説明

水力発電システム付き複数階層建築物

【課題】効率良く発電できる水力発電システム付き複数階層建築物を提供する。
【解決手段】屋上の貯水槽3に雨水が溜まった状態で開閉バルブ5を開けると、該雨水は矢印Aに示すように連通管4及び臭突本管22を流れ、水力発電装置6による水力発電が行われる。このような開閉バルブ5や貯水槽3を設けなければ雨水は絶えず流れ落ちることとなるが、小雨の場合で雨水の流量が少ないような場合には水力発電を行うことが出来ないおそれもある。しかし、本発明によれば、上述のように開閉バルブ5と貯水槽3を設けて雨水を溜めることができ、十分に雨水が溜まった時点で開閉バルブ5を開けることによって発電効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を利用した水力発電が可能な水力発電システム付き複数階層建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雨水を利用した水力発電が可能な水力発電システム付き複数階層建築物については種々の構造のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、そのような水力発電システム付き複数階層建築物の従来構造の一例を示す模式図であり、図中の符号100は、雨水等の排水のために建築物101の各階に張り巡らされた排水枝管を示し、符号102は、建築物101の各階に亘るように配置されて前記排水枝管100が接続されるように構成された排水本管を示し、符号103は、該排水本管102に配設された水力発電機を示し、符号104は、該排水本管102から排出される雨水等を貯留する下水受水槽を示し、符号105は下水管を示す。該建築物101に降った雨水は排水枝管100→排水本管102→下水受水槽104を経由して下水管105に流されるが、その際に、水力発電機103により水力発電が行われるようになっている。
【特許文献1】特開2003−254220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、効率良く発電できる水力発電システム付き複数階層建築物は未だ提案はされていない。
【0005】
本発明は、効率良く発電できる、水力発電システム付き複数階層建築物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、図1及び図2に例示するものであって、雨水を利用した水力発電が可能な水力発電システム付き複数階層建築物(1)において、
各階(F,F,…)に亘るように配置されて所定の階(F)の臭気を外部に排出するように構成された臭突管(2)と、
前記複数階層建築物(1)の上層部に配置されると共に雨水を一時的に貯留する貯水槽(3)と、
該貯水槽(3)と前記臭突管(2)とを連通するように構成された連通管(4)と、
前記貯水槽(3)から前記臭突管(2)にかけての雨水の流路を開閉する開閉バルブ(5)と、
前記臭突管(2)を落下する雨水を利用して水力発電を行う水力発電装置(6)と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記臭突管(2)は、各階(F,F,…)に亘るように配置された臭突本管(22)と、該臭突本管(22)から分岐された臭突支管(23)とからなり、
該臭突支管(23)は、屋内の臭気を取り入れる臭気取り入れ口(23a)と、前記臭突本管(22)に開口された本管側開口(23b)と、を有し、該本管側開口(23b)が形成された側(23c)が前記臭気取り入れ口(23a)が形成された側よりも低くなるように構成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記低くなるように構成された部分(23c)にドレン機構(25)が設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記貯水槽(3)は、屋上面部(30)と、該屋上面部(30)を囲むように形成された側壁部(31)とにより構成された貯水池であることを特徴とする。
【0010】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び4に係る発明によれば、小雨であっても貯水槽に貯留した上で開閉バルブを開いて一気に排水することにより十分な流量を確保でき、全ての雨水を水力発電に効率良く寄与させることができ、発電効率を高めることができる。また、臭突管を利用して雨水の排出を行うので、雨水排出のための専用の管を別途設置する必要が無く、建築物の構造の簡素化を図ることができる。さらに、豪雨の時には前記開閉バルブを閉じておいて雨水を前記貯水槽に貯留することが出来、豪雨時における下水道への雨水の急激な流れ込みを軽減し、下水道の氾濫を回避することも可能となる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、前記臭突本管を落下する雨水が前記臭気支管から屋内に流れ込むことを抑制又は防止できる。また、臭突本管中に突起物を配置する必要が無いので、エネルギーロスや発電効率の低下を回避することが可能となる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、臭気中に含まれる油分を回収できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1乃至図4に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ここで、図1は、本発明に係る複数階層建築物の構造の一例(水力発電時)を示す断面図であり、図2は、本発明に係る複数階層建築物の構造の一例(臭気排気時)を示す断面図であり、図3は、臭気支管と臭気本管との接合部分に設けた庇部材の構造を示す断面図であり、図4は、臭気支管の構造の他の例を示す断面図である。
【0015】
本発明に係る水力発電システム付き複数階層建築物は、雨水を利用した水力発電が可能となるように構成されたものであって、図1に符号1で例示するように、
・ 各階F,F,…に亘るように配置されて所定の階Fの臭気(例えば、飲食店やゴミ置き場などの臭気)を外部に排出するように構成された臭突管2と、
・ 前記複数階層建築物1の上層部(具体的には屋上や上層階)に配置されると共に雨水を一時的に貯留する貯水槽3と、
・ 該貯水槽3と前記臭突管2とを連通するように構成された連通管4と、
・ 前記貯水槽3から前記臭突管2にかけての雨水の流路を開閉する開閉バルブ5と、
・ 前記臭突管2を落下する雨水を利用して水力発電を行う水力発電装置6と、
を備えている。なお、図1中の符号21は、臭気を外部に排出する臭気排出管を示し、符号7は排気用ファンを示す。
【0016】
本発明によれば、前記貯水槽3に雨水が溜まっている状態で前記開閉バルブ5を開くと、該貯水槽3の雨水は矢印Aで示すように前記連通管4及び前記臭突管2を流れ、前記水力発電装置6がその雨水を利用して水力発電を行うこととなる。なお、図5に示した従来システムにおいては、降雨時には排水本管102を雨水が絶えず流れることとなるが、小雨の場合にはその流量が少なすぎて水力発電を行えない場合もあり得る。これに対し、本発明によれば、小雨であっても貯水槽3に貯留した上で開閉バルブ5を開いて一気に排水することにより十分な流量を確保でき、全ての雨水を水力発電に効率良く寄与させることができ、発電効率を高めることができる。
【0017】
また、上述の臭突管2は、前記開閉バルブ5を閉じている場合には、図2に矢印Bで示すように、所定の階の臭気を外部に排出することができる。例えば、飲食店などの店舗が営業している時間帯は前記開閉バルブ5を閉じておいて該店舗の臭気排出を前記臭突管2にて行えるようにし、該店舗の営業が終了している時間帯(かつ、前記貯水槽3に雨水が貯留されている場合)は前記開閉バルブ5を開いて水力発電をするようにすると良い。本発明によれば、臭突管2を本来の臭気の排出と雨水の排出の両方の用途に使用することができるので、雨水排出のための専用の管を別途設置する必要が無く、建築物の構造の簡素化を図ることができる。なお、この臭突管2は、300φ〜400φ程度の大径のものが一般的であって、多量の雨水を一気に流すのに適した太さである。
【0018】
一方、豪雨の時には前記開閉バルブ5を閉じておいて雨水を前記貯水槽3に貯留しておき、雨が止んだ後に前記開閉バルブ5を開いて水力発電を行うことも出来、豪雨時における下水道への雨水の急激な流れ込みを軽減し、下水道の氾濫を回避することも可能となる。
【0019】
ところで、上述の臭突管2は、各階に亘るように配置された臭突本管22と、該臭突本管22から分岐された臭突支管23とにより構成するようにし、該臭突支管23には、屋内の臭気を取り入れる臭気取り入れ口23aと、前記臭突本管に開口された本管側開口23bと、を形成し、さらに、該本管側開口23bが形成された側23cが前記臭気取り入れ口23aが形成された側よりも低くなるように構成すると良い。これにより、前記臭突本管22を落下する雨水が前記臭気支管23から屋内に流れ込むことを抑制又は防止できる。なお、そのような流れ込み防止の構造としては、図3に符号24で示すような庇部材を前記臭突本管22の中に形成することも考えられるが、そのような庇部材24を臭突本管中に形成すると、落下する雨水が該庇部材24に衝突することにより運動エネルギーのロスを引き起こし、その結果、発電効率を低下させてしまうおそれがある。しかし、図1に示す構造の場合には、臭突本管中に突起物を配置する必要が無いので、エネルギーロスや発電効率の低下を回避することが可能となる。また、上述の“低く形成された部分(つまり、前記臭気取り入れ口23aが形成された側よりも低くなるように構成された部分)”23cにドレン機構25を設けておき、臭気中に含まれる油分を回収できるようにしておくと良い。ところで、図1及び図2に示す臭突支管23はクランク状をしているが、図4に符号23dで示すように傾斜させても良い。
【0020】
一方、図1及び図2に示す貯水槽3は、屋上面部30と、該屋上面部30を囲むように形成された側壁部31とによって構成された貯水池であって、屋上面部30に降った雨をそのまま貯留できるように構成されている。しかし、他の形状の貯水槽を本発明の範囲から除外するものでは無い。例えば、屋上や上層階に貯水タンクを設置しておいて、屋上に降った雨を一時的に貯留するようにしても良い。
【0021】
なお、図1及び図2では、水力発電装置6は地上に配置されているが、もちろんこれに限られるものではなく、地下に配置されていても、建築物の特定の階に配置されていても良い。また、水力発電装置6は1つのみ設けるようにしても、複数設けるようにしても良い。
【0022】
さらに、図1及び図2では、開閉バルブ5は連通管4に設けられているが、前記貯水槽3の排出口(つまり、連通管4が接続されている部分であって、符号32で示す部分)に設けるようにしても、前記臭突本管22の開口(つまり、連通管4が開口している部分であって、符号4aで示す部分)に設けるようにしても良い。すなわち、開閉バルブ5は前記貯水槽3から前記臭突管2にかけての雨水の流路を開閉する位置に配置されていれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係る複数階層建築物の構造の一例(水力発電時)を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る複数階層建築物の構造の一例(臭気排気時)を示す断面図である。
【図3】図3は、臭気支管と臭気本管との接合部分に設けた庇部材の構造を示す断面図である。
【図4】図4は、臭気支管の構造の他の例を示す断面図である。
【図5】図5は、そのような水力発電システム付き複数階層建築物の従来構造の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0024】
1 水力発電システム付き複数階層建築物
2 臭突管
3 貯水槽
4 連通管
5 開閉バルブ
6 水力発電装置
22 臭突本管
23 臭突支管
23a 臭気取り入れ口
23b 本管側開口
25 ドレン機構
30 屋上面部
31 側壁部
,F,… 各階



【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を利用した水力発電が可能な水力発電システム付き複数階層建築物において、
各階に亘るように配置されて所定の階の臭気を外部に排出するように構成された臭突管と、
前記複数階層建築物の上層部に配置されると共に雨水を一時的に貯留する貯水槽と、
該貯水槽と前記臭突管とを連通するように構成された連通管と、
前記貯水槽から前記臭突管にかけての雨水の流路を開閉する開閉バルブと、
前記臭突管を落下する雨水を利用して水力発電を行う水力発電装置と、
を備えたことを特徴とする水力発電システム付き複数階層建築物。
【請求項2】
前記臭突管は、各階に亘るように配置された臭突本管と、該臭突本管から分岐された臭突支管とからなり、
該臭突支管は、屋内の臭気を取り入れる臭気取り入れ口と、前記臭突本管に開口された本管側開口と、を有し、該本管側開口が形成された側が前記臭気取り入れ口が形成された側よりも低くなるように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の水力発電システム付き複数階層建築物。
【請求項3】
前記低くなるように構成された部分にドレン機構が設けられた、
ことを特徴とする請求項2に記載の水力発電システム付き複数階層建築物。
【請求項4】
前記貯水槽は、屋上面部と、該屋上面部を囲むように形成された側壁部とにより構成された貯水池である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水力発電システム付き複数階層建築物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−169006(P2010−169006A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12740(P2009−12740)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】