説明

水処理用炭−金属複合体及び炭−金属複合体用成型体

【課題】
少量で多量の有害物質を除去することができ、容易に製造することができる有害物質除去剤を提供することである。
【解決手段】
金属(M)及び炭(C)を含有してなり、金属(M)と炭(C)とが接触していることを特徴とする水処理用炭−金属複合体を用いる。金属(M)はマグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、錫、鉛又は銅が好ましい。金属(M)が金属粒子(MP)であり、炭(C)が炭粒子(CP)であることが好ましい。
また、水溶性コーティング剤(AC)でコーティングされた金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)と、バインダー(V)とを含有してなることを特徴とする炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにしたことを特徴とする炭−金属複合体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理用炭−金属複合体及び炭−金属複合体用成型体に関する。さらに詳しくは排水等に含まれる有害物質を除去するために最適な水処理用炭−金属複合体及びこれを調製するための炭−金属複合体用成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
有害元素汚染物質に含まれる有害元素を吸着するための有害元素吸着剤であって、pHが2.5〜3.0の酸を用いて酸化鉄を処理して得られる粒状の調製酸化鉄からなる有害元素吸着剤が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、排水に含まれるリン、ホウ素、フッ素、ヒ素等を吸着除去するために、有機高分子樹脂(エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリビニルフッ化ビニリデン等)及び無機イオン吸着体(金属酸化物を含むむの)を含んでなる外表面に開口する連通孔を有する多孔性の成型体であって、連通孔を形成するフィブリルの内部に空隙を有し、かつ、該空隙の少なくとも一部はフィブリルの表面で開口しており、該フィブリルの外表面及び内部の空隙表面に、細孔容積が0.05〜0.25ml/gである無機イオン吸着体が担持されている多孔性成型体が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−000587号公報
【特許文献2】特開2006−297382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
調製酸化鉄からなる有害元素吸着剤や、吸着体が担持されている多孔性成型体では、多量の排水を処理するには多量の吸着剤が必要となるという問題がある。また、この他、吸着剤の製造に危険性の高い強酸を使用したり、特殊な製造装置が必要であるという問題がある。
本発明の目的は、水に含まれる多量の有害物質を少量で除去することができ、容易に製造することができる有害物質除去剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水処理用炭−金属複合体の特徴は、金属(M)及び炭(C)を含有してなり、
金属(M)と炭(C)とが接触している点を要旨とする。
【0007】
本発明の炭−金属複合体用成型体の特徴は、水溶性コーティング剤(AC)でコーティングされた金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)と、バインダー(V)とを含有してなる点を要旨とする。
【0008】
本発明の炭−金属複合体の特徴は、上記の炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした点を要旨とする。
【0009】
本発明の炭−金属複合体の製造方法の特徴は、金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を含有してなり、
金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触してなる水処理用炭−金属複合体を製造する方法であって、
方法(1−21)〜(1−24)のいずれかの方法で製造する点を要旨とする。
【0010】
(1−21)コーティング混合粒子を得るために、金属粒子(MP)、炭粒子(CP)及び水溶性コーティング剤(AC)とを均一混合する工程(1);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(2);並びに混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程(3);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(4)を含む方法。
【0011】
(1−22)金属粒子(MP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング金属粒子を得る工程(1);炭粒子(CP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング炭粒子を得る工程(2);コーティング金属粒子及びコーティング炭粒子を均一混合してコーティング混合粒子を得る工程(3);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(4);混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程(5);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(6)を含む方法。
【0012】
(1−23)金属粒子(MP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング金属粒子を得る工程(1);コーティング金属粒子及び炭粒子(CP)を均一混合してコーティング混合粒子を得る工程(2);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(3);混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程(4);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(5)を含む方法。
【0013】
(1−24)炭粒子(CP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング炭粒子を得る工程(1);コーティング炭粒子及び金属粒子を均一混合してコーティング混合粒子を得る工程(2);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(3);混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程(4);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(5)を含む方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水処理用炭-金属複合体は、使用量が少なくても多量の有害物質を除去することができる。
本発明の炭−金属複合体用成型体は、水を作用させることによって、容易に炭−金属複合体を調製できる。
本発明の炭−金属複合体用成型体の製造方法によると、炭−金属複合体用成型体を容易に製造できる。また、危険性の高い強酸等や、特殊な製造装置を使用せずに製造できるため、安全性の面及びコストの面にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
金属(M)としては、水と激しく反応する金属でなければ制限はないが、イオン化傾向等の観点から、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、錫、鉛又は銅が好ましく、さらに好ましくはマグネシウム、アルミニウム、亜鉛又は鉄、イオンの電荷の観点等からさらに好ましくはアルミニウム又は鉄である。
【0016】
炭(C)としては、有機物{竹、木、ヤシガラ、籐及び鶏糞等}を蒸し焼きにして得られる炭化物であれば制限なく使用できる。
【0017】
炭(C)の原料となる有機物としては、炭化できる物であれば制限がないが、品質等の観点から、竹及び木が好ましい。竹及び木のうち、環境保護等の観点から、廃材(建築廃材、家具廃材、使用済み割りばし、廃パレット)、植木剪定材及びこれらの破砕物を圧縮成形した圧縮成型体等を用いることができる。
【0018】
炭(C)は、縦型炭化炉で製造されることが好ましい。炭化温度(℃)としては、500〜1000程度が好ましく、さらに好ましくは700〜800程度である。
【0019】
炭(C)自身は、必ずしも多孔質である必要はないが、多孔質であることにより、有害物質を吸着できるため、多孔質であることが好ましい。
【0020】
炭(C)の精練度は、0〜6程度が好ましく、さらに好ましくは0〜5、特に好ましくは0〜4、最も好ましくは0〜3である。
【0021】
精錬度とは、炭化の度合いを表した数字であり、精錬計{たとえば、株式会社三陽電機製作所製の木炭精錬計}で測定試料表面の2点間の電気抵抗値(Ω/cm)を測定し、この電気抵抗値の指数部分の数字を精錬度としたものである。この精錬度が低い程、電気抵抗が小さく、グラファイト構造を多く含むということができる。
【0022】
本発明において、金属(M)と炭(C)とは接触している必要がある。金属(M)単独、炭(C)単独、又は金属(M)と炭(C)とが非接触の場合、本発明の効果が発現しないこと、水処理が進行するにつれて金属(M)が目減りしていること、精錬度の大きな炭(C)を用いると、本発明の効果が発現しがたいこと等から、金属(M)と炭(C)とが電気的に接触することにより、金属(M)が水へ溶出し{金属(M)はイオンとして溶出していると考えられる。異種金属と接触することによる金属(M)の腐食が生じていると考えられる。}、本発明の効果が発現しているものと考えられる。したがって、金属(M)と炭(C)との接触は、電荷の授受ができる程度に接触していれば足りると考えられる。
【0023】
上記に記載したように、本発明の効果の発現機構の考察から、金属(M)及び炭(C)と水との接触面積を大きくすることが、水処理を高い効率で行うことができるものと考えられる。
したがって、金属(M)及び炭(C)の形状は、大きな塊であるよりも、板状、波板状、棒状又は粒子状等であることが好ましい。さらに好ましくは金属(M)が金属粒子(MP)であり、炭(C)が炭粒子(CP)であることである。
【0024】
金属(M)及び炭(C)の含有量は特に制限はないが、有害物質の除去等の観点から次の範囲が好ましい。
金属(M)の含有量(重量%)は、金属(M)及び炭(C)の重量に基づいて、10〜90が好ましく、さらに好ましくは20〜80、特に好ましくは24〜70である。
炭(C)の含有量(重量%)は、金属(M)及び炭(C)の重量に基づいて、10〜90が好ましく、さらに好ましくは20〜80、特に好ましくは30〜76である。
【0025】
本発明の炭−金属複合体は、水処理の過程で、金属(M)及び炭(C)が常に非接触とならなければ、どのような形態であってもよく、たとえば、以下のような形態が含まれる。
【0026】
(1)金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を一体成型した形態(1)
(2)金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を網容器(多数の孔を持つ容器又は袋、及び布袋等を含む。以下同じである。)内に保持した形態(2)
(3)金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を水の流入口及び排出口をもつカートリッジ内に保持した形態(3)
(4)板状の金属(M)及び炭粒子(CP)を水の流入口及び排出口をもつ容器内に保持した形態(4)
(5)金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を水の流入口及び排出口をもつ容器内に保持した形態(5)
(6)金属(M)製の網容器内に炭粒子(CP)を保持した形態(6)
(7)金属(M)製の網容器内に炭粒子(CP)及び金属粒子(MP)を保持した形態(7)
(8)炭(C)製の網容器内に金属粒子(MP)を保持した形態(8)
(9)炭(C)製の網容器内に炭粒子(CP)及び金属粒子(MP)を保持した形態(9)
【0027】
金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を一体成型した形態(1)は、以下の方法等により得ることができる。
【0028】
炭粒子(CP)と半溶融させた金属粒子(MP)とを混合・成型して、冷却する方法(1−10)
水溶性コーティング剤(AC)でコーティングされた金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)と、バインダー(V)とを混合・成型して、バインダー(V)を固化した後水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出する方法(1−20)
【0029】
方法(1−10)としては、具体的に以下の方法等が適用できる。
【0030】
炭粒子(CP)と金属粒子(MP)とを混合しながら、加熱し金属粒子を半溶融させて(金属粒子の表面付近を溶融させて)、成型した後(必要により加圧成型する。以下同じである)、冷却する方法(1−11)
【0031】
半溶融させた金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とを混合し、成型した後、冷却する方法(1−12)
【0032】
成型用の型に、炭粒子(CP)及び金属粒子(MP)の混合物を充填し、この混合物に通電することにより金属粒子を半溶融させた後、冷却する方法(1−13){特開2002−35955号公報等}
【0033】
金属粒子(MP)を溶融する加熱温度は、各金属の溶融温度及び金属粒子の大きさ等により適宜決定される。加熱雰囲気は、炭粒子(CP)の発火を防ぐために、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0034】
方法(1−20)としては、具体的に以下の方法等が適用できる。
【0035】
コーティング混合粒子を得るために、金属粒子(MP)、炭粒子(CP)及び水溶性コーティング剤(AC)とを均一混合する工程(1);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(2);並びに混合粒子スラリーを成型して(必要に応じて加圧する。以下同じである。)、炭−金属複合体用成型体を得る工程(3);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(4)を含む方法(1−21)
【0036】
金属粒子(MP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング金属粒子を得る工程(1);炭粒子(CP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング炭粒子を得る工程(2);コーティング金属粒子及びコーティング炭粒子を均一混合してコーティング混合粒子を得る工程(3);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(4);混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程(5);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(6)を含む方法(1−22)
【0037】
金属粒子(MP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング金属粒子を得る工程(1);コーティング金属粒子及び炭粒子(CP)を均一混合してコーティング混合粒子を得る工程(2);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(3);混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程(4);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(5)を含む方法(1−23)
【0038】
炭粒子(CP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング炭粒子を得る工程(1);コーティング炭粒子及び金属粒子を均一混合してコーティング混合粒子を得る工程(2);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(3);混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程(4);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(5)を含む方法(1−24)
【0039】
水溶性コーティング剤(AC)は、水に容易に溶解でき、金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)をコーティングできれば制限なく、合成水溶性高分子{ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド(ポリエチレングリコール)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びこれらのポリマーを構成するモノマー及びその他のモノマーを組合わせた共重合体等}、半合成高分子{ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ペクチン酸及び水溶性ゼラチン等}及び天然高分子{でんぷん、寒天、カラギーナン、アルギン酸ソーダ、グアーガム、ペクチン、デキストリン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、米粉、小麦でんぷん及び生ふ等}が含まれる。
【0040】
これらの水溶性コーティング剤(AC)のうち、環境負荷等の観点から、半合成高分子及び天然高分子が好ましく、さらに好ましくは天然高分子、特に好ましくはでんぷんである。
【0041】
水溶性コーティング剤(AC)のコーティング厚みは、炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できれば制限がない{コーティング混合粒子とバインダー(V)と混合して得た混合スラリーを成型する際、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが水溶性コーティング剤(AC)を介して近接していればよい。}。
【0042】
水溶性コーティング剤(AC)は、水溶液又は溶媒溶液として用いることができる。この場合の濃度としては、水溶性コーティング剤(AC)の種類によって、溶液粘度等を考慮して適宜決定される。
溶媒としては、水性溶媒及びこれと水との混合物が含まれる。水性溶媒としては、炭素数1〜4のアルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びn−ブチルアルコール等)、炭素数3〜5のケトン(アセトン、メチルエチルケトン及びジメチルスルホキシド等)、炭素数3〜5のアミド(ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン等)、炭素数3〜5のエステル(酢酸メチル、酢酸エチル及びプロピオン酸メチル等)及びこれらの混合物が含まれる。
【0043】
金属粒子(MP)としては、水と激しく反応する金属でなければ制限はないが、イオン化傾向等の観点から、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、錫、鉛又は銅からなる金属粒子が好ましく、さらに好ましくはマグネシウム、アルミニウム、亜鉛又は鉄からなる金属粒子、イオンの電荷の観点等からさらに好ましくはアルミニウム又は鉄からなる金属粒子である。
【0044】
金属粒子(MP)の重量平均粒子径(mm)は、成型性及び有害物質の除去等の観点から、0.1〜20程度が好ましく、さらに好ましくは0.2〜10程度、特に好ましくは0.5〜5程度である。
【0045】
重量平均粒子径は、測定試料の粒度分布を測定し、対数確率紙{横軸:粒径、縦軸:累積含有量(重量%)}に、累積含有量と粒子径との関係をプロットし、累積含有量が50重量%に対応する粒子径を求めることにより得られる。粒度分布は、JIS Z8815−1994に準拠して測定され、ふるいを目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広いふるいの上に、測定試料を入れ、ふるい振動機にて篩い分けし、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される。
【0046】
なお、金属粒子(MP)の大きさに関して、炭−金属複合体を形成した際、金属粒子と有害物質を含む水との接触性を良好にするため、小さな金属粒子を含有することが好ましく、一方、有害物質の除去効果を長期間維持するため、大きな金属粒子を含有することが好ましい。すなわち、上記理由から、大きな金属粒子と小さな金属粒子との両方を含むことが好ましく、金属粒子の大きさを均一にしないことが好ましい。
【0047】
金属粒子(MP)の形状に特に制限はないが、炭−金属複合体を形成した際、金属粒子と有害物質を含む水との接触性を良好にするため、不定形状の金属粒子及び/又は繊維状の金属粒子を含むことが好ましく、さらに好ましくは繊維状の金属粒子を含むことである。繊維状の金属粒子を含有すると、上記理由に加えて、繊維状の金属粒子同士の接触や、繊維状の金属粒子と炭粒子(CP)との接触が増大し、繊維状の金属粒子と炭粒子(CP)との接触が確実になるため好ましいと考えられる。
【0048】
繊維状の金属粒子を含有する場合、繊維状の金属粒子の長さ(mm)は、0.1〜20程度が好ましく、さらに好ましくは0.2〜10程度、特に好ましくは0.5〜5程度である。この場合、繊維状の金属粒子の太さ(直径)は、1μm〜5mm程度が好ましく、さらに好ましくは2μm〜4mm程度、特に好ましくは10μm〜1mm程度である。
【0049】
以上のような金属粒子(MP)は、工業的に得ることができ、また、工業製品を必要により混合することにより調製できるが、より安価に入手するために、金属製品や金属部品等を製造する際に発生する切削粉や、回収金属{回収アルミニウム缶、回収スチール缶、その他の回収金属屑等;必要によりシュレッターで破砕してもよい}を用いることができる。切削粉や回収金属を用いる場合、水不溶性の切削油剤や油等が付着しているときこれを洗浄する必要があり、水溶性の切削油剤等が付着しているときはそのまま用いてもよいし洗浄して用いてもよい。
【0050】
炭粒子(CP)の原料となる有機物の大きさは、ヤシガラ等のように元々小さなものそのまま炭化させ、竹や木等のように大きなものは2〜10cm程度以内の大きさ破砕してから炭化させる。
【0051】
炭粒子(CP)は、破砕等により粒子を小さくしてもよく、さらに、スクリーン(金網等)により篩い分けしてもよい。
【0052】
バインダー(V)は、水溶性コーティング剤(AC)でコーティングされた金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を成型することができるものであれば制限なく使用でき、有機バインダー及び無機バインダーが含まれる。
【0053】
有機バインダーとしては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びウレタン樹脂等が挙げられる。
無機バインダーとしては、セメント、石膏及び粘土等が挙げられる。
これらのバインダー(V)のうち、無機バインダーが好ましく、さらに好ましくはセメントである。
【0054】
バインダー(V)の含有量は、混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得ることができれば制限がないが、成型体の強度が確保できればできるだけ少ないことが好ましく、次の範囲であることが望ましい。
バインダー(V)の含有量(重量%)は、金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)の重量に基づいて、30〜80が好ましく、さらに好ましくは40〜70、特に好ましくは50〜60である。
【0055】
バインダー(V)として、セメントを用いる場合、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、アルカリ土類金属水酸化物、酸化アルカリ土類金属、ハロゲン化アンモニウム、遷移金属酸化物、第13属元素の酸化物及び遷移金属ハロゲン化物からなる群より選ばれる少なくとも1種をセメントに含有させることが好ましい。これらの無機化合物を含有すると、セメントに混入させる水の量を少なくすることができ、セメントが固化する前に、水溶性コーティング剤(AC)が水へ溶出してしまうことを防止できる。また、これらの無機化合物を含有すると、含有しない場合に比べて、強度を増すことができる。
【0056】
ハロゲン化アルカリ金属としては、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム及びヨウ化リチウム等が挙げられる。
ハロゲン化アルカリ土類金属としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び臭化マグネシウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウム等が挙げられる。
酸化アルカリ土類金属としては、酸化マグネシウム等が挙げられる。
ハロゲン化アンモニウムとしては、塩化アンモニウム及び臭化アンモニウム等が挙げられる。
遷移金属酸化物としては、酸化第一鉄、酸化第二鉄及び酸化亜鉛等が挙げられる。
第13属元素の酸化物としては、酸化ホウ素及び酸化アルミニウム等が挙げられる。
遷移金属ハロゲン化物としては、塩化第二鉄、塩化ニッケル、塩化第二銅及び塩化亜鉛等が挙げられる。
【0057】
水溶性コーティング剤(AC)を金属粒子(MP)及び/又は炭粒子(CP)にコーティングする方法としては、公知の方法を適用でき、たとえば、回転するコーティングパンを使用する方法、及び流動層を使用する方法が挙げられる。これらの他、水溶性コーティング剤(AC)の水溶液又は溶媒溶液に、金属粒子(MP)及び/又は炭粒子(CP)を浸漬した後、コーティング粒子を金網等ですくいあげる方法、同じく浸漬した後、コーティング粒子を濾別する方法等も適用できる。
【0058】
混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程において、必要に応じて加圧しながら成型してもよい。
加圧する場合、圧力は、混合粒子スラリーの粘度等を考慮して、適宜決定される。
【0059】
炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させるためには、炭−金属複合体用成型体に水を注いでもよいし、水の中に炭−金属複合体用成型体を浸漬してもよく、水中に炭−金属複合体用成型体を浸漬してもよい。
【0060】
炭−金属複合体用成型体に含まれる水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させることによって、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようになる。すなわち、炭−金属複合体用成型体から、炭−金属複合体が調製できる。
【0061】
金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を網容器内に保持した形態(2)は、金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を混合して、網容器内に入れて、金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)が網容器外に出てこないようにすることにより得ることができる。
【0062】
網容器としては、網状の容器(たとえば、ステンレス製金網で調製した容器や袋)の他、多数の孔を持つ容器(ステンレス製パンチングメタルで調製した容器)又は袋(たとえば、多数の穴を開けたポリエチレン製の袋)、及び布袋(たとえば、不織布で調製した袋、木綿で調製した袋)等を含む。
【0063】
金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を水の流入口及び排出口をもつカートリッジ内に保持した形態(3)は、金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を混合して、水の流入口及び排出口をもつカートリッジ内に入れて、密閉することにより得ることができる。
【0064】
水の流入口及び排出口をもつカートリッジは、公知のものが適用できる。なお、水の流入口及び排出口には、金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)が流出しないように、フィルター又は網を設けることが好ましい。
【0065】
板状の金属(M)及び炭粒子(CP)を水の流入口及び排出口をもつ容器内に保持した形態(4)は、水の流入口及び排出口をもつ容器内に、板状の金属(M)及び炭粒子(CP)を混合状態で入れることにより得ることができる。
【0066】
水の流入口及び排出口をもつ容器は、板状の金属(M)及び炭粒子(CP)を保持できれば制限がない。なお、水の流入口及び排出口には、炭粒子(CP)が流出しないように、フィルター又は網を設けることが好ましい。
【0067】
板状の金属(M)は、表面積を増大させるために、表面に模様を設けたり、板に孔を空けたり、板自体を網目状にしたり、板自体を波板状にしたり、板自体を螺旋状に丸めたり、これらを組合わせたりしてもよい。
板の大きさ(厚みも含む)は、容器内に収納できれば制限ない。
【0068】
金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を水の流入口及び排出口をもつ容器内に保持した形態(5)は、金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を混合して、水の流入口及び排出口をもつ容器内に入れることにより得ることができる。
【0069】
水の流入口及び排出口をもつ容器は、金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を保持できれば制限がない。なお、水の流入口及び排出口には、金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)が流出しないように、フィルター又は網を設けることが好ましい。
【0070】
金属(M)製の網容器内に炭粒子(CP)を保持した形態(6)は、金属(M)製の網容器内に炭粒子(CP)を入れることにより得ることができる。
【0071】
金属(M)製の網容器の形状や大きさは、炭粒子(CP)を保持することができれば制限がない。しかし、水処理の進行と共に、金属(M)が徐々に目減りするため、肉厚にすることが好ましい。
【0072】
金属(M)製の網容器内に炭粒子(CP)及び金属粒子(MP)を保持した形態(7)は、金属(M)製の網容器内に炭粒子(CP)及び金属粒子(MP)を入れることにより得ることができる。
【0073】
網容器の金属(M)の種類と、金属粒子(MP)の種類とは、同じでも異なってもよいが、網容器の金属(M)のイオン化傾向が、金属粒子(MP)のイオン化傾向よりも小さいことが好ましい{網容器の金属(M)が、金属粒子(MP)よりも水に溶出しにくいことが好ましい。}。
【0074】
炭(C)製の網容器内に金属粒子(MP)を保持した形態(8)は、炭(C)製の網容器内に金属粒子(MP)を入れることにより得ることができる。
【0075】
炭(C)製の網容器の形状や大きさは、金属粒子(MP)を保持することができれば制限がない。炭(C)製の網容器は、炭を網目状にくみ上げてもよく、炭の原料である有機物を網目状に加工してから炭化してもよい。
【0076】
炭(C)製の網容器内に炭粒子(CP)及び金属粒子(MP)を保持した形態(9)は、炭粒子(CP)及び金属粒子(MP)を混合して、炭(C)製の網容器内に入れることにより得ることができる。
【0077】
本発明の炭−金属複合体は、この内部に水が自由に出入りできる隙間を設けることが好ましい。すなわち、本発明の炭−金属複合体は多孔質であることが好ましい。
【0078】
本発明の炭−金属複合体の形態によって、水に浸漬したり、炭−金属複合体の内部に水を導いたりすることができる。
金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を一体成型した形態(1);金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を網容器内に保持した形態(2);金属(M)製の網容器内に炭粒子(CP)を保持した形態(6);金属(M)製の網容器内に炭粒子(CP)及び金属粒子(MP)を保持した形態(7);炭(C)製の網容器内に金属粒子(MP)を保持した形態(8);並びに炭(C)製の網容器内に炭粒子(CP)及び金属粒子(MP)を保持した形態(9)の場合、水に浸漬することが好ましい。なお、これらを容器に保持して、水をこの容器に導いてもよい。
【0079】
金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を水の流入口及び排出口をもつカートリッジ内に保持した形態(3);板状の金属(M)及び炭粒子(CP)を水の流入口及び排出口をもつ容器内に保持した形態(4);並びに金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を水の流入口及び排出口をもつ容器内に保持した形態(5)の場合、流入口から水を流入させることにより、水を処理する。
【0080】
本発明の炭−金属複合体で処理する水のpHは、金属(M)又は金属粒子(MP)の種類等によって適正な範囲があると考えられる。たとえば、金属(M)又は金属粒子(MP)がアルミニウム又はアルミニウム粒子の場合、6〜8が好ましく、さらに好ましくは6.5〜7.5である。すなわち、水のpHは中性であることが好ましい。一方、金属(M)又は金属粒子(MP)が鉄又は鉄粒子の場合、9〜11が好ましく、さらに好ましくは9.5〜10.5である。
【0081】
本発明の炭−金属複合体で処理した水は、固液分離して(沈殿槽等を経て)から排出又は次工程へ移行することが好ましい。
【0082】
本発明の炭−金属複合体が除去できる有害物質としては、ヒ素、フッ素、ホウ素、リン、アンチモン、亜鉛、クロム、ニッケル、銅、鉛及び/又はケイ素等の元素を含むものの他に、コロイド、エマルション、色素等も含まれる。
【実施例】
【0083】
以下、特記しない限り、部は重量部と意味し、%は重量%を意味する。
<実施例1>
木質廃パレット(南洋材)を破砕して得たチップ(最長長さ2〜10cm)を、縦型炭化炉(草・木チップ連続製炭機、TYPE180kg/Hr、村井鉄工所)で炭化させた後(700〜800℃、30〜40分間)、目開き2.8mmの金網を通過させて、最長長さ0.1〜2.8cmの炭粒子(CP1)を得た。炭粒子(CP1)の精練度は3であった。
アルミニウム加工工場から排出されたアルミニウム切削屑(繊維状の切削屑を多く含む)を目開き2.8mmの金網を通過させて、金属粒子(MP1)を得た。金属粒子(MP1)の重量平均粒子径は100μmであった。
水溶性コーティング剤(AC1){コーンスターチ、フエキ糊、不易糊工業株式会社、「フエキ」は同社の登録商標である}300部及び水1000部からなる水溶液に、金属粒子(MP1)150部を均一混合した後、目開き63μmの金網で濾過して、コーティング金属粒子を得た。引き続いて、このコーティング金属粒子と、炭粒子(CP1)400部とを均一混合した後、約25℃で約12時間風乾して、顆粒状のコーティング混合粒子(CM1)を得た。
【0084】
コーティング混合粒子(CM1)2200部、炭粒子(CP1)300部、普通ポルトランドセメント1500部、無機化合物水溶液{塩化カルシウム2部、塩化カリウム2部、塩化第二鉄2部、酸化マグネシウム2部、塩化マグネシウム2部、塩化アンモニウム2部、水2500部を均一混合した水溶液)20部及び水700部とを均一混合して、混合粒子スラリー(MPS1)を得た。この混合粒子スラリー(MPS1)を内径50mm深さ30mmの型に注いで、およそ1kg/cmの圧力を加えた後、24時間静置して、本発明の炭−金属複合体用成型体(1)を得た。
【0085】
20個の炭−金属複合体用成型体(1)を目開き150μmの金網製の容器に入れ、これをアンチモン元素濃度2ppmの工場排水(1)(流量6000リットル/日)の流路(シックナーの直前)に浸漬させて、アンチモン元素濃度を1、6、8日後に測定し、この結果を次表に示した。
なお、アンチモン元素濃度は、JIS K0102:2008「工業排水試験方法」の「62.2 水素化物発生原子吸光法」で定量した。
【0086】
【表1】



【0087】
重金属元素を含む工場排水(2)500mlを1リットルガラス瓶に採取し、この中に、本発明の炭−金属複合体用成型体(1)を1個入れ、重金属元素濃度を18、24、48、144時間後に測定し、この結果を次表に示した。
なお、銅元素濃度はJIS K0102:2008「工業排水試験方法」の「52.2 フレーム原子吸光法」で、また、全クロム元素濃度は同JISの「65.1.2 フレーム原子吸光法」で、また、ニッケル元素濃度は同JISの「59.2 フレーム原子吸光法」で、また、亜鉛元素濃度は同JISの「53.1 フレーム原子吸光法」で、また、鉛元素濃度は同JISの「54.1 フレーム原子吸光法」で定量した。
【0088】
【表2】



【0089】
<実施例2>
水溶性コーティング剤(AC1){コーンスターチ、フエキ糊、不易糊工業株式会社、「フエキ」は同社の登録商標である}300部及び水1000部からなる水溶液に、金属粒子(MP1)1540部を均一混合した後、目開き63μmの金網で濾過して、コーティング金属粒子を得た。引き続いて、このコーティング金属粒子と、炭粒子(CP1)660部とを均一混合した後、約25℃で約12時間風乾して、顆粒状のコーティング混合粒子(CM2)を得た。
【0090】
コーティング混合粒子(CM2)2200部、普通ポルトランドセメント1100部、無機化合物水溶液{塩化カルシウム2部、塩化カリウム2部、塩化第二鉄2部、酸化マグネシウム2部、塩化マグネシウム2部、塩化アンモニウム2部、水2500部を均一混合した水溶液)20部及び水700部とを均一混合して、混合粒子スラリー(MPS2)を得た。この混合粒子スラリー(MPS2)を内径50mm深さ30mmの型に注いで、およそ1kg/cmの圧力を加えた後、24時間静置して、本発明の炭−金属複合体用成型体(2)を得た。
【0091】
亜鉛元素濃度5ppmの工場排水(3)500mlを1リットルガラス瓶に採取し、この中に、本発明の炭−金属複合体用成型体(2)を1個入れ、亜鉛元素濃度を1、2日後に測定し、この結果を次表に示した。
なお、亜鉛元素濃度は、JIS K0102:2008「工業排水試験方法」の「53.1 フレーム原子吸光法」で定量した。
【0092】
【表3】



【0093】
重金属元素を含む工場排水(4)500mlを1リットルガラス瓶に採取し、この中に、本発明の炭−金属複合体用成型体(2)を1個入れ、重金属元素濃度を18、24、48、144時間後に測定し、この結果を次表に示した。
なお、銅元素濃度はJIS K0102:2008「工業排水試験方法」の「52.2 フレーム原子吸光法」で、また、全クロム元素濃度は同JISの「65.1.2 フレーム原子吸光法」で、また、ニッケル元素濃度は同JISの「59.2 フレーム原子吸光法」で、また、亜鉛元素濃度は同JISの「53.1 フレーム原子吸光法」で定量した。
【0094】
【表4】



【0095】
<実施例3>
備長炭(精錬度2)を破砕してから、目開き2.8mmの金網を通過させて、最長長さ0.1〜2.8cmの炭粒子(CP2)を得た。
アルミニウム箔(箔地)を裁断して、金属粒子(MP2){1cm×1cm×0.4mm厚}を調製した。
炭粒子(CP2)30g及び金属粒子70gを均一混合して、300mlガラス瓶に充填して、本発明の炭−金属複合体(1)を得た。
【0096】
亜ヒ酸水溶液(三酸化二ヒ素を水に溶解して調製した)200gを、本発明の炭−金属複合体(1)に注いで、ヒ素元素濃度を6時間後に測定し、この結果を次表に示した。
なお、ヒ素元素濃度は、JIS K0102:2008「工業排水試験方法」の「61.3 水素化物発生ICP発光分光分析法」で定量した。
【0097】
【表5】



【0098】
<実施例4>
20cm×20cm×深さ9cmのポリカーボネート製水槽に、金属(M1)(8cm×17cm×0.26cm厚のアルミニウム板)4枚(95g)を等間隔で配置し、炭粒子(CP1)300gを充填して、本発明の炭−金属複合体(2)を得た。
【0099】
ケイ酸水溶液(ケイ酸を水に溶解して調製した)2000gを、本発明の炭−金属複合体(2)に注いで、送液ポンプで100ml/分の流量で全体に循環させた。ケイ素元素濃度を3、5、12、20日後に測定し、この結果を次表に示した。
なお、ケイ素元素濃度は、JIS K0102:2008「工業排水試験方法」の「47.3 ICP発光分光分析法」に準拠して、波長251.612nmで定量した。
【0100】
【表6】



【0101】
<実施例5>
回収アルミニウム缶の蓋及び底の部分を切り落とした後、側面を切断して平面に伸ばして、シュレッターで裁断して、2.5mm×30mmの金属粒子(MP3)を得た。
水溶性コーティング剤(AC1){コーンスターチ、フエキ糊、不易糊工業株式会社、「フエキ」は同社の登録商標である}300部及び水1000部からなる水溶液に、金属粒子(MP3)1540部を均一混合した後、目開き63μmの金網で濾過して、コーティング金属粒子を得た。引き続いて、このコーティング金属粒子と、炭粒子(CP2)660部とを均一混合した後、約25℃で約12時間風乾して、顆粒状のコーティング混合粒子(CM3)を得た。
【0102】
コーティング混合粒子(CM3)2200部、普通ポルトランドセメント1100部、無機化合物水溶液{塩化カルシウム2部、塩化カリウム2部、塩化第二鉄2部、酸化マグネシウム2部、塩化マグネシウム2部、塩化アンモニウム2部、水2500部を均一混合した水溶液)20部及び水700部とを均一混合して、混合粒子スラリー(MPS3)を得た。この混合粒子スラリー(MPS3)を内径50mm深さ30mmの型に注いで、およそ1kg/cmの圧力を加えた後、24時間静置して、本発明の炭−金属複合体用成型体(3)を得た。
【0103】
20個の炭−金属複合体用成型体(3)を目開き150μmの金網製の容器に入れ、これをアンチモン元素濃度2ppmの工場排水(1)(流量6000リットル/日)の流路(シックナーの直前)に浸漬させて、アンチモン元素濃度を1、6、8日後に測定し、この結果を次表に示した。
なお、アンチモン元素濃度は、上記と同様にして定量した。
【0104】
【表7】



【0105】
<比較例1>
特許文献1の実施例1に準拠して、比較用の有害元素吸着剤を調製した。
比較用の有害元素吸着剤(H1)1kgを目開き150μmの金網製の容器に入れ、これをアンチモン元素濃度2ppmの工場排水(1)(流量6000リットル/日)の流路(シックナーの直前)に浸漬させて、アンチモン元素濃度を1、6、8日後に測定し、この結果を次表に示した。
なお、アンチモン元素濃度は、上記と同様にして定量した。
【0106】
【表8】



【0107】
重金属元素を含む工場排水(2)500mlを1リットルガラス瓶に採取し、この中に、比較用の有害元素吸着剤(H1)を200g入れ、重金属元素濃度を18、24、48、144時間後に測定し、この結果を次表に示した。
なお、重金属元素濃度は、上記と同様にして定量した。
【0108】
【表9】



【0109】
本発明の炭−金属複合体又は本発明の炭−金属複合体用成型体を用いると、少ない量で多量の排水を処理しても、有害物質の除去能力は低下しなかった。すなわち、本発明の炭−金属複合体又は本発明の炭−金属複合体用成型体は、少量で多量の有害物質を除去することができた。一方、比較用の有害元素吸着剤は、多量の排水から有害物質を除去することはできなかった。すなわち、引用文献1や2の吸着による除去手段であると、有害物質を初期に除去できたとしても、吸着が飽和状態に至ると、もはや有害物質を吸着除去することができないものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属(M)及び炭(C)を含有してなり、
金属(M)と炭(C)とが接触していることを特徴とする水処理用炭−金属複合体。
【請求項2】
金属(M)が、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、錫、鉛又は銅である請求項1に記載の炭−金属複合体。
【請求項3】
金属(M)が金属粒子(MP)であり、炭(C)が炭粒子(CP)である請求項1又は2に記載の炭−金属複合体。
【請求項4】
水溶性コーティング剤(AC)でコーティングされた金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)と、バインダー(V)とを含有してなることを特徴とする炭−金属複合体用成型体。
【請求項5】
金属粒子(MP)が、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、錫、鉛又は銅からなる金属粒子である請求項4に記載の成型体。
【請求項6】
金属粒子(MP)に繊維状の金属粒子が含有する請求項4又は5に記載の成型体。
【請求項7】
炭粒子(CP)が縦型炭化炉で製造される炭粒子である請求項4〜6のいずれかに記載の成型体。
【請求項8】
バインダー(V)が、無機バインダーである請求項4〜7のいずれかに記載の成型体。
【請求項9】
バインダー(V)が、セメントである請求項4〜7のいずれかに記載の成型体。
【請求項10】
さらに、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、アルカリ土類金属水酸化物、酸化アルカリ土類金属、ハロゲン化アンモニウム、遷移金属酸化物、第13属元素の酸化物及び遷移金属ハロゲン化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項9に記載の成型体。
【請求項11】
請求項4〜10のいずれかに記載の炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにしたことを特徴とする炭−金属複合体。
【請求項12】
多孔質である請求項1、2、3又は11に記載の炭−金属複合体。
【請求項13】
金属粒子(MP)及び炭粒子(CP)を含有してなり、
金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触してなる水処理用炭−金属複合体を製造する方法であって、
方法(1−21)〜(1−24)のいずれかの方法で製造することを特徴とする水処理用炭−金属複合体の製造方法。

(1−21)コーティング混合粒子を得るために、金属粒子(MP)、炭粒子(CP)及び水溶性コーティング剤(AC)とを均一混合する工程(1);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(2);並びに混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程(3);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(4)を含む方法。
(1−22)金属粒子(MP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング金属粒子を得る工程(1);炭粒子(CP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング炭粒子を得る工程(2);コーティング金属粒子及びコーティング炭粒子を均一混合してコーティング混合粒子を得る工程(3);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(4);混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程(5);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(6)を含む方法。
(1−23)金属粒子(MP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング金属粒子を得る工程(1);コーティング金属粒子及び炭粒子(CP)を均一混合してコーティング混合粒子を得る工程(2);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(3);混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程(4);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(5)を含む方法。
(1−24)炭粒子(CP)及び水溶性コーティング剤(AC)を均一混合してコーティング炭粒子を得る工程(1);コーティング炭粒子及び金属粒子を均一混合してコーティング混合粒子を得る工程(2);コーティング混合粒子とバインダー(V)とを混合して、混合粒子スラリーを得る工程(3);混合粒子スラリーを成型して、炭−金属複合体用成型体を得る工程(4);並びに炭−金属複合体用成型体に水を作用させることによって、水溶性コーティング剤(AC)を水へ溶出させて、金属粒子(MP)と炭粒子(CP)とが接触できるようにした炭−金属複合体を得る工程(5)を含む方法。

【公開番号】特開2011−25160(P2011−25160A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173760(P2009−173760)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(504398454)株式会社アオヤマエコシステム (8)
【Fターム(参考)】