説明

水噴霧設備及び水噴霧設備の運転方法

【課題】噴霧ノズルによる噴霧の開始時、終了時において、噴霧ノズルからの水の滴下を防止し得るようにする。
【解決手段】高圧ポンプ2から第一の管路4を介して送水された水を噴霧する感圧逆止弁を有する噴霧ノズル5と、
前記第一の管路4に第二の管路23を介して接続された与圧タンク22と、
前記第一の管路4における噴霧ノズル5よりも送水方向上流側で且つ第二の管路23接続位置よりも送水方向下流側に設けられた第一の開閉弁24と、
前記高圧ポンプ2の入側に接続された第三の管路3に第四の管路26を介して接続された膨張タンク27と、
前記第一の開閉弁24よりも送水方向下流側において第一の管路4に接続されると共に前記第四の管路26に接続された第五の管路29、に設けられた第二の開閉弁28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中に噴霧されたミストの蒸発潜熱を利用して、周囲の温度を下降させるための水噴霧設備及び水噴霧設備の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
博覧会等のパビリオン等の集客施設が設置された屋外や熱源を有する大型機器が設置された屋内においては、周囲の温度を下降させるため水噴霧設備を使用し、ポンプにより所定圧に加圧された水を噴霧ノズルから噴霧することによりミストを生成させ、このミストの蒸発潜熱により、周囲の温度を下降させることが行われている。
【0003】
斯かる水噴霧設備の従来の例は、図8に示されている。図中、1は水道水等の水Wが貯留される水槽、2は水槽1から管路3を通り供給された水Wを加圧して送給する高圧ポンプ、4は加圧されて高圧ポンプ2から送出された水Wが送給される管路、5は管路4の送水方向下流側に並列接続された複数の分岐管路6に夫々接続された噴霧ノズル、7は高圧ポンプ2の出側近傍において管路4に設けられた逆止弁、8は高圧ポンプ2と逆止弁7との間において管路4に接続された安全弁、9は管路4の送水方向下流側先端に設けられた空気抜き用の弁である。
【0004】
図8の水噴霧設備に使用する噴霧ノズル5の詳細は図9に示されている。而して、噴霧ノズル5は、軸心部に中空部10が形成されると共に、下端に中空部10に連通する小径の噴霧孔11が穿設されたノズル本体12と、ノズル本体12の上端部において中空部10に螺合されると共に、軸心部に水供給路13が穿設され且つ水供給路13の上端部には、フィルタ14が嵌合されたプラグ15と、噴霧孔11側に位置するよう中空部10内に嵌合されると共に、外周に螺旋状の溝16が形成されたブロック17と、プラグ15の水供給路13を開閉し得るよう、中空部10内に収納された金属球状の弁体18と、弁体18をプラグ15下端において水供給路13の外周に形成した座部15a側へ付勢し得るよう、プラグ15とブロック17との間において中空部10内に収納されたコイルバネ等の弾撥体19を備えている。而して、噴霧ノズル5においては、弁体18と弾撥体19により水Wに対する感圧逆止弁20が形成されており、プラグ15の中空部10に対する軸線方向位置を調整することにより、噴霧孔11から噴霧される水Wの圧力を調整し得るようになっている。又、噴霧ノズル5は、ノズル本体12を介して分岐管路6の下端に螺合されている。図中、21は中空部10下端の漏斗状の斜面である。
【0005】
図8に示す水噴霧設備においては、高圧ポンプ2を駆動すると、水槽1内の水Wは管路3から高圧ポンプ2へ導入され、高圧ポンプ2により加圧されて管路4、分岐管路6を経て噴霧ノズル5へ送給される。
【0006】
噴霧ノズル5へ供給された水Wは、フィルタ14において微小なごみを除去され、水供給路13を経て弁体18に至る。而して、弁体18に作用する水圧が予め調整された弾撥体19の撓み量により設定された所定の圧力(例えば、1MPa)になると、弾撥体19の弾撥力に抗して弁体18が座部15aから離反して開き始め、水Wは水供給路13から中空部10を経てブロック17の溝16により旋回流となり、中空部10下端の漏斗状の斜面21に衝突し、噴霧孔11を経て噴霧孔11の下端出口を頂点とする円錐状に広がるミストとなって外部に噴霧を開始され、ミストの蒸発潜熱により周囲の温度が下降させられる。正常噴霧時における水Wの水圧は約6MPa程度である。
【0007】
噴霧が終了して高圧ポンプ2を停止すると、管路4から噴霧ノズル5までの圧力が低下して水Wの噴霧は停止され、弁体18に作用する圧力が前記所定の圧力(例えば、1MPa)よりも下降すると、弾撥体19により付勢された弁体18は上昇し、座部15aに当接する。このため、水供給路13が閉じられて噴霧ノズル5の感圧逆止弁20が閉止する。
【0008】
屋内や屋外において周囲の温度を下降させるため、高圧ポンプにより6MPa程度に加圧された水をノズルから噴霧することにより粒径が約10〜30μm程度のミストを生成させ、このミストの蒸発潜熱により、周囲の温度を下降させる水噴霧設備としては特許文献1がある。
【0009】
特許文献1では、水を加圧して送り出すポンプと、該ポンプに元弁を介して接続される主配水管と、該主配水管に選択弁を介して接続され、前記主配水管と噴霧ヘッドとを連通する子配水管と、前記主配水管に排水弁を介して接続され、前記主配水管内の水を排水する排水配管と、前記子排水管に噴霧ヘッダ、延長配管を介して接続された噴霧ノズルを備えている。
【0010】
而して、特許文献1においては、噴霧開始時には、選択弁は閉止させた状態で元弁と排水弁を開放し、次いでポンプを起動する。そうすると、主配水管内に残存していた空気が排水配管から水と共に押出されて主配水管内に均一な水圧が掛かるようになる。そこで、排水弁を閉止すると、主配水管内の水圧が所定の圧力(6MPa)に達する。次いで、選択弁を開放して水を主配水管から子排水管、噴霧ヘッダ、延長配管を介して、噴霧ノズルへ供給し、噴霧ノズルにより水の噴霧を行う。
【0011】
又、噴霧終了時には、排水弁を開放すると、子排水管等を介して噴霧ノズルの圧力が低下して閉止する。而して、排水弁が開放されてから、若干遅れて元弁と排水弁を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−177577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図8に示す水噴霧設備においては、定常運転時には、高圧ポンプ2の起動、停止による、管路4内延いては、噴霧ノズル5入側の圧力(水圧)は図10に示すようになる。すなわち、高圧ポンプ2が停止している際には、管路4内延いては、噴霧ノズル5入口部の圧力は、水槽1に貯留されている水Wの水面と噴霧ノズル5の高さとの差に基く水頭圧(例えば、約0.2MPa程度)であるが、高圧ポンプ2の運転開始後に、高圧ポンプ2の吐出圧力が所定の圧力(約6MPa程度)になるには、時間遅れT1がある。又、高圧ポンプ2の運転停止後に高圧ポンプ2の吐出圧力が低下して元の圧力(約0.2MPa)まで下降するには、時間遅れT2がある。更に、管路4等が高圧ホースのような場合には、高圧ポンプ2の起動、停止による圧力の変動により、管路4等の膨張、収縮が生じるため、噴霧開始時に管路4内の水圧が所定の圧力まで上昇し、或は停止時に所定の圧力まで低下するには、時間遅れT1,T2は大きくなる。
【0014】
一方、高圧ポンプ2が運転されて、図9の噴霧ノズル5における感圧逆止弁20の弁体18に作用する圧力が、設定圧(例えば、約1MPa程度)になると、弁体18が開き始める。而して、弁体18とプラグ15の座部15aとの隙間が小さい間は、水Wの水圧が低く、流量が少ないため、中空部10から溝16を通って送給された水Wは、旋回流を形成せず、その結果、水Wは噴霧孔11からミストの状態では噴霧されず、水滴となって滴下する。又、弁体18とプラグ15の座部15aとの隙間が大きくなり、水圧が所定の圧力まで昇圧すると、水Wは噴霧孔11から滴下せず、噴霧孔11の下端出口を頂点として円錐状に広がる噴霧が開始される。
【0015】
又、高圧ポンプ2の停止時に、水圧が下降して所定の圧力よりも下降すると、弾撥体19の弾撥力により弁体18が閉じ始めるため、弁体18とプラグ15の座部15aとの隙間が小さくなり、設定圧よりも低くなると、弁体18は完全に閉止するが、水圧が所定の圧力よりも低下した後、弁体18が完全に閉止するまでの間は、水Wは噴霧孔11から水滴となって滴下する。図10において時間t1、t2は高圧ポンプ2の運転、停止時に水Wが噴霧ノズル5の噴霧孔11から滴下する時間である。
【0016】
而して、噴霧の開始時及び終了時に水Wが噴霧ノズル5から噴霧されずに滴下すると、水滴が落下して人に掛かったり、周囲を濡らす虞があり好ましくない。又、特許文献1では、高圧ポンプの停止時には水の滴下を防止することができるが、子配水管が長い場合には、運転開始時には子配水管の圧力上昇が十分になり難く、水の滴下を防止することができないことが考えられる。
【0017】
本発明は、上述の実情に鑑み、噴霧ノズルによる噴霧の開始、終了の何れか、或は開始、終了の両方において、噴霧ノズルからの水の滴下を防止し得るようにした水噴霧設備及び水噴霧設備の運転方法を提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の請求項1の水噴霧設備は、
ポンプから第一の管路を介して送水された水を噴霧する感圧逆止弁を有する噴霧ノズルと、
前記第一の管路に第二の管路を介して接続された与圧タンクと、
前記第一の管路における前記噴霧ノズルよりも送水方向上流側で且つ第二の管路接続位置よりも送水方向下流側に設けられた第一の開閉弁と、
前記ポンプの入側に接続された第三の管路に第四の管路を介して接続された膨張タンクと、
前記第一の開閉弁よりも送水方向下流側において第一の管路に接続されると共に前記第四の管路に接続された第五の管路、に設けられた第二の開閉弁とを備えたものである。
【0019】
請求項2の水噴霧設備は、
共通ポンプから送水された水を噴霧し得るようにした複数の噴霧系列を備え、
各噴霧系列は、
前記共通ポンプから第六の管路を介して分岐された第一の管路を通り送水された水を噴霧する感圧逆止弁を有する噴霧ノズルと、
前記第一の管路に第二の管路を介して接続された与圧タンクと、
前記第一の管路における前記噴霧ノズルよりも送水方向上流側で且つ第二の管路接続位置よりも送水方向下流側に設けられた第一の開閉弁と、
前記第一の管路において第二の管路の接続位置よりも送水方向上流側に設けられた第三の開閉弁とを備え、
前記共通ポンプの入側に接続された第三の管路に第四の管路を介して接続された膨張タンク側と、前記各噴霧系列の第一の管路における第一の開閉弁接続位置よりも送水方向下流側とは、第二の開閉弁を有する第五の管路及び第五の管路を集合させた第七の管路を介し接続されているものである。
【0020】
請求項3の水噴霧設備は、
共通ポンプから送水された水を噴霧し得るようにした複数の噴霧系列を備え、
各噴霧系列は、
前記共通ポンプから、第六の管路を介して分岐された第一の管路を通り送水された水を噴霧する感圧逆止弁を有する噴霧ノズルと、
前記第一の管路に第二の管路を介して接続された与圧タンクと、
前記第一の管路における前記噴霧ノズルよりも送水方向上流側で且つ第二の管路接続位置よりも送水方向下流側に設けられた第一の開閉弁とを備え、
前記共通ポンプの入側に接続された第三の管路に第四の管路を介して接続された膨張タンク側と、前記各噴霧系列の第一の管路における第一の開閉弁接続位置よりも送水方向下流側とは、第二の開閉弁を有する第五の管路及び第五の管路を集合させた第七の管路を介し接続されているものである。
【0021】
請求項4の水噴霧設備は、
共通ポンプから送水された水を噴霧し得るようにした複数の噴霧系列を備え、
各噴霧系列は、
前記共通ポンプから、第六の管路を介して分岐された第一の管路を通り送水された水を噴霧する感圧逆止弁を有する噴霧ノズルと、
前記第六の管路に第二の管路を介して接続された与圧タンクと、
前記第一の管路における前記噴霧ノズルよりも送水方向上流側に設けられた第一の開閉弁とを備え、
前記共通ポンプの入側に接続された第三の管路に第四の管路を介して接続された膨張タンク側と、前記各噴霧系列の第一の管路における第一の開閉弁接続位置よりも送水方向下流側とは、第二の開閉弁を有する第五の管路及び第五の管路を集合させた第七の管路を介し接続されているものである。
【0022】
請求項5の水噴霧設備は、
噴霧ノズルの感圧逆止弁は、弾撥体と該弾撥体により押圧されて閉止される弁体とを備え、弁体は前記第一の管路からの水圧により、弾撥体の抗力に抗して開くよう構成されているものである。
【0023】
請求項6の水噴霧設備の運転方法においては、
水の噴霧を開始する際には、ポンプにより予め与圧タンクに所定の水圧を蓄圧しておいた後、第一の開閉弁を開いて、ポンプにより与圧タンクに蓄圧されている水圧及びポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を開くことで水の噴霧を開始し、
水の噴霧を終了する際には、ポンプを停止すると共に、第一の開閉弁を閉止し且つ第二の開閉弁を開いて第一の開閉弁設置位置よりも送水方向下流側の第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させるものである。
【0024】
請求項7の水噴霧設備の運転方法においては、
複数の噴霧系列のうち水の噴霧を行っている所定の噴霧系列において水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行なっていない系列の第一の開閉弁及び第三の開閉弁は閉止しておき、共通ポンプが運転されている状態で水の噴霧を終了する系列の第一の開閉弁及び第三の開閉弁を閉止すると共に、当該系列の第二の開閉弁を開いて第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させるものである。
【0025】
請求項8の水噴霧設備の運転方法においては、
複数の噴霧系列のうち所定の噴霧系列において水の噴霧を開始する際には、水の噴霧を行わない系列の第一の開閉弁及び第三の開閉弁は閉止しておき、共通ポンプが運転されている状態で水の噴霧を開始する系列の第二の開閉弁は閉止したまま当該系列の第三の開閉弁及び第一の開閉弁を開いて当該系列の与圧タンクに蓄圧されている水圧及び共通ポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を開くことで水の噴霧を開始し、
水の噴霧を行っている当該噴霧系列において水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行なっていない系列の第一の開閉弁及び第三の開閉弁は閉止しておき、共通ポンプが運転されている状態で水の噴霧を終了する系列の第一の開閉弁及び第三の開閉弁を閉止すると共に、当該系列の第二の開閉弁を開いて第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させるものである。
【0026】
請求項9の水噴霧設備の運転方法においては、
複数の噴霧系列のうち所定の噴霧系列において水の噴霧を開始する際には、共通ポンプにより全ての噴霧系列の与圧タンクに予め所定の水圧を蓄圧しておき、全ての噴霧系列の第二の開閉弁を閉止したまま噴霧を開始する噴霧系列の第一の開閉弁を開き、共通ポンプにより与圧タンクに蓄圧されている水圧及び共通ポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に当該噴霧系列の噴霧ノズルの感圧逆止弁を開いて水の噴霧を開始するものである。
【0027】
請求項10の水噴霧設備の運転方法においては、
複数の噴霧系列のうち水の噴霧を行っていた噴霧系列において水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行っていた噴霧系列の第一の開閉弁を閉止し且つ当該噴霧系列の第二の開閉弁を開いて、第一の開閉弁設置位置よりも送水方向下流側の第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより、噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させるものである。
【0028】
請求項11の水噴霧設備の運転方法においては、
複数の噴霧系列のうち所定の噴霧系列において水の噴霧を開始する際には、共通ポンプにより全ての噴霧系列の与圧タンクに予め所定の水圧を蓄圧しておき、全ての噴霧系列の第二の開閉弁を閉止したまま噴霧を開始する噴霧系列の第一の開閉弁を開き、共通ポンプにより与圧タンクに蓄圧されている水圧及び共通ポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に当該噴霧系列の噴霧ノズルの感圧逆止弁を開いて水の噴霧を開始し、
水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行っていた噴霧系列の第一の開閉弁を閉止し且つ当該噴霧系列の第二の開閉弁を開いて、第一の開閉弁設置位置よりも送水方向下流側の第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより、噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させるものである。
【0029】
請求項12の水噴霧設備の運転方法においては、
複数の噴霧系列のうち所定の噴霧系列において水の噴霧を開始する際には、共通ポンプにより与圧タンクに予め所定の水圧を蓄圧しておき、全ての噴霧系列の第二の開閉弁を閉止したまま噴霧を開始する噴霧系列の第一の開閉弁を開き、共通ポンプにより与圧タンクに蓄圧されている水圧及び共通ポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に当該噴霧系列の噴霧ノズルの感圧逆止弁を開いて水の噴霧を開始するものである。
【0030】
請求項13の水噴霧設備の運転方法においては、
複数の噴霧系列のうち水の噴霧を行っていた噴霧系列において水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行っていた噴霧系列の第一の開閉弁を閉止し且つ当該噴霧系列の第二の開閉弁を開いて、第一の開閉弁設置位置よりも送水方向下流側の第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより、噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させるものである。
【0031】
請求項14の水噴霧設備の運転方法においては、
複数の噴霧系列のうち所定の噴霧系列において水の噴霧を開始する際には、共通ポンプにより与圧タンクに予め所定の水圧を蓄圧しておき、全ての噴霧系列の第二の開閉弁を閉止したまま噴霧を開始する噴霧系列の第一の開閉弁を開き、共通ポンプにより与圧タンクに蓄圧されている水圧及び共通ポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に当該噴霧系列の噴霧ノズルの感圧逆止弁を開いて水の噴霧を開始し、
水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行っていた噴霧系列の第一の開閉弁を閉止し且つ当該噴霧系列の第二の開閉弁を開いて、第一の開閉弁設置位置よりも送水方向下流側の第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより、噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させるものである。
【0032】
請求項15の水噴霧設備に運転方法においては、
噴霧ノズルの感圧逆止弁は、第一の管路の水圧が所定の値よりも高い場合は、弁体は弾撥体の弾撥力に抗して開き、第一の管路の水圧が所定の値よりも低い場合は、弁体が弾撥体に押圧されて閉止されるものである。
【発明の効果】
【0033】
請求項1、2、3、4、6、8、11、14に記載の発明によれば、噴霧開始時及び噴霧終了時の何れにおいても、噴霧ノズルから水が滴下することを防止することができ、請求項9、12に記載の発明によれば、噴霧開始時において噴霧ノズルから水が滴下することを防止することができ、請求項7、10、13に記載の発明によれば、噴霧終了時に噴霧ノズルから水が滴下することを防止することができ、又、請求項5、15の感圧逆止弁は上記全ての請求項に記載の発明に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の水噴霧設備及び水噴霧設備の運転方法の実施例1の系統図である。
【図2】図2(a)〜(f)は図1の水噴霧設備により水の噴霧を行う場合の各機器のタイミングチャートである。
【図3】本発明の水噴霧設備及び水噴霧設備の運転方法の実施例2の系統図である。
【図4】図4(a)〜(f)は図3の水噴霧設備により水の噴霧を行う場合の各機器のタイミングチャートである。
【図5】本発明の水噴霧設備及び水噴霧設備の運転方法の実施例3の系統図である。
【図6】図6(a)〜(e)は図5の水噴霧設備により水の噴霧を行う場合の各機器のタイミングチャートである。
【図7】本発明の水噴霧設備及び水噴霧設備の運転方法の実施例4の系統図である。
【図8】従来の水噴霧設備の一例の系統図である。
【図9】従来の水噴霧設備及び本発明の水噴霧設備で使用する噴霧ノズルの縦断面図である。
【図10】図9に示す噴霧ノズルが噴霧を行う際の時間と圧力の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【実施例1】
【0036】
図1及び図2は本発明の水噴霧設備及び水噴霧設備の運転方法の実施例1であり、請求項1、5、6、15に係るものである。図中、図8と同一のものには同一の符号が付してある。又、噴霧ノズル5は、以下に説明する全ての実施形態例において、図9に示すものと同一の構造である。更に、以下の説明では、全ての実施例において、送水方向とは、水噴霧時における水の送給方向、すなわち、高圧ポンプ2から噴霧ノズル5へ向かう方向をいう。更に又、以下の全ての実施例において、同一のものには同一の符号が付してある。
【0037】
而して、実施例1では、第一の管路4には、逆止弁7の設置位置よりも送水方向下流側で、且つ、分岐管路6のうち送水方向最上流側の分岐管路6の接続位置よりも送水方向上流側において、アキュムレータとして機能する与圧タンク22が第二の管路23を介して接続されている。又、第一の管路4の第二の管路23に対する接続位置Aと、分岐管路6のうち送水方向最上流側の分岐管路6の接続位置Bとの間には、第一の開閉弁24が設けられている。
【0038】
又、水槽1と高圧ポンプ2を接続する第三の管路3には、逆流防止機構25と高圧ポンプ2との間において、第四の管路26を介してアキュムレータとして機能する膨張タンク27が接続され、第一の管路4には、第一の開閉弁24の設置位置よりも送水方向下流側で、且つ、分岐管路6のうち送水方向最上流側の分岐管路6の接続位置Bよりも送水方向上流側である接続位置Cにおいて、中途部に第二の開閉弁28を備えた第五の管路29が接続され、第五の管路29の先端は第四の管路26に接続されている。図中、30は制御器であり、該制御器30は一定湿度以下或は一定温度以上の条件下で行われる運転時に、適宜、高圧ポンプ2の起動、停止指令や第一の開閉弁24、第二の開閉弁28を開閉する指令を出力し得るようになっていると共に、タイマによってスケジュール運転を行うようになっている。
【0039】
次に、実施例1の作動を図2(a)〜(f)、図9をも参照しつつ説明する。
噴霧ノズル5から水Wの噴霧を行う場合は、第一の開閉弁24、第二の開閉弁28は何れも閉止させた状態で(図2(b)のi、図2(c)のii参照)、高圧ポンプ2を起動する(図2(a)のiii参照)。このため、水槽1の水Wは第三の管路3から高圧ポンプ2に導入され、加圧されて第一の管路4へ送出される。而して、第一の開閉弁24、第二の開閉弁28は閉止されているため、水Wは第一の管路4における第一の開閉弁24よりも下流側や、第五の管路29側延いては膨張タンク27には送給されず、その結果、最初の運転開始時やメンテナンス後の運転開始時には、水は第二の管路23から与圧タンク22に供給されて水圧は低圧から所定の圧力に達するまで所定時間を掛けて蓄圧される(図2(d)のiv参照)。この際、与圧タンク22に蓄圧される水圧は6Mpa程度である。又、第一の管路4の第一の開閉弁24よりも送水方向上流側の部分も、与圧タンク22と略同一の水圧となる。
【0040】
而して、高圧ポンプ2の起動後一定時間が経過して、与圧タンク22内が所定の圧力に蓄圧された状態になると(図2(d)のv参照)、第一の開閉弁24が開となり(図2(b)のvi参照)、高圧ポンプ2からの水圧と与圧タンク22に蓄圧されていた水圧は、第一の管路4における第一の開閉弁24よりも送水方向上流側から、第一の開閉弁24よりも送水方向下流側の第一の管路4を通って、噴霧ノズル5入側へ瞬時に作用する(図2(f)のvii参照)。このため、噴霧ノズル5の図9に示す弁体18は瞬時に開き、水Wは噴霧ノズル5から滴下することなくミストとして噴霧を開始される。又、高圧ポンプ2が運転されることにより、高圧ポンプ2の吸込み圧が管路26を介して膨張タンク27に作用するため、膨張タンク27内の圧力が低下する結果、膨張タンク27内は低圧(例えば、約0.2MPa)となる(図2(e)のviii参照)。
【0041】
噴霧が終了して高圧ポンプ2が停止すると(図2(a)のix参照)、第一の開閉弁24が閉止し(図2(b)のx参照)、しかる後、第二の開閉弁28が開く(図2(c)のxi参照。)。このため、第一の開閉弁24よりも送水方向下流側の第一の管路4内の水圧は第五の管路29を通り膨張タンク27に瞬時に逃げて当該膨張タンク27に蓄圧され(図2(e)のxii参照)、第一の開閉弁24よりも送水方向下流側の第一の管路4や分岐管路6内の圧力が低下する。この際、膨張タンク27への蓄圧圧力延いては噴霧ノズル5入側の水圧は、弁体18が開きはじめる圧力である1MPaよりも低い0.5MPa程度である。その結果、噴霧ノズル5の弁体18に作用する水圧は瞬時に下降し(図2(f)のxiii参照)、弾撥体19により噴霧ノズル5の弁体18は瞬時に閉止する。このため、実施例1においては、噴霧終了時においても、噴霧ノズル5から水が滴下することはない。
【0042】
又、高圧ポンプ2の停止時には、第一の開閉弁24が閉止するため、第一の管路4の逆止弁7から第一の開閉弁24までの間は圧力が低下せず、その結果、第二の管路23から与圧タンク22内の圧力も時間が経過しても低下することなく高圧に維持される(図2(d)のxiv参照)。従って、運転開始後やメンテナンス後の2回目の水の噴霧からは、高圧ポンプ2の起動時においては、与圧タンク22内には所定の水圧が蓄圧されている(図2(d)のxv参照)。その結果、与圧タンク22に蓄圧するための時間が省略されて、高圧ポンプ2が起動されたら直ちに第一の開閉弁24を開とすることが可能となるため、噴霧ノズル5からの水噴霧を迅速に開始することも可能となる。而して、本図示例によれば、水Wの噴霧開始時及び噴霧終了時において、噴霧ノズル5から水Wが滴下するのを防止することができる。
【実施例2】
【0043】
図3及び図4は本発明の水噴霧設備及び水噴霧設備の運転方法の実施例2であり、請求項2、5、7、8、15に係るものである。而して、実施例2では、図1の水噴霧設備の噴霧ノズル5、与圧タンク22、第一の開閉弁24、第二の開閉弁28、制御器30を複数系列設けると共に、各系列に第三の開閉弁31を設け、水噴霧設備を並列配置された第一噴霧系列、第二噴霧系列、・・・第N噴霧系列の複数系列とした例である。
【0044】
又、実施例2では、水槽1、第三の管路3、逆流防止機構25、高圧ポンプ2、逆止弁7の系統は、前記各実施形態例と同様の配置で、一系列であり、第一噴霧系列、第二噴霧系列・・・第N噴霧系列の何れの運転においても共通して使用される。而して、全系列に対しての共通ポンプである高圧ポンプ2の吐出側が接続された第六の管路4aは、高圧ポンプ2の出側において分岐されて、本例では並列な三系列に分かれ、第六の管路4aに並列接続された各第一の管路4には、送水方向上流側から下流側に向けて順次、第三の開閉弁31、第一の開閉弁24が設けられ、各第一の管路4の第一の開閉弁24よりも送水方向下流側には、並列接続された複数の分岐管路6を介して噴霧ノズル5が接続されている。
【0045】
各噴霧系列の第一の管路4における第三の開閉弁31と第一の開閉弁24との間には、第二の管路23を介して与圧タンク22が接続され、第一の管路4における第一の開閉弁24接続部よりも水噴霧時における送水方向下流側には、中途部に第二の開閉弁28を備えた第五の管路29が接続されている。又、第五の管路29は、第二の開閉弁28の出側において第七の管路29aに合流し、第七の管路29aは、先端に膨張タンク27が設けられた第四の管路26を介し、高圧ポンプ2入り側の第三の管路3に接続されている。又、膨張タンク27は、図3に示すように、高圧ポンプ2側に設ける他に、高圧ポンプ2から離反した系列の水噴霧設備側においては、第七の管路29aの端部に直接接続する。
【0046】
32は第六の管路4aと第七の管路29aとを接続する管路33の中途部に接続された圧力制御弁である。更に、34は制御器であって、何れかの系列において水噴霧設備の運転を行う場合は、高圧ポンプ2に起動指令を与えると共に、全ての系列で水の噴霧を行わない場合は、高圧ポンプ2に停止指令を与え得るようになっており、しかも、高圧ポンプ2に起動、停止指令を出力した場合は、各系列の水噴霧設備における制御器30に対しその旨の指令を与え得るようになっている。
【0047】
又、制御器30は、一定湿度以下或は一定温度以上の条件の下で行われる運転時に、適宜、第一の開閉弁24、第二の開閉弁28、第三の開閉弁31を開閉する指令を出力し得るようになっていると共に、タイマによってスケジュール運転を行うようになっている。
【0048】
次に、実施例2の作動を図4(a)〜(f)、図9をも参照しつつ説明する。なお、本図示例においては、何れかの噴霧系列において水Wの噴霧を行っている場合、共通ポンプである高圧ポンプ2は停止することなく連続運転となる。
【0049】
例えば、第一噴霧系列の水噴霧設備で水Wの噴霧を行い、第二噴霧系列、・・・第N噴霧系列の水噴霧設備では水Wの噴霧を行わない場合、第一噴霧系列の水噴霧設備においても、最初は第三の開閉弁31、第一の開閉弁24、第二の開閉弁28は閉止されている。又、第二噴霧系列、・・・第N噴霧系列の水噴霧設備においても、第三の開閉弁31、第一の開閉弁24、第二の開閉弁28は何れも閉止されている。
【0050】
而して、第一系列において第三の開閉弁31が開くと(図4(c)のxvi参照)、水槽1から第三の管路3を通り高圧ポンプ2に導入された水Wは、加圧されて高圧ポンプ2から第六の管路4aへ送出され、第六の管路4aから第一噴霧系列の第一の管路4へ送給され、第一の管路4から第二の管路23を介して与圧タンク22に蓄圧される。最初の運転開始時やメンテナンス後の運転開始時には、与圧タンク22に蓄圧される水圧は低圧から所定の圧力に達するまで所定時間を掛けて蓄圧される(図4(d)のxvii参照)。
【0051】
而して、与圧タンク22に所定の蓄圧が行われると第一の開閉弁24が開くため(図4(a)のxviii参照)、高圧ポンプ2からの水W及び蓄圧されていた与圧タンク22からの水Wの水圧は、第一の管路4、分岐管路6から瞬時に噴霧ノズル5の入側に作用し(図4(f)のxix参照)、噴霧ノズル5の弁体18は瞬時に開く。このため、水Wは噴霧ノズル5から滴下することなくミストとして噴霧を開始される。又、高圧ポンプ2が運転されることにより、高圧ポンプ2の吸込み圧が第四の管路26、又は、第四の管路26と第七の管路29aを介して、2個の膨張タンク27に作用するため、膨張タンク27内の圧力が低下する結果、膨張タンク27内は低圧(例えば、約0.2MPa)となる(図4(e)のxx参照)。
【0052】
噴霧が終了すると、第一の開閉弁24及び第三の開閉弁31が閉止し(図4(a)のxxi、図4(c)のxxii参照)、第二の開閉弁28が開く(図4(b)のxxiii参照)。このため、第一噴霧系列においては、第一の管路4の第一の開閉弁24よりも送水方向下流側や分岐管路6内の水圧は、瞬時に下降し、第五の管路29及び第七の管路29aから膨張タンク27に蓄圧される(図4(e)のxxiv参照)。その結果、噴霧ノズル5の弁体18の入側に作用する水圧は瞬時に下降し(図4(f)のxxv参照)、弾撥体19により噴霧ノズル5の弁体18は瞬時に閉止する。このため、本形態例においては、噴霧の終了時にも噴霧ノズル5から水が滴下することはない。噴霧ノズル5の弁体18が閉止して所定時間経過したら、第二の開閉弁28も閉止される(図4(b)のxxvi参照)。
【0053】
又、噴霧終了時には、第一の開閉弁24、第三の開閉弁31が閉止されるため、与圧タンク22の水圧は下降せず、高圧の状態を維持する(図4(d)のxxvii参照)。このため、運転開始後やメンテナンス後の2回目以降の水の噴射の場合には、与圧タンク22は蓄圧された状態(図4(d)のxxviii参照)で運転を開始することができる。その結果、与圧タンク22に蓄圧するための時間が省略されて、噴霧ノズル5からの水噴霧を迅速に開始することも可能となる。而して、本図示例によれば、水Wの噴霧開始時及び噴霧終了時において、噴霧ノズル5から水Wが滴下するのを防止することができる。
【0054】
上記実施例2では、第一噴霧系列の水噴霧設備により噴霧を行なう場合について説明しているが、同時に複数系列の水噴霧設備により噴霧を行うようにすることもできる。この場合は、上述の第一噴霧系列の場合と同様に運転が行われる。又、例えば、図3に示す水噴霧設備の場合、第N噴霧系列の水噴霧設備は、図の右側に示す膨張タンク27に近接しており、水圧はこの右側の膨張タンク27に、より短時間で圧力伝播されるため、噴霧の終了時には、第N噴霧系列の水圧は図の右側に示されている膨張タンク27に吸収されることになり、第N噴霧系列においても噴霧ノズル5からの水Wの滴下を確実に防止することができる。
【0055】
噴霧されている系列が少なくて、高圧ポンプ2から第六の管路4aへ吐出される水Wが過剰な場合には、水Wは圧力調整弁32を通って管路33、第七の管路29a、第四の管路26から第三の管路3側へ戻される。
【実施例3】
【0056】
図5及び図6は、本発明の水噴霧設備及び水噴霧設備の運転方法の実施例3で、図3に示す実施例の変形例であり、請求項3、5、9、10、11、15に係るものである。図中、図3と同一のものには同一の符号が付してある。
【0057】
而して、実施例3の特徴とするところは、前述の図3の実施例2においては、各噴霧系列の第一の管路4には、与圧タンク22に接続された第二の管路23の第一の管路4に対する接続位置Aよりも送水方向上流側において、第三の開閉弁31を設けているのに対し、本実施例3では、何れの第一の管路4に対しても第三の開閉弁31を設けないようにした点であり、それ以外の点においては図3の実施例2と同じである。
【0058】
次に、実施例3の作動を図6(a)〜(e)、図9をも参照しつつ説明する。例えば、最初の運転開始前やメンテナンス後の運転開始前には、高圧ポンプ2が停止していると共に、全ての噴霧系列において、第一の開閉弁24、第二の開閉弁28は閉止しており、全ての噴霧系列の与圧タンク22は低圧の状態になっている。
【0059】
而して、最初の運転開始時やメンテナンス後の運転開始時に高圧ポンプ2が起動されると、高圧ポンプ2から吐出された水Wは、第六の管路4aから全ての噴霧系列の第一の管路4に送給されるため、全ての系列において、水Wは第一の管路4から第二の管路23を経て与圧タンク22に送給され、蓄圧が開始される。高圧ポンプ2が起動されて与圧タンク22に蓄圧される水圧は、低圧から所定の圧力に達するまで所定時間を掛けて蓄圧される(図6(c)のxxix参照)。高圧ポンプ2は何れかの噴霧系列で噴霧を行っている間は、停止することなく連続して駆動される。
【0060】
与圧タンク22に所定の水圧が蓄圧されたら、水の噴霧を行う所定の噴霧系列、例えば第一噴霧系列の第一の開閉弁24を開く(図6(a)のxxx参照)。そうすると、高圧ポンプ2からの水Wの水圧及び全ての噴霧系列の与圧タンク22に蓄圧されていた水圧は瞬時に、当該噴霧系列の第一の開閉弁24が開かれた第一の噴霧系列の噴霧ノズル5の入側に作用し(図6(e)のxxxi参照)、このため、噴霧ノズル5の弁体18は瞬時に開き、水Wは噴霧ノズル5から滴下することなくミストとして噴霧を開始される。
【0061】
又、高圧ポンプ2の運転が開始されることにより、高圧ポンプ2の吸込み圧が第四の管路26、或は、第四の管路26、第七の管路29aを介して2個の膨張タンク27に作用するため、各膨張タンク27内の圧力が低下する結果、膨張タンク27内は低圧(例えば、約0.2Mpa)となる(図6(d)のxxxii参照)。
【0062】
第一の噴霧系列において噴霧が終了すると、当該系列の第一の開閉弁24が閉止される(図6(a)のxxxiii参照)。又、第一の開閉弁24が閉止されたら、第一噴霧系列の第二の開閉弁28が開く(図6(b)のxxxiv参照)。このため、第一噴霧系列においては、分岐管路6、第一の管路4の第一の開閉弁24接続位置よりも送水方向下流側の水Wの水圧は、瞬時に下降して第五の管路29、第七の管路29aから、或は第五の管路29、第七の管路29a、第四の管路26から、膨張タンク27に蓄圧される(図6(d)のxxxv参照)。その結果、噴霧ノズル5の弁体18の入側に作用する水圧は瞬時に下降し(図6(e)のxxxvi参照)、弾撥体19により噴霧ノズル5の弁体18は瞬時に閉止する。このため、実施例3においても、噴霧の終了時に噴霧ノズル5から水が滴下することはない。噴霧ノズル5の弁体18が閉止したら第二の開閉弁28も閉止する(図6(b)のxxxvii参照)。
【0063】
高圧ポンプ2が起動されたら、全ての噴霧系列での水の噴霧が終了するまでは、高圧ポンプ2は連続運転されているため、第2回目以降の水Wの噴霧時には全ての噴霧系列の与圧タンク22は蓄圧された状態にある(図6(c)のxxxviii参照)。
【実施例4】
【0064】
図7は、本発明の水噴霧設備及び水噴霧設備の運転方法の実施例4で、図5に示す実施例3の変形例であり、請求項4、5、12、13、14、15に係るものである。図中、図5と同一のものには同一の符号が付してある。
【0065】
而して、前述の図5の実施例3においては、全ての噴霧系列で、第一の管路4に対して第三の開閉弁31を設けないようにしているが、全ての噴霧系列で、第一の管路4aには第二の管路23を介して与圧タンク22が接続されている。しかし、本実施例4においては、図5の場合と同様、全ての噴霧系列において、第一の管路4に対して第三の開閉弁31を設けないようにすると同時に、全ての噴霧系列の第一の管路4から第二の管路23や与圧タンク22を撤去し、第六の管路4aの管路33接続位置よりも送水方向下流側で第一噴霧系列に近接した位置、及び第六の管路4aの高圧ポンプ2側から最も離反した第N噴霧系列側において、第六の管路4aに接続された第二の管路23と第二の管路23に接続された与圧タンク22とを設けている。
【0066】
斯かる構成とした場合の水Wの噴霧時の第一の開閉弁24及び第2の開閉弁28の開閉のタイミングは図6の場合と同様であり、これに伴う与圧タンク22、膨張タンク27の圧力の変化の状態、噴霧ノズル5入側の圧力の変化の状態も図6の場合と同様である。而して、この実施形態例においても、水Wの噴霧開始時及び終了時の何れにおいても、噴霧ノズル5からの水の滴下を防止することができる。
【0067】
上記実施例3,4においても、第一噴霧系列の水噴霧設備により噴霧を行う場合について説明しているが、同時に複数系列の水噴霧設備により噴霧を行うようにもできる。その場合は、噴霧を行う全ての噴霧系列において、第一及び第二の開閉弁の開閉が行われる。
【0068】
なお、本発明の実施例においては、図示されている膨張タンク27は密閉式のタンクであるが、内部が大気に開放された開放式のタンクとしても実施できること(この場合、水槽1からの給水圧力は0.2MPa程度であるため、管路3の内周底部から開放式のタンク水面までの高さは20m程度となる。)、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えうることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
2 高圧ポンプ(ポンプ)(共通ポンプ)
3 第三の管路
4 第一の管路
4a 第六の管路
5 噴霧ノズル
18 弁体
19 弾撥体
20 感圧逆止弁
22 与圧タンク
23 第二の管路
24 第一の開閉弁
26 第四の管路
27 膨張タンク
28 第二の開閉弁
29 第五の管路
29a 第七の管路
31 第三の開閉弁
W 水
A 接続位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプから第一の管路を介して送水された水を噴霧する感圧逆止弁を有する噴霧ノズルと、
前記第一の管路に第二の管路を介して接続された与圧タンクと、
前記第一の管路における前記噴霧ノズルよりも送水方向上流側で且つ第二の管路接続位置よりも送水方向下流側に設けられた第一の開閉弁と、
前記ポンプの入側に接続された第三の管路に第四の管路を介して接続された膨張タンクと、
前記第一の開閉弁よりも送水方向下流側において第一の管路に接続されると共に前記第四の管路に接続された第五の管路、に設けられた第二の開閉弁とを備えた
ことを特徴とする水噴霧設備。
【請求項2】
共通ポンプから送水された水を噴霧し得るようにした複数の噴霧系列を備え、
各噴霧系列は、
前記共通ポンプから第六の管路を介して分岐された第一の管路を通り送水された水を噴霧する感圧逆止弁を有する噴霧ノズルと、
前記第一の管路に第二の管路を介して接続された与圧タンクと、
前記第一の管路における前記噴霧ノズルよりも送水方向上流側で且つ第二の管路接続位置よりも送水方向下流側に設けられた第一の開閉弁と、
前記第一の管路において第二の管路の接続位置よりも送水方向上流側に設けられた第三の開閉弁とを備え、
前記共通ポンプの入側に接続された第三の管路に第四の管路を介して接続された膨張タンク側と、前記各噴霧系列の第一の管路における第一の開閉弁接続位置よりも送水方向下流側とは、第二の開閉弁を有する第五の管路及び第五の管路を集合させた第七の管路を介し接続されていることを特徴とする水噴霧設備。
【請求項3】
共通ポンプから送水された水を噴霧し得るようにした複数の噴霧系列を備え、
各噴霧系列は、
前記共通ポンプから、第六の管路を介して分岐された第一の管路を通り送水された水を噴霧する感圧逆止弁を有する噴霧ノズルと、
前記第一の管路に第二の管路を介して接続された与圧タンクと、
前記第一の管路における前記噴霧ノズルよりも送水方向上流側で且つ第二の管路接続位置よりも送水方向下流側に設けられた第一の開閉弁とを備え、
前記共通ポンプの入側に接続された第三の管路に第四の管路を介して接続された膨張タンク側と、前記各噴霧系列の第一の管路における第一の開閉弁接続位置よりも送水方向下流側とは、第二の開閉弁を有する第五の管路及び第五の管路を集合させた第七の管路を介し接続されていることを特徴とする水噴霧設備。
【請求項4】
共通ポンプから送水された水を噴霧し得るようにした複数の噴霧系列を備え、
各噴霧系列は、
前記共通ポンプから、第六の管路を介して分岐された第一の管路を通り送水された水を噴霧する感圧逆止弁を有する噴霧ノズルと、
前記第六の管路に第二の管路を介して接続された与圧タンクと、
前記第一の管路における前記噴霧ノズルよりも送水方向上流側に設けられた第一の開閉弁とを備え、
前記共通ポンプの入側に接続された第三の管路に第四の管路を介して接続された膨張タンク側と、前記各噴霧系列の第一の管路における第一の開閉弁接続位置よりも送水方向下流側とは、第二の開閉弁を有する第五の管路及び第五の管路を集合させた第七の管路を介し接続されていることを特徴とする水噴霧設備。
【請求項5】
噴霧ノズルの感圧逆止弁は、弾撥体と該弾撥体により押圧されて閉止される弁体とを備え、弁体は前記第一の管路からの水圧により、弾撥体の抗力に抗して開くよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の水噴霧設備。
【請求項6】
請求項1に記載の水噴霧設備の運転方法であって、
水の噴霧を開始する際には、ポンプにより予め与圧タンクに所定の水圧を蓄圧しておいた後、第一の開閉弁を開いて、ポンプにより与圧タンクに蓄圧されている水圧及びポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を開くことで水の噴霧を開始し、
水の噴霧を終了する際には、ポンプを停止すると共に、第一の開閉弁を閉止し且つ第二の開閉弁を開いて第一の開閉弁設置位置よりも送水方向下流側の第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させることを特徴とする水噴霧設備の運転方法。
【請求項7】
請求項2に記載の水噴霧設備の運転方法であって、
複数の噴霧系列のうち水の噴霧を行っている所定の噴霧系列において水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行なっていない系列の第一の開閉弁及び第三の開閉弁は閉止しておき、共通ポンプが運転されている状態で水の噴霧を終了する系列の第一の開閉弁及び第三の開閉弁を閉止すると共に、当該系列の第二の開閉弁を開いて第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させることを特徴とする水噴霧設備の運転方法。
【請求項8】
請求項2に記載の水噴霧設備の運転方法であって、
複数の噴霧系列のうち所定の噴霧系列において水の噴霧を開始する際には、水の噴霧を行わない系列の第一の開閉弁及び第三の開閉弁は閉止しておき、共通ポンプが運転されている状態で水の噴霧を開始する系列の第二の開閉弁は閉止したまま当該系列の第三の開閉弁及び第一の開閉弁を開いて当該系列の与圧タンクに蓄圧されている水圧及び共通ポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を開くことで水の噴霧を開始し、
水の噴霧を行っている当該噴霧系列において水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行なっていない系列の第一の開閉弁及び第三の開閉弁は閉止しておき、共通ポンプが運転されている状態で水の噴霧を終了する系列の第一の開閉弁及び第三の開閉弁を閉止すると共に、当該系列の第二の開閉弁を開いて第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させることを特徴とする水噴霧設備の運転方法。
【請求項9】
請求項3に記載の水噴霧設備の運転方法であって、
複数の噴霧系列のうち所定の噴霧系列において水の噴霧を開始する際には、共通ポンプにより全ての噴霧系列の与圧タンクに予め所定の水圧を蓄圧しておき、全ての噴霧系列の第二の開閉弁を閉止したまま噴霧を開始する噴霧系列の第一の開閉弁を開き、共通ポンプにより与圧タンクに蓄圧されている水圧及び共通ポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に当該噴霧系列の噴霧ノズルの感圧逆止弁を開いて水の噴霧を開始することを特徴とする水噴霧設備の運転方法。
【請求項10】
請求項3に記載の水噴霧設備の運転方法であって、複数の噴霧系列のうち水の噴霧を行っていた噴霧系列において水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行っていた噴霧系列の第一の開閉弁を閉止し且つ当該噴霧系列の第二の開閉弁を開いて、第一の開閉弁設置位置よりも送水方向下流側の第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより、噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させることを特徴とする水噴霧設備の運転方法。
【請求項11】
請求項3に記載の水噴霧設備の運転方法であって、
複数の噴霧系列のうち所定の噴霧系列において水の噴霧を開始する際には、共通ポンプにより全ての噴霧系列の与圧タンクに予め所定の水圧を蓄圧しておき、全ての噴霧系列の第二の開閉弁を閉止したまま噴霧を開始する噴霧系列の第一の開閉弁を開き、共通ポンプにより与圧タンクに蓄圧されている水圧及び共通ポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に当該噴霧系列の噴霧ノズルの感圧逆止弁を開いて水の噴霧を開始し、
水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行っていた噴霧系列の第一の開閉弁を閉止し且つ当該噴霧系列の第二の開閉弁を開いて、第一の開閉弁設置位置よりも送水方向下流側の第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより、噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させることを特徴とする水噴霧設備の運転方法。
【請求項12】
請求項4に記載の水噴霧設備の運転方法であって、
複数の噴霧系列のうち所定の噴霧系列において水の噴霧を開始する際には、共通ポンプにより与圧タンクに予め所定の水圧を蓄圧しておき、全ての噴霧系列の第二の開閉弁を閉止したまま噴霧を開始する噴霧系列の第一の開閉弁を開き、共通ポンプにより与圧タンクに蓄圧されている水圧及び共通ポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に当該噴霧系列の噴霧ノズルの感圧逆止弁を開いて水の噴霧を開始することを特徴とする水噴霧設備の運転方法。
【請求項13】
請求項4に記載の水噴霧設備の運転方法であって、
複数の噴霧系列のうち水の噴霧を行っていた噴霧系列において水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行っていた噴霧系列の第一の開閉弁を閉止し且つ当該噴霧系列の第二の開閉弁を開いて、第一の開閉弁設置位置よりも送水方向下流側の第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより、噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させることを特徴とする水噴霧設備の運転方法。
【請求項14】
請求項4に記載の水噴霧設備の運転方法であって、
複数の噴霧系列のうち所定の噴霧系列において水の噴霧を開始する際には、共通ポンプにより与圧タンクに予め所定の水圧を蓄圧しておき、全ての噴霧系列の第二の開閉弁を閉止したまま噴霧を開始する噴霧系列の第一の開閉弁を開き、共通ポンプにより与圧タンクに蓄圧されている水圧及び共通ポンプからの水圧を掛けることにより、瞬時に当該噴霧系列の噴霧ノズルの感圧逆止弁を開いて水の噴霧を開始し、
水の噴霧を終了する際には、水の噴霧を行っていた噴霧系列の第一の開閉弁を閉止し且つ当該噴霧系列の第二の開閉弁を開いて、第一の開閉弁設置位置よりも送水方向下流側の第一の管路の圧力を膨張タンクに逃がすことにより、噴霧ノズルの感圧逆止弁に対する水圧を急低下させ、瞬時に噴霧ノズルの感圧逆止弁を閉止させることを特徴とする水噴霧設備の運転方法。
【請求項15】
噴霧ノズルの感圧逆止弁は、第一の管路の水圧が所定の値よりも高い場合は、弁体は弾撥体の弾撥力に抗して開き、第一の管路の水圧が所定の値よりも低い場合は、弁体が弾撥体に押圧されて閉止される請求項6乃至14の何れかに記載の水噴霧設備の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−230238(P2010−230238A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78078(P2009−78078)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【Fターム(参考)】