水力発電システム
【課題】クリーンな電力を豊富に得ることができるとともに、発電電力の売買などを円滑に行える水力発電システムを提供する。
【解決手段】河川2の複数地点に、当該河川の水流により発電を行う複数台の水力発電機5を設置し、各水力発電機5が発電した電力を発電機に付設した制御機6から送電線4,7へ送電する。また、制御機6は各水力発電機5の発電電力と稼働状態のデータとを無線基地局8およびネットワーク9を通じて運営会社Aのサーバ10へ送信し、サーバ10で複数台の水力発電機5を群管理する。
【解決手段】河川2の複数地点に、当該河川の水流により発電を行う複数台の水力発電機5を設置し、各水力発電機5が発電した電力を発電機に付設した制御機6から送電線4,7へ送電する。また、制御機6は各水力発電機5の発電電力と稼働状態のデータとを無線基地局8およびネットワーク9を通じて運営会社Aのサーバ10へ送信し、サーバ10で複数台の水力発電機5を群管理する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の水流を利用して発電を行う水力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水のエネルギーを利用した水力発電は、火力発電とは異なり二酸化炭素を排出しないクリーンな発電であり、地球の環境保全の点からも今後の積極的な活用が望まれる。現在でも、一級河川などでは、上流にダムを建設して水の落差を利用した水力発電が行われている。しかしながら、この場合は大規模なダムの建設を必要とし、国土の狭いわが国では新規にダムを建設するには限界がある。また、近年の環境意識の高まりや社会の要請から、最近では脱ダム化の傾向がみられ、ダムによる水力発電を従来の延長線上で考えることは難しくなってきている。また、二級以下の河川では、堰を造成して川の流れをせき止め、放流時の水力によって発電を行っている例もあるが、この場合でも、水量を確保するためには大掛かりな堰が必要となって工事費用が嵩むとともに、川の流れをせき止めることで生態系の保護、例えば魚の産卵のための遡上などが阻害されるという問題がある。こうしたことから、中小河川ではいまだに水のエネルギーの積極的な活用が図られていないのが実態である。一方、河川の自然な水流を利用して小型の水力発電機で発電を行っている例もあるが、発電した電力は周辺の公園や小規模施設などで個別に利用されるにとどまっている。以上のような理由により、わが国では水の資源が豊富であるにもかかわらず、水力発電のトータルな発電量が増加せず、飽和状態となっているのが現状である。
【0003】
なお、河川の流水を利用した水力発電の先行技術としては、例えば下記の特許文献1、2がある。特許文献1では、河川の自然の流水により水力タービンを駆動し、これに連結した発電機を運転して発電を行うようにしている。また、特許文献2では、水に浮くフロート部材に水流で回転するプロペラを設け、プロペラの回転により発電機を駆動して発電を行うようにしている。これらの先行技術は、水の落差ではなく通常の流水を利用して発電を行う装置について開示しているが、発電した電力をトータルとしてどう管理するかについては言及していない。一方、超音波式センサを用いて河川の水位や流速から河川の状況を観測し、その結果を遠隔地の観測センタへ無線で通知するようにしたシステムが特許文献3に開示されている。しかしながら、本文献においても、流水を利用した発電電力の取り扱いや、トータルとしての管理に関しては全く開示されていない。
【特許文献1】特開平10−2276号公報
【特許文献2】特開2002−81362号公報
【特許文献3】特開2002−367066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来は工事費用や環境保護の問題から、河川の水のエネルギーを利用した発電は経済性が悪いものとなっており、これが水力発電設備の積極的な導入を阻害する要因となっていた。また、個々の拠点における発電設備を一元的に管理するシステムもなかったため、中小河川で細々とした発電を個別に行うだけでは、電力を効率的に生産したり販売したりする上で限界があった。これらのことから、河川の水流によりクリーンなエネルギーが簡便に得られるにもかかわらず、これを水力発電に効率よく生かすことができず、地球の環境保護を推進する上で大きな無駄となっていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、その目的とするところは、クリーンな電力を豊富に得ることができるとともに、発電電力の売買などを円滑に行える水力発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水力発電システムは、河川に設置された水力発電設備を利用して発電を行うシステムであって、河川の複数地点に設けられ、当該河川の水流により発電を行う複数台の水力発電機と、各水力発電機が発電した電力を電力会社または需要家に送電する送電手段と、各水力発電機の発電電力のデータを通信ネットワークを通じて収集し、複数台の水力発電機を群管理する管理装置とを備えている。
【0007】
本発明では、河川の水流を利用して発電を行うので、ダムのような大規模な発電設備は不要であり、小規模な設備で発電が可能となる。また水力発電であることから、二酸化炭素を排出しないクリーンな電気エネルギーが得られる。しかも、河川の複数地点に水力発電機を設置し、それぞれの発電機で発電した電力を合算して送電するので、トータルとしての発電量が増大し、十分な電力を供給することができる。また、各地点の水力発電機の発電データを管理装置が収集して、複数台の水力発電機を群として管理するので、個々の発電機の発電量だけでなく、トータルの発電量を把握して一元管理することができ、これに基づいて電力の販売(売電)を円滑に行うことができる。
【0008】
本発明の実施形態においては、無線基地局と制御機とが設けられる。無線基地局は、前述の通信ネットワークに接続される。制御機は、無線基地局の通信エリア内にある複数台の水力発電機のそれぞれ又は所定数の発電機に対して付設され、対応する水力発電機の発電電力および稼働状態に関するデータを当該発電機に固有の識別番号とともに所定のタイミングで無線基地局に無線送信するための通信手段が設けられる。そして、前述の管理装置は、上記通信エリア内にある個々の水力発電機の発電電力および稼働状態を上記識別番号に基づいて管理するとともに、各水力発電機の発電電力を合計した総発電量を管理する。これによると、通信エリア内にある複数台の水力発電機を1つの群として管理することができるとともに、制御機から基地局へは、発電電力のデータに加え、稼働状態のデータも送信されるので、管理装置では各水力発電機の稼働状態を把握し、異常時などに適切な対応をとることが可能となる。
【0009】
本発明では、無線基地局を、水力発電機が発電した電力を送電するための送電柱に配備してもよい。これにより、基地局をわざわざ設置しなくても、既存の設備を利用して基地局を設けることができ、設備費用を抑制できる利点がある。特に、過疎地や河川沿いでは、ビルのような高い建物が少なく、電波の受信状態が良好なため、送電柱に基地局を配備することで支障なく通信を行うことができる。
【0010】
また、本発明では、管理装置が異常事態の発生を判定した時に、該当する制御機に対して水力発電機の稼働の停止を指示する指示信号を送信し、異常事態の復旧を判定した時に、制御機に対して水力発電機の稼働の再開を指示する指示信号を送信するようにし、制御機が管理装置からの指示信号に基づいて水力発電機の稼働の停止または再開を制御するようにしてもよい。このようにすれば、異常事態の発生時に携帯電話機等から管理装置へ通報を行うと、管理装置が該当する水力発電機の稼働を停止させ、復旧後に携帯電話機等から管理装置へ通報を行うと、管理装置が該当する水力発電機の稼働を再開するといった遠隔制御が可能となり、異常時にすみやかな対応を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、河川の複数地点に水力発電機を設置し、複数台の発電機の発電電力を群管理するようにしたので、発電量を増大させてクリーンな電力を豊富に得ることができ、ひいては地球の環境保全に大きく貢献することができる。また、発電した電力を一元管理することで、電力売買などを円滑に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明に係る水力発電システムの一例を示した図である。図1において、1は山、2は山中の湖などから流れ出て海にそそぐ河川であって、この河川2は例えば二級河川のような中小河川である。3は河川2に沿って立設された送電柱、4は送電柱3に支持された送電線である。5は河川2の水力発電設備を構成する水力発電機であって、河川2の水流により発電を行うものである。各水力発電機5は、出力が約10KW程度のマイクロ発電機から構成される。この水力発電機5の詳細については後述する。6は本発明における送電手段を構成する制御機であって、水力発電機5が発電した電力を逆潮流電力として送電する機能のほか、発電電力および稼働状態(故障や異常の有無等)に関するデータを送信する機能を備えている。この制御機6の詳細については後述する。7は各水力発電機5が発電した電力を中継所(図示省略)を介して電力会社等へ送電する送電線、8は制御機6からの送信データを受信する無線基地局である。無線基地局8は、通信ネットワーク(以下、単に「ネットワーク」と記す)9に接続されている。ネットワーク9は典型的にはインターネットで構成されるが、必ずしもこれに限定する必要はなく、例えば専用回線で構成されるものであってもよい。
【0013】
ネットワーク9には、本システムを運営する運営会社Aのサーバ10、電力会社Bのサーバ11、および需要家Cのサーバ12が接続されている。運営会社Aは、水力発電機5や制御機6などの発電プラントを設置して、水力発電機5で発電した電力を電力会社Bや需要家Cへ販売する事業主体である。運営会社Aのサーバ10は、本発明における管理装置を構成する。このサーバ10で管理するデータについては後述する。電力会社Bは、自己の発電所(図示省略)で発電を行うとともに、水力発電機5で発電された電力を運営会社Aから買い取り、これらの電力を当該地域の需要家に供給する事業を行う。サーバ11には、電力の売買データなどが格納されている。需要家Cは、例えば企業であって、電力会社Bから電力の供給を受け、また場合によっては水力発電機5で発電された電力を運営会社Aから直接購入する。サーバ12には電力の売買データなどが格納されている。なお、これらのサーバ10,11,12以外に、例えば電子取引市場(インターネットのウエブサイト上に開設された電子商取引のための仮想市場)のサーバ等が接続されていてもよい。13は無線基地局8との間で送受信が可能な通信エリアであって、例えば無線基地局8を中心とする半径3キロメートルのエリアとなっている。14はこのエリア13内にある地域住民の家屋である。
【0014】
以上のシステムにおいて、水力発電機5は、河川2の流域における通信エリア13内の複数地点に設けられており、各水力発電機5の近傍に送電柱3がそれぞれ設けられている。また、制御機6は各水力発電機5に付設されており、水力発電機5と制御機6、および制御機6と送電線4とはぞれぞれ電気的に接続されている。水力発電機5は河川2の水流により発電を行い、発電された電力は、制御機6から送電線4を介して送電線7へ送られる。一方、各水力発電機5に付設された制御機6は、それぞれの水力発電機5の発電電力および稼働状態に関するデータを、当該発電機に固有の識別番号とともに所定のタイミングで無線基地局8に無線送信する。無線基地局8へ送信されたデータは、ネットワーク9を介して運営会社Aのサーバ10に送られ、サーバ10は通信エリア13内にある個々の水力発電機5の発電電力および稼働状態を識別番号に基づいて管理するとともに、各水力発電機5の発電電力を合計した総発電量を管理する。電力会社Bや需要家Cは、ネットワーク9を通じて運営会社Aへ電力購入を申し込み、運営会社Aは水力発電機5が発電した総発電電力のうち、必要な電力を送電線7を通じて電力会社Bや需要家Cに販売する。
【0015】
このようにして、上記水力発電システムでは、河川2の水流を利用して発電を行うので、ダムのような大規模な発電設備は不要であり、小規模な設備で発電が可能となる。また水力発電であることから、二酸化炭素を排出しないクリーンな電力が得られる。さらに、河川2の複数地点に水力発電機5を設置し、それぞれの発電機5で発電した電力を合算して送電するので、発電量を増大させて十分な電力を供給することができる。また、各地点の水力発電機5の発電データをサーバ10が収集して、通信エリア13内にある複数台の水力発電機5を群として管理するので、個々の発電機5の発電量だけでなく、トータルの発電量を把握して一元管理することができ、これに基づいて電力の販売(売電)を円滑に行うことができる。さらに、制御機6から基地局8へは、発電電力のデータに加えて、水力発電機5の稼働状態のデータも送信されるので、サーバ10では各水力発電機5の稼働状態を把握し、異常時などに適切な対応をとることが可能となる。
【0016】
図2は、水力発電機5の一例を示した概略構造図である。51は両端側が開口した鼓形のハウジングであって、上流側の開口部には砂や漂流物などが侵入するのを防ぐためのフィルタ52が設けられている。53は発電機のロータ、54はロータ53を収納したケースである。55はプロペラであって、シャフト56の先端側に設けられている。57はロータ53の回転軸とシャフト56とを結合するカップリング部材である。
【0017】
以上の構成からなる水力発電機5は、図3のように河川2の水中に設置される。図3は河川2の断面を示した図であり、水力発電機5は固定具41により基台42に固定されており、基台42の脚部43は川床2aに埋入して堅牢に固定されている。
【0018】
図2において、上流から下流へ向かう水流(矢印で示す)によりプロペラ55が回転すると、プロペラ55の回転はシャフト56およびカップリング部材57を介してロータ53に伝達され、ロータ53の回転により水力発電機5は発電を行う。前述したように、水力発電機5は出力が10KW程度のマイクロ発電機であり、小型で設置スペースをとらないことから、中小河川における小規模発電に適したものとなっている。水力発電機5から出力される電圧は、例えば400〜600V程度の直流である。なお、本実施形態では、水力発電機5は直流発電機であるが、交流発電機であってもよい。水力発電機5で発電された電力は、図3で示したようにケーブル44を介して制御機6へ送られ、制御機6からさらにケーブル45を介して送電柱3に設けられた接続ボックス30へ送られる。なお、ケーブル44、45は地中配管内に収納されている。
【0019】
図4は、水力発電機5の発電電力を売電のために送電する送電系統を示した図である。このときの送電方向は電力会社側へ向かう方向となるため、水力発電機5の発電電力は逆潮流電力として送電される。水力発電機5から出力される直流電圧はケーブル44を介して制御機6へ与えられる。制御機6は、水力発電機5からの直流を交流に変換するとともに所定の電圧まで昇圧する。また、制御機6は、水力発電機5の発電電力を逆潮流電力として送電するために、周波数や位相を調整するなど所定の制御を行う。
【0020】
制御機6から出力される交流電圧は、ケーブル45を介して接続ボックス30に送られる。ケーブル45の端部にはコネクタ(図示省略)が設けられており、このコネクタを接続ボックス30の接続部(図示省略)に装着することにより、制御機6は接続ボックス30と電気的に接続され、さらには送電線4と電気的に接続される。この結果、水力発電機5が発電した電力を、制御機6から接続ボックス30を介して送電線4に乗せて送電することができる。また、図3で示したように、制御機6は無線通信を行うアンテナ6aを備えており、このアンテナ6aを介して、水力発電機5の発電電力と稼働状態に関するデータを無線基地局8へ送信する。なお、接続ボックス30には、売電用の取引計器となる積算電力計32が内蔵されている。この積算電力計32は、接続ボックス30の外部に独立して設けてもよい。
【0021】
図5は、制御機6の電気的構成の一例を示したブロック図である。20は水力発電機5が発電した電力を逆潮流電力として送電線4へ乗せるために所定の制御を行なう電力制御部であって、水力発電機5からの直流電圧を交流電圧に変換するコンバータ20a、電圧のレベルを制御するPWM(Pulse Width Modulation)回路20b、逆潮流電力の周波数を調整する周波数制御回路20c、逆潮流電力の位相を調整する位相制御回路20dを備えている。21は無線送受信部であって、アンテナ6aを介して無線基地局8との間でデータの送受信を行う。無線送受信部21とアンテナ6aとにより、本発明の通信手段が構成される。22は制御機6の動作を制御する制御手段としてのCPU、23はCPU22の動作プログラム等を格納したROMや送受信データ等を一時的に格納するRAMにより構成される記憶部である。24は水力発電機5の停止や起動を制御する発電機制御部、25は制御機6の各部へ電源を供給するためのバッテリからなる電源部、26は水力発電機5の異常状態を検出するために発電機5に付設されたセンサである。27と28は、それぞれ図4で示したケーブル44,45が接続される端子である。
【0022】
図6は、無線送受信部21から無線基地局8へ送信されるデータの一例を示した図である。(a)は通常時に送信されるデータであって、発電機ID番号X1、送信時刻X2、機器異常有無X3、積算電力値X4などを含んでいる。発電機ID番号X1は、水力発電機5のそれぞれに割り当てられた発電機固有の識別番号である。送信時刻X2は、データを送信する時刻を表したタイムスタンプである。機器異常有無X3は、水力発電機5の状態が異常でないかどうかを表すフラグであって、前述のセンサ26の検知出力に基づいて設定される。積算電力値X4は、水力発電機5が発電した電力量を表すデータである。一方、(b)は水力発電機5の異常時に送信されるデータであって、発電機ID番号Y1、送信時刻Y2、機器異常有無Y3、異常コードY4、積算電力値Y5などを含んでいる。発電機ID番号Y1、送信時刻Y2、機器異常有無Y3、積算電力値Y5については、それぞれ(a)のX1、X2、X3、X4と同じである。異常コードY4は、異常の種別を表すコードであって、例えば、水力発電機5のフィルタ52(図2)に詰りが生じている場合は、フィルタ詰りに相当するコードが設定される。
【0023】
図7は、運営会社Aのサーバ10(図1)に設けられた群管理ファイルの一例を示した図である。群管理ファイル10aには、発電機ID番号ごとに管理データが記録されている。管理データは、ネットワーク9を通じて収集した各水力発電機5の発電電力および稼働状態に関するデータである。発電電力のデータとしては、受信発電量Z1と累計発電量Z2が記録される。受信発電量Z1は、制御機6から送信されてきた発電量のデータであり、図6の積算電力値X4、Y5がこれに相当する。累計発電量Z2は、受信発電量Z1を日単位、月単位、年単位で累計した値である。一方、稼働状態のデータとしては、稼働率Z3と故障データZ4が記録される。稼働率Z3は、水力発電機5の故障停止期間を除いた実質運転時間の比率を表した指標である。故障データZ4は、水力発電機5の故障の種別や故障期間などを表すデータである。また、群管理ファイル10aには、上述した個々の発電機のデータに加え、総発電量Z5と平均稼働率Z6が記録される。総発電量Z5は、各水力発電機5の累計発電量Z2を合計したものであり、平均稼働率Z6は、各水力発電機5の稼働率Z3を平均したものである。
【0024】
なお、図示は省略するが、サーバ10は、CPU、メモリ、通信部、入力装置、ディスプレイ、外部記憶装置、電源部などからなる公知の構成を備えている。
【0025】
図8は、制御機6およびサーバ10の動作を示したフローチャートである。それぞれの手順は、制御機6とサーバ10に備わる各CPUにより実行される。制御機6では、CPU22が水力発電機5の稼働有無を常時監視しており(ステップS1)、例えば一定時間以上連続して発電電力が発生しないような場合は、水力発電機5が稼働していないと判定して(ステップS2:NO)、保守部門のコンピュータへ異常を通知する。水力発電機5が稼働中であれば(ステップS2:YES)、次に、サーバ10からデータ送信要求のコマンドを受信するのを待ち(ステップS3)、コマンドを受信すると(ステップS3:YES)、水力発電機5の発電電力および稼働状態のデータ(以下、「ログデータ」と記す)を図6に示したように編集して(ステップS4)、編集したログデータを無線送受信部21およびアンテナ6aから無線基地局8を介してサーバ10へ送信する(ステップS5)。その後、ステップS1へ戻って上述した手順を繰り返す。
【0026】
一方、サーバ10では、制御機6とポーリング通信を行い、一定時間間隔で水力発電機5のデータを自動的に収集するようになっている。このため、現在時刻を監視してデータ収集時刻に至ったか否かを判定し(ステップS11)、データ収集時刻になると(ステップS11:YES)、制御機6に対して前述のデータ送信要求コマンドを送信する(ステップS12)。その後、制御機6からログデータが送信されてくるのを待ち(ステップS13)、ログデータを受信すると(ステップS13:YES)、受信したデータを分析する(ステップS14)。分析の結果、ログデータに異常がなければ(ステップS15:NO)、累計発電量Z2を計算し(ステップS17)、稼働率Z3を計算して(ステップS18)、図7の群管理ファイル10aの各データ欄を更新する(ステップS19)。一方、ログデータに異常を示す情報(図6(b)のY3、Y4)が含まれている場合は(ステップS15:YES)、保守部門のコンピュータへ異常を通知した後(ステップS16)、ステップS17〜ステップS19を実行する。ステップS19を実行した後は、ステップS11へ戻って上述した手順を繰り返す。なお、ここでは、サーバ10から制御機6に対してデータ送信要求コマンドを送り、制御機6がこれを受信することによりログデータをサーバ10へ送信する例を挙げたが、制御機6から定期的にサーバ10へログデータを送信するようにしてもよい。
【0027】
図9は、異常事態が発生した時に、サーバ10からの遠隔指令により発電機の稼働を制御する手順を示している。例えば、台風や大雨などにより河川2が増水して水力発電機5が流失しかかっているようなときは、発電を続けたまま復旧作業を行うことは危険であるので、水力発電機5を非稼働状態にする必要が生じる。このような場合、保守員は、携帯電話機などの端末装置(図示省略)を用い、稼働停止が必要な水力発電機5の発電機ID番号やパスワード等を入力して、サーバ10へ異常事態の発生を通知する(ステップS21)。端末装置から送信された通知信号は、無線基地局8からネットワーク9を通じてサーバ10で受信される。サーバ10では、この通知を受けると異常事態が発生したと判定し、ネットワーク9から無線基地局8を通じて、該当する水力発電機5に付設された制御機6へ、当該発電機の稼働の停止を指示する信号を送信する(ステップS22)。制御機6では、この指示信号がアンテナ6aを介して無線送受信部21で受信されると、CPU22が発電制御部24に指令を与え、発電制御部24から稼働停止信号が出力される。この信号により、水力発電機5は電気的もしくは機械的に稼働が停止され、発電電力を出力しない状態となる(ステップS23)。なお、ステップS22において、サーバ10が稼働停止指示信号を送信するのと並行して、サーバ10から保守部門へ作業指示を通知するようにしてもよい。
【0028】
その後、現場において保守員や作業員による復旧作業が行われ(ステップS24)、復旧が完了すると(ステップS25)、保守員は再び携帯電話機などの端末装置を用い、稼働再開が必要な水力発電機5の発電機ID番号やパスワード等を入力して、サーバ10へ発電機の再稼働を要求する(ステップS26)。端末装置から送信された通知信号は、無線基地局8からネットワーク9を通じてサーバ10で受信される。サーバ10では、この通知を受けると異常事態が復旧したと判定し、ネットワーク9から無線基地局8を通じて、該当する水力発電機5に付設された制御機6へ、当該発電機の稼働の再開を指示する信号を送信する(ステップS27)。制御機6では、この指示信号がアンテナ6aを介して無線送受信部21で受信されると、CPU22が発電制御部24に指令を与え、発電制御部24から稼働再開信号が出力される。この信号により、水力発電機5は再起動され、発電電力を出力する状態となる(ステップS28)。
【0029】
以上のように、異常事態の発生時および復旧時に、携帯電話機等から基地局8を経由してサーバ10へアクセスすることで、サーバ10の遠隔制御によって水力発電機5の稼働の停止・再開を行うことが可能となり、異常時にすみやかな対応を行うことができる。
【0030】
図10および図11は、サーバ10による群管理の他の実施形態を説明する模式図である。図1の水力発電システムでは、通信エリア13の範囲内にある複数台の水力発電機5を1つの群として、サーバ10で管理する例を示したが、図10に示したように、河川2に複数のポイントP1,P2,P3,…を設定し、各ポイントごとに例えば10台の水力発電機を設置して、基地局8aの通信エリア13a内にある1ポイントを1つの群として管理するようにしてもよい。図10の例では、無線通信エリア13a内に7つのポイントがあり、サーバ10は7つの群(70台の水力発電機)を管理することになる。
【0031】
また、図11のように、管理レベルをさらに多層としてもよい。図11の例では、「ユニット」という管理レベルが設けられている。ユニットは、河川単位の管理レベルであって、ユニット1は○○川、ユニット2は△△川、ユニット3は××川、というように決められている。各ユニットの下位には、上述した「ポイント」という管理レベルが設けられている。ポイントは、河川のエリア単位の管理レベルであって、例えばポイント1は△△川の上流の××地区、ポイント2は△△川の上流の○○地区、ポイント3は△△川の中流の□□地区、というように決められている。各ポイントの下位には、個々の水力発電機が属しており、これは機器単位の管理レベルであって、前述した発電機ID番号により管理される。サーバ10は最上位にあって、各河川を総括する全体の管理レベルを構成している。
【0032】
図12は、図11の管理体系を採用した場合のサーバ10における群管理ファイル10bの一例である。群管理ファイル10bには、全体のデータG1、ユニット(河川)ごとのユニットデータG2、ポイント(エリア)ごとのポイントデータG3、発電機ごとの機器データG4が記録されており、それぞれのデータは、累計発電量と稼働率とを含んでいる。累計発電量と稼働率は、日単位、月単位、年単位等で記録される。全体のデータG1は、ユニットデータG2を全ユニットにわたって集計したものであり、ユニットデータG2は当該ユニットに属するポイントデータG3を全ポイントにわたって集計したものであり、ポイントデータG3は当該ポイントに属する個々の発電機の機器データG4を集計したものである。
【0033】
ここで、1ポイントに10台ずつ水力発電機5を設置し、10ポイントを1ユニットとして、ユニット数を1000とした場合、1台の水力発電機5が発電する電力を平均10KWと仮定すると、1ポイントの発電量は100KW、1ユニットの発電量は1000KWとなり、1000ユニットでは100万KWの電力がクリーンなエネルギーとして得られる。これは、原子力発電所ほぼ1基分の発電エネルギーに匹敵し、本発明の水力発電システムは、地球環境を維持しながら大量のクリーン電力を生産できる点できわめて意義が大きい。
【0034】
図13および図14は、本発明の他の実施形態を説明する図である。図1の場合は、無線基地局8を独立して設置したが、図13のように無線基地局を送電柱3に配備することもできる。図13において、3は送電柱、4は送電線、30は接続ボックス、45はケーブルであって、これらは図1や図4で示したものと同じものである。61は柱上トランスであって、送電柱3に設けられた支持板64に支持されている。62は無指向性のアンテナであって、送電柱3に設けられた支持板65に支持されている。63は無線LANボックスであって、送電柱3に設けられた支持板66に支持されている。46は無線LANボックス63をネットワークに接続するためのLANケーブル、47は柱上トランス61と接続ボックス30とを電気的に接続するためのケーブル、67は接続ボックス30を支持する支持板である。以上の構成において、アンテナ62と無線LANボックス63とによって、無線基地局が構成される。
【0035】
図14は、無線LANボックス63の電気的構成を示したブロック図である。62は上述したアンテナ、71は雷から回路を保護するための避雷器、72はモデムや制御回路等を内蔵した無線LAN装置、73は無線LAN装置72を作動させるための直流電源、74は直流電源73へ交流電圧を供給するためのコンセントボックス、46は上述したLANケーブルである。各制御機6から送信された水力発電機5の電力データ等は、アンテナ62で受信され、無線LAN装置72からLANケーブル46およびネットワーク9を介して、サーバ10に送信され、図1の場合と同様の手順で処理が行われる。
【0036】
このように、無線基地局を送電柱3に配備することにより、基地局をわざわざ設置しなくても、既存の設備を利用して基地局を設けることができ、設備費用を抑制することができる。特に、過疎地や河川沿いでは、ビルのような高い建物が少なく、電波の受信状態が良好なため、送電柱3に基地局を配備することで支障なく通信を行うことができる。
【0037】
なお、以上においては、中小河川に水力発電機5を設置する例を挙げたが、本発明は、一級河川のような大型河川に水力発電機5を設置して発電を行う場合にも適用が可能である。
【0038】
また、図1の実施形態では、複数の水力発電機5のそれぞれに制御機6を付設した例を挙げたが、所定数(例えば3台)の水力発電機5に対して1台の制御機6を付設し、この1台の制御機6で複数の水力発電機5を管轄するようにしてもよい。このようにすれば、制御機6の台数を減らしてコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る水力発電システムの一例を示した図である。
【図2】水力発電機の一例を示した概略構造図である。
【図3】河川の断面を示した図である。
【図4】送電系統を示した図である。
【図5】制御機の電気的構成を示したブロック図である。
【図6】無線基地局へ送信されるデータの一例を示した図である。
【図7】群管理ファイルの一例を示した図である。
【図8】制御機およびサーバの動作を示したフローチャートである。
【図9】異常事態発生時の発電機の稼働制御の手順を示したフローチャートである。
【図10】群管理の他の実施形態を説明する模式図である。
【図11】群管理の他の実施形態を説明する模式図である。
【図12】群管理ファイルの他の例を示した図である。
【図13】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図14】無線LANボックスの電気的構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
2 河川
3 送電柱
4,7 送電線
5 水力発電機
6 制御機
6a アンテナ
8,8a 無線基地局
9 通信ネットワーク
10 サーバ
10a,10b 群管理ファイル
13,13a 通信エリア
21 無線送受信部
62 アンテナ
63 無線LANボックス
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の水流を利用して発電を行う水力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水のエネルギーを利用した水力発電は、火力発電とは異なり二酸化炭素を排出しないクリーンな発電であり、地球の環境保全の点からも今後の積極的な活用が望まれる。現在でも、一級河川などでは、上流にダムを建設して水の落差を利用した水力発電が行われている。しかしながら、この場合は大規模なダムの建設を必要とし、国土の狭いわが国では新規にダムを建設するには限界がある。また、近年の環境意識の高まりや社会の要請から、最近では脱ダム化の傾向がみられ、ダムによる水力発電を従来の延長線上で考えることは難しくなってきている。また、二級以下の河川では、堰を造成して川の流れをせき止め、放流時の水力によって発電を行っている例もあるが、この場合でも、水量を確保するためには大掛かりな堰が必要となって工事費用が嵩むとともに、川の流れをせき止めることで生態系の保護、例えば魚の産卵のための遡上などが阻害されるという問題がある。こうしたことから、中小河川ではいまだに水のエネルギーの積極的な活用が図られていないのが実態である。一方、河川の自然な水流を利用して小型の水力発電機で発電を行っている例もあるが、発電した電力は周辺の公園や小規模施設などで個別に利用されるにとどまっている。以上のような理由により、わが国では水の資源が豊富であるにもかかわらず、水力発電のトータルな発電量が増加せず、飽和状態となっているのが現状である。
【0003】
なお、河川の流水を利用した水力発電の先行技術としては、例えば下記の特許文献1、2がある。特許文献1では、河川の自然の流水により水力タービンを駆動し、これに連結した発電機を運転して発電を行うようにしている。また、特許文献2では、水に浮くフロート部材に水流で回転するプロペラを設け、プロペラの回転により発電機を駆動して発電を行うようにしている。これらの先行技術は、水の落差ではなく通常の流水を利用して発電を行う装置について開示しているが、発電した電力をトータルとしてどう管理するかについては言及していない。一方、超音波式センサを用いて河川の水位や流速から河川の状況を観測し、その結果を遠隔地の観測センタへ無線で通知するようにしたシステムが特許文献3に開示されている。しかしながら、本文献においても、流水を利用した発電電力の取り扱いや、トータルとしての管理に関しては全く開示されていない。
【特許文献1】特開平10−2276号公報
【特許文献2】特開2002−81362号公報
【特許文献3】特開2002−367066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来は工事費用や環境保護の問題から、河川の水のエネルギーを利用した発電は経済性が悪いものとなっており、これが水力発電設備の積極的な導入を阻害する要因となっていた。また、個々の拠点における発電設備を一元的に管理するシステムもなかったため、中小河川で細々とした発電を個別に行うだけでは、電力を効率的に生産したり販売したりする上で限界があった。これらのことから、河川の水流によりクリーンなエネルギーが簡便に得られるにもかかわらず、これを水力発電に効率よく生かすことができず、地球の環境保護を推進する上で大きな無駄となっていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、その目的とするところは、クリーンな電力を豊富に得ることができるとともに、発電電力の売買などを円滑に行える水力発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水力発電システムは、河川に設置された水力発電設備を利用して発電を行うシステムであって、河川の複数地点に設けられ、当該河川の水流により発電を行う複数台の水力発電機と、各水力発電機が発電した電力を電力会社または需要家に送電する送電手段と、各水力発電機の発電電力のデータを通信ネットワークを通じて収集し、複数台の水力発電機を群管理する管理装置とを備えている。
【0007】
本発明では、河川の水流を利用して発電を行うので、ダムのような大規模な発電設備は不要であり、小規模な設備で発電が可能となる。また水力発電であることから、二酸化炭素を排出しないクリーンな電気エネルギーが得られる。しかも、河川の複数地点に水力発電機を設置し、それぞれの発電機で発電した電力を合算して送電するので、トータルとしての発電量が増大し、十分な電力を供給することができる。また、各地点の水力発電機の発電データを管理装置が収集して、複数台の水力発電機を群として管理するので、個々の発電機の発電量だけでなく、トータルの発電量を把握して一元管理することができ、これに基づいて電力の販売(売電)を円滑に行うことができる。
【0008】
本発明の実施形態においては、無線基地局と制御機とが設けられる。無線基地局は、前述の通信ネットワークに接続される。制御機は、無線基地局の通信エリア内にある複数台の水力発電機のそれぞれ又は所定数の発電機に対して付設され、対応する水力発電機の発電電力および稼働状態に関するデータを当該発電機に固有の識別番号とともに所定のタイミングで無線基地局に無線送信するための通信手段が設けられる。そして、前述の管理装置は、上記通信エリア内にある個々の水力発電機の発電電力および稼働状態を上記識別番号に基づいて管理するとともに、各水力発電機の発電電力を合計した総発電量を管理する。これによると、通信エリア内にある複数台の水力発電機を1つの群として管理することができるとともに、制御機から基地局へは、発電電力のデータに加え、稼働状態のデータも送信されるので、管理装置では各水力発電機の稼働状態を把握し、異常時などに適切な対応をとることが可能となる。
【0009】
本発明では、無線基地局を、水力発電機が発電した電力を送電するための送電柱に配備してもよい。これにより、基地局をわざわざ設置しなくても、既存の設備を利用して基地局を設けることができ、設備費用を抑制できる利点がある。特に、過疎地や河川沿いでは、ビルのような高い建物が少なく、電波の受信状態が良好なため、送電柱に基地局を配備することで支障なく通信を行うことができる。
【0010】
また、本発明では、管理装置が異常事態の発生を判定した時に、該当する制御機に対して水力発電機の稼働の停止を指示する指示信号を送信し、異常事態の復旧を判定した時に、制御機に対して水力発電機の稼働の再開を指示する指示信号を送信するようにし、制御機が管理装置からの指示信号に基づいて水力発電機の稼働の停止または再開を制御するようにしてもよい。このようにすれば、異常事態の発生時に携帯電話機等から管理装置へ通報を行うと、管理装置が該当する水力発電機の稼働を停止させ、復旧後に携帯電話機等から管理装置へ通報を行うと、管理装置が該当する水力発電機の稼働を再開するといった遠隔制御が可能となり、異常時にすみやかな対応を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、河川の複数地点に水力発電機を設置し、複数台の発電機の発電電力を群管理するようにしたので、発電量を増大させてクリーンな電力を豊富に得ることができ、ひいては地球の環境保全に大きく貢献することができる。また、発電した電力を一元管理することで、電力売買などを円滑に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明に係る水力発電システムの一例を示した図である。図1において、1は山、2は山中の湖などから流れ出て海にそそぐ河川であって、この河川2は例えば二級河川のような中小河川である。3は河川2に沿って立設された送電柱、4は送電柱3に支持された送電線である。5は河川2の水力発電設備を構成する水力発電機であって、河川2の水流により発電を行うものである。各水力発電機5は、出力が約10KW程度のマイクロ発電機から構成される。この水力発電機5の詳細については後述する。6は本発明における送電手段を構成する制御機であって、水力発電機5が発電した電力を逆潮流電力として送電する機能のほか、発電電力および稼働状態(故障や異常の有無等)に関するデータを送信する機能を備えている。この制御機6の詳細については後述する。7は各水力発電機5が発電した電力を中継所(図示省略)を介して電力会社等へ送電する送電線、8は制御機6からの送信データを受信する無線基地局である。無線基地局8は、通信ネットワーク(以下、単に「ネットワーク」と記す)9に接続されている。ネットワーク9は典型的にはインターネットで構成されるが、必ずしもこれに限定する必要はなく、例えば専用回線で構成されるものであってもよい。
【0013】
ネットワーク9には、本システムを運営する運営会社Aのサーバ10、電力会社Bのサーバ11、および需要家Cのサーバ12が接続されている。運営会社Aは、水力発電機5や制御機6などの発電プラントを設置して、水力発電機5で発電した電力を電力会社Bや需要家Cへ販売する事業主体である。運営会社Aのサーバ10は、本発明における管理装置を構成する。このサーバ10で管理するデータについては後述する。電力会社Bは、自己の発電所(図示省略)で発電を行うとともに、水力発電機5で発電された電力を運営会社Aから買い取り、これらの電力を当該地域の需要家に供給する事業を行う。サーバ11には、電力の売買データなどが格納されている。需要家Cは、例えば企業であって、電力会社Bから電力の供給を受け、また場合によっては水力発電機5で発電された電力を運営会社Aから直接購入する。サーバ12には電力の売買データなどが格納されている。なお、これらのサーバ10,11,12以外に、例えば電子取引市場(インターネットのウエブサイト上に開設された電子商取引のための仮想市場)のサーバ等が接続されていてもよい。13は無線基地局8との間で送受信が可能な通信エリアであって、例えば無線基地局8を中心とする半径3キロメートルのエリアとなっている。14はこのエリア13内にある地域住民の家屋である。
【0014】
以上のシステムにおいて、水力発電機5は、河川2の流域における通信エリア13内の複数地点に設けられており、各水力発電機5の近傍に送電柱3がそれぞれ設けられている。また、制御機6は各水力発電機5に付設されており、水力発電機5と制御機6、および制御機6と送電線4とはぞれぞれ電気的に接続されている。水力発電機5は河川2の水流により発電を行い、発電された電力は、制御機6から送電線4を介して送電線7へ送られる。一方、各水力発電機5に付設された制御機6は、それぞれの水力発電機5の発電電力および稼働状態に関するデータを、当該発電機に固有の識別番号とともに所定のタイミングで無線基地局8に無線送信する。無線基地局8へ送信されたデータは、ネットワーク9を介して運営会社Aのサーバ10に送られ、サーバ10は通信エリア13内にある個々の水力発電機5の発電電力および稼働状態を識別番号に基づいて管理するとともに、各水力発電機5の発電電力を合計した総発電量を管理する。電力会社Bや需要家Cは、ネットワーク9を通じて運営会社Aへ電力購入を申し込み、運営会社Aは水力発電機5が発電した総発電電力のうち、必要な電力を送電線7を通じて電力会社Bや需要家Cに販売する。
【0015】
このようにして、上記水力発電システムでは、河川2の水流を利用して発電を行うので、ダムのような大規模な発電設備は不要であり、小規模な設備で発電が可能となる。また水力発電であることから、二酸化炭素を排出しないクリーンな電力が得られる。さらに、河川2の複数地点に水力発電機5を設置し、それぞれの発電機5で発電した電力を合算して送電するので、発電量を増大させて十分な電力を供給することができる。また、各地点の水力発電機5の発電データをサーバ10が収集して、通信エリア13内にある複数台の水力発電機5を群として管理するので、個々の発電機5の発電量だけでなく、トータルの発電量を把握して一元管理することができ、これに基づいて電力の販売(売電)を円滑に行うことができる。さらに、制御機6から基地局8へは、発電電力のデータに加えて、水力発電機5の稼働状態のデータも送信されるので、サーバ10では各水力発電機5の稼働状態を把握し、異常時などに適切な対応をとることが可能となる。
【0016】
図2は、水力発電機5の一例を示した概略構造図である。51は両端側が開口した鼓形のハウジングであって、上流側の開口部には砂や漂流物などが侵入するのを防ぐためのフィルタ52が設けられている。53は発電機のロータ、54はロータ53を収納したケースである。55はプロペラであって、シャフト56の先端側に設けられている。57はロータ53の回転軸とシャフト56とを結合するカップリング部材である。
【0017】
以上の構成からなる水力発電機5は、図3のように河川2の水中に設置される。図3は河川2の断面を示した図であり、水力発電機5は固定具41により基台42に固定されており、基台42の脚部43は川床2aに埋入して堅牢に固定されている。
【0018】
図2において、上流から下流へ向かう水流(矢印で示す)によりプロペラ55が回転すると、プロペラ55の回転はシャフト56およびカップリング部材57を介してロータ53に伝達され、ロータ53の回転により水力発電機5は発電を行う。前述したように、水力発電機5は出力が10KW程度のマイクロ発電機であり、小型で設置スペースをとらないことから、中小河川における小規模発電に適したものとなっている。水力発電機5から出力される電圧は、例えば400〜600V程度の直流である。なお、本実施形態では、水力発電機5は直流発電機であるが、交流発電機であってもよい。水力発電機5で発電された電力は、図3で示したようにケーブル44を介して制御機6へ送られ、制御機6からさらにケーブル45を介して送電柱3に設けられた接続ボックス30へ送られる。なお、ケーブル44、45は地中配管内に収納されている。
【0019】
図4は、水力発電機5の発電電力を売電のために送電する送電系統を示した図である。このときの送電方向は電力会社側へ向かう方向となるため、水力発電機5の発電電力は逆潮流電力として送電される。水力発電機5から出力される直流電圧はケーブル44を介して制御機6へ与えられる。制御機6は、水力発電機5からの直流を交流に変換するとともに所定の電圧まで昇圧する。また、制御機6は、水力発電機5の発電電力を逆潮流電力として送電するために、周波数や位相を調整するなど所定の制御を行う。
【0020】
制御機6から出力される交流電圧は、ケーブル45を介して接続ボックス30に送られる。ケーブル45の端部にはコネクタ(図示省略)が設けられており、このコネクタを接続ボックス30の接続部(図示省略)に装着することにより、制御機6は接続ボックス30と電気的に接続され、さらには送電線4と電気的に接続される。この結果、水力発電機5が発電した電力を、制御機6から接続ボックス30を介して送電線4に乗せて送電することができる。また、図3で示したように、制御機6は無線通信を行うアンテナ6aを備えており、このアンテナ6aを介して、水力発電機5の発電電力と稼働状態に関するデータを無線基地局8へ送信する。なお、接続ボックス30には、売電用の取引計器となる積算電力計32が内蔵されている。この積算電力計32は、接続ボックス30の外部に独立して設けてもよい。
【0021】
図5は、制御機6の電気的構成の一例を示したブロック図である。20は水力発電機5が発電した電力を逆潮流電力として送電線4へ乗せるために所定の制御を行なう電力制御部であって、水力発電機5からの直流電圧を交流電圧に変換するコンバータ20a、電圧のレベルを制御するPWM(Pulse Width Modulation)回路20b、逆潮流電力の周波数を調整する周波数制御回路20c、逆潮流電力の位相を調整する位相制御回路20dを備えている。21は無線送受信部であって、アンテナ6aを介して無線基地局8との間でデータの送受信を行う。無線送受信部21とアンテナ6aとにより、本発明の通信手段が構成される。22は制御機6の動作を制御する制御手段としてのCPU、23はCPU22の動作プログラム等を格納したROMや送受信データ等を一時的に格納するRAMにより構成される記憶部である。24は水力発電機5の停止や起動を制御する発電機制御部、25は制御機6の各部へ電源を供給するためのバッテリからなる電源部、26は水力発電機5の異常状態を検出するために発電機5に付設されたセンサである。27と28は、それぞれ図4で示したケーブル44,45が接続される端子である。
【0022】
図6は、無線送受信部21から無線基地局8へ送信されるデータの一例を示した図である。(a)は通常時に送信されるデータであって、発電機ID番号X1、送信時刻X2、機器異常有無X3、積算電力値X4などを含んでいる。発電機ID番号X1は、水力発電機5のそれぞれに割り当てられた発電機固有の識別番号である。送信時刻X2は、データを送信する時刻を表したタイムスタンプである。機器異常有無X3は、水力発電機5の状態が異常でないかどうかを表すフラグであって、前述のセンサ26の検知出力に基づいて設定される。積算電力値X4は、水力発電機5が発電した電力量を表すデータである。一方、(b)は水力発電機5の異常時に送信されるデータであって、発電機ID番号Y1、送信時刻Y2、機器異常有無Y3、異常コードY4、積算電力値Y5などを含んでいる。発電機ID番号Y1、送信時刻Y2、機器異常有無Y3、積算電力値Y5については、それぞれ(a)のX1、X2、X3、X4と同じである。異常コードY4は、異常の種別を表すコードであって、例えば、水力発電機5のフィルタ52(図2)に詰りが生じている場合は、フィルタ詰りに相当するコードが設定される。
【0023】
図7は、運営会社Aのサーバ10(図1)に設けられた群管理ファイルの一例を示した図である。群管理ファイル10aには、発電機ID番号ごとに管理データが記録されている。管理データは、ネットワーク9を通じて収集した各水力発電機5の発電電力および稼働状態に関するデータである。発電電力のデータとしては、受信発電量Z1と累計発電量Z2が記録される。受信発電量Z1は、制御機6から送信されてきた発電量のデータであり、図6の積算電力値X4、Y5がこれに相当する。累計発電量Z2は、受信発電量Z1を日単位、月単位、年単位で累計した値である。一方、稼働状態のデータとしては、稼働率Z3と故障データZ4が記録される。稼働率Z3は、水力発電機5の故障停止期間を除いた実質運転時間の比率を表した指標である。故障データZ4は、水力発電機5の故障の種別や故障期間などを表すデータである。また、群管理ファイル10aには、上述した個々の発電機のデータに加え、総発電量Z5と平均稼働率Z6が記録される。総発電量Z5は、各水力発電機5の累計発電量Z2を合計したものであり、平均稼働率Z6は、各水力発電機5の稼働率Z3を平均したものである。
【0024】
なお、図示は省略するが、サーバ10は、CPU、メモリ、通信部、入力装置、ディスプレイ、外部記憶装置、電源部などからなる公知の構成を備えている。
【0025】
図8は、制御機6およびサーバ10の動作を示したフローチャートである。それぞれの手順は、制御機6とサーバ10に備わる各CPUにより実行される。制御機6では、CPU22が水力発電機5の稼働有無を常時監視しており(ステップS1)、例えば一定時間以上連続して発電電力が発生しないような場合は、水力発電機5が稼働していないと判定して(ステップS2:NO)、保守部門のコンピュータへ異常を通知する。水力発電機5が稼働中であれば(ステップS2:YES)、次に、サーバ10からデータ送信要求のコマンドを受信するのを待ち(ステップS3)、コマンドを受信すると(ステップS3:YES)、水力発電機5の発電電力および稼働状態のデータ(以下、「ログデータ」と記す)を図6に示したように編集して(ステップS4)、編集したログデータを無線送受信部21およびアンテナ6aから無線基地局8を介してサーバ10へ送信する(ステップS5)。その後、ステップS1へ戻って上述した手順を繰り返す。
【0026】
一方、サーバ10では、制御機6とポーリング通信を行い、一定時間間隔で水力発電機5のデータを自動的に収集するようになっている。このため、現在時刻を監視してデータ収集時刻に至ったか否かを判定し(ステップS11)、データ収集時刻になると(ステップS11:YES)、制御機6に対して前述のデータ送信要求コマンドを送信する(ステップS12)。その後、制御機6からログデータが送信されてくるのを待ち(ステップS13)、ログデータを受信すると(ステップS13:YES)、受信したデータを分析する(ステップS14)。分析の結果、ログデータに異常がなければ(ステップS15:NO)、累計発電量Z2を計算し(ステップS17)、稼働率Z3を計算して(ステップS18)、図7の群管理ファイル10aの各データ欄を更新する(ステップS19)。一方、ログデータに異常を示す情報(図6(b)のY3、Y4)が含まれている場合は(ステップS15:YES)、保守部門のコンピュータへ異常を通知した後(ステップS16)、ステップS17〜ステップS19を実行する。ステップS19を実行した後は、ステップS11へ戻って上述した手順を繰り返す。なお、ここでは、サーバ10から制御機6に対してデータ送信要求コマンドを送り、制御機6がこれを受信することによりログデータをサーバ10へ送信する例を挙げたが、制御機6から定期的にサーバ10へログデータを送信するようにしてもよい。
【0027】
図9は、異常事態が発生した時に、サーバ10からの遠隔指令により発電機の稼働を制御する手順を示している。例えば、台風や大雨などにより河川2が増水して水力発電機5が流失しかかっているようなときは、発電を続けたまま復旧作業を行うことは危険であるので、水力発電機5を非稼働状態にする必要が生じる。このような場合、保守員は、携帯電話機などの端末装置(図示省略)を用い、稼働停止が必要な水力発電機5の発電機ID番号やパスワード等を入力して、サーバ10へ異常事態の発生を通知する(ステップS21)。端末装置から送信された通知信号は、無線基地局8からネットワーク9を通じてサーバ10で受信される。サーバ10では、この通知を受けると異常事態が発生したと判定し、ネットワーク9から無線基地局8を通じて、該当する水力発電機5に付設された制御機6へ、当該発電機の稼働の停止を指示する信号を送信する(ステップS22)。制御機6では、この指示信号がアンテナ6aを介して無線送受信部21で受信されると、CPU22が発電制御部24に指令を与え、発電制御部24から稼働停止信号が出力される。この信号により、水力発電機5は電気的もしくは機械的に稼働が停止され、発電電力を出力しない状態となる(ステップS23)。なお、ステップS22において、サーバ10が稼働停止指示信号を送信するのと並行して、サーバ10から保守部門へ作業指示を通知するようにしてもよい。
【0028】
その後、現場において保守員や作業員による復旧作業が行われ(ステップS24)、復旧が完了すると(ステップS25)、保守員は再び携帯電話機などの端末装置を用い、稼働再開が必要な水力発電機5の発電機ID番号やパスワード等を入力して、サーバ10へ発電機の再稼働を要求する(ステップS26)。端末装置から送信された通知信号は、無線基地局8からネットワーク9を通じてサーバ10で受信される。サーバ10では、この通知を受けると異常事態が復旧したと判定し、ネットワーク9から無線基地局8を通じて、該当する水力発電機5に付設された制御機6へ、当該発電機の稼働の再開を指示する信号を送信する(ステップS27)。制御機6では、この指示信号がアンテナ6aを介して無線送受信部21で受信されると、CPU22が発電制御部24に指令を与え、発電制御部24から稼働再開信号が出力される。この信号により、水力発電機5は再起動され、発電電力を出力する状態となる(ステップS28)。
【0029】
以上のように、異常事態の発生時および復旧時に、携帯電話機等から基地局8を経由してサーバ10へアクセスすることで、サーバ10の遠隔制御によって水力発電機5の稼働の停止・再開を行うことが可能となり、異常時にすみやかな対応を行うことができる。
【0030】
図10および図11は、サーバ10による群管理の他の実施形態を説明する模式図である。図1の水力発電システムでは、通信エリア13の範囲内にある複数台の水力発電機5を1つの群として、サーバ10で管理する例を示したが、図10に示したように、河川2に複数のポイントP1,P2,P3,…を設定し、各ポイントごとに例えば10台の水力発電機を設置して、基地局8aの通信エリア13a内にある1ポイントを1つの群として管理するようにしてもよい。図10の例では、無線通信エリア13a内に7つのポイントがあり、サーバ10は7つの群(70台の水力発電機)を管理することになる。
【0031】
また、図11のように、管理レベルをさらに多層としてもよい。図11の例では、「ユニット」という管理レベルが設けられている。ユニットは、河川単位の管理レベルであって、ユニット1は○○川、ユニット2は△△川、ユニット3は××川、というように決められている。各ユニットの下位には、上述した「ポイント」という管理レベルが設けられている。ポイントは、河川のエリア単位の管理レベルであって、例えばポイント1は△△川の上流の××地区、ポイント2は△△川の上流の○○地区、ポイント3は△△川の中流の□□地区、というように決められている。各ポイントの下位には、個々の水力発電機が属しており、これは機器単位の管理レベルであって、前述した発電機ID番号により管理される。サーバ10は最上位にあって、各河川を総括する全体の管理レベルを構成している。
【0032】
図12は、図11の管理体系を採用した場合のサーバ10における群管理ファイル10bの一例である。群管理ファイル10bには、全体のデータG1、ユニット(河川)ごとのユニットデータG2、ポイント(エリア)ごとのポイントデータG3、発電機ごとの機器データG4が記録されており、それぞれのデータは、累計発電量と稼働率とを含んでいる。累計発電量と稼働率は、日単位、月単位、年単位等で記録される。全体のデータG1は、ユニットデータG2を全ユニットにわたって集計したものであり、ユニットデータG2は当該ユニットに属するポイントデータG3を全ポイントにわたって集計したものであり、ポイントデータG3は当該ポイントに属する個々の発電機の機器データG4を集計したものである。
【0033】
ここで、1ポイントに10台ずつ水力発電機5を設置し、10ポイントを1ユニットとして、ユニット数を1000とした場合、1台の水力発電機5が発電する電力を平均10KWと仮定すると、1ポイントの発電量は100KW、1ユニットの発電量は1000KWとなり、1000ユニットでは100万KWの電力がクリーンなエネルギーとして得られる。これは、原子力発電所ほぼ1基分の発電エネルギーに匹敵し、本発明の水力発電システムは、地球環境を維持しながら大量のクリーン電力を生産できる点できわめて意義が大きい。
【0034】
図13および図14は、本発明の他の実施形態を説明する図である。図1の場合は、無線基地局8を独立して設置したが、図13のように無線基地局を送電柱3に配備することもできる。図13において、3は送電柱、4は送電線、30は接続ボックス、45はケーブルであって、これらは図1や図4で示したものと同じものである。61は柱上トランスであって、送電柱3に設けられた支持板64に支持されている。62は無指向性のアンテナであって、送電柱3に設けられた支持板65に支持されている。63は無線LANボックスであって、送電柱3に設けられた支持板66に支持されている。46は無線LANボックス63をネットワークに接続するためのLANケーブル、47は柱上トランス61と接続ボックス30とを電気的に接続するためのケーブル、67は接続ボックス30を支持する支持板である。以上の構成において、アンテナ62と無線LANボックス63とによって、無線基地局が構成される。
【0035】
図14は、無線LANボックス63の電気的構成を示したブロック図である。62は上述したアンテナ、71は雷から回路を保護するための避雷器、72はモデムや制御回路等を内蔵した無線LAN装置、73は無線LAN装置72を作動させるための直流電源、74は直流電源73へ交流電圧を供給するためのコンセントボックス、46は上述したLANケーブルである。各制御機6から送信された水力発電機5の電力データ等は、アンテナ62で受信され、無線LAN装置72からLANケーブル46およびネットワーク9を介して、サーバ10に送信され、図1の場合と同様の手順で処理が行われる。
【0036】
このように、無線基地局を送電柱3に配備することにより、基地局をわざわざ設置しなくても、既存の設備を利用して基地局を設けることができ、設備費用を抑制することができる。特に、過疎地や河川沿いでは、ビルのような高い建物が少なく、電波の受信状態が良好なため、送電柱3に基地局を配備することで支障なく通信を行うことができる。
【0037】
なお、以上においては、中小河川に水力発電機5を設置する例を挙げたが、本発明は、一級河川のような大型河川に水力発電機5を設置して発電を行う場合にも適用が可能である。
【0038】
また、図1の実施形態では、複数の水力発電機5のそれぞれに制御機6を付設した例を挙げたが、所定数(例えば3台)の水力発電機5に対して1台の制御機6を付設し、この1台の制御機6で複数の水力発電機5を管轄するようにしてもよい。このようにすれば、制御機6の台数を減らしてコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る水力発電システムの一例を示した図である。
【図2】水力発電機の一例を示した概略構造図である。
【図3】河川の断面を示した図である。
【図4】送電系統を示した図である。
【図5】制御機の電気的構成を示したブロック図である。
【図6】無線基地局へ送信されるデータの一例を示した図である。
【図7】群管理ファイルの一例を示した図である。
【図8】制御機およびサーバの動作を示したフローチャートである。
【図9】異常事態発生時の発電機の稼働制御の手順を示したフローチャートである。
【図10】群管理の他の実施形態を説明する模式図である。
【図11】群管理の他の実施形態を説明する模式図である。
【図12】群管理ファイルの他の例を示した図である。
【図13】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図14】無線LANボックスの電気的構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
2 河川
3 送電柱
4,7 送電線
5 水力発電機
6 制御機
6a アンテナ
8,8a 無線基地局
9 通信ネットワーク
10 サーバ
10a,10b 群管理ファイル
13,13a 通信エリア
21 無線送受信部
62 アンテナ
63 無線LANボックス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川に設置された水力発電設備を利用して発電を行うシステムであって、
前記河川の複数地点に設けられ、当該河川の水流により発電を行う複数台の水力発電機と、
各水力発電機が発電した電力を電力会社または需要家に送電する送電手段と、
各水力発電機の発電電力のデータを通信ネットワークを通じて収集し、複数台の水力発電機を群管理する管理装置と、
を備えたことを特徴とする水力発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水力発電システムにおいて、
前記通信ネットワークに接続された無線基地局と、
前記無線基地局の通信エリア内にある複数台の水力発電機のそれぞれ又は所定数の発電機に対して付設され、対応する水力発電機の発電電力および稼働状態に関するデータを当該発電機に固有の識別番号とともに所定のタイミングで前記無線基地局に無線送信するための通信手段が設けられた制御機と、をさらに備え、
前記管理装置は、前記通信エリア内にある個々の水力発電機の発電電力および稼働状態を前記識別番号に基づいて管理するとともに、各水力発電機の発電電力を合計した総発電量を管理することを特徴とする水力発電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水力発電システムにおいて、
前記無線基地局は、水力発電機が発電した電力を送電するための送電柱に配備されていることを特徴とする水力発電システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の水力発電システムにおいて、
前記管理装置は、異常事態の発生を判定した時に、前記制御機のうち該当する制御機に対して水力発電機の稼働の停止を指示する指示信号を送信し、異常事態の復旧を判定した時に、前記制御機に対して水力発電機の稼働の再開を指示する指示信号を送信し、
前記制御機は、管理装置からの前記指示信号に基づいて水力発電機の稼働の停止または再開を制御することを特徴とする水力発電システム。
【請求項1】
河川に設置された水力発電設備を利用して発電を行うシステムであって、
前記河川の複数地点に設けられ、当該河川の水流により発電を行う複数台の水力発電機と、
各水力発電機が発電した電力を電力会社または需要家に送電する送電手段と、
各水力発電機の発電電力のデータを通信ネットワークを通じて収集し、複数台の水力発電機を群管理する管理装置と、
を備えたことを特徴とする水力発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水力発電システムにおいて、
前記通信ネットワークに接続された無線基地局と、
前記無線基地局の通信エリア内にある複数台の水力発電機のそれぞれ又は所定数の発電機に対して付設され、対応する水力発電機の発電電力および稼働状態に関するデータを当該発電機に固有の識別番号とともに所定のタイミングで前記無線基地局に無線送信するための通信手段が設けられた制御機と、をさらに備え、
前記管理装置は、前記通信エリア内にある個々の水力発電機の発電電力および稼働状態を前記識別番号に基づいて管理するとともに、各水力発電機の発電電力を合計した総発電量を管理することを特徴とする水力発電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水力発電システムにおいて、
前記無線基地局は、水力発電機が発電した電力を送電するための送電柱に配備されていることを特徴とする水力発電システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の水力発電システムにおいて、
前記管理装置は、異常事態の発生を判定した時に、前記制御機のうち該当する制御機に対して水力発電機の稼働の停止を指示する指示信号を送信し、異常事態の復旧を判定した時に、前記制御機に対して水力発電機の稼働の再開を指示する指示信号を送信し、
前記制御機は、管理装置からの前記指示信号に基づいて水力発電機の稼働の停止または再開を制御することを特徴とする水力発電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−99373(P2008−99373A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275807(P2006−275807)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]