説明

水分を含有する廃棄物の処理装置及び処理方法

【課題】使用済み紙おむつ等の水分を含有する廃棄物を、効率的に短時間に処理でき、安全で装置構成も簡単な処理装置を提供する。
【解決手段】廃棄物を熱分解処理する熱分解室2と熱分解の過程で発生した熱分解ガスを含む発生ガスを触媒61により浄化するガス浄化室3とで処理装置を構成し、熱分解室2に、熱分解室内に投入された廃棄物にマイクロ波を照射するマイクロ波発信器と発生した熱分解ガスをガス浄化室に供給するためのガス排出口56を設けると共に、熱分解室2内に、廃棄物を加熱し熱分解するための電気ヒーター22と空気を送り込む筒状火床棒21を設け、マイクロ波により廃棄物を乾燥させてから電気ヒーター22により熱分解させるようにした。これにより、効率良く短時間に廃棄物を熱分解すると共に、熱分解ガスを触媒61により無臭化・無害化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み紙おむつ等の水分を含有する廃棄物の処理装置及び処理方法に関し、さらに詳しくは、廃棄物を電気ヒータによる加熱とマイクロ波による照射によって発生する熱分解ガスと臭気を伴う発生ガスを触媒で浄化処理する火炎燃焼を伴わない廃棄物の処理装置及び処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、病院や介護老人施設等から使用済み紙おむつ等の廃棄物が大量に排出されている。これらの廃棄物には、感染性廃棄物が含まれており、衛生面から施設内で滅菌処理されることがあるが、糞便、尿などの悪臭を放つ成分を含有しているため、適切な処理を行わないと悪臭を発生させる。
【0003】
通常の焼却処理は、排出規制強化があり現在では施設内では使用されていない。それは、煤塵や一酸化炭素、ダイオキシン等の有害物質を発生させる恐れがあるため、常時炉内を800℃以上の高温に保つことが法律で定められており、構造的に設備が大型となることや多大なコストがかかるという問題があった。
他方、特許文献1には、生ゴミやし尿等の廃棄物等の含水率の高い廃棄物をマイクロ波により加熱し、空気を十分に送り込み燃焼させる廃棄物処理装置が開示されている。特許文献2には、使用済み紙おむつ等の水分を含有する廃棄物をマイクロ波により加熱炭化させ、火炎燃焼を伴わない廃棄物の炭化装置が開示されている。特許文献3には、感染性医療廃棄物をマイクロ波で照射して廃棄物の水分を均一に加熱乾燥させ滅菌処理する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−263410号公報
【特許文献2】特開2007−136328号公報
【特許文献3】特開2004−181022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、マイクロ波で廃棄物を加熱し、可燃ガスを発生させ燃焼させるので、塵芥や有害物質の発生が避けられず、また、長時間のマイクロ波照射が必要となり、電力消費量などのランニングコストが高いという課題がある。
【0006】
上記特許文献2は、炭化処理のためにマイクロ波による照射に長時間を要する。また、高出力が必要で電力消費量が大きく廃棄物の減容率が少ないこと、処理室にスクリューコンベアを配置し、炭化物を粉砕して排出するようにしているため、装置全体が複雑で大型化する課題がある。
【0007】
上記特許文献3は、熱分解処理を伴わず、滅菌した廃棄物をさらに産業廃棄物として処理するので廃棄物の処理費用が嵩むなどの課題がある。
【0008】
従って、本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、廃棄物の処理に空気を制限して供給し、電気ヒータを熱源として廃棄物の外部加熱で熱分解ガス化処理する方式に、マイクロ波による廃棄物の内部加熱で水蒸気を発生させて乾燥する方式とを組合せて構成し、熱分解処理中にマイクロ波により廃棄物の水分が蒸発、乾燥した時点で、外気に分解ガスや臭気が漏洩することなく次の廃棄物を連続的に投入できる方式を採用したので、効率的に短時間に廃棄物の減容処理が図れるとともに、熱分解ガス等の発生ガスを吸引ファンで触媒層に導き触媒で酸化処理し、無臭化・無害化して排出でき、かつ低温で処理でき、安全で装置構成も簡単な廃棄物の処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、
請求項1は、熱分解室内に投入された水分を含有する廃棄物にマイクロ波発信器で発生したマイクロ波を照射して前記廃棄物を処理する廃棄物の処理装置であって、前記処理装置は廃棄物を熱分解処理する熱分解室と、熱分解の過程で発生する熱分解ガスを含む発生ガスを触媒酸化により浄化するガス浄化室を有し、前記熱分解室に上記加熱の過程で発生する熱分解ガスを前記ガス浄化室に供給するためのガス排出口を設けると共に、前記熱分解室内に、前記廃棄物を加熱し熱分解するための電気ヒータと空気を送り込む筒状火床棒を設けたことを特徴とする廃棄物の処理装置である。
【0010】
このように構成すると、マイクロ波による照射で廃棄物に含まれる水分が優先的に水蒸気として発生し、廃棄物を乾燥させるので、電気ヒータによる廃棄物の熱分解が一層促進され、効率的に短時間に廃棄物の減容処理が図れる。
【0011】
請求項2は、熱分解室内に投入された水分を含有する廃棄物にマイクロ波発信器で発生したマイクロ波を照射して前記廃棄物を処理する廃棄物の処理装置であって、前記処理装置は廃棄物を熱分解処理する熱分解室と、熱分解の過程で発生する熱分解ガスを含む発生ガスを触媒酸化により浄化するガス浄化室を有し、前記熱分解室に上記加熱の過程で発生する熱分解ガスを前記ガス浄化室に供給するためのガス排出口を設けると共に、前記熱分解室内に、前記廃棄物を加熱し熱分解するための電気ヒータと空気を送り込む筒状火床棒を設け、且つ前記筒状火床棒が、廃棄物の熱分解に必要な空気量を調整して熱分解室内に空気を導く空気流入調整機構に接続されていることを特徴とする廃棄物の処理装置である。
【0012】
このように構成すると、マイクロ波による照射で廃棄物に含まれる水分が優先的に水蒸気として発生し、廃棄物を乾燥させるので、電気ヒータによる廃棄物の熱分解が一層促進され、効率的に短時間に廃棄物の減容処理が図れる。
また、熱分解室に供給される空気量を制限することで、熱分解温度の上昇に伴う火炎の発生を防止し、廃棄物を確実に炭化処理することができる。
さらにマイクロ波の照射で優先的に廃棄物の水分を蒸発及び乾燥させることと相まって廃棄物の熱分解による炭化処理を一層促進させることができる。
【0013】
請求項3は、熱分解室内に投入された水分を含有する廃棄物にマイクロ波発信器で発生したマイクロ波を照射して前記廃棄物を処理する廃棄物の処理装置であって、前記処理装置は廃棄物を熱分解処理する熱分解室と、熱分解の過程で発生する熱分解ガスを含む発生ガスを触媒酸化により浄化するガス浄化室を有し、前記熱分解室に上記加熱の過程で発生する熱分解ガスを前記ガス浄化室に供給するためのガス排出口を設ける共に、前記熱分解室内に、前記廃棄物を加熱し熱分解するための電気ヒータと空気を送り込む筒状火床棒を設け、且つ前記筒状火床棒が、廃棄物の熱分解に必要な空気量を調整して熱分解室内に空気を導く空気流入調整機構に接続されており、さらに、前記熱分解室に、前記廃棄物の受け入れを中継し前記熱分解室内の分解ガスを外気に漏れ出さない機構を有する廃棄物の投入部を設けたことを特徴とする廃棄物の処理装置である。
【0014】
このように構成すると、マイクロ波による照射で廃棄物に含まれる水分が優先的に水蒸気として発生し、廃棄物を乾燥させるので、電気ヒータによる廃棄物の熱分解が一層促進され、効率的に短時間に廃棄物の減容処理が図れる。
また、筒状火床棒が廃棄物の熱分解に必要な空気量を調整して熱分解室内に空気を導く空気流入調整機構に接続されているので、熱分解室に供給される空気量を制限し、熱分解温度の上昇に伴う火炎の発生が防止され、廃棄物の炭化、灰化処理を確実に行うことができる。
加えて、熱分解ガスが外気に漏れることのない機構を有する廃棄物の投入部を設けたので、廃棄物の熱分解処理中でも一定時間毎に、或いは廃棄物の減容がある程度進行した段階で廃棄物の投入が可能であり、廃棄物の処理時間の短縮が図れる。
【0015】
請求項4は、熱分解室内に投入された水分を含有する廃棄物にマイクロ波発信器で発生したマイクロ波を照射して前記廃棄物を処理する廃棄物の処理装置であって、
前記熱分解室内に、前記廃棄物を加熱し、熱分解するための電気ヒータと空気を送り込む筒状火床棒を設け、
前記筒状火床棒に、廃棄物の熱分解に必要な空気量を調整して熱分解室内に空気を導く空気流入調整機構を接続し、
前記熱分解室に、前記廃棄物の受け入れを中継し前記熱分解室内の分解ガスを外気に漏れ出さない機構を有する廃棄物の投入部を設けると共に、
前記熱分解室に、火床部の電気ヒータと筒状火床棒との間の隙間から熱分解後の灰を落下させる灰堆積部を設け、
該堆積部は廃棄物の分解後の灰を外部から取り出せる灰取出口を有し、ガス漏洩防止とマイクロ波漏洩防止のためのシールを介して灰点検蓋が開閉可能に取り付けられていることを特徴とする廃棄物の処理装置。
【0016】
このように構成すると、前記請求項3で達成された事項に加えて、火床部の電気ヒータと筒状火床棒の下部に灰堆積部を設けたので、灰は電気ヒータと筒状火床棒との間の隙間から落下し、灰集積部に堆積することができ、分解後の灰を外部から容易に取り出すことができる。
【0017】
請求項5は、前記電気ヒータは、調節された量の空気を供給する前記筒状火床棒と水平方向に交互に平行に配列した火床部を形成し、それぞれの隙間から熱分解処理後の灰を落下させる灰集積部を設ける共に、
前記火床部上に投入部からの廃棄物を載置する構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の廃棄物の処理装置。
【0018】
このように構成すると、熱分解室内の下部に設けられた電気ヒータと筒状火床棒とがそれぞれ水平方向に交互に平行に配列されて火床部が形成されているので、その上に廃棄物を直接に載置でき、それぞれの隙間から熱分解処理後の灰を灰集積部に落下させることができる。
【0019】
請求項6は、前記筒状火床棒は、熱分解室の下方に向けて複数個の空気口を有し、前記空気口から前記空気流入調整機構で調節された量の空気が供給されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の廃棄物の処理装置である。
【0020】
このように構成すると、投入された廃棄物によって空気口が閉塞されることは無く、下方から全体に行き渡るように火床部へ空気が供給される。さらに下向に穿設された空気口を有する筒状火床棒と棒状電気ヒータとで構成される本発明の火床部は、必要な熱源と空気を供給するので廃棄物を直接熱分解する部分として効率よく機能することができる。
【0021】
請求項7は、前記空気流入調整機構は、熱分解に必要な空気量を調整して熱分解室内に空気を導く配管から構成され、熱分解室外に空気取り入れ口と、その空気流入量を調節できる空気流入調節弁と、空気の流入量を検出できる空気流入センサーを少なくとも有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の廃棄物の処理装置である。
【0022】
このように構成すると、熱分解に必要な空気量は、空気流入調節弁と空気の流入量を検出できる空気流入センサーによって、必要なだけの空気量が熱分解室内に取り入れることができる。すなわち、後述するように熱分解が盛んになると分解ガス量が増え触媒酸化反応により触媒層の温度が上昇し、その温度情報に基づいて空気流入調節弁を閉じる方向に制御し吸入空気を減らし熱分解を抑え緩慢にすることができる。また、触媒層の温度が低下してきたときは空気流入調節弁を開ける方向に制御し、熱分解を盛んにし、継続することができる。このため、火床部の電気ヒータは常時オン(ON)にする必要は無く、定期的にオフ(OFF)にするか、或いは触媒層の温度情報に基づいて電気ヒータを制御し消費電力を削減することができる。さらに、廃棄物にマイクロ波を照射して優先的に廃棄物中の水分を蒸発、乾燥させるが、乾燥後は常時マイクロ波を照射する必要もないので、さらなる消費電力の削減につながり、全体としてランニングコストを安くすることができる。
【0023】
請求項8は、前記投入部は、外気を遮断する投入蓋と、熱分解室内を遮断する受台扉と、廃棄物を乗せる受皿台を少なくとも有し、前記受台扉は前記受皿台と連動して動作し、前記受皿台を投入部外部から揺動させて前記投入部の受台扉を開閉し、前記受皿台上の廃棄物を前記熱分解室内に投入する機構を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の廃棄物の処理装置である。
【0024】
このように構成すると、廃棄物を投入する際に投入蓋の単独の開閉で外気を遮断し、同時に受台扉も熱分解室内を遮断することができ分解ガスとマイクロ波が外部に漏れることがない。加えて、廃棄物の熱分解処理中でも一定時間毎に、或いは廃棄物の減容がある程度進行した段階で廃棄物の投入が可能であり、廃棄物の処理時間の短縮が図れる。
【0025】
請求項9は、前記受台扉は前記受皿台を熱分解室側に傾斜させると、受皿台にある廃棄物を前記受皿台から受台扉に移動し、投入部から熱分解室内へ投入できる請求項8に記載の廃棄物の処理装置である。
【0026】
このように構成すると、受皿台の両側板に形成された案内溝に沿って、受台扉の両側に固定された案内棒が移動するので、受皿台にある廃棄物は受皿台から下降し受台扉に移動し、投入部の排出口が解放され熱分解室内へ投入できる。
【0027】
請求項10は、水分を含有する廃棄物の処理方法であって、前記廃棄物にマイクロ波を照射して廃棄物中の水分を蒸発、乾燥させると共に、熱分解室に供給される空気量を制限して、前記廃棄物を電気ヒータで加熱して熱分解し、熱分解ガス及び水蒸気を含む臭気を伴う発生ガスを触媒で酸化して無臭化、無害化することからなる火炎燃焼を伴わない廃棄物の処理方法である。
【0028】
このように構成すると、マイクロ波による照射で廃棄物に含まれる水分が優先的に水蒸気として発生し、廃棄物を乾燥させるので、電気ヒータによる廃棄物の熱分解が一層促進され、効率的に短時間に廃棄物の減容処理が図れる。また、熱分解室に供給される空気量を制限することで、熱分解温度の上昇に伴う火炎の発生が防止される。さらにマイクロ波の照射で廃棄物の水分を蒸発、乾燥させることと相まって相乗的に廃棄物の熱分解を一層促進させることができる。
【0029】
請求項11は、水分を含有する廃棄物の処理方法であって、熱分解室に供給される空気量を制限して、廃棄物を電気ヒータで加熱して熱分解し、前記廃棄物にマイクロ波を照射して廃棄物中の水分を蒸発、乾燥させた時点で、熱分解ガス及び水蒸気を伴う臭気を外気に漏洩させることなく、次の廃棄物を投入し、熱分解ガス及び水蒸気を含む臭気を伴う発生ガスを触媒で酸化処理して無臭化、無害化する工程からなる火炎燃焼を伴わない廃棄物の処理方法である。
【0030】
このように構成すると、乾燥工程が終了した時点で廃棄物の減容も進行しているために、次の廃棄物が投入でき、さらなる時間短縮が可能である。
【0031】
請求項12は、水分を含有する廃棄物の処理方法であって、前記廃棄物にマイクロ波を照射して廃棄物中の水分を蒸発、乾燥させると共に、熱分解室に供給される空気量を制限して、前記廃棄物を電気ヒータで加熱して熱分解し、熱分解の過程で発生した発生ガスを吸引ファンで吸引して熱分解室内を負圧にし、その負圧によって空気流入調整機構で調節された量だけの空気が筒状火床棒を通じて火床部に供給されることを特徴とする請求項10又は11に記載の廃棄物の処理方法である。
【0032】
このように構成すると、火床部は、熱分解室で発生した分解ガスをガス浄化室の排出口に取り付けられた吸引ファンで吸引され、熱分解室内が負圧となり、その負圧によって空気流入調整機構で調節された量だけの空気が筒状火床棒を通じて火床部に供給され効率よく機能することができる。
【0033】
請求項13は、水分を含有する廃棄物の処理方法であって、熱分解室内で水分を含む廃棄物を400℃以下の加熱温度と熱分解に必要な微量の空気量で熱分解を行うことを特徴とする請求項10〜12に記載のいずれか1項記載の廃棄物の処理方法である。
【0034】
このように構成すると、電気ヒータを、熱分解室内に取り付けた温度センサーにより、上限温度450℃に達したら通電を解除し、下限温度(250℃)に達したら通電することを繰り返し行い、常時廃棄物に熱を与え、また熱分解に使われる空気を約0.2m/min以下に供給し、廃棄物の加熱による火炎を発生させることなく熱分解処理することができる。
【0035】
請求項14は、水分を含有する廃棄物の処理方法であって、廃棄物を投入部に投入する工程が少なくとも下記の工程を含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の廃棄物の処理方法である。
(1)投入蓋を開け、投入部内の受皿台に廃棄物を載せて投入蓋を閉め受皿台上の廃棄物を圧縮する工程;
(2)投入レバーを揺動させて、熱分解室の受入口を開口させ、投入部内の廃棄物を受皿台、受台扉に沿って熱分解室内に投入する工程;
(3)投入レバーを再び元の位置に戻し、受台扉を投入部から密封させ、投入された廃棄物をマイクロ波による照射と電気ヒータによる加熱で熱分解させる工程;及び
(4)上記(1)を繰り返し、次に処理する廃棄物を受皿台上に載せ投入蓋を閉めた後、投入レバーを揺動させて廃棄物が再び受皿台、受台扉に沿って熱分解室内に投入する工程。
【0036】
このように構成すると、熱分解処理中にマイクロ波により廃棄物の水分が蒸発、乾燥した時点で、外気に分解ガスや臭気が漏洩することなく次の廃棄物を連続的に投入できるので効率よく短時間に廃棄物の減容処理を行うことができる。加えて、熱分解ガス等の発生ガスを吸引ファンで触媒層に導き触媒で酸化処理し、無臭化・無害化して排出でき、かつ低温で処理でき、安全で装置構成も簡単である。
【0037】
請求項15は、水分を含有する廃棄物の処理方法において、廃棄物にマイクロ波を照射して廃棄物中の水分を優先的に加熱、蒸発して約150〜約200℃の乾燥状態にすると共に、電気ヒータで廃棄物を約250℃〜約450℃の範囲で熱分解することを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の廃棄物の処理方法である。
【0038】
このように構成すると、マイクロ波の照射で、廃棄物を加熱、蒸発して約150〜約200℃の乾燥状態にし、電気ヒータの熱分解によって約250℃〜約450℃の範囲で制御できるので熱分解の処理スピードを大幅に向上させることができる。また、マイクロ波の照射で乾燥以後の炭化、灰化までを行うことがないので、必要以上の電力を消費することがなく、ランニングコストを抑えることができる。
【0039】
請求項16は、水分を含有する廃棄物の処理方法であって、該方法は少なくとも下記の工程を含むことを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の廃棄物の処理方法である。
(1)廃棄物の投入前に火床部の電気ヒータを約400℃の熱を廃棄物に与えるように昇温制御する工程;
(2)ガス浄化室内の電気ヒータで、触媒層の入口温度を約300℃〜約350℃に昇温制御する工程;
(3)吸気ファンを作動して空気流入調節弁により外気から熱分解に必要な微量の空気を火床部に供給する工程;及び
(4)マイクロ波を熱分解室の廃棄物に照射する工程。
【0040】
請求項17は、水分を含有する廃棄物の処理方法であって、熱分解室に供給される空気量は触媒層の温度情報に基づき行い、触媒層の温度が上昇してきた時は空気流入調節弁を閉じる方向に制御し供給空気を減らし、熱分解を緩慢にし、触媒層の温度が低下してきた時は空気流入調節弁を開ける方向に制御し、熱分解を盛んにし、継続することを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の廃棄物の処理方法である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係る廃棄物の処理装置の構成を詳細に説明する。
【0042】
図1において、1は本発明の処理装置を表し、2は本発明の本体部分を構成する熱分解室、3は熱分解室2で発生した分解ガスを浄化するガス浄化室を表す。熱分解室2はマイクロ波を反射するステンレス等の金属製であって全体として箱型に形成されている。
【0043】
図2において、22は棒状の電気ヒータを表し、熱分解室2の下部に取り付けられ、その先端は熱分解室2の内壁59付近まで達している。電気ヒータ22は触媒層61に設けられた温度センサー(図示せず)からの温度情報に基づいて制御されるように構成されており、触媒層61の触媒65が異常に高温になり、熱分解室2の熱分解が激しい場合は、電気ヒータ22をオフ(OFF)にして熱分解を抑え、反対の場合は、電気ヒータ22をオン(ON)にして熱分解を促進させることができるように設計されている。
【0044】
図3において、21a、21b、21cは筒状火床棒を表し、熱分解室2の下部に取り付けられた電気ヒータ22a〜22fと水平方向に平行に並設されており、その先端は熱分解室2の内壁59に固定されている。この筒状火床棒21a〜21cは熱分解室2の下方に向けてそれぞれ等間隔に複数個の空気口23が穿設されている。
【0045】
図4において、50は、空気流入調整機構を示し、熱分解に必要な空気量を調整して熱分解室2内に空気を導く配管55から構成され、空気取入口51と、その空気流入量を調節できる空気流入調節弁52と、空気の流入量を検出できる空気流入センサー53を含む。空気流入センサー53と熱分解室2との間は3本に分岐されて分岐管54を形成している。分岐管54は、熱分解室2の外側で曲折され、熱分解室2の側壁を貫通し、内部へと平行に伸びており、その先端は熱分解室2の内壁59に密閉して固定されている(図3参照)。また、熱分解室2の側壁を貫通した部分も外気の漏洩が無いように熱分解室2の側壁に密閉して固定されている。そして、6本の電気ヒータ22a〜22fと3本の筒状火床棒21a〜21cとで火床部20(図3参照)を形成しており、水分を含む廃棄物は火床部20の上で水分の蒸発、乾燥、及び熱分解処理される。
【0046】
図2において、10は、廃棄物の投入部を表す。この投入部10は、次の廃棄物の受け入れを中継し、廃棄物を熱分解室2に投入した時に投入部10内に流入した分解ガスが外部に漏出しない機構を有している。投入部10の一方の投入蓋12は単独の開閉で外気を遮断し、他方の受台扉18は投入部10内に位置し熱分解室2内を遮断するように構成されている。
【0047】
また、投入部10内には、廃棄物を乗せる受皿台13を有し、受台扉18と連動して動作し、受皿台13を投入部10の外部から揺動させると投入部10内の受台扉18は開閉し、投入部10の受皿台13に乗せた廃棄物は下方に移動し、受台扉18を経て熱分解室2に投入されるように構成されている。
【0048】
熱分解室前部には廃棄物が通過できる角穴状の受入口35が形成されており、その受入口35に合うように投入部10側にも同じく角穴状の排出口36が形成されている。そして受入口35の外縁には、ガス漏洩防止とマイクロ波漏洩防止のためのシール16が全面にわたって取り付けられている。
【0049】
投入部10は、その上部側に廃棄物を投入する投入口11を有し、その投入口11には投入部10を密封でき、ガス漏洩防止とマイクロ波漏洩防止のためのシールを取り付けた投入蓋12が開閉可能に取り付けられている。投入蓋12下部の投入部10内には、廃棄物を一時的に乗せる受皿台13が水平に配置されており、その手前側には揺動支点になる支点軸101が両端に固定されている。その両支点軸101は投入部側板に固定された軸受に揺動可能に嵌合されている。さらに支点軸101の片側には投入部10の外側まで延びる投入レバー14が固定されている。
【0050】
受皿台13の両側板には案内溝15が形成されており、廃棄物を投入部10から熱分解室2内に押し込むことができる。受台扉18の下部両側には開閉の支点となる支点軸102が両端に固定されており、その両支点軸101、102は投入部10の側板に固定された軸受けに開閉可能に嵌合されている。
受台扉18の上部両側には案内棒17が固定されており、この案内棒17は受皿台13両側板に形成された案内溝15に沿って移動可能に連結されている。受皿台13に固定された投入レバー14には握部103を有し、投入部10の外から人手で手前側に揺動させることができる。投入部10内の受皿台13を熱分解室2側に傾斜させると、受台扉18がその支点軸102を中心に案内溝15に沿って開くことができるように構成されている。このため、受皿台13にある廃棄物は受皿台13から下降し受台扉18に移動し、投入部10の排出口36が解放され熱分解室2内への投入準備ができる。
【0051】
さらに投入レバー14を元の位置へ揺動させると、受皿台13が水平方向へ戻ると同時に受皿台13の案内溝15に沿って受台扉18はその支点軸102を中心に閉まるように構成されている。この受台扉18が閉まる過程で廃棄物は熱分解室2内へ投入される。
【0052】
図2において、30は灰堆積部を表し、火床部20の電気ヒータ22と筒状火床棒21との間の隙間から落下した灰を集積するための空間が形成されている。灰堆積部30は、廃棄物の分解後の灰を外部から取り出せる灰取出口31を有し、ガス漏洩防止とマイクロ波漏洩防止のためのシールを介して灰点検蓋32が開閉可能に取り付けられている。
【0053】
図2において、熱分解室2の上面には、分解ガスを排出するためのガス排出口56が穿設されており、さらに複数のガス排出口56に連接して複数の短管57が設けられている。短管57は、ガス排出口56からのマイクロ波の侵入を防止する適切な長さ及び径に設定されている。
【0054】
図4において、熱分解室2の上部付近にはマグネトロン42から発信されたマイクロ波の導波管40が熱分解室2とフランジで接続されている。熱分解室2内のマイクロ波出口43と導波管40との間は、臭気のある水蒸気や分解ガスが導波管40を通じマグネトロン42への浸入防止と外気漏れ防止のため、誘電損失係数の小さい誘電体(マイクロ波は透過するがガス類は遮断する)である数ミリの板形状のテフロン(登録商標)や石英などの耐熱性がある材料41で密閉し固定されている。
【0055】
図5において、71はガス浄化室3の底部空間部を表す。底部空間部71は外気へのガス漏洩防止のためその下面が熱分解室2の上面と密接に固定されている。
【0056】
図4において、75はガス浄化室3の外部側板72と触媒層ケーシング73を保持する内部側板74との間に形成された第1の側壁空間部を示す。該側壁空間部75は上記底部空間部71に連通している。触媒層ケーシング73の内部側板74の表面は触媒層ケーシング73内の触媒反応熱で高温化されているため熱分解室2からの低温の分解ガスはこの第1の側壁空間部75を通過するときに熱交換される。
【0057】
第1の側壁空間部75の上部左側には、熱交換された分解ガスが触媒層ケーシング73内に入るための角穴状の流入口76が形成されている。
【0058】
図5において、触媒層ケーシング73の内部には、ガス浄化室3の外部側板72と触媒層ケーシング73を保持する内部側板74との間に第2の側壁空間部77が形成されており、熱交換された分解ガスの通路となる。
【0059】
触媒層ケーシング73の下部付近には、空間部78が形成されており、熱交換された分解ガスをさらに昇温するための電気ヒータ70が水平に配置されている(図5)。空間部78の突き当たり上部には第1の通路穴79aが形成されており、その付近には温度センサー80が取り付けられている。
【0060】
触媒ケーシング73内には、酸化触媒が充填された着脱自在なカートリッジ62a〜62cが挿入された触媒層61a〜61cが形成されており、これらすべての触媒層の上下面はパンチングメタルなどのガスの通気が可能な構造となっている。
【0061】
また、図5に示すように、触媒層61a〜61cの間には仕切板63a〜63cの一端がそれぞれ内部側板74に交互に取り付けられており、その他端は対向する内部側壁74から離間して通路穴79a〜79cを形成し、分解ガスの通路を形成している。さらに、仕切板63a〜63cと触媒層61a〜61cとの間には空間部64a〜64eがそれぞれ形成されており、分解ガスは触媒層61a〜61cの全域に流入され触媒によって燃焼される。さらに、ガス浄化室3の上部には触媒層61cで浄化された熱分解ガスを排出する通路81及び出口部82があり、吸引ファン60に接続されている。
【0062】
本発明の方法における好ましい実施態様では、熱分解室2は、廃棄物を約400℃以下の熱分解温度の低温下で熱分解を行うため、熱分解に使われる空気は、約0.2m/min以下程度が好ましく、これ以上の空気量では熱分解温度が上昇し火炎が発生することがあり、またこれ以下の空気量では熱分解に長時間を要し好ましくない。
【0063】
本発明の方法における好ましい実施態様では、火床部20は、熱分解室2で発生した分解ガスをガス浄化室3の排出口に取り付けられた吸引ファン60で吸引され、熱分解室2内が負圧となり、その負圧によって空気流入調整機構50で調節された量だけの空気が筒状火床棒21を通じて火床部20に供給される。また、投入された廃棄物によって空気口23が閉塞されることは無く、下方から全体に行き渡るように火床部20へ空気が供給される。さらに下向に穿設された空気口23を有する筒状火床棒21と棒状電気ヒータ22とで構成される本発明の火床部20は、必要な熱源と空気を供給するので廃棄物を直接熱分解する部分として効率よく機能することができる。
【0064】
本発明の方法における好ましい実施態様では、空気流入調節弁52は、手動で弁の開閉を行う手動弁でも調整できるが、モータ等で動作する制御弁でも調節できる。この制御は触媒層61の温度情報を用いて行い熱分解室2内で発生するガスの発生量を触媒の反応温度に置き換えて判断できる。すなわち、熱分解が盛んになると分解ガス量が増えて触媒酸化反応により触媒層61の温度が上昇する。その温度情報に基づいて空気流入調節弁52を閉じる方向に制御して吸入空気を減らし熱分解を抑え緩慢にする。また、触媒層61の温度が低下してきたときは空気流入調節弁52を開ける方向に制御し、熱分解を盛んにし、継続することができる(触媒温度で分解を制御することは本出願人の特願2009-123902号参照)。
【0065】
本発明の方法における好ましい実施態様では、本発明の火床部20の電気ヒータ22は常時オン(ON)にする必要は無く、定期的にオフ(OFF)にするか、或いは触媒層61の温度センサーの温度情報も基づいて制御できる。すなわち、分解ガスの発生は熱分解の進行度合いに依存し、また、分解ガスの発生で触媒層61の温度が上昇するため、触媒層61の温度状態がそのままガス分解の状態を現しているため触媒層61の温度が上昇気配の場合には、電気ヒータ22をオフ(OFF)にすることができる。
【0066】
このように本発明の方法における好ましい実施態様では、触媒層61の温度情報に基づいて電気ヒータ22を制御し消費電力を削減することができる。さらに、廃棄物にマイクロ波を照射して優先的に廃棄物中の水分を蒸発、乾燥させるが、乾燥後は常時マイクロ波を照射する必要もないので、さらなる消費電力の削減につながり、全体としてランニングコストを安くすることができる。
【0067】
次に本発明の方法における好ましい実施態様では、投入部10に廃棄物を投入する一連の動きを図6a〜図6gに基づいて説明する。
(1)まず、投入部10上部の投入蓋12を開け、投入部内の受皿台13に廃棄物4を載せて投入蓋12を閉めると受皿台13上の廃棄物4は圧縮される(図6a、図6b)。
(2)次に投入レバー14を手前側に揺動させると、熱分解室2の前面に形成された受入口35が開口し、投入部内の廃棄物4は、受皿台13、受台扉18に沿って熱分解室2内に滑り落ち、廃棄物4は投入部10から熱分解室2内に投入される(図6c)。
(3)投入レバー14を再び元の位置に戻すと受台扉18は投入部10を密封しこの状態で熱分解室2に投入された廃棄物4は、マイクロ波による照射で初めに廃棄物4中の水分の蒸発、乾燥、次いで電気ヒータによる加熱で熱分解される(図6d、図6e)。
(4)次に上記(1)の操作を繰り返し、次に処理する廃棄物4を受皿台13上に載せて投入蓋12を閉めた後、投入レバー14を手前側に揺動させると廃棄物4が再び受皿台13、受台扉18に沿って熱分解室2内に滑り落ち、投入される(図6f、図6g)。
【0068】
なお、上記(2)及び(4)の操作で受台扉18が開きその状態では熱分解室2からの分解ガスが投入部10に流入するが投入蓋12は閉じた状態であり、投入部10内の分解ガスは投入部10とガス浄化室3とを連通する通路(図示なし)によってガス浄化室3に吸引され、そこで処理されるように構成されている。
【0069】
本発明の処理方法における好ましい実施態様では、熱分解室2に投入された廃棄物は、まずマイクロ波の照射で内部の水分が蒸発、乾燥され、廃棄物中の水分が一定量以下になるとマイクロ波は停止する。その後、熱源の電気ヒータ22は廃棄物を外部から熱分解してある程度減容してから次の廃棄物を投入する。このため本発明では、廃棄物の連続短時間処理が可能である。
【0070】
本発明の処理方法における好ましい実施態様では、電気ヒータ22は約250〜約450℃の温度範囲で、廃棄物を加熱できるように制御されている。電気ヒータ22の電源をオン-オフ(ON-OFF)に制御すると電気ヒータ22に接した廃棄物は外部からガスが発生し炭化が始まり、その炭化は廃棄物の内部へと進行し炭化状態が拡散するとガスの発生は静まってくる。また、電気ヒータ22に接した廃棄物は時間の経過とともに炭化され灰となり廃棄物は大幅に減容される。ここで一時的に廃棄物に熱を与え、その後、熱を取り除いても廃棄物自体の分解熱で熱伝播が起き、熱分解は進行するが、廃棄物の種類や水分の含有量が多いと分解過程でガスの発生以外に水分やタール及び油分の発生が起きて分解の進行が緩慢になり、未分解や炭化状態で終了することもあるため、電気ヒータ22は約250〜約450℃程度の範囲で廃棄物に常時熱が与えられるようオン-オフ(ON-OFF)制御するのが好ましい。
【0071】
本発明の処理方法における好ましい実施態様では、マイクロ波の照射によってマイクロ波が廃棄物に含まれる水分に優先的に吸収され、その水分を加熱、蒸発して約150〜約200℃の乾燥状態にする。熱分解処理の欠点は、廃棄物中の水分含有量が多いと分解速度が著しく低下するが、マイクロ波の照射を廃棄物中の水分の蒸発、乾燥のために使い、電気ヒータ22を熱分解処理に使うことで熱分解の処理スピードを大幅に向上させることができる。また、マイクロ波の照射で乾燥以後の炭化、灰化まで行うと、長時間の照射や高出力を要するため必要以上の電力を消費することになるが、本発明ではマイクロ波の照射を廃棄物中の水分の蒸発及び乾燥処理に利用するのでランニングコストを抑えることができる。
【0072】
本発明の処理方法における好ましい実施態様では、電気ヒータ22の制御は、上限温度(約450℃)に達したら通電を解除し、下限温度(約250℃)に達したら通電することを繰り返し行い、常時廃棄物に熱を与えることが好ましい。マイクロ波の照射はガス浄化室3の出口部82に取り付けた湿度センサーにより蒸気発生量を検知して行うが、廃棄物中の水分を完全に乾燥させる必要はなくタイマーにより時間制御しても良い。例えば、マイクロ波の照射時間を予め決めておき、マイクロ波を照射する開始時を廃棄物の投入時毎に行う方法でもよい。このように電気ヒータ22による熱分解処理にマイクロ波による乾燥処理を組み合わせると、互いの欠点を補完でき、効率良く短時間に廃棄物4を減容化できる。
【0073】
本発明の処理方法における好ましい実施態様では、発明の処理装置1において処理される廃棄物には、病院や介護老人施設等から排出される水分を含む廃棄物が含まれ、これらには、感染性廃棄物や非感染性廃棄物が含まれる。なかでも使用済み紙おむつ等の水分含有量の多い廃棄物の素材には高吸水性高分子、特に高い水分保持性能を有するように設計された高分子製品などの吸収体に多く用いられる吸収性ポリマー、高吸水性樹脂、高分子吸収体などと呼ばれる高分子材料や防水などの機能を持つポリプロピレン、ポリエチレンなどの高分子樹脂が使われており、その素材は誘電損失係数が小さくマイクロ波は吸収されにくく透過するためマイクロ波では加熱され難い材料であるが、そこに含まれる水分は誘電損失係数が大きく、マイクロ波は素材を透過し水分に選択的に吸収され加熱されるため、熱ロスが無く熱効率の高い乾燥処理ができる。また、マイクロ波による乾燥処理後の高分子樹脂は水蒸気の発生によってすでに昇温しており、また水分も除去されていることから電気ヒータ22の加熱により容易に熱分解できる。
【0074】
マイクロ波のみで水分含有量の多い使用済み紙おむつ等を熱分解処理まで行うと、素材に含まれた水分の蒸発が終了した時点での温度は約100℃程度であり、その温度からマイクロ波の照射では加熱されにくい高分子樹脂を、その分解温度である約400℃付近まで昇温させるには長時間を費やすことになり実用的ではない。また、マイクロ波の照射のみで水を蒸発させると必要以上の電力を消費する。
【0075】
上記のことから、本発明の好ましい実施態様では、電気ヒータ22にマイクロ波を組合せて利用する。詳しくは、マイクロ波による廃棄物の照射により廃棄物の内部にある水を素早く熱水にして廃棄物内部から外部へと移動させることにマイクロ波を主に利用し、蒸発に必要な熱の供給は電気ヒータ熱を主として利用し、少なくとも蒸発が終了した後ではマイクロ波を利用せず、電気ヒータ22の加熱のみで廃棄物を分解する。そのことで水分含有量が多い廃棄物でも熱分解の効率化や処理速度の向上、さらには省エネ効果やランニングコストの削減に寄与できる。
【0076】
本発明の好ましい実施態様では、熱分解の開始に当たって以下のような手順で実施する。
(1)廃棄物の投入前に火床部20の電気ヒータ22を約400℃程度の熱を廃棄物に与えられるよう昇温制御する。
(2)ガス浄化室3内の電気ヒータ70を触媒層61の入口温度が約300℃〜約350℃程度になるように昇温制御する。
(3)そして、吸気ファン60を作動して空気流入調節弁52の制御で外気から適正な量の空気を熱分解室2の火床部20に供給するようにしておく。
(4)以上の準備により熱分解の進行と同時に発生する分解ガスの浄化に対応可能となり、廃棄物の投入ができる。
(5)その後、マイクロ波の電源を入れるとマグネトロン42から発信されたマイクロ波は導波管40を通じマイクロ波出口43から熱分解室2の廃棄物に対して照射が始まり熱分解処理が開始される。
【0077】
本発明の好ましい実施態様では、熱分解処理におけるマイクロ波の照射時間は、時間設定可能なタイマーにより時間設定し、設定時間経過後マイクロ波は自動停止するようにする。自動停止に当たっては、ガス浄化室3の出口部82に取り付けた湿度センサーの情報に基づいて行っても良い。熱分解室2の湿度の変化は、マイクロ波の照射で水の沸点近くになると蒸発が促進され湿度は上昇し、水の沸点付近を保持し、水分の蒸発が進むと含水率もそれにつれて減少するため、上昇した湿度は下降を開始する。この下降過程の湿度に基づいてマイクロ波の照射を自動停止しても良いが、廃棄物の投入重量が一定で種類も限られている場合は、タイマーで時間設定して自動停止してもよい。
【0078】
本発明の好ましい実施態様において、廃棄物の熱分解室2への投入タイミングはマイクロ波の照射停止以降であればいつでも可能であるが、熱分解が進行して廃棄物の容積が半分以下程度に減容していないと、熱分解室2の容積に対して廃棄物の容積割合が次第に大きくなり、分解中の廃棄物に次に投入する廃棄物が接触して投入に支障を来すことがある。そのため、マイクロ波の照射停止から一定時間は熱分解を行い、廃棄物を減容させる必要がある。
【0079】
本発明の好ましい実施態様では、10Kgの使用済み紙おむつをポリエチレン製のゴミ袋に入れて熱分解室2に投入し、約60分後にマイクロ波を停止し、その役30分後に次の同重量の使用済み紙おむつ等を投入する約90分の投入サイクルで処理を繰り返し実施した。その結果は、投入に支障を来すことなく、良好な熱分解で最終的には重量比で約1/10以下に減容し灰化する結果となった。
【0080】
詳しくは、最初の廃棄物投入から約5〜10分程度の時間経過で触媒層61の温度は上昇傾向を示した。これは廃棄物の熱分解が開始しガスが発生し始めてガスの酸化反応が始まった状態である。また、廃棄物の内部に含まれた水分の蒸発を湿度センサーで調べた結果10分過ぎから約30分程度まで上昇しその後安定し約45分程度から下降傾向を示した。このことでマイクロ波の照射時間は約60分とし、また、投入から約75〜90分程度で廃棄物の容量が約1/2以下程度になることも判明した。このため、マイクロ波停止から約30分後に次の廃棄物の投入を行った。
【0081】
以上のような結果から、廃棄物の投入タイミングはマイクロ波の照射時間と同様に、タイマーで時間設定して表示灯などで知らす方法や分解ガスの発生状況をガス浄化室3の触媒層61の温度情報に基づいて判断することもできる。
【0082】
本発明の好ましい実施態様において、熱分解は約400℃程度の分解熱が発生している雰囲気下では、熱が媒体となり熱伝播で分解は継続できる。ただし、分解する廃棄物に水分が多く含まれていると分解熱が水の昇温や蒸発に使われて一時的に温度低下が起き熱伝播の継続は困難となることがある。そこで、マイクロ波の照射により廃棄物中の水分を事前に加熱して昇温し、蒸発することで熱分解は効率良く継続できる。
熱分解で発生する分解ガスは、炭化水素や水素及び一酸化炭素などの気体成分と、臭気を含んだ水蒸気が発生する。また、熱分解は低温処理のため分解ガス中にタール成分等も含まれている。
【0083】
従って、本発明の好ましい実施態様において、これらの処理に当たっては、ガス浄化室3内の触媒層61で、分解ガスは酸化反応して臭気の除去や無害化を行っている。
熱分解室2本体内から排出する分解ガスの温度は約150〜約200℃の低温であるため、触媒の酸化反応でガス浄化を行うには触媒層61を再度昇温させることが必要となる。それは、一般的に酸化触媒として使用される貴金属触媒は約300℃以上の温度で酸化反応が活発になるからである。従って、触媒層入口通路付近に棒状の触媒昇温用電気ヒータ70を数列備え、触媒層61の入口温度を少なくとも約350℃程度に常時昇温するように触媒層入口温度センサーで温度測定し、その温度情報に基づいて電気ヒータ70の温度を制御することが好ましい。
【0084】
熱分解を開始する前の触媒層61の昇温過程を具体的に説明すると、熱分解前は、熱分解室2のガス吸引を行う吸引ファン60は外気のみを吸引しており、吸引された外気は熱分解室2を経てガス浄化室3の触媒層61を通過しガス出口部82から排出され空気の流れができている状態である。この外気は、触媒昇温用電気ヒータ70で暖められて触媒層61に入るため次第に触媒層61も昇温し、分解ガスが酸化反応できる温度に到達する。このように熱分解を開始する前に、昇温用電気ヒータ70によって触媒層61を約300℃以上に昇温しておくことで、熱分解が始まり分解ガスが触媒層61にいきなり入ってきても酸化反応が瞬時に起きて、二酸化炭素や水に変わり無害化される。
【0085】
次に本発明の好ましい実施態様におけるガス浄化室3での分解ガスの流れを説明する。
熱分解室2の排出口56(図2)から出た分解ガスは、ガス浄化室3の底部空間部71に入る。そして、底部空間部71に入った分解ガスは第1の側壁空間部75(図4)を通過する過程で高温の触媒反応熱と熱交換される(このため、昇温用電気ヒータ70の省電が可能となる)。この熱交換できる側壁空間部75を通過したガスは、空間上部左側にある角穴状の流入口76(図5)から内部に入る。その内部は、下方に延び昇温用電気ヒータ70が設置された内部通路である第2の側壁空間部77に通じている。内部通路である第2の側壁空間部77(図5)に入ったガスは下降して下部付近に水平に配列された触媒昇温用電気ヒータ70を通過し、突き当たり第1の通路穴79aから上昇して第1の触媒層61a(図5)下面全体に入る。
【0086】
図5において、第1の触媒層61aを通過して上昇したガスは、入ってきた通路穴79aとは逆側の突き当たり上部の通路穴79bに入り、そこから上昇し中段の第2の触媒層61bの下面全体に入る。ここでも第1の触媒層61aと同様に、入ってきた通路穴79bとは逆側の突き当たりの第2の通路穴79cに入り、そこからガスは上昇し第3の触媒層61cの下面全体に入る。第3の触媒層61cを通過して上昇したガスは、入ってきた第2の通路穴79cとは逆側の突き当たりまで進み、その後、下降してガス浄化室3の出口部82から吸引ファン60に吸引され排気される。
【0087】
次に本発明の方法に使用する触媒は、白金やパラジウム等を担持したハニカム構造や粒形状の触媒で分解ガスを酸化できるが、好ましくは粒状セラミックス(本出願人の特許第4055710号)のディーゼルエンジン用の触媒に利用されているものが最適である。それは、分解ガスにはタール成分などが含まれているのでハニカム形状の触媒では細かい多数のガス通路の一部が目詰することがあるからである。熱分解で使用するガス浄化室は本出願人の特願2009-239757に記載されているガス浄化室を使用することもできるが、以下に記載するような特徴を有する本発明のガス浄化室を使用するのがより好ましい。
【0088】
(1)触媒層温度を短時間に昇温できる。
ガス浄化室3では、廃棄物の分解前に触媒層61を常温から約300℃程度(分解ガスが浄化できる温度帯)まで電気ヒータ70で昇温させる準備が必要である。触媒はセラミックス製の担体で熱容量が大きく昇温しにくい材料であるが、本発明の好ましい実施態様では、三段の触媒層61a〜61cを垂直方向に配列し、電気ヒータ70で発する熱を触媒層全体に無駄なく行き渡らせる構造としているので、熱移動とガスの流れが一致し触媒層61の昇温時間が短縮でき電気ヒータの省電ができる。ガスが発生して酸化反応が起きると触媒層温度は反応熱で概ね約400〜約600℃程度の範囲で推移するため昇温用電気ヒータはオフ(OFF)にできる。また、約400℃以下になった時点で昇温用ヒータをオン(ON)にする。
【0089】
(2)触媒酸化反応で触媒層の異常な高温が起きにくい。
熱分解が進み分解ガスが多量に発生すると、それに伴い酸化反応も活発になり触媒層温度が急上昇することがある。触媒にはプラチナやパラジウムなどの貴金属がセラミックスなどの担体に担持されているので約700℃以上の反応温度が続くと貴金属のシンタリング現象(貴金属がセラミック担体で固まり剥がれる現象)が起き、触媒機能を失うことがある。それらの現象は、分解ガスが触媒層内に多量に入ると触媒による酸化反応で熱が発生し、その熱の伝播でさらなる酸化反応が推進され触媒層出口付近では異常な高温になることがある。これを解決するため本発明では、触媒層を三層に分けて配列し、また、それぞれの触媒層間は空間を設けることで、それぞれの触媒層が独立して酸化反応できるようにし、異常な熱伝播を空間部で抑える構造とした。例えば、分解ガスが少量の時は一段目の触媒層でほぼ酸化反応が終了することができ、ガスは無害化されて二段目以降の触媒層は酸化反応することなく浄化ガスが通過する。また、分解ガスが多量の時は一段目の触媒層で反応不足の分解ガスは二段目以降の触媒層でそれぞれ反応することができる。そして触媒層間に適切な空間があることは、反応熱を次の触媒層に伝えながらも一時的に触媒反応が分断されるため異常な高温になることを防止できる。
【0090】
(3)ガス流入抵抗が小さく触媒反応効率が高い。
触媒に使われる貴金属は高価であるため、ガス浄化に必要な触媒量が最低限の量で済むように工夫した。それは、触媒層の入口部の開口面積を大きくし、ガスが流れる方向の触媒層の厚さを極力抑えて触媒層を三層に分けた。その三層の触媒層に対してガス通路出入口をそれぞれ対向して配列することで、ガスは触媒層を効率良く流れ触媒量が節約できる。さらに流入抵抗も少ない。
【0091】
触媒層で流入抵抗が増すと、ガスは抵抗が少ないところを流れようとし偏流が起きガスの浄化能力が低下することがある。本発明の触媒層では、ガス量が少ないときはガス通路から上昇したガスはガス通路に近い触媒層下面付近から垂直及び斜め上昇する流れができるが、ガス量が増すとガス通路から上昇したガスは水平方向にも移動し触媒層下面全体に行き渡って上昇し触媒層全体を流れるようになる。このようなことからガス量に対応した触媒酸化反応ができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の廃棄物の処理装置の全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の廃棄物の処理装置の側面断面図である。
【図3】図2の熱分解室2のA−A断面を示す断面図である。
【図4】本発明の処理装置の背面図である。
【図5】図4のガス浄化室と熱分解室の一部を示すA−A断面図である。
【図6a】投入部の受皿台に処理物を乗せた状態を示す概略図である。
【図6b】投入部に処理物を投入し、投入蓋を閉めた状態を示す概略図である。
【図6c】投入部の投入レバーを手前側に搖動させて処理物が受皿台から受台蓋に移動する状態を示す概略図である。
【図6d】投入部の投入レバーを元の位置に戻し処理物が熱分解室に投入された状態を示す概略図である。
【図6e】熱分解室内で熱分解処理とマイクロ波照射により廃棄物が減容している状態(初期投入時を表す。)を示す概略図である。
【図6f】次の廃棄物が投入部から熱分解室へ投入される状態を示す概略図である。
【図6g】次の廃棄物が熱分解室に投入された状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0093】
1 処理装置
2 熱分解室
3 ガス浄化室
4 廃棄物
10 投入部
11 投入口
12 投入蓋
13 受皿台
18 受台扉
21 筒状火床棒
22 電気ヒータ
30 灰堆積部
43 マイクロ波出口
50 空気流入調整機構
52 空気流入調節弁
53 空気流入センサー
56 ガス排出口
60 吸引ファン
61 触媒層
70 電気ヒータ
73 触媒層ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解室内に投入された水分を含有する廃棄物にマイクロ波発信器で発生したマイクロ波を照射して前記廃棄物を処理する廃棄物の処理装置であって、
前記処理装置は廃棄物を熱分解処理する熱分解室と、
熱分解の過程で発生する熱分解ガスを含む発生ガスを触媒酸化により浄化するガス浄化室を有し、
前記熱分解室に上記加熱の過程で発生する熱分解ガスを前記ガス浄化室に供給するためのガス排出口を設けると共に、
前記熱分解室内に、前記廃棄物を加熱し熱分解するための電気ヒータと空気を送り込む筒状火床棒を設けたことを特徴とする廃棄物の処理装置。
【請求項2】
熱分解室内に投入された水分を含有する廃棄物にマイクロ波発信器で発生したマイクロ波を照射して前記廃棄物を処理する廃棄物の処理装置であって、
前記処理装置は廃棄物を熱分解処理する熱分解室と、
熱分解の過程で発生する熱分解ガスを含む発生ガスを触媒酸化により浄化するガス浄化室を有し、
前記熱分解室に上記加熱の過程で発生する熱分解ガスを前記ガス浄化室に供給するためのガス排出口を設けると共に、
前記熱分解室内に、前記廃棄物を加熱し熱分解するための電気ヒータと空気を送り込む筒状火床棒を設け、且つ
前記筒状火床棒が、廃棄物の熱分解に必要な空気量を調整して熱分解室内に空気を導く空気流入調整機構に接続されていることを特徴とする廃棄物の処理装置。
【請求項3】
熱分解室内に投入された水分を含有する廃棄物にマイクロ波発信器で発生したマイクロ波を照射して前記廃棄物を処理する廃棄物の処理装置であって、
前記処理装置は廃棄物を熱分解処理する熱分解室と、
熱分解の過程で発生する熱分解ガスを含む発生ガスを触媒酸化により浄化するガス浄化室を有し、
前記熱分解室に上記加熱の過程で発生する熱分解ガスを前記ガス浄化室に供給するためのガス排出口を設けると共に、
前記熱分解室内に、前記廃棄物を加熱し熱分解するための電気ヒータと空気を送り込む筒状火床棒を設け、且つ
前記筒状火床棒が、廃棄物の熱分解に必要な空気量を調整して熱分解室内に空気を導く空気流入調整機構に接続されており、さらに、
前記熱分解室に、前記廃棄物の受け入れを中継し前記熱分解室内の分解ガスを外気に漏れ出さない機構を有する廃棄物の投入部を設けたことを特徴とする廃棄物の処理装置。
【請求項4】
熱分解室内に投入された水分を含有する廃棄物にマイクロ波発信器で発生したマイクロ波を照射して前記廃棄物を処理する廃棄物の処理装置であって、
前記熱分解室内に、前記廃棄物を加熱し、熱分解するための電気ヒータと空気を送り込む筒状火床棒を設け、
前記筒状火床棒に、廃棄物の熱分解に必要な空気量を調整して熱分解室内に空気を導く空気流入調整機構を接続し、
前記熱分解室に、前記廃棄物の受け入れを中継し前記熱分解室内の分解ガスを外気に漏れ出さない機構を有する廃棄物の投入部を設けると共に、
前記熱分解室に、火床部の電気ヒータと筒状火床棒との間の隙間から熱分解後の灰を落下させる灰堆積部を設け、
該灰堆積部は廃棄物の分解後の灰を外部から取り出せる灰取出口を有し、ガス漏洩防止とマイクロ波漏洩防止のためのシールを介して灰点検蓋が開閉可能に取り付けられていることを特徴とする廃棄物の処理装置。
【請求項5】
前記電気ヒータは、調節された量の空気を供給する前記筒状火床棒と水平方向に交互に平行に配列した火床部を形成し、それぞれの隙間から熱分解処理後の灰を落下させる灰集積部を設ける共に、
前記火床部上に投入部からの廃棄物を載置する構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の廃棄物の処理装置。
【請求項6】
前記筒状火床棒は、熱分解室の下方に向けて複数個の空気口を有し、前記空気口から前記空気流入調整機構で調節された量の空気が供給されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の廃棄物の処理装置。
【請求項7】
前記空気流入調整機構は、熱分解に必要な空気量を調整して熱分解室内に空気を導く配管から構成され、熱分解室外に空気取り入れ口と、その空気流入量を調節できる空気流入調節弁と、空気の流入量を検出できる空気流入センサーを少なくとも有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の廃棄物の処理装置。
【請求項8】
前記投入部は、外気を遮断する投入蓋と、熱分解室内を遮断する受台扉と、廃棄物を乗せる受皿台を少なくとも有し、
前記受台扉は前記受皿台と連動して動作し、前記受皿台を投入部外部から揺動させて前記投入部の受台扉を開閉し、前記受皿台上の廃棄物を前記熱分解室内に投入する機構を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の廃棄物の処理装置。
【請求項9】
前記受台扉は前記受皿台を熱分解室側に傾斜させると、受皿台にある廃棄物を前記受皿台から受台扉に移動し、投入部から熱分解室内へ投入できる請求項8に記載の廃棄物の処理装置。
【請求項10】
水分を含有する廃棄物の処理方法であって、前記廃棄物にマイクロ波を照射して廃棄物中の水分を蒸発、乾燥させると共に、熱分解室に供給される空気量を制限して、前記廃棄物を電気ヒータで加熱して熱分解し、熱分解ガス及び水蒸気を含む臭気を伴う発生ガスを触媒で酸化して無臭化、無害化することからなる火炎燃焼を伴わない廃棄物の処理方法。
【請求項11】
水分を含有する廃棄物の処理方法であって、熱分解室に供給される空気量を制限して、廃棄物を電気ヒータで加熱して熱分解し、前記廃棄物にマイクロ波を照射して廃棄物中の水分を蒸発、乾燥させた時点で、熱分解ガス及び水蒸気を伴う臭気を外気に漏洩させることなく、次の廃棄物を投入し、熱分解ガス及び水蒸気を含む臭気を伴う発生ガスを触媒で酸化処理して無臭化、無害化する工程からなる火炎燃焼を伴わない廃棄物の処理方法。
【請求項12】
水分を含有する廃棄物の処理方法であって、前記廃棄物にマイクロ波を照射して廃棄物中の水分を蒸発、乾燥させると共に、熱分解室に供給される空気量を制限して、前記廃棄物を電気ヒータで加熱して熱分解し、熱分解の過程で発生した発生ガスを吸引ファンで吸引して熱分解室内を負圧にし、その負圧によって空気流入調整機構で調節された量だけの空気が筒状火床棒を通じて火床部に供給されることを特徴とする請求項10又は11に記載の廃棄物の処理方法。
【請求項13】
水分を含有する廃棄物の処理方法であって、熱分解室内で水分を含む廃棄物を400℃以下の加熱温度と熱分解に必要な約0.2m/min以下の空気量で熱分解を行うことを特徴とする請求項10〜12に記載のいずれか1項記載の廃棄物の処理方法。
【請求項14】
水分を含有する廃棄物の処理方法であって、廃棄物を投入部に投入する工程が少なくとも下記の工程を含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の廃棄物の処理方法:
(1)投入蓋を開け、投入部内の受皿台に廃棄物を載せて投入蓋を閉め受皿台上の廃棄物を圧縮する工程;
(2)投入レバーを揺動させて、熱分解室の受入口を開口させ、投入部内の廃棄物を受皿台、受台扉に沿って熱分解室内に投入する工程;
(3)投入レバーを再び元の位置に戻し、受台扉を投入部から密封させ、投入された廃棄物をマイクロ波による照射と電気ヒータによる加熱で熱分解させる工程;及び
(4)上記(1)を繰り返し、次に処理する廃棄物を受皿台上に載せ投入蓋を閉めた後、投入レバーを揺動させて廃棄物が再び受皿台、受台扉に沿って熱分解室内に投入する工程。
【請求項15】
水分を含有する廃棄物の処理方法において、廃棄物にマイクロ波を照射して廃棄物中の水分を優先的に加熱、蒸発して約150〜200℃の乾燥状態にすると共に、電気ヒータで廃棄物を約250℃〜450℃の範囲で熱分解することを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の廃棄物の処理方法。
【請求項16】
水分を含有する廃棄物の処理方法であって、該方法は少なくとも下記の工程を含むことを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の廃棄物の処理方法:
(1)廃棄物の投入前に火床部の電気ヒータを約400℃の熱を廃棄物に与えるように昇温制御する工程;
(2)ガス浄化室内の電気ヒータで触媒層の入口温度を約300℃〜350℃に昇温制御する工程;
(3)吸気ファンを作動して空気流入調節弁により外気から熱分解に必要な約0.2m/min以下の空気を火床部に供給する工程;及び
(4)マイクロ波を熱分解室の廃棄物に照射する工程。
【請求項17】
水分を含有する廃棄物の処理方法であって、熱分解室に供給される空気量は触媒層の温度情報に基づき行い、触媒層の温度が上昇してきた時は空気流入調節弁を閉じる方向に制御し供給空気を減らし、熱分解を緩慢にし、触媒層の温度が低下してきた時は空気流入調節弁を開ける方向に制御し、熱分解を盛んにし、継続することを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の廃棄物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図6g】
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