説明

水性の染み阻止被覆組成物

染みを阻止するための水性被覆組成物および該被覆組成物の使用方法が記載される。該被覆組成物は、エチレン性不飽和非イオン性モノマー、0より多く且つ1.5質量%未満のエチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩、および1.5質量%より多く且つ3質量%未満のメタクリル酸の、一段の乳化重合から誘導されるコポリマーの水性分散液を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
この開示は染み阻止プライマー組成物、およびより特定には、水性コポリマー分散液を包含する染み阻止組成物、および該染み阻止組成物の製造方法および使用方法に関する。
【0002】
背景
染み阻止被覆組成物(即ちプライマー)は、未被覆の表面または予め被覆された基材を包含する基材表面に適用される。それらの被覆物は、付着を促進し、且つ、下にある極性または無極性の汚染剤に対するバリア被覆物としてはたらく。基材はしばしば可溶性または移動性の汚染剤を含有する。水ベースの被覆物の性質からして、しばしば該汚染剤は基材から、被覆物内へと、およびまたは被覆物を通じて浸出し、被覆物の表面変色を引き起こす。例えば、木材、例えば赤色木材、シダー、ニレ、メルバウおよびマホガニー中に含有されるタンニンは、基材から被覆物内に浸出することがあり、タンニンの染みを引き起こし、それが被覆物表面上での変色として現れる。局地的な染みまたは変色の視覚的な外観は、水または湿った箇所への基材の曝露によって、予め被覆された基材の抽出物から顕在化することがある。さらには、セメント質基材中に含有される塩は、しばしば、基材からペイント被覆物への塩の移動によって引き起こされる染みである風解を引き起こし、その際、それは白い堆積物として現れる。基材の染みおよび予め基材に適用された被覆物の染みは、基材外部の原因によって引き起こされることもある。例えば、タバコの煙は、淡い色の被覆物を変色させるニコチンの染みを引き起こし、ペンからのインクは基材上にマーカーの染みを引き起こす。それらの種類の染みの各個は、被覆物において非常に望ましくない。
【0003】
概要
エチレン性不飽和非イオン性モノマー、0より多く且つ1.5質量%未満のエチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩、および1.5質量%より多く且つ3質量%未満のメタクリル酸またはそれらの塩の、一段の乳化重合から誘導されるコポリマーを含む水性分散液を含む、染みを阻止するための水性被覆組成物が提供される。該エチレン性不飽和非イオン性モノマーは、アルキルアクリレート、例えばブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートを包含してよく、且つ、さらにスチレン、酢酸ビニル、またはペンダント官能基を包含するモノマーを包含してよい。該コポリマーは、1.2質量%未満のエチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩を包含してよく、且つ、該エチレン性不飽和強酸モノマーはリン含有モノマー、例えばホスホエチル(メタ)アクリレートを包含してよい。該コポリマーは、0℃〜45℃のガラス転移温度(Tg)を有することができる。いくつかの実施態様において、該コポリマーは、エチレン性不飽和非イオン性モノマー、エチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩、およびメタクリル酸またはそれらの塩からなるモノマーから誘導される。いくつかの実施態様において、コポリマーを、30〜60質量%のスチレン、15〜40質量%のエチルヘキシルアクリレート、10〜35質量%のブチルアクリレート、0.5〜5質量%のウレイド官能性モノマー、0.2〜2質量%のエチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩、および1.5%〜3質量%のメタクリル酸またはそれらの塩から誘導してもよい。
【0004】
上述のコポリマーを含む水性被覆組成物を形成し、該水性被覆組成物を、染みを有する基材に適用し、且つ、前記の水性被覆組成物を乾燥するか乾燥させて染みを阻止することを含む、染みを阻止する方法も提供される。
【0005】
1つまたはそれより多くの実施態様の詳細は、以下の説明内に示される。他の特徴、対象および利点は、説明から、および請求項から明らかになる。
【0006】
発明の詳細な説明
ここで使用される用語「含む」およびその変化形は、用語「包含する」およびその変化形と同義的に使用され、且つ、開かれた、限定されない用語である。
【0007】
ここで使用される用語「染み」は、可視または裸眼で容易に明らかであろうとなかろうと、任意の痕跡、汚点、変色または任意の堆積物を包含する。従って、用語「染み」はインク、クレヨン、口紅、グリースペンシル、煙残留物、タンニン、水抽出物およびその種のものによって引き起こされる痕跡を包含する。それらの染みは、住居または商業用の壁上での落書き、ペンまたはカラーマーカーからのマーキングとして、自然に木製基材上、木材複合剤上、コンクリート基材上、紙基材(例えば壁板カバー)上、および通常、1つまたはそれより多くの液体被覆物で塗装される他の基材上で見出されることがある。
【0008】
ここで使用される用語「染みの阻止」は、染みを拘束し、阻止または遮蔽することを意味し、その際、それは見えないか、または本質的にあまり可視ではなく、1つまたはそれより多くの液体被覆物が適用され且つ乾燥されたら、または染みが可視ではないか、またはわずかに可視であるだけである場合において、その染みは1つまたはそれより多くの引き続き適用され且つ乾燥される液体被覆物を通して移動できない。
【0009】
染みを阻止するための水性被覆組成物は、水性コポリマー分散液を包含する。該コポリマーは、エチレン性不飽和非イオン性モノマー、0より多く且つ1.5質量%未満のエチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩、および約1.5質量%より多く且つ約3質量%未満のメタクリル酸またはそれらの塩の、一段の乳化重合から誘導される。
【0010】
適したエチレン性不飽和非イオン性モノマーは、ペンダント酸基または塩基性基を有さない任意のモノマーまたはモノマー残基を包含する。適したエチレン性不飽和非イオン性モノマーの代表的な例は、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、例えばメチルアクリレートまたはメチルメタクリレート、エチルアクリレートまたはエチルメタクリレート、ブチルアクリレートまたはブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートまたは2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレートまたはシクロヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレートまたはオクチルメタクリレート、デシルアクリレートまたはデシルメタクリレート、イソデシルアクリレートまたはイソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレートまたはラウリルメタクリレート、オレイルアクリレートまたはオレイルメタクリレート、パルチミルアクリレートまたはパルチミルメタクリレート、ステアリルアクリレートまたはステアリルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレート、およびヒドロキシプロピルアクリレートまたはヒドロキシプロピルメタクリレート; アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル; アクリルアミドまたはメタクリルアミド; アミノ−官能性モノマー、例えばジメチルアミノエチルアクリレートまたはジメチルアミノエチルメタクリレート; ウレイド−官能性モノマー例えばN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア; シラン−官能性モノマー例えばメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよびビニルトリアセトキシシラン; スチレンおよび置換スチレン; ブタジエン; エチレン; プロピレン; α−オレフィン、例えば1−デセン、酢酸ビニル、ビニルバーセテート(vinyl versatate)、ビニルブチレートおよび他のビニルエステル; ビニルモノマー、例えば塩化ビニル、ビニルトルエン、ビニルナフタレンおよびビニルベンゾフェノン; および塩化ビニリデン; およびそれらの組み合わせを包含する。特定のエチレン性不飽和非イオン性モノマーの選択は、目標とするガラス転移温度に到達することに基づくか、または他の所望の特性をコポリマーに提供するためであってよい。
【0011】
いくつかの実施態様において、エチレン性不飽和非イオン性モノマーは、1つまたはそれより多くのアルキルアクリレートを包含してよい。例えば、エチレン性不飽和非イオン性モノマーは、2−エチルヘキシルアクリレートを包含してよく、且つ、随意にさらにブチルアクリレートを包含してよい。いくつかの実施態様において、エチレン性不飽和非イオン性モノマーは、スチレンとアルキルアクリレートとを包含してよい。いくつかの実施態様において、エチレン性不飽和非イオン性モノマーは、酢酸ビニルとアルキルアクリレートとを包含してよい。
【0012】
いくつかの実施態様において、エチレン性不飽和非イオン性モノマーは、様々な基材上への湿式付着を促進する官能性のペンダント基を有するモノマーを包含してよい。それらの基は、限定されずに、アミノ、シラン、イミダゾール、アセトアセトナト、イミダゾリドン、ジアミン、ウレアおよびウレイド官能基を包含してよい。例えば、官能性モノマーは、ウレイド官能性モノマー、例えばN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアであってよい。
【0013】
適したエチレン性不飽和強酸モノマーは、4未満のpKa(水中、20℃)を有するペンダント酸性基を有する任意のモノマーまたはかかるモノマーの塩を包含する。酸モノマーの適した塩は、アンモニウム、ナトリウム、カリウムおよびリチウム塩を包含する。適したエチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩の代表的な例は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸; 1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸; ビニルスルホン酸; スチレンスルホン酸; アルキルアリルスルホスクシン酸; スルホエチルアクリレートまたはスルホエチルメタクリレート; ホスホアルキルアクリレートまたはホスホアルキルメタクリレート、例えばホスホエチルアクリレートまたはホスホエチルメタクリレート、ホスホプロピルアクリレートまたはホスホプロピルメタクリレート、ホスホブチルアクリレートまたはホスホブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートまたはポリエチレングリコールメタクリレートのリン酸エステル、およびポリプロピレングリコールアクリレートまたはポリプロピレングリコールメタクリレートのリン酸エステル; ホスホアルキルクロトネート; ホスホアルキルマレエート; ホスホアルキルフマレート; ホスホジアルキルアクリレートまたはホスホジアルキルメタクリレート; ホスホジアルキルクロトネート; アリルホスフェート; およびそれらの組み合わせを包含する。
【0014】
いくつかの実施態様において、エチレン性不飽和強酸モノマーは、約1.2%未満、またはさらには約1.0%未満の質量パーセントを有してよい。いくつかの実施態様において、エチレン性不飽和強酸モノマーは、ホスホエチルアクリレートまたはホスホエチルメタクリレートまたはその両方の組み合わせを包含できるリン含有モノマーを包含してよい。
【0015】
該コポリマーを、約1.5質量%〜約3.0質量%の量のメタクリル酸から誘導できる。いくつかの実施態様において、該コポリマーを約1.8質量%〜約2.5質量%の量のメタクリル酸から誘導できる。いくつかの実施態様において、該コポリマーは、追加的なカルボン酸、例えばアクリル酸およびイタコン酸を包含してよい。しかしながら、いくつかの実施態様において、該コポリマーは、追加的なカルボン酸、例えばアクリル酸およびイタコン酸からは誘導されないこともある。
【0016】
いくつかの実施態様において、該コポリマーは約0℃〜約45℃の温度のガラス転移温度を有してよい。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定を使用して測定できる。いくつかの実施態様において、該コポリマーを、エチレン性不飽和非イオン性モノマー、エチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩、およびメタクリル酸またはそれらの塩からなるモノマーから誘導できる。いくつかの実施態様において、コポリマーを、30〜55質量%のスチレン; 20〜65質量%の2−エチルヘキシルアクリレート; 0.5〜5質量%のウレイド官能性モノマー、0.2〜2質量%のエチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩、および1.5%〜3質量%のメタクリル酸またはそれらの塩から誘導できる。いくつかの実施態様において、一部の2−エチルヘキシルアクリレートをブチルアクリレートで置き換えることができる。
【0017】
水性コポリマー分散液を、フリーラジカル水性乳化重合を使用して、モノマー成分を重合することによって調製できる。該乳化重合を1段で実施する。乳化重合温度は一般に、約30℃〜約95℃、または約70℃〜約90℃である。重合媒体は、水単独、または水と水混和性液体、例えばメタノールとの混合物を包含してよい。いくつかの実施態様において、水を単独で使用する。乳化重合を、バッチ工程として、または段階または勾配のある手順を包含する送り工程の形態で行うことができる。いくつかの実施態様において、重合バッチの一部を重合温度に加熱し、そして部分的に重合し、且つ、その重合バッチの残りを引き続き重合ゾーンに連続的に、段階的にまたは濃度勾配の重ね合わせで、1つまたはそれより多くが純粋な形態または乳化された形態のモノマーを含有する、通常、複数の空間的に離された供給流を介して供給する一方、重合を維持する、送り工程を使用する。
【0018】
初めに導入される混合物および/またはモノマー供給流は、少量、一般に重合されるモノマーの総量に対して約0.5質量%未満の界面活性剤を含有してよい。適した界面活性剤の代表的な例は、アルキル、アリールまたはアルキルアリールスルフェート、スルホネートまたはホスフェートのアルカリ金属またはアンモニウム塩; アルキルスルホン酸; スルホスクシネート塩; 脂肪酸; エチレン性不飽和界面活性剤モノマー; アルコールまたはフェノール、およびそれらの組み合わせを包含する。それらの界面活性剤は多くの場合、アルコキシル化されていてよく、且つ、典型的にはエチレンオキシドを使用してエトキシ化されている。いくつかの実施態様において、界面活性剤は少なくとも1つのアニオン性界面活性剤、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤、またはそれらの組み合わせを包含してよい。例えば、非イオン性のアルコキシル化カルボン酸、または8〜24個の炭素原子(例えば12〜16個の炭素原子)を有するアルコールおよび/またはアニオン性アリール(例えばトリスチリル)フェノールホスフェートを水性組成物中で使用できる。いくつかの実施態様において、それらの補助界面活性剤を用いた予備乳化の後にモノマーを重合ゾーンに供給できる。いくつかの実施態様において、1つまたはそれより多くの界面活性剤を重合後に添加することもできる。
【0019】
フリーラジカル乳化重合を、フリーラジカル重合開始剤の存在中で行ってよい。本方法において使用できるフリーラジカル重合開始剤は、フリーラジカル水性乳化重合を開始できる全てのものであり、アルカリ金属のペルオキシ二硫酸塩およびH22、またはアゾ化合物を包含する。少なくとも1つの有機還元剤および少なくとも1つのペルオキシドおよび/またはヒドロペルオキシド、たとえばtert−ブチルヒドロペルオキシド、およびヒドロキシメタンスルフィン酸または過酸化水素のナトリウム金属塩およびアスコルビン酸を含む、組み合わされた系を使用してもよい。重合媒体中で可溶性である少量の金属化合物を追加的に含有し、且つ、その金属成分が1つより多くの酸化状態で存在できる、組み合わされた系を使用してもよく、例えば、アスコルビン酸/硫酸鉄(II)/過酸化水素であり、その際、アスコルビン酸はヒドロキシメタンスルフィン酸のナトリウム金属塩、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムまたはナトリウム金属重亜硫酸塩によって置き換えられてよく、且つ、過酸化水素はtert−ブチルヒドロペルオキシドまたはアルカリ金属のペルオキシ二硫酸塩および/またはペルオキシ二硫酸アンモニウムによって置き換えられてよい。一般に、用いられるフリーラジカル開始剤の量は、重合されるモノマーの総量に対して約0.1〜約2質量%である。いくつかの実施態様において、開始剤は、単独または組み合わされた系の成分として、アンモニウムおよび/またはアルカリ金属のペルオキシ二硫酸塩(例えばペルオキシ二硫酸ナトリウム)である。
【0020】
フリーラジカル水性乳化重合の間に、フリーラジカル開始剤系を重合反応器に添加する手法は重大ではない。それを重合反応器内に全て初めに導入するか、または連続的または段階的に、フリーラジカル水性乳化重合の間にそれが消費されたときに添加してもよい。詳細には、これは、平均的な当業者に公知の手法において、開始剤系の化学的性質からと、重合温度との両方に依存する。いくつかの実施態様において、いくらかは開始時に導入され、且つ、それが消費されたときにその残りが重合ゾーンへと添加される。フリーラジカル水性乳化重合を、超大気圧または減圧下で行うことも可能である。
【0021】
連鎖移動剤、例えばハロゲン化合物、例えばテトラブロモメタン; アリル化合物; またはメルカプタン、例えばアルキルチオグリコレート、アルキルメルカプトアルカノエート、例えばイソオクチルメルカプトプロピオネート、およびC4〜C22−直鎖または分枝鎖アルキルメルカプタン、例えばt−ドデシルメルカプタンを、エマルションコポリマーの分子量調節のために使用できる。単数または複数の連鎖移動剤を、1回またはそれより多くの添加で、または連続的に、直線的またはそうではなく、反応時間のほとんどまたは全てに及んで、または反応時間の限られた部分の間に添加できる。一般に、使用される単数または複数の連鎖移動剤の量は、重合されるモノマーの総量に対して約5質量%未満である。
【0022】
水性ポリマー分散液を、10〜75質量%、15〜65質量%、または20〜60質量%の総固体含有率で調製できる。水性ポリマー分散液をその後、必要な場合、濃縮して、総固体含有率40〜75質量%にできる。水性ポリマー分散液を、自体公知の手法で、再分散可能なポリマー粉末に変換できる(例えば噴霧乾燥、回転乾燥または吸込フィルタ乾燥)。水性ポリマー分散液が乾燥される場合、乾燥助剤を分散液と共に使用してよい。コポリマーは長い貯蔵寿命を有し、且つ、染み阻止被覆組成物において使用するために水中で再分散できる。
【0023】
水性ポリマー分散液を、他の成分、例えばポリマー結合剤、増粘剤、充填剤、顔料、染料、および他の添加剤と混合してよい。混合の順序は重大ではないが、固体成分、例えば特定の充填剤の添加のためには、組成物中に充分な水が存在することが必要である。
【0024】
水性組成物を任意の適した方法、例えば刷毛塗りおよび噴霧法など、例えばロール被覆、ドクターブレードによる適用、印刷法、空気−噴霧化噴霧、空気補助噴霧、無気噴霧、高容量低圧噴霧、および空気補助無気噴霧によって適用できる。
【0025】
染みの阻止方法において、水性被覆組成物を基材、例えば金属、木材、木材複合剤、コンクリート、紙(例えば壁板カバー)など、および通常、1つまたはそれより多くの液体被覆物で塗装される、他のかかる基材に適用してよい。いくつかの実施態様において、基材はプライマー処理された表面であってよく、さらには予め塗装された表面であってもよい。基材上の水性被覆組成物は乾燥して、または加熱によってまたは加熱によらずに乾燥されて、染み阻止被覆物を形成できる。
【0026】
実施例
染み阻止組成物の実施例と比較例とを、両者の組成物を28%のPVC、100g/LのVOCのプライマー配合物中に包含させ、亜鉛酸化物を含有しないことによって比較した。比較例による染み阻止組成物を、乳化重合により、且つ、以下の組成物を有して調製した: 102部の水、1.5部のDisponil FES 77 (Cognis Corporationから入手可能)、0.4部の水酸化アンモニウム、2.5部のアクリル酸、47.2部のエチルヘキシルアクリレート、42.5部のスチレン、7.8部のRohamere 6844 (25% UMA、Rohm Tech Inc.から入手可能)、および0.2部のt−DMK。実施例による染み阻止組成物を、乳化重合により、且つ、以下を包含して調製した(質量に対する): 102部の水、1.5部のDisponil FES 77、1.0部のSipomer PAM 4000、0.4部の水酸化アンモニウム、2.0部のメタクリル酸、47.0部のエチルヘキシルアクリレート、42.2部のスチレン、7.8部のRohamere 6844および0.2部のt−DMK。
【0027】
高品質な全アクリルの内装用艶無しペイント(膜A)を、白色スクラブチャートフォーム(scrub chart form) P122−10N上に流し込んだ。膜Aの乾燥膜厚は3〜4ミルであった。該ペイント膜を少なくとも7日間硬化させた。
【0028】
その後、幅広、さらには帯状のシャーピーパーマネントブラック(染み1)を、アクリル艶無しペイント膜Aに垂直に適用した。染み1の帯の総幅は少なくとも1インチであった。幅広、さらには帯状のクレイヨラの可洗緑色ウインドウマーカー(染み2)をアクリル艶無しペイント膜Aに垂直に、且つ、染み1の帯の少なくとも3インチ下方に適用した。染み2の帯の総幅も、少なくとも1インチであった。染み1および2の帯を少なくとも24時間乾燥させた。
【0029】
その後、比較例による染み阻止組成物を含むプライマー、および実施例による染み阻止組成物を含むプライマーを、染み1と染み2との両方の上に、約3.5ミルのウェット膜厚で適用した。該プライマーを同時に、視覚および分光による比較を容易にするために、並べた配置で適用した。該プライマーを3時間、乾燥させた。
【0030】
膜Aのために使用されたペイントを、複合パネル上に、約5ミルのウェット膜厚で再度適用した(膜B)。その後、このパネルを終夜乾燥させた。
【0031】
その後、総色差の示度(ΔE)を、膜Bの染みのない部分を色ブランクまたは標準として固定し、その後引き続き、プライマーの染みのついた部分を前記の標準に対して読み取ることによって測定した。結果は以下の通りである:
【表1】

【0032】
比較例による染み阻止組成物を含むプライマー、および実施例による染み阻止組成物を含むプライマーを、タンニンを多く含む1インチ×6インチのシダー版上にも、約2ミルの乾燥膜厚で被覆した。該プライマー被覆物を終夜乾燥させた。
【0033】
被覆されたシダー板をその後、湿ったチャンバーまたは65℃の水浴内で、被覆された側を水表面から約3インチのところで水に対向させて設置した。被覆された板を、約48時間「蒸し」て、タンニンを浸出させた。その後、被覆された板を湿ったチャンバーまたは水浴から取り出し、次に、プライマー部分の黄色と白色の指数(ASTM E313)を読み取った。結果は以下の通りである:
【表2】

【0034】
ASTM標準 D3359−乾燥付着法(クロスカット)を、多層基板上で、24時間の乾燥時間後、比較例による染み阻止組成物を包含するプライマーと、実施例による染み阻止組成物を包含するプライマーとの両方において実施した。結果は以下の通りである:
【表3】

【0035】
ランク付けは0から5Bにわたり、その際、5Bは、クロスカット被覆物のどの部分も除去されない最高の付着であり、且つ、0はクロスカット被覆物の完全な除去または付着不良である。
【0036】
粘度の測定は、KUおよびICI粘度と同等に達するために、25%少ない増粘剤しか必要とされない点で、実施例による染み阻止組成物を包含するプライマーが、比較例による染み阻止組成物を包含するプライマーと比較して、粘度応答を上昇させることを示した。
【0037】
いくつかの実施態様が記載されている。それにもかかわらず、当業者は様々な変更をすることができると理解されるべきである。さらには、配合物、方法または製品の特定の代表的な組み合わせのみがここで開示され、特に記載される一方、方法工程の他の組合せ、または組成物の成分または製品の組み合わせが付記の特許請求の範囲に入ることが意図されている。従って、工程、成分または要素の組み合わせがここで明確に述べられるが、しかしながら、工程、成分および要素の全ての他の組み合わせは、明確に申し立てられなかったとしても包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染みを阻止するための水性被覆組成物であって、エチレン性不飽和の非イオン性モノマー、0より多く且つ1.5質量%未満のエチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩、および1.5質量%より多く且つ3質量%未満のメタクリル酸またはそれらの塩の、一段の乳化重合から誘導されるコポリマーを含む水性分散液を含む、水性被覆組成物。
【請求項2】
エチレン性不飽和非イオン性モノマーが、アルキルアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
エチレン性不飽和非イオン性モノマーが、さらにスチレンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
エチレン性不飽和非イオン性モノマーが、さらに酢酸ビニルを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
エチレン性不飽和非イオン性モノマーが、さらに官能性ペンダント基を有するモノマーを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
官能性ペンダント基が、1つまたはそれより多くのアミノ、シラン、イミダゾール、アセトアセトナト、イミダゾリジオン ジアミン、ウレア、およびウレイド官能基を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
コポリマーが、1.2質量%未満のエチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
エチレン性不飽和強酸モノマーが、リン含有モノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
エチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩が、ホスホエチル(メタ)アクリレートを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
1つまたはそれより多くの界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
1つまたはそれより多くの界面活性剤が、トリスチリルフェノールホスフェートを包含する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
1つまたはそれより多くの界面活性剤が、非イオン性アルコキシル化カルボン酸または8〜24個の炭素原子を有するアルコールを包含する、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
コポリマーが、0℃〜45℃のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
コポリマーが、エチレン性不飽和非イオン性モノマー、エチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩、およびメタクリル酸またはそれらの塩からなるモノマーから誘導される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
コポリマーが、0℃〜45℃のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
染みを阻止する方法であって、
(a) エチレン性不飽和非イオン性モノマー、0より多く且つ1.5質量%未満のエチレン性不飽和強酸モノマーまたはそれらの塩、および1.5質量%より多く且つ3質量%未満のメタクリル酸から誘導されるコポリマーを含む水性被覆組成物を形成すること;
(b) 前記の水性被覆組成物を、染みを有する基材に適用すること; および
(c) 前記の水性被覆組成物を乾燥して、または乾燥させて、染みを防ぐこと
を含む方法。

【公表番号】特表2012−508805(P2012−508805A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535996(P2011−535996)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064952
【国際公開番号】WO2010/055044
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】