説明

水冷銅板の変位測定方法

【課題】鋳片の凝固プロフィールを考慮した水冷銅板の性能を十分に得ることができ、良好な品質の鋳片を製造可能な水冷銅板の変位測定方法を提供する。
【解決手段】連続鋳造用鋳型の内側に固定配置される水冷銅板13、14の変位測定方法であって、水冷銅板13、14の裏側に配置されているバックプレート15、16の背部に配置された距離計24〜26、19〜21により、バックプレート15、16の移動距離a´、aを測定するので、鋳片の凝固プロフィールを考慮した水冷銅板13、14の性能を十分に得ることができ、良好な品質の鋳片を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳片を製造するために使用する連続鋳造用鋳型の水冷銅板の変位測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下方向に貫通する空間部が形成された水冷銅板を有する連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型ともいう)を使用し、空間部に溶鋼を供給して冷却しながら鋳片を製造している。
この鋳型には、例えば、特許文献1に開示されているように、冷却銅板の鋳造方向に渡って1つのテーパ(傾斜面)で形成される単一テーパ(シングルテーパともいう)の鋳型や、傾斜角度の異なる2つのテーパで形成される2段テーパの鋳型等がある。
しかし、溶鋼の凝固過程においては、凝固収縮が発生するため、鋳片の引抜き方向へ向けて、水冷銅板表面(鋳型内面)と溶鋼の鋳型接触面側に形成される凝固シェルとの間に隙間が生じ、鋳片のコーナー部の冷却効率が他の部分よりも低下して、凝固遅れが発生していた。
そこで、特許文献2のように、水冷銅板表面の形状を、鋳片の凝固プロフィールに対応させた形状、即ちマルチテーパとした鋳型が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−79650号公報
【特許文献2】特開2008−49385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の鋳型の水冷銅板の形状は、鋳片の凝固プロフィールのみを考慮した形状であり、水冷銅板そのものに発生する熱変形を考慮した形状ではなかった。
連続鋳造時の溶鋼からの熱による熱変形は、図11(A)、(B)に示すように、水冷銅板からなる長辺(長片ともいう)91とこの裏側に取付けられたバックプレート92とが、また図11(C)、(D)に示すように、水冷銅板からなる短辺(短片ともいう)93とこの裏側に取付けられたバックプレート94とが、一体的に熱変形する。
このとき、長辺91又は短辺93がバックプレート92、94よりも大きく変形する。なお、これらの水冷銅板を有する鋳型は、図11(A)、(B)に示すように、間隔を有して対向配置された一対の短辺93の幅方向両側が、一対の長辺91で挟み込まれた形状となっている。
【0005】
また、この熱変形は、図11(A)〜(D)に示すように、長辺91と短辺93が中膨らみとなる変形であり、溶鋼接触面側への突出量が1〜2mm程度に達する場合もあり、前記した鋳片の凝固プロフィールを考慮した寸法よりも大きい。このため、このような熱変形が発生すれば、マルチテーパとした鋳型の性能を十分に得ることができない。
更に、長辺91と短辺93に中膨らみとなる変形が発生することでテーパ形状が崩れ、その結果、鋳片コーナー部の冷却が更に悪くなって、形成される凝固シェルの厚みが薄くなり、最終的には、ブレークアウトを招く恐れもある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、鋳片の凝固プロフィールを考慮した水冷銅板の性能を十分に得ることができ、良好な品質の鋳片を製造可能な水冷銅板の変位測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る水冷銅板の変位測定方法は、連続鋳造用鋳型の内側に固定配置される水冷銅板の変位測定方法であって、
前記水冷銅板の裏側に配置されているバックプレートの背部に距離計を配置し、該距離計によって、前記バックプレートの移動距離を測定する。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係る水冷銅板の変位測定方法は、連続鋳造用鋳型の内側に固定配置される水冷銅板の変位測定方法であって、
前記水冷銅板の裏側に配置されているバックプレート内に距離計を埋込み、該距離計によって、前記バックプレートと前記水冷銅板の距離を測定する。
【0009】
前記目的に沿う第3の発明に係る水冷銅板の変位測定方法は、連続鋳造用鋳型の内側に固定配置される水冷銅板の変位測定方法であって、
前記水冷銅板の裏側に配置されているバックプレートの背部に第1の距離計を配置し、該第1の距離計によって、前記バックプレートの移動距離aを測定し、前記バックプレート内に第2の距離計を埋込み、該第2の距離計によって、前記バックプレートと前記水冷銅板の距離bを測定して、前記移動距離aと前記距離bとの和から、前記水冷銅板の変位を求める。
なお、バックプレートの背部とは、バックプレート自体の背面側部分のみならず、バックプレートの背面側後方位置も含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る水冷銅板の変位測定方法は、バックプレートの背部に配置された距離計、バックプレート内に埋込まれた距離計、又はその双方の距離計により、連続鋳造時における水冷銅板の変位を得ることができる。
これにより、製造する鋳片の品質に影響を及ぼす水冷銅板の変形を検知できるので、このデータに基づき、例えば、連続鋳造時には鋳造条件を変更し、また連続鋳造前には熱変形に伴う水冷銅板の形状加工を行うことで、鋳片の凝固プロフィールを考慮した水冷銅板の性能を十分に得ることができ、良好な品質の鋳片を製造できる。
【0011】
特に、連続鋳造時の水冷銅板の変位を、バックプレートの背部に配置された距離計により、バックプレートの移動距離を測定して得る場合は、バックプレートの剛性が小さく、バックプレートが水冷銅板と一体的に膨張収縮するときに、有効である。
【0012】
また、連続鋳造時の水冷銅板の変位を、バックプレート内に埋込まれた距離計により、バックプレートと水冷銅板の距離を測定して得る場合は、バックプレートの剛性が大きく、水冷銅板が主体となって熱変形するときに、有効である。
【0013】
更に、バックプレートの背部に配置された第1の距離計により、バックプレートの移動距離aを測定し、バックプレート内に埋込まれた第2の距離計により、バックプレートと水冷銅板の距離bを測定して、連続鋳造時の水冷銅板の変位を移動距離aと距離bとの和から求める場合は、水冷銅板の変位を高精度に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第1、第2の実施の形態に係る水冷銅板の変位測定方法の説明図である。
【図2】本発明の第3の実施の形態に係る水冷銅板の変位測定方法の説明図である。
【図3】(A)は変位測定位置を示す長辺側バックプレートの裏面図、(B)は変位測定位置を示す短辺側バックプレートの裏面図である。
【図4】鋳片の鋳造速度の推移を示す説明図である。
【図5】各変位測定位置でのF側バックプレートのそり変形の推移を示す説明図である。
【図6】各変位測定位置でのN側バックプレートのそり変形の推移を示す説明図である。
【図7】F側バックプレートの鋳造方向のそり変形を示す説明図である。
【図8】N側バックプレートの鋳造方向のそり変形を示す説明図である。
【図9】(A)、(B)はそれぞれF側の熱変形分布及びそり変形分布を示す説明図である。
【図10】(A)、(B)はそれぞれN側の熱変形分布及びそり変形分布を示す説明図である。
【図11】(A)は熱変形した長辺の正面側からの部分斜視図、(B)は同長辺の裏面側からの部分斜視図、(C)は熱変形した短辺の裏面側からの斜視図、(D)は同短辺の正面側からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明の第1〜第3の実施の形態に係る水冷銅板の変位測定方法を適用する連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型ともいう)について説明した後、水冷銅板の変位測定方法について説明する。
図1(A)、(B)に示すように、鋳型は、その内側に固定配置され、上下方向に貫通した空間部10を形成する水冷銅板を有し、この空間部10に溶鋼12を供給して冷却しながら鋳片を製造するものである。
【0016】
水冷銅板は、間隔を有して対向配置された一対の短辺(短片ともいう)13と、この短辺13を幅方向両側から挟み込んだ状態で対向配置された一対の長辺14(長片ともいう)とを構成している(図11(A)、(B)参照)。
この水冷銅板からなる短辺13及び長辺14の裏面側には、複数のボルト(締結手段)によってバックプレート(支持部材)15、16がそれぞれ固定され、短辺13及び長辺14の裏面側の上下方向に設けられた多数の導水溝に冷却水を流すことで、短辺13及び長辺14の冷却を行うと共に溶鋼12の冷却を行って鋳片を製造できる。
【0017】
短辺13は、例えば、幅が50mm以上300mm以下程度(一対の長辺14の間隔と等しい)、上下方向の長さが600mm以上1200mm以下程度である。また、長辺14は、対向配置される一対の短辺13の間隔を、600mm以上3000mm以下の範囲で変更可能とすることのできる幅を有し、上下方向の長さは短辺と同程度である。なお、短辺13と長辺14は、銅又は銅合金で構成されている。
これにより、例えば、幅が600mm以上3000mm以下程度、厚みが50mm以上300mm以下程度のスラブを製造できる。
【0018】
続いて、本発明の第1〜第3の実施の形態に係る水冷銅板の変位測定方法について説明する。
図1(A)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る水冷銅板の変位測定方法は、長辺14の裏側に配置されているバックプレート16の背部に、複数(ここでは、3個)のレーザー式変位計(距離計の一例)19〜21を配置し、この各レーザー式変位計19〜21により、バックプレート16の移動距離aを測定する方法である。この方法は、バックプレート16の剛性が小さく、バックプレート16が長辺14と一体的に膨張収縮するときに有効である。
【0019】
各レーザー式変位計19〜21は、鋳型を支持する鋳型フレーム18の正面側(バックプレート16の背面と間隔を有して対向する側)に、鋳造方向に渡って間隔を有して配置されている。この各レーザー式変位計19〜21は、鋳型フレーム18のみに取付けているが、バックプレート16(背面)のみ、又は鋳型フレーム18とバックプレート16の双方に取付けてもよい。
ここで、レーザー式変位計19、21、20は、長辺14の高さ方向の上部(長辺の上端から鋳造方向へ150mmまでの範囲)、下部(長辺の下端から上方向へ200mmまでの範囲)、及び中央部(上部及び下部を除く部分)の測定がそれぞれできるように配置されているが、これに限定されるものではなく、更に長辺の幅方向に間隔を有して複数配置してもよい。
【0020】
また、レーザー式変位計の代わりに、渦電流式変位計や接触式変位計を使用してもよい。
これにより、バックプレート16と鋳型フレーム18との相対距離L1を、各レーザー式変位計19〜21を設置した位置ごとに測定できる。なお、鋳型フレーム18は、バックプレート16とは間隔を有して配置され、熱変形しない(熱変形が小さい)ため、連続鋳造の開始の前後で相対距離L1を測定することで、バックプレート16の移動距離aを測定でき、長辺14のそり変形の際の変位を検知できる。
【0021】
図1(B)に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る水冷銅板の変位測定方法は、短辺13の裏側に配置されているバックプレート15の背部に、複数(ここでは、3個)の渦電流式変位計(距離計の一例)24〜26を配置し、この各渦電流式変位計24〜26により、バックプレート15の移動距離a´を測定する方法である。
なお、各渦電流式変位計24〜26は、バックプレート15の裏面側に配置された基準バー27の正面側(バックプレート15の裏面に対向する側)に、鋳造方向に渡って間隔を有して配置されている。この基準バー27は、バックプレート15の上部と下部に、支持部28、29を介して取付けられている。
【0022】
このように構成することで、各渦電流式変位計24〜26により、バックプレート15と基準バー27との相対距離L2を、各渦電流式変位計24〜26を設置した位置ごとに、それぞれ測定できる。従って、バックプレート15と基準バー27との相対距離L2から、基準バー27に対する短辺13のそり変形量が求まる。
なお、基準バー27は熱変形しない(熱変形が小さい)ため、連続鋳造の開始の前後で相対距離L2を測定することで、バックプレート15の移動距離a´を測定でき、短辺13のそり変形の際の変位を検知できる。
【0023】
図2に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る水冷銅板の変位測定方法は、水冷銅板からなる短辺39の裏側に配置されているバックプレート40内に、複数(ここでは、3個)の渦電流式変位計(距離計の一例)41〜43を埋込み、この各渦電流式変位計41〜43により、バックプレート40と短辺13の距離bを測定する方法である。この方法は、バックプレート40の剛性が大きく、短辺39が主体となって熱変形するときに有効である。また、この方法は、長辺についても適用できる。
なお、短辺39は、前記した短辺13と同様の構成であり、バックプレート40は、各渦電流式変位計41〜43が設けられていること以外は、前記したバックプレート15と同一構成である。また、図2中の番号44、45は、冷却水が流れる導水溝であり、番号46は、短辺39とバックプレート40との間からの冷却水の漏れを防止するOリングである。
【0024】
渦電流式変位計41(各渦電流式変位計42、43も同様)は、コード47が接続された検出部48を有し、この検出部48が、バックプレート40に形成した貫通孔49内に埋込まれたものである。なお、貫通孔49は、バックプレート40の幅方向に間隔を有して形成されているが、更に鋳造方向に間隔を有して形成してもよい。
検出部48は、センサーヘッド押え部50により、検出部48の先端面が短辺39の裏面に接触するように(隙間を有してもよい)、位置決めされている。なお、検出部48とセンサーヘッド押え部50との間、及びセンサーヘッド押え部50と貫通孔49内面との間には、それぞれOリング51、52が取付けられ、冷却水の漏出しを防止している。
【0025】
また、センサーヘッド押え部50は、コード47を挿通するための貫通孔53が軸心に形成された固定ボルト54により、その位置決めがなされている。なお、固定ボルト54とコード47との間には、シールゴム55とシール押え部56が取付けられ、固定ボルト54とコード47との間からの冷却水の漏出しを防止している。
これにより、バックプレート40と短辺39との距離bを、各渦電流式変位計41〜43を設置した位置ごとに、測定できる。
なお、前記した本発明の第1の実施の形態に係る水冷銅板の変位測定方法、又は第2の実施の形態に係る水冷銅板の変位測定方法は、第3の実施の形態に係る水冷銅板の変位測定方法と組合せることもできる。即ち、バックプレートの背部に配置した第1の距離計で、バックプレートの移動距離a(a´)を測定し、バックプレート内に埋込んだ第2の距離計によってバックプレートと長辺又は短辺との距離bを測定して、移動距離a(a´)と距離bとの和から、長辺又は短辺の変位を求めることもできる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
使用した鋳型は、従来公知の連続鋳造機に使用する鋳型である。
鋳型を構成する対となる長辺は、鋳造されて下流側へ搬送される鋳片の上面側に接する側をL側といい、下面側に接する側をF側という。また、対となる短辺は、その間隔が可変のものである。
なお、以下の実施例においては、間隔を変更するための一方側の短辺をN側といい、他方側の短辺をS側という。
【0027】
この鋳型において、長辺のF側のそり変形は、長辺の裏側に配置されているバックプレートの背部に、3個のレーザー式変位計を配置し(図1(A)参照)、図3(A)に示すように、F1点〜F3点の3箇所について、バックプレートの変位量をそれぞれ測定した。なお、F1点〜F3点は、長辺の幅方向中央部において、高さ方向の上部、中央部、及び下部である。
短辺のN側のそり変形は、短辺の裏側に配置されているバックプレートの背部に、3個の渦電流式変位計を配置し(図1(B)参照)、図3(B)に示すように、N1点〜N3点の3箇所について、バックプレートの変位量をそれぞれ測定した。なお、N1点〜N3点は、短辺の幅方向中央部において、高さ方向の上部、中央部、及び下部である。
また、鋳造速度は1.0m/分と1.5m/分の2つについて行った。この鋳造速度の推移を図4に示す。
【0028】
まず、長辺が取付けられたバックプレートについて、F側のそり変形の推移を図5に示す。
図5から明らかなように、F側の変位量は、鋳造速度の上昇と共に大きくなることが分かった。なお、L側についても、F側とは変位量は異なるが、略同様の傾向が得られた。
次に、短辺が取付けられたバックプレートについて、N側のそり変形の推移を図6に示す。
図6から明らかなように、N側の変位量も、鋳造速度の上昇と共に大きくなることが分かった。なお、S側についても、N側とは変位量は異なるが、略同様の傾向が得られた。
【0029】
続いて、長辺が取付けられたバックプレートについて、F側の鋳造方向のそり変形のプロット点を図7に、また短辺が取付けられたバックプレートについて、N側の鋳造方向のそり変形のプロット点を図8に、それぞれ示す。なお、メニスカス位置は、鋳型上端から100mmの位置である。
この図7及び図8中の「Vc」とは、鋳片の鋳造速度(単位は「m/分」)である。また、図7及び図8には、鋳片の鋳造速度が1.0m/分(太線)と1.5m/分(細線)の場合について、FEM解析(有限要素法を用いた解析)での変形予測結果も示している。
【0030】
図7から明らかなように、F側の変位量は、バックプレートの上端と鋳造方向中央部との差が0.5mm程度まで広がっていた。なお、FEM解析結果は、実測値上を通過していた。
一方、図8に示すように、N側の変位量は、いずれも1.2mm程度、そり変形していることが分かった。
【0031】
以上に示したように、長辺又は短辺が取付けられたバックプレートの変位量を測定することで、長辺又は短辺がバックプレートと一体的に変形する場合は、バックプレートの変位量が長辺又は短辺の変位量となる。また、バックプレートに対して長辺又は短辺が変形する場合は、バックプレート内に埋込まれた距離計を用いることで、長辺又は短辺の変位量を測定できる。
従って、本発明の水冷銅板の変位測定方法を使用することで、長辺及び短辺の変位量を測定できることを確認できた。
【0032】
また、上記したように、長辺及び短辺の変位量は、FEM解析により推測できるため、このFEM解析を用いることで、長辺側及び短辺側の熱変形分布を求めることができる。
図9(A)及び図10(A)に、F側及びN側の全体の熱変形分布を、また図9(B)及び図10(B)に、F側及びN側の代表点での鋳造方向のそり変形分布を、それぞれ示す。なお、代表点は、鋳造速度(1.0m/分、1.5m/分)ごとに、長辺又は短辺の幅方向中央部と、長辺又は短辺のコーナー部の位置である。
【0033】
図9(A)、(B)、図10(A)、(B)に示すように、長辺側及び短辺側について、熱変形分布を得ることができるため、このデータに基づき、例えば、連続鋳造時には鋳造条件を変更し、また連続鋳造前には熱変形に伴う水冷銅板の形状加工を行うことで、鋳片の凝固プロフィールを考慮した水冷銅板の性能を十分に得ることができ、良好な品質の鋳片を製造できる。
【0034】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の水冷銅板の変位測定方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
鋳型の構造は、水冷銅板の裏側にバックプレートが配置された構造であれば、前記実施の形態に示した構造に限定されるものではない。例えば、従来公知の垂直曲げ型の連続鋳造機に使用する鋳型でもよく、また湾曲型の連続鋳造機に使用する鋳型でもよい。
また、レーザー式変位計や渦電流式変位計の取付け位置も、必要に応じて変更でき、また取付け個数も、必要に応じて増減できる。
そして、前記実施の形態では、一対の短辺の双方、又は一対の長辺の双方を構成する水冷銅板の変位量を測定した場合について説明したが、一対の短辺の片方又は一対の長辺の片方の変位量のみを測定してもよく、また一対の短辺及び一対の長辺の全ての変位量を測定してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10:空間部、12:溶鋼、13:短辺、14:長辺、15、16:バックプレート、18:鋳型フレーム、19〜21:レーザー式変位計(距離計)、24〜26:渦電流式変位計(距離計)、27:基準バー、28、29:支持部、39:短辺、40:バックプレート、41〜43:渦電流式変位計(距離計)、44、45:導水溝、46:Oリング、47:コード、48:検出部、49:貫通孔、50:センサーヘッド押え部、51、52:Oリング、53:貫通孔、54:固定ボルト、55:シールゴム、56:シール押え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造用鋳型の内側に固定配置される水冷銅板の変位測定方法であって、
前記水冷銅板の裏側に配置されているバックプレートの背部に距離計を配置し、該距離計によって、前記バックプレートの移動距離を測定することを特徴とする水冷銅板の変位測定方法。
【請求項2】
連続鋳造用鋳型の内側に固定配置される水冷銅板の変位測定方法であって、
前記水冷銅板の裏側に配置されているバックプレート内に距離計を埋込み、該距離計によって、前記バックプレートと前記水冷銅板の距離を測定することを特徴とする水冷銅板の変位測定方法。
【請求項3】
連続鋳造用鋳型の内側に固定配置される水冷銅板の変位測定方法であって、
前記水冷銅板の裏側に配置されているバックプレートの背部に第1の距離計を配置し、該第1の距離計によって、前記バックプレートの移動距離aを測定し、前記バックプレート内に第2の距離計を埋込み、該第2の距離計によって、前記バックプレートと前記水冷銅板の距離bを測定して、前記移動距離aと前記距離bとの和から、前記水冷銅板の変位を求めることを特徴とする水冷銅板の変位測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−115841(P2011−115841A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277812(P2009−277812)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000176626)三島光産株式会社 (40)
【Fターム(参考)】