してプール内壁2の補修作業を実施するので、作業者がプール1内に立ち入る必要がなく、作業者の被爆低減を図ることができる。
【0073】
また、本実施形態では、隔壁53は、先端側部分に形成され弾力性があり摩擦力が少ないカーボンフェルトと、基端側部分に形成され弾力性がありかつカーボンフェルトに比べ透過性が低いスポンジとで構成されている。これにより、例えばプール内壁2の被補修部を直接溶接して補修するような場合(言い換えれば、当て板4がないぶんだけ隔壁53の押し付け量が少なくなり、隔壁53を形成するカーボンフェルトからのガス洩れが生じやすい場合)でも、隔壁53内の気相空間を維持することができる。
【0074】
なお、上記一実施形態において、水中溶接装置8の隔壁53はケーシング54に固定した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば公知のジンバル機構(図示せず)を介し傾斜可能に設け、隔壁53からのガス漏れを低減するようにしてもよい。
【0075】
また、上記一実施形態においては、水中溶接装置7は、アーク溶接方式の溶接トーチ55を設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、これに代えて、例えば集光レンズ等を有するレーザ溶接方式の溶接トーチを設けてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0076】
また、上記一実施形態においては、水中溶接装置8は、本体フレーム42を冷却水配管3に固定するための手段として、クランプ機構45L,45Rを設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えばプール内壁2と冷却水配管3との間に配置され、プール内壁2及び冷却水配管3に押付力を付与するような機構を設けてもよい。また、例えば吸着パット及びエジェクタを有する本体固定機構を備えてもよい。また、上記一実施形態においては、狭隘部であるプール内壁2の被補修部に当て板4を溶接して補修する場合を例にとって説明したが、これに限られず、狭隘部となっていないプール内壁2の被補修部を補修する場合に適用してもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の水中補修システムの一実施形態の構成の一部を燃料貯蔵プールとともに表す概略図である。
【図2】本発明の水中補修システムの一実施形態における当て板の構造を表す斜視図である。
【図3】本発明の水中補修システムの一実施形態を構成する当て板支持装置の全体構造を表す斜視図である。
【図4】本発明の水中補修システムの一実施形態を構成するプラグ取付装置の全体構造を表す斜視図である。
【図5】本発明の水中補修システムの一実施形態を構成する水中溶接装置の全体構造を表す斜視図である。
【図6】図5中の水中溶接装置の隔壁内の概略構造を表す部分拡大図である。
【図7】本発明の水中補修システムの一実施形態における当て板の配置工程を説明するための斜視図である。
【図8】本発明の水中補修システムの一実施形態における当て板の仮付工程を説明するための斜視図である。
【図9】本発明の水中補修システムの一実施形態における当て板の溶接工程を説明するための斜視図である。
【図10】本発明の水中補修システムの一実施形態における閉止プラグの取付工程を説明するための斜視図である。
【図11】本発明の水中補修システムの一実施形態における閉止プラグの溶接工程を説明するための斜視図である。
【図12】図10中の水中溶接装置の隔壁内を表す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0078】
2 プール内壁
4 当て板
4a ガス抜き穴
5 閉止プラグ
5a ネジ部
5b ヘッド部
6 当て板支持装置
7 プラグ取付装置
8 水中溶接装置
10 制御装置
16 当て板支持アーム
17 当て板保持ユニット
19 当て板保持機構
20 当て板押付部
25 接触子
26L,26R 検出器
27L,27R 検出器移動機構
28L,28R 検出器移動機構
35 プラグ支持アーム
38 プラグ回転機構
43L,43R 着座フレーム
44L,44R 姿勢調整機構
45L,45R クランプ機構
48 第1スライド部
49 第2スライド部
50 溶接ユニット
53 隔壁
55 溶接トーチ
56 ワイヤノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プール内壁の被補修部に当て板を溶接して補修する水中補修システムであって、
前記当て板を前記プール内壁の被補修部に配置して支持する当て板支持装置と、
前記当て板のガス抜き穴に閉止プラグを取り付けるプラグ取付装置と、
前記当て板支持装置で支持された前記当て板の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ、前記気相空間における前記当て板の周縁部を溶接し、その後、前記プラグ取付装置で前記当て板のガス抜き穴に取り付けられた前記閉止プラグの全体を覆うように気相空間を形成しつつ、前記閉止プラグの周縁部を溶接する水中溶接装置と、
前記当て板支持装置、前記プラグ取付装置、及び前記水中溶接装置を遠隔操作する制御装置とを備えたことを特徴とする水中補修システム。
【請求項2】
請求項1記載の水中補修システムにおいて、前記当て板支持装置は、本体に脱着脱可能に設けられ、前記当て板を保持可能な当て板保持機構を有する当て板保持ユニットと、前記当て板保持機構と干渉しないように前記当て板の中央部に当接可能な当て板押付部と、前記当て板押付部で前記当て板を前記プール内壁に押し付ける当て板押付機構とを備えたことを特徴とする水中補修システム。
【請求項3】
請求項1記載の水中補修システムにおいて、前記当て板支持装置は、検出器移動機構によって移動可能に設けられ、接触子を前記当て板及び前記プール内壁にそれぞれ当接させたときの前記接触子の位置を検出する検出器を備え、前記制御装置は、前記検出器の検出結果及び予め記憶された前記当て板の厚み寸法に基づき、前記当て板と前記プール内壁との隙間寸法を演算する第1の隙間演算手段を備えたことを特徴とする水中補修システム。
【請求項4】
請求項1記載の水中補修システムにおいて、前記閉止プラグは、前記当て板のガス抜き穴に螺合可能なネジ部を有し、前記プラグ取付装置は、前記閉止プラグを前記当て板のガス抜き穴に押し付けるプラグ押付機構と、前記閉止プラグを回転させるプラグ回転機構とを備えたことを特徴とする水中補修システム。
【請求項5】
請求項1記載の水中補修システムにおいて、前記水中溶接装置は、前記プール内壁の近傍に設けられた構造物に本体を着座するための着座フレームと、前記着座フレームに接続され、前記プール内壁に複数箇所で当接して前記プール内壁に対する本体の姿勢を調整する姿勢調整機構と、前記着座フレームに設けられ前記構造物をクランプするクランプ機構とを備えたことを特徴とする水中補修システム。
【請求項6】
請求項1記載の水中補修システムにおいて、前記水中溶接装置は、前記当て板の局部及び前記閉止プラグの全体を覆うように気相空間を形成するための隔壁、前記隔壁の内部にガスを供給するガス供給手段、前記隔壁内における前記当て板の周縁部や前記閉止プラグの周縁部を溶接する溶接トーチ、及び前記溶接トーチの近傍に溶加材を供給する溶加材供給手段を備えた溶接ユニットと、前記溶接ユニットを移動させる第1の溶接移動機構とを備えたことを特徴とする水中補修システム。
【請求項7】
請求項6記載の水中補修システムにおいて、前記水中溶接装置の溶接ユニットは、前記当て板の周縁部及び前記閉止プラグの周縁部を溶接する溶接方向に対応し、前記溶接トーチに対する前記溶加材の供給位置を切り換える溶加材位置切換機構を備えたことを特徴とする水中補修システム。
【請求項8】
請求項6記載の水中補修システムにおいて、前記水中溶接装置の溶接ユニットは、前記溶接トーチを移動させる第2の溶接移動機構を備え、前記制御装置は、前記第1及び第2の溶接移動機構の駆動制御により前記溶接トーチを前記当て板及び前記プール内壁にそれぞれ当接させたときの前記溶接トーチの位置を演算し、それら演算値及び予め記憶された前記当て板の厚み寸法に基づき前記当て板と前記プール内壁との隙間寸法を演算する第2の隙間演算手段を備えたことを特徴とする水中補修システム。
【請求項9】
請求項6記載の水中補修システムにおいて、前記水中溶接装置の溶接ユニットは、前記溶接トーチを移動させる第2の溶接移動機構を備え、前記制御装置は、前記第1及び第2の溶接移動機構の駆動制御により前記溶接トーチを溶接部の止端にそれぞれ当接させたときの前記溶接トーチの位置を演算し、それら演算値に基づき前記溶接部のノド厚を演算する溶接部演算手段を備えたことを特徴とする水中補修システム。
【請求項10】
当て板支持装置、水中溶接装置、及びプラグ取付装置を遠隔操作して、プール内壁の被補修部に当て板を溶接して補修する水中補修方法であって、
前記当て板支持装置により、前記当て板を前記プール内壁の被補修部に配置して支持する手順と、
前記水中溶接装置により、前記当て板支持装置で支持された前記当て板の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ前記気相空間における前記当て板の周縁部を溶接する手順と、
前記プラグ取付装置により、前記プール内壁の被補修部に取り付けられた前記当て板のガス抜き穴に閉止プラグを取り付ける手順と、
前記水中溶接装置により、前記当て板のガス抜き穴に取り付けられた前記閉止プラグの全体を覆うように気相空間を形成しつつ前記閉止プラグの周縁部を溶接する手順とを有することを特徴とする水中補修方法。
【請求項11】
当て板支持装置、水中溶接装置、及びプラグ取付装置を遠隔操作して、プール内壁の被補修部に当て板を溶接して補修する水中補修方法であって、
前記当て板支持装置により、前記当て板を前記プール内壁の被補修部に配置して支持する手順と、
前記当て板支持装置で支持された前記当て板及び前記プール内壁にそれぞれ前記当て板支持装置の接触子を当接させたときの前記接触子の位置を検出し、その検出結果及び予め記憶された前記当て板の厚み寸法に基づき前記当て板と前記プール内壁との隙間寸法を第1の隙間演算手段で演算する手順と、
前記水中溶接装置により、前記当て板支持装置で支持された前記当て板の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ前記気相空間における前記当て板の周縁部を溶接する手順と、
前記プラグ取付装置により、前記プール内壁の被補修部に取り付けられた前記当て板のガス抜き穴に閉止プラグを取り付ける手順と、
前記水中溶接装置により、前記当て板のガス抜き穴に取り付けられた前記閉止プラグの全体を覆うように気相空間を形成しつつ前記閉止プラグの周縁部を溶接する手順とを有することを特徴とする水中補修方法。
【請求項12】
当て板支持装置、水中溶接装置、及びプラグ取付装置を遠隔操作して、プール内壁の被補修部に当て板を溶接して補修する水中補修方法であって、
前記当て板支持装置により、前記当て板を前記プール内壁の被補修部に配置して支持する手順と、
前記当て板支持装置で支持された前記当て板及び前記プール内壁にそれぞれ前記当て板支持装置の接触子を当接させたときの前記接触子の位置を検出し、その検出結果及び予め記憶された前記当て板の厚み寸法に基づき前記当て板と前記プール内壁との隙間寸法を第1の隙間演算手段で演算する手順と、
前記水中溶接装置により、前記当て板支持装置で支持された前記当て板の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ前記気相空間における前記当て板の周縁部の複数カ所を溶接する手順と、
前記プール内壁の被補修部に仮付けされた前記当て板及び前記プール内壁にそれぞれ前記水中溶接装置の溶接トーチを当接させたときの前記溶接トーチの位置を演算し、それら演算値及び予め記憶された前記当て板の厚み寸法に基づき前記当て板と前記プール内壁との隙間寸法を第2の隙間演算手段で演算する手順と、
前記水中溶接装置により、前記プール内壁の被補修部に仮付けされた前記当て板の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ前記気相空間における前記当て板の周縁部の全体を溶接する手順と、
前記プラグ取付装置により、前記プール内壁の被補修部に取り付けられた前記当て板のガス抜き穴に閉止プラグを取り付ける手順と、
前記水中溶接装置により、前記当て板のガス抜き穴に取り付けられた前記閉止プラグの全体を覆うように気相空間を形成しつつ前記閉止プラグの周縁部を溶接する手順とを有することを特徴とする水中補修方法。
【請求項13】
当て板支持装置、水中溶接装置、及びプラグ取付装置を遠隔操作して、プール内壁の被補修部に当て板を溶接して補修する水中補修方法であって、
前記当て板支持装置により、前記当て板を前記プール内壁の被補修部に配置して支持する手順と、
前記当て板支持装置で支持された前記当て板及び前記プール内壁にそれぞれ前記当て板支持装置の接触子を当接させたときの前記接触子の位置を検出し、その検出結果及び予め記憶された前記当て板の厚み寸法に基づき前記当て板と前記プール内壁との隙間寸法を第1の隙間演算手段で演算する手順と、
前記水中溶接装置により、前記当て板支持装置で支持された前記当て板の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ前記気相空間における前記当て板の周縁部の複数カ所を溶接する手順と、
前記プール内壁の被補修部に仮付けされた前記当て板及び前記プール内壁にそれぞれ前記水中溶接装置の溶接トーチを当接させたときの前記溶接トーチの位置を演算し、それら演算値及び予め記憶された前記当て板の厚み寸法に基づき前記当て板と前記プール内壁との隙間寸法を第2の隙間演算手段で演算する手順と、
前記水中溶接装置により、前記プール内壁の被補修部に仮付けされた前記当て板の局部を覆うように気相空間を形成して移動させつつ前記気相空間における前記当て板の周縁部の全体を溶接する手順と、
前記当て板の周縁部を溶接した溶接部の止端部に前記水中溶接装置の溶接トーチをそれぞれ当接させたときの前記溶接トーチの位置を演算し、それら演算値に基づき前記溶接部のノド厚を溶接部演算手段で演算する手順と、
前記プラグ取付装置により、前記プール内壁の被補修部に取り付けられた前記当て板のガス抜き穴に閉止プラグを取り付ける手順と、
前記水中溶接装置により、前記当て板のガス抜き穴に取り付けられた前記閉止プラグの全体を覆うように気相空間を形成しつつ前記閉止プラグの周縁部を溶接する手順と、
前記閉止プラグの周縁部を溶接した溶接部の止端部に前記水中溶接装置の溶接トーチをそれぞれ当接させたときの前記溶接トーチの位置を演算し、それら演算値に基づき前記溶接部のノド厚を溶接部演算手段で演算する手順とを有することを特徴とする水中補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−66635(P2009−66635A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239276(P2007−239276)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 溶接学会「溶接学会全国大会講演概要(PREPRINTS OF THE NATIONAL MEETING OF J.W.S.)、第80集、平成19年度春期全国大会」平成19年3月19日発行
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】