説明

水処理用フィルタモジュールおよび水処理用濾過装置

【課題】薄型化を図ることができるとともに、フィルタモジュール全体の体積に対するフィルタの膜表面積を増大することができる水処理用フィルタモジュール、および複数の本発明の水処理用フィルタモジュールを積層した積層体を備える水処理用濾過装置を提供することを目的とする。
【解決手段】水処理用フィルタモジュール10は、被除去物を含む液体を導入する液体導入部21および導入された液体を排出するための排出口22を有する第1の平板部材20と、第1の平板部材20の他方の表面に形成された凹部23に液体導入部21のすべての開口21aを塞ぐように配置されたフィルタ40と、排出口22と連通する排出口31、排出口31に液体を導く液体流路32、および液体流路32に形成された、フィルタ40を支持する複数の突起部33を有し、第1の平板部材20と密着された第2の平板部材30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理に使用される膜を備えた水処理用フィルタモジュールおよびこの水処理用フィルタモジュールを備えた水処理用濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中の懸濁物と水とを分離する、いわゆる固液分離に代表される膜分離技術は、近年注目されている。
【0003】
例えば、海水を淡水化する際に逆浸透膜が使用されている。この逆浸透膜を使用した分離法は、例えば、海水を淡水化する際に採用される他の分離法である蒸留法よりもエネルギ効率が高い。また、被処理物質が熱などのストレスの影響を受けやすい食品や医薬品等の製造工程においても、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノフィルタなどが用いられている。また、上水処理や下水処理においても、精密濾過膜や限外濾過膜などを用いた膜分離技術の導入が進みつつある。
【0004】
分離膜の種別は、分離孔径、材質、形状などで分類することができる。例えば、0.1μm〜数μm程度の粒子などの通過を阻止する分離膜を精密濾過膜と呼んでいる。また、2nm〜0.1μm程度の粒子などの通過を阻止する分離膜を限外濾過膜と呼んでいる。さらに、2nmより小さい粒子などの通過を阻止する分離膜をナノ濾過膜と呼んでいる。
【0005】
分離膜の材質は、有機高分子、金属、セラミックの3種に大別でき、比較的安価で汎用性の高い有機高分子膜が主流であるが、耐熱性、耐環境性、繰り返し使用への耐性などに優れた金属膜やセラミック膜も、用途に応じて使用されている。
【0006】
膜分離技術の一般的なメリットとしては、上記した高いエネルギ効率などが得られる他に、膜材料の孔径を制御することで、標的物質を狙って分離できるという利点がある。
【0007】
また、膜分離技術の一般的なデメリットとしては、例えば、大容量の水を浄化処理する場合、分離膜の占有体積が水の処理量に比例して増加することなどが挙げられる。これは、分離膜における処理量は、分離膜の表面積に依存するからである。
【0008】
そこで、分離膜における単位体積あたりの表面積の向上が図られてきた。例えば、分離膜の形状を工夫することで表面積の増大が図られている。有機高分子膜では、平膜が伝統的によく使われてきたが、近年では、単位体積当たりの表面積が大きいという理由で、中空糸膜の需要が拡大している。金属膜では、金網と粉末焼結の2種が主流であり、いずれも円筒形かプリーツ状に加工されて使用されるものが多い。セラミック膜では、円柱形、円筒形、ハニカム形状に加工されて使用されるものが多い(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−321998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した従来の分離膜では、表面積を増加させるために複雑な形状に加工することが必要となり、分離膜の製造工程が複雑化したり、製造コストが増加するなどの問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、薄型化を図ることができるとともに、フィルタモジュール全体の体積に対するフィルタの膜表面積を増大することができる水処理用フィルタモジュールを提供することを目的とする。さらに、複数の本発明の水処理用フィルタモジュールを積層した積層体を備え、積層体全体の体積に対するフィルタの膜表面積を増大することができる水処理用濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、被除去物を含む液体を一方の表面側から導入するための複数の開口を有する液体導入部、および導入された液体を排出するための第1の排出口を有する第1の平板部材と、前記第1の平板部材の他方の表面に前記液体導入部に対応させて形成された、前記液体導入部と連通する凹部に、前記液体導入部のすべての開口を塞ぐように配置された平膜状のフィルタと、前記フィルタを通過した液体を排出するための、前記第1の排出口と連通する第2の排出口、前記第2の排出口に液体を導く凹部からなる液体流路、および前記液体流路に形成された、前記第1の平板部材の他方の表面側から前記フィルタを支持する複数の突起部を有し、前記第1の平板部材と密着された第2の平板部材とを具備することを特徴とする水処理用フィルタモジュールが提供される。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、複数の上記した水処理用フィルタモジュールを、それぞれ、開口が形成されたスペーサ部材を介して、前記スペーサ部材の開口、前記水処理用フィルタモジュールの前記第1の排出口および前記第2の排出口のそれぞれが連通してなる排出流路を形成するように、積層して構成されたモジュール積層体と、前記モジュール積層体を収容し、前記排出流路からの液体を外部に排出するための排出口、および被除去物を含む液体を内部に導入するための導入口を少なくとも有する収容容器とを具備することを特徴とする水処理用濾過装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水処理用フィルタモジュールによれば、薄型化を図ることができるとともに、フィルタモジュール全体の体積に対するフィルタの膜表面積を増大することができる。また、本発明の水処理用濾過装置によれば、複数の本発明の水処理用フィルタモジュールを積層した積層体を備え、積層体全体の体積に対するフィルタの膜表面積を増大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る一実施の形態の水処理用フィルタモジュールの分解斜視図である。
【図2】本発明に係る一実施の形態の水処理用フィルタモジュールの断面を示す図である。
【図3】本発明に係る一実施の形態の水処理用フィルタモジュールを複数積層して構成されるモジュール積層体の断面を示す図である。
【図4】モジュール積層体を備える水処理用濾過装置の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る一実施の形態の水処理用フィルタモジュール10の分解斜視図である。図2は、本発明に係る一実施の形態の水処理用フィルタモジュール10の断面を示す図である。
【0018】
図1に示すように、水処理用フィルタモジュール10は、第1の平板部材20と、この第1の平板部材20に密着される第2の平板部材30と、第1の平板部材20と第2の平板部材30との間に狭持されるように配置されるフィルタ40とを備えている。
【0019】
第1の平板部材20は、例えば、矩形形状の薄板などで構成される。この第1の平板部材20は、被除去物を含む液体を一方の表面20a側から導入するための複数の開口21aを有する液体導入部21を備えている。また、第1の平板部材20には、液体導入部21から導入され、フィルタ40によって被除去物が除去された液体を外部に排出するための排出口22が形成されている。ここでは、開口21aを円形に構成した一例を示しているが、開口21aの形状は、特に限定されるものではなく、用途などに応じて適宜に変更可能である。また、ここでは、複数の開口21aを有する液体導入部21を円形状に構成した一例を示しているが、液体導入部21の形状は、特に限定されるものではなく、用途などに応じて適宜に変更可能である。
【0020】
また、図1および図2に示すように、第1の平板部材20の他方の表面20bには、液体導入部21の形状に対応させて形成された凹部23が形成されている。ここでは、液体導入部21が円形状に形成されているので、円形の凹部23が形成されている。なお、液体導入部21を構成する開口21aのすべてが凹部23に連通している。
【0021】
この凹部23には、液体導入部21のすべての開口21aを塞ぐようにフィルタ40が配置されている。また、凹部23の周縁端縁において、フィルタ40は、第1の平板部材20と接合部材によって接合されている。
【0022】
ここで、第1の平板部材20は、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料などで構成される。金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、鉄、アルミニウム、銅などを使用することができる。セラミックス材料としては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭化ケイ素などを使用することができる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂などを使用することができる。第1の平板部材20を構成する材料は、水処理用フィルタモジュール10を使用する環境に応じて適宜に上記した材料から選択することができる。例えば、耐食性や耐熱性が要求される条件下で水処理用フィルタモジュール10を使用する場合には、耐食性や耐熱性に優れた、例えば、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料や、セラミックス材料を使用することが好ましい。
【0023】
また、第1の平板部材20の厚さは、水処理用フィルタモジュール10を薄型化し、水処理用フィルタモジュール10全体の体積に対するフィルタ40の膜表面積を増大するために、50μm〜1000μm程度に形成されることが好ましい。
【0024】
例えば、第1の平板部材20が金属で形成された場合には、第1の平板部材20の凹部23を、エッチング加工、機械加工、プレス加工などによって形成することができる。また、第1の平板部材20がセラミックス材料で形成された場合には、第1の平板部材20の凹部23を、機械加工などによって形成することができる。また、第1の平板部材20が樹脂材料で形成された場合には、第1の平板部材20の凹部23を、機械加工、プレス成型などによって形成することができる。また、樹脂材料が熱可塑性樹脂の場合には、射出成型を利用して第1の平板部材20を形成してもよい。
【0025】
フィルタ40は、例えば、セラミックス材料、有機高分子材料、金属材料などの平膜状の多孔質膜で構成される。セラミックス材料としては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭化ケイ素などを使用することができる。有機高分子材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリカーボネート、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどを使用することができる。金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、鉄、ニッケル、アルミニウム、銅などを使用することができる。フィルタ40を構成する材料は、水処理用フィルタモジュール10を使用する環境に応じて適宜に上記した材料から選択することができる。有機高分子材料を使用する場合には、材料が比較的安価であるため、製造コストの削減を図ることができるとともに、量産性を向上させることができる。また、例えば、耐食性や耐熱性が要求される条件下で水処理用フィルタモジュール10を使用する場合には、耐食性や耐熱性に優れた、例えば、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料や、セラミックス材料を使用することが好ましい。
【0026】
また、フィルタ40の厚さは、水処理用フィルタモジュール10を薄型化し、水処理用フィルタモジュール10全体の体積に対するフィルタ40の膜表面積を増大するために、10μm〜800μm程度に形成されることが好ましい。なお、フィルタ40の孔径、メッシュサイズは、水処理の対象となる液体に含まれる被除去物の大きさに基づいて適宜に選択される。
【0027】
図2に示すように、フィルタ40は、第1の平板部材20の凹部23の形状に対応させて形成され、第1の平板部材20の凹部23に嵌め込むように収容される。フィルタ40が凹部23に収容された状態では、第1の平板部材20に形成された開口21aのすべてが凹部23側からフィルタ40によって塞がれた状態となる。すなわち、第1の平板部材20の開口21aから流入する被除去物を含む液体は、すべてフィルタ40を通過することとなる。
【0028】
前述したように、フィルタ40の周縁部は、第1の平板部材20の凹部23の周縁部に接合部材によって接合されている。この接合部材は、フィルタ40および第1の平板部材20を構成する材料によって、適宜最適なものを使用することができる。
【0029】
ここで、フィルタ40と第1の平板部材20は、それぞれの線膨張係数の違いによって生じる接合部の剥離やき裂などを防止するために、同じ材料で構成することが好ましいが、異種材料で構成することもできる。フィルタ40と第1の平板部材20とが異種材料で構成される場合には、それぞれの線膨張係数の違いによって生じる接合部の剥離やき裂などを防止することを考慮して接合部材を選択することが好ましい。
【0030】
例えば、フィルタ40がセラミックス材料で構成され、第1の平板部材20が金属材料で構成される場合には、接合部材の線膨張係数は、第1の平板部材20の線膨張係数の±10%となる範囲とすることが好ましい。すなわち、接合部材の線膨張係数は、第1の平板部材20の線膨張係数の0.9倍以上、1.1倍以下の範囲となる。例えば、第1の平板部材20としてステンレス鋼を使用した場合、ステンレス鋼の線膨張係数(20℃)は、14.7×10−6/Kであるため、接合部材の線膨張係数は、13.2×10−6/K〜16.2×10−6/Kの範囲に設定される。この範囲とすることで、接合部が剥離したり、接合部にき裂が生じたりすることを防止することができる。
【0031】
第2の平板部材30は、第1の平板部材20と同様に、例えば、矩形形状の薄板などで構成される。なお、第2の平板部材30は、第1の平板部材20と気密に接合する必要があることから、第1の平板部材20と同じ外形形状に構成されることが好ましい。この第2の平板部材30は、フィルタ40を通過した液体を外部に排出するための排出口31を備えている。また、第2の平板部材30の一方の表面30aには、この排出口31にフィルタ40を通過した液体を導く、凹部からなる液体流路32を備えている。また、排出口31は、第1の平板部材20の排出口22と連通するように構成されている。
【0032】
また、凹部からなる液体流路32には、第2の平板部材30が第1の平板部材20に密着された際、第1の平板部材20の他方の表面20b側からフィルタ40を支持する複数の突起部33が形成されている。この複数の突起部33は、凹部からなる液体流路32のフィルタ40に対向する領域に、所定の間隔をあけて設けられている。この突起部33でフィルタ40を第1の平板部材20の他方の表面20b側から支持することによって、例えば、フィルタ40の一方の表面側と他方の表面側の圧力差が大きい場合でも、フィルタ40が液体流路32側へ変形するのを防止することができる。また、突起部33間は、液体流路として機能し、フィルタ40を通過した液体が突起部33間を排出口31に向かって流れる。
【0033】
なお、ここでは、円柱状に形成された突起部33の一例を示しているが、この形状に限られるものではなく、突起部33は、フィルタ40を第1の平板部材20の他方の表面20b側から支持し、突起部間に液体を流す流路を形成することができる構成を有していればよい。
【0034】
また、図1に示すように、排出口31付近の液体流路32の断面積が、排出口31に近づくに伴って徐々に減少するように液体流路32を構成してもよい。換言すると、排出口31付近の液体流路32の流路幅が、排出口31に近づくに伴って徐々に減少するように液体流路32を構成してもよい。なお、排出口31につながる液体流路32の端部の流路幅は、排出口31の開口径と同じか、それよりも若干大きい程度に構成されることが好ましい。このような流路を備えることで、排出口31に液体を導く際の液体流路32における圧力損失を低減させることができる。
【0035】
ここで、第2の平板部材30は、第1の平板部材20と同様に、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料などで構成される。また、第2の平板部材30は、第1の平板部材20と同じ材料で構成されることが好ましい。金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、鉄、銅、アルミニウムなどを使用することができる。セラミックス材料としては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭化ケイ素などを使用することができる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂などを使用することができる。第2の平板部材30を構成する材料は、水処理用フィルタモジュール10が使用される環境に応じて適宜に上記した材料から選択することができる。例えば、耐食性や耐熱性が要求される条件下で水処理用フィルタモジュール10を使用する場合には、耐食性や耐熱性に優れた、例えば、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料や、セラミックス材料を使用することが好ましい。
【0036】
また、第2の平板部材30の厚さは、水処理用フィルタモジュール10を薄型化し、水処理用フィルタモジュール10全体の体積に対するフィルタ40の膜表面積を増大するために、50μm〜1000μm程度に形成されることが好ましい。また、突起部33の高さは、すなわち、液体流路32の高さは、排出口31に液体を導く際の液体流路32における圧力損失を抑制しつつ、第2の平板部材30を薄型化するため、25μm〜900μm程度に形成されることが好ましい。
【0037】
例えば、第2の平板部材30が金属で形成された場合には、液体流路32や突起部33を、エッチング加工、機械加工、プレス加工などによって形成することができる。また、第2の平板部材30がセラミックス材料で形成された場合には、液体流路32や突起部33を、機械加工などによって形成することができる。また、第2の平板部材30が樹脂材料で形成された場合には、液体流路32や突起部33を、機械加工、プレス成型などによって形成することができる。また、樹脂材料が熱可塑性樹脂の場合には、射出成型を利用して第2の平板部材30を形成してもよい。
【0038】
なお、第1の平板部材20の他方の表面20bの外周縁と、第2の平板部材30の一方の表面30aの外周縁とを接合部材によって接合することで、第1の平板部材20と第2の平板部材30は、外周部から液体が外部に流出することがないように、気密に接合される。接合部材は、第1の平板部材20および第2の平板部材30を構成する材料によって、適宜最適なものを使用することができる。
【0039】
上記した水処理用フィルタモジュール10における水処理工程について説明する。
【0040】
被除去物を含む液体は、第1の平板部材20の複数の開口21aから水処理用フィルタモジュール10内に流入し、フィルタ40を通過する。フィルタ40によって被除去物が除去された液体は、液体流路32に設けられた突起部33間を流れ、液体流路32によって排出口22、31に導かれ、外部に排出される。
【0041】
上記したように、一実施の形態の水処理用フィルタモジュール10によれば、第1の平板部材20の他方の表面20b側からフィルタ40を支持する複数の突起部33を備えることで、フィルタ40の一方の表面側と他方の表面側の圧力差が大きい場合でも、フィルタ40が液体流路32側へ変形するのを防止することができる。
【0042】
また、第1の平板部材20、第2の平板部材30およびフィルタ40を薄い平板状の部材で構成して薄型化を図ることができる。また、水処理用フィルタモジュール10を薄型化することで、水処理用フィルタモジュール10全体の体積に対するフィルタ40の膜表面積を増大することができる。これによって、水処理用フィルタモジュール10における水処理能力を向上させることができる。
【0043】
さらに、複数の水処理用フィルタモジュール10を積層し、モジュール積層体を構成した場合、所定の空間に多数の水処理用フィルタモジュール10を配置することができるので、モジュール積層体全体の体積に対するフィルタ40の膜表面積を増大することができる。これによって、モジュール積層における水処理能力を向上させることができる。
【0044】
次に、複数の一実施の形態の水処理用フィルタモジュール10を積層して構成されるモジュール積層体50、およびこのモジュール積層体50を備える水処理用濾過装置100について説明する。
【0045】
図3は、水処理用フィルタモジュール10を複数積層して構成されるモジュール積層体50の断面を示す図である。図4は、モジュール積層体50を備える水処理用濾過装置100の外観を示す斜視図である。
【0046】
図3に示すように、モジュール積層体50は、例えば、開口51aが形成された矩形形状の平板からなるスペーサ部材51を介して、複数の水処理用フィルタモジュール10をそれぞれ積層することで構成されている。また、スペーサ部材51の開口51aおよびモジュール積層体50の排出口22、31のそれぞれが連通するように積層して、各水処理用フィルタモジュール10によって被除去物が取り除かれた液体をモジュール積層体50の外部に導くための排出流路60を形成している。
【0047】
この排出流路60の一端には、排出流路60を流れる液体を外部に導くための配管61が設けられ、排出流路60の他端には、液体が外部へ流出するのを防止するための封止部材62が設けられている。これによって、排出流路60を流れる液体は、排出流路60の一端から配管61を通って外部に導かれる。なお、排出流路60の両端に配管61を設け、排出流路60の両端から液体を外部に導くように構成してもよい。
【0048】
ここで、モジュール積層体50は、例えば、各水処理用フィルタモジュール10およびスペーサ部材51の所定の対応する位置に形成された固定用開口(図示しない)を介して、図3および図4に示すように、例えば、ボルトおよびナットなどの固定部材で各水処理用フィルタモジュール10およびスペーサ部材51を固定することで構成されてもよい。なお、各水処理用フィルタモジュール10およびスペーサ部材51の固定方法は、これに限られるものではなく、例えば、各水処理用フィルタモジュール10およびスペーサ部材51間を、前述した接合部材で接合して積層体としてもよい。
【0049】
スペーサ部材51は、上記した、第1の平板部材20や第2の平板部材30を構成する材料として示した材料から、使用される環境などに応じて選択された材料で構成される。例えば、スペーサ部材51を、水処理用フィルタモジュール10の第1の平板部材20や第2の平板部材30に使用されている材料と同じ材料で構成することができる。また、スペーサ部材51の厚さは、モジュール積層体50全体の体積に対するフィルタ40の膜表面積を増大するために、50μm〜1000μm程度に形成されることが好ましい。
【0050】
上記したようにスペーサ部材51を介して複数の水処理用フィルタモジュール10をそれぞれ積層することで、各水処理用フィルタモジュール10間に所定の間隙が形成される。この間隙から被除去物を含む液体が各水処理用フィルタモジュール10内へ流入する。
【0051】
図4に示すように、水処理用濾過装置100は、収容容器101と、この収容容器101の内部に配置されたモジュール積層体50とを備えている。
【0052】
収容容器101は、例えば、6面が壁に覆われた直方体形状の筐体で構成される。この収容容器101の側壁には、モジュール積層体50からの液体を外部に導くための液体排出口102が、モジュール積層体50の配管61が設けられた位置に対応させて形成されている。そして、この液体排出口102には、モジュール積層体50の配管61が接続されている。また、収容容器101の側壁には、被除去物を含む液体を収容容器101内に導入するための導入口103が形成されている。なお、導入口103は、液体排出口102が設けられた側壁に形成されることに限られるものではなく、例えば、水処理用フィルタモジュール10の積層方向に沿う側壁に形成されてもよい。
【0053】
また、ここでは、導入口103から導入された被除去物を含む液体をすべてモジュール積層体50において水処理する構成を示しているが、この構成に限られるものではない。例えば、導入口103が形成された側壁に対向する側壁に、被除去物を含む液体を外部に排出する排出口(図示しない)を備え、収容容器101に供給された被除去物を含む液体の一部を、モジュール積層体50において水処理する構成としてもよい。すなわち、モジュール積層体50で水処理されない被除去物を含む液体を、排出口(図示しない)が外部に排出する構成としてもよい。この場合においても、水処理用フィルタモジュール10のフィルタ40を介して、水処理用フィルタモジュール10の外側の圧力が内側の圧力よりも高くなるように、収容容器101内における被除去物を含む液体の供給圧力を調整している。換言すると、液体を、水処理用フィルタモジュール10のフィルタ40を通過させて収容容器101の液体排出口102から排出可能な程度に、収容容器101内における被除去物を含む液体の供給圧力を調整している。
【0054】
なお、図示していないが、モジュール積層体50は、所定の支持部材によって収容容器101内の所定の位置に支持または固定されている。また、収容容器101を構成する材料は、特に限定されるものではないが、収容容器101内に導入される被除去物を含む液体の、例えば、種類や温度条件などに応じて適宜に好適な材料が選択される。例えば、耐食性や耐熱性が要求される場合には、収容容器101を構成する材料として、耐食性や耐熱性に優れた、例えば、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料や、セラミックス材料などを選択することができる。
【0055】
上記した水処理用濾過装置100における水処理工程について説明する。
【0056】
収容容器101の導入口103から導入された被除去物を含む液体は、モジュール積層体50の各水処理用フィルタモジュール10の第1の平板部材20に形成された複数の開口21aから水処理用フィルタモジュール10内に流入し、フィルタ40を通過する。フィルタ40によって被除去物が除去された液体は、液体流路32に設けられた突起部33間を流れ、液体流路32によって排出口22、31に導かれ、排出流路60に流入する。排出流路60に流入した液体は、収容容器101の液体排出口102から外部に排出される。
【0057】
上記したモジュール積層体50は、複数の、上述した薄型化された水処理用フィルタモジュール10を積層して構成されるため、例えば、所定の空間に多数の水処理用フィルタモジュール10を配置することができる。そのため、モジュール積層体全体の体積に対するフィルタ40の膜表面積を増大することができ、水処理能力を向上させることができる。
【0058】
また、モジュール積層体50を備えた水処理用濾過装置100においても、モジュール積層体50の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、所定の空間に多数の水処理用フィルタモジュール10を配置することができるため、モジュール積層体全体の体積に対するフィルタ40の膜表面積を増大することができる。そのため、水処理能力に優れた水処理用濾過装置100を得ることができる。
【0059】
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
10…水処理用フィルタモジュール、20…第1の平板部材、20a、20b、30a…表面、21…液体導入部、21a、51a…開口、22、31…排出口、23…凹部、30…第2の平板部材、32…液体流路、33…突起部、40…フィルタ、50…モジュール積層体、51…スペーサ部材、60…排出流路、61…配管、62…封止部材、100…水処理用濾過装置、101…収容容器、102…液体排出口、103…導入口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被除去物を含む液体を一方の表面側から導入するための複数の開口を有する液体導入部、および導入された液体を排出するための第1の排出口を有する第1の平板部材と、
前記第1の平板部材の他方の表面に前記液体導入部に対応させて形成された、前記液体導入部と連通する凹部に、前記液体導入部のすべての開口を塞ぐように配置された平膜状のフィルタと、
前記フィルタを通過した液体を排出するための、前記第1の排出口と連通する第2の排出口、前記第2の排出口に液体を導く凹部からなる液体流路、および前記液体流路に形成された、前記第1の平板部材の他方の表面側から前記フィルタを支持する複数の突起部を有し、前記第1の平板部材と密着された第2の平板部材と
を具備することを特徴とする水処理用フィルタモジュール。
【請求項2】
前記第2の排出口付近の前記液体流路の断面積が、前記第2の排出口に近づくに伴って徐々に減少していることを特徴とする請求項1記載の水処理用フィルタモジュール。
【請求項3】
前記第1の平板部材および前記第2の平板部材が、金属材料、セラミックス材料、および熱可塑性または熱硬化性の樹脂材料から選択されたいずれかの材料で構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の水処理用フィルタモジュール。
【請求項4】
前記フィルタが、セラミックス材料、有機高分子材料および金属材料から選択されたいずれかの材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水処理用フィルタモジュール。
【請求項5】
複数の、請求項1乃至4のいずれか1項記載の水処理用フィルタモジュールを、それぞれ、開口が形成されたスペーサ部材を介して、前記スペーサ部材の開口、前記水処理用フィルタモジュールの前記第1の排出口および前記第2の排出口のそれぞれが連通してなる排出流路を形成するように、積層して構成されたモジュール積層体と、
前記モジュール積層体を収容し、前記排出流路からの液体を外部に排出するための排出口、および被除去物を含む液体を内部に導入するための導入口を少なくとも有する収容容器と
を具備することを特徴とする水処理用濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−253353(P2010−253353A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104384(P2009−104384)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】