説明

水処理装置

【課題】 薬剤を用いて被処理水の薬剤処理を行う水処理装置において、薬剤の消費に関する情報を簡便に検出することができ、以って薬剤処理の適正化を図るのに有効な技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係る水処理装置100では、消毒槽120において被処理水に薬剤筒121内の消毒剤122が溶出することによって被処理水の消毒処理がなされるとともに、薬剤筒121内に配設され消毒剤122の残量に応じて収容位置が可変とされる磁石の磁気を、薬剤筒121外に配設された磁気センサ140によって検知することによって、消毒剤122の消費に関する情報を検出する構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水の水処理を行う水処理装置に係り、詳しくは被処理水に対し薬剤を溶出させて当該被処理水の薬剤処理を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般家庭等から排出される生活排水や、産業廃水等の汚水などの被処理水を処理する水処理装置においては、被処理水を消毒処理する構成が知られており、本構成では、消毒処理の過不足を解消するべく、消毒処理後の水の水質を適正とする水質管理を行うことが必要とされる。例えば下記特許文献1には、浄化槽において、消毒処理後の水に含まれる残留塩素を残留塩素センサによって検出する技術が開示されている。このような技術によれば、被処理水の消毒処理が適正に遂行されているか否かを把握することが可能となるものの、残留塩素センサのような高価なセンサを用いるため装置コストが高くなるという問題が生じる。そこで、被処理水の消毒処理をはじめ、各種の薬剤処理を行うこの種の水処理装置の設計に際しては、所定の薬剤処理が適正に遂行されているか否かを簡便に把握する技術に対する要請がある。
【特許文献1】特開平4−235798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、薬剤を用いて被処理水の薬剤処理を行う水処理装置において、薬剤の消費に関する情報を簡便に検出することができ、以って薬剤処理の適正化を図るのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。なお、本発明は、一般家庭等から排出される生活排水や産業廃水等の被処理水の浄化処理を行う水処理装置に対し好適に用いられる。
【0005】
本発明にかかる水処理装置は、被処理水の水処理を行う装置であって、処理槽本体、薬剤処理領域、流通路、薬剤収容ハウジング、磁石及び磁気センサを少なくとも備える。
処理槽本体は、複数の水処理領域を収容する槽状体として構成される。薬剤処理領域は、処理槽本体に収容されるこれら複数の水処理領域のうち、被処理水の薬剤処理を行う領域として構成される。この薬剤処理領域において被処理水が流通する流通路上に薬剤収容ハウジングが配設され、流通路を流れる被処理水に対し溶出する薬剤がこの薬剤収容ハウジングに収容される。本構成に関し、流通路は、薬剤処理領域の全部または一部を構成することができる。また、本構成に関し、薬剤収容ハウジングは、典型的には上下方向に長尺状に延在する筒状部材として構成される。薬剤は、典型的には所定の収容体に収容された固形状の薬剤とされ、被処理水の流れによって溶出する構成とされる。この薬剤を、水処理装置の一構成要素とすることもできる。流通路を流れる被処理水にこの薬剤が溶出することで当該被処理水の薬剤処理がなされる。磁石は、薬剤収容ハウジングに収容されるとともに、当該薬剤収容ハウジング内における薬剤の消費に応じて収容位置が可変とされる。この場合、薬剤収容ハウジング内における磁石の収容位置は、薬剤の消費に応じて可変とされればよく、薬剤収容ハウジングの上下の延在方向に関し薬剤の消費高さに概ね合致して変化する構成であってもよいし、或いは薬剤の消費高さとは独立して変化する構成であってもよい。磁気センサは、薬剤収容ハウジングの外面側に取り付けられ、磁石において生じる磁気を検知するセンサとして構成される。この磁気センサは、磁石から受ける磁気によってオン−オフ動作するスイッチとして構成されてもよいし、或いは磁石から受ける磁気の強さないし強弱の度合いを検出する検出体として構成されてもよい。薬剤情報出力部は、磁気センサが磁石から受ける磁気に基づいて、薬剤の消費に関する薬剤情報を出力する機能を有する。この薬剤情報出力部は、典型的には磁気センサと有線ないし無線によって接続される。
【0006】
なお、ここでいう「薬剤の消費に関する薬剤情報」には、薬剤の有無や薬剤の残量をはじめ、薬剤の消費量や消費速度、薬剤が無くなった旨の情報や、薬剤が無くなりそうな旨の情報、また正常に薬剤処理が行われている旨の情報や、正常に薬剤処理が行われていない旨の情報、更には薬剤の消費に伴う薬剤補充時期や補充量等、薬剤の消費に関する種々の情報が広く包含される。また、薬剤情報出力部による出力態様に関しては、文字、数字、図柄などを表示器に表示出力する態様、音声、警報等をスピーカーに音出力する態様、更には磁気センサによって検知された情報を、水処理装置から離間した場所において複数の水処理装置の遠隔監視を行う遠隔監視装置に向けて信号出力する態様などを適宜用いることが可能である。
【0007】
このような構成によれば、水処理装置の使用者や管理者は、薬剤収容ハウジング内において薬剤の残量に応じて収容位置が変化する磁石の磁気を、薬剤収容ハウジング外に配設された磁気センサによって検知することによって、薬剤の消費に関する情報を簡便に把握することが可能となり、以って薬剤処理の適正化を図ることが可能となる。特に、接続ケーブル等を伴わない磁石を薬剤収容ハウジング内に配設するとともに、接続ケーブル等を伴う磁気センサを薬剤収容ハウジング外に配設する構成を採用することによって、薬剤収容ハウジング内の構造をより簡素化することが可能となり、これにより当該磁気センサを薬剤収容ハウジング内に配設する場合に生じる問題、具体的には磁気センサと薬剤との干渉の発生を防止するのに効果的である。
【0008】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の薬剤は、固形状に形成された複数の固形薬剤が上下に積み重ねられた状態で薬剤収容ハウジングに収容され、最下段の固形薬剤から順に流通路を流れる被処理水に対し溶出して消費されるとともに、所定段の固形薬剤の上に磁石が積み重ねられた構成であるのが好ましい。この場合、所定段の固形薬剤は、複数の固形薬剤のうちの最上段の固形薬剤であってもよいし、或いは最上段の固形薬剤と最下段の固形薬剤との間に介在する所定の固形薬剤であってもよい。また、前記の磁気センサは、磁石が近接した状態で当該磁石から受ける磁気を検知する構成であるのが好ましい。この場合、所定段の固形薬剤は、磁石を下方から支持する支持手段として構成される。また、前記の薬剤情報出力部は、薬剤の溶出に伴って磁気センサに対し磁石が自重によって下降しつつ近接することで、薬剤情報を出力するする構成であるのが好ましい。この場合、磁石の収容位置の変化量が、薬剤収容ハウジングの上下の延在方向に関し薬剤の消費高さに概ね合致する。
【0009】
このような構成によれば、水処理装置の使用者や管理者は、所定段の固形薬剤の上に積み重ねられた磁石の収容位置の変化に応じて薬剤情報出力部から出力される情報によって、所定の薬剤情報を認識することが可能となる。この場合、所定段の固形薬剤が最上段の固形薬剤に合致する構成においては、所定の薬剤情報として例えば薬剤の残量が無くなったことが出力される。一方、所定段の固形薬剤が最上段の固形薬剤と最下段の固形薬剤との間に介在する固形薬剤である構成においては、所定の薬剤情報として薬剤の残量が残り少なくなったことが出力される。本構成を採用した場合には、磁石よりも上方に未使用の薬剤が残留することとなり、薬剤が完全に無くなるまでの時間的猶予が付与されることとなる。
【0010】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の磁石は、最上段の固形薬剤の上に積み重ねられる構成であるのが好ましい。また、前記の磁気センサは、薬剤収容ハウジングの外面側の各部位のうち最下段の固形薬剤に対応した部位に取り付けられる構成であるのが好ましい。また、前記の薬剤情報出力部は、薬剤の溶出に伴って磁気センサに対し磁石が自重によって下降しつつ近接することで、薬剤情報として薬剤の残量が無くなったことを出力する構成であるのが好ましい。このような構成によれば、水処理装置の使用者や管理者は、最上段の固形薬剤の上に積み重ねられた磁石の収容位置の変化に応じて薬剤情報出力部から出力される情報によって、薬剤情報として薬剤の残量が無くなったことを認識することが可能となる。
【0011】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の磁石は、N極及びS極が上下方向に連接して配設された両面2極構造とされるのが好ましい。また、前記の磁気センサは、磁性材料からなる二つの磁性体リード片が隙間をもって相対したリードスイッチを含む構成であるのが好ましい。このような構成において、両面2極構造とされた磁石が当該リードスイッチを上方から下方へと横切る方向に近接することで、二つの磁性体リード片が磁石から受ける磁気により隙間において互いに接触する。このような構成によれば、二つの磁性体リード片が磁石から受ける磁気により隙間において互いに接触する作動範囲(典型的には、磁石の移動方向と交差する方向に関する作動範囲)を極力拡張することができ、リードスイッチの作動精度を高めるのに効果的である。
【0012】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置は、処理槽本体に前記の薬剤収容ハウジングを取り付ける第1ホルダ部と、この薬剤収容ハウジングの外面側に磁気センサを取り付ける第2ホルダ部を備え、これら第1ホルダ部及び第2ホルダ部が一体状に構成されるのが好ましい。このような構成によれば、処理槽本体に薬剤収容ハウジングを取り付ける機能と、薬剤収容ハウジングの外面側に磁気センサを取り付ける機能が、第1ホルダ部及び第2ホルダ部が一体状に構成された単一のホルダによって兼用化されるため合理的である。
【0013】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、処理槽本体に前記の薬剤収容ハウジングを取り付ける第1ホルダ部と、この薬剤収容ハウジングの外面側に磁気センサを取り付ける第2ホルダ部を備え、磁気センサが取り付けられる前記第2ホルダ部は、前記第1ホルダ部に対し上下方向に関する移動が許容された構成であるのが好ましい。第2ホルダ部の取り付け構造に関しては、第1ホルダ部に対する第2ホルダ部の上下方向に関する相対位置を複数段階にて設定可能であるとともに、所望の設定位置において第1ホルダ部に対し第2ホルダ部を固定することが可能な構成を種々採用することができる。
このような構成によれば、磁気センサによって磁石の磁気が検出される時点において残留する薬剤の量を設定することが可能となる。薬剤の消費速度は、水量や窒素濃度などの要因で現場毎に異なるのが一般的であるところ、第1ホルダに対する第2ホルダまたは磁気センサの固定位置を、その現場に最適な位置に設定することで、メンテナンスの時期を適正に把握することができ、メンテナンスをし易くすることが可能となる。
【0014】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の薬剤収容ハウジングは、ハウジング内外を連通するハウジング開口部を備える一方、前記の第1ホルダ部は、薬剤収容ハウジングの外面側に被着されるとともに、薬剤収容ハウジングに対する被着部分のうち第1及び第2のハウジング開口部のそれぞれに合致する部位に第1及び第2のホルダ開口部を備える構成であるのが好ましい。このような構成では、ホルダ開口部及びハウジング開口部がいずれも流通路上に配設されるため、流通路を流通する被処理水は、第1のホルダ開口部及び第1のハウジング開口部を通じて薬剤収容ハウジング内に流入して薬剤に接触した後、薬剤が溶出した水となって第2のハウジング開口部及び第2のホルダ開口部を通じて薬剤収容ハウジング外へと流出することとなる。典型的には、第1のホルダ開口部を第1のハウジング開口部よりも大きい開口部分として構成し、第2のホルダ開口部を第2のハウジング開口部よりも大きい開口部分として構成する。
このような構成によれば、薬剤収容ハウジング内に流入した後に薬剤収容ハウジング外へと流出する被処理水の流れに関し、当該被処理水が薬剤に接触するのを妨げることのない円滑な流れを形成させることが可能となる。特には、処理槽本体に薬剤収容ハウジングを取り付ける第1ホルダ部に対し、被処理水の円滑な流れを形成させる機能を付与した合理的な構成が提供されることとなる。
【0015】
また、本発明にかかる更なる形態の水処理装置では、前記の薬剤収容ハウジングは、上下方向に延在する筒形状に構成されるとともに、ハウジング上部を塞ぐ蓋を備える構成であり、更に、蓋と磁石とを接続する長尺状の接続手段を備える構成であるのが好ましい。この接続手段は、蓋がハウジング上部に装着された状態で、薬剤収容ハウジング内における磁石の上下移動を許容する一方、ハウジング上部を開放する際の記蓋の上向きの開放動作に伴って、磁石を上方へと引き上げ可能とする延在長さを有する構成とされる。典型的には、接続手段が紐状ないしケーブル状の柔軟性材料によって構成され、またこの接続手段の直線的な延在長さが、薬剤収容ハウジングのハウジング上部に装着された蓋の下面から、薬剤収容ハウジング内の最下段ないしそれよりも下方位置までの長さに概ね合致する構成とされる。
このような構成によれば、使用中は接続手段によって磁石の動作が阻害されることはないが、一方で薬剤を補充するべく蓋を開放する際に、同時に磁石が接続手段を介して持ち上げられるので、磁石の上に薬剤が誤って補充されるのを防止することができ、以って磁石の下に薬剤を確実に補充することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、薬剤を用いて被処理水の薬剤処理を行う水処理装置において、特に薬剤とともに薬剤収容ハウジングに収容され、薬剤の残量に応じて収容位置が可変とされる磁石の磁気を、薬剤収容ハウジングの外面側に取り付けられる磁気センサによって検知する構成を採用することによって、薬剤の消費に関する情報を簡便に検出することができ、以って薬剤処理の適正化を図ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明における一実施の形態の水処理装置の構成等を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭等から排出される排水(被処理水)の処理を行う水処理装置について説明するものである。
【0018】
本発明における「水処理装置」の一実施の形態の水処理装置100の概要が図1に示される。図1に示すように、本実施の形態の水処理装置100は、槽状に成形された処理槽本体101を有し、この処理槽本体101には、複数の水処理領域として上流側処理槽110、消毒槽120及び貯留槽130が収容されている。流入部102を通じて処理槽本体101内に流入した排水は、上流側処理槽110、消毒槽120及び貯留槽130において順次処理され、処理後の水は流出部103を通じて処理槽本体101外へと流出する。この場合、水処理装置100は、処理槽本体101外へと流出した水をそのまま放流する浄化槽として構成されてもよいし、或いは処理槽本体101外へと流出した水をトイレや散水用の水として再利用する水再利用装置として構成されてもよい。ここでいう処理槽本体101が、本発明における「複数の水処理領域を収容する処理槽本体」に相当する。
【0019】
上流側処理槽110は、典型的には、被処理水中に含まれる夾雑物を、流入バッフル(図示省略)などの固液分離手段を用いて被処理水から分離する処理を行う夾雑物除去槽、被処理水から泡沫を分離する処理を行う泡沫分離槽、被処理水中の有機汚濁物質を嫌気処理(還元)する嫌気濾床槽、被処理水中の有機汚濁物質を好気処理(酸化)する接触ばっ気槽、被処理水中の浮遊物質を沈殿・除去する沈澱槽などのうちの1または複数の処理槽によって構成される。なお、本実施の形態では、各槽において処理される排水および当該排水を処理する処理過程において流れる水を「被処理水」ないし「水」と記載する。
【0020】
消毒槽120は、上流側処理槽110から流入した水に対し消毒剤を供給する機能を有する処理槽として構成される。この消毒槽120は、被処理水の消毒処理を行うための固形状の消毒剤122が充填された薬剤筒121を薬筒棚120a(「越流樋」ともいう)内に備えており、被処理水の流れにともなって当該被処理水に消毒剤122が溶出するように構成されている。詳細については後述するが、この薬剤筒121は、処理槽本体101に取り付けられ、また薬剤筒121の外面に磁気センサ140が取り付けられるようになっている。詳細については後述するが、この磁気センサ140は、薬剤筒121に収容された後述の磁石124からの磁気を受けて作動する構成とされる。また、この磁気センサ140は、ケーブル141によって送信部150に接続されており、磁気センサ140からの情報が送信部150に伝送され、更に送信部150からの情報が水質管理装置200側の受信部210に無線送信され、出力部220において出力されるように構成されている。この水質管理装置200は、水処理装置100から離間して配置された遠隔監視装置として構成され、複数の水処理装置における水質に関する情報を遠隔監視することが可能とされる。
【0021】
消毒槽120において消毒剤122が溶出した被処理水は、この消毒槽120にて消毒処理がなされた後、貯留槽130に流入する。この貯留槽130では、流出部103を通じて流出する前の水が一時的に貯留されるとともに、この貯留状態において消毒処理が継続される。従って、この貯留槽130を被処理水の消毒処理を行う「消毒槽」と称呼するとともに、この貯留槽130へと消毒剤122を供給する前述の消毒槽120を貯留槽130に関する「薬剤供給装置」と称呼することもできる。なお、ここでいう消毒槽120、或いは消毒槽120とその下流の貯留槽130は、被処理水の消毒処理(薬剤処理)に関与する処理槽であり、本発明における「被処理水の薬剤処理を行う薬剤処理領域」を構成する。貯留槽130から流出した水は、水処理装置100が水再利用装置として構成される場合には、トイレや散水装置へと移送され、また水処理装置100が浄化槽として構成される場合には、そのまま下水道に放流される。本構成に関連して、貯留槽130の下流に、更に別の槽、例えば放流用のポンプが設置された放流ポンプ槽などを設けてもよい。
【0022】
上記薬剤筒121の具体的な構成及び動作に関しては、図2及び図3が参照される。図2には、図1中の消毒槽120に設けられた薬剤筒121の消毒剤使用前における断面構造が示され、図3には、図1中の消毒槽120に設けられた薬剤筒121の消毒剤使用中における断面構造が示されている。
【0023】
図2に示すように、本実施の形態の薬剤筒121は、中空状の収容空間121aを有する薬剤筒ハウジングとして構成され、この収容空間121aに複数(図2に示す例では4つ)の消毒剤122が上下に積み重ねられて収容される。また、この薬剤筒121は、上下方向に延在する筒形状のハウジング上部を塞ぐ蓋128を備える構成とされる。この蓋128は、使用時にハウジング上部に装着される一方、消毒剤122の充填時やメンテナンス時等に開放される。消毒剤122は、薬剤筒121の内径を下回る径の固形消毒剤、典型的には塩素系の固形消毒剤として構成される。このような塩素系の固形消毒剤を使用する場合には、薬剤筒121の内壁部分にコーティング層(例えばフッ素樹脂コーティング)を設けるか、或いは薬剤筒121自体の材質を選ぶことにより薬剤筒121の耐塩素性を確保するのが好ましい。ここでいう薬剤筒121が、本発明における「薬剤収容ハウジング」に相当し、またここでいう消毒剤122が、本発明における「薬剤」及び「固形薬剤」に相当する。また、薬剤筒121の筒壁のうちこの収容空間121aの下部領域、すなわち最下段の消毒剤122が位置する部位には、上流側処理槽110から流入した水が流通するハウジング流通路123を備える。このハウジング流通路123は、上流側処理槽110から消毒槽120へと流入した水が流れる流通路126上に配設されている。ここでいう流通路126が、本発明における「流通路」に相当する。
【0024】
本構成では、流通路126を流通する被処理水がこの薬剤筒121のハウジング流通路123を流通する被処理水によって、上下に積み重ねられた複数の消毒剤122のうちの下段の消毒剤122から順に被処理水に連続的に溶出し、当該被処理水の消毒処理(塩素消毒処理)に供するようになっている。また、本実施の形態では、収容空間121aの最上段の消毒剤122の上に磁石124が積み重ねられて配置(載置)されるようになっている。すなわち、最上段の消毒剤122によって磁石124が下方から支持される構成になっている。
【0025】
また、本実施の形態の薬剤筒121は、ホルダ(ブラケット)125を介して処理槽本体101に取り付けられる構成とされる。このホルダ125は、第1保持部125a及び第2保持部125bを備える。第1保持部125aは、薬剤筒121の下部を外面から保持する部位として構成される。第2保持部125bは、薬剤筒121の下部の側方(外表面)に磁気センサ140を収容保持する部位として構成される。すなわち、本実施の形態では、処理槽本体101に薬剤筒121を取り付ける第1保持部125aと、薬剤筒121の外面側に磁気センサ140を取り付ける第2保持部125bが一体状に構成されている。このような構成によれば、処理槽本体101に対し薬剤筒121が取り付けられるとともに、薬剤筒121に対する磁気センサ140の位置決めがなされることとなる。これにより、処理槽本体101に薬剤筒121を取り付ける機能と、薬剤筒121の外面側に磁気センサ140を取り付ける機能が、第1保持部125a及び第2保持部125bが一体状に構成された単一のホルダ125によって兼用化されるため合理的である。また、本実施の形態では、磁気センサ140を収容保持するこの部位は、収容空間121aに収容された最下段の消毒剤122に対応する部位とされる。ここでいう第1保持部125a或いはこの第1保持部125aを含むホルダ125によって本発明における「第1ホルダ部」が構成され、またここでいう第2保持部125bが、本発明における「第2ホルダ部」に相当する。
【0026】
なお、本構成に関連して、第2保持部125bを省略した上で、磁気センサ140を薬剤筒121の外表面に直に被着して取り付ける構造を採用してもよい。また、薬剤筒121の底部に第2保持部125bを設けこの第2保持部124bに磁気センサ140を取り付ける構成や、薬剤筒121の底部に磁気センサ140を直に被着して取り付ける構造を採用し、薬剤筒121の底部領域に磁気センサ140を保持するようにしてもよい。
【0027】
上記構成の薬剤筒121において、消毒剤122は、被処理水に対する溶出によって消費されるため、複数の消毒剤122の上下方向(図2中の上下方向)に関する積み重ね高さLが徐々に低下していく。また、図3に示すように、複数の消毒剤122のこの積み重ね高さLの低下(消毒剤消費)に伴って、収容空間121aにおける磁石124の位置がその自重によって下方へと変位し、磁石124が磁気センサ140に近接する方向に下降していく。すなわち、本実施の形態の磁石124は、薬剤筒121内における消毒剤122の残量に応じてその収容位置が可変とされる構成になっている。この場合、磁石124の収容位置の変化量が、薬剤筒121の上下の延在方向に関し薬剤の消費高さに概ね合致する。
【0028】
ここで、上記薬剤筒121及びホルダ125の更なる具体的な構成に関し、図4及び図5を参照しつつ説明する。図4には、本実施の形態の薬剤筒121とホルダ125とが分解状態とされた分解斜視図が示され、また図5には、本実施の形態の薬剤筒121とホルダ125とが組み付け状態とされた組み付け斜視図が示される。
【0029】
図4及び図5に示すように、本実施の形態では、薬剤筒121に切り欠き状ないし開口状のハウジング流通路123が設けられる一方、ホルダ125に切り欠き状ないし開口状のホルダ流通路126が設けられ、また薬剤筒121とホルダ125とが組み付け状態とされた際にこれらハウジング流通路123及びホルダ流通路126が合致する構成であるのが好ましい。これらハウジング流通路123及びホルダ流通路126は、図3中の流通路127上に配設されて、当該流通路127の一部を形成する。
【0030】
ハウジング流通路123は、薬剤筒121のハウジング内外を連通する構成であり、第1のハウジング開口部123a及び第2のハウジング開口部123bを少なくとも備える。ホルダ流通路126は、ホルダ125の内外を連通する構成であり、第1のホルダ開口部126a及び第2のホルダ開口部126bを少なくとも備える。ホルダ125は、薬剤筒121の外面側に被着されるとともに、薬剤筒121に対する被着部分のうち第1及び第2のハウジング開口部123a,123bのそれぞれに合致する部位に第1及び第2のホルダ開口部126a,126bを備える構成とされる。これにより、図3中の流通路127を流通する被処理水は、第1のホルダ開口部126a及び第1のハウジング開口部123aを通じて薬剤筒121内に流入して消毒剤122に接触した後、当該消毒剤122が溶出した水となって第2のハウジング開口部123b及び第2のホルダ開口部126bを通じて薬剤筒121外へと流出する。
【0031】
典型的には、第1のホルダ開口部126aを第1のハウジング開口部123aよりも大きい開口部分として構成し、第2のホルダ開口部126bを第2のハウジング開口部123bよりも大きい開口部分として構成する。このような構成によれば、薬剤筒121内に流入した後に薬剤筒121外へと流出する被処理水の流れに関し、当該被処理水が消毒剤122に接触するのを妨げることのない円滑な流れを形成させることが可能となる。特には、処理槽本体101に薬剤筒121を取り付けるホルダ125に対し、被処理水の円滑な流れを形成させる機能を付与した合理的な構成が提供されることとなる。なお、ここでいう第1のハウジング開口部123a、第2のハウジング開口部123b、第1のホルダ開口部126a、第2のホルダ開口部126bが、それぞれ本発明における「第1のハウジング開口部」、「第2のハウジング開口部」、「第1のホルダ開口部」、「第2のホルダ開口部」に相当する。
【0032】
上記磁石124及び磁気センサ140の具体的な構成及び動作に関しては、図6及び図7が参照される。図6には、本実施の形態の磁気センサ140の非作動時における磁石124及び磁気センサ140の断面構造が示され、図7には、本実施の形態の磁気センサ140の作動時における磁石124及び磁気センサ140の断面構造が示される。
【0033】
図6に示すように、本実施の形態の磁石124は、N極及びS極が上下方向に連接して配設された、いわゆる「両面2極構造」の永久磁石であって、典型的には円柱形状、円筒形状ないし環状(ドーナツ状)とされる。この磁石124として、必要に応じて左右2極、片面2極、左右多極、両面片面多極、円筒内周面多極、円柱2極、円柱多極、円筒外周面多極、(複合)多極円板、スキュー付円筒多極、角形多極、丸形多極、2極セグメント等の永久磁石を採用することもできる。ここでいう磁石124が、本発明における「磁石」に相当する。
【0034】
一方、本実施の形態の磁気センサ140は、いわゆる「リードスイッチ」或いは「マグネットスイッチ」と称呼されるスイッチであり、磁石124において生じる磁気を検知してオン動作及びオフ動作する機能を有する。この磁気センサ140は、具体的には、図6に示すように不活性ガスが充填されたガラス管142の中に二本のリード片143,144が封入された構成とされる。ここでいう磁気センサ140が、本発明における「磁気センサ」に相当する。磁気センサ140を構成するこれら第1のリード片143及び第2のリード片144は、いずれも磁性材料からなる磁性体リード片として構成され、第1のリード片143の一端部143aの接点と、第2のリード片144の一端部144aの接点との間の隙間をもって相対している。
【0035】
このような構成の磁気センサ140は、磁石124からの磁気(磁界)が及ばない領域に離間した状態では、磁気センサ140が非作動状態(スイッチが切れたオフ状態)とされ、第1のリード片143の一端部143aの接点と、第2のリード片144の一端部144aの接点の接触が生じない(図6参照)。この場合、送信部150は、消毒剤122の残量が有ることを示す情報を、水質管理装置200側の受信部210に無線送信するか、或いは情報自体を無線送信しない。
【0036】
これに対し、図3において説明したように磁石124が磁気センサ140に近接する方向に下降し、両面2極構造とされた磁石124が磁気センサ140を上方から下方へと横切る方向に近接して、磁気センサ140が磁石124から受ける磁気が所定値に達すると、磁気センサ140が作動状態(スイッチが入ったオン状態)とされる。具体的には、この近接動作に伴って第1のリード片143は、一端部143aがN極となり他端部143bがS極となるのに対し、第2のリード片144は、一端部144aがS極となり他端部144bがN極となるため、第1のリード片143の一端部143a(接点)と第2のリード片144の一端部144a(接点)が磁気吸引力によって吸引され、前記の隙間において互いに接触する(図7参照)。これによって、磁気センサ140が作動状態とされる。
【0037】
磁気センサ140が作動状態になることによって、ケーブル141を介してこの磁気センサ140に接続された送信部150は、消毒剤122の残量が無くなった或いは消毒剤122の残量が残り少ないことを示す情報を、水質管理装置200側の受信部210に無線送信する。この受信部210によって受信された情報に基づいて、消毒槽120の点検や、消毒槽120における消毒剤122の補充作業を、水処理装置100の使用者や管理者に対し促す出力が出力部220によって遂行される。この場合の出力部220の出力情報としては、消毒剤122の有無や残量をはじめ、消毒剤122の消費量や消費速度、消毒剤122が無くなった旨の情報や、消毒剤122が無くなりそうな旨の情報、また正常に消毒処理が行われている旨の情報や、正常に消毒処理が行われていない旨の情報、更には消毒剤122の消費に伴う消毒剤補充時期や補充量等、消毒剤122の消費に関する種々の情報が広く包含される。また、この場合の出力態様に関しては、文字、数字、図柄などを表示器に表示出力する態様、音声、警報等をスピーカーに音出力する態様などを適宜用いることが可能である。ここでいう出力情報が、本発明における「薬剤の消費に関する薬剤情報」に相当する。また、ここでいう送信部150、受信部210及び出力部220は、磁気センサ140が検知する磁気に基づいて、消毒剤122の消費に関する薬剤情報を出力する機能を有し、本発明における「薬剤情報出力部」を構成する。
【0038】
なお、本実施の形態では、上記の無線送信構造にかえて或いは加えて、磁気センサ140が作動状態になった場合、消毒剤122の残量が無くなった或いは消毒剤122の残量が残り少ないことを示す情報を、現場設置型の出力部(薬剤情報出力部)によって出力する構成を採用することもできる。このような構成によれば、水処理装置100の使用者や管理者は、消毒剤122の残量が無くなった或いは消毒剤122の残量が残り少ないことを水処理装置100が設置されている現場にて把握することが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態において、磁石124の外径が消毒剤122の外径とほぼ同じか、当該消毒剤122の外径を若干下回る構成であるのが好ましい。更には、磁石124の角に円弧状のR部分を設ける構成や、磁石124全体の形状を上方側が凹んだ湾曲状とする構成を採用するのが好ましい。このような構成によれば、消毒剤122が下段側から順次消費されて磁石124が下降する場合に、この磁石124が薬剤筒121の内壁に引っ掛かるのを防止し、磁石124の円滑な下降動作を確保することができ、これによって消毒剤122の残量に関する情報を磁気センサ140によって正確に検知することが可能となる。
【0040】
以上のように、本実施の形態によれば、水処理装置100の使用者や管理者は、薬剤筒121内において消毒剤122の残量に応じて収容位置が変化する磁石124の磁気を、薬剤筒121外に配設された磁気センサ140によって検知することによって、消毒剤122の消費に関する情報を簡便に把握することが可能となり、以って消毒処理の適正化を図ることが可能となる。特に、接続ケーブル等を伴わない磁石124を薬剤筒121内に配設するとともに、ケーブル141を伴う磁気センサ140を薬剤筒121外に配設する構成を採用することによって、薬剤筒121内の構造をより簡素化することが可能となり、これにより当該磁気センサ140を薬剤筒121内に配設する場合に生じる問題、具体的には磁気センサ140と消毒剤122との干渉の発生を防止するのに効果的である。
【0041】
また、上記実施の形態によれば、両面2極構造とされた磁石124が磁気センサ140(リードスイッチ)を上方から下方へと横切る方向に近接することで、二つの磁性体リード片143,144が磁石124から受ける磁気により隙間において互いに接触する構成を採用することによって、二つの磁性体リード片143,144が磁石124から受ける磁気により隙間において互いに接触する作動範囲(典型的には、磁石124の上下の移動方向と交差する方向に関する作動範囲)を極力拡張することができ、リードスイッチの作動精度を高めるのに効果的である。
【0042】
上記実施の形態においては、薬剤筒121外に単一の磁気センサ140を配設する構成について記載したが、薬剤筒121の上下方向に関し複数の磁気センサ140を異なる位置に配置した構成を採用することもできる。このような構成によれば、消毒剤122の残量や、消毒剤122の残量が無くなるまでの経過を経時的に把握することが可能となり、消毒剤122の残量に関しきめ細かい管理が可能とされる。
【0043】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0044】
上記実施の形態では、消毒剤122が薬剤筒121の収容空間121aにおいて上下に積み重ねられることによって規則的に充填される場合について記載したが、本発明では、粒状の薬剤が不規則充填される構成を採用することもできる。本構成に関しては図8が参照される。この図8には、薬剤筒121内における消毒剤122及び磁石124の収容形態に関し別実施の形態が示される。図8に示す例では、不規則充填された粒状の消毒剤122の上に磁石124が積み重ねられて配設された構成となっている。本例では、磁石124の外径が粒状の消毒剤122の外径を上回る構成とされる。
【0045】
また、上記実施の形態では、最上段の消毒剤122の上に磁石124が配設される場合について記載したが、本発明では、複数の消毒剤122の間の所定段に磁石124を介在させて配設する構成を採用することもできる。本構成に関しては図9が参照される。この図9には、薬剤筒121内における消毒剤122及び磁石124の収容形態に関し別実施の形態が示される。図9に示す例では、4つの消毒剤122のうち下側において三段積みされた消毒剤122の上に磁石124が載置された構成、すなわち下側から三段目の消毒剤122と四段目の消毒剤122との間に磁石124が介在する構成になっている。このような構成によれば、下側の3つの消毒剤122が消費された後、磁気センサ140によって磁石124の磁気が検知された時点では、磁石124よりも上方に未使用の消毒剤122が残留しており、消毒剤122が完全に無くなるまでの時間的猶予が付与されることとなる。
【0046】
また、上記実施の形態では、処理槽本体101に薬剤筒121を取り付ける第1保持部125aと、薬剤筒121の外面側に磁気センサ140を取り付ける第2保持部125bが一体状に構成されたホルダ125について記載したが、本発明では、ホルダ125とは異なる構成のホルダを採用することもできる。本構成に関しては図10が参照される。この図10には、別実施の形態のホルダ225の構成が示されている。このホルダ225では、磁気センサ140が取り付けられる第2保持部125bは、処理槽本体101に薬剤筒121を取り付ける第1保持部125aに対し上下方向(図10中の上下方向)に関する移動が許容された状態で当該第1保持部125aに取り付けられた構成とされる。第2保持部125bの取り付け構造に関しては、第1保持部125aに対する第2保持部125bの上下方向に関する相対位置を複数段階にて設定可能であるとともに、所望の設定位置において第1保持部125aに対し第2保持部125bを固定することが可能な構成を種々採用することができる。
【0047】
このような構成によれば、磁気センサ140によって磁石124の磁気が検出される時点において残留する消毒剤122の量を設定することが可能となる。例えば、第2保持部125bを図10中の二点鎖線(仮想線)で示す位置に設定した場合には、磁気センサ140によって磁石124の磁気が検出された時点においてその後に使用可能な消毒剤122は殆ど残留していないが、第2保持部125bを図10中の実線で示す位置に設定した場合には、磁気センサ140によって磁石124の磁気が検出された時点においては、磁石124よりも下方に消費され始めたばかりの消毒剤122が1つ残留しており、消毒剤122が完全に無くなるまでに時間的猶予が付与されることとなる。
なお、消毒剤の消費速度は、水量や窒素濃度などの要因で現場毎に異なるのが一般的であるところ、図10に示すような実施形態によれば、第1保持部125aに対する第2保持部125bまたは磁気センサ140の固定位置を、その現場に最適な位置に設定することで、メンテナンスの時期を適正に把握することができ、メンテナンスをし易くすることが可能となる。
【0048】
また、上記実施の形態では、磁石124の下側に消毒剤122が配設されることを前提に構成されているが、消毒剤122が完全に消費され、磁石124が薬剤筒121内の最下段に位置した時点でそのまま磁石124の上側に消毒剤122が補充されると、所定の情報の検出に支障をきたすことが想定される。そこで、図11に示す構成を採用するのが好ましい。この図11には、別実施の形態の蓋228の構成が示されている。この蓋228は、長尺状の接続手段129を介して磁石124と接続されている。
図11に示すように、接続手段129は、蓋228が薬剤筒121のハウジング上部に装着された状態で、薬剤筒121内における磁石124の上下移動を許容する一方、薬剤筒121のハウジング上部を開放する際の蓋228の上向きの開放動作に伴って、磁石124を上方へと引き上げ可能とする延在長さを有する構成とされる。典型的には、接続手段129が紐状ないしケーブル状の柔軟性材料によって構成され、またこの接続手段129の直線的な延在長さが、薬剤筒121のハウジング上部に装着された蓋228の下面から、薬剤筒121内の最下段ないしそれよりも下方位置までの長さに概ね合致する構成とされる。ここでいう接続手段129が本発明における「接続手段」に相当し、またここでいう蓋228が本発明における「蓋」に相当する。
【0049】
このような構成によれば、使用中は接続手段129によって磁石124の動作が阻害されることはないが、一方で消毒剤122を補充するべく蓋228を開放する際に、同時に磁石124が接続手段129を介して持ち上げられるので、磁石124の上に消毒剤122が誤って補充されるのを防止することができ、以って磁石124の下に消毒剤122を確実に補充することが可能となる。
【0050】
また、本実施の形態において、磁気センサ140は、磁石124から受ける磁気によってオン−オフ動作するスイッチとして構成したが、本発明において、磁気センサは、ホール効果を応用したホール素子磁気センサのように、磁石から受ける磁気の強さないし強弱の度合いを検出するとともに、検出されたこの磁気の強さないし強弱の度合いに基づいて、薬剤情報出力部が薬剤の消費に関する情報を出力するように構成されてもよい。また、ホール素子磁気センサ以外として、磁気抵抗効果を応用した磁気抵抗(MR)素子による磁気センサや、いわゆる角型特性のB−Hカーブをもつコアを使用したフラックス・ゲート(磁気変調)型磁気センサ等を用いることもできる。
【0051】
また、本実施の形態では、薬剤筒121内における磁石124の収容位置が、薬剤筒121の上下の延在方向に関し消毒剤122の消費高さに概ね合致して変化する構成について記載したが、本発明では、薬剤筒121内における磁石124の収容位置が消毒剤122の消費に応じて収可変とされればよく、当該収容位置が消毒剤122の消費高さとは独立して変化する構成を採用することもできる。
【0052】
また、上記実施の形態では、消毒剤122の消費に伴って収容位置が可変とされる磁石124を薬剤筒121内に配設するとともに、磁石124を検出する磁気センサ140を薬剤筒121外に配設する場合について記載したが、必要に応じては別の構成を採用することもできる。例えば、消毒剤122の消費に伴って収容位置が可変とされる無線式の磁気センサを薬剤筒121内に配設するとともに、この無線式の磁気センサによって検出される磁石を薬剤筒121外に配設した構成を採用することもできる。
【0053】
また、上記実施の形態では、磁気センサ140は第2保持部125bによって薬剤筒121の側方(外表面)に収容保持される場合について記載したが、本発明では、磁気センサ140の配設位置は薬剤筒121の側方に限定されるものではなく必要に応じて種々変更可能である。例えば、薬剤筒121の底面に磁気センサ140を配設することもできる。要するに、消毒剤122が消費されることによって、磁石124と磁気センサ140が近接し、磁石124の磁気が磁気センサ140にて検出される構成であればよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、消毒剤の消費に関する情報を出力する場合について記載したが、消毒剤以外の薬剤の消費に関する情報を出力する構成に本発明を適当することもできる。
【0055】
また、上記実施の形態では、家庭用の水処理装置について記載したが、本発明は、家庭用の水処理装置のみならず、工場などに設置される各種の水処理装置に対しても同様に適用可能な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明における「水処理装置」の一実施の形態の水処理装置100の概要を示す図である。
【図2】図1中の消毒槽120に設けられた薬剤筒121の消毒剤使用前における断面構造を示す図である。
【図3】図1中の消毒槽120に設けられた薬剤筒121の消毒剤使用中における断面構造を示す図である。
【図4】本実施の形態の薬剤筒121とホルダ125とが分解状態とされた分解斜視図である。
【図5】本実施の形態の薬剤筒121とホルダ125とが組み付け状態とされた組み付け斜視図である。
【図6】本実施の形態の磁気センサ140の非作動時における磁石124及び磁気センサ140の断面構造を示す図である。
【図7】本実施の形態の磁気センサ140の作動時における磁石124及び磁気センサ140の断面構造を示す図である。
【図8】薬剤筒121内における消毒剤122及び磁石124の収容形態に関し別実施の形態を示す図である。
【図9】薬剤筒121内における消毒剤122及び磁石124の収容形態に関し別実施の形態を示す図である。
【図10】別実施の形態のホルダ225の構成を示す図である。
【図11】別実施の形態の蓋228の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
100…水処理装置
101…処理槽本体
102…流入部
103…流出部
110…上流側処理槽
120…消毒槽
120a…薬筒棚
121…薬剤筒
121a…収容空間
122…消毒剤
123…ハウジング流通路
123a…第1のハウジング開口部
123b…第2のハウジング開口部
124…磁石
125,225…ホルダ
125a…第1保持部
125b…第2保持部
126…ホルダ流通路
126a…第1のホルダ開口部
126b…第2のホルダ開口部
127…流通路
128,228…蓋
129…接続手段
130…貯留槽
140…磁気センサ
141…ケーブル
142…ガラス管
143…第1のリード片
144…第2のリード片
143a,144a…一端部
143b,144b…他端部
150…送信部
200…水質管理装置
210…受信部
220…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水の水処理を行う水処理装置であって、
複数の水処理領域を収容する処理槽本体と、
前記複数の水処理領域のうち、被処理水の薬剤処理を行う薬剤処理領域と、
前記薬剤処理領域において被処理水が流通する流通路と、
前記流通路上に配設され、前記流通路を流れる被処理水に対し溶出する薬剤を収容する薬剤収容ハウジングと、
前記薬剤収容ハウジングに収容されるとともに、当該薬剤収容ハウジング内における前記薬剤の消費に応じて収容位置が可変とされる磁石と、
前記薬剤収容ハウジングの外面側に取り付けられ、前記磁石において生じる磁気を検知する磁気センサと、
前記磁気センサが検知する磁気に基づいて、前記薬剤の消費に関する薬剤情報を出力する薬剤情報出力部と、
を備える構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置であって、
前記薬剤は、固形状に形成された複数の固形薬剤が上下に積み重ねられた状態で前記薬剤収容ハウジングに収容され、最下段の前記固形薬剤から順に前記流通路を流れる被処理水に対し溶出して消費されるとともに、所定段の前記固形薬剤の上に前記磁石が積み重ねられた構成であり、
前記磁気センサは、前記磁石が近接した状態で当該磁石から受ける磁気を検知する構成であり、
前記薬剤情報出力部は、前記薬剤の溶出に伴って前記磁気センサに対し前記磁石が自重によって下降しつつ近接することで、前記薬剤情報を出力する構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理装置であって、
前記磁石は、最上段の前記固形薬剤の上に積み重ねられる構成であり、
前記磁気センサは、前記薬剤収容ハウジングの外面側の各部位のうち最下段の前記固形薬剤に対応した部位に取り付けられる構成であり、
前記薬剤情報出力部は、前記薬剤の溶出に伴って前記磁気センサに対し前記磁石が自重によって下降しつつ近接することで、前記薬剤情報として前記薬剤の残量が無くなったことを出力する構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の水処理装置であって、
前記磁石は、N極及びS極が上下方向に連接して配設された両面2極構造とされ、
前記磁気センサは、磁性材料からなる二つの磁性体リード片が隙間をもって相対したリードスイッチを含む構成であり、
両面2極構造とされた前記磁石が当該リードスイッチを上方から下方へと横切る方向に近接することで、前記二つの磁性体リード片が前記磁石から受ける磁気により前記隙間において互いに接触する構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の水処理装置であって、
前記処理槽本体に前記薬剤収容ハウジングを取り付ける第1ホルダ部と、
前記薬剤収容ハウジングの外面側に前記磁気センサを取り付ける第2ホルダ部と、
を備え、
前記第1ホルダ部及び第2ホルダ部が一体状に構成されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の水処理装置であって、
前記処理槽本体に前記薬剤収容ハウジングを取り付ける第1ホルダ部と、
前記薬剤収容ハウジングの外面側に前記磁気センサを取り付ける第2ホルダ部と、
を備え、
前記磁気センサが取り付けられる前記第2ホルダ部は、前記第1ホルダ部に対し上下方向に関する移動が許容された構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の水処理装置であって、
前記薬剤収容ハウジングは、ハウジング内外を連通する第1及び第2のハウジング開口部を備える一方、前記第1ホルダ部は、前記薬剤収容ハウジングの外面側に被着されるとともに、前記薬剤収容ハウジングに対する被着部分のうち前記第1及び第2のハウジング開口部のそれぞれに合致する部位に第1及び第2のホルダ開口部を備える構成であり、これにより、前記流通路を流通する被処理水は、前記第1のホルダ開口部及び第1のハウジング開口部を通じて薬剤収容ハウジング内に流入して前記薬剤に接触した後、前記第2のハウジング開口部及び第2のホルダ開口部を通じて薬剤収容ハウジング外へと流出する構成であることを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の水処理装置であって、
前記薬剤収容ハウジングは、上下方向に延在する筒形状に構成されるとともに、ハウジング上部を塞ぐ蓋を備える構成であり、
更に、前記蓋と前記磁石とを接続する長尺状の接続手段を備え、この接続手段は、前記蓋がハウジング上部に装着された状態で、前記薬剤収容ハウジング内における前記磁石の上下移動を許容する一方、ハウジング上部を開放する際の前記蓋の上向きの開放動作に伴って、前記磁石を上方へと引き上げ可能とする延在長さを有する構成であることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−6303(P2009−6303A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172220(P2007−172220)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】