説明

水性ゲル消臭剤

【課題】空間内の悪臭成分を効率よく吸着することができ、また、固体粒子状の脱臭剤よりも悪臭吸収量が多く、優れた消臭性能を有する据え置き型消臭剤の提供。
【解決手段】一般式(1)〜(3)で表される化合物又はそれらの塩から選ばれる1種以上の特定のアミノ化合物(a)を所定量含有する液状混合物を、(b)吸水性樹脂に吸収させてなる、水性ゲル消臭剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ゲル消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
部屋、トイレ、冷蔵庫、下駄箱、車内などこもった空間に漂う悪臭を低減・除去するための従来の消臭剤や芳香剤は、(1)香料や臭気抑制剤を、多糖類等の天然高分子化合物やポリアクリル酸等の合成高分子と組み合わせてゲルや樹脂内に封入することで、香料の揮散を抑制し、感覚消臭能を高めたもの(特許文献1、2参照)、及び(2)活性炭やゼオライトのような固体粒子に対して物理吸着を利用するもの(特許文献3,4参照)の2種類が一般的であった。
【0003】
【特許文献1】特開2005−87286号公報
【特許文献2】特表2005−523078号公報
【特許文献3】特開2003−47648号公報
【特許文献4】特開2003−52799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のタイプでは、(1)の場合は空間内に漂う悪臭成分を実質的に低減できないこと、(2)の場合は脱臭剤にある程度の悪臭成分が吸着飽和してしまうと、効果が著しく低下するので、消臭性能が脱臭剤の表面積に大きく依存するという限界があった。
【0005】
一方、水溶液状の消臭剤は、布地に付着した悪臭成分をスプレー噴霧するなどの手段を用いて消臭するのには適しているが、空間に漂う悪臭成分を効果的に消臭することには限界があった。また、容器に入れて置き型として使用する場合には、容器からこぼれる恐れがあり、扱いづらいという欠点がある。
【0006】
本発明の課題は、空間内の悪臭成分を効率よく吸着することができ、また、固体粒子状の脱臭剤よりも悪臭吸収量が多く、優れた消臭性能を有する、据え置き型の消臭剤として好適な水性ゲル消臭剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)下記一般式(1)〜(3)で表される化合物又はそれらの塩から選ばれる1種以上のアミノ化合物〔以下、(a)成分という〕0.001〜5質量%と水とを含有する液状混合物(以下、本発明に係る液状混合物という場合もある)を、(b)吸水性樹脂〔以下、(b)成分という〕に吸収させてなる、水性ゲル消臭剤に関する。
【0008】
【化4】

【0009】
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。R3は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R4は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。)
【0010】
【化5】

【0011】
(式中、R5及びR6は水素原子、エーテル結合を有していても良い炭素数2〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。R7は水素原子又はメチル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、mは0〜2の整数を示す。)
【0012】
【化6】

【0013】
(式中、R9及びR10は水素原子、エーテル結合を有していても良い炭素数2〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。R11は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0014】
また、本発明は、上記本発明の水性ゲル消臭剤を含んで構成される、据え置き型消臭剤に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水性ゲルの消臭剤は、部屋、トイレ、冷蔵庫、下駄箱、車内などの空間内の悪臭成分を効率的に吸着することができ、優れた消臭性能を有する。かかる本発明の水性ゲル消臭剤により、消臭性能に優れた据え置き型消臭剤が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
〔(a)成分〕
(a)成分のアミノ化合物は、上記一般式(1)〜(3)で表される化合物又はそれらの塩から選ばれる1種以上である。
【0017】
一般式(1)において、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示すが、アルキル基及びヒドロキシアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよい。炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基が挙げられる。また、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0018】
1は、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0019】
2は、水素原子、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示すが、アルキル基及びヒドロキシアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、上記R1で例示したものが挙げられる。
【0020】
2は、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0021】
3は、炭素数1〜5のアルキレン基を示す。炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましく、特にメチレン基が好ましい。R4は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基が挙げられ、メチル基が好ましい。炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基が好ましく、特にヒドロキシメチル基が好ましい。
【0022】
一般式(1)で表されるアミノ化合物又はその塩の具体例としては、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等、及びそれらと塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等の酸との塩が挙げられる。
【0023】
これらの中では、消臭性能等の観点から、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール及びそれらと塩酸等の酸との塩から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0024】
一般式(1)で表されるアミノ化合物を塩酸等の塩として用いる場合は、塩基を添加することによりpHを調整することができる。用いることができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0025】
一般式(1)で表されるアミノ化合物は、常法により製造することができる。
【0026】
上記一般式(2)において、R5及びR6は、水素原子、エーテル結合を有していても良い炭素数2〜22、好ましくは炭素数3〜14のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。アルキル基及びヒドロキシアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。また、エーテル結合を有するアルキル基としては、アルコキシアルキル基が挙げられる。
【0027】
5及びR6は、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−イソプロポキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基、3−オクチルオキシプロピル基が好ましく、特に水素原子、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基が好ましい。
【0028】
7は、入手性の観点から、水素原子又はメチル基を示すが、水素原子が好ましい。R8は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示すが、アルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。R8は、入手性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。mは、0〜2の整数を示すが、消臭性能及び入手性の観点から、0又は1が好ましい。
【0029】
一般式(2)で表されるアミノ化合物又はその塩は、アセトアミド系化合物、プロピオン酸アミド系化合物、酪酸アミド系化合物等の有機酸アミド系化合物が挙げられる。
【0030】
一般式(2)で表されるアミノ化合物又はその塩の具体例としては、グリシンアミド(2−アミノアセトアミド)、2−アミノ−N−シクロヘキシルアセトアミド、2−アミノ−N−(2−エチルヘキシル)アセトアミド、2−アミノ−N−オクチルアセトアミド、2−アミノ−N−ドデシルアセトアミド、2−アミノ−N−(2−ヒドロキシエチル)アセトアミド、2−アミノ−N−(2−ヒドロキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−ヒドロキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−(2−メトキシエチル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−メトキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−エトキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−n−プロポキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−イソプロポキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−n−ブトキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−オクチルオキシプロピル)アセトアミド、2−アミノ−N−シクロヘキシルプロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−オクチルプロピオン酸アミド、2−アミノ−N−ドデシルプロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(2−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(2−メトキシエチル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(3−メトキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(3−エトキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(3−n−プロポキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(3−イソプロポキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(3−n−ブトキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−N−(3−オクチルオキシプロピル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−シクロヘキシルプロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−オクチルプロピオン酸アミド、3−アミノ−N−ドデシルプロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(2−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(2−メトキシエチル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(3−メトキシプロピル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(3−エトキシプロピル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(3−n−プロポキシプロピル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(3−イソプロポキシプロピル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(3−n−ブトキシプロピル)プロピオン酸アミド、3−アミノ−N−(3−オクチルオキシプロピル)プロピオン酸アミド、4−アミノ−N−シクロヘキシル酪酸アミド、4−アミノ−N−(2−エチルヘキシル)酪酸アミド、4−アミノ−N−オクチル酪酸アミド、4−アミノ−N−ドデシル酪酸アミド、4−アミノ−N−(2−ヒドロキシエチル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(2−ヒドロキシプロピル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(3−ヒドロキシプロピル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(2−メトキシエチル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(3−メトキシプロピル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(3−エトキシプロピル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(3−n−プロポキシプロピル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(3−イソプロポキシプロピル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(3−n−ブトキシプロピル)酪酸アミド、4−アミノ−N−(3−オクチルオキシプロピル)酪酸アミド等、及びそれらと塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等の酸との塩が挙げられる。
【0031】
これらの中では、消臭性能及び入手性の観点から、グリシンアミド、2−アミノ−N−(2−エチルヘキシル)アセトアミド、2−アミノ−N−(3−エトキシプロピル)アセトアミド、及びそれらの塩から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0032】
上記一般式(3)において、R9及びR10は、水素原子、エーテル結合を有していても良い炭素数2〜22、好ましくは炭素数3〜14のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示すが、アルキル基及びヒドロキシアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。また、エーテル結合を有するアルキル基としては、アルコキシアルキル基が挙げられる。
【0033】
9及びR10は、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−イソプロポキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基、3−オクチルオキシプロピル基が好ましく、特に水素原子、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基が好ましい。
【0034】
11は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示すが、アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。R11は、入手性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0035】
一般式(3)で表されるアミノ化合物又はその塩の具体例としては、セリンアミド(2−アミノ−3−ヒドロキシ−プロピオン酸アミド)、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−シクロヘキシルプロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−オクチルプロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−ドデシルプロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−メトキシエチル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−メトキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−エトキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−n−プロポキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−イソプロポキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−n−ブトキシプロピル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−オクチルオキシプロピル)プロピオン酸アミド等、及びそれらと塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等の酸との塩が挙げられる。
【0036】
これらの中では、消臭性能及び入手性の観点から、セリンアミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−n−ブトキシプロピル)プロピオン酸アミド、及びそれらの塩から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0037】
一般式(2)又は(3)で表されるアミノ化合物は、公知の方法、例えば、各種アミノ酸をベンジルオキシカルボン酸クロライド等でアミノ基を保護した後、対応するアミン類と反応させた後、水素雰囲気下で触媒等を用いて接触水素還元を行う方法により合成することができる。水添触媒としては、ニッケル、銅、白金、コバルト、パラジウム等の金属活性成分を、珪藻土、アルミナ、シリカゲル、シリカアルミナ、活性炭などの担体に担持させた触媒、より具体的にはPd/活性炭触媒等を用いることができる。
【0038】
上記一般式(1)〜(3)で表されるアミノ化合物は、光学活性体でもラセミ体でもよく、これらの混合物でもよい。上記一般式(1)〜(3)で表されるアミノ化合物又はそれらの塩は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
(a)成分の含有量は、本発明に係る液状混合物中、0.001〜5質量%であり、0.01〜3質量%が好ましく、0.01〜2質量%がさらに好ましい。0.01質量%以上では有効に消臭効果が発揮され、5質量%以下では吸水性樹脂が液状混合物を完全に吸収することができ、液状混合物の分離も生じない。
【0040】
〔(b)成分〕
本発明の(b)成分は、吸水性樹脂であれば特に制限はないが、水性ゲルの吸水性や安定性の観点から、(b1)アクリル酸又はその塩、アクリル酸エステル及びアクリルアミドから選ばれる単量体を含んで構成される架橋されたアクリル系ポリマー、(b2)イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の架橋体、並びに、(b3)ポリオキシエチレン架橋体から選ばれる1種以上が好ましい。
【0041】
(b1)アクリル系ポリマーとしては、HISOB(韓国・愛敬精密化学製、脱イオン水の吸水倍率(吸水性樹脂に対して、以下吸水倍率)が100〜200倍)、アクアリックCA K4(日本触媒株式会社製、吸水倍率が250〜350倍)、アクアリックCA H2(日本触媒株式会社製、吸水倍率が150〜250倍)、アクアリックCA H3(日本触媒株式会社製、吸水倍率が70〜140倍)、サンフレッシュST−250(サンダイヤポリマー株式会社製、吸収倍率が700倍)、サンフレッシュST−250MPS(サンダイヤポリマー株式会社製、吸収倍率が700倍)、サンフレッシュST−500D(サンダイヤポリマー株式会社製、吸収倍率が400倍)、サンフレッシュST−500MPSA(サンダイヤポリマー株式会社製、吸収倍率が400倍)、サンフレッシュST−573(サンダイヤポリマー株式会社製、吸収倍率が400倍)、アクアパールDSC30(サンダイヤポリマー株式会社製、吸収倍率が400倍)、アクアパールE−200(サンダイヤポリマー株式会社製、吸収倍率が380倍)、アクアキープ(住友精化株式会社製)等が挙げられる。また、(b2)イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の架橋体としては、KIゲル−201K(クラレトレーディング株式会社製、吸水倍率が200倍)、KIゲル201K−F2(クラレトレーディング株式会社製、吸水倍率が170倍)、KIゲル201K−G1(クラレトレーディング株式会社製、吸水倍率が150倍)等が挙げられる。また、(b3)ポリオキシレン架橋体としては、アクアコークTW(住友精化株式会社製、吸水倍率が30〜40倍)、アクアコークTWB(住友精化株式会社製吸水倍率が20〜30倍)等が挙げられる。
【0042】
アクリル系ポリマーとして、アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体の架橋体で、アクリルアミド単位のモル比率がアクリルアミド単位とアクリル酸(塩)単位の合計に対して、50〜95モル%であるものが好ましい。
【0043】
〔(c)成分〕
本発明の水性ゲル消臭剤は、(c)成分として界面活性剤を含有することが好ましい。(c)成分は、界面活性剤であれば特に制限されないが、吸水性樹脂の吸水性の観点から、非イオン性界面活性剤及びアミンオキシド型両性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましく、これらは単独でまたは2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0044】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0045】
水性ゲルの安定性の観点から、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキシド平均付加モル数6〜30)が好ましい。
【0046】
アミンオキシド型両性界面活性剤としては、N−アルキル−N、N−ジメチルアミン、N−アルキル−N、N−ポリオキチエチレンアミン、N−アルキルポリオキシエチレン−N、N−ジメチルアミン、N−アルカノイルアミドプロピル−N、N−ジメチルアミンなどのアミンを、公知の方法で過酸化水素と反応させた化合物が挙げられる。
【0047】
(c)成分は、本発明に係る液状混合物に配合して水性ゲル消臭剤に配合することが好ましく、(c)成分の含有量は、本発明に係る液状混合物中、0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜15質量%であり、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0048】
〔(d)成分〕
本発明の水性ゲル消臭剤は、(d)成分として水溶性溶剤を含有することが好ましい。(d)成分としては、水に対する溶解度(20℃)が1質量%以上の水溶性の有機溶剤が好ましい。この溶解度の1質量%以上とは、20℃での水100gに溶解しうる溶質の最小質量が1g以上であることを意味する。以下、この条件での水に対する溶解度を、単に溶解度ということもある。また、2種以上の化合物を混合して前述の物性を実現しても良い。
【0049】
本発明の(d)成分の溶解度は、水性ゲルの安定性の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。
【0050】
具体的に好ましい水溶性の有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオールがあり、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールが更に好ましい。
【0051】
(d)成分は、本発明に係る液状混合物に配合して水性ゲル消臭剤に配合することが好ましく、(d)成分の含有量は、本発明に係る液状混合物中、0.01〜20質量%、更に0.1〜10質量%が好ましい。
【0052】
〔水性ゲル消臭剤〕
本発明の水性ゲル消臭剤は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、他の消臭剤、及び一般的に添加される油剤、硫酸ナトリウム、N、N、N−トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、香料、色素、紫外線吸収剤等の他の成分を添加できる。これらの成分は、本発明に係る液状混合物に配合して水性ゲル消臭剤に配合することが好ましい。
【0053】
本発明に係る液状混合物のpHは、吸水性樹脂の吸水性の観点から、20℃において、5.0〜11.0が好ましく、5.0〜10.0がより好ましく、5.0〜9.0がさらに好ましい。なお、本発明に係る液状混合物の残部は水である。
【0054】
本発明に係る液状混合物のpHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。
【0055】
本発明の水性ゲル消臭剤は、上記本発明に係る液状混合物と、(b)成分とを含有する。液状混合物と(b)成分の混合比率は、(b)成分の吸水能にもよるが、液状混合物/(b)成分=100/0.5〜100/20、更に100/1〜100/10が好ましい。
【0056】
本発明の水性ゲル消臭剤は、本発明に係る液状混合物と(b)成分とを混合して、(b)成分に液状混合物を吸収させて調製されるゲル状物であり、ゲル状物を得る方法としては、一般的なゲル状芳香・消臭剤や食品、薬品用ゲル状組成物等の製造に用いられる公知の方法が広く採用できる。本発明では、本発明に係る液状混合物を吸収させて(b)成分を膨潤し、ゲル化する方法が好適である。これらの方法では、通常、液状混合物の組成がそのまま水性ゲル消臭剤においても反映される。
【0057】
水性ゲル消臭剤はそのまま消臭剤として使用することもできるが、水性ゲル消臭剤を含んで構成される据え置き型消臭剤とすることができる。例えば、自立可能な容器等に収容して据え置き型消臭剤とすることもできる。
【0058】
本発明の水性ゲル消臭剤を自立可能な容器等に収容して据え置き型消臭剤として使用する場合、部屋、トイレ、冷蔵庫、下駄箱、車内などの空間において、空間中の悪臭成分、例えば、ホルムアルデヒドを消臭するのに有用である。
【実施例】
【0059】
<水性ゲル消臭剤の調製方法>
表1の配合成分を用いて調製した表1の液状混合物3.0gと吸水性樹脂0.1gとを、広口規格ビン(PS−No.6)に入れフタを閉め、吸水性樹脂に液状混合物を混合させて水性ゲル消臭剤を調製した。尚、表1の実施例、比較例の液状混合物は、いずれも吸水性樹脂に吸収された。
【0060】
<消臭評価方法>
得られた水性ゲル消臭剤0.2gを10Lのテドラーバッグに入れ、空気を注入する。さらに、ホルムアルデヒド0.37%エタノール溶液を300μl注入し、25℃/65%RHの環境に静置する。5時間静置後、ホルムアルデヒド測定用検知管(No.91、測定範囲2ppm〜100ppm、(株)ガステック製)を用いてテドラーバッグ内のホルムアルデヒド濃度を測定する。水性ゲルを入れず、空気とホルムアルデヒド0.37%エタノール溶液300μlとを注入し、5時間静置し、検知管で測定したホルムアルデヒド濃度をブランクとした。ブランクのホルムアルデヒド濃度は、30ppmだった。ブランクとの差が10ppm以上であれば消臭性能が高いと言える。
【0061】
表1中の成分は以下のものである。また、表1中の「%」は質量%である。また、pH調整剤は塩酸であり、適量は、pHを表1の値とするための量である。
<(a)成分>
(a−1):トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
(a−2):2−アミノ−1,3−プロパンジオール
(a−3):グリシンアミド
(a−4):2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド
<(b)成分>
(b−1):イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の架橋体(KIゲル201K−G1、クラレトレーディング株式会社製)
(b−2):アクリル酸(塩)架橋体(アクアリックCA H2、株式会社日本触媒製)
(b−3):アクリルアミド−アクリル酸(塩)共重合体の架橋体(HISOB 韓国・愛敬精密化学製)
<(c)成分>
(c−1):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキシド平均付加モル数9)
(c−2):ラウロイルアミノプロピルジメチルアミンオキシド
<(d)成分>
(d−1):エチレングリコール
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)〜(3)で表される化合物又はそれらの塩から選ばれる1種以上のアミノ化合物0.001〜5質量%と水とを含有する液状混合物を、(b)吸水性樹脂に吸収させてなる、水性ゲル消臭剤。
【化1】


(式中、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。R3は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、R4は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。)
【化2】


(式中、R5及びR6は水素原子、エーテル結合を有していても良い炭素数2〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。R7は水素原子又はメチル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、mは0〜2の整数を示す。)
【化3】


(式中、R9及びR10は水素原子、エーテル結合を有していても良い炭素数2〜22のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。R11は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【請求項2】
(a)アミノ化合物が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、グリシンアミド、セリンアミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(2−エチルヘキシル)プロピオン酸アミド、2−アミノ−3−ヒドロキシ−N−(3−n−ブトキシプロピル)プロピオン酸アミド及びそれらの塩から選ばれる1種以上である、請求項1記載の水性ゲル消臭剤。
【請求項3】
(b)吸水性樹脂が、(b1)アクリル酸又はその塩、アクリル酸エステル及びアクリルアミドから選ばれる単量体を含んで構成される架橋されたアクリル系ポリマー、(b2)イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の架橋体、並びに、(b3)ポリオキシエチレン架橋体から選ばれる1種以上である、請求項1又は2記載の水性ゲル消臭剤。
【請求項4】
更に、前記液状混合物が、(c)界面活性剤を0.01〜20質量%含有する、請求項1〜3の何れか1項記載の水性ゲル消臭剤。
【請求項5】
更に、前記液状混合物が、(d)水溶性溶剤を0.01〜20質量%含有する、請求項1〜4の何れか1項記載の水性ゲル消臭剤。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載の水性ゲル消臭剤を含んで構成される、据え置き型消臭剤。

【公開番号】特開2010−35730(P2010−35730A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200409(P2008−200409)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】