水平構面用耐震開口フレーム
【課題】木造建築物の水平構面の剛性を高めて耐震性を確保すると同時に、開口部の自由度や開放性も確保できる水平構面用耐震開口フレームを提供する。
【解決手段】木造建築物の水平構面の開口部または非開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための水平構面用耐震開口フレーム(1、50、60、70、80)であって、該隅部の形状に沿って接合可能な形状をもつコーナー部を備え、該コーナー部においては、2つのフレーム材(1a、1b)の端部が直角に剛接合されている。このコーナー部に繊維シート(2)を巻き込み接着して補強してもよく、水平構面用耐震開口フレームの形状は、L型、ボックス型または三角型である。
【解決手段】木造建築物の水平構面の開口部または非開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための水平構面用耐震開口フレーム(1、50、60、70、80)であって、該隅部の形状に沿って接合可能な形状をもつコーナー部を備え、該コーナー部においては、2つのフレーム材(1a、1b)の端部が直角に剛接合されている。このコーナー部に繊維シート(2)を巻き込み接着して補強してもよく、水平構面用耐震開口フレームの形状は、L型、ボックス型または三角型である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物における水平構面の剛性を高めるための水平構面用耐震開口フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物における1階・2階・3階などの床面、小屋面、屋根面などの水平構面は、上階にかかる水平力を下階の耐力壁に伝達する役割を果たしている。水平構面の一般的な耐震補強部材としては、木製や鋼製の火打ち梁が用いられている(例えば、特許文献1)。
因みに、垂直構面の開口部の耐震開口フレームは、特許文献2などにより公知である。
【特許文献1】特開2004−169270号公報
【特許文献2】特許2946299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以下の通り、木造建築物の水平構面の剛性に関しては、垂直構面とは異なる固有の問題点がある。
(i)木造建築物における水平構面に吹き抜け、階段室、天窓などの開口部を設けた場合、建築基準法の改正や品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)により、開口部以外の水平構面の剛性だけでは建築できない場合が生じる。
(ii)必要とされる水平構面の剛性(床倍率)を高めるために、数多くの火打ち梁や構造用合板を用いるため、労力の増加とコストアップとなっている
(iii)水平構面における開口部は、大地震時に最も弱点となり、耐力の限度を超えた場合は急激に破損する。水平構面の破損により、特に大きな吹抜けがある場合、重い屋根の場合や下屋部分で倒壊する恐れがある。
【0004】
上記問題点をさらに具体的に説明すると、次の通りである。
(i)地震力や風圧力などの水平力が建物の各耐力要素に均等に伝わるためには、屋根や床の面内せん断剛性が十分剛である必要がある。しかし、水平構面の剛性を高めても、大きな吹抜けを設けたり、階段室と近接した位置に吹抜けなどを設けたりすると、床倍率が低下するばかりでなく、床面、小屋面、屋根面の開口端部に応力が集中する。そのため、大きな吹き抜けや階段室の位置などが制限され、特に大きな吹抜けが設けられなくなった。さらに3階建てや狭小地の間口の小さい建物では吹抜けや階段の位置・大きさが大幅に制限される。
(ii)性能表示基準の等級によっては、面内せん断剛性が高い構造用合板を用いても、さらに火打ち梁を設けて水平構面の剛性を高める必要がある。
(iii)水平構面直下の耐力壁線の区画による制限も設けられ、また、耐力壁のバランスや、上下階の力の伝達がスムーズに行われる構造体、及び接合部の緊結強度なども求められている。これは、地震などの大きな水平力が躯体に加わったとき、建物が大きくねじれて倒壊するのを避けるための耐震設計基準として新たに設けられたものである。
(iv)これらにより、日本古来の開放的な民家や、精神的ゆとりの大きな吹き抜けがある間取りなどが大きく制限される。
【0005】
以上の問題点に鑑み、本発明は、木造建築物の水平構面の剛性を高めて耐震性を確保すると同時に、開口部の自由度や開放性も確保できる水平構面用耐震開口フレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成の水平構面用耐震開口フレームを提供する。
(1)本発明による水平構面用耐震開口フレームは、木造建築物の水平構面の開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための水平構面用耐震開口フレームであって、該隅部の形状に沿って接合可能な形状をもつコーナー部を備え、該コーナー部においては、2つのフレーム材の端部が直角に剛接合されている。
(2)上記水平構面用耐震開口フレームの一実施態様においては、前記コーナー部に繊維シートを巻き込み接着している。
(3)上記水平構面用耐震開口フレームの一実施態様においては、前記水平構面用耐震開口フレームが、L型の形状である。
(4)上記水平構面用耐震開口フレームの一実施態様においては、前記水平構面用耐震開口フレームが、ボックス型の形状である。
(5)上記水平構面用耐震開口フレームの一実施態様においては、前記水平構面用耐震開口フレームが、三角型またはコの字型の形状である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は水平構面用耐震開口フレームであって、木造建築物の水平構面の開口部に含まれる1または複数の隅部(凹部及び凸部を含む)に対し、その隅部の形状に沿って接合可能な形状のコーナー部を備え、コーナー部は2つのフレーム材の端部を直角に剛接合して形成されている。このような水平構面用耐震開口フレームを、開口部等の隅部に接合することにより、水平構面全体の剛性が高められ、水平剛性を確保することができる。
【0008】
床や小屋面の水平構面に設けられる吹抜、階段室や屋根面の天窓などの開口部に設けた場合は、開口部自体の剛性を高められるため、開口部を床倍率として算入できるようになり、開口部の制限が少なくなり自由度が確保できる。
【0009】
開口部だけでなく、非開口部においても、さらに剛性を必要とする箇所(平面上のコーナー部や凹部、凸部など)に水平構面用耐震開口フレームを用いることで、全体の水平剛性が高まるので、開口部を設けることの制限を低減することができる。
【0010】
水平構面用耐震開口フレームの形状を、L型、ボックス型、三角型またはコの字型とすることで、開口部の開口面積をほとんど損なわずに設置できる。特に、L型またはボックス型の場合は、中央部分をそのまま開口として利用できる。
【0011】
さらに具体的には、以下の効果を奏する。
(i)本発明の水平構面用耐震開口フレームを床に用いた場合、上階の屋根や壁から下階の壁に水平力(地震・風圧力)を伝えられるように床の剛性が高められ、建築基準法に基づくバランスよく配置された耐力壁が充分に強さを発揮できる。これにより、床が先に壊れることを防ぐ。
(ii)床や屋根が耐力壁に見合う配置と強さであるかを、耐力壁線間距離と床倍率で確認することが必要であるが、本発明の水平構面用耐震開口フレームを用いることで床倍率がアップするので耐震性が増す。
(iii)通常、階段室や吹抜けなどの床の無い部分や屋根の天窓は弱点となり、水平力に対して壊れやすい。本発明の水平構面用耐震開口フレームを開口部に用いることで、この弱点を補い、従来は水平構面としての強度がなかった開口部を床倍率に算入できるため、全体が壊れにくい剛性を保った水平構面として認められるものとなる。
(iv)特に、3階建てや狭小地の間口の小さい建物では吹抜けや階段の位置・大きさが大幅に制約されるが、開口部に床倍率が認められるため、プランの自由度が増す。
(v)本発明の水平構面用耐震開口フレームを用いることによって、水平構面全体のねばりのある耐力と破壊に至るまでの変形量が大きくなることで、地震時に安全に非難する時間を確保できる。
(vi)上階にかかる水平力が、本発明の水平構面用耐震開口フレームを用いた水平構面により下階の耐力壁に確実に伝達されるようになるため、建物全体の耐震性が確保され、地震時に倒壊し難い建物となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施例を示した図面を参照して、本発明による水平構面用耐震開口フレーム(以下、単に「耐震開口フレーム」と称する場合がある)の実施形態を説明する。
【0013】
本発明の耐震開口フレームを適用する水平構面は、木造建築物の2階・3階などの床面、小屋面、屋根面などである。これらの水平構面には、適宜、吹抜部や階段室部などの開口部が設けられる。開口部以外の箇所は、床材や天井材などで塞がれた非開口部となっている。一般的に、1つの開口部は、周囲を梁で囲まれた四角形であり、その隅部の角度は直角である。四角形の一部に変則的な凹部や凸部を有する場合もある。本発明の耐震開口フレームは、基本的には、水平構面の開口部における隅部に接合して使用するものである。この場合の「隅部」には、一般的な四角形における4つの直角の隅部以外に、変則的な凹部や凸部における同様の直角形状の箇所も含まれるものとする。
【0014】
水平構面用耐震開口フレームとは、床剛性のない木造建築物の水平構面開口部(吹抜け、階段室など)の隅部に設置し、開口部でありながら仮想床としての剛性を求めることを目的としたフレーム部材である。
本フレームは、二つの直線材を直角に接合したL型の形状のコーナー部を有することを特徴とし、そのコーナー部は、モーメント抵抗力を高めるために多様な補強材及び補強方法を適用することにより、剛の架構とされている。
構造力学的には、上述したように本フレームのコーナー部を剛接合とし、水平構面開口隅部に設けることで、水平力で生じるコーナー部の回転や変形を止めることができる。
本発明の目的及び効果は、水平構面の開口部に対してx方向及びy方向の水平力(地震・風)に抵抗するL型フレームを開口隅部に組込むことで、開口部の従来の機能を有しながら、どちらの方向の水平力に対しても水平構面として耐震化が図られ、床倍率相当が得られることである。
【0015】
図1A〜図8に、本発明の水平構面用耐震開口フレームの基本形態であるL型耐震開口フレームの種々の実施例を示す。L型耐震開口フレームは、平面視にてL字形状を有しており、2つのフレーム材を直角に配置して端部同士を剛接合することにより形成される。剛接合された直角形状の部分を「コーナー部」と称することとする。コーナー部の形状は、上記の水平構面における隅部に沿った形状となっている。必要に応じてコーナー部の所定の剛性を得るために、多様な接合方法を用いることができる。基本部材である2つのフレーム材に加えて、剛性を高めるための種々の補強部材を用いる場合がある。
【0016】
なお、以下の図1A〜図8で説明するコーナー部の種々の接合方法は、後述するボックス型、三角型及びコの字形の耐震開口フレームにおけるコーナー部にも、同様に適用可能である。
【0017】
図1A(A)〜(C)はそれぞれ、L型耐震開口フレーム1A、1B、1Cのコーナー部接合方法の実施例を示した斜視図である。
図1A(A)のL型耐震開口フレーム1Aでは、2つのフレーム材1a、1bの端部をホゾ加工(以下の実施例のうち、図示しない場合も、同様の加工を施すことも可能とする)し、直角に組合せ接着するとともに、L型金物16をコーナー部内側に当接し、木ビス11等で取り付けている。L型金物は、既製品の他に、L型加工金物でもよい。
【0018】
図1A(B)のL型耐震開口フレーム1Bでは、2つのフレーム材1a、1bの端部を直角に組合せ接着するとともに、双方のフレーム材に跨るように3つの面に帯状の繊維シート2を巻き込み接着剤により接着している。フレーム材1a、1bの側面の貫通孔1cは、L型耐震開口フレームを開口部等の隅部に接合するためのものである。フレーム材1a、1bは、木製角材でもよく、構造用単板積層材(LVL)を角材状に形成したものでもよい(以下の実施例において同じ)。繊維シート2は、例えば、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維等の化学繊維及びこれらを組み合わせた繊維、及びこれらの繊維と金属製繊維との複合繊維である。繊維シートは、高引張強度を有するとともに靱性に優れた繊維をシート状に形成したものである(以下の実施例において同じ)。繊維シート2は、巻き込み方向である長手方向が、繊維の方向であり高引張強度を有する方向である。
【0019】
図1A(C)のL型耐震開口フレーム1Cでは、2つのフレーム材1a、1bを直角に組合せる(適宜、接着剤を用いる。以下、同じ)とともに、補強材3を取付け、さらにフレーム材1a、1bと補強材3の上面を覆うように1枚の略二等辺三角形の構造用合板5を取付け、ビス止めまたは釘止めしている。なお、構造用合板5は、上下面に設けてもよく、また、繊維シート2は、構造用合板5の上から巻き付け接着してもよい(構造用合板を用いる他の実施例において同じ)。
【0020】
図1B(A)のL型耐震開口フレーム1Dでは、構造用合板5を、L型耐震開口フレーム1Dの外側に用いた場合である。ブロック・レンガ構造での壁頂部コンクリート臥梁と同様の発想である。構造用合板5の他の部分は、床梁や根太に釘止めされる。
【0021】
図1B(B)のL型耐震開口フレーム1Eでは、補強材3を、2つのフレーム材1a、1bに対して斜めに配置し、取付孔を通してラグスクリュー4または釘により取り付けている。
【0022】
図1C(A)及び(B)は、L型耐震開口フレーム1Fのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bを直角に組合せ、次に、(B)の手順2で、等辺山形鋼17をコーナー部内側に取付け、木ビス11等で固定する。
【0023】
図1D(A)〜(C)は、L型耐震開口フレーム1Gのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bの端部を直角に組合せ接着するとともに、繊維シート2を巻き込み接着剤により接着している。(B)の手順2では、等辺山形鋼17をコーナー部内側に取付け、(C)の手順3で木ビス11等で固定する。
【0024】
図1E(A)及び(B)は、L型耐震開口フレーム1Hのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bの端部を直角に組合せ接着するとともに、2枚の繊維シート2a、2bを互いに直交する向きでコーナー部に巻き込み接着し、等辺山形鋼17をコーナー部内側に、鋼板L型加工金物18をコーナー部外側に取付ける。フレーム材1a、1bのコーナー部外側の面は、鋼板L形加工金物18の厚さだけ切り欠かれており、鋼板L形加工金物18が嵌合して均一面となる。(B)の手順2で、ボルト等で固定する。
【0025】
図1F(A)〜(C)は、L型耐震開口フレーム1Iのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bを直角に組合せるとともに、補強材3を取付け、さらにコーナー部に繊維シート2を巻き込み接着する。次に、(B)の手順2で、1枚の構造用合板5を取付ける。フレーム材1a、1bの上面は、構造用合板5の厚さだけ切り欠かれており、構造用合板5が嵌合して均一面となる。(C)が完成体である。
【0026】
図1G(A)〜(C)は、L型耐震開口フレーム1Jのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bの端部を直角に組合せ接着するとともに、2枚の繊維シート2a、2bを互いに直交する向きでコーナー部に巻き込み接着する。(B)の手順2では、不等辺山形鋼19をコーナー部内側及び上面に当てて取り付ける。(C)の手順3でビス等で固定する。
【0027】
図1H(A)及び(B)は、L型耐震開口フレーム1Kのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bの端部を直角に組合せ接着するとともに、2枚の繊維シート2a、2bを互いに直交する向きでコーナー部に巻き込み接着し、不等辺山形鋼19aをコーナー部内側及び上面に当てて取り付ける。(B)の手順2では、もう1つの不等辺山形鋼19bをコーナー部外側及び下面に当てて取り付ける。
【0028】
図2(A)〜(C)は、2つのフレーム材1a、1bに対して斜めに取り付ける補強材に意匠性をもたせた場合の実施例を示す。(A)の補強材3aは、鋼管である。(B)の補強材3bは、等辺山形鋼または軽山形鋼である。(C)の補強材3cは、溝型鋼またはコの字チャネル鋼である。いずれも、ラグスクリュー止めまたは木ビス止めとされる。
【0029】
図3(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Lのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bを直角に配置し、対向する接合面の間に、ジベル、スプリットリングまたはシャープレート等の接合金物6を介在させ圧着する。このような接合金物により、接合面の剪断耐力が高められる。接合面に接着剤を併用してもよい。さらに、木材の割れ防止のため、繊維シートと接着剤を併用してもよい。なお、接合面には、引張ボルト用の取付孔1dが予め穿設されている。次に(B)の手順2で、フレーム材1bに対し上下方向に挿入した引張ボルトコネクター1bに対し、フレーム材1aの側面からフレーム材1bの内部まで挿入した引張ボルト7aを螺合させる。(C)の手順3で、繊維シート2を巻き込み接着し、(D)の完成体とする。
【0030】
図4(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Mのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bを直角に組合せる。(B)の手順2では、双方のフレーム材の上面を跨ぐように、接合金物である長方形のメタルプレートコネクター8を当てて打ち込む。メタルプレートコネクター8は、右の拡大図に示すように、接合する面上に無数の爪が起立し配列されている。上下両面を、メタルプレートコネクター8で接合してもよい。(C)の手順3で、繊維シート2を巻き込み接着し、(D)の完成体とする。
【0031】
図5(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Nのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、フレーム材1a、1bを直角に組み合わせる。フレーム材1a、1bの端部には、それぞれスリット1fがプレカットされており、これらのスリット1fに、略L字状で複数のピン孔が穿設された鋼板プレート9を挿入する。鋼板プレート9のピン孔の位置に合うように、フレーム材1a、1bにも取付孔1gが穿設されている。次に(B)の手順2において、フレーム材1a、1bの取付孔1gと鋼板プレート9のピン孔にドリフトピン10を打ち込む。(C)の手順3では、2枚の繊維シート2a、2bを互いに直交する向きでコーナー部に巻き込み接着し、(D)の完成体とする。
【0032】
図6(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Oのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。図5の実施例とほぼ同様であるが、図6では、(A)の手順1において、フレーム材1a、1bの端部を、45度の角度に形成し、スリット1fをプレカットしている。双方のフレーム材の45度の端面同士を接合して直角のコーナー部を形成している。後の手順は、図5と同じである。
【0033】
図7(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Pのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1に示すように、フレーム材1a、1bのそれぞれ端部を、図示のように部分的に45度の角度に形成し、互いに嵌合する凸と凹の形状に加工し、直角に組み込む(接着剤併用)。(B)の手順2では、ビス11で固定する。木ビスでもよい。(C)の手順3では、2枚の繊維シート2a、2bを互いに直交する向きでコーナー部に巻き込み接着し、(D)の完成体とする。
【0034】
図8(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Qのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。図7の実施例とほぼ同様であるが、図8では、(A)の手順1において、フレーム材1a、1bの端部に傾斜を設けずに、互いに嵌合する凸と凹の形状に加工し、直角に組み込む(接着剤併用)。後の手順は、図7と同じである。
【0035】
図9は、L型耐震開口フレーム1を吹抜部に設置した場合の納まりの実施例を示す図である。床面には、床梁31で囲まれた四角形の吹抜部21が形成されている。非開口部には、梁間に所定の間隔で複数の根太32が架設され、その上に床材が張られる。L型耐震開口フレーム1の厚さ(上下方向)は、床梁31の梁成よりも小さい。4つのL型耐震開口フレーム1がそれぞれ、吹抜部21の4つの隅部の内側に沿って接合されている。(A)の実施例では、根太32の上面が、床梁31の上面よりも上がった位置にある。この場合の納まりとして、L型耐震開口フレーム1の下面を、床梁31の下面に合わせて設置している。(B)の実施例では、根太32の厚さが床梁31の梁成と同じであり双方の上面が揃っている。この場合の納まりとして、L型耐震開口フレーム1の上面を、床梁31の上面に合わせて設置している。
【0036】
なお、図9に示した開口部におけるL型耐震開口フレームの納まりの実施例は、後述するボックス型及び三角型の耐震開口フレームにおいても、同様に適用できる。
【0037】
図10は、L型耐震開口フレーム1と、梁等の横架材との接合方法の実施例を示す図である。(A)のように、床梁31で囲まれた吹抜部21の隅部にラグスクリュー4を用いてL型耐震開口フレーム1が接合されている。(B)は、(A)の取付状態を示す拡大展開図であり、床梁31とL型耐震開口フレーム1の対向する接合面の間に、ジベル、スプリットリング、シャープレート等の接合金物を介在させ圧着している。これにより、接合面の剪断耐力を高める。接合面に接着剤を併用してもよい。さらに、木材の割れ防止のため、繊維シートと接着剤を併用してもよい。その後、ラグスクリュー4で接合固定する。
【0038】
なお、図10に示したL型耐震開口フレームと横架材との接合方法の実施例は、後述するボックス型及び三角型の耐震開口フレームにおいても、同様に適用できる。
【0039】
図11(A)及び(B)はそれぞれ、本発明の水平構面用耐震開口フレームの別の形態であるボックス型耐震開口フレームの実施例を示す図である。ボックス型耐震開口フレーム50は、上述のL型耐震開口フレームと同様の構成のL型部材51を4つ連結して四角形とした耐震開口フレームである。ボックス型耐震開口フレーム50は、(A)の実施例では吹抜部21の内側に嵌合するように、(B)の実施例では階段室部22の内側に嵌合するように、それぞれ床梁31に接合されている。
【0040】
図11(C)は、隣り合う2つのL型部材51の接合方法を示す拡大展開図である。双方におけるフレーム材51a、51aの端部には、それぞれスリット(ウッドタッチパイプ用の孔を含む)がプレカットされており、これに鋼板プレート金具12aを挿入する。鋼板プレート金具12aは、その両側縁に一対のウッドタッチパイプを溶接している。これにより、鋼板プレート金具12aをスリットに挿入すると、くさびのようにフレーム材同士を引き寄せる効果を生じる。挿入後、フレーム材51aと鋼板プレート金具12aとをドリフトピン12bで固定する。フレーム材51aは、ラグスクリュー13により取付孔51cを通して床梁に接合される。
【0041】
図12(A)は、本発明によるボックス型耐震開口フレームの別の実施例を示す図である。(A)のボックス型耐震開口フレーム50は、4つのL型部材51と、隣り合うL型部材51の間に挿入連結された4つのI型部材52とから形成される四角形の耐震開口フレームである。(B)は、I型部材52と、L型部材51のフレーム材51aとの接合部を示す拡大展開図である。双方の端部にはスリットがプレカットされており、鋼板プレート14aを挿入し、ドリフトピン14bで固定する。I型部材52は、ラグスクリューボルト13により取付孔52aを通して床梁に接合される。
【0042】
図13(A)は、ボックス型耐震開口フレーム50を床合板33の上に、つまり水平構面の上面に接合した実施例を示す図である。このボックス型耐震開口フレーム50は、図11に示したものと同じであり、L型部材51を4つ連結して四角形としている。ボックス型耐震開口フレーム50のコーナー部の内側の面と、吹抜部21の隅部の内側の面とが、連続面となるように取り付けられている。このように、耐震開口フレームが開口部の外側に設置される場合も、隅部の形状に沿って耐震開口フレームのコーナー部が接合されているものとする。この取り付け方法の場合、耐震開口フレームによって開口部の面積が小さくなることが避けられる。
【0043】
なお、図13(A)の実施例において、床合板33の施工前に、床梁32の上面にボックス型耐震開口フレーム50を設置してもよい。
【0044】
図13(B)は、(A)のボックス型耐震開口フレーム50における隣り合う2つのL型部材51の接合方法と、床合板33への接合方法を示す拡大展開図である。2つのL型耐震開口フレームの各々のフレーム材51a、51aの端部は、上述の図11(C)で示したように、鋼板プレート金具12a及びドリフトピン12bを用いて接合される。また、ラグスクリュー33を上方から挿入して耐震開口フレームを床合板33に接合しているが、図示のように、床合板33との間に繊維シート15を介在させて接着補強してもよい。
【0045】
図13(C)は、ボックス型水平構面用耐震開口フレーム50を床梁31の下に、つまり水平構面の下面に接合した実施例を示す図である。床梁31の幅よりも耐震開口フレーム50の幅が大きいため、この幅の差を補う幅をもつフレーム受け木34を、床梁31と耐震開口フレーム50の双方に沿って接合し、補強している。
【0046】
なお、図示しないが、図13のボックス型耐震開口フレーム50に替えて、L型耐震開口フレームを水平構面の上面または下面に接合してもよい。
【0047】
図14(A)はボックス型耐震開口フレーム50の、(B)はL型耐震開口フレーム1の別の実施例を示す図である。これらの実施例においては、上述の実施例で図示したものと比較して、フレーム材の厚さ(上下方向)に対して幅W(水平方向)を相対的に広くしている。フレーム材の四角形断面を、上下方向よりも水平方向に長い形状とすることで、上述の実施例のものよりも、水平耐力が強化される。
【0048】
図15は、本発明による水平構面用耐震開口フレームの別の形態である三角型耐震開口フレーム60の実施例を示す図である。三角型耐震開口フレーム60は、吹抜部21の隅部の形状に沿った1つのコーナー部を形成するために直角に剛接合された2つのフレーム材61a、61bと、これらのフレーム材の両端を斜めに連結するフレーム材61cとにより三角型に形成されている。
【0049】
図16は、本発明による水平構面用耐震開口フレームの別の形態であるL型耐震開口フレーム70の実施例を示す図である。L型耐震開口フレーム70は、吹抜部の隅部の形状に沿った1つのコーナー部を形成するために、直角に剛接合された2つのフレーム材71a、71bとによりL型に形成されている。前述のL型フレームと異なり、これらのフレーム材71a、71bは、開口部の一辺と同じ長さであり、それぞれ隣の隅部まで延在している。
【0050】
図17は、本発明による水平構面用耐震開口フレームの別の形態であるコの字型耐震開口フレーム80の実施例を示す図である。コの字型耐震開口フレーム80は、吹抜部の2つの隅部の形状に沿った2つのコーナー部を形成するために、2箇所で直角に剛接合された3つのフレーム材81a、81b及び81cによりコの字型に形成されている。
【0051】
図18は、4つのL型耐震開口フレーム1を屋根面に設置した実施例を示す図である。図示の例では、2つのL型耐震開口フレーム1をコ字状に接合(例えば、図11(C)の接合方法)し、開口部23の隅部に沿ってL型耐震開口フレームの各コーナー部を接合している。図示しないが、ボックス型または三角型の耐震開口フレームを設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1B】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1C】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1D】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1E】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1F】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1G】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1H】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図2】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図3】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図4】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図5】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図6】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図7】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図8】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図9】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、吹抜部における納まりの一実施例を示す図である。
【図10】本発明による水平構面用耐震開口フレームと、横架材との接合方法の一実施例を示す図である。
【図11】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、ボックス型の一実施例を示す図である。
【図12】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、ボックス型の別の実施例を示す図である。
【図13】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、ボックス型のものを、(A)床上に設置した実施例、(B)その連結部の拡大図、(C)床下に設置した実施例を示す図である。
【図14】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、(A)ボックス型及び(B)L型の別の実施例を示す図である。
【図15】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、三角型の実施例を示す図である。
【図16】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、L型の実施例を示す図である。
【図17】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コの字型の実施例を示す図である。
【図18】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、屋根面開口部に設けた実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1、1A〜1Q:L型耐震開口フレーム
1a、1b:フレーム材
2、2a、2b:繊維シート
3、3a、3b、3c:補強材
4:ラグスクリュー
5:構造用合板
6:接合金物
7a:引張ボルト
7b:引張ボルトコネクター
8:メタルプレートコネクター
9:鋼板プレート
10:ドリフトピン
11:ビス
12a:鋼板プレート金具(ウッドタッチパイプ付き)
12b:ドリフトピン
13:ラグスクリュー
14a:鋼板プレート
14b:ドリフトピン
15:繊維シート
16:L型金物
17:等辺山形鋼
18:鋼板L型加工金物
19、19a、19b:不等辺山形鋼
21:吹抜部
22:階段室部
23:屋根面開口部
31:床梁
32:根太
33:床合板
34:フレーム受け木
50:ボックス型耐震開口フレーム
51:L型部材
51a:フレーム材
52:I型部材
60:三角型耐震開口フレーム
61a、61b、61c:フレーム材
70:L型耐震開口フレーム
71a、71b:フレーム材
80:コの字型耐震開口フレーム
81a、81b、81c:フレーム材
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物における水平構面の剛性を高めるための水平構面用耐震開口フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物における1階・2階・3階などの床面、小屋面、屋根面などの水平構面は、上階にかかる水平力を下階の耐力壁に伝達する役割を果たしている。水平構面の一般的な耐震補強部材としては、木製や鋼製の火打ち梁が用いられている(例えば、特許文献1)。
因みに、垂直構面の開口部の耐震開口フレームは、特許文献2などにより公知である。
【特許文献1】特開2004−169270号公報
【特許文献2】特許2946299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以下の通り、木造建築物の水平構面の剛性に関しては、垂直構面とは異なる固有の問題点がある。
(i)木造建築物における水平構面に吹き抜け、階段室、天窓などの開口部を設けた場合、建築基準法の改正や品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)により、開口部以外の水平構面の剛性だけでは建築できない場合が生じる。
(ii)必要とされる水平構面の剛性(床倍率)を高めるために、数多くの火打ち梁や構造用合板を用いるため、労力の増加とコストアップとなっている
(iii)水平構面における開口部は、大地震時に最も弱点となり、耐力の限度を超えた場合は急激に破損する。水平構面の破損により、特に大きな吹抜けがある場合、重い屋根の場合や下屋部分で倒壊する恐れがある。
【0004】
上記問題点をさらに具体的に説明すると、次の通りである。
(i)地震力や風圧力などの水平力が建物の各耐力要素に均等に伝わるためには、屋根や床の面内せん断剛性が十分剛である必要がある。しかし、水平構面の剛性を高めても、大きな吹抜けを設けたり、階段室と近接した位置に吹抜けなどを設けたりすると、床倍率が低下するばかりでなく、床面、小屋面、屋根面の開口端部に応力が集中する。そのため、大きな吹き抜けや階段室の位置などが制限され、特に大きな吹抜けが設けられなくなった。さらに3階建てや狭小地の間口の小さい建物では吹抜けや階段の位置・大きさが大幅に制限される。
(ii)性能表示基準の等級によっては、面内せん断剛性が高い構造用合板を用いても、さらに火打ち梁を設けて水平構面の剛性を高める必要がある。
(iii)水平構面直下の耐力壁線の区画による制限も設けられ、また、耐力壁のバランスや、上下階の力の伝達がスムーズに行われる構造体、及び接合部の緊結強度なども求められている。これは、地震などの大きな水平力が躯体に加わったとき、建物が大きくねじれて倒壊するのを避けるための耐震設計基準として新たに設けられたものである。
(iv)これらにより、日本古来の開放的な民家や、精神的ゆとりの大きな吹き抜けがある間取りなどが大きく制限される。
【0005】
以上の問題点に鑑み、本発明は、木造建築物の水平構面の剛性を高めて耐震性を確保すると同時に、開口部の自由度や開放性も確保できる水平構面用耐震開口フレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成の水平構面用耐震開口フレームを提供する。
(1)本発明による水平構面用耐震開口フレームは、木造建築物の水平構面の開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための水平構面用耐震開口フレームであって、該隅部の形状に沿って接合可能な形状をもつコーナー部を備え、該コーナー部においては、2つのフレーム材の端部が直角に剛接合されている。
(2)上記水平構面用耐震開口フレームの一実施態様においては、前記コーナー部に繊維シートを巻き込み接着している。
(3)上記水平構面用耐震開口フレームの一実施態様においては、前記水平構面用耐震開口フレームが、L型の形状である。
(4)上記水平構面用耐震開口フレームの一実施態様においては、前記水平構面用耐震開口フレームが、ボックス型の形状である。
(5)上記水平構面用耐震開口フレームの一実施態様においては、前記水平構面用耐震開口フレームが、三角型またはコの字型の形状である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は水平構面用耐震開口フレームであって、木造建築物の水平構面の開口部に含まれる1または複数の隅部(凹部及び凸部を含む)に対し、その隅部の形状に沿って接合可能な形状のコーナー部を備え、コーナー部は2つのフレーム材の端部を直角に剛接合して形成されている。このような水平構面用耐震開口フレームを、開口部等の隅部に接合することにより、水平構面全体の剛性が高められ、水平剛性を確保することができる。
【0008】
床や小屋面の水平構面に設けられる吹抜、階段室や屋根面の天窓などの開口部に設けた場合は、開口部自体の剛性を高められるため、開口部を床倍率として算入できるようになり、開口部の制限が少なくなり自由度が確保できる。
【0009】
開口部だけでなく、非開口部においても、さらに剛性を必要とする箇所(平面上のコーナー部や凹部、凸部など)に水平構面用耐震開口フレームを用いることで、全体の水平剛性が高まるので、開口部を設けることの制限を低減することができる。
【0010】
水平構面用耐震開口フレームの形状を、L型、ボックス型、三角型またはコの字型とすることで、開口部の開口面積をほとんど損なわずに設置できる。特に、L型またはボックス型の場合は、中央部分をそのまま開口として利用できる。
【0011】
さらに具体的には、以下の効果を奏する。
(i)本発明の水平構面用耐震開口フレームを床に用いた場合、上階の屋根や壁から下階の壁に水平力(地震・風圧力)を伝えられるように床の剛性が高められ、建築基準法に基づくバランスよく配置された耐力壁が充分に強さを発揮できる。これにより、床が先に壊れることを防ぐ。
(ii)床や屋根が耐力壁に見合う配置と強さであるかを、耐力壁線間距離と床倍率で確認することが必要であるが、本発明の水平構面用耐震開口フレームを用いることで床倍率がアップするので耐震性が増す。
(iii)通常、階段室や吹抜けなどの床の無い部分や屋根の天窓は弱点となり、水平力に対して壊れやすい。本発明の水平構面用耐震開口フレームを開口部に用いることで、この弱点を補い、従来は水平構面としての強度がなかった開口部を床倍率に算入できるため、全体が壊れにくい剛性を保った水平構面として認められるものとなる。
(iv)特に、3階建てや狭小地の間口の小さい建物では吹抜けや階段の位置・大きさが大幅に制約されるが、開口部に床倍率が認められるため、プランの自由度が増す。
(v)本発明の水平構面用耐震開口フレームを用いることによって、水平構面全体のねばりのある耐力と破壊に至るまでの変形量が大きくなることで、地震時に安全に非難する時間を確保できる。
(vi)上階にかかる水平力が、本発明の水平構面用耐震開口フレームを用いた水平構面により下階の耐力壁に確実に伝達されるようになるため、建物全体の耐震性が確保され、地震時に倒壊し難い建物となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施例を示した図面を参照して、本発明による水平構面用耐震開口フレーム(以下、単に「耐震開口フレーム」と称する場合がある)の実施形態を説明する。
【0013】
本発明の耐震開口フレームを適用する水平構面は、木造建築物の2階・3階などの床面、小屋面、屋根面などである。これらの水平構面には、適宜、吹抜部や階段室部などの開口部が設けられる。開口部以外の箇所は、床材や天井材などで塞がれた非開口部となっている。一般的に、1つの開口部は、周囲を梁で囲まれた四角形であり、その隅部の角度は直角である。四角形の一部に変則的な凹部や凸部を有する場合もある。本発明の耐震開口フレームは、基本的には、水平構面の開口部における隅部に接合して使用するものである。この場合の「隅部」には、一般的な四角形における4つの直角の隅部以外に、変則的な凹部や凸部における同様の直角形状の箇所も含まれるものとする。
【0014】
水平構面用耐震開口フレームとは、床剛性のない木造建築物の水平構面開口部(吹抜け、階段室など)の隅部に設置し、開口部でありながら仮想床としての剛性を求めることを目的としたフレーム部材である。
本フレームは、二つの直線材を直角に接合したL型の形状のコーナー部を有することを特徴とし、そのコーナー部は、モーメント抵抗力を高めるために多様な補強材及び補強方法を適用することにより、剛の架構とされている。
構造力学的には、上述したように本フレームのコーナー部を剛接合とし、水平構面開口隅部に設けることで、水平力で生じるコーナー部の回転や変形を止めることができる。
本発明の目的及び効果は、水平構面の開口部に対してx方向及びy方向の水平力(地震・風)に抵抗するL型フレームを開口隅部に組込むことで、開口部の従来の機能を有しながら、どちらの方向の水平力に対しても水平構面として耐震化が図られ、床倍率相当が得られることである。
【0015】
図1A〜図8に、本発明の水平構面用耐震開口フレームの基本形態であるL型耐震開口フレームの種々の実施例を示す。L型耐震開口フレームは、平面視にてL字形状を有しており、2つのフレーム材を直角に配置して端部同士を剛接合することにより形成される。剛接合された直角形状の部分を「コーナー部」と称することとする。コーナー部の形状は、上記の水平構面における隅部に沿った形状となっている。必要に応じてコーナー部の所定の剛性を得るために、多様な接合方法を用いることができる。基本部材である2つのフレーム材に加えて、剛性を高めるための種々の補強部材を用いる場合がある。
【0016】
なお、以下の図1A〜図8で説明するコーナー部の種々の接合方法は、後述するボックス型、三角型及びコの字形の耐震開口フレームにおけるコーナー部にも、同様に適用可能である。
【0017】
図1A(A)〜(C)はそれぞれ、L型耐震開口フレーム1A、1B、1Cのコーナー部接合方法の実施例を示した斜視図である。
図1A(A)のL型耐震開口フレーム1Aでは、2つのフレーム材1a、1bの端部をホゾ加工(以下の実施例のうち、図示しない場合も、同様の加工を施すことも可能とする)し、直角に組合せ接着するとともに、L型金物16をコーナー部内側に当接し、木ビス11等で取り付けている。L型金物は、既製品の他に、L型加工金物でもよい。
【0018】
図1A(B)のL型耐震開口フレーム1Bでは、2つのフレーム材1a、1bの端部を直角に組合せ接着するとともに、双方のフレーム材に跨るように3つの面に帯状の繊維シート2を巻き込み接着剤により接着している。フレーム材1a、1bの側面の貫通孔1cは、L型耐震開口フレームを開口部等の隅部に接合するためのものである。フレーム材1a、1bは、木製角材でもよく、構造用単板積層材(LVL)を角材状に形成したものでもよい(以下の実施例において同じ)。繊維シート2は、例えば、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維等の化学繊維及びこれらを組み合わせた繊維、及びこれらの繊維と金属製繊維との複合繊維である。繊維シートは、高引張強度を有するとともに靱性に優れた繊維をシート状に形成したものである(以下の実施例において同じ)。繊維シート2は、巻き込み方向である長手方向が、繊維の方向であり高引張強度を有する方向である。
【0019】
図1A(C)のL型耐震開口フレーム1Cでは、2つのフレーム材1a、1bを直角に組合せる(適宜、接着剤を用いる。以下、同じ)とともに、補強材3を取付け、さらにフレーム材1a、1bと補強材3の上面を覆うように1枚の略二等辺三角形の構造用合板5を取付け、ビス止めまたは釘止めしている。なお、構造用合板5は、上下面に設けてもよく、また、繊維シート2は、構造用合板5の上から巻き付け接着してもよい(構造用合板を用いる他の実施例において同じ)。
【0020】
図1B(A)のL型耐震開口フレーム1Dでは、構造用合板5を、L型耐震開口フレーム1Dの外側に用いた場合である。ブロック・レンガ構造での壁頂部コンクリート臥梁と同様の発想である。構造用合板5の他の部分は、床梁や根太に釘止めされる。
【0021】
図1B(B)のL型耐震開口フレーム1Eでは、補強材3を、2つのフレーム材1a、1bに対して斜めに配置し、取付孔を通してラグスクリュー4または釘により取り付けている。
【0022】
図1C(A)及び(B)は、L型耐震開口フレーム1Fのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bを直角に組合せ、次に、(B)の手順2で、等辺山形鋼17をコーナー部内側に取付け、木ビス11等で固定する。
【0023】
図1D(A)〜(C)は、L型耐震開口フレーム1Gのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bの端部を直角に組合せ接着するとともに、繊維シート2を巻き込み接着剤により接着している。(B)の手順2では、等辺山形鋼17をコーナー部内側に取付け、(C)の手順3で木ビス11等で固定する。
【0024】
図1E(A)及び(B)は、L型耐震開口フレーム1Hのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bの端部を直角に組合せ接着するとともに、2枚の繊維シート2a、2bを互いに直交する向きでコーナー部に巻き込み接着し、等辺山形鋼17をコーナー部内側に、鋼板L型加工金物18をコーナー部外側に取付ける。フレーム材1a、1bのコーナー部外側の面は、鋼板L形加工金物18の厚さだけ切り欠かれており、鋼板L形加工金物18が嵌合して均一面となる。(B)の手順2で、ボルト等で固定する。
【0025】
図1F(A)〜(C)は、L型耐震開口フレーム1Iのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bを直角に組合せるとともに、補強材3を取付け、さらにコーナー部に繊維シート2を巻き込み接着する。次に、(B)の手順2で、1枚の構造用合板5を取付ける。フレーム材1a、1bの上面は、構造用合板5の厚さだけ切り欠かれており、構造用合板5が嵌合して均一面となる。(C)が完成体である。
【0026】
図1G(A)〜(C)は、L型耐震開口フレーム1Jのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bの端部を直角に組合せ接着するとともに、2枚の繊維シート2a、2bを互いに直交する向きでコーナー部に巻き込み接着する。(B)の手順2では、不等辺山形鋼19をコーナー部内側及び上面に当てて取り付ける。(C)の手順3でビス等で固定する。
【0027】
図1H(A)及び(B)は、L型耐震開口フレーム1Kのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bの端部を直角に組合せ接着するとともに、2枚の繊維シート2a、2bを互いに直交する向きでコーナー部に巻き込み接着し、不等辺山形鋼19aをコーナー部内側及び上面に当てて取り付ける。(B)の手順2では、もう1つの不等辺山形鋼19bをコーナー部外側及び下面に当てて取り付ける。
【0028】
図2(A)〜(C)は、2つのフレーム材1a、1bに対して斜めに取り付ける補強材に意匠性をもたせた場合の実施例を示す。(A)の補強材3aは、鋼管である。(B)の補強材3bは、等辺山形鋼または軽山形鋼である。(C)の補強材3cは、溝型鋼またはコの字チャネル鋼である。いずれも、ラグスクリュー止めまたは木ビス止めとされる。
【0029】
図3(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Lのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bを直角に配置し、対向する接合面の間に、ジベル、スプリットリングまたはシャープレート等の接合金物6を介在させ圧着する。このような接合金物により、接合面の剪断耐力が高められる。接合面に接着剤を併用してもよい。さらに、木材の割れ防止のため、繊維シートと接着剤を併用してもよい。なお、接合面には、引張ボルト用の取付孔1dが予め穿設されている。次に(B)の手順2で、フレーム材1bに対し上下方向に挿入した引張ボルトコネクター1bに対し、フレーム材1aの側面からフレーム材1bの内部まで挿入した引張ボルト7aを螺合させる。(C)の手順3で、繊維シート2を巻き込み接着し、(D)の完成体とする。
【0030】
図4(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Mのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、2つのフレーム材1a、1bを直角に組合せる。(B)の手順2では、双方のフレーム材の上面を跨ぐように、接合金物である長方形のメタルプレートコネクター8を当てて打ち込む。メタルプレートコネクター8は、右の拡大図に示すように、接合する面上に無数の爪が起立し配列されている。上下両面を、メタルプレートコネクター8で接合してもよい。(C)の手順3で、繊維シート2を巻き込み接着し、(D)の完成体とする。
【0031】
図5(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Nのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1では、フレーム材1a、1bを直角に組み合わせる。フレーム材1a、1bの端部には、それぞれスリット1fがプレカットされており、これらのスリット1fに、略L字状で複数のピン孔が穿設された鋼板プレート9を挿入する。鋼板プレート9のピン孔の位置に合うように、フレーム材1a、1bにも取付孔1gが穿設されている。次に(B)の手順2において、フレーム材1a、1bの取付孔1gと鋼板プレート9のピン孔にドリフトピン10を打ち込む。(C)の手順3では、2枚の繊維シート2a、2bを互いに直交する向きでコーナー部に巻き込み接着し、(D)の完成体とする。
【0032】
図6(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Oのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。図5の実施例とほぼ同様であるが、図6では、(A)の手順1において、フレーム材1a、1bの端部を、45度の角度に形成し、スリット1fをプレカットしている。双方のフレーム材の45度の端面同士を接合して直角のコーナー部を形成している。後の手順は、図5と同じである。
【0033】
図7(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Pのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。(A)の手順1に示すように、フレーム材1a、1bのそれぞれ端部を、図示のように部分的に45度の角度に形成し、互いに嵌合する凸と凹の形状に加工し、直角に組み込む(接着剤併用)。(B)の手順2では、ビス11で固定する。木ビスでもよい。(C)の手順3では、2枚の繊維シート2a、2bを互いに直交する向きでコーナー部に巻き込み接着し、(D)の完成体とする。
【0034】
図8(A)〜(D)は、L型耐震開口フレーム1Qのコーナー部接合方法の手順を示した斜視図である。図7の実施例とほぼ同様であるが、図8では、(A)の手順1において、フレーム材1a、1bの端部に傾斜を設けずに、互いに嵌合する凸と凹の形状に加工し、直角に組み込む(接着剤併用)。後の手順は、図7と同じである。
【0035】
図9は、L型耐震開口フレーム1を吹抜部に設置した場合の納まりの実施例を示す図である。床面には、床梁31で囲まれた四角形の吹抜部21が形成されている。非開口部には、梁間に所定の間隔で複数の根太32が架設され、その上に床材が張られる。L型耐震開口フレーム1の厚さ(上下方向)は、床梁31の梁成よりも小さい。4つのL型耐震開口フレーム1がそれぞれ、吹抜部21の4つの隅部の内側に沿って接合されている。(A)の実施例では、根太32の上面が、床梁31の上面よりも上がった位置にある。この場合の納まりとして、L型耐震開口フレーム1の下面を、床梁31の下面に合わせて設置している。(B)の実施例では、根太32の厚さが床梁31の梁成と同じであり双方の上面が揃っている。この場合の納まりとして、L型耐震開口フレーム1の上面を、床梁31の上面に合わせて設置している。
【0036】
なお、図9に示した開口部におけるL型耐震開口フレームの納まりの実施例は、後述するボックス型及び三角型の耐震開口フレームにおいても、同様に適用できる。
【0037】
図10は、L型耐震開口フレーム1と、梁等の横架材との接合方法の実施例を示す図である。(A)のように、床梁31で囲まれた吹抜部21の隅部にラグスクリュー4を用いてL型耐震開口フレーム1が接合されている。(B)は、(A)の取付状態を示す拡大展開図であり、床梁31とL型耐震開口フレーム1の対向する接合面の間に、ジベル、スプリットリング、シャープレート等の接合金物を介在させ圧着している。これにより、接合面の剪断耐力を高める。接合面に接着剤を併用してもよい。さらに、木材の割れ防止のため、繊維シートと接着剤を併用してもよい。その後、ラグスクリュー4で接合固定する。
【0038】
なお、図10に示したL型耐震開口フレームと横架材との接合方法の実施例は、後述するボックス型及び三角型の耐震開口フレームにおいても、同様に適用できる。
【0039】
図11(A)及び(B)はそれぞれ、本発明の水平構面用耐震開口フレームの別の形態であるボックス型耐震開口フレームの実施例を示す図である。ボックス型耐震開口フレーム50は、上述のL型耐震開口フレームと同様の構成のL型部材51を4つ連結して四角形とした耐震開口フレームである。ボックス型耐震開口フレーム50は、(A)の実施例では吹抜部21の内側に嵌合するように、(B)の実施例では階段室部22の内側に嵌合するように、それぞれ床梁31に接合されている。
【0040】
図11(C)は、隣り合う2つのL型部材51の接合方法を示す拡大展開図である。双方におけるフレーム材51a、51aの端部には、それぞれスリット(ウッドタッチパイプ用の孔を含む)がプレカットされており、これに鋼板プレート金具12aを挿入する。鋼板プレート金具12aは、その両側縁に一対のウッドタッチパイプを溶接している。これにより、鋼板プレート金具12aをスリットに挿入すると、くさびのようにフレーム材同士を引き寄せる効果を生じる。挿入後、フレーム材51aと鋼板プレート金具12aとをドリフトピン12bで固定する。フレーム材51aは、ラグスクリュー13により取付孔51cを通して床梁に接合される。
【0041】
図12(A)は、本発明によるボックス型耐震開口フレームの別の実施例を示す図である。(A)のボックス型耐震開口フレーム50は、4つのL型部材51と、隣り合うL型部材51の間に挿入連結された4つのI型部材52とから形成される四角形の耐震開口フレームである。(B)は、I型部材52と、L型部材51のフレーム材51aとの接合部を示す拡大展開図である。双方の端部にはスリットがプレカットされており、鋼板プレート14aを挿入し、ドリフトピン14bで固定する。I型部材52は、ラグスクリューボルト13により取付孔52aを通して床梁に接合される。
【0042】
図13(A)は、ボックス型耐震開口フレーム50を床合板33の上に、つまり水平構面の上面に接合した実施例を示す図である。このボックス型耐震開口フレーム50は、図11に示したものと同じであり、L型部材51を4つ連結して四角形としている。ボックス型耐震開口フレーム50のコーナー部の内側の面と、吹抜部21の隅部の内側の面とが、連続面となるように取り付けられている。このように、耐震開口フレームが開口部の外側に設置される場合も、隅部の形状に沿って耐震開口フレームのコーナー部が接合されているものとする。この取り付け方法の場合、耐震開口フレームによって開口部の面積が小さくなることが避けられる。
【0043】
なお、図13(A)の実施例において、床合板33の施工前に、床梁32の上面にボックス型耐震開口フレーム50を設置してもよい。
【0044】
図13(B)は、(A)のボックス型耐震開口フレーム50における隣り合う2つのL型部材51の接合方法と、床合板33への接合方法を示す拡大展開図である。2つのL型耐震開口フレームの各々のフレーム材51a、51aの端部は、上述の図11(C)で示したように、鋼板プレート金具12a及びドリフトピン12bを用いて接合される。また、ラグスクリュー33を上方から挿入して耐震開口フレームを床合板33に接合しているが、図示のように、床合板33との間に繊維シート15を介在させて接着補強してもよい。
【0045】
図13(C)は、ボックス型水平構面用耐震開口フレーム50を床梁31の下に、つまり水平構面の下面に接合した実施例を示す図である。床梁31の幅よりも耐震開口フレーム50の幅が大きいため、この幅の差を補う幅をもつフレーム受け木34を、床梁31と耐震開口フレーム50の双方に沿って接合し、補強している。
【0046】
なお、図示しないが、図13のボックス型耐震開口フレーム50に替えて、L型耐震開口フレームを水平構面の上面または下面に接合してもよい。
【0047】
図14(A)はボックス型耐震開口フレーム50の、(B)はL型耐震開口フレーム1の別の実施例を示す図である。これらの実施例においては、上述の実施例で図示したものと比較して、フレーム材の厚さ(上下方向)に対して幅W(水平方向)を相対的に広くしている。フレーム材の四角形断面を、上下方向よりも水平方向に長い形状とすることで、上述の実施例のものよりも、水平耐力が強化される。
【0048】
図15は、本発明による水平構面用耐震開口フレームの別の形態である三角型耐震開口フレーム60の実施例を示す図である。三角型耐震開口フレーム60は、吹抜部21の隅部の形状に沿った1つのコーナー部を形成するために直角に剛接合された2つのフレーム材61a、61bと、これらのフレーム材の両端を斜めに連結するフレーム材61cとにより三角型に形成されている。
【0049】
図16は、本発明による水平構面用耐震開口フレームの別の形態であるL型耐震開口フレーム70の実施例を示す図である。L型耐震開口フレーム70は、吹抜部の隅部の形状に沿った1つのコーナー部を形成するために、直角に剛接合された2つのフレーム材71a、71bとによりL型に形成されている。前述のL型フレームと異なり、これらのフレーム材71a、71bは、開口部の一辺と同じ長さであり、それぞれ隣の隅部まで延在している。
【0050】
図17は、本発明による水平構面用耐震開口フレームの別の形態であるコの字型耐震開口フレーム80の実施例を示す図である。コの字型耐震開口フレーム80は、吹抜部の2つの隅部の形状に沿った2つのコーナー部を形成するために、2箇所で直角に剛接合された3つのフレーム材81a、81b及び81cによりコの字型に形成されている。
【0051】
図18は、4つのL型耐震開口フレーム1を屋根面に設置した実施例を示す図である。図示の例では、2つのL型耐震開口フレーム1をコ字状に接合(例えば、図11(C)の接合方法)し、開口部23の隅部に沿ってL型耐震開口フレームの各コーナー部を接合している。図示しないが、ボックス型または三角型の耐震開口フレームを設置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1B】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1C】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1D】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1E】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1F】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1G】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図1H】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の一実施例を示す図である。
【図2】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図3】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図4】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図5】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図6】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図7】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図8】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コーナー部接合方法の別の実施例を示す図である。
【図9】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、吹抜部における納まりの一実施例を示す図である。
【図10】本発明による水平構面用耐震開口フレームと、横架材との接合方法の一実施例を示す図である。
【図11】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、ボックス型の一実施例を示す図である。
【図12】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、ボックス型の別の実施例を示す図である。
【図13】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、ボックス型のものを、(A)床上に設置した実施例、(B)その連結部の拡大図、(C)床下に設置した実施例を示す図である。
【図14】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、(A)ボックス型及び(B)L型の別の実施例を示す図である。
【図15】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、三角型の実施例を示す図である。
【図16】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、L型の実施例を示す図である。
【図17】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、コの字型の実施例を示す図である。
【図18】本発明による水平構面用耐震開口フレームの、屋根面開口部に設けた実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1、1A〜1Q:L型耐震開口フレーム
1a、1b:フレーム材
2、2a、2b:繊維シート
3、3a、3b、3c:補強材
4:ラグスクリュー
5:構造用合板
6:接合金物
7a:引張ボルト
7b:引張ボルトコネクター
8:メタルプレートコネクター
9:鋼板プレート
10:ドリフトピン
11:ビス
12a:鋼板プレート金具(ウッドタッチパイプ付き)
12b:ドリフトピン
13:ラグスクリュー
14a:鋼板プレート
14b:ドリフトピン
15:繊維シート
16:L型金物
17:等辺山形鋼
18:鋼板L型加工金物
19、19a、19b:不等辺山形鋼
21:吹抜部
22:階段室部
23:屋根面開口部
31:床梁
32:根太
33:床合板
34:フレーム受け木
50:ボックス型耐震開口フレーム
51:L型部材
51a:フレーム材
52:I型部材
60:三角型耐震開口フレーム
61a、61b、61c:フレーム材
70:L型耐震開口フレーム
71a、71b:フレーム材
80:コの字型耐震開口フレーム
81a、81b、81c:フレーム材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の水平構面の開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための水平構面用耐震開口フレーム(1、50、60、70、80)であって、該隅部の形状に沿って接合可能な形状をもつコーナー部を備え、該コーナー部においては、2つのフレーム材(1a、1b)の端部が直角に剛接合されていることを特徴とする水平構面用耐震開口フレーム。
【請求項2】
前記コーナー部に繊維シート(2)を巻き込み接着していることを特徴とする請求項1に記載の水平構面用耐震開口フレーム。
【請求項3】
前記水平構面用耐震開口フレームが、L型の形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の水平構面用耐震開口フレーム。
【請求項4】
前記水平構面用耐震開口フレームが、ボックス型の形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の水平構面用耐震開口フレーム。
【請求項5】
前記水平構面用耐震開口フレームが、三角型またはコの字型の形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の水平構面用耐震開口フレーム。
【請求項1】
木造建築物の水平構面の開口部に含まれる1または複数の隅部に接合するための水平構面用耐震開口フレーム(1、50、60、70、80)であって、該隅部の形状に沿って接合可能な形状をもつコーナー部を備え、該コーナー部においては、2つのフレーム材(1a、1b)の端部が直角に剛接合されていることを特徴とする水平構面用耐震開口フレーム。
【請求項2】
前記コーナー部に繊維シート(2)を巻き込み接着していることを特徴とする請求項1に記載の水平構面用耐震開口フレーム。
【請求項3】
前記水平構面用耐震開口フレームが、L型の形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の水平構面用耐震開口フレーム。
【請求項4】
前記水平構面用耐震開口フレームが、ボックス型の形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の水平構面用耐震開口フレーム。
【請求項5】
前記水平構面用耐震開口フレームが、三角型またはコの字型の形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の水平構面用耐震開口フレーム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−47951(P2010−47951A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212583(P2008−212583)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(593053977)ジェイ建築システム株式会社 (13)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(593053977)ジェイ建築システム株式会社 (13)
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