説明

水性ポリウレタンエマルションの製造方法及びその製造方法により得られる水性ポリウレタンエマルション

【課題】粗粒のない水性ポリウレタンエマルションの製造方法及びその製造方法により得られる水性ポリウレタンエマルションを提供する。
【解決手段】乳化槽、ホモジナイザー、循環ラインを有する連続循環式乳化装置を用い、親水性官能基を含むウレタンプレポリマー溶液を水中に連続乳化してエマルションとする水性ポリウレタンエマルションの製造方法であって、乳化剤を含む水溶液100重量部に対してウレタンプレポリマー溶液80〜140重量部を使用し、ホモジナイザーの周速度が20〜40m/秒であり、当該ウレタンポリマー溶液を導入する重量が、当該ホモジナイザーの周速度における水運転で測定される重量に対して1/100以下である水性ポリウレタンエマルションの製造方法、及びその製造方法で得られる単峰型の粒子径分布をもつ粗粒のない水性ポリウレタンエマルション。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋等のフィルム成型体や、接着剤、塗料、コーティング材等に使用される水性ポリウレタンエマルションの製造方法及びその製造方法により得られる粗粒のない水性ポリウレタンエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
水性ポリウレタンエマルションは、有機溶剤による引火危険性がなく、作業環境、取扱の容易性の観点から、従来は溶剤系ポリウレタンが用いられた用途、例えば手袋等のフィルム成型体や、接着剤、塗料、コーティング材等で代替が進んでいる。
【0003】
一般に水性ポリウレタンエマルションは、ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液を、乳化剤等と共に水中に分散させエマルションとした後、鎖延長反応により高分子化し、その後有機溶剤を除去して製造される。
【0004】
水性ポリウレタンエマルションは、工業的には連続式ホモジナイザーを使用し生産されるが、粗粒が発生しエマルションの乳化安定性が損なわれ、長期保管中にポリマーの析出が生じる問題があった。この問題を解決するために、乳化剤を含有する分散水とウレタンプレポリマー有機溶剤溶液の混合物を予め予備混合し、加圧下でチャンバー内に導入し、衝突させて乳化する方法の検討(特許文献1)や、攪拌翼とそれを囲む管状の管路攪拌装置にプレポリマー溶液を供給することによって、連続的にウレタンエマルションを得る方法(特許文献2)がある。
【0005】
しかし、高価な高圧装置や管路攪拌装置が必要であり、大量処理するためのスケールアップが困難であり、粗粒のないエマルションの製造が困難だった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−292496号公報
【特許文献2】特開1996−291221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、粗粒のない水性ポリウレタンエマルションを製造する方法及びその製造方法により得られる粗粒のない水性ポリウレタンエマルションを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、乳化槽、ホモジナイザー、循環ラインを有する連続循環式乳化装置を用い、親水性官能基を含むウレタンプレポリマー溶液を水中に連続乳化してエマルションとする水性ポリウレタンエマルションの製造方法であって、乳化剤を含む水溶液100重量部に対してウレタンプレポリマー溶液80〜180重量部を使用し、ホモジナイザーの周速度が20〜40m/秒であり、当該ウレタンポリマー溶液を導入する重量が、当該ホモジナイザーの周速度における水運転で測定される重量に対して1/100以下であり、かつ、水運転による重量に乳化時間を乗じて算出される総重量が、乳化剤を含む水溶液とウレタンポリマー溶液を合計した重量に対して500倍以下であることを特徴とする水性ポリウレタンエマルションの製造方法、水性ポリウレタンエマルションの製造方法によって製造された、単峰型の粒子径分布をもつ粗粒のない水性ウレタンエマルションである。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の水性ポリウレタンエマルションの製造方法は、乳化槽、ホモジナイザー、循環ラインを有する連続循環式乳化装置を用い、ウレタンプレポリマー溶液を水中に連続乳化してエマルションとする製造方法である。
【0011】
連続循環式乳化装置は、乳化剤等を含む水溶液を、ホモジナイザーを通して循環させながら、親水性官能基を含むウレタンポリマー溶液を導入してエマルションを製造するための装置であり、乳化槽、ホモジナイザー、循環ラインを有するものである(例えば、図1参照)。
【0012】
乳化槽は、乳化剤等を含む水溶液と、プレポリマー溶液、及びホモジナイザーで乳化・分散されたエマルションが循環ラインを経て乳化槽内にもどり、これらの溶液を混合攪拌するための槽であり、乳化槽底部よりこれらをホモジナイザーへ供給する。乳化槽は乳化剤を含む水溶液とプレポリマーを事前に混合するためのプロペラ型攪拌機を備えることもできる。
【0013】
ホモジナイザーは、高速せん断力によって、乳化剤を含む水溶液と、ウレタンプレポリマー溶液、及びホモジナイザーで分散されたエマルションを微分散させるものであり、ホモジナイザーで乳化・分散された乳化液は循環ラインを経て乳化槽内に供給される。ホモジナイザーは、高速回転する回転体(ローター)とそれを取り囲む固定環(ステーター)からなり(この組み合わせをジェネレターという)、乳化液はジェネレターの間隙を通過する際生じるせん断力で微分散される。
【0014】
循環ラインは、ホモジナイザーを通過したエマルション乳化液を乳化槽内へ供給・循環すると共に、所定の粒子径に達すれば連続的に乳化液を系外へ排出することもできる。乳化終了後の鎖延長反応は、乳化槽内で鎖延長剤の添加を行なうこともできるし、系外での鎖延長剤の添加もできる。
【0015】
本発明で使用される乳化槽、ホモジナイザー、循環ラインを有する連続循環式乳化装置は、特定の種類に限定されるものではなく、例えば、Magic Laboマイクロプラント(IKA社製)、ULTRA−TURRAXインライン(IKA社製)、パイプラインホモミキサー(PRIMIX社製)キャビトロン(ユーロテック社製)等が挙げられる。
【0016】
本発明の製造方法で用いられる親水性官能基を含むウレタンプレポリマー溶液は、(a)ポリイソシアネート、ポリヒドロキシ化合物および親水性官能基を有するポリヒドロキシ化合物を反応させて得たプレポリマーを有機溶剤で希釈することで得られる。
【0017】
ウレタンプレポリマー溶液を製造するために使用されるポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等があげられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート等があげられ、芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等があげられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等があげられ、脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、ノルボルナンジイソシアネート等があげられる。本発明に用いられるポリイソシアネートとしては、機械特性や耐溶剤性に優れるため、MDIが好ましい。
【0018】
ウレタンプレポリマー溶液を製造するために使用されるポリヒドロキシ化合物は、イソシアネート基に対して反応性を有する水酸基を2個以上含む化合物である。ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール(a)、ポリエーテルポリオール(b)、これらの2種以上の混合物等があげられる。
【0019】
ポリエステルポリオール(a)としては、例えば、縮合ポリエステルポリオール(a1)、ポリカーボネートポリオール(a2)、ポリラクトンポリオール(a3)等があげられる。
【0020】
縮合ポリエステルポリオール(a1)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のジオール類とコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸との反応物があげられ、具体的には、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチレンアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール等のアジペート系縮合ポリエステルジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール等のアゼレート系縮合ポリエステルジオール等を例示できる。
【0021】
ポリカーボネートポリオール(a2)としては、例えば、上記ジオール類とジメチルカーボネート等によって代表されるようなジアルキルカーボネートの反応物等があげられ、具体的には、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリ3−メチルペンタメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等を例示できる。
【0022】
ポリラクトンポリオール(a3)としては、例えば、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびこれらの2種以上の混合物の開環重合物等があげられ、具体的にはポリカプロラクトンジオール等を例示できる。
【0023】
ポリエーテルポリオール(b)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマーの1種または2種以上を付加重合させた反応物があげられ、モノマーの2種以上を付加重合させた反応物の場合は、ブロック付加、ランダム付加または両者の混合系でも良い。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等を例示できる。
【0024】
ウレタンプレポリマー溶液を製造するために使用される親水性官能基を有するポリヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等があげられる。これらを原料の一部として製造したカルボン酸基含有ポリエステルポリオールも好適に用いることができる。また、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸等によってスルホン酸基が導入されたポリエステルポリオールを使用しても良い。これらの親水基が導入されたポリヒドロキシ化合物は、アンモニア、トリエチルアミン等の有機アミンやNa、K、Li、Ca等の金属塩基から選ばれる少なくとも1種によって中和した後、プレポリマーの原料として用いることもできる。
【0025】
ウレタンプレポリマー溶液を製造するために使用される有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のイソシアネート基に対して不活性なもので、水と任意の比率で混合し、沸点が100℃以下のものが望ましい。沸点が100℃を超えるとエマルションから溶剤を回収する際、有機溶剤のみを系外に除去することが困難となる。有機溶剤は、ポリイソシアネート、ポリヒドロキシ化合物および親水性官能基を有するポリヒドロキシ化合物からなるプレポリマーの合成中に希釈してもよいし、合成終了後に有機溶剤で希釈してもよい。
【0026】
乳化剤を含む水溶液は、乳化剤以外に、中和剤、消泡剤等の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で併用することもできる。乳化剤は、特に限定はないが、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアニオン系乳化剤やポリオキシエチレンデシレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンセチレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンノニルフェニレート等のノニオン系乳化剤等が挙げられ、これらのなかでノニオン系乳化剤が好適であり、分散水に対し好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
【0027】
中和剤は特に限定されず、アンモニア、トリエチルアミン等の有機アミンやNa、K、Li、Ca等の金属塩基から選ばれる少なくとも1種によって中和することができ、親水性官能基に対し、当量モル以上添加すればよい。消泡剤は特に限定はないが、油脂、ワックス、グリセライド、シリコーン系化合物、鉱物油等の混合物が最適であり、樹脂固形分に対し好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0028】
本発明の水性ポリウレタンエマルションの製造方法は、乳化剤を含む水溶液100重量部に対し、ウレタンプレポリマー溶液80〜180重量部を使用する。ウレタンプレポリマー溶液が80重量部未満だと得られるエマルションの固形分が低く乾燥の際に水の回収にエネルギーが消費され経済的でない。またウレタンプレポリマー溶液は、180重量部を超えると乳化の際に乳化安定性が損なわれ粗粒が発生する。
【0029】
本発明の水性ポリウレタンエマルションの製造方法は、ホモジナイザーの周速度が20〜40m/sである。20m/s未満だと製造時に乳化安定性が損なわれ粗粒が発生し、40m/sを超えると、粗粒の発生やホモジナイザー内にウレタンポリマーが析出し製造できない場合もある。
【0030】
本発明の水性ポリウレタンエマルションの製造方法は、ウレタンプレポリマー溶液を導入する重量が、ホモジナイザーの当該周速度における水運転で測定される重量に対し1/100以下である。1/100を超えるとウレタンプレポリマーの導入重量が多くなり、製造中の乳化安定性が悪くなり、エマルションが製造できない場合もある。
【0031】
本発明の水性ポリウレタンエマルションの製造方法は、水運転による重量に乳化時間を乗じて算出される総重量が、乳化剤を含む水溶液とウレタンポリマー溶液を合計した重量に対して500倍以下である。500倍を超えると過度のせん断力がエマルションにかかり、粗粒の発生や、乳化槽のエマルション付着や、ホモジナイザー内にウレタンポリマーが析出する。
【0032】
本発明の水性ポリウレタンエマルションの製造方法では、親水性官能基を含むウレタンプレポリマーを構成するイソシアネート成分は、特に限定するものではないが、手袋等のフィルム成型体や接着剤、塗料、コーティング材用途での機械特性や耐溶剤等の品質を維持するため、50mol%以上が4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートであるのが好ましい。
【0033】
本発明の水性ポリウレタンエマルションの製造方法では、有機溶剤により希釈されたウレタンプレポリマー溶液中のウレタンプレポリマー濃度は、特に限定するものではないが、溶剤回収に多大のエネルギーを必要とせず、連続乳化中の乳化安定性を維持するため、40〜80重量%であることが好ましい。
【0034】
反応完結したエマルションから有機溶剤を除去する方法としては、例えば、加熱ジャケット及び凝縮器を備えた反応槽やロータリーエバポレーターで、攪拌下に常圧もしくは減圧下で分留除去する方法が一般的である。
【0035】
本発明における単峰型の粒子径分布をもつ粗粒のないエマルションとは、上記の製造方法によって得られたエマルションであり、単峰型の粒子径分布をもつものである(図2参照)。
【0036】
上記の製造方法以外のエマルションの粒子径分布は、粒子径のピークが複数存在し粗粒を生じ乳化安定性が損なわれる(図3参照)。
【発明の効果】
【0037】
本発明の製造方法により、粗粒のない水性ポリウレタンエマルションを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に用いる連続循環式乳化装置を含む構成図の一例である。
【図2】粗粒のない水性ポリウレタンエマルションの粒子径分布である。
【図3】粗粒のある水性ポリウレタンエマルションの粒子径分布である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0040】
<粒子径の測定>
水性ポリウレタンエマルションの粒子径は、マイクロトラックUPA150(日機装(株)製)を用い、分散媒の屈折率を1.33に設定し粒径分布を測定、メジアン粒径を求めた。
【0041】
<乳化安定性の評価>
水性ポリウレタンエマルションの乳化安定性は、室温で1ヶ月放置後のエマルションを20メッシュ金網でろ過することにより沈降物の有無を確認した。沈降物がなく乳化安定性が良い場合を○、沈降物があり乳化安定性が劣る場合を×とした。
【0042】
(ウレタンプレポリマー溶液の合成)
還流冷却器を備えた反応器にポリブチレンアジペート(日本ポリウレタン社製、ニッポラン4010)550g及びポリエチレンアジペート(日本ポリウレタン社製、ニッポラン4040)550g、ジメチロールプロピオン酸20.4g、ネオペンチルグリコール82.1gのポリーオール、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成製)88.4g、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製、ミリオネートMT−F)353.7g、及びメチルエチルケトン1100gを入れて、反応温度80(℃)でウレタンプレポリマー溶液を製造した。
【0043】
実施例1
乳化槽、一組の渦型ジェネレーターから構成されたホモジナイザー、及び循環ラインからなる連続循環式乳化装置Magic Laboマイクロプラント(IKA社製)に、純水437g、苛性ソーダ1.5g、ノニオン乳化剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(日油製、K220)7.6g,消泡剤(サンノプコ社製、デフォーマー440)2.1gを入れた分散水(100重量部)を乳化槽に入れ周速度21m/秒(攪拌回転数14000rpm、水運転重量10354g/分)で乳化循環した。その後、ウレタンプレポリマー溶液700g(162重量部)を送液ポンプ(マスターフレックス製、Model77521)を用い滴下速度70g/分で10分間乳化槽に滴下し乳化循環を行なった。その後、同一周速度で乳化液を20分間循環しエマルションの熟成を行い、払い出しバルブより溶剤を含む水性ウレタンエマルションを取り出した。鎖延長反応はピペラジンを4.9gを水24.5gに溶解した鎖延長剤溶液を、攪拌しながら水性ウレタンエマルションに加えた。溶剤回収はエバポレーター(ビッチ社製、R−220)を用い45℃で減圧条件下で攪拌しながら有機溶剤を蒸留除去し、水性ポリウレタンエマルションを得た。得られた水性ポリウレンタンエマルションの粒子径は、粗粒のない0.91μmのメジアン径であり、1ヶ月室温放置後の乳化安定性も良好だった。エマルションの製造条件及び得られたエマルションの測定結果を表1に示す。その結果から、粗粒のない水性ポリウレタンエマルションが製造できることが明らかである。
【0044】
【表1】

実施例2〜7
表1に示した条件において、実施例1と同様に、ウレタンプレポリマー溶液の合成、及び連続式乳化装置においてプレポリマー溶液の乳化を行い、水性ポリウレタンエマルションを得た。いずれも粗粒のないエマルションが得られ、乳化安定性は良好だった。エマルションの製造条件及び得られたエマルションの測定結果を表1に示す。表1から、粗粒のない水性ポリウレタンエマルションが製造できることが明らかである。
【0045】
比較例1〜4
表1に示した以外は実施例1と同様の条件で比較例1〜4の乳化を行った。それらの製造条件及び得られたエマルションの測定結果を以下の表2に示す。
【0046】
【表2】

表2から、請求項1に示す条件以外の条件ではいずれの比較例のエマルションも粗粒が生じ、乳化安定性は悪かった。
【0047】
本発明の製造方法により、粗粒のない水性ポリウレタンエマルションを得ることができるものであり、本発明の製造方法で得られる水性ポリウレタンエマルションは、粗粒がないため、手袋やフィルム成型、接着剤、塗料、コーティング材等の広範な範囲で使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化槽、ホモジナイザー、循環ラインを有する連続循環式乳化装置を用い、親水性官能基を含むウレタンプレポリマー溶液を水中に連続乳化してエマルションとする水性ポリウレタンエマルションの製造方法であって、乳化剤を含む水溶液100重量部に対してウレタンプレポリマー溶液80〜180重量部を使用し、ホモジナイザーの周速度が20〜40m/秒であり、当該ウレタンポリマー溶液を導入する重量が、当該ホモジナイザーの周速度における水運転で測定される重量に対して1/100以下であり、かつ、水運転による重量に乳化時間を乗じて算出される総重量が、乳化剤を含む水溶液とウレタンポリマー溶液を合計した重量に対して500倍以下であることを特徴とする水性ポリウレタンエマルションの製造方法。
【請求項2】
親水性官能基を含むウレタンプレポリマーを構成するイソシアネート成分のうち、50mol%以上が4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートであることを特徴とする請求項1に記載の水性ポリウレタンエマルションの製造方法。
【請求項3】
親水性官能基を含むウレタンプレポリマーが有機溶剤に溶解しており、その溶液中のプレポリマー濃度が40〜80重量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水性ポリウレタンエマルションの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のポリウレタンエマルションの製造方法によって製造されたことを特徴とする、単峰型の粒子径分布をもつ粗粒のない水性ポリウレタンエマルション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−132378(P2011−132378A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293430(P2009−293430)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】