説明

水崩壊性ブロック共重合体の製造方法、および該方法により得られる水崩壊性ブロック共重合体

【課題】空気中では一定の形態を保持し、一定量の水分を吸収することも可能でありながら、大量の水中においては速やかな分解性(水崩壊性)を有する新たなプラスチック素材として使用可能なブロック共重合体を製造する方法を提供すること。
【解決手段】下記(a)、(b)、および(c)を反応させることを特徴とする水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。(a):下記(a1)および/または(a2)
(a1):ポリアルキレングリコール(a2):ポリアルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られる両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステル(b):ポリオキシアルキレン基を含まない両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステル(c):水酸基と反応する官能基を複数有する連鎖延長剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水崩壊性ブロック共重合体の製造方法、および該方法により得られる水崩壊性ブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のプラスチックはその優れた耐久性ゆえに、自然環境下において容易に分解されることがない。
そのため、環境問題の観点から、使用している間は一定の形態を保ち、使用後は自然環境下で速やかに分解するプラスチックの開発が求められている。
【0003】
分解性プラスチックの一種として、自然環境下(多くの場合土中)の微生物による分解性、いわゆる「生分解性」を有するプラスチックとして、脂肪族ポリエステルは従来知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平07−304839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら従来の脂肪族ポリエステルは、土中や活性汚泥中では一定の分解性能を発揮するものの、水環境下、すなわち水中における速やかな分解を望む用途に対しては、十分な分解性能を発揮するものではなかった。
【0005】
本発明は、空気中では一定の形態を保持し、一定量の水分を吸収することも可能でありながら、大量の水中における速やかな分解性(水崩壊性)を有する新たなプラスチック素材として使用可能なブロック共重合体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を行った結果、下記特定の製造方法によって製造されるブロック共重合体は、空気中では一定の形態を保持し、一定量の水分を吸収することも可能でありながら、大量の水中における速やかな分解性(水崩壊性)を有する新たなプラスチック素材として使用可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、下記(a)、(b)、および(c)を反応させることを特徴とする水崩壊性ブロック共重合体の製造方法である。
(a):下記(a1)および/または(a2)
(a1):ポリアルキレングリコール
(a2):ポリアルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られる両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステル
(b):ポリオキシアルキレン基を含まない両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステル
(c):水酸基と反応する官能基を複数有する連鎖延長剤
前記(a)が下記一般式(1)で表される構成単位を有し、(b)が下記一般式(2)で表される構成単位を有する(ただし、下記一般式(1)および(2)において、n+m≧3である)ことが好ましい。
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)中、nは1以上の整数であり、lは0または1であり、Aは数平均分子量300〜20,000のポリアルキレングリコール由来の構成単位であり、G1は炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式(2)中、mは1以上の整数であり、kは0または1であり、Eは炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり、G2は酸素原子または下記一般式(3)である。)
【0012】
【化3】

【0013】
(式(3)中、G3は炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。)
前記(a)がポリエチレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られる両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステルであり、
(b)が両末端に水酸基を有するポリブチレンアジペート、または両末端に水酸基を有するポリエチレンブチレンアジペートであってもよい。
【0014】
前記(a)がポリエチレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られる両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステルであり、
(b)が両末端に水酸基を有するポリブチレンサクシネートであってもよい。
【0015】
前記(a)、(b)、および(c)を、分散剤を含有する有機溶媒中で反応させることが好ましい。
前記(a)がポリエチレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られる両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステルであり、
(b)が両末端に水酸基を有するポリエチレンカーボネートであり、
(a)、(b)、および(c)を、分散剤を含有する有機溶媒中で反応させることが好ましい。
【0016】
前記(a)と(b)とを重量比((a):(b))が100:1〜100:100となる量で混合し、(a)と(b)との合計100重量部に対し(c)を0.5〜10重量部加えて反応させることが好ましい。
【0017】
前記脂肪族ジカルボン酸がコハク酸であることが好ましい。
前記分散剤が、分岐状ポリオレフィンユニットと脂肪族ポリエステルユニットとを有する樹脂であることが好ましい。
【0018】
前記分散剤が、下記(i)〜(iv)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
(i)アルケニル無水コハク酸とポリオールとの脱水縮合で得られるポリオールの水酸基をマスキングした樹脂
(ii)ジカルボン酸とペンタエリスリトールとを脱水縮合させたポリエステルの残水酸基の一部に脂肪酸を脱水縮合させたアルキッド樹脂
(iii)不飽和結合含有ジカルボン酸とポリオールとの脱水縮合で得られるポリオールの水酸基の一部が残存する樹脂にエチレン性不飽和単量体をグラフト重合させた後、残存する水酸基をマスキングした樹脂
(iv)不飽和結合含有ジカルボン酸とポリオールとの脱水縮合で得られるポリオールの水酸基の一部が残存する樹脂の残存する水酸基をマスキングした後、エチレン性不飽和単量体をグラフト重合させた樹脂
前記水酸基と反応する官能基を複数有する連鎖延長剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートまたは二塩化アジポイルであることが好ましい。
【0019】
本発明には、上記製造方法によって製造される水崩壊性ブロック共重合体を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によって、従来にない水中における速やかな分解性能を有する新たなプラスチック素材である水崩壊性ブロック共重合体の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<水崩壊性ブロック共重合体の製造方法>
本発明の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法は、下記(a)、(b)、および(c)を反応させることを特徴とする。
【0022】
(a):下記(a1)および/または(a2)
(a1):ポリアルキレングリコール
(a2):ポリアルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られる両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステル
(b):ポリオキシアルキレン基を含まない両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステル
(c):水酸基と反応する官能基を複数有する連鎖延長剤
本発明に用いられる(a)は(a1)および/または(a2)で表されるいずれのものであってもよい。
【0023】
(a)としては、下記一般式(1)で表されるも構成単位を有することが好ましい。
【0024】
【化4】

【0025】
(式(1)中、nは1以上の整数であり、lは0または1であり、Aは数平均分子量300〜20,000のポリアルキレングリコール由来の構成単位であり、G1は炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。)
本発明に用いる(a)は、好ましくは上記式(1)で表される構成単位を有するが、中でもnは1〜50が好ましい。
【0026】
(a1)のポリアルキレングリコールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、またはこれらの混合物などが挙げられる。ポリアルキレングリコールの数平均分子量は300〜20,000であり、好ましくは400〜5,000、より好ましくは500〜2,000である。ポリアルキレングリコールとしては、特に限定されるものではないが、親水性、分解性の面からポリエチレングリコールが好ましい。
【0027】
(a2)の両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステルは、ポリアルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られるが、該ポリアルキレングリコールとしては、前記(a1)と同様のものが用いられる。
【0028】
また脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、またはこれらの混合物などが挙げられる。また、これらの脂肪族ジカルボン酸の無水物を用いることもできる。
【0029】
脂肪族ジカルボン酸またはその無水物としては、特に限定されるものではないがコハク酸または無水コハク酸が好ましい。
本発明に用いる(a)としては、ポリエチレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られる両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステルであることが生分解性の点で好ましい。
【0030】
ポリアルキレングリコールと、脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応は公知の方法を用いることができるが、両末端を水酸基とするためには、水酸基量/カルボキシル基の量比(モル比)が1.05〜1.50の範囲、好ましくは1.10〜1.30の範囲とする。1.05より小さいと、未反応のカルボン酸基の残存によって後工程でのブロック共重合反応に悪影響を及ぼす可能性があり好ましくない。また1.50より大きいと、得られる脂肪族ポリエステルの分子量が低くなることによって吸水性や強度の低下等、物性に悪影響を及ぼす可能性があり好ましくない。
【0031】
本発明に用いられる(b)は、ポリオキシアルキレン基を含まない両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステルであればいずれのものであってもよいが、例えば脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸から得られる脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0032】
(b)としては、下記一般式(2)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0033】
【化5】

【0034】
(式(2)中、mは1以上の整数であり、kは0または1であり、Eは炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり、G2は酸素原子または下記一般式(3)である。)
【0035】
【化6】

【0036】
(式(3)中、G3は炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。)
本発明に用いる(b)は、好ましくは上記式(2)で表される構成単位を有するが、中でもmは5〜150が好ましい。
なお、本発明に用いる(a)が上記一般式(1)で表されるも構成単位を有し、かつ(b)が上記一般式(2)で表されるも構成単位を有する場合には、一般式(1)および(2)において、n+m≧3であることが好ましく、200≧n+m≧6であることがより好ましい。n+mが上記関係を満たすと吸水性と水崩壊性が両立可能である。
【0037】
上記EおよびG3はそれぞれ独立に炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であるが、好ま
しくは炭素数2〜10の脂肪族炭化水素基である。
(b)が脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸から得られる脂肪族ポリエステルの場合、脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0038】
前記脂肪族ジオールとしては、特に限定されるものではないが、最終的な水崩壊性ブロック共重合体の水崩壊性および吸水性の面からエチレングリコール、テトラメチレングリコール、またはこれらの混合物が好ましい。
【0039】
脂肪族ジカルボン酸の例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、またはこれらの混合物などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の無水物を使用しても何ら差し支えない。特に限定されるものではないがコハク酸、アジピン酸が好ましい。
【0040】
エステル化反応は公知の方法を用いることができるが、前記(a2)と同様、両末端を水酸基とするため、水酸基量/カルボキシル基の量比(モル比)が1.05〜1.50の範囲、好ましくは1.10〜1.30の範囲とする。1.05より小さいと、未反応のカルボン酸基の残存によって後工程でのブロック共重合反応に悪影響を及ぼす可能性があり好ましくない。また1.50より大きいと、得られる脂肪族ポリエステルの分子量が低くなることによって吸水性や強度の低下等、物性に悪影響を及ぼす可能性があり好ましくな
い。
【0041】
(b)が脂肪族ポリカーボネートの場合、例えばポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、またはこれらの混合物などが挙げられる。特に限定されるものではないがポリエチレンカーボネートが好ましい。脂肪族ポリカーボネートの製造方法は公知の方法を用いることができるが、後の工程での分散性向上のためには、脂肪族ポリカーボネートは低分子量であること、具体的には、数平均分子量が50,000以下、好ましくは300〜30,000であることが望ましい。また100,000以上の高分子量体を加水分解により低分子量化させたものを使用することもできる。
【0042】
(b)が脂肪族ポリ(ヒドロキシカルボン酸)の場合、原料となるヒドロキシカルボン酸の例として、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒド
ロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸、またはこれらの混合物などが挙げられる。光学活性体がある場合にはいずれの光学活性体を用いても良い。
【0043】
特に限定されるものではないが、(b)はポリブチレンアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンカーボネートが好ましい。
本発明に用いられる(c)は、水酸基と反応する官能基を複数有する連鎖延長剤である。連鎖延長剤が有する水酸基と反応する官能基とは、前記(a)および(b)それぞれの両末端水酸基と結合して高分子鎖を延長させるものであれば特に限定されないが、前記結合はエステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合であることが好ましい。
【0044】
結合がエステル結合になるものとしては、分子内に2つの酸クロリド基を有する、二塩化オキサリル、二塩化スクシニル、二塩化アジポイル、二塩化セバコイル、二塩化ドデカンジオイル等が挙げられる。他にN,N’−アシルビスラクタム化合物として、N,N’−サクシルビスカプロラクタム、N,N’−アジピルビスブチロラクタム、N,N’−スベリルビスカプロラクタム、N,N’−サクシルビスピペリドン、N,N’−アジピルビスピペリドン等が挙げられる。さらに脂肪族ジカルボン酸ジアリールエステルとして、コハク酸ジフェニル、グルタル酸ジフェニル、アジピン酸ジフェニル、セバシン酸ジフェニル等が挙げられる。
【0045】
結合がカーボネート結合になるものとしては、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0046】
結合がウレタン結合になるものとしては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート等が挙げられる。ウレタン反応の場合は必要に応じて触媒としてジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)等の一般的なウレタン反応触媒を用いることもできる。
【0047】
特に限定されるものではないが、(c)はヘキサメチレンジイソシアネート、二塩化アジポイルが好ましい。
連鎖延長剤(c)で(a)と(b)とを結合させる際、(c)の官能基量/総水酸基量の比は生成するブロック共重合体の分子量に影響する。この比が1.0に近いほど高分子量のものが得られ、機械的強度や分散性向上の面から比が0.925〜1.075の範囲であることが好ましい。
【0048】
本発明の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法としては、上記(a)と(b)とを重量
比((a):(b))が100:1〜100:100となる量で混合し、(a)と(b)との合計100重量部に対し(c)を0.5〜10重量部加えて反応させることが好ましい。以下に例を挙げて説明する。
【0049】
攪拌装置、原料導入機構、温度制御機構を有する反応容器内を不活性ガスで置換する。(a)と(b)とを反応容器へ仕込む。このとき、(a)と(b)とを重量比((a):(b))が好ましくは100:1〜100:100となる量、より好ましくは100:3〜100:50となる量とする。
【0050】
(a)と(b)とが溶融した後、容器内を攪拌しつつ連鎖延長剤(c)を反応容器へ導入する。導入量は、(a)と(b)との合計100重量部に対し(c)を0.1〜10重量部であることが好ましい。導入方法は特に限定するものではなく、連続的に導入しても断続的に導入してもよい。溶融状態で反応させてもよいが、好ましくはその後有機溶媒および分散剤を仕込み、(a)、(b)および(c)を、分散剤を含有する有機溶媒中で反応させる。
【0051】
本発明の製造方法に用いる有機溶媒としては、得られる水崩壊性ブロック共重合体の溶解度が小さな有機溶媒が好ましく、例えば脂肪族炭化水素、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、および芳香族溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒であることが好ま
しい。
【0052】
具体的には、脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ペンタン、シクロヘキサンなどの炭素数が3〜20である脂肪族炭化水素が挙げられ、エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミルなどの炭素数が3〜20である各種エステル類や、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネト等の炭素数が3〜20である各種アルコキシ基を有するエステル類などが挙げられ、ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノンなどの炭素数が3〜20であるケトン系溶媒が挙げられ、芳香族溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭素数が6〜20である芳香族溶媒を挙げることができる。中でも、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、などの脂肪族炭化水素がポリマー分散性の向上のため好ましい。
【0053】
本発明で用いる分散剤とは、上述した有機溶媒に溶解し、得られる水崩壊性ブロック共重合体を安定して分散させる効果を有するものである。
分散剤としては、分岐状ポリオレフィンユニットと脂肪族ポリエステルユニットとを有する樹脂であることが好ましい。
【0054】
本発明に用いる分散剤としては、下記(i)〜(iv)からなる群から選ばれる少なくと
も1種の樹脂が好ましい。
【0055】
(i)アルケニル無水コハク酸とポリオールとの脱水縮合で得られるポリオールの水酸基をマスキングした樹脂
(ii)ジカルボン酸とペンタエリスリトールとを脱水縮合させたポリエステルの残水酸基の一部に脂肪酸を脱水縮合させたアルキッド樹脂
(iii)不飽和結合含有ジカルボン酸とポリオールとの脱水縮合で得られるポリオールの水酸基の一部が残存する樹脂にエチレン性不飽和単量体をグラフト重合させた後、残存する水酸基をマスキングした樹脂
(iv)不飽和結合含有ジカルボン酸とポリオールとの脱水縮合で得られるポリオール
の水酸基の一部が残存する樹脂の残存する水酸基をマスキングした後、エチレン性不飽和単量体をグラフト重合させた樹脂
上記アルケニル無水コハク酸とは、例えばα−オレフィンを無水マレイン酸上に間接的に置換して付加するいわゆるエン−合成によって得られる既知化合物である。
【0056】
上記ポリオールとは、分子内に少なくとも2個の水酸基を有する化合物であり、ポリアルキレンエーテルグリコール、ジオールとジカルボン酸を重合させて得られるポリエステル、及びこれらの混合物が用いられる。
【0057】
また上記アルキッド樹脂で用いられるジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸が用いられる。
上記不飽和結合含有ジカルボン酸とはマレイン酸、イタコン酸などがあり、さらにその無水物でも使用できる。
【0058】
また、水酸基をマスキングする試薬としては水酸基と反応する官能基を分子内に1つ有し、他の末端基が非水分散重合反応系で不活性な官能基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えばイソシアン酸エチル、イソシアン酸ブチル、イソシアン酸ヘキシル等のモノイソシアネート化合物が挙げられる。
【0059】
本発明の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法において触媒は必要に応じて使用することができる。触媒を加える際は、反応温度を制御しつつ加える。添加時期は必ずしも溶媒添加後である必要はなく、(a)および(b)に連鎖延長剤(c)を加えた後に触媒を加え、反応を開始することも可能である。または、連鎖延長剤(c)に予め触媒を添加しておき、これらを(a)および(b)に加え反応させることも可能である。
【0060】
反応に用いられる触媒は特に限定するものではなく、有機金属化合物、金属塩、3級アミン、その他の塩基触媒や酸触媒などの、一般にイソシアネート類とポリオール類の反応に用いられる公知の触媒を用いることができる。例を挙げれば、ジブチル錫ジラウレート(以下DBTDLと略す)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(ドデシルチオラート)、ジブチル錫ジ(ドデシルチオラート)、ジメチル錫ジラウレート、第一錫オクタノエート、1,1,3,3,−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)、フェニル水銀アセテート、亜鉛オクトエート、鉛オクトエート、亜鉛ナフテナート、鉛ナフテナート、トリエチルアミン(TEA)、テトラメチルブタンジアミン(TMBDA)、N−エチルモルホリン(NEM)、1,4−ジアザ[2.2.2]ビシクロオクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジメチル−1,4−ジアザシクロヘキサン(DMP)などがある。なかでも錫、ビスマスを含む触媒が高活性のためより好ましい。
【0061】
反応に用いる触媒の量は、反応温度や触媒の種類によっても異なり特に限定するものではないが、(a)および(b)の合計1モル当たり0.0001〜0.1モル、より好ましくは0.001〜0.1モル程度で十分である。
【0062】
また上述した(a)、(b)および連鎖延長剤(c)以外の物質、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどが共存する条件で反応を行ってもよい。
【0063】
反応温度は用いる触媒の種類や量などによっても異なるが、50〜180℃が適当である。より好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは80〜120℃の範囲である。反応温度が50℃未満では、反応速度が遅く経済的でない。また180℃を超えると、生成
物が熱分解することがある。
【0064】
反応時間は、用いる触媒の種類や量、反応温度などにより異なり特に限定するものではないが、1分〜10時間程度で十分である。
反応圧力は、特に限定されない。常圧、減圧ないし加圧状態で、反応させることができる。より好ましくは、常圧ないし弱加圧状態で反応させる。
【0065】
撹拌装置は、分散するに必要な攪拌条件が与えられるものが好ましい。そのための撹拌翼としては、一般的な撹拌翼(タービン、パドル、傾斜パドル、ファウドラー翼、イカリ翼など)でもよいし、ディスパー、ホモミキサー等を用いてもよい。
【0066】
上記製造方法で得られる水崩壊性ブロック共重体は、前記(a)由来のユニット、(b)由来のユニット、および(c)由来のユニットを有する。
(a)由来のユニットと、(b)由来のユニットと、(c)由来のユニットとの好ましい量比は各ユニットの数平均分子量や組成比により影響を受けるが、(a)由来のユニットと(b)由来のユニットとの合計100重量部に対し、(c)由来のユニットは好ましくは0.5〜10重量部である。(c)由来のユニットの量が多すぎると水崩壊性ブロック共重合体の水崩壊性が低下する傾向がある。
【0067】
また本発明の製造方法で製造される水崩壊性ブロック共重合体は重量平均分子量が通常は10,000〜10,000,000の範囲であり、好ましくは30,000〜1,000,000の範囲である。この範囲内であれば樹脂の強度や伸びが良好で、成型加工性等に優れる。
【0068】
なお、本発明において、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)はすべて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めたポリエチレンオキシド換算の値である。
【0069】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
[実施例]
本実施例における重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)の測定は、島津製LC−10A、カラム:SHODEX KD−806M
30cm×2本、検出:RI検出器、溶媒:DMFを用いて行った。
【0070】
[製造例1]ポリオキシエチレン部を含有する両末端が水酸基である脂肪族ポリエステル(R−1)の合成
Dean−Stark装置(水分離器)を取り付けた3000mlの攪拌棒付丸底フラスコに無水コハク酸90.4g(0.90mol)、分子量1000のポリエチレングリコール1000を990.1g(0.99mol)、触媒としてオルトチタン酸テトライソプロピル1.63gを入れる。これに共沸溶媒としてジエチルベンゼンを800ml加え、8時間還流した。次に溶媒を減圧下で留去し、5mmHgの減圧下、200℃で5時間攪拌してポリエステル化反応を行った。冷却後に得られたポリエステル(R−1)の末端水酸基価は4.79KOHmg/g、酸価は0.63KOHmg/g、末端水酸基価から算出された数平均分子量は23,400であった。
【0071】
[製造例2]ポリオキシエチレン部を含有する両末端が水酸基である脂肪族ポリエステル(R−2)の合成
Dean−Stark装置(水分離器)を取り付けた2000mlの攪拌棒付丸底フラスコにコハク酸70.2g(0.59mol)、分子量2000のポリエチレングリコー
ル2000を1486.0g(0.74mol)、触媒としてオルトチタン酸テトライソプロピル0.38gを入れ、180℃で46時間撹拌してポリエステル化反応を行った。冷却後に得られたポリエステル(R−2)の末端水酸基価は23.5KOHmg/g、酸価は0.61KOHmg/g、末端水酸基価から算出された数平均分子量は4,780であった。
【0072】
[製造例3]両末端が水酸基であるポリブチレンサクシネート(PBS)の合成
Dean−Stark装置(水分離器)を取り付けた2000mlの攪拌棒付丸底フラスコにコハク酸488.6g(4.14mol)、1,4−ブタンジオールを410.3g(4.55mol)、触媒としてオルトチタン酸テトライソプロピル0.06gを入れ、180℃で6時間撹拌し、さらに31mmHgの減圧下、180℃で8時間攪拌し、ポリエステル化反応を行った。冷却後に得られたPBSジオールの末端水酸基価は39.4KOHmg/g、酸価は0.39KOHmg/g、末端水酸基価から算出された数平均分子量は2,850であった。
【0073】
[製造例4] 両末端が水酸基であるポリエチレンカーボネート(PEC−1)の合成
(1)触媒調製
市販の酸化亜鉛10.4g、グルタル酸16.3g、硫化亜鉛0.25gおよびジオキサン23.1gを、直径15.8mmのステンレス製ボール30個および直径19mmのステンレス製ボール30個が収容された内容積500mlのステンレス製ボールミル内筒に仕込み、遊星ボールミルにて加速度3.5Gで9時間粉砕接触させた。得られた接触処理物を150℃、3hrで減圧乾燥させて、亜鉛含有触媒を得た。
【0074】
(2)重合
内容積3000ccのオートクレーブに、89ppmの水分を含有する893.90gの1,3-ジオキソラン、上記亜鉛含有触媒2.40gおよびエチレンオキサイド219
.00gを仕込み、室温にて炭酸ガスを圧力1.5MPaとなるよう加えた。その後、80 ℃まで昇温し、2時間重合を行った。昇温直後には、2.7MPaまで圧力は上昇し
たが、反応とともに炭酸ガスが消費され圧力は降下した。重合終了後、オートクレーブを冷却した後、脱圧し、重合液を取り出した。重合液は、ポリマーが完全に溶解した状態であった。取り出したポリマー溶液を、孔径1ミクロンのフィルターにより濾過し、固体である亜鉛含有触媒を除去し、濾液を乾燥してポリマーを得た。ポリマーの収量は217.70gであった。また、得られたポリエチレンカーボネート(PEC−0)のGPC測定による数平均分子量は48,000であった。
【0075】
(3)加水分解による低分子量化
2000mlの攪拌棒付丸底フラスコに、上記ポリエチレンカーボネート(PEC−0)78.56g、触媒として炭酸ナトリウム水溶液1.75g、水175mlおよび1,3−ジオキソラン700mlを入れ、70℃で7時間攪拌した。放冷後、触媒中和量の硫酸を加え、1,3−ジオキソランを減圧留去した。得られた反応物を分液ロートに入れ、塩化メチレン400mlで2回抽出した。得られた油層を水200mlで6回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、塩化メチレンをロータリーエバポレーターで減圧留去した。得られたポリエチレンカーボネート(PEC−1)は27.50gであり、数平均分子量は5200に減少していた。13C-NMRにより、水酸基隣接炭素量と主鎖中の炭素量
とを求め、末端水酸基量を算出した結果、0.36mmol/gであった。
【0076】
[製造例5] 両末端が水酸基であるポリエチレンカーボネート(PEC−2)の合成
2000mlの攪拌棒付丸底フラスコに、上記ポリエチレンカーボネート(PEC−0)100.99g、触媒として炭酸ナトリウム水溶液1.70g、水180mlおよび1,3−ジオキソラン820mlを入れ、60℃で6時間攪拌した。放冷後、触媒中和量の
硫酸を加え、1,3−ジオキソランを減圧留去した。得られた反応物を分液ロートに入れ、塩化メチレン400mlで2回抽出した。得られた油層を水200mlで6回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、塩化メチレンをロータリーエバポレーターで減圧留去した。得られたポリエチレンカーボネート(PEC−2)は77.86gであり、数平均分子量は10,800に減少していた。13C-NMRにより、水酸基隣接炭素量および主鎖
中の炭素量を求め、末端水酸基量を算出した結果、0.20mmol/gであった。
【0077】
[製造例6]分散剤(1)の合成
平均分子量1000のヘキサメチレンアジペートを20g、無水マレイン酸0.98gを撹拌翼付の100mlの3つ口フラスコに入れ、窒素気流下、150℃で20時間撹拌
した。さらに20mmHgの減圧下、170℃まで徐々に温度を上げて撹拌した後、放冷したところ平均分子量2000の不飽和結合含有ポリオールが得られた。この不飽和結合含有ポリオール5gを100mlナス型フラスコに入れ、酢酸ブチル10gを加えたのち、窒素気流下110℃でラウリルメタクリレート10gと過酸化ベンゾイル0.4gを滴下ロートより30分で滴下した。2時間110℃を保った後、さらに130℃で2時間反応した。次に、イソシアン酸エチル2gを加え、80℃で6時間反応した後、未反応物を5mmHgで留去し、分散剤(1)を得た。
【0078】
[製造例7]分散剤(2)の合成
東邦化学(株)製のポリブテニルコハク酸(PIBSA−2:酸価38.0mgKOH/g、ポリスチレン換算重量平均分子量3500)を20.0g、ポリエチレングリコール#1000(関東化学製)10.0g、オルトチタン酸テトライソプロピル0.02gを撹拌翼付きの100mlの丸底フラスコに入れ、窒素気流下、180℃で20時間反応させた。さらに5mmHgの減圧下、180℃で20時間反応した。次にイソシアン酸エチル4gを加え、80℃で6時間反応した後、未反応物を5mmHgで留去し、褐色のゴム状物である分散剤(2)が得られた。
【実施例1】
【0079】
攪拌機、温度計、冷却管を装着した500mlの4つ口セパラブルフラスコに、ポリエステル(R−1)(製造例1により合成)90.3g、ポリブチレンアジペート(PBA)ジオール(三井化学ポリウレタン(株)製;平均分子量2,000)10.1g(重量比:9/1)を仕込み、反応器内を窒素雰囲気とした。オイルバスにて70℃に昇温して各ジオールを溶解させ、溶解した後に90℃に昇温してから、分散剤(1)(製造例6により合成)0.92gおよびイソオクタン100gを反応器内に窒素で圧送した後、攪拌回転数を1000rpmまで上げた。1時間撹拌させた後、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)2.63g(NCO/OHモル比=0.980)をシリンジで仕込み、次いでジブチル錫ジラウレート(DBTDL)触媒を0.06g添加して6時間反応させ、溶媒中に分散した粒子状のブロック共重合体(1)を得た。重量平均分子量は78,200、分子量分布は1.83であった。
【実施例2】
【0080】
ポリエステル(R−1)を85.7g、PBAジオールを15.4g(重量比:8.5/1.5)、HDIを2.92g(NCO/OHモル比=0.988)とした以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状のブロック共重合体(2)を得た。重量平均分子量は86,200、分子量分布は1.96であった。
【実施例3】
【0081】
ポリエステル(R−1)を80.6g、PBAジオールを20.1g(重量比:8/2)、HDIを3.15g(NCO/OHモル比=0.924)とした以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状のブロック共重合体(3)を得た。重量平均分子量は49,90
0、分子量分布は1.82であった。
【実施例4】
【0082】
ポリエステル(R−1)を85.1g、PBAジオールを15.2g(重量比:8.5/1.5)、HDIを4.22g(NCO/OHモル比=0.994)、有機溶媒をヘプタンとした以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状のブロック共重合体(4)を得た。重量平均分子量は93,300、分子量分布は2.00であった。
【実施例5】
【0083】
ポリエステル(R−1)の代わりにポリエステル(R−2)(製造例2により合成)90.3g、PBAジオールの代わりにPBSジオール(製造例3により合成)を10.2g(重量比:9/1)、HDIを3.43g(NCO/OHモル比=0.951)、有機溶媒をノルマルオクタンとした以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状のブロック共重合体(5)を得た。重量平均分子量は160,000、分子量分布は1.89であった。
【実施例6】
【0084】
ポリエステル(R−1)の代わりにポリエステル(R−2)90.4g、PBAジオールの代わりにポリエチレンブチレンアジペート(PEBA)ジオール(三井化学ポリウレタン(株)製;平均分子量2,000)を10.5g(重量比:9/1)、HDIを3.85g(NCO/OHモル比=0.951)、有機溶媒をヘプタンとした以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状のブロック共重合体(6)を得た。重量平均分子量は204,000、分子量分布は2.01であった。
【実施例7】
【0085】
上記ポリエステル(R−1)の代わりにポリエステル(R−2)85.2g、PBAジオールの代わりにPEBAジオールを14.6g(重量比:8.5/1.5)、HDIを4.00g(NCO/OHモル比=0.951)、有機溶媒をヘプタンとした以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状のブロック共重合体(7)を得た。重量平均分子量は197,000、分子量分布は2.01であった。
【実施例8】
【0086】
100mLの撹拌棒付き丸底フラスコにポリエステル(R−1)(製造例1により合成)27.30g、PBAジオール(三井化学ポリウレタン(株)製;平均分子量2000)3.30g(重量比9/1)、溶媒としてトルエン30mLを加え90℃で混合した。これに連鎖延長剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)0.63g(NCO/OHモル比=0.963)、ジブチル錫ジラウレート50mgをそれぞれシリンジで装入し、90℃で4時間撹拌した。酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを0.30g加えて混合した後、トルエンを減圧留去することで、ブロック共重合体(8)を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量は126,000、分子量分布は2.42であった。
【実施例9】
【0087】
ポリエステル(R−1)を24.37g、PBAジオールを4.30g(重量比:8.5/1.5)、HDIを0.67g(NCO/OHモル比=0.957)とした以外は実施例8と同様の操作を行い、ブロック共重合体(9)を得た。重量平均分子量は128,000、分子量分布は2.37であった。
【実施例10】
【0088】
ポリエステル(R−1)を24.00g、PBAジオールを6.00g(重量比:8/
2)、HDIを0.80g(NCO/OHモル比=0.958)とした以外は実施例8と同様の操作を行い、ブロック共重合体(10)を得た。重量平均分子量は112,000、分子量分布は1.75であった。
【実施例11】
【0089】
ポリエステル(R−1)の代わりにポリエチレングリコール20000(メルク社製;平均分子量20,000)を80.7g、PBAジオールの代わりにポリエチレンカーボネート(PEC−1)ジオール(製造例4により合成)を20.2g(重量比:8/2)、HDIを0.888g(NCO/OHモル比=0.955)とした以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状のブロック共重合体(11)を得た。重量平均分子量は146,000、分子量分布は3.38であった。
【実施例12】
【0090】
ポリエステル(R−1)を80.4g、PBAジオールの代わりにポリエチレンカーボネート(PEC−1)ジオール20.0g(重量比:8/2)、HDIの代わりに二塩化アジポイルを1.39g(酸クロライド/OHモル比=0.978)とし、触媒を添加しない以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状のブロック共重合体(12)を得た。重量平均分子量は62,500、分子量分布は1.85であった。
【実施例13】
【0091】
ポリエステル(R−1)を65.8g、PBAジオールの代わりにポリエチレンカーボネート(PEC−2)ジオール(製造例5により合成)28.5g(重量比:7/3)、HDIを1.58g(NCO/OHモル比=0.987)、分散剤(1)の代わりに分散剤(2)(製造例7により合成)1.02gとした以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状のブロック共重合体(13)を得た。重量平均分子量は56,800、分子量分布は1.79であった。
【0092】
[比較例1]
ポリエステル(R−1)を100.9g、HDIを1.27g(NCO/OHモル比=0.958)、PBAジオールを用いないこと以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状のブロック重合体(比1)を得た。重量平均分子量は92,900、分子量分布は1.99であった。
【0093】
[比較例2]
ポリエステル(R−1)を31.1g、HDIを0.442g(NCO/OHモル比=0.973)、PBAジオールを用いないこと以外は実施例8と同様の操作を行い、ブロック重合体(比2)を得た。重量平均分子量は112,000、分子量分布は1.97であった。
【0094】
[吸水量および水崩壊性評価用試験片の作製]
上記製法にて合成されたブロック共重合体をそれぞれ80℃で熱プレスして得られた厚さ300μmのシートを、一辺5cmの正方形に裁断した。
【0095】
[吸水量の測定]
水を張った500mlのビーカーに上記で得られた試験片を入れ、一定時間ごとに試験片を取り出して、表面に付着した水をふき取った後、重量を測定し、ブロック共重合体中に吸収された水の量を測定した。測定は試験片が崩壊するまで行い、最終的に吸収された水の重量を、最初の試験片の重量に対する吸収率(重量%)とした。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
本発明のブロック共重合体は一定量の吸水性を持ち、ブロック共重合体の組成を変えることによりブロック共重合体の吸水性を制御することが可能である。
[水崩壊性の測定]
300mlのビーカーに水300mlを入れ、200rpmで攪拌した。試験片を投入し、目視で試験片が崩壊するまでの時間を最大7日間測定した。結果を表2に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
本発明のブロック共重合体は、大量の水中で崩壊する性能を有しており、ブロック共重合体の組成を変えることにより水崩壊性を広範囲に制御することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のブロック共重合体は、このように実用上十分な水崩壊性および吸収性を有していることから、例えば、水崩壊性物品、水崩壊性トイレ洗浄用物品、水崩壊性包装材として用いることが可能である。
【0101】
また、本発明のブロック共重合体は、水中への放置、廃棄が予想されるあらゆる成形品の代替素材としての利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)、(b)、および(c)を反応させることを特徴とする水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。
(a):下記(a1)および/または(a2)
(a1):ポリアルキレングリコール
(a2):ポリアルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られる両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステル
(b):ポリオキシアルキレン基を含まない両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステル
(c):水酸基と反応する官能基を複数有する連鎖延長剤
【請求項2】
(a)が下記一般式(1)で表される構成単位を有し、(b)が下記一般式(2)で表される構成単位を有する(ただし、下記一般式(1)および(2)において、n+m≧3である)ことを特徴とする請求項1に記載の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。
【化1】

(式(1)中、nは1以上の整数であり、lは0または1であり、Aは数平均分子量300〜20,000のポリアルキレングリコール由来の構成単位であり、G1は炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。)
【化2】

(式(2)中、mは1以上の整数であり、kは0または1であり、Eは炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基であり、G2は酸素原子または下記一般式(3)である。)
【化3】

(式(3)中、G3は炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基である。)
【請求項3】
(a)がポリエチレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られる両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステルであり、
(b)が両末端に水酸基を有するポリブチレンアジペート、または両末端に水酸基を有するポリエチレンブチレンアジペートであることを特徴とする請求項1または2に記載の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
(a)がポリエチレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られる両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステルであり、
(b)が両末端に水酸基を有するポリブチレンサクシネートであることを特徴とする請求項1または2に記載の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。
【請求項5】
(a)、(b)、および(c)を、分散剤を含有する有機溶媒中で反応させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。
【請求項6】
(a)がポリエチレングリコールと脂肪族ジカルボン酸またはその無水物とのエステル化反応により得られる両末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステルであり、
(b)が両末端に水酸基を有するポリエチレンカーボネートであり、
(a)、(b)、および(c)を、分散剤を含有する有機溶媒中で反応させることを特徴とする請求項1または2に記載の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。
【請求項7】
(a)と(b)とを重量比((a):(b))が100:1〜100:100となる量で混合し、(a)と(b)との合計100重量部に対し(c)を0.5〜10重量部加えて反応させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。
【請求項8】
脂肪族ジカルボン酸がコハク酸であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。
【請求項9】
分散剤が、分岐状ポリオレフィンユニットと脂肪族ポリエステルユニットとを有する樹脂であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。
【請求項10】
分散剤が、下記(i)〜(iv)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請求項9に記載の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。
(i)アルケニル無水コハク酸とポリオールとの脱水縮合で得られるポリオールの水酸基をマスキングした樹脂
(ii)ジカルボン酸とペンタエリスリトールとを脱水縮合させたポリエステルの残水酸基の一部に脂肪酸を脱水縮合させたアルキッド樹脂
(iii)不飽和結合含有ジカルボン酸とポリオールとの脱水縮合で得られるポリオールの水酸基の一部が残存する樹脂にエチレン性不飽和単量体をグラフト重合させた後、残存する水酸基をマスキングした樹脂
(iv)不飽和結合含有ジカルボン酸とポリオールとの脱水縮合で得られるポリオールの水酸基の一部が残存する樹脂の残存する水酸基をマスキングした後、エチレン性不飽和単量体をグラフト重合させた樹脂
【請求項11】
水酸基と反応する官能基を複数有する連鎖延長剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートまたは二塩化アジポイルであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の水崩壊性ブロック共重合体の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法で製造される水崩壊性ブロック共重合体。

【公開番号】特開2008−95090(P2008−95090A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238051(P2007−238051)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】