説明

水性エポキシ樹脂組成物

【課題】エポキシ樹脂(A)とアミン系硬化剤(B)とを含有する水性エポキシ樹脂組成物。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるアミン系硬化剤を含有する水性エポキシ樹脂組成物。〔式中、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は水酸基を表す。〕。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な水分散性、造膜性を示し、防食性に優れた塗膜を得ることが出来る水性エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エポキシ樹脂組成物は機械的特性、電気的特性に優れ、接着性、耐溶剤性、耐水性、耐熱性等が良好な硬化物が得られることから、電気・電子部品の絶縁材料、接着剤、塗料、土木建築用等に広く用いられている。
【0003】
特に塗料用途等においては、各種の有機溶剤を用いた溶剤希釈タイプが一般的であったが、近年、大気汚染防止、作業環境改善等を含めた地球環境保全の観点から揮発性有機化合物(VOC)総量規制の実施の方向へ進んでいる。このため、有機溶剤を使用しない水性エポキシ樹脂組成物が注目を浴びている。水性エポキシ樹脂組成物は、作業環境、取り扱い作業性などの面で有利であり、水性エポキシ樹脂組成物に用いられる硬化剤の開発も活発に行われている。
【0004】
従来、水性エポキシ樹脂用硬化剤としてはポリアミン化合物にエポキシ化合物を付加させた変性ポリアミンが知られているが、このような変性ポリアミンは、エポキシ化合物の付加率が小さい場合には水に対する分散性・溶解性が比較的良好であるものの、得られる硬化物の防食性が悪く、一方、該付加率を大きくすると防食性は改善されるものの水に対する分散性・溶解性が不十分となる課題を抱えている。
【0005】
上記課題の改良手段としては、例えば、オキシプロピレン鎖を有するポリアミン化合物を、オキシプロピレン鎖を有する特定のポリグリシジルエーテル化合物で変性した水性エポキシ樹脂用硬化剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、前記特許文献1に提案された水性エポキシ樹脂用硬化剤を用いて得られる硬化塗膜は、依然としてその耐水性が実用レベルではなく、更なる改良が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−227658号公報(第3−6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、エポキシ樹脂(A)とアミン系硬化剤(B)とを含有する水性エポキシ樹脂組成物において、従来のオキシプロピレン鎖を有するポリアミン化合物変性した水性エポキシ樹脂用硬化剤と比較して、良好な水分散性、造膜性を示し、防食性に優れた塗膜を得ることが出来る水性エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アミン系硬化剤として、側鎖に特定のオニウム塩構造を有する2官能性エポキシ樹脂とポリアミン化合物とを反応させて得られるエポキシアダクト化合物を用いることにより、水分散性・造膜性に優れ、防食性が良好である硬化塗膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、エポキシ樹脂(A)とアミン系硬化剤(B)とを含有する水性エポキシ樹脂組成物であり、該アミン系硬化剤(B)が、ポリアミン化合物(b−1)と、下記一般式(1)で表される構造を有し、且つ分子両末端がエポキシ基である2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)とを反応させて得られる化合物であることを特徴とする水性エポキシ樹脂組成物を提供するものである。〔式(1)中、R、R、R、R、R、はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、R、はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は水酸基である。〕
【0010】
【化1】

【発明の効果】
【0011】
本発明により、エポキシ樹脂と混合した場合に良好な水分散性を示す水性エポキシ樹脂用硬化剤を提供することが出来、しかも、その水性エポキシ樹脂組成物を用いて得られる塗膜は防食性等に優れていることから、塗料、接着剤、繊維集束剤、コンクリートプライマー等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、分子内にエポキシ基を有する化合物であればよく、その構造等に特に制限はない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ノニルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、t−ブチルカテコール型エポキシ樹脂等の多価エポキシ樹脂等が挙げられ、更に1価のエポキシ樹脂としては、ブタノール等の脂肪族アルコール、炭素数11〜12の脂肪族アルコール、フェノール、p−エチルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−ターシャリブチルフェノール、s−ブチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール等の1価フェノール類とエピハロヒドリンとの縮合物、ネオデカン酸等の1価カルボン酸とエピハロヒドリンとの縮合物等が挙げられ、グリシジルアミンとしては、ジアミノジフェニルメタンとエピハロヒドリンとの縮合物等、多価脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、大豆油、ヒマシ油等の植物油のポリグリシジルエーテルが挙げられ、多価アルキレングリコール型エポキシ樹脂としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、エリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、トリメチロールプロパンとエピハロヒドリンとの縮合物等、更には特開2005−239928号公報記載の水性エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種類で用いても、2種類以上を併用しても良い。
【0013】
前記エポキシ樹脂(A)は、必要に応じて有機溶剤や非反応性希釈剤等を加えて液状化・低粘度化したものであっても、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル化合物等の界面活性剤を用いて予め乳化した乳化エポキシ樹脂であってもよい。
【0014】
これらの中でも、水性エポキシ樹脂組成物の硬化性が良好であり、且つ得られる硬化塗膜の防食性に優れる点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、t−ブチルカテコール型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、特にビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0015】
本発明で用いるアミン系硬化剤(B)は、側鎖に特定のオニウム塩構造を有する2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)と、ポリアミン化合物(b−1)とを更に反応させたエポキシアダクト化合物である。このようなアミン系硬化剤(B)を用いることによって、水性エポキシ樹脂用硬化剤が従来抱えていた問題である組成物の水分散性の確保と、硬化塗膜の防食性を兼備することが出来るものである。
【0016】
前記ポリアミン化合物(b−1)としては、特に限定されるものではなく、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、複素環式ポリアミン等やそれらのエポキシ付加物、マンニッヒ変性化物、ポリアミドの変性物等を使用することが可能である。例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン等、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2−アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3−ビス(2’−アミノエチルアミノ)プロパン、トリエチレン−ビス(トリメチレン)ヘキサミン、ビス(3−アミノエチル)アミン、ビスヘキサメチレントリアミン等、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4’−イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン等、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン等、N−メチルピペラジン、モルホリン、1,4−ビス−(8−アミノプロピル)−ピペラジン、ピペラジン−1,4−ジアザシクロヘプタン、1−(2’−アミノエチルピペラジン)、1−[2’−(2”−アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、1,11−ジアザシクロエイコサン、1,15−ジアザシクロオクタコサン等が挙げられ、単独でも2種以上の混合物としても使用することが出来る。
【0017】
これらの中でも、硬化性に優れる点から脂肪族ポリアミンであることが好ましく、得られる硬化物の機械的物性に優れる点からメタキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、トリエチレンテトラミンを用いることが好ましい。
【0018】
前記一般式(1)中の側鎖の末端にあるオニウム塩構造によって、分子に親水性を付与し、また、主鎖中の芳香族骨格によって、得られる加工物(硬化物)の物性、特に機械的物性の低下を防止することが可能である。
【0019】
前記2官能性エポキシ樹脂(b−1)のエポキシ当量としては、特に制限させるものではないが、塗料用途等に用いた際の耐食性と基材への密着性に優れ、且つ水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性に優れる点から、200〜6000g/eqであることが好ましく、特に230〜5000g/eqであることが好ましい。
【0020】
前記一般式(1)で表される構造の中でも、後述する製造方法で合成する場合の、工業的原料入手の容易性や、水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性及び得られる加工物の耐食性等に優れる点から、前記一般式(1)中のR、R、R、Rが水素原子であり、R、R、R、Rがメチル基であり、Qが窒素原子であり、Yが塩素原子又は水酸基であることが好ましく、また、Xはエチレン鎖であることが好ましく、更に、Rは水素原子であることが好ましい。
【0021】
前記一般式(1)で表される構造を有する2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)としては、下記一般式(3)
【0022】
【化2】

【0023】
〔式(3)中、R〜R、R、X、Q、Yは前記と同じであり、pは繰り返し数の平均値であって0〜50である。〕
で表される化合物や、下記一般式(4)
【0024】
【化3】

【0025】
〔式(4)中、R〜R、R、X、Q、Yは前記と同じであり、Aは前記一般式(1)で表される構造とは異なる、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物の残基であり、q及びrは繰り返し数の平均値であって、それぞれ独立にq=0〜45、r=0〜55である。尚、それぞれの繰り返し単位はランダムに結合していることを示す。〕
で表される化合物を挙げることができる。
【0026】
前記一般式(3)及び(4)中のR、R、R、Rが水素原子であり、R、R、R、Rがメチル基であり、Qが窒素原子であり、Yが塩素原子又は水酸基である化合物は、前述のように、保存安定性や、得られる加工物の耐食性等に優れる点から好ましいものである。
【0027】
更に、前記一般式(3)及び(4)で表される化合物を合成する際の工業的原料入手が容易である点から、前記一般式(3)及び(4)中のXとしてはエチレン鎖であることが好ましく、同様にRとしては水素原子であることが好ましい。
【0028】
又、前記一般式(4)中のqとrとの比q/rが、20/80〜95/5であることが、水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性と水希釈性に優れる点から好ましいものであり、特に前記比率として30/70〜80/20であることが好ましい。
【0029】
又、前記一般式(4)中のAは2官能のヒドロキシ化合物や2官能のカルボン酸から水素原子を除いた2価の残基であるが、前記一般式(4)で表される化合物を用いて得られる水性エポキシ樹脂組成物を用いた加工物の機械的物性(強度)や、塗料用等に用いた際の基材との密着性に優れる点から、芳香環上に置換基を有していてもよいビスフェノール類の残基であることが好ましく、特にビスフェノールAの残基であることが好ましい。
【0030】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物に用いる2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、本発明の製造方法であることが、原料入手の容易性や工業的生産に優れる点で好ましいものである。
【0031】
以下、本発明の製造方法について詳述する。
本発明の製造方法は、まず、本発明の下記一般式(5)で表される、本発明の新規カチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)を合成することから始めることが好ましい。本発明の2官能性ヒドロキシ化合物としては、特に得られるエポキシ樹脂が低粘度であって、且つ水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性に優れる点から、前記一般式(5)中のR、R、R、Rが水素原子であり、R、R、R、Rがメチル基であり、Qが窒素原子であり、Yが塩素原子又は水酸基であることが好ましい。
【0032】
【化4】

【0033】
〔式(5)中、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、Rはれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は水酸基である。)
【0034】
前記一般式(5)で表される2官能性ヒドロキシ化合物(a1)は、下記一般式(2)
【0035】
【化5】

【0036】
〔式(2)中、R、R、R、R、Rは同一でも異なっても良い、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖である。〕
で表される水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(x1)と、四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)とを反応させることによって製造することが好ましい。
【0037】
前記一般式(2)で表される化合物(x1)としては、例えば、無触媒あるいは触媒の存在下、オルソクレゾール、2,6−キシレノール、オルソブチルフェノールなどのオルソ位に置換基を有していても良いフェノール類と、2−オキソプロパン酸、3−オキソブタン酸、3−アセチルプロピオン酸、グリオキシル酸などの1分子中にカルボキシル基とこれとは独立したカルボニル基を含有する化合物との反応によって得ることが出来る。前記触媒としては、種々のものが使用できるが、例えば、酸性触媒としては塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸を挙げることができ、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等のアルカリ(土類)金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。これら触媒の使用量は特に限定されるものではないが、原料として用いるオルソ位に置換基を有していてもよいフェノール類に対して0.1〜30重量%用いるのが好ましい。前記触媒の形態も特に限定されず、水溶液であっても、固形のまま使用しても良い。
【0038】
前記反応は無溶剤下で、あるいは有機溶剤の存在下で行うことができる。用いる有機溶剤としては、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して用いても良い。有機溶剤の使用量としては、用いる原料の総重量に対して通常50〜300重量%、好ましくは100〜250重量%である。反応温度としては通常40〜180℃、反応時間は通常1〜10時間である。また、反応中に生成する水は系外に分留管などを用いて留去することは、反応を速やかに行う上で好ましい。
【0039】
また、前記反応によって得られる化合物(x1)の着色が大きい場合は、それを抑制するために、酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。前記酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば、2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール系化合物、2価のイオウ系化合物、3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物などを挙げることができる。又、前記還元剤としては特に限定されないが、例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれら塩などが挙げられる。
【0040】
反応終了後、反応混合物のpH値が3〜7、好ましくは5〜7になるまで中和あるいは水洗処理を行う。中和処理や水洗処理の方法については特に制限されず、例えば、酸性触媒を用いた場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、トリエチレンテトラミン、アニリン等の塩基性物質を、塩基性触媒を用いた場合は塩酸、第一リン酸水素ナトリウム、蓚酸等の酸性物質を中和剤として用いることができる。
【0041】
中和あるいは水洗処理を行った後、減圧加熱下で溶剤及び未反応物を留去することによって、前記化合物(x1)を得ることが出来る。
【0042】
この様にして得られる化合物(x1)の中でも、得られる2官能性エポキシ樹脂の水溶性に優れ、水性エポキシ樹脂組成物とした時の保存安定性に優れる点、得られる化合物の耐食性・機械的強度等に優れる点から、前記一般式(2)中のR、R、R、Rが水素原子であり、Rがメチル基であることが好ましく、又、前記一般式(2)中のXがエチレン鎖であることが好ましく、ジフェノール酸であることがもっとも好ましい。尚、ジフェノール酸としては、大塚化学株式会社から市販されているので、該市販品をそのまま使用することが可能である。
【0043】
前記四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ビニル基を有する脂環式モノエポキシド等のエポキシ基含有ビニルモノマーと、4級オニウム塩を有するアクリル酸モノマー、4級オニウム塩を有するメタクリル酸モノマー等の4級オニウム塩を有するビニルモノマーとの共重合物や、下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【化6】

【0045】
〔式(6)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、R、R、Rは同一でも異なっても良い炭素数1〜4のアルキル基である。〕
【0046】
前記ビニル基を有する脂環式モノエポキシドとしては、例えば、セロキサイド2000(商品名:ダイセル化学工業株式会社製)が挙げられ、4級オニウム塩を有するアクリル酸モノマーとしては、例えば、DMAEA−Q(株式会社興人製、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート−メチルクロライド塩、79%水溶液)や、DMAPAA−Q(株式会社興人製、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド−メチルクロライド塩、75%水溶液)等が挙げられる。
【0047】
また、エポキシ基含有ビニルモノマーと、アクリルアミドや3級アミンを有するアクリルモノマーを共重合させた後に、アルキルハライドで4級塩化した化合物も使用することができる。
【0048】
これらの中でも、得られる2官能性エポキシ樹脂の水溶性に優れ、水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性に優れる点から、前記一般式(6)で表される化合物を用いることが好ましく、特に入手が容易である点から、前記一般式(6)中のR、R、Rがそれぞれ同一または異なる炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキル基である化合物を用いることが好ましく、Rが水素原子、Qが窒素原子、R、R、Rがメチル基であり、Xが塩素原子であるSY−GTA80[商品名、阪本薬品工業株式会社製、NV=80%水溶液、エポキシ当量(固形分):151g/eq]を用いることが最も好ましい。
【0049】
前記一般式(2)で表される化合物(x1)と前記四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)との反応方法としては、前記化合物(x1)中のカルボキシル基と前記四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)中のグリシジル基とを優先的に反応させるものであれば良く、無触媒下あるいは触媒存在下で行うことができるが、触媒を使用すると前記一般式(2)で表される化合物(x1)中のフェノール性水酸基と前記四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)中のグリシジル基とが反応する副反応が起こりやすく、又、四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)の重合反応が進行し易くなる点を鑑みると、無触媒下で反応させる方法が好ましい。
【0050】
しかしながら、前記化合物(x1)と前記エポキシ化合物(x2)の組み合わせによっては、反応が速やかに進行しない等の問題が生じることがあり、適当な触媒を使用することも可能である。使用しうる触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等のアルカリ(土類)金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、ブトキシリチウム、メトキシナトリウム等の金属アルコラート、塩化リチウム、塩化アルミニウム等のルイス酸およびルイス酸とトリフェニルホスフィンオキサイド等のルイス塩基との混合物、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム等のクロライド、ブロマイド、ヨーダイド、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ベンジルトリブチルホスホニウム等のクロライド、ブロマイド、ヨーダイド、アセテート等の4級アンモニウム塩、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。2種以上の触媒を併用しても構わない。触媒の使用量としては、通常、前記化合物(x1)に対して、5ppm(重量基準)〜2重量%の範囲で使用され、好ましくは20ppm(重量基準)〜0.5重量%である。これら触媒の形態も特に限定されず、適当な溶剤に希釈してもよいし、水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
【0051】
前記反応を行う際の反応温度としては、適度な反応速度と、副反応の抑制の点から30〜70℃の範囲であることが好ましい。
【0052】
又、前記反応は無溶剤下で、あるいは溶剤の存在下で行うことができる。前記溶剤としては、前記化合物(x1)と前記エポキシ化合物(x2)とを均一に溶解し、且つ、化合物(x1)、エポキシ化合物(x2)および反応生成物である、前記一般式(5)で表される2官能性ヒドロキシ化合物(a1)に対して不活性であれば特に限定されるものではなく、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、デカリン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、エトキシエチルプロピロネート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、セロソルブアセテート等のエステル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソロブ、tert−ブチルセロソロブ等のセロソルブ類、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のグライム類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル等、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらは1種でも2種以上の混合溶剤としても使用することができる。これらの中でも得られる反応生成物の溶液をそのまま本発明の水性エポキシ樹脂組成物として用いることが可能である点から、水単独、又は、アルコール類、セロソルブ類、グライム類、非プロトン性極性溶媒、あるいはそれぞれの混合溶剤を用いることが好ましい。
【0053】
前記化合物(x1)と前記エポキシ化合物(x2)との反応比率としては、特に限定されないが、化合物(x1)中のカルボキシル基当量とエポキシ化合物(x2)中のエポキシ当量との比(x1)/(x2)が小さいときは、カルボキシル基が残存し、後述する、得られる2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とエピハロヒドリン(a2)との反応時に、該カルボキシル基とエピハロヒドリン(a2)とが反応するため、3官能性のエポキシ樹脂となり、最終的にもろい分岐構造を形成しやすく、また、該比率が大きい場合は、未反応のエポキシ化合物(x2)が多くなり、後述する、得られる2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とエピハロヒドリン(a2)との反応時に、該2官能性ヒドロキシ化合物(a1)中のフェノール性水酸基とエポキシ化合物(x2)との副反応が起こり、この結果、分子の片末端がエポキシ基で一方がオニウム塩の構造である1官能性のエポキシ樹脂や、両末端がオニウム塩の構造である無官能性の樹脂が生成され、後記するアミン系硬化剤(B)との反応で三次元架橋に寄与しないものが混入しやすくなる点を鑑みると、前記比率(x1)/(x2)としては通常0.8以上、2以下であり、好ましくは1以上1.5以下である。
【0054】
前記反応によって得られたカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)は、そのまま使用しても、必要に応じて溶剤の除去や未反応のエポキシ化合物(x2)、副生成物(重合物など)の除去等の精製工程を行っても良い。
【0055】
また、得られるカチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物(a1)の着色が大きい場合は、それを抑制するために、酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール系化合物や2価のイオウ系化合物や3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物などを挙げることができる。還元剤としては特に限定されないが、例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれら塩などが挙げられる。
【0056】
前記反応で得られる2官能性ヒドロキシ化合物(a1)は、本発明で用いる2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)の原料(エピハロヒドリンとの反応原料や汎用エポキシ樹脂への伸長剤)として有用である。
【0057】
本発明の2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)の製造方法としては、前記化合物(x1)と前記エポキシ化合物(x2)とエピハロヒドリン(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましく、工業的生産方法として好ましい点から、前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とエピハロヒドリン(a2)とを原料とする方法が好ましい。
【0058】
前記製造方法としては、下記に示すものを挙げることができる。
まず、前記一般式(3)で表される2官能性エポキシ樹脂を得る方法としては、
(I)前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とエピハロヒドリン(a2)とを反応させる方法(いわゆる一段法)、
(II)(I)で得られた2官能性エポキシ樹脂を、更に前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)を用いて伸長反応させる方法(いわゆる2段法)、
が挙げられる。
【0059】
更に、前記一般式(4)で表される2官能性エポキシ基含有樹脂を得る方法としては、
(III)前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、前記(a1)以外の、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)との混合物と、エピハロヒドリン(a2)と、を反応させる方法(共縮反応)、
(IV)(I)で得られた2官能性エポキシ樹脂を、前記(a1)以外の、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)を用いて伸長反応させる方法、
(V)本発明の2官能性エポキシ樹脂以外の2官能性エポキシ樹脂〔カチオン基不含2官能性エポキシ樹脂(a4)〕を、前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)を用いて伸長反応させる方法、
が挙げられる。
【0060】
(I)前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とエピハロヒドリン(a2)との反応手法は、従来フェノール類とエピハロヒドリンとの反応によりエポキシ樹脂を得る反応をそのまま用いることができる。例えば、2官能性ヒドロキシ化合物(a1)中の芳香族性ヒドロキシ基1モルに対し、エピハロヒドリン(a2)0.3〜10モルを添加し、更に、該芳香族性ヒドロキシ基1モルに対し0.9〜2.0モルの塩基を一括添加または徐々に添加しながら、20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。前記塩基としては、固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリン(a2)を留出させ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリン(a2)は反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
【0061】
後述する(II)及び(IV)の手法、即ち、得られる2官能性エポキシ樹脂を伸長反応させる場合には、前記芳香族性ヒドロキシ基1モルに対し、エピハロヒドリン(a2)を2〜10モルを使用することが好ましく、又、得られるエポキシ樹脂組成物の優れた硬化性と硬化物物性を発現するための適切な分子量を与えるためには、芳香族性ヒドロキシ基1モルに対し、エピハロヒドリン(a2)を0.3〜1モルを使用することが好ましい。
【0062】
なお、工業生産を行う際は、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン(a2)の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリンと、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類とを併用することが好ましい。
【0063】
前記エピハロヒドリン(a2)としては、特に限定されるものではなく、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられ、工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンを用いることが好ましい。
【0064】
また、前記塩基としても特に限定されず、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基を10〜55重量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
【0065】
また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、水、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソロブ、tert−ブチルセロソロブ等のセロソルブ類、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のグライム類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜二種以上を併用してもよい。これらの中でも得られる反応生成物の溶液をそのまま本発明の水性エポキシ樹脂組成物として用いることが可能である点から、水単独、又は、アルコール類、セロソルブ類、グライム類、非プロトン性極性溶媒、あるいはそれぞれの混合溶剤を用いることが好ましい。
【0066】
前述の反応で得られた反応物を水洗後、必要により、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリン(a2)や併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂に対して0.1〜3.0重量%の範囲が好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより高純度のエポキシ樹脂を得ることができる。この様にして得られるエポキシ樹脂中のハロゲンイオン量は、原料として用いたエポキシ化合物(x2)中の対イオンの種類によらず、いずれも数ppm以下のレベルであることから、分子内に取り込まれている四級オニウム塩の対イオンは、触媒として用いたアルカリによって、OHとなっていることが判明している。対イオンがOHであることは、電子材料や水性化材料としても有用であり、工業的価値の高いものである。
【0067】
(II)前述の(I)の手法で得られた2官能性エポキシ樹脂を、更に前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)を用いて伸長反応させる方法としては、例えば、100〜220℃で加熱攪拌する方法が挙げられる。この反応時には、適切な有機溶剤の存在下に行う事もできる。この際、必要に応じて、触媒を用いてもよい。前記触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、オニウム塩、ホスフィン類、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。原料として用いる2官能性エポキシ樹脂と、前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)との反応比率としては特に限定されるものではなく、所望とするエポキシ当量(分子量)に応じて、適宜設定することが好ましい。
【0068】
この反応時に用いることができる有機溶剤としては、原料及び生成物を均一に溶解し、且つ不活性のものであれば特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、デカリン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、エトキシエチルプロピロネート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、セロソルブアセテート等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソロブ、tert−ブチルセロソロブ等のセロソルブ類、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のグライム類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の極性溶剤等が挙げられ、水も用いることができ、単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0069】
(III)前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、前記(a1)以外の、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)との混合物と、エピハロヒドリン(a2)とを反応させる方法については、前述の(I)の手法に準じるものであり、前記化合物(a3)を併用することによって、得られる2官能性エポキシ樹脂の水への溶解性や分子量、用途に応じて必要な加工物の柔軟性・密着性・耐食性等を調整することが可能となる。特に水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性と水希釈性に優れる点から前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)と、分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)とのモル比としては、20/80〜95/5であることが好ましく、特に30/70〜80/20であることが好ましい。
【0070】
ここで用いることができる前記化合物(a3)としては、特に限定されるものではないが、例えば、芳香環上に置換基を有していても良いレゾルシン、ハイドロキノン、カテコール等の2価フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類、ビフェノール、テトラメチルビフェノール等のビフェノール類、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類、前記2官能性フェノール類の芳香核を水素添加した化合物等、又、カルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族2価カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族2価カルボン酸やその水添物が挙げられ、単独でも2種以上の混合物としても使用することができる。
【0071】
これらの中でも、得られる水性エポキシ樹脂組成物を用いた加工物の機械的物性(強度)や、塗料用等に用いた際の基材との密着性に優れる点から、芳香環上に置換基を有していてもよいビスフェノール類を用いることが好ましく、特にビスフェノールAを用いることが好ましい。
【0072】
(IV)(I)で得られた2官能性エポキシ樹脂を、前記(a1)以外の、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)を用いて伸長反応させる方法は、前述の(II)の手法に準じるものである。ここで用いることができる前記化合物(a3)及びその好ましいものについては、前述の(III)で述べたものと同じである。前記2官能性エポキシ樹脂と前記化合物(a3)との反応比率としても、特に限定されるものではなく、水への溶解性や分子量、用途に応じて必要な加工物の柔軟性・密着性・耐食性等に応じて、適宜選択することが好ましい。特に水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性と水希釈性に優れる点から前記2官能性エポキシ樹脂と、分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物(a3)とのモル比としては、20/80〜95/5であることが好ましく、特に30/70〜80/20であることが好ましい。
【0073】
(V)本発明の2官能性エポキシ樹脂以外の2官能性エポキシ樹脂〔カチオン基不含2官能性エポキシ樹脂(a4)〕を、前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)を用いて伸長反応についても、その手法としては、前述の(II)で述べたことと同様である。
【0074】
ここで用いることができるカチオン基不含2官能エポキシ樹脂(a4)としては、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスクレゾールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンとエピハロヒドリンとの縮合物等、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、トリメチロールプロパンとエピハロヒドリンとの縮合物が挙げられ、これらは1種類でも、2種類以上でも併用する事ができる。これらの中でも、反応性が良好であり、得られる水性エポキシ樹脂組成物を用いた加工物の耐食性が良好である点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0075】
これらのカチオン基不含2官能エポキシ樹脂(a4)と前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)との反応比率としても、特に限定されるものではなく、水への溶解性や分子量、用途に応じて必要な加工物の柔軟性・密着性・耐食性等に応じて、適宜選択することが好ましい。特に水性エポキシ樹脂組成物としたときの保存安定性と水希釈性に優れる点から前記2官能性ヒドロキシ化合物(a1)とカチオン基不含2官能エポキシ樹脂(a4)とのモル比としては、20/80〜95/5であることが好ましく、特に30/70〜80/20であることが好ましい。
【0076】
前述の反応(I)〜(V)で得られた生成物は、必要に応じて触媒の失活・溶媒や未反応原料の留去・乾燥等の精製工程を行うことによって、純度の高いものとすることが出来る。
【0077】
本発明で用いるアミン系硬化剤(B)は、前記ポリアミン化合物(b−1)と前述の2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)とを反応させて得られる、所謂エポキシアダクトタイプの硬化剤であるが、この反応を行う際に、本発明の効果を損なわない範囲において、従来知られているエポキシ樹脂を前記2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)と併用してアダクト反応を行うことも可能である。
【0078】
前記ポリアミン化合物(b−1)と前述の2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)との反応としては、従来付加反応として知られている条件によって行うことが出来る。このとき、無溶剤または適切な溶剤下に行う事ができ、使用できる溶剤としては、前記化合物(b−1)と前記2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)とを、更に必要に応じて併用されるその他のエポキシ樹脂を均一に溶解し、且つ、不活性であれば特に限定されるものではなく、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、デカリン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、エトキシエチルプロピロネート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、セロソルブアセテート等のエステル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソロブ、tert−ブチルセロソロブ等のセロソルブ類、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のグライム類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテル等が挙げられ、1種でも2種以上の混合溶剤としても使用することができる。これらの中でも得られる反応生成物の溶液をそのまま本発明の水性エポキシ樹脂組成物として用いることが可能である点から、水単独、又は、水とアルコール類、セロソルブ類、グライム類との混合溶剤を用いることが好ましい。
【0079】
前記ポリアミン化合物(b−1)と前記エポキシ基含有樹脂(b−2)との反応割合としては、特に限定されるものではないが、水性エポキシ樹脂組成物としたときの水分散性と、得られる硬化塗膜の防食性とのバランスに優れる点から、ポリアミン化合物(b−1)中のアミノ基の活性水素1モルに対して、その他のエポキシ樹脂を含むエポキシ基含有樹脂(b−2)中のエポキシ基の総量が0.02〜0.30モルになるように用いて反応することが好ましく、特に0.05〜0.20モルになるように用いることが好ましい。この反応における反応条件としては特に限定されるものではないが、通常40〜130℃、好ましくは60〜120℃で、1〜6時間、好ましくは2〜4時間攪拌することによって行うことが出来る。
【0080】
前記反応によって得られたアミン系硬化剤(B)は、そのままでも使用しても、必要に応じて溶剤の除去等の精製工程を行っても良く、更には、水を加えて均一化しても良い。また、アミン系硬化剤(B)を2種以上併用して、本発明の水性エポキシ樹脂組成物に用いても良い。
【0081】
又、前記反応によって得られたアミン系硬化剤(B)は、そのものだけでも水分散性を示すものであるが、更に良好な水分散性を付与するために必要に応じ、酢酸等の有機酸によりアミノ基を中和して水分散を行っても良い。
【0082】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物には、前記エポキシ樹脂(A)と前記アミン系硬化剤(B)を用いること以外、なんら制限されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他のエポキシ樹脂用硬化剤、造膜助剤、他のポリエステル系水性樹脂、アクリル系水性樹脂等、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、充填剤、補強剤、顔料、可塑剤、チキソトロピー剤、ハジキ防止剤、ダレ止め剤、流展剤、消泡剤、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤などを適宜併用して用いることも可能である。
【0083】
前記その他の硬化剤としては、特に限定されるものではなく、前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と硬化反応することができるものであれば、種々のアミン系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物などの硬化剤がいずれも用いることができる。例えば、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(通称、ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物及びこれらの変性物が挙げられる。
【0084】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂(A)とアミン系硬化剤(B)との配合量としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物の特性が良好である点から、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基の合計1当量に対して、アミン系硬化剤(B)を含む硬化剤中の活性基が0.7〜1.2当量になる量が好ましい。
【0085】
前記造膜助剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−プロピルセロソルブ、イソプロピルセロソロブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ、tert−ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のグライム類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ダイアセトンアルコールが挙げられる。
【0086】
前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
【0087】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、アミン系硬化剤(B)及び必要に応じて用いられる添加剤とともに、水中に乳化及び/または分散させて得ることが出来る。このとき、エポキシ樹脂(A)及びアミン系硬化剤(B)を各々乳化及び/または分散させた後に両者を混合する方法、一方を乳化及び/または分散させた中にもう一方を加えて乳化及び/または分散させる方法、あるいは、両者を同時に乳化及び/または分散させる方法の何れでも適用できる。
【0088】
上述のようにして得られた水性エポキシ樹脂組成物は、適当な方法、例えば、刷毛塗り、ローラー、スプレー、ヘラ付け、プレス塗装、ドクターブレード塗り、電着塗装、浸漬塗装等の方法により被塗物に塗布することにより、下塗りまたは中塗り塗料、充填剤、シール材、被膜材、シーリング材、モルタルコーティング材などとして用いられ、特に、防食性に優れることから金属用の防食塗料として有用である。
【0089】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物の用途としては、特に制限されるものではないが、例えば、塗料、接着剤、繊維集束剤、コンクリートプライマー等として好適に用いることができる。
【0090】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物を塗料用途に用いる場合には、必要に応じて、防錆顔料、着色顔料、体質顔料等の各種フィラーや各種添加剤等を配合することが好ましい。前記防錆顔料としては亜鉛粉末、リンモリブテン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、クロム酸バリウム、クロム酸アルミニウム、グラファイト等の鱗片状顔料等が挙げられ、着色顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、硫化亜鉛、ベンガラが挙げられ、また体質顔料としては硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等が挙げられる。これらフィラーの配合量としては、エポキシ樹脂(A)、アミン系硬化剤(B)及び必要に応じて配合されるその他の硬化剤の合計100重量部に対して、10〜70重量部であることが、塗膜性能、塗装作業性等の点から好ましい。
【0091】
前記フィラー、添加剤の本発明の水性エポキシ樹脂組成物への配合方法は、特に限定されないが、例えば、フィラー及び添加剤を混合ミキサー、ボールミル等の装置を用いて十分に混練、均一に分散させた顔料ペーストを予め用意し、これと予めエマルジョン化したエポキシ樹脂とをさらに前記装置を用いて混練、分散した後、所望の濃度に水を用いて調製し、アミン系硬化剤を混合することで得ることが出来る。
【0092】
本発明の水性エポキシ樹脂組成物を塗料用に使用する場合における塗装方法については、特に限定されず、ロールコート、スプレー、刷毛、ヘラ、バーコーター、浸漬塗装、電着塗装方法にて行う事ができ、その加工方法としては、常温乾燥〜加熱硬化を行うことができる。加熱する場合は50〜250℃、好ましくは60〜230℃で、2〜30分、好ましくは5〜20分反応させることにより、塗膜を得ることが出来る。
【0093】
また、本発明の水性エポキシ樹脂組成物を接着剤として使用する場合は、特に限定されず、スプレー、刷毛、ヘラにて基材へ塗布後、基材の接着面を合わせることで行う事ができ、接合部は周囲の固定や圧着する事で強固な接着層を形成することができる。基材としては鋼板、コンクリート、モルタル、木材、樹脂シート、樹脂フィルムが適し、必要に応じて研磨等の物理的処理やコロナ処理等の電気処理、化成処理等の化学処理などの各種表面処理を施した後に塗布すると更に好ましい。
【0094】
また、本発明の水性エポキシ樹脂組成物を繊維集束剤として使用する場合は、特に限定されず行う事ができ、例えば、紡糸直後の繊維にローラーコーターを用いて塗布し、繊維ストランドとして巻き取った後、乾燥を行う方法が挙げられる。用いる繊維としては、特に制限されるものではなく、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、石綿繊維、炭素繊維、ステンレス繊維等の無機繊維、綿、麻等の天然繊維、ポリエステル、ポリアミド、ウレタン等の合成繊維等が挙げられ、その基材の形状としては短繊維、長繊維、ヤーン、マット、シート等が挙げられる。繊維集束剤としての使用量としては繊維に対して樹脂固形分として0.1〜2重量%であることが好ましい。
【0095】
また、本発明の水性エポキシ樹脂組成物をコンクリートプライマーとして使用する場合は、特に限定されず、ロール、スプレー、刷毛、ヘラ、鏝にて行う事ができる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、実施例中「部」、「%」は特に断りのない限り、重量基準である。
【0097】
<エポキシ樹脂のエマルジョンの合成例>
合成例1
EPICLON 1055(大日本インキ化学工業社製、BPA型固形エポキシ樹脂)500gをベンジルアルコール47.5g、メトキシプロパノール47.5gに100℃で溶解した。溶解後、温度を下げ50〜60℃で、Newcol 780(60)(日本乳化剤株式会社製)を40g加え、十分に溶解させた。溶解後、50〜60℃において高速攪拌しながら、水を分割添加して、不揮発分55%のエマルジョンを得た。得られたエポキシ樹脂のエマルジョン(A−1)はエポキシ当量(溶液値)930g/eq、粘度(25℃)2350mPa・sであった。
【0098】
<アダクト用エポキシ基含有樹脂の合成例>
合成例2
温度計、撹拌装置、滴下ロート、冷却管、窒素ガス導入管、下部に分液コックが装着された4つ口フラスコに、ジフェノール酸(水酸基当量143g/eq、カルボキシル当量286g/eq、大塚化学株式会社製)286部とSY−GTA80(グリシジル基含有4級オニウム塩−80%水溶液、阪本薬品工業株式会社製)227部とイソプロピルアルコール120部を仕込み、50℃まで加熱撹拌することによって、均一溶液とした。更に同温度で4時間反応させることによって、カチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物を得た。つづいてエピクロルヒドリン370部(4モル)を仕込み、40℃まで加熱攪拌しながら溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、49%水酸化ナトリウム水溶液8部(0.1モル)を添加し4時間反応させた。次いで50℃まで加熱し、49%水酸化ナトリウム水溶液100部(1.2モル)を5時間かけて滴下した。その後、水157部を添加し、生成した塩を溶解した後、下部の分液用コックより飽和食塩水を棄却した。未反応のエピクロロヒドリンを常圧条件下でフラスコ温度130℃まで蒸留して留去後、反応液に残った塩をろ別した。ろ液から、更に減圧条件下フラスコ温度130℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去することによってエポキシ当量403g/eqの2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2−1)を得た。
【0099】
合成例3
温度計、撹拌装置、滴下ロート、冷却管、窒素ガス導入管、下部に分液コックが装着された4つ口フラスコに、ジフェノール酸(水酸基当量143g/eq、カルボキシル当量286g/eq、大塚化学株式会社製)286部とSY−GTA80(グリシジル基含有4級オニウム塩−80%水溶液、阪本薬品工業株式会社製)227部とイソプロピルアルコール120部を仕込み、50℃まで加熱撹拌することによって、均一溶液とした。更に同温度で4時間反応させることによって、カチオン基含有2官能性ヒドロキシ化合物を得た。次に、ビスフェノールA 228部、エピクロルヒドリン 1480部(4モル)を仕込み、40℃まで加熱攪拌しながら溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、49%水酸化ナトリウム水溶液 33部(0.1モル)を添加し4時間反応させた。次いで50℃まで加熱し、49%水酸化ナトリウム水溶液 400部(1.2モル)を5時間かけて滴下した。その後、水 564部を添加し、生成した塩を溶解した後、下部の分液用コックより飽和食塩水を棄却した。未反応のエピクロロヒドリンを常圧条件下でフラスコ温度130℃まで蒸留して留去後、反応液に残った塩をろ別した。ろ液から、更に減圧条件下フラスコ温度130℃で未反応のエピクロロヒドリンを留去することによりエポキシ当量277g/eqの2官能性エポキシ樹脂(b−2−2)を得た。
【0100】
<アミン系硬化剤の合成例>
合成例4
温度計、撹拌装置、冷却管、窒素導入口を備えた4つ口フラスコにトリエチレンテトラミン146g、プロピルセロソルブ259gを仕込み40℃まで昇温し、EPICLON 520(大日本インキ化学工業株式会社製、アルキルフェノールグリシジルエーテル)を発熱に注意しながら四分割で317g仕込み、90℃で3時間攪拌した。その後、合成例2で得られたエポキシ基含有樹脂(b−2−1)(アミンアダクトの活性水素1モルに対して0.166モル)314gを発熱に注意しながら徐々に仕込み、100℃で2時間攪拌した。次に、水を259g仕込んだ後、酢酸を19g添加し、均一に溶解し、固形分60%のアミン系硬化剤(B−1)を得た。
【0101】
合成例5
温度計、撹拌装置、冷却管、窒素導入口を備えた4つ口フラスコにトリエチレンテトラミン146g、プロピルセロソルブ226gを仕込み40℃まで昇温し、EPICLON 520を発熱に注意しながら四分割で317g仕込み、90℃で3時間攪拌した。その後、合成例3で得られたエポキシ基含有樹脂(b−2−2)(アミンアダクトの活性水素1モルに対して0.166モル)216gを発熱に注意しながら徐々に仕込み、100℃で2時間攪拌した。次に、水を227g仕込んだ後、酢酸を17g添加し、均一に溶解し、固形分60%のアミン系硬化剤(B−2)を得た。
【0102】
合成例6
温度計、撹拌装置、冷却管、窒素導入口を備えた4つ口フラスコにメタキシレンジアミン136g、プロピルセロソルブ164gを仕込み40℃まで昇温し、EPICLON520を発熱に注意しながら四分割で211g仕込み、90℃で3時間攪拌した。その後、エポキシ基含有樹脂(b−2−2)(アミンアダクトの活性水素1モルに対して0.166モル)144gを発熱に注意しながら徐々に仕込み、100℃で2時間攪拌した。次に、水を164g仕込んだ後、酢酸を12g添加し、均一に溶解し、固形分60%のアミン系硬化剤(B−3)を得た。
【0103】
合成例7
温度計、撹拌装置、冷却管、窒素導入口を備えた4つ口フラスコにイソホロンジアミン170g、プロピルセロソルブ175gを仕込み40℃まで昇温し、EPICLON 520を発熱に注意しながら四分割で211g仕込み、90℃で3時間攪拌した。その後、エポキシ基含有樹脂(b−2−2)(アミンアダクトの活性水素1モルに対して0.167モル)144gを発熱に注意しながら徐々に仕込み、100℃で2時間攪拌した。次に、水を175g仕込んだ後、酢酸を13g添加し、均一に溶解し、固形分60%のアミン系硬化剤(B−4)を得た。
【0104】
合成例8
温度計、撹拌装置、冷却管、窒素導入口を備えた4つ口フラスコにトリエチレンテトラミン146g、プロピルセロソルブ205gを仕込み40℃まで昇温し、EPICLON 520を発熱に注意しながら四分割で288g仕込み、90℃で3時間攪拌した。その後、EPICLON 850(BPA型液状エポキシ樹脂、大日本インキ化学工業株式会社製)(アミンアダクトの活性水素1モルに対して0.2モル)180.5gを発熱に注意しながら徐々に仕込み、100℃で2時間攪拌した。次に、水を205g仕込んだ後、酢酸を15g添加し、均一に溶解し、固形分60%のアミン系硬化剤(B’−1)を得た。
【0105】
合成例9<アミン系硬化剤(B’−2)の合成、前記特許文献1記載の硬化剤>
温度計、撹拌装置、冷却管、窒素導入口を備えた4つ口フラスコにポリプロピレングリコールジアミン化合物(HN−(C0)−C−NH)124g及びエポキシ当量315のビスフェノールAプロピレンオキシド5モル付加物のジグリシジルエーテル79gを四分割で仕込み、80℃で2時間攪拌した。次に、水51gを加え、十分に攪拌を行い、固形分80%のアミン系硬化剤(B’−2)を得た。
【0106】
実施例1〜4、及び比較例1〜2
合成例1及び合成例4〜9で得られたエマルジョン及びアミン系硬化剤に表1に示す成分を配合し、水性塗料を調整した。これらの水性塗料に対して塗膜の鉛筆硬度、耐衝撃性(デュポン式衝撃試験)、耐食性(塩水噴霧、5%水酸化ナトリウム浸漬試験、5%塩酸浸漬試験)の試験をした。その結果を表2に示す。
【0107】
<試験片の作製方法>
調整した水性塗料を冷間熱延鋼板(JIS,G,3141 SPCC.SB、0.8×70×150mmにサンドペーパー#240表面処理を施したもの)にバーコーターにて乾燥膜厚60μmになるように塗布し、25℃で7日間乾燥させ試験片を作製した。
【0108】
なお、各評価項目試験は以下の方法に従って行った。
【0109】
鉛筆硬度
JIS K5400−6.14に準拠して実施した。
【0110】
耐衝撃性
JIS K5400−7.8に準拠してデュポン衝撃試験(300g)を実施した。
○:50cmまで異常なし
△:45cmまで異常なし
×:40cmまで異常なし
【0111】
耐食性
JIS K5400−7.8に準拠して塩水噴霧試験(300時間)を行った。また、前記試験片を5%水酸化ナトリウム水溶液、5%塩酸の薬液に25℃で7日間浸漬した。
○:異常なし、錆なし
△:フクレ発生、錆なし
×:著しいフクレ、錆発生
【0112】
【表1】

【0113】
表1の脚注
酸化チタン:CR−97 石原産業株式会社製
タルク:タルク1号 竹原化学工業社製
炭酸カルシウム:Brilliant 1500 白石工業株式会社製
【0114】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)とアミン系硬化剤(B)とを含有する水性エポキシ樹脂組成物であり、該アミン系硬化剤(B)が、ポリアミン化合物(b−1)と、下記一般式(1)で表される構造を有し、且つ分子両末端がエポキシ基である2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)とを反応させて得られる化合物であることを特徴とする水性エポキシ樹脂組成物。
【化1】

〔式(1)中、R、R、R、R、R、はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R、R、R、はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは単結合又は炭素数1〜4のアルキレン鎖であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は水酸基である。〕
【請求項2】
前記アミン系硬化剤(B)が、ポリアミン化合物(b−1)中のアミノ基の活性水素1モルに対して、2官能性エポキシ基含有樹脂(b−2)中のエポキシ基が0.02〜0.30モルになるように用いて反応させたものである請求項1記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記2官能性エポキシ樹脂(b−2)が、下記一般式(2)
【化2】

〔式(2)中、R、R、R、R、R及びXは前記と同じである。〕
で表される、水酸基とカルボキシル基とを有する化合物(x1)と、四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)と、エピハロヒドリン(a2)と、を反応させて得られるエポキシ樹脂である請求項1記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
2官能性エポキシ樹脂(b−2)が、下記一般式(3)
【化3】

〔式(3)中、R〜R、R、X、Q、Yは前記と同じであり、pは繰り返し数の平均値であって0〜50である。〕
で表される化合物である請求項1記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
2官能性エポキシ樹脂(b−2)が、下記一般式(4)
【化4】


〔式(4)中、R〜R、R、X、Q、Yは前記と同じであり、Aは前記一般式(1)で表される構造とは異なる、1分子中に2個の水酸基又はカルボキシル基を有する化合物の残基であり、q及びrは繰り返し数の平均値であって、それぞれ独立にq及びrは繰り返し数の平均値であって、それぞれ独立にq=0〜45、r=0〜55である。尚、それぞれの繰り返し単位はランダムに結合していることを示す。〕
で表される化合物である請求項1記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(4)中のqとrとの比q/rが、20/80〜95/5である請求項5記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記一般式(4)中のAがビスフェノール類の残基である請求項5記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記四級オニウム塩含有エポキシ化合物(x2)が下記一般式(5)
【化5】

(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Qは窒素原子又はリン原子であり、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、R、R、Rはそれぞれアルキル基又はアリール基であり、これらは同一でも異なっていても良い。)
で表される化合物である請求項3記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記一般式(5)中のR、R、Rがそれぞれ同一または異なる炭素原子数1〜4の直鎖状のアルキル基である請求項8記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
ポリアミン化合物(b−1)が、脂肪族ポリアミン化合物である請求項1〜7の何れか1項記載の水性エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
エポキシ樹脂(A)がビスフェノール型エポキシ樹脂である請求項10記載の水性エポキシ樹脂組成物。


【公開番号】特開2007−277370(P2007−277370A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104106(P2006−104106)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】