説明

水処理装置

【課題】線状電極が、スパークが原因で伸びたり溶融したりすることがない水処理装置を提供することを目的としている。
【解決手段】、容器2内に配置した、円筒状電極3とこの円筒状電極3の円筒内を臨むように配置された線状電極4との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水Wを1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置1aであって、線状電極4として等方性黒鉛電極を用いるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水、下水、排水等に含有される有機物、無機物、微生物を放電により発生するラジカル、オゾン等の活性種により分解処理する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を放電によって発生するオゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種によって分解処理するようにした水処理装置が既に提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、この水処理装置は、円筒状電極と線状電極との間に、円柱状に長いストリーマ放電空間が形成され、この円柱状に長いストリーマ放電空間内に1500μm以下と細かい粒径の水滴を供給するようにしたので、水滴が長い時間放電空間内に曝されるとともに、上記活性種に接触する被処理水の総表面積が大きくなる。
したがって、この水処理装置は、水滴中の有機物が上記活性種によって効率よく分解される。
【0004】
【特許文献1】特開2009−241055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、先に提案された水処理装置は、上記のように処理性能に優れたものであるが、数〜十数時間連続して使用するだけで、正常な放電が行われなくなってしまうと問題がある。
【0006】
そこで、本発明の発明者がその原因について検討した結果、ストリーマ放電させる際に発生するスパークが以下のように影響していることがわかった。
(1)線状電極が、スパークの熱によって伸びて弛むため、線状電極と円筒状電極との間隔が一定せず、安定した放電が行われなくなり、さらに、伸びが大きいと線状電極と円筒状電極が短絡する。
(2)線状電極がスパークの熱によって溶融断線する。
【0007】
したがって、本発明は、線状電極が、スパークが原因で伸びたり溶融したりすることがない水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる水処理装置は、容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、前記線状電極が黒鉛電極であることを特徴としている。
【0009】
本発明において、線状電極は、黒鉛で形成されていれば、特に限定されないが、放電の安定性、放電開始電圧、耐久性等を考慮すると、等方性黒鉛のようにできるだけ均質な黒鉛で形成されているものが好ましい。
また、上記黒鉛電極としては、かさ密度が1.7Mg/m3以上、固有抵抗(電気抵抗率)が9〜20μΩ・m、熱膨張係数が6.5×10-6/K以下、気孔率が20容量%以下のものが好ましい。
【0010】
すなわち、黒鉛電極のかさ密度が1.7Mg/m3未満では、電極設置や取り替え時に破断のおそれがある。
黒鉛電極の固有抵抗が9μΩ・m未満では、アーキング発生のおそれがあり、20μΩ・mを超えると、黒鉛電極の消耗が大きくなるおそれがある。
【0011】
また、黒鉛電極の気孔率が20vol%を超えると、安定した放電が得られなくなるおそれがある。
黒鉛電極の線径は、特に限定されないが、1〜8mmが好ましく、2〜3mmがより好ましい。すなわち、線径が1mm未満では、電極設置や取り替え時に破断のおそれがあり、8mmを超えると、安定したストリーマ放電が得られなくなるおそれがある。
【0012】
〔かさ密度の測定方法〕
黒鉛電極を105℃中に24時間乾燥させ、その後デシケータ中で冷却し、寸法、重量を測定し、(1)式で求めた。
d=W/V (1)
d:かさ密度(Mg/m3)
W:乾燥重量(Mg)
V:体積(m3)
【0013】
〔固有抵抗の測定方法〕
電圧降下法により測定した。(2)式により固有抵抗を求めた。
ρ=((V×A)/(I×L))×10 (2)
V:電圧端子間電圧(mV)
I:電流(A)
A:試験片断面積(cm2)
L:端子間距離(cm)
【0014】
〔気孔率の測定方法〕
Micromeritics社製 オートポアIII 9420を用いて水銀圧入法により測定した。
【0015】
なお、本発明において、ストリーマ放電空間に供給される水滴の粒径は、1500μm以下(好ましくは10μm以上1500μm以下)に限定されるが、その理由は、粒径が大きくなりすぎると、ストリーマ放電空間のプラズマに接触する体積あたりの表面積が小さくなり、処理効率が悪くなるためである。
本発明において、水滴の粒径の測定方法は液浸法による。水滴はシリコンオイルを満たしたシャーレに、シャーレの上部に設置した噴射ノズルの先端から水滴を噴霧し、噴射軸に対して垂直に置かれたシャーレにより採取した。採取した水滴は素早く撮像し、サイズ毎の粒径をカウントし、ザウター平均粒径を求め水滴の粒径とした。
【0016】
本発明において、被処理水を水滴化して供給する手段(以下、「水滴供給手段」と記す)としては、被処理水を粒径が1500μm以下の水滴にして供給することができれば、特に限定されないが、例えば、噴射ノズルが好適である。
また、水滴供給手段としては、被処理水を蒸気化して供給する蒸気発生装置でも構わない。この蒸気発生装置としては、特に限定されず、加熱式、超音波式及びこれらを併用したものが挙げられる。
【0017】
上記水滴供給手段として噴射ノズルを用いる場合、その噴角は、噴射ノズルから噴射される水滴の最外縁がストリーマ放電空間の最外縁に沿うように調整されていることが好ましい。
すなわち、ストリーマ放電空間の最外縁より外側まで広がるように水滴を噴射させても効率が落ちるとともに、容器の内壁面にぶつかり、大きな水滴となり内壁面に沿って流れ落ちて効率が悪くなるおそれがある。
なお、本発明において、上記噴角(噴霧角度)とは、ノズルからミスト状の水滴にされて噴射された水滴は、放物線を描きつつ落下するため、ノズルの噴射口から出た直後の被処理水ミストの広がり角度を意味する。
【0018】
噴射ノズルに水滴の噴射方向は、特に限定されないが、例えば、ストリーマ放電空間の上から下側、ストリーマ放電空間の下側からストリーマ放電空間に向かって上側、ストリーマ放電空間の側方からストリーマ放電空間に向かって噴射される。
噴射ノズルの数は、特に限定されず、1つ以上備えていればよい。また、円筒状電極及び線状電極を2対以上備えるような場合は、噴射ノズルは2つ以上備えていてもよい。
【0019】
円筒状電極の材質は、導電性があり耐食性、耐熱性に優れたものであれば、特に限定されないが、ステンレス鋼、タングステン鋼、チタン鋼が好適である。
また、円筒状電極は、円筒状電極が上記水滴供給手段から供給される水滴が通過可能な大きさの多数の孔を壁面に備えていることが好ましく、金網やパンチングメタルを用いることができる。
【0020】
円筒状電極の開孔率は、処理効率を考えると、50%以上であることが好ましい。
孔の大きさは、円筒状電極が円筒形状を保持できるとともに、水滴供給手段から供給される水滴が通過可能であれば特に限定されないが、一般的には開口面積が0.01mm2〜625mm2程度である。
【0021】
円筒状電極及び線状電極は、処理効率を考えると2対以上備えていることが好ましい。
また、上記のように、円筒状電極及び線状電極を複数対設けた場合、噴射ノズルの噴射軸方向は、各円筒状電極の中心軸とが平行になっていて、噴射ノズルの噴射軸から遠い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面が、前記噴射軸に近い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面に比べ、前記噴射ノズルから遠い位置に設けられている構成とすることが好ましい。
【0022】
円筒状電極と線状電極との間に印加される充電電圧は、ストリーマ放電が起きる電圧であれば特に限定されない。
【0023】
さらに、本発明の水処理装置においては、円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加する高圧電源や、ストリーマ放電空間を通過してきた水滴を受けて貯める貯水槽と、この貯水槽に貯められた水を被処理水として水滴供給手段に送るポンプとからなる被処理水循環構造を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
上記のように、本発明にかかる水処理装置は、容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、前記線状電極が黒鉛電極である容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、前記線状電極が黒鉛電極であるので、線状電極が、スパークが原因で伸びたり溶融したりすることがない。
したがって、この水処理装置は、被処理水中の有機物などを効率よく分解処理することができるとともに、長時間その処理能力を持続できる。
【0025】
また、上記水滴供給手段として、噴射ノズルを用い、この噴射ノズルから噴射されるミスト状になった水滴の最外縁がストリーマ放電空間の最外縁に沿うように噴射ノズルの噴角を調整すれば、被処理水を円筒状電極の径に併せて効率的にストリーマ放電空間に供給することができ、より効率的に処理を行うことができる。
【0026】
また、円筒状電極が水滴供給手段から供給された水滴が通過可能な大きさの多数の孔を壁面に備えていれば、円筒状電極の側方から被処理水の水滴を供給するようにしてもストリーマ放電空間内に水滴を供給することができる。
【0027】
本発明の水処理装置は、より効率よく処理を行うために、円筒状電極及び線状電極を2対以上備えている構成としてもよい、
また、円筒状電極及び線状電極を2対以上、円筒状電極の中心軸を平行にして配置し、上記のように円筒状電極が水滴供給手段から供給された水滴が通過可能な大きさの多数の孔を壁面に備えている構成にすれば、円筒状電極の内側に一旦入った水滴が孔を介して外側に出て、隣接する円筒状電極内に入る。したがって、効率よく処理を行うことができる。
【0028】
また、上記のように円筒状電極及び線状電極を2対以上備えている構成の場合、噴射ノズルの噴射軸方向と、各円筒状電極の中心軸とが平行になっていて、噴射ノズルの噴射軸から遠い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面が噴射軸に近い位置に配置された円筒状電極の噴射ノズル側端面に比べ、噴射ノズルから遠い位置に設けられているように円筒状電極を配置すれば、ストリーマ放電空間へ無駄なく、被処理水ミストを供給することができ、より効率よく処理できる。
【0029】
さらに、ストリーマ放電空間を通過した水滴を受けて貯める貯水槽と、この貯水槽に貯められた水を被処理水として水滴供給手段に送るポンプとからなる被処理水循環構造を備えていれば、被処理水中の有機物の分解率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかる水処理装置の第1の実施の形態の断面図である。
【図2】本発明にかかる水処理装置の第2の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図3】本発明にかかる水処理装置の第3の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図4】本発明にかかる水処理装置の第4の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図5】本発明にかかる水処理装置の第5の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図6】本発明にかかる水処理装置の第6の実施の形態を模式的にあらわした図である。
【図7】本発明にかかる水処理装置の第6の実施の形態の円筒状電極と線状電極を上面側から見た状態を模式的にあらわした図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる水処理装置の第1の実施の形態をあらわしている。
【0032】
図1に示すように、この水処理装置1aは、容器2と、円筒状電極3と、線状電極4と、被処理水タンク5と、ポンプ6と、噴射ノズルであるシャワーノズル7と、被処理水供給ホース71と、高圧電源であるパルスパワー発生装置8と、被処理水タンク収容ボックス9とを備えている。
容器2は、例えば、アクリル樹脂等の絶縁材料で形成され、円筒状をした容器本体21と、容器本体21の下端を、通水孔22a部分を除いて閉鎖するように設けられた下部蓋部22と、容器本体21の上端を、シャワーノズル設置孔23a部分を除いて閉鎖するように設けられた上部蓋部23とを備え、下部蓋部22が被処理水タンク収容ボックス9の開口部91を塞いだ状態で被処理水タンク収容ボックス9の開口部91周縁に受けられている。
【0033】
円筒状電極3は、例えば、ステンレス鋼製の1〜100メッシュの厚さ0.35mmの網を円筒状に加工することによって得られ、外径が容器本体21の内径より少し小さくなっている。
線状電極4は、例えば、直径2〜3mmの等方性黒鉛で形成され、円筒状電極3の中心軸に沿うように設けられている。
【0034】
被処理水タンク5は、下部蓋部22の通水孔22aを下方から臨むように処理水タンク収容ボックス9内に収容されている。
ポンプ6は、処理水タンク収容ボックス9内で被処理水タンク5に隣接して設けられ、被処理水タンク5内の被処理水Wを、被処理水供給ホース71を介してシャワーノズル7に送るようになっている。
【0035】
シャワーノズル7は、被処理水供給ホース71を介して送られてきた被処理水を粒径が1500μm以下の水滴からなる被処理水ミストMにして円筒状電極3の上部開口に向かって噴射するようになっている。
また、シャワーノズル7の噴角は、噴射される被処理水ミストMの最大広がり部でストリーマ放電空間の最外縁である円筒状電極3の内壁面に沿うような角度に調整されている。
【0036】
パルスパワー発生装置8は、円筒状電極3が陰極、線状電極4が陽極となるように円筒状電極3及び線状電極4に接続され、円筒状電極3と線状電極4との間にパルス状に高電圧を印加して円筒状電極3と線状電極4との間でストリーマ放電を起こすようになっている。
【0037】
この水処理装置1aは、上記のようになっており、被処理水タンク5に有機物等を含む被処理水Wを仕込むとともに、パルスパワー発生装置8によって、円筒状電極3と線状電極4との間に、高電圧をパルス状に印加し、円筒状電極3内に上下方向に円柱状となったストリーマ放電空間を形成する。
そして、ポンプ6を駆動させて、被処理水タンク5内の被処理水Wを、ホース71を介してシャワーノズル7に送り、円筒状電極3の上方から円筒状電極3の中心軸方向に向かって噴射することによって被処理水Wを循環しながら処理するようになっている。
【0038】
すなわち、ストリーマ放電によって、オゾン、OHラジカル、Oラジカル等の活性種がストリーマ放電空間内に発生し、シャワーノズル7から噴射された被処理水ミストM中の水滴が円筒状をしたストリーマ放電空間内を落下していく間にこれら活性種に接触し、各水滴中の有機物が効率よく酸化分解処理される。
【0039】
しかも、この水処理装置1aは、線状電極4が等方性黒鉛で形成されているので、スパークによって、線状電極4が伸びて弛むことが少なく、また、溶融することもない。
したがって、被処理水中の有機物などを効率よく分解処理することができるとともに、長時間その処理能力を持続できる。
【0040】
図2は、本発明にかかる水処理装置の第2の実施の形態をあらわしている。
図2に示すように、この水処理装置1bは、同じサイズの円筒状電極3及び線状電極4が4対容器2内で水平方向に並ぶように配置されている以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
【0041】
図3は、本発明にかかる水処理装置の第3の実施の形態をあらわしている。
図3に示すように、この水処理装置1cは、シャワーノズル7が円筒状電極3の下方に設けられ、被処理水ミストを垂直上向き噴射するようにした以外は、上記水処理装置1bと同様になっている。
【0042】
この水処理装置1cによれば、被処理水ミストMが、ストリーマ放電空間の下側からストリーマ放電空間に向かって噴射されるので、被処理水ミストM中の各水滴が一旦上昇した後、その重力により下降することにより、ストリーマ放電空間での滞留時間が増加し、より効率的に処理することができる。
【0043】
図4は、本発明にかかる水処理装置の第4の実施の形態をあらわしている。
図4に示すように、この水処理装置1dは、シャワーノズル7を円筒状電極の側方に設け、被処理水ミストを円筒状電極3の側面から水平方向に噴射するようにした以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
【0044】
図5は、本発明にかかる水処理装置の第5の実施の形態をあらわしている。
図5に示すように、この水処理装置1eは、シャワーノズル7の噴射軸Cに近い側の2本の円筒状電極3aより、遠い側の2本の円筒状電極3bの中心軸方向の長さが短くなっているとともに、短い円筒状電極3bの上端面を長い円筒状電極3aの上端面よりシャワーノズル7から離れた位置、すなわち、下方に位置するように配置し、シャワーノズル7から噴射された被処理水ミストMの最外縁が短い円筒状電極3b内に確実に納まるように調整した以外は、上記水処理装置1bと同様になっている。
【0045】
図6及び図7は、本発明にかかる水処理装置の第6の実施の形態をあらわしている。
図6及び図7に示すように、この水処理装置1fは、円筒状電極3及び線状電極4からなる電極対を6対備え、1つの電極対を線状電極4が容器本体21の中心軸に一致するように配置し、他の5つの電極対をその周囲を放射状に囲むように同一円周上に等間隔で並ぶように配置した以外は、上記水処理装置1aと同様になっている。
【0046】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、パルスパワー発生装置を備えていたが、パルスパワー発生装置は市販のものを別途容易するようにしても構わない。
上記第6の実施の形態の水処理装では、1つの電極対の周囲を5つの電極対で囲む2重構造であったが、さらに外側に多くの電極対を3重、4重に配置するようにしても構わないし、第5の実施の形態の水処理装置のように容器本体の外側に配置された円筒状電極の上端面の位置を内側に配置された円筒状電極の上端面より下方に設けるようにしても構わない。
【0047】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と対比させて説明する。
【0048】
(実施例1)
図1に示す水処理装置1aを用い、以下の実験条件で脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価を実施した。
〔実験条件〕
被処理水量:15リットル
被処理水の噴射速度(循環速度):12〜15L/分
充電電圧:25kV
放電回数:100回/秒
円筒状電極のメッシュ:2.5メッシュ、線径1.1mm、開孔率79.5%、平織金網
円筒状電極の内径:39.5mm
円筒状電極の長さ(中心軸方向の長さ):300mm
被処理水ミストの水滴粒径:750〜970μm
シャワーノズルの噴角:30°
シャワーノズルから円筒状電極までの距離:被処理水ミストの最外縁が最外部に位置する円筒状電極外縁の上端になるように調整した。
線状電極:φ2mm×500mmの等方性黒鉛電極(等方性黒鉛は、東洋炭素社製 1G−11(かさ密度1.77 Mg/m3、固有抵抗11.0μΩ・m))
(脱色性評価)
上記の実験条件で精製水にインジゴカルミンが20ppmの濃度で含まれる被処理水を水処理し、インジゴカルミンの分解完了時間を調べた。
なお、分解完了時間は、紫外可視分光光度計(島津製作所社製商品名UVmini−1240)を用いて610nmでの被処理水の吸光度を調べ、吸光度が0になった時間を分解完了時間とした。
(耐熱性評価)
図1に示す水処理装置1aを用い、スパークが発生しやすい状態にするため、精製水にMgSO4が100ppmの濃度で含まれる水溶液を被処理水として用い、上記の実験条件で48時間連続処理して、線状電極が伸びてゆるむあるいは溶融する時間を測定した。
【0049】
(実施例2)
線状電極として、φ3mm×500mmの等方性黒鉛電極(等方性黒鉛は、東洋炭素社製 1G−11(かさ密度1.77 Mg/m3、固有抵抗11.0μΩ・m))を用いた以外は、実施例1と同様にして脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価を実施した。
【0050】
(実施例3)
線状電極として、φ2mm×500mmの等方性黒鉛電極(等方性黒鉛は、東洋炭素社製 1G−45(かさ密度1.88 Mg/m3、固有抵抗9.0μΩ・m))を用いた以外は、実施例1と同様にして脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価を実施した。
【0051】
(比較例1)
線状電極として、φ0.28mm×500mmのステンレス鋼製電極を用いた以外は、実施例1と同様にして脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価を実施した。
【0052】
(比較例2)
線状電極として、φ0.4mm×500mmのチタン製電極を用いた以外は、実施例1と同様にして脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価を実施した。
【0053】
上記実施例1〜3及び比較例1,2で評価した脱色性評価及び線状電極の耐熱性評価の結果を表1に示す。表1中、脱色性評価の単位は、時間である。
【0054】
【表1】

【0055】
上記表1から、本発明の水処理装置のように、線状電極として黒鉛電極を用いるようにすれば、有機物が短時間で効率よく分解処理でき、かつストリーマ放電空間にスパークが発生しても、線状電極が伸びたり、溶融したりせず、長時間連続して水処理を行えることがよくわかる。
また、線状電極として、黒鉛電極を用いた場合、かさ密度が高い、すなわち、緻密な黒鉛を用いたほうが、分解処理能力が向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の水処理装置は、特に限定されないが、例えば、有機物を含む排水の浄化、汚染水の殺菌などに用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1a,1b,1c,1d,1e,1f 水処理装置
2 容器
21 容器本体
3,3a,3b 円筒状電極
4 線状電極
5 被処理水タンク
6 ポンプ
7 シャワーノズル(噴射ノズル)
8 パルスパワー発生装置(高圧電源)
W 被処理水
M 被処理水ミスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に、円筒状電極とこの円筒状電極の円筒内を臨むように配置された線状電極とを少なくともなくとも1対有するとともに、
前記円筒状電極と線状電極との間に高電圧を印加することによって生じるストリーマ放電空間内に被処理水を1500μm以下の水滴として供給し、水滴中の被処理物を分解処理するようにした水処理装置であって、
前記線状電極が黒鉛電極であることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
上記黒鉛電極が等方性黒鉛電極である請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
上記黒鉛電極は、かさ密度が1.7Mg/m3以上、固有抵抗が9〜20μQ・m、熱膨張係数が6.5×10-6/K以下、気孔率が20容量%以下である請求項1に記載の水処理装置。
【請求項4】
上記黒鉛電極の線径が1〜8mmである請求項1〜3のいずれかに記載の水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−130871(P2012−130871A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285646(P2010−285646)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】