説明

水冷モータおよびその製造方法

【課題】 水冷用の構造をモータ完成後に取り付ける必要がなく、モータ製造上の作業性を改善することができ、さらに部品点数を削減することができる水冷モータを提供すること。
【解決手段】 水冷モータ10は、冷却水水路となるパイプ1がモータステータ3と一体成型されてなる構成を主体とする。特に、パイプ1の外表面2がモータステータ3の表面4に密着した状態となっており、樹脂モールドによる一体成型構造5が形成された構成とする。これにより、モータのフレームあるいはケース自体に水路構造を設けることが不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水冷モータおよびその製造方法に係り、特に、作業性改善および冷却効果向上を可能とする水冷モータおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水冷モータに関しては、従来からさまざまな技術的提案がなされている。後掲特許文献はその一例だが、それらはいずれもモータのフレームやケース等に溝を設けて、水路を確保する工夫をしているものである。
【0003】
つまり従来技術は、図3に示すようにモータ310に水冷用パイプ31を巻き付け、パイプ31に水を通すことによってモータ310を冷却する方法か、または図4に示すように、モータ410に水を通すための水冷用ジャケット47を装着してジャケット47に水を通すことによってモータ410を冷却する方法であり、いずれにせよモータに水を通すための部品を別部品として取り付けることにより、モータ冷却を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−143246号公報「水冷モータの水路形成方法」
【特許文献2】特開2007−143247号公報「水冷モータおよびそのモータフレームの水路加工方法」
【特許文献3】実開平05−88185号公報「水冷式回転機」
【特許文献4】特開平03−91053号公報「水冷モータ構造」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の水冷モータは、上述のように水を通すための部品をモータ完成後に取り付ける必要があるために、製造上手間がかかるものとなっていた。また、水冷用の構造を別部品となって取り付けなくてはならないため、ネジ等の取付部品が必要となるなど、部品点数が増えていた。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、水冷用の構造をモータ完成後に取り付ける必要がなく、製造上の作業性を改善することができ、かつ部品点数を削減することができる水冷モータおよびその製造方法を提供することである。加えて、従来よりも確実な冷却効果を実現できる、水冷モータおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題について検討した結果、モータを樹脂モールド成型する際に水を通すパイプを一緒に一体成型することによって解決できることに想到し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0008】
(1) 冷却水水路となるパイプがモータステータと一体成型されてなる、水冷モータ。
(2) 冷却水水路となるパイプが外表面をモータステータ表面に密着した状態で樹脂モールド一体成型されてなる、水冷モータ。
【0009】
(3) モールド一体成型の際に冷却水水路とするパイプをモータステータ表面に密着した状態で行い、モータのフレームあるいはケース自体に水路構造を設けることを不要とすることを特徴とする、水冷モータ製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水冷モータおよびその製造方法は上述のように構成されるため、これによれば、従来のように水冷用の構造をモータ完成後に取り付ける必要がない。したがって製造過程においてその分手間がかからず、作業性を改善し、工数を削減することができるとともに、部品点数を削減することもできる。
【0011】
また、冷却水水路となるパイプはモータの外装面ではなくて直接ステータ表面に密着した状態で、しかも熱伝導性が低い樹脂により埋設された状態となるため、従来よりも冷却効果を確実なものとし、冷却効果を高め、性能を向上させることができる。さらには、従来の水冷用ジャケットのように事後の部品取り付けが発生しないため、省スペースにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明水冷モータの構成を示す軸直交断面図である。
【図2】図1中のP−O−P線による側方断面図である。
【図3】従来の水冷モータ構造の例を示す側面図である。
【図4】従来の水冷モータ構造の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明水冷モータの構成を示す軸直交断面図である。また、
図2は、図1中のP−O−P線による側方断面図である。これらに示されるように本水冷モータ10は、冷却水水路となるパイプ1がモータステータ3と一体成型されてなることを、主たる構成とするものである。
【0014】
かかる構成により本水冷モータ10では、パイプ1とモータステータ3とが一体成型されているために、モータ完成後に改めて別途水冷用の構造や部品を取り付ける必要がない上、省スペースともなる。なお、冷却水用の水路とするパイプ1については、特別新規な構造は不要であり、一般的なパイプ材を適宜選択して使用することができる。この点でもコスト上昇を抑制することができる。
【0015】
図1等に示す例では、冷却水水路とするためのパイプ1はステータ3周上に均等または略均等に4箇所設ける構成であるが、パイプの設置数、設置位置などの具体的仕様はこれに限定されない。要するにモータステータ3とパイプ1とが一体成型されていることによって、モータ冷却作用を発揮できる仕様・形態である限り、いかなる仕様・形態であってもよい。
【0016】
図2に示すように本発明水冷モータ10は、冷却水水路となるパイプ1が、その外表面2をモータステータ3の表面4に密着した状態で、樹脂モールドによる一体成型構造5が形成されている構成とすることができる。これは、絶縁および断熱目的でステータ3をモールド成型する際に、パイプ1を一体成型するものであり、上述のとおり作業性改善および冷却効果向上となる。
【0017】
かかる構成により、冷却水水路となるパイプ1に流される冷却水からの冷熱は、直接モータ10のステータ3表面4に伝導される。しかもその外側には、熱伝導性が低い樹脂によって樹脂モールドによる一体成型構造5が形成され、パイプ1はこれに埋設された状態となっているため、確実かつ効率的、効果的な冷却作用がなされ、冷却効果が高まり、モータ性能向上にも寄与する。
【0018】
なお本発明水冷モータ10を製造するには、樹脂モールド一体成型の際に、冷却水水路とするパイプ1をモータステータ3の表面4に密着した状態で行って、樹脂モールドによる一体成型構造5を形成すればよい。これにより、従来のようにモータ10のフレームあるいはケース自体に水路構造を設けることが不要となる。したがって、従来のように水冷用の構造をモータ完成後に取り付ける必要がなく、作業性が改善し、工数削減、部品点数削減につながる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の水冷モータ等は、作業性改善、工数削減、部品点数削減、冷却効果向上、省スペース化の各利点がある。したがって、モータ製造分野において利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0020】
1…パイプ
2…パイプの外表面
3…モータステータ
4…モータステータの表面
5…樹脂モールドによる一体成型構造
8…ロータ
10…水冷モータ
31…水冷用パイプ
39、49…モータ軸
310、410…モータ
47…水冷用ジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水水路となるパイプがモータステータと一体成型されてなる、水冷モータ。
【請求項2】
冷却水水路となるパイプが外表面をモータステータ表面に密着した状態で樹脂モールド一体成型されてなる、水冷モータ。
【請求項3】
モールド一体成型の際に冷却水水路とするパイプをモータステータ表面に密着した状態で行い、モータのフレームあるいはケース自体に水路構造を設けることを不要とすることを特徴とする、水冷モータ製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−229346(P2011−229346A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99295(P2010−99295)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】