説明

水処理装置

【課題】水に含まれる硬度成分を除去する水処理装置の流路圧損の低下を抑制する。
【解決手段】本発明の水処理装置は、給水口から入った水が排水口から排出される流路と、この流路の前記給水口側に設けられ、通水性を有する板状の第1の電極と、この第1の電極の下流側に離間して設けられ、通水性を有する板状の第2の電極と、この第1の電極と第2の電極の間に電圧を印加する直流電源と、この第1の電極の下流側の面に当接して設けられた導電性のろ材と、このろ材と第2の電極の間には、前記硬度成分がろ材の表面にスケールとして析出するスケール析出室と、このスケール析出室の下方に位置すると共に、上部がスケール析出室と連通するスケール回収部と、を備え、前記給水口から入った被処理水は前記排水口から排出される共に、前記ろ材を通過する際に、このろ材の表面に形成されたスケールの落下を促進させて、スケール回収部にてスケールを回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に含まれる硬度成分を電気的に除去する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道水等を電気分解して次亜塩素酸を含む電解水を生成し、この電解水を用いて空気中に浮遊するウィルス等に対抗を図った空気除去装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種の空気除去装置は、気液接触部材に電解水を供給して、気液接触部材を通る空気に存在するウイルス等を電解水に接触させてウイルス等を不活性化することにより、空気を除菌している。
【0003】
ウイルス等の不活性化に用いられる電解水には硬度成分(カルシウムイオン、マグネシウムイオン等)が含まれることがあり、これらの硬度成分が気液接触部材中でスケール(固形物)となると、気液接触部材の空気通路につまりが生じ、除菌能力の低下のおそれがある。このため、電極部分に硬度成分をスケールとして析出させて、被処理水を軟水化させる軟水化モジュールと呼ばれる水処理装置が用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−175140号公報
【特許文献2】特開2008−307524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の水処理装置では、硬度成分が電極部分にスケールとして析出することにより流路圧損が生じ、通水量の低下を招き、硬度成分の除去能力の低下の要因となっていた。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水に含まれる硬度成分をスケールとして析出させて除去する水処理装置において、極部分に析出したスケールを回収して、流路圧損の増加を抑制する技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スケールとなる硬度成分を含む被処理水を処理する水処理装置において、給水口から入った水が排水口から排出される流路と、この流路の前記給水口側に設けられ、通水性を有する板状の第1の電極と、この第1の電極の下流側に離間して設けられ、通水性を有する板状の第2の電極と、この第1の電極と第2の電極の間に電圧を印加する直流電源と、この第1の電極の下流側の面に当接して設けられた導電性のろ材と、このろ材と第2の電極の間には、前記硬度成分がろ材の表面にスケールとして析出するスケール析出室と、このスケール析出室の下方に位置すると共に、スケール析出室と連通するスケール回収部と、を備え、前記給水口から入った被処理水は前記排水口から排出される共に、前記ろ材を通過する際に、このろ材の表面に形成されたスケールの落下を促進させて、前記スケール回収部にてスケールを回収するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水に含まれる硬度成分を除去する水処理装置の流路圧損の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る軟水化モジュールを備えた空気除菌装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る軟水化モジュールを備えた空気除菌装置の内部構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る軟水化モジュールを備えた空気除菌装置の内部構成を示す右側断面図である。
【図4】本発明に係る軟水化モジュールを備えた空気除菌装置において、電解水を生成し循環させる要部の構成を示す模式図である。
【図5】本発明に係る軟水化モジュールを備えた空気除菌装置が備える電解槽の構成を示す図である。
【図6】本発明に係る排水弁を備えた軟水化モジュールの構成を示す模式図である。
【図7】本発明に係る脱着可能な軟水化モジュールの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明に係る軟水化モジュール200(水処理装置)を備えた空気除菌装置10の外観斜視図である。図2は、軟水化モジュール200を備えた空気除菌装置10の内部構成を示す斜視図である。
【0012】
空気除菌装置10は、箱形の筐体20を備え、たとえば、床置き設置される。筐体20の両側面の下部に吸込グリル22が形成されている。また、筐体20の前面の下部に吸込口24が形成されている。
【0013】
さらに、筐体20の上面には吹出口26が形成されており、吹出口26には空気を吹き出す方向を変化させるためのルーバー28が設けられている。ルーバー28は、運転停止時には吹出口26を自動的に閉じるような開閉機構を有する。
【0014】
空気除菌装置10は、吸込グリル22および吸込口24を介して設置室内の空気を吸い込んで除菌した後、吹出口26から室内へ吐出することで、室内空気を清浄化する。
【0015】
筐体20には、筐体20の内部を上下に仕切る支持板48が設けられており、この支持板48で上側室50と下側室52とに区分けされている(図2参照)。下側室52には、送風ファン54およびファンモータ56が配置されている。また、仕切板58で区分けされた右側の空間には、把手部60を有する排水タンク62が筐体20の前面側に引き出し可能に収容されている。送風ファン54およびファンモータ56と、排水タンク62とは横並びに配置されている。
【0016】
また、送風ファン54と吸込口24との間、すなわち、下側室52における下側カバー部材44(図1参照)と対向する位置にプレフィルタ64が着脱自在に設けられている。プレフィルタ64は、吸込グリル22および吸込口24を通じて吸い込まれた空気中に存在する粒径の比較的大きな塵埃などを捕集する第1フィルタ66と、第1フィルタ66を通過する、たとえば粒径10μm程度の物質を捕集する第2フィルタ68とを有する。プレフィルタ64により空気中に浮遊する花粉や塵埃等が除去され、これらが除去された空気が送風ファン54により上側室50に供給される。
【0017】
一方、上側室50には、送風ファン54およびファンモータ56の上方に電装ボックス70が設置されている。電装ボックス70には、空気除菌装置10の動作を制御する制御部(図示せず)を構成する各種デバイスが実装された制御基板や、軟水化モジュールの電極220、221や3方弁314、ファンモータ56に電力を供給する電源回路等の各種電装部品が収容されている。制御部80は、ユーザによる操作パネル34の操作に応じてルーバー28やファンモータ56等の動作を制御する。
【0018】
電装ボックス70の上方には、通過する空気を電解水に接触させて空気を除菌する気液接触部材100が設けられている。気液接触部材100の下方には、気液接触部材100から滴下した水および電解水を受ける水受部102を有する水受皿104が設置されている。水受皿104は、深底に形成された貯留部106を備えている。貯留部106は、水受部102に滴下した電解水が流入するように構成されており、滴下した電解水が貯留部106に貯留される。また、貯留部106は、排水タンク62の上方に延在している。
【0019】
さらに、貯留部106の上には給水タンク38が設置されており、給水タンク38から貯留部106に水を供給することができる。
【0020】
また、貯留部106の上方には、電解水を気液接触部材100の上部側に供給する循環ポンプ108、電解水の硬度を低下させる軟水化モジュール200(水処理装置)および電解水を生成する電解槽300が設けられている。
【0021】
次に、空気除菌装置10における空気の流れについて説明する。図3は、空気除菌装置10の内部構成を示す右側断面図である。
【0022】
送風ファン54の送風口55から吹き出された空気は、図3の矢印Aで示すように、空間90を通り、気液接触部材100の背面に吹き付けられる。気液接触部材100を通過した空気は、第2導風部材96の内側の面98に導かれて吹出口26の下方に配設された吹出口フィルタ99を通って吹出口26から吐出される。
【0023】
図4は、空気除菌装置10において電解水を生成・循環させる要部の構成を示す斜視図である。空気除菌装置10は、空気を除菌する電解水を内部で循環させ、繰り返し使用している。空気除菌装置10においては、貯留部302に電解水が貯留され、この貯留部302から循環ポンプ108によって電解水が汲み上げられる。循環ポンプ108により貯留部302から汲み上げられた電解水の一部は気液接触部材100に供給され、気液接触部材100に浸潤して空気と接触することにより空気を除菌し、その後に貯留部302に戻って、循環ポンプ108により気液接触部材100に再び供給され、繰り返し除菌に使用される。
【0024】
気液接触部材100は、水受部102の上方に配設され、除菌に使用されて気液接触部材100から流下する電解水は、水受部102により受けられる。
【0025】
水受皿104は、水受部102と貯留部302とが一体的に成形されて構成されている。水受部102は、貯留部302より一段高く形成されており、気液接触部材100から水受部102に流下した電解水は、貯留部302に流れるようになっている。また、水受部102から貯留部302に至る電解水の流路には、気液接触部材100から流れ落ちた水に含まれる固形物(スケール)を捕集するフィルタ304が配設されている。
【0026】
循環ポンプ108は、貯留部302の水面より吸込口が下になるように配設されており、循環ポンプ108の吐出口に接続された配水管306を通じて電解水を吐出する。配水管306は、循環ポンプ108と気液接触部材100とを接続する配管である。また、配水管306には、配水管306から分岐する第1分岐管308および第2分岐管310がそれぞれ接続されている。第1分岐管308は軟水化モジュール200に接続され、第1分岐管308よりも下流側で分岐する第2分岐管310は電解槽300に接続されており、循環ポンプ108からは軟水化モジュール200および電解槽300にも電解水が供給される。
【0027】
軟水化モジュール200は、第1分岐管308を経て供給された電解水を軟水化する処理を行う。ここで、軟水化とは、水に含まれるカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)等を析出させて硬度成分の濃度を低減し、水の硬度を低下させる処理を指す。この軟水化モジュール200は、後述するように一対の電極220、221(図6参照)を内蔵し、電極220、221間に電圧を印加することにより電解水の硬度を低下させる。
【0028】
軟水化モジュール200の電解水の排水管312には、三方弁314が接続されている。三方弁314の一方の出口には、軟水化された電解水を貯留部302に戻す軟水戻し管316(第1の排出管)が接続され、他方の出口には、排水タンク62に接続された配水管318(第2の排出管)が接続されている。三方弁314は、制御部80の制御により切り換えられる。
【0029】
一方、電解槽300では、後述するように一対の電極320、322(図5参照)との間に、電圧を印加することにより、水を電気分解して除菌に有効な成分としての次亜塩素酸(HClO)を含む電解水が生成される。そして、電解槽300の吐出口には、電解水を貯留部302に送出する電解水吐出管330が接続されている。
【0030】
また、軟水戻し管316および電解水吐出管330の終端は、それぞれ、フィルタ304の上方に位置し、軟水化モジュール200および電解槽300を出た電解水は、軟水戻し管316および電解水吐出管330の終端から、フィルタ304に直接注がれ、フィルタ304を通過する際にスケール等が取り除かれてから貯留部302に戻る。
【0031】
電解槽300で生成された電解水は、貯留部302から循環ポンプ108により気液接触部材100に供給される。そして、空気が気液接触部材100を通過する際に空気中に浮遊するウィルス等と電解水とが接触してウィルス等が不活性化されるため、空気を除菌できる。また、電解水は、空気の除菌の効果に加え、気液接触部材100自体における雑菌の繁殖を抑制する効果がある。さらに、次亜塩素酸を含む電解水は、臭気が気液接触部材100を通過する際に、臭気をイオン化して電解水に溶解し空気中から除去できるため、脱臭の効果がある。
【0032】
また、気液接触部材100は、ハニカム構造を持ったフィルタであり、電解水の滴下が可能で、目詰まりしにくい構造になっている。
【0033】
図5は、電解槽300の構成を示す図である。図5を参照して、気液接触部材100に対する電解水の供給について説明する。なお、本実施の形態では、給水タンク38(図2参照)に水道水を入れて空気除菌装置10を動作させる場合について説明する。
【0034】
水道水を入れた給水タンク38が空気除菌装置10にセットされると、給水タンク38から貯留部302に水道水が供給され、水位が所定のレベルに達する。貯留部302内の水は循環ポンプ108によって汲み上げられ、電解槽300に供給される。この電解槽300には、図5に示すように、一対の電極320、322を備え、電解槽300に流入した水道水が電気分解されて活性酸素種を含む電解水が生成される。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシラジカルまたは過酸化水素とった、いわゆる狭義の活性酸素に、オゾン、次亜ハロゲン酸等といった、いわゆる広義の活性酸素を含めたものをいう。
【0035】
電極320、322は、たとえば、ベースがチタン(Ti)で皮膜層がイリジウム(Ir)、白金(Pt)から構成された電極板であり、この電極320、322に流れる電流値は、電流密度で数mA/cm2〜数十mA/cm2になるように設定され、所定の遊離残留塩素濃度(たとえば1mg/l(リットル))を発生させる。
【0036】
詳述すると、電極320、322の一方をアノードとし、他方をカソードとして、外部電源から電極320と電極322との間に通電すると、カソードでは、水中の水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)とが下式に示すように反応する。
4H+ + 4e- + (4OH-)→2H2 + (4OH-
一方、アノードでは、下式に示すように水が電気分解される。
2H2O→4H+ + O2 + 4e-
また、アノードでは、水に含まれる塩素イオン(塩化物イオン:Cl-)が下記式に示すように反応し、塩素(Cl2)が発生する。
2Cl-→Cl2 + 2e-
さらに、この塩素は下式に示すように水と反応し、次亜塩素酸(HClO)と塩化水素(HCl)が発生する。
Cl2 + H2O→HClO + HCl
貯留部302の電解水は、軟水化および電解の処理を定常的に受けながら気液接触部材100に循環し、空気の除菌に用いられる。そして、軟水化モジュール200により軟水化されて硬度が低下した電解水が、貯留部302を出て再び貯留部302に戻る電解水の循環経路を流れる。
【0037】
ところで、上述のスケールは主に以下の要因により発生する。電解水の原料として電解槽300に供給される水道水等の水には、ほとんどの場合、硬度成分(カルシウムイオン、マグネシウムイオン等)が含まれている。長期間にわたって空気除菌運転が行われた場合、特に、電解水が蒸発しやすい気液接触部材100では、電解水の蒸発により、これらの硬度成分が濃縮され、スケールとして析出する。気液接触部材100の表面にスケールが付着すると、気液接触部材100のつまりや、気液接触部材100における電解水の保水性の低下する虞がある。
【0038】
本実施の形態では、電解水の硬度成分をスケールとして析出させ、除去することで軟水化する軟水化モジュール200を利用して、スケールの発生を抑制している。
【0039】
図6は、軟水化モジュール200の構成を示す模式図である。軟水化モジュール200は、円筒状のケース210の両端にそれぞれ蓋部材212、214を固定して構成されたケース体216を有している。軟水化モジュール200は、ケース体216に一対の電極220(第1の電極)、221(第2の電極)と、イオンの捕集機能を有する導電性のろ材230と、絶縁性の支持部材240と、固定リング250、252とを収容して構成されている。
【0040】
蓋部材212には給水口290が設けられており、この給水口290に第1分岐管308(図4参照)に接続するためのジョイント260(継ぎ手)が設けられている。なお、本実施の形態では、給水口290は蓋部材212の下方(鉛直方向下部)に設けられている。また、ケース210の側面には排水口292が設けられており、この排水口292に排水管312(図4参照)に接続するためのジョイント262(継ぎ手)が設けられている。すなわち、電解水は、一方の蓋部材211側に設けられた給水口290から流入し、ケース210の上方に設けられた排水口292から排出され、ケース体216の内部に給水口290から排水口292に至る流路が形成されている。なお、ケース体216は、絶縁性の樹脂材料により構成されている。また、蓋部材212、214はケース210に着脱可能である。
【0041】
電極220、221は円盤状の電極であり、その外周がケース210の内周面に当接して取り付けられている。電極220は、電解水が流入する側に蓋部材212から離間して配設されており、蓋部材212と電極220との間に空間270が生じている。一方、電極221は、電解水が排出される側に蓋部材214から離間して配設されており、蓋部材214と電極221との間に空間272が生じている。また、電極221は、ジョイント262よりも蓋部材214側に位置しており、電極220と電極221との間にスケール析出室274が形成され、その下方には、スケール析出室274と連通するスケール回収部275が形成されている。
【0042】
電極220、221は、それぞれ網目状(メッシュ状)の金属または合金で形成されている。たとえば、電極220、221は直径65mm、厚さ1mmの格子状電極(格子高さ5.3mmm、格子幅14.0mm)である。このため、電極220、221は通水性を有し、電解水はジョイント260側からジョイント262側へ電極220を通過して流れることができ、また、電解水は電極221を通過して空間272とスケール析出室274とを行き来することができる。なお、電極220、221を構成する金属として、Pt、Ti、Pt−Ir合金が挙げられる。より具体的には、電極220、221は、ベースがTiで皮膜層がPt−Ir合金から構成された電極板である。また、通水性を確保するため、電極220、221の開口率は、例えば71%あればよい。
【0043】
また、電極220には、蓋部材212側に給電用の金属棒224が接続されている。金属棒224は蓋部材212を貫通し、軟水化モジュール200の外部に設けられた直流電源222の負極側に接続されている。同様に、電極221には、蓋部材214側に給電用の金属棒226が接続されている。金属棒226は蓋部材214を貫通し、軟水化モジュール200の外部に設けられた電源の正極側に接続されている。
【0044】
ろ材230は、炭素繊維、活性炭素繊維、白金繊維、チタン繊維、カーボンナノチューブの何れか、若しくは2種類以上含んだものが使用される。尚、ろ材230は、必ずしも繊維状である必要はなく、活性炭のような多孔質材であっても良い。本実施例では、ろ材230は炭素繊維であり、圧縮性を有するフェルト状の部材(厚さは、例えば4mm)である。ここで、圧縮性とは、押圧した時に体積が減少する性質を言う。
【0045】
支持部材240は、ろ材230の下流側の面に当接してろ材230を支持すると共に、ろ材230で析出したスケールのスケール回収部275への落下を促進する。支持部材240は、メッシュ状または格子状に構成された絶縁性部材であり、支持部材240の開口において、ろ材230がスケール析出室274に露出している。支持部材240は、例えばポリプロピレン樹脂により形成される。支持部材240の開口率は、例えば55%である。ポリプロピレン樹脂の支持部材240は表面が滑らかな材質であるので、繊維状のためスケールが付着しやすい炭素繊維のろ材230に当接させることで、スケールの剥離を促進することができる。
【0046】
固定リング250は、リング状の部材であり、蓋部材212と電極220との間に位置し、その外周がケース210の内周面に当接している。固定リング250により、蓋部材212と電極220との間の距離が規定され、空間270が形成されるとともに、ろ材230と、ケース210との間に電解水が入り込むことが抑制され、空間270とスケール析出室274との間の短絡が防がれている。
【0047】
固定リング252は、リング状の部材であり、電極221と蓋部材214との間において、その外周がケース210の内周面に当接して設けられている。固定リング252により、電極221と蓋部材214との間の距離が規定され、空間272が形成される。
【0048】
軟水化モジュール200を組み付けるため、蓋部材212および蓋部材214の径をケース210の径より大きくし、蓋部材212の周縁部分と蓋部材214の周縁部分とをネジ、ボルト、ナット等の締結部材で締め付ける構造を採用してもよい。この場合、ケース210の筒長よりも、固定リング250、電極220、ろ材230、支持部材240、固定リング252、電極221、固定リング254のケース210の内面に沿った部分の厚さの和の方が長いことが望ましい。これによれば、蓋部材212と蓋部材214に挟まれた部分において、固定リング250、電極220、ろ材230、支持部材240、固定リング252、電極221、固定リング254を締め付けることができる。ケース締め付け時の応力は、たとえば、10.6g/cm2である。
【0049】
次に、軟水化モジュール200の軟水化の処理について説明する。
【0050】
空気除菌装置10に対して空気除菌運転の開始が指示されると、制御部80は、ファンモータ56等を起動させる他、循環ポンプ108、軟水化モジュール200および電解槽300を起動させる。そして、電解水を気液接触部材100を含む循環経路に循環させる空気除菌運転が開始される。軟水化運転モードにおける流量および流速は、たとえば、それぞれ600mL/min、18.0m/sである。
【0051】
軟水化モジュール200においては、制御部80の指令により、直流電源222が電極220、221に直流電圧を印加し、電極220はカソード(負電位)、電極221はアノード(正電位)に設定される。電極220と当接して電気的に接続されたろ材230は、カソード(負電位)となる。
【0052】
これにより、軟水化モジュール200における電解水の流れの上流側に位置し、カソードとなる電極220およびろ材230では、水中の水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)とが下式に示すように反応する。
4H+ + 4e- + (4OH-)→2H2 +(4OH-
一方、下流側に位置し、アノードとなる電極221では、下式に示すように水が電気分解される。
2H2O→4H+ + O2 + 4e-
上記のように、カソードとなる電極220およびろ材230では、水酸化物イオン(OH-)が生成される。水酸化物イオンは非常に強い塩基であるため、電極220およびろ材230の負に帯電している表面は局所的にアルカリ性となる。これにより、電解水中の硬度成分(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)が水酸化物イオン(OH-)、炭酸イオン(CO32-)と反応し、塩となる。具体的には、電解水中に含まれるカルシウム、マグネシウム、カリウムおよびシリカなどのイオンが、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび水酸化マグネシウムなどの難溶性の塩となって析出する。また、電解水中にリン、硫黄、鉄、銅および亜鉛などのイオンが含まれる場合には、塩として硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性亜鉛、塩化鉄、水酸化鉄および水酸化銅なども析出することがある。これらカルシウム、マグネシウム、カリウムおよびシリカなどのイオンは、電析作用により、電極220およびろ材230上にスケールとして析出する。
【0053】
このように、硬度成分がスケールとなって析出することにより、循環する電解水に含まれる硬度成分の濃度は低下し、電解水は軟水化される。
【0054】
電極220およびろ材230にはスケールが析出し、運転時間の経過にともないスケールが肥大化していく。給水口290から入った電解水(被処理水)は排水口から排出されると共に、ろ材230を通過する際に、ろ材230の表面に析出されたスケールの落下を促進し、スケール回収部275で回収される。
【0055】
また、本実施の形態では、ろ材230の下流側の面が支持部材240によって平坦に保たれることにより、ろ材230の下流側の面が受ける電界強度が面内でばらつくことが抑制される。これにより、電析作用がろ材230の下流側の面内で均一に生じるため、ろ材230の表面においてスケールが局所的に析出して電解水の流れが妨げられることが抑制され、スケールの捕集能力が向上する。
【0056】
また、絶縁性の支持部材240をメッシュ状にすることにより、支持部材240の開口部分に電界が集中するため、支持部材240の開口部分のろ材230の表面にスケールを効率よく析出させることができる。
【0057】
特に、本実施の形態では、給水口290が蓋部材212の下方に設けられ、排水口292がケース210の上方に設けられているため、電解水の流れが図6に示すように、下方から上方への流れとなる。このような水流は、ろ材230の表面に析出したスケールの剥離を促進するため、ろ材230で捕集されたスケールを効率よくスケール回収部275で回収することができる。また、電解水の流れが下方から上方へ向くことにより、電解水とともに流れるガス(O2など)がケース210の外部へ排出されやすくなる。
【0058】
図6に示すように、スケール回収部275は排水タンク62に接続される排水弁276を備えている場合、運転開始後、所定時間経過したら、制御部80は、排水弁276を開いて、スケール回収部275で回収されたスケールを排水タンク62に排出する。
【0059】
また図7に示すように、スケール回収部275が別体で、スケール析出室274との接続部がスクリューキャップを冠設しており、螺着回転方向へ回転されることで装着される脱着可能な構成である場合、所定時間経過後、ユーザがスケール回収部275を取り外して、回収されたスケールを廃棄することもできる。
【0060】
水の硬度を示す一般的な指標は、たとえば、下式(1)により計算される。
硬度=カルシウム量×2.5+マグネシウム量×4.1・・・(1)
ここで、硬度、カルシウム量およびマグネシウム量の単位は(mg/l)であり、上記式(1)で求められる硬度は、水1リットル当たりに含まれるカルシウムとマグネシウムの量(mg)を炭酸カルシウムの量(mg)に換算したものである。上記式(1)で求められる硬度が300〜400(mg/l)を超えるとカルシウムやマグネシウムが析出しやすくなるが、実施の形態1に係る軟水化モジュール200を用いることにより、たとえば、電解水の硬度を200(mg/l)以下に低下させることができ、スケールの析出を抑制することができる。
【0061】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【符号の説明】
【0062】
10 空気除菌装置
20 筐体
38 給水タンク
62 排水タンク
80 制御部
100 気液接触部材
108 循環ポンプ
200 軟水化モジュール
220 第1の電極
221 第2の電極
222 直流電源
230 ろ材
240 支持部材
274 スケール析出室
275 スケール回収部
276 排水弁
290 給水口
292 排水口
300 電解槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールとなる硬度成分を含む被処理水を処理する水処理装置において、
給水口から入った水が排水口から排出される流路と、
この流路の前記給水口側に設けられ、通水性を有する板状の第1の電極と、
この第1の電極の下流側に離間して設けられ、通水性を有する板状の第2の電極と、
この第1の電極と第2の電極の間に電圧を印加する直流電源と、
この第1の電極の下流側の面に当接して設けられた導電性のろ材と、
このろ材と第2の電極の間には、前記硬度成分がろ材の表面にスケールとして析出するスケール析出室と、
このスケール析出室の下方に位置すると共に、スケール析出室と連通するスケール回収部と、を備え、
前記給水口から入った被処理水は前記排水口から排出される共に、前記ろ材を通過する際に、このろ材の表面に形成されたスケールの落下を促進させて、前記スケール回収部にてスケールを回収するようにしたことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記スケール回収部は排水弁を備え、この排水弁を開いてスケール回収部で回収されたスケールを排出するようにしたことを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記スケール回収部は脱着可能であることを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項4】
前記ろ材のスケール析出室側の面に当接して、メッシュ上の絶縁部材で構成された支持部材を更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−221102(P2010−221102A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69893(P2009−69893)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】