説明

水冷式ロータリーバルブ

【目的】 回転軸及び羽根の表面に結露を生じさせて、醸造用原料が付着するのを防止するようにした水冷式ロータリーバルブを提供する。
【構成】 回転軸1の外周に羽根2を放射状に連設してなるローター本体3を、ケーシング4内に回転可能に嵌装する。回転軸1の内部に冷媒の流路5を形成すると共に、羽根2の内部に通流路6を形成する。流路5と通流路6を連通して、流路5及び通流路6に水等の冷媒を送通する。冷媒によって回転軸1及び羽根2を冷却して表面に結露を生じさせ、醸造用原料が隔室内の壁面に付着するのを防止するようにした。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は醸造用原料を連続的に蒸煮処理する蒸煮装置に用いられる原料供給又は排出用の水冷式ロータリーバルブに関するものである。
【0002】
【考案の目的】
醸造用原料は、蒸煮缶内において高温高圧の蒸気によって蒸煮処理されるものであるため、原料の供給及び排出に際しては、高温高圧下で気密度の高いロータリーバルブが使用されている。
しかしながら、回転するローターは高温蒸気によって加熱されるので、原料を収容する隔室の壁面はほぼ蒸気温度に達し、原料中の炭水化物の一部は加熱されて粘着成分に変性し、ローター内の壁面に付着したまま長時間加熱され、焦げつきを生じて次第に堆積層を厚くしていって、ついには原料の供給及び排出を不能にするという問題点がある。
【0003】
そこで、本考案は前記した従来型ロータリーバルブの不具合点を解消し、ローターを構成する羽根の内部を中空にして冷媒の通流路を設けると共に、当該通流路内に複数段階の邪魔板を突設し、回転軸内に設けた冷媒供給側の流路から冷媒を送通して隔室内の壁面をきわめて効率良く冷却し、温度差によって壁面に結露を生じさせて粘着物の生成を防ぎ、付着による焦げつき、堆積の進行を防止するようにした水冷式ロータリーバルブを提供することを目的とするものである。
【0004】
【考案の構成】
上記目的を達成するための本考案の構成を詳述すれば、回転軸の外周部に複数枚の羽根を放射状に連設したローター本体をケーシング内に回転可能に嵌装してなる連続蒸煮装置に用いられる醸造用原料の供給又は排出用のロータリーバルブにおいて、前記回転軸はほぼ中央部に設けた隔壁を境にしてその内部に冷媒供給側の流路と冷媒排出側の流路をそれぞれ別個に形成し、且つローター本体の各羽根の内部を中空にして冷媒の通流路を設けると共に、当該通流路内に複数段階の邪魔板を突設し、前記回転軸内に設けた冷媒供給側の流路と各羽根内の入口側の通流路とを入口孔を介して連通させ、さらに各羽根内の出口側の通流路と回転軸内に設けた冷媒排出側の流路とを出口孔を介して連通させ、前記流路及び通流路内に冷媒を送通して回転軸及び各羽根を冷却し、回転軸及び各羽根の表面に結露を生じさせるようにしたことを特徴とする水冷式ロータリーバルブである。
【0005】
本考案水冷式ロータリーバルブによれば、ローター本体内に冷媒が効率良く送通することによってローター本体内の隔壁表面に結露が生じ、該表面がウェットの状態となるので、蒸煮原料がローター本体の各隔室の壁面に付着、生成するのを有効に防止することができ、原料の連続供給・排出が可能となるものである。
【0006】
【実施例】
以下、本考案水冷式ロータリーバルブの具体的構成を図示の実施例に基づき詳細に説明する。
図1は本考案ロータリーバルブの一実施例を示す縦断面図、図2は図1のA−A断面図である。
【0007】
本考案水冷式ロータリーバルブは、回転軸1の外周に複数枚の羽根2を放射状に連設したローター本体3をケーシング4内に回転可能に嵌装してなる連続蒸煮装置に用いられる醸造用原料の供給又は排出用のロータリーバルブにおいて、前記回転軸1を中空にして冷媒の流路5を設けると共に、ローター本体3の各羽根2の内部を中空にして冷媒の通流路6を設け、回転軸1内の流路5と各羽根2内の通流路6とを連通してここに冷媒を送通し、回転軸1及び羽根2を冷却して醸造用原料が回転軸1及び羽根2の表面に付着するのを防止するようにしたものである。
【0008】
先ず、回転軸1は、図示の実施例の場合、適宜の駆動装置7によって回転駆動される駆動側回転軸8と非駆動側回転軸9とからなるもので、駆動側回転軸8の内部を中空にして冷媒供給側の流路5Aを形成すると共に、非駆動側回転軸9の内部を中空にして冷媒の排出側の流路5Bを形成してあり、流路5Aと流路5Bの間には図1に示すように隔壁10を形成してある。なお、駆動側回転軸8の流路5Aは回転継手11を介して冷媒供給管12に接続されている。
【0009】
次に、ローター本体3は、前記回転軸1のほぼ中間部分外周に複数枚の羽根2,2・・・を放射状に連設した構造のもので、各羽根2の内部は中空にしてここに冷媒の通流路6を形成すると共に、当該通流路6内に複数段階の邪魔板22を突設してある。
【0010】
邪魔板22は、図1に示すように通流路6内において、先ず、回転軸1の外周部に突設し、次に所定の間隔を存して、通流路6の天井から垂下する如く突設するように、上下方向から交互に突設するようにすると、通流路6を通る冷媒の流れに乱流が生じ、効率の良い冷却効果が得られるものである。
【0011】
一方、回転軸1に設けた冷媒供給側の流路5Aと各羽根2に設けた通流路6とを連通させるため、駆動側回転軸8に冷媒の入口孔13を穿設すると共に、通流路6と回転軸1に設けた冷媒排出側の流路5Bとを連通させるため、非駆動側回転軸9に冷媒の出口孔14を穿設する。なお、冷媒の入口孔13及び出口孔14は各羽根2内の中空部中心に向けて羽根2の数に対応するよう複数個穿設するのは云うまでもない。
【0012】
このように、本考案水冷式ロータリーバルブは、前記したローター本体3をケーシング4内に回転可能に嵌装し、駆動側回転軸8及び非駆動側回転軸9の先端部をケーシング4の端板15から外方に突出させた構造のものであり、ケーシング4の内部にはケーシング4の内周面と各羽根2の壁面とによって複数個の隔室16が形成されるものである。
【0013】
その他、図中の17はケーシング4の上部に形成した醸造用原料の入口、18は醸造用原料の出口、19は回転軸1の軸受、20は非駆動側回転軸9の端部に水密に嵌着した排水箱、21は当該排水箱20に接続した排水管である。
【0014】
次に、本考案水冷式ロータリーバルブを、図示しない連続蒸煮装置の排出口側に用いた場合につきその作用を説明すると、連続蒸煮缶によって蒸煮済みの原料は入口17より投入されて隔室16内に入り、羽根2の回転に伴って、下方に移行し、出口18より排出される。その際、前記したとおり隔室16内は蒸煮済み原料が帯有している高熱や蒸煮缶内の高温蒸気によって次第に熱せられ、羽根2の表面に粘着物が付着、生成するようになる。
【0015】
しかしながら、本考案においては、冷媒供給管12より水等の冷媒を送通すると、冷媒は駆動側回転軸8内の流路5Aを通り、入口孔13を経て各羽根2内の通流路6内に分散流入し、通流路6内を邪魔板22によって蛇行しながら、出口孔14を経て非駆動側回転軸9内の流路5Bに排出され、該流路5Bを通って外部に排出されるから、各隔室16内の壁面は高い伝熱効率をもって冷却される。
【0016】
すると、各隔室16内の壁面に温度差によって結露を生じ、ウェットの状態となるため、原料は粘着性物質が生成されず、壁面に付着堆積することなく、きわめて円滑に原料出口18より外部に排出されるものである。
特に、本考案によるときは、回転軸1のほぼ中央部に設けた隔壁を境にして回転軸の内部に冷媒供給側の流路5Aと冷媒排出側の流路5Bをそれぞれ別個に形成し、且つローター本体3の各羽根2の内部を中空にして冷媒の通流路6を設けると共に、当該通流路6内に複数段階の邪魔板22を突設した構造であるから、冷媒は流路5A,5B及び通流路6内において乱流を生じ、一箇所に滞留することがなくなるので、きわめて効率良く粘着性物質の生成を完全に防止することができるものである。
【0017】
【考案の効果】
このように本考案水冷式ロータリーバルブによった場合、ローター本体をなす回転軸及び羽根は冷媒によって効率良く冷却され、表面に結露を生じるので原料がローター本体の各隔室の壁面に付着、生成するのを有効に防止することができるものである。従って、本考案によれば原料の連続供給、排出が可能で、作業が間歇的になるおそれがなく、信頼性のきわめて高いロータリーバルブを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案水冷式ロータリーバルブの一実施例を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【符号の説明】
1:回転軸 2:羽根
3:ローター本体 4:ケーシング
5:流路 6:通流路
7:駆動装置 8:駆動側回転軸
9:非駆動側回転軸 10:隔壁
11:回転継手 12:冷媒供給管
13:入口孔 14:出口孔
15:端板 16:隔室
17:原料入口 18:原料出口
19:軸受 20:排水箱
21:排水管 22:邪魔板

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 回転軸の外周部に複数枚の羽根を放射状に連設したローター本体をケーシング内に回転可能に嵌装してなる連続蒸煮装置に用いられる醸造用原料の供給又は排出用のロータリーバルブにおいて、前記回転軸はほぼ中央部に設けた隔壁を境にしてその内部に冷媒供給側の流路と冷媒排出側の流路をそれぞれ別個に形成し、且つローター本体の各羽根の内部を中空にして冷媒の通流路を設けると共に、当該通流路内に複数段階の邪魔板を突設し、前記回転軸内に設けた冷媒供給側の流路と各羽根内の入口側の通流路とを入口孔を介して連通させ、さらに各羽根内の出口側の通流路と回転軸内に設けた冷媒排出側の流路とを出口孔を介して連通させ、前記流路及び通流路内に冷媒を送通して回転軸及び各羽根を冷却し、回転軸及び各羽根の表面に結露を生じさせるようにしたことを特徴とする水冷式ロータリーバルブ。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate