説明

水供給装置

【課題】ペルチェ素子の冷却部に水分を結露させて水を供給する場合、乾燥した場所では結露が発生しにくく水を供給することができず、逆に湿度が高い場所では、水が溜まり過ぎて大きな水滴が放出されることがあった。
【解決手段】ペルチェ素子の冷却部にアルミニウム繊維集合体を取り付けることによって、冷却部の表面積を大きくすることで、結露を発生するとともに大きな水滴はアルミニウム繊維集合体にしみこませることにより、大きな水滴が放出されることを防止することができるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペルチェ素子を使用してミストを発生するヘアドライヤや加湿器等の水供給部分に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明に使用されるペルチェ素子とは熱伝素子とも呼ばれているもので、電圧をかけると冷却効果が生まれる電子部品である。
ペルチェ素子は、稼動部がなく騒音を発生しないので、コンピュータのCPU等の冷却やワイン等の小型冷却庫等に用いられている。
【0003】
ヘアドライヤにペルチェ素子を採用した前例として特開2007−114685が提示されている。上記特許文献も含めた、従来例の構成を図3で説明する。
ファン92の駆動によって吸入口921から吸引されたエア912は、ヒータ91によって熱せられ熱風911となって排出口922から排出される。
【0004】
吸入口921から吸引されたエア912の一部はミスと発生路93に導かれミスト発生用エア912となってペルチェ素子20の脇を通り抜ける。ペルチェ素子20の冷却部にミスト発生ピン95が取り付けられており、ミスト発生ピン95が冷却して結露951を生じそれがミスト発生路93を通り抜けてきたミスト発生用エア912によって水分を含んだナノミストエア914となり、髪の毛に潤いを与える効果を発生する。
更にミスト発生ピン95に高電圧をかけミスト発生用エア912の下流側にアース電極96を設置するとマイナスイオン961を含んだナノミストエア914が発生し髪の毛に更に潤いを与えさらさらにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−114685
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらペルチェ素子20によって冷却されたミスト発生ピン95に発生した結露951だけでは安定的にミストが発生できないことがある。
特に乾燥した部屋では水分が発生しにくい場合があった。また、結露951が大量に発生した場合、ミスト発生用エア913によって大きな水滴が放出されることがあり安定したミストが放出されないと言うデメリットもあった。
【0007】
また、ミスト発生ピン95に電圧をかけてマイナスイオン961を多数発生するのが好ましいが、マイナスイオン961は、ミスト発生ピン95の先端部から発生する。そこで、鋭利な凸部が多数あるほうがマイナスイオン961を多く発生することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで大気中の水分を結露させて水を供給する装置であって、温度差を生じて水分を結露させるペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の冷却部に取り付けられた金属アルミニウム繊維集合体とによって構成されたことを特徴とする水供給装置を提供するものである。
【0009】
更に前記金属アルミニウム繊維集合体の金属アルミニウム繊維表面に結晶質参加皮膜を有していることを特徴とし、前記金属アルミニウム繊維集合体の金属アルミニウム繊維にマイクロアーク処理が施されていることを特徴とし、前記金属アルミニウム繊維集合体はガラス繊維やセラミック繊維の異種繊維との混合体であることを特徴とし、前記金属アルミニウム繊維集合体は異種材料を用いたメッシュ状もしくは板状等の形状で保護されていることを特徴とする水供給装置を提案するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ペルチェ素子20の冷却部にアルミ繊維集合体21を取り付けて、結露30をより多い表面積で得られるようにしたので、乾燥した部屋でも水分を安定して得られるようになった。
【0011】
また、冷却部に取り付けたアルミ繊維集合体21は熱伝導が良く、冷却効果が向上し、結露30を効率よく発生させることができる。更にアルミ繊維集合体21の繊維の中に結露30で発生した大きな水滴を吸収してしまうので、水滴として放出されることがなくミストエア313が安定する。
【0012】
更に、アルミ繊維集合体21は無数のアルミ繊維が集合したものであり、繊維の端部である鋭尖形凸部が多くマイナスイオン23を多く発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】アルミ繊維集合体21を取り付けたミストを発生するヘアドライヤの図である。
【図2】マイクロアーク処理方法を図示したものである。
【図3】マイクロアーク処理前と処理後のアルミ繊維の拡大写真である。
【図4】従来のミストエアを発生するヘアドライヤの図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施例としてヘアドライヤを用いて説明するが、ヘアドライヤのみならず、ミストエアを発生するイオン発生装置などにも使用することができる。
【実施例】
【0015】
図1に実施例としてヘアドライヤ10に本発明を使用した例を提示する。ファン30によって吸引口33から吸引されたエア31のほとんどはヒータ35を通過する際に熱せられ熱風311となって排出口34から排出し髪の毛に熱風を送る様に構成されている。
【0016】
吸引口33から吸引されたエア31の一部はミスト発生路18の流路の中に送られ、ミスト発生用のエアとして使用される。
【0017】
ミスト発生用のエア312はミスト発生路18に導かれて、ペルチェ素子20の冷却部に取り付けられたアルミニウム繊維集合体21に付着した結露40を含んだミストエア313となって排出口34近傍に排出し髪の毛に潤いを与えるものである。
【0018】
アルミニウム繊維集合体21は、線径100ミクロン程度のアルミニウム繊維を集合させて適度な空間を含有する程度に圧縮した集合体で、アルミニウム繊維の集合体であるので表面積が多く、結露40が多く発生するような密度に構成されている。
【0019】
アルミニウム繊維集合体21はメッシュや袋、箱などに詰め込まれてペルチェ素子20の冷却部に取り付けられる。メッシュ、袋、箱はアルミニウム以外の異種材料で製作され、アルミニウム繊維集合体21を保護するとともに補強している。
【0020】
アルミニウム繊維集合体21に電圧をかけてマイナスイオン23を発生することができる。実施例ではアルミ繊維集合体21にマイナスイオン発生手段を設けることによりペルチェ素子20に取り付けたアルミニウム繊維集合体21に付着した結露40をマイナスに帯電することになり、加湿空気をマイナスイオンに帯電させて整髪もしくは乾燥によりプラスに帯電した髪に引き寄せられて、より加湿空気を使用者の毛髪へ到達させることが可能となり、プラスに帯電した毛髪の電気力を打ち消すことができる。
【0021】
このときアルミニウム繊維集合体21には、繊維の端部が無数にあり、マイナスイオンを発生しやすい鋭尖形凸部が多く、従来よりも多くのマイナスイオンを発生することができる。
【0022】
本実施例ではアルミニウム繊維集合体21をアース電極とし、マイナスイオンピン22をミスト発生路18の下流に置くことによって結露40にマイナスイオン23を付着させてミストエア313として排出口34から排出する構成になっている。
【0023】
上記の逆の方法でマイナスイオンピン22をアース電極としてアルミニウム繊維集合体21をプラス極としてマイナスイオン23を放出するように構成することもできる。
【0024】
アルミニウムの表面は酸化皮膜で保護されており一般に耐食性は良いが、この皮膜は非常に薄いためそのままでは長期間の使用環境に耐えることができない。そこでアルマイト加工することによって酸化皮膜を強化することができる。
【0025】
しかし金属アルミニウム繊維は比表面積が大きい為、表面酸化を起こしやすい。従って空気中に放置するだけで酸化が進行し、繊維が劣化を起こしやがてその繊維形状を維持することさえ困難になる。
それに対し、厚い結晶質酸化皮膜(AL2O3)を繊維表面に形成することにより、繊維表面の酸化の進行を防止し、尚且つ結晶質による表面活性を得ることができる。
特に本発明においてはマイクロアーク処理(マイクロアーク酸化ともいう)と言う結晶質酸化が行われる。
【0026】
マイクロアーク酸化(以下MAOと称す)は陽極酸化(以下AOと称す)領域を超えた不連続な電気化学的酸化である。バルブ金属と呼ばれる金属群において実現する。MAO反応は前段階であるAO反応によりバルブ金属表面に形成された金属酸化物皮膜を利用し、高電圧負荷を可能とする。
金属酸化物の絶縁破棄をおこさせることにより、反応を実現する反応である。従って、AO反応は連続反応であり、MAO反応は不連続反応である。MAO反応では絶縁破棄による火花放電が観察でき、局部的高温反応場が実現する。
【0027】
その結果、バブル金属表面全体に結晶性のセラミック層が形成される。セラミック層の結晶種、形状、厚みなどは、電解溶液種や反応時間などの反応条件の選択により制御できる。
MAOの原理的装置図を図2の(1)に示す。陰極8には炭素、白金などの耐化学性のある導電材料を用い、陽極12はバブル金属である、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウムなどが用いられる。
バルブ金属の形状は任意でよい。陰極8と陽極12には定電流直流が印荷される。印荷電圧はバブル金属種により選ばれる。
火花放電の起こらないAO領域を通って火花放電が開始し、MAO領域に達するのは一般的に印荷後数分以内である。電解溶液11はバブル金属種に合わせて、単純もしくは混合無機塩水溶液が選ばれる。
【0028】
図2の(1)の装置において、通電すると数十秒から数分で陽極の試料表面全面で火花放電が開始する。このときをMAO開始時間(絶縁破壊DB開始時間)と、このときの電圧をMAO開始電圧と定義している。これらの過程を電圧と時間の関係として表したのが図2の(2)である。
【0029】
絶縁破壊DB電圧に達するまでの過程、及び、絶縁破壊DB電圧以下での印荷による反応領域はAO反応領域である。MAO反応領域に達すると、電圧がほぼ一定になり火花放電による振動を続ける。この電圧値はバブル金属種により決まる。例えば、アルミニウムの場合の中心電圧値は450ボルトである。
以上のような方法でアルミニウム繊維にマイクロアーク処理が施され、アルミニウム繊維集合体21に使用される。
【0030】
アルミニウム繊維にマイクロアーク処理が施されたものと、そうでないものの構造の違いは図3の走査顕微鏡の写真によって比較することができる。
図2の(1)がアルミニウム繊維の端部のマイクロアーク酸化処理前の写真で、図2の(2)がマイクロアーク酸化処理後の写真である。
【0031】
アルミニウム繊維端部の写真を見ると、マイクロアーク酸化処理後のアルミニウム繊維端部は太くなり酸化膜が厚くなっており、凹凸が多く表面積が増加して結露40が付着しやすくなっていると共に、鋭尖形凸部が多く大量のイオン発生に適した形状になっている。
このことによりベルチェ素子20にマイクロアーク酸化処理をしたアルミニウム繊維集合体21を取りつけたほうが結露40の発生が多い。
また、マイクロアーク酸化処理をしたアルミニウム繊維集合体21をマイナスイオン発生装置のほうが鋭尖形凸部が多く効果的にマイナスイオンを発生することができる。
【0032】
また、本発明に使用されるアルミニウム繊維集合体21には、ガラス繊維やセラミック繊維等の異種繊維を混合させると結露やマイナスイオン発生に変化が生じ効率が良くなる場合がある。
【0033】
さらに本発明に使用されるアルミニウム繊維集合体21は同一材料でメッシュ上に作製すると、ペルチェ素子20に取り付けやすくほつれる事がない。
同様に異種材料で作られたメッシュ状の袋や箱などにアルミニウム繊維集合体21を入れることによってほつれることを防止しペルチェ素子20に取り付けやすく構成することができる。
更にはアルミニウム繊維集合体21を紙袋に封入したり、板状のものにとりつけてミスト発生用エア312の通過するミスト発生路18内に載置すれば、取り付けやすくほつれる事がない上に交換のやりやすい構成になる。
【0034】
以上のように本実施例によると、ペルチェ素子20の冷却部にアルミ繊維集合体21を取り付けて、結露30をより多い表面積で得られるようにしたので、乾燥した部屋でも水分を安定して得られるようになった。
【0035】
また、冷却部に取り付けたアルミ繊維集合体21は熱伝導が良く、冷却効果が向上し、結露30を効率よく発生させることができる。更にアルミ繊維集合体21の繊維の中に結露30で発生した大きな水滴を吸収してしまうので、水滴として放出されることがなくミストエア313が安定する。
【0036】
更に、アルミ繊維集合体21は無数のアルミ繊維が集合したものであり、繊維の端部である鋭尖形凸部が多くマイナスイオン23を多く発生することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の実施例としてヘアドライヤを用いて説明するが、ヘアドライヤのみならず、ミストエアを発生するイオン発生装置などにも使用することができる。
【符号の説明】
【0038】
8 陰極
10 ヘアドライヤ
11 電解溶液
12 陽極
18 ミスト発生路
20 ペルチェ素子
21 アルミニウム繊維集合体
211 マイクロアーク酸化処理前アルミニウム繊維端部
212 マイクロアーク酸化処理後アルミニウム繊維端部
22 マイナスイオンピン
23 マイナスイオン
30 ファン
31 吸引されたエア
311 熱風
312 ミスト発生用エア
313 ミストエア
33 吸引口
34 排出口
35 ヒータ
40 結露
90 従来のドライヤー
91 ヒータ
911 熱風
912 吸入されたエア
913 ミスト発生用エア
914 ミストエア
92 ファン
921 吸引口
922 排出口
93 ミスト発生路
95 ミスト発生ピン
951 結露
96 アース電極
961 マイナスイオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中の水分を結露させて水を供給する装置であって、
温度差を生じて水分を結露させるペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の冷却部に取り付けられた金属アルミニウム繊維集合体とによって構成されたことを特徴とする水供給装置。
【請求項2】
前記金属アルミニウム繊維集合体の金属アルミニウム繊維表面に結晶質酸化皮膜を有していることを特徴とする請求項1記載の水供給装置。
【請求項3】
前記金属アルミニウム繊維集合体の金属アルミニウム繊維にマイクロアーク処理が施されていることを特徴とする請求項1記載の水供給装置。
【請求項4】
前記金属アルミニウム繊維集合体はガラス繊維やセラミック繊維の異種繊維との混合体であることを特徴とする請求項1記載の水供給装置。
【請求項5】
前記金属アルミニウム繊維集合体は異種材料を用いたメッシュ状もしくは板状等の形状で保護されていることを特徴とする請求項1記載の水供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64582(P2013−64582A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222327(P2011−222327)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(593139411)ミマキ電子部品株式会社 (8)
【出願人】(391043996)株式会社テスコム (14)
【Fターム(参考)】