説明

水性ポリウレタン樹脂の製造方法、水性ポリウレタン樹脂およびフィルム

【課題】実質的に有機溶剤を使用しない水性ポリウレタン樹脂の製造方法、その方法により得られる水性ポリウレタン樹脂、および、その水性ポリウレタン樹脂から得られるフィルムを提供すること。
【解決手段】少なくともいずれかにノニオン性基の側鎖が導入されているポリイソシアネートおよび複数の活性水素基を有する活性水素基含有化合物を、活性水素基含有化合物の活性水素基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比が1.2〜4の割合で反応させることにより、側鎖に導入されるノニオン性基の濃度が0.9質量%以上のノニオン性基含有プレポリマーを合成する合成工程と、ノニオン性基含有プレポリマーと水とを、振動式撹拌装置を使用して攪拌することにより、ノニオン性基含有プレポリマーの乳化液または水溶液を得る乳化/溶解工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリウレタン樹脂の製造方法、その方法により得られる水性ポリウレタン樹脂、および、その水性ポリウレタン樹脂から得られるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全、省資源、安全性等の観点から水性樹脂が普及しつつあり、なかでも、水性ポリウレタン樹脂は、耐久性、耐薬品性、耐磨耗性などに優れる観点から、塗料、接着剤、バインダーまたはコーティング剤などの分野で普及している。
水性ポリウレタン樹脂は、通常、有機溶剤中で親水性基含有ウレタンプレポリマーを合成し、それを水中で乳化し、鎖伸長剤を反応させた後、脱溶剤することにより、製造されている。
【0003】
この方法では、有機溶剤を使用するため、脱溶媒が必須となる。そのため、操作が煩雑かつ不経済である。また、得られる水性ポリウレタン樹脂から有機溶剤を完全に除去することは困難であり、残存する有機溶剤に起因する、環境汚染、安全性、臭気などの不具合が不可避となる。
そのため、有機溶剤を使用せずに水性ポリウレタンを製造することが切望されており、種々の検討がなされている。
【0004】
例えば、ウレタンプレポリマーおよび水を、ステータ歯とロータ歯とを備える連続式乳化機に連続的に供給し、ロータ歯を高速回転させて、ロータ歯とステータ歯との間の剪断力で分散させることにより、水性ポリウレタン樹脂を連続的に乳化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、イソシアネート基末端プレポリマーと水とを、稼動動力2KW/m以上の連続式混練機を用いて接触混合させることにより、水分散体を製造することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、ポリウレタンおよび親水性基を有するポリマーを、二軸押出機を用いて、水とともに溶融混合することにより、水性ポリウレタン樹脂を得ることが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
一方、ウレタンプレポリマーの有機溶剤溶液および水を、振動式撹拌装置を用いて、連続分散乳化することが、提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−59676号公報
【特許文献2】特開2003−138021号公報
【特許文献3】特開2005−232277号公報
【特許文献4】特開平8−120091公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の方法では、分散時のウレタンプレポリマーの粘度を10000mPa・s以下にする必要があり、そのため、水に乳化剤を含有させる必要がある。その結果、水性ポリウレタン樹脂から得られる塗膜の耐水性が低くなるという不具合がある。
また、特許文献2に記載の方法では、実際の製造において、水が導入される乳化部に、水と反応したウレタンプレポリマーが付着していくため、連続運転および洗浄性に不具合を生じる。
【0008】
また、特許文献3に記載の方法では、溶融混練時に200℃程度の熱がかかるため、ポリウレタンの一部が熱分解し、そのため、その水性ポリウレタン樹脂から得られるフィルムの機械強度が不足するという不具合がある。
また、特許文献4に記載の方法では、有機溶剤を使用した水性ポリウレタン樹脂の製造方法であり、ウレタンプレポリマーの粘度は低く、分散後に脱溶剤が必要となる。また、水性ポリウレタン樹脂は、高固形分・低粘度の分散体を目的としているため、粒子径がミクロンオーダーであり、薄く均一な塗膜を得るには不適である。
【0009】
本発明の目的は、実質的に有機溶剤を含有せず、環境にやさしく、微細で、均一に乳化され、沈降を生じないことから、貯蔵安定性に優れる水性ポリウレタン樹脂を製造することができ、さらには、装置の汚れも少なく、生産性に優れる水性ポリウレタン樹脂の製造方法を提供すること、さらには、その方法により得られる水性ポリウレタン樹脂、および、その水性ポリウレタン樹脂から得られるフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、実質的に有機溶剤を使用しない水性ポリウレタン樹脂の製造方法であって、少なくともいずれかにノニオン性基の側鎖が導入されているポリイソシアネートおよび複数の活性水素基を有する活性水素基含有化合物を、活性水素基含有化合物の活性水素基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比が1.2〜4の割合で反応させることにより、側鎖に導入されるノニオン性基の濃度が0.9質量%以上のノニオン性基含有プレポリマーを合成する合成工程と、ノニオン性基含有プレポリマーと水とを、振動式撹拌装置を使用して攪拌することにより、ノニオン性基含有プレポリマーの乳化液または水溶液を得る乳化/溶解工程とを備えていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂の製造方法では、ノニオン性基含有プレポリマーの乳化液または水溶液と、鎖伸長剤とを、振動式撹拌装置、静止型混合器、インラインミキサーからなる群から選択される少なくとも1種の装置に送液して、反応させる鎖伸長工程をさらに備えていることが好適である。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、上記した水性ポリウレタン樹脂の製造方法により得られることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明のフィルムは、上記した水性ポリウレタン樹脂から得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水性ポリウレタン樹脂の製造方法によれば、ノニオン性基含有プレポリマーを合成する合成工程において、有機溶剤を使用しないため、脱溶媒が不要である。そのため、操作性の向上を図ることができ、かつ、経済的である。さらに、ノニオン性基含有プレポリマーの乳化/溶解時には、振動式撹拌装置へのノニオン性基含有プレポリマーの付着、堆積、異物の発生が少なく、洗浄性に優れており、長時間の連続運転にも優れている。従って、水性ポリウレタン樹脂を効率よく生産することができ、経済性に優れている。
【0014】
そして、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、実質的に有機溶剤を含有せず、そのため、環境にやさしく、微細で、均一に乳化/溶解されており、沈降/分離を生じることがないことから、貯蔵安定性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例で採用した製造装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の水性ポリウレタン樹脂の製造方法は、実質的に有機溶剤を使用しない水性ポリウレタン樹脂の製造方法であって、まず、合成工程において、少なくともいずれかにノニオン性基の側鎖が導入されているポリイソシアネートおよび活性水素基含有化合物を、反応させることにより、ノニオン性基含有プレポリマーを合成する。
本発明において、ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2つ以上有する有機化合物であって、例えば、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0017】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(以下、TDIと省略する)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(以下、NDIと省略する)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4´−、2,4´−または2,2´−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(以下、MDIと省略する)、4,4´−トルイジンジイソシアネート(以下、TODIと省略する)、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。
【0018】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(以下、XDIと省略する)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(以下、TMXDIと省略する)、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどが挙げられる。
【0019】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート、以下、IPDIと省略する)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4′−、2,4′−または2,2′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans−体、Trans,Cis−体、Cis,Cis−体、もしくはその混合物))(以下、H12MDIと省略する)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(以下、NBDIと省略する)、ビス(イソシアネナトメチル)シクロヘキサン(1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(以下、HXDIと省略する)、ダイマー酸ジイソシアネート(以下、DDIと省略する)などが挙げられる。
【0020】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと省略する)、ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエートなどが挙げられる。
【0021】
また、ポリイソシアネートとしては、上記したポリイソシアネートの多量体(例えば、二量体、三量体など)や、例えば、上記したポリイソシアネートあるいは多量体と、水との反応により生成するビウレット変性体、アルコールまたは低分子量ポリオール(後述)との反応により生成するアロファネート変性体、炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン変性体、または、低分子量ポリオール(後述)との反応により生成するポリオール変性体などが挙げられる。
【0022】
ポリイソシアネートは、単独使用または2種以上併用してもよく、好ましくは、MDI、TDI、XDI、H12MDI、IPDI、HXDI、HDI、NBDI、または、それらの混合物が挙げられる。
本発明において、活性水素基含有化合物は、複数(2つ以上)の活性水素基を有する有機化合物である。活性水素基は、イソシアネートと反応する活性水素基であって、例えば、水酸基、アミノ基などが挙げられる。
【0023】
活性水素基含有化合物として、例えば、ポリオールが挙げられる。ポリオールは、水酸基を2つ以上有する有機化合物であって、例えば、低分子量ポリオールおよびマクロポリオールが挙げられる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、水酸基を2つ以上有する数平均分子量60以上600未満の有機化合物であって、低分子量ジオール、低分子量トリオール、水酸基を4つ以上有する低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0024】
低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール(以下、NPGと省略する)、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどのC2−22アルカンジオール、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールなどのアルケンジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。また、低分子量ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、水添ビスフェノールAまたはそのC2−4アルキレンオキサイド付加体などの脂環族ジオールが挙げられる。また、低分子量ジオールとしては、例えば、レゾルシン、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、上記ビスフェノール類のC2−4アルキレンオキサイド付加体などの芳香族ジオールが挙げられる。また、低分子量ジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルジオールなどが挙げられる。
【0025】
低分子量トリオールとしては、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ペンタン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(炭素数8〜24)などが挙げられる。
【0026】
水酸基を4つ以上有する低分子量ポリオールとしては、例えば、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどが挙げられる。
マクロポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。
【0027】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリアルキレンオキサイドであって、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られる、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0028】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールの1種または2種以上から選択される多価アルコールと、多塩基酸、そのアルキルエステル、その酸無水物、および、その酸ハライドとの縮合反応またはエステル交換反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などが挙げられる。
【0029】
多塩基酸のアルキルエステルとしては、上記した多塩基酸のメチルエステル、エチルエステルなどが挙げられる。
酸無水物としては、上記した多塩基酸から誘導される酸無水物が挙げられ、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(炭素数12〜18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられる。
【0030】
酸ハライドとしては、上記した多塩基酸から誘導される酸ハライドが挙げられ、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどが挙げられる。
また、ポリエステルポリオールには、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合により得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0031】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート類を用いて得られる、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる非晶性ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0032】
アクリルポリオールとしては、例えば、1つ以上の水酸基を有する重合性単量体と、それに共重合可能な別の単量体とを共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。
水酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。
【0033】
また、それらと共重合可能な別の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、フマル酸アルキル、イタコン酸、イタコン酸アルキル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
そして、アクリルポリオールは、それら単量体を適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることによって得ることができる。
エポキシポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと、例えば、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとを反応させることよって得られるエポキシポリオールが挙げられる。
【0035】
天然油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などの水酸基含有天然油などが挙げられる。
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体として、ビニル基含有のシリコーン化合物、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが用いられる共重合体、および、末端アルコール変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0036】
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体としてビニル基含有のフッ素化合物、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが用いられる共重合体などが挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ボリブタジエンポリオール、部分ケン価エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0037】
マクロポリオールは、数平均分子量が、例えば、300〜10000、好ましくは600〜5000であり、水酸基当量が、例えば、100〜5000、好ましくは、160〜2500である。
ポリオールは、単独使用または2種以上併用してもよく、好ましくは、低分子量ポリオールとマクロポリオールとを併用する。
【0038】
本発明では、上記したポリイソシアネートおよび上記した活性水素基含有化合物の少なくともいずれかにノニオン性基の側鎖が導入されている。
ノニオン性基は、水に対して親和性がある基であって、例えば、ポリオキシエチレン基などが挙げられる。
ポリイソシアネートにノニオン性基の側鎖を導入するには、例えば、2つ以上のイソシアネート基を含み、側鎖にポリオキシエチレン基を有するノニオン性基含有ポリイソシアネート(以下、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートという。)を合成する。
【0039】
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートを合成するには、次の方法が例示される。すなわち、まず、上記したジイソシアネートと片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(C1〜20のアルキル基で片末端の水酸基を封止したポリオキシエチレングリコール)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対して、ジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させ、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得る。次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジイソシアネートとをアロファネート化反応させることにより、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートを得る。
【0040】
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリイソシアネートを得るには、ジイソシアネートとして、好ましくは、HDI、HXDI、IPDI、H12MDI、NBDIなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。さらに好ましくは、HDIが挙げられる。
活性水素基含有化合物にノニオン性基の側鎖を導入するには、合成工程において、例えば、活性水素基含有化合物として、上記したポリオールとともに、あるいは、単独で、側鎖にノニオン性基を有する活性水素基含有化合物(すなわち、側鎖にノニオン性基が導入されている活性水素基含有化合物)を配合する。
【0041】
側鎖にノニオン性基を有する活性水素基含有化合物は、好ましくは、側鎖にノニオン性基を有し、40℃で固体および/または粘度が5Pa・s以上、好ましくは、5〜1000Pa・sの活性水素基含有化合物であって、例えば、ポリオキシエチレン基含有化合物が挙げられる。ポリオキシエチレン基含有化合物は、側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の活性水素基を有する有機化合物である。
【0042】
ポリオキシエチレン基含有化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールが挙げられる。
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の活性水素基を有する有機化合物であって、次のように合成することができる。
すなわち、まず、上記したジイソシアネートと片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(例えば、数平均分子量200〜6000、好ましくは300〜3000)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対して、ジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させ、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得る。
【0043】
次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンなど)とを、ジアルカノールアミンの2級アミノ基に対して、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートのイソシアネート基がほぼ等量となる割合でウレア化反応させる。
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールを得るには、ジイソシアネートとして、好ましくは、HDI、HXDI、IPDI、H12MDI、NBDIなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。さらに好ましくは、HDIが挙げられる。
【0044】
なお、ポリオキシエチレン基含有化合物が配合される場合には、乳化/溶解性の向上および水性ポリウレタン樹脂から得られるフィルムの耐水性維持の観点から、側鎖に導入されるポリオキシエチレン基の水性ポリウレタン樹脂(固形分)に対する質量%が、例えば、0.9質量%以上、好ましくは、0.9〜30質量%、より好ましくは、2〜20質量%、さらに好ましくは、2〜10質量%の範囲となるように調整する。
【0045】
ノニオン性基は、ポリイソシアネート(の全部または一部)のみに導入してもよく、また、活性水素基含有化合物(の全部または一部)のみに導入してもよく、さらには、ポリイソシアネートおよび活性水素基含有化合物の両方に導入することもでき、その目的や用途などから、適宜選択される。
そして、合成工程では、ポリイソシアネートと、活性水素基含有化合物とを、活性水素基含有化合物の活性水素基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、1.2〜4の範囲、好ましくは、1.2〜3の範囲、さらに好ましくは、1.25〜2の範囲において、反応させる。
【0046】
当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、上記範囲の下限より低いと、ノニオン性基含有プレポリマーの粘度が過度に高くなり、乳化/溶解が困難となる。また、上記範囲の上限より高いと、鎖伸長工程において、発泡またはゲル化などを生じる。
また、この反応では、得られるノニオン性基含有プレポリマーの側鎖に導入されるノニオン性基の濃度が、0.9質量%以上、好ましくは、0.9〜30質量%、より好ましくは、2〜20質量%、さらに好ましくは、2〜10質量%の範囲となるように、ポリイソシアネートおよび活性水素基含有化合物の配合割合を調整する。ノニオン性基含有プレポリマーのノニオン性基の濃度が上記の範囲であれば、良好に乳化/溶解することができ、さらには、微細で貯蔵安定性に優れる水性ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0047】
なお、ノニオン性基含有プレポリマーの側鎖に導入されるノニオン性基の濃度は、下記式(1)により求めることができる。
側鎖に導入されるノニオン性基の濃度(質量%)=100×(側鎖にノニオン性基が導入されたポリイソシアネートおよび活性水素基含有化合物の仕込み量(質量部))/[(側鎖にノニオン性基が導入されていないポリイソシアネートおよび活性水素基含有化合物の仕込み量(質量部))+(側鎖にノニオン性基が導入されたポリイソシアネートおよび活性水素基含有化合物の仕込み量(質量部))] (1)
また、この反応は、不活性ガスの存在下、反応温度、例えば、50〜130℃で、所定のイソシアネート基含有量に達するまで、例えば、反応時間、例えば、0.5分〜24時間、攪拌混合する。
【0048】
この反応において、ポリイソシアネートがTMXDIなどであって、親水性基との反応性に乏しい場合には、反応時間は、例えば、80〜130℃に調整する。
また、この反応において、必要により、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの公知のウレタン化触媒を添加することができる。
また、この反応において、攪拌混合するための撹拌混合装置は、高粘度になるノニオン性基含有プレポリマーを均一に撹拌混合できれば、特に制限されないが、例えば、遊星運動するブレードを備えるプラネタリータイプの撹拌装置、アンカー羽根およびディスパー羽根を備える2〜4軸タイプの撹拌装置、各種ニーダー、二軸押出機、ミルなどが挙げられる。ノニオン性基含有プレポリマー合成時の混合効率などの観点から、好ましくは、プラネタリータイプの撹拌装置、2〜4軸タイプの撹拌装置が挙げられる。なお、得られたノニオン性基含有プレポリマーを圧力供給するために、ラムプレスなどのプレス装置を併設することもできる。
【0049】
上記の反応により得られるノニオン性基含有プレポリマーにおいて、イソシアネート基含有量は、例えば、0.1〜20質量%、好ましくは、0.5〜10質量%である。また、ノニオン性基濃度は、上記の通りであって、具体的には、側鎖に導入されるノニオン性基の含有量が、0.9質量%以上、好ましくは、0.9〜30質量%、より好ましくは、2〜20質量%である。また、標準ポリスチレンを検量線として得られるGPC測定による数平均分子量は、例えば、1000〜50000、好ましくは、1500〜20000である。
【0050】
また、ノニオン性基含有プレポリマーは、上記の通り、無溶媒下、ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物とを、直接、攪拌混合して反応させるため、実質的に有機溶剤が含有されておらず、そのため、粘度(40℃)が、例えば、10〜2000Pa・s、好ましくは、15〜1800Pa・s、さらに好ましくは、20〜1500Pa・sと、比較的高粘度である。
【0051】
本発明の水性ポリウレタン樹脂の製造方法では、次いで、乳化工程において、ノニオン性基含有プレポリマーおよび水を混合攪拌して、ノニオン性基含有プレポリマーを水で乳化させることにより、ノニオン性基含有プレポリマーの乳化液を得る。
乳化工程では、例えば、20〜65℃、好ましくは、20〜55℃、さらに好ましくは、20〜50℃に温度調整されているノニオン性基含有プレポリマーと、例えば、5〜40℃、好ましくは、5〜30℃に温度調整されている水とを、振動式撹拌装置により攪拌混合する。
【0052】
水は、特に制限されず、例えば、蒸留水やイオン交換水などが用いられる。なお、水には、必要により、鎖伸長剤(後述)を、含有させることもできる。
ノニオン性基含有プレポリマーの温度が、上記範囲の下限より低いと、振動式撹拌装置内に、乳化が不十分なノニオン性基含有プレポリマーが付着、堆積する。また、得られる水性ウレタン樹脂中にも、乳化が不十分なノニオン性基含有プレポリマーが混在してしまい、品質低下の原因となる。一方、上記範囲の上限より高いと、ノニオン性基含有プレポリマーと水とが、振動式撹拌装置内で反応してしまい、硬いウレタン樹脂が生成して、振動式撹拌装置内に付着、堆積する。また、得られる水性ウレタン樹脂中にも、硬いウレタン樹脂が混在してしまい、経時的に粒子径が大きくなり、貯蔵安定性が低下する。
【0053】
同様に、水の温度が、上記範囲の下限より低いと、振動式撹拌装置内に、乳化が不十分なノニオン性基含有プレポリマーが付着、堆積する。また、得られる水性ウレタン樹脂中にも、乳化が不十分なノニオン性基含有プレポリマーが混在してしまい、品質低下の原因となる。一方、上記範囲の上限より高いと、ノニオン性基含有プレポリマーと水とが、振動式撹拌装置内で反応してしまい、硬いウレタン樹脂が生成して、振動式撹拌装置内に付着、堆積する。また、得られる水性ウレタン樹脂中にも、硬いウレタン樹脂が混在してしまい、経時的に粒子径が大きくなり、貯蔵安定性が低下する。
【0054】
なお、ノニオン性基含有プレポリマーの温度は、例えば、振動式撹拌装置にノニオン性基含有プレポリマーを供給するためのジャケット付調整釜に接続した外部温調機、例えば、恒温循環装置などにより調整し、水の温度は、例えば、振動式撹拌装置に水を供給するためのジャケット付水槽に接続した外部温調機、例えば、低温恒温水槽などにより調整する。
【0055】
振動式撹拌装置は、例えば、図1が参照されるように、混合対象物が流通するケーシング21と、ケーシング21内に設けられ、ケーシング21の長手方向(軸方向)に沿って配置されモータ24により回転駆動される回転軸22と、回転軸22の周りにおいて軸方向に沿って螺旋状に設けられる攪拌羽根23とを備え、ケーシング21内において、螺旋状の攪拌羽根23を軸方向に振動させることにより、混合対象物を連続的に攪拌混合する、連続式の振動型攪拌混合装置である。振動式撹拌装置としては、例えば、バイブロミキサー(冷化工業社製)が挙げられる。
【0056】
振動式撹拌装置において、エレメント部の段数(攪拌羽根23のユニット数)は、2〜8段、好ましくは、4〜7段、エレメント部の振動数は、10〜35ストローク/Sec、好ましくは、20〜35ストローク/Secに設定する。また、乳化時間(通液時間)は、例えば、0.1〜10分、好ましくは、0.1〜3分である。
なお、振動式撹拌装置では、ノニオン性基含有プレポリマーの供給位置に対して、水の供給位置を、供給方向上流側に配置すれば、振動式撹拌装置において、水が供給されているところに、ノニオン性基含有プレポリマーを供給することができるので、振動式撹拌装置内に、ノニオン性基含有プレポリマーが付着・堆積することを、より一層防止することができる。
【0057】
また、ノニオン性基含有プレポリマーおよび水は、振動式撹拌装置へ定量供給される。撹拌混合装置から振動式撹拌装置へノニオン性基含有プレポリマーを定量供給するには、特に制限されないが、送液ポンプが用いられる。送液ポンプとしては、高粘度のノニオン性基含有プレポリマーを定量供給できればよく、例えば、回転容積型の一軸偏心ねじポンプであるモーノポンプ、ギヤポンプ、ローターポンプ、ピストンタイプのリニアポンプなどが挙げられる。好ましくは、モーノポンプ、ギヤポンプ、ローターポンプが挙げられる。
【0058】
また、水を定量供給するには、例えば、ダイヤフラムポンプ、ギヤポンプ、ローターポンプ、プランジャーポンプ、渦巻ポンプ、タービンポンプ、リニアポンプなどの送液ポンプが用いられる。定量精度の観点から、好ましくは、ダイヤフラムポンプ、ギヤポンプ、ローターポンプ、プランジャーポンプが用いられる。
ノニオン性基含有プレポリマーの供給速度や水の供給速度は、乳化時のノニオン性基含有プレポリマーの分散濃度を、例えば、9〜80質量%、好ましくは、好ましくは、20〜70質量%に調整できれば、特に制限されず、装置スケールに応じて、適宜選択される。
【0059】
これによって、乳化時のノニオン性基含有プレポリマーの分散濃度を、例えば、9〜80質量%、好ましくは、20〜70質量%に調整する。分散濃度が上記範囲の下限よりも低いと、得られる水性ポリウレタン樹脂の濃度が過度に低くなり、用途によっては、さらに高濃度化する必要が生じる場合がある。一方、分散濃度が上記範囲の上限よりも高いと、ノニオン性基含有プレポリマーの乳化液の粘度が過度に高くなり、鎖伸長剤の添加時に、凝集やゲル化を生じる場合がある。
【0060】
これによって、ノニオン性基含有プレポリマーは、振動式撹拌装置内において、水によって乳化され、ノニオン性基含有プレポリマーの乳化液が調製される。
乳化液の粘度(25℃)は、例えば、0.01〜10Pa・s、好ましくは、0.02〜5Pa・sである。
なお、上記した乳化工程は、水性ポリウレタン樹脂の水溶液が得られる溶解工程に代替される場合がある。
【0061】
より具体的には、例えば、上記した合成工程において、活性水素基含有化合物として親水性の活性水素基含有化合物(例えば、ポリエチレングリコールなど)が用いられる場合には、ノニオン性基含有プレポリマーと水とを混合撹拌すると、ノニオン性基含有プレポリマーが粒子化せずに、水に溶解し、ノニオン性基含有プレポリマーの水溶液が得られる場合がある。
【0062】
このような場合には、上記したノニオン性基含有プレポリマーの乳化工程は、ノニオン性基含有プレポリマーの溶解工程に代替される。
そして、本発明の水性ポリウレタン樹脂の製造方法では、鎖伸長工程において、ノニオン性基含有プレポリマーと鎖伸長剤とを鎖伸長反応させて、水性ポリウレタン樹脂を得る。
【0063】
鎖伸長剤としては、ポリアミンやアミノアルコールなどが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、4,4´−ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族ポリアミン、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジアミンもしくはその混合物などの芳香脂肪族ポリアミン、例えば、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(慣用名:イソホロンジアミン)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジアミンなどの脂環族ポリアミン、例えば、エチレンジアミン(EDA)、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン(水和物を含む。)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族ポリアミンなどが挙げられる。
【0064】
また、ポリアミンとして、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物や、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンも挙げられる。より具体的には、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物として、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基含有モノアミン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0065】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社のジェファーミンED―2003、EDR−148、XTJ−512などが挙げられる。
また、アミノアルコールとしては、例えば、モノメタノールアミン(2−アミノメタノール)、モノエタノールアミン(2−アミノエタノール)(MEA)などのモノアルカノール(モノ)アミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンなどが挙げられる。
【0066】
これら鎖伸長剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
鎖伸長剤として、好ましくは、ポリアミンとアミノアルコールとの併用が挙げられ、より好ましくは、脂肪族ポリアミンとモノアルカノール(モノ)アミンとの併用が挙げられる。
鎖伸長剤として、脂肪族ポリアミンとモノアルカノール(モノ)アミンとを併用する場合には、それらを、脂肪族ポリアミン中のアミノ基に対するモノアルカノール(モノ)アミン中のアミノ基の当量比(モノアルカノール(モノ)アミン中NH/脂肪族ポリアミン中NHが、例えば、0.01〜1、好ましくは、0.05〜0.5の割合となるように、配合する。
【0067】
また、鎖伸長剤として、脂肪族ポリアミンとモノアルカノール(モノ)アミンとを併用する場合には、それらを予め混合して用いることができ、あるいは、それらを個別に調製して用いることもできる。なお、脂肪族ポリアミンとモノアルカノール(モノ)アミンとを個別に調製して用いる場合には、後述する鎖伸長剤槽が複数設置(増設)される。
また、鎖伸長剤は、ノニオン性基含有プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.8〜1.2、好ましくは0.85〜1.1、さらに好ましくは0.9〜1の割合となるように、配合する。
【0068】
そして、鎖伸長反応は、上記で調製された乳化液(水溶液)に、鎖伸長剤を配合できれば、特に
制限されないが、好ましくは、乳化液(水溶液)と鎖伸長剤とを連続式混合装置に送液して、反応させる。
連続式混合装置としては、振動式撹拌装置、静止型混合器、および、インラインミキサーが挙げられる。
【0069】
振動式撹拌装置としては、例えば、上記したバイブロミキサー(冷化工業社製)が挙げられる。
静止型混合器としては、例えば、スタティックミキサー(ノリタケ カンパニー リミテド社製)、混合君(フジキン社製)、分散君(フジキン製社)などが挙げられる。
インラインミキサーとしては、例えば、T.K.パイプラインホモミクサー(プライミクス社製)、T.K.フィルミックス(プライミクス社製)、マイルダー(太平洋機工社製)、パイプラインミキサー(みづほ工業社製)などが挙げられる。
【0070】
これら連続式混合装置は、それぞれ単独の装置構成として、または、適宜組み合わせた装置構成として、用いることができる。
連続式混合装置において、乳化液(水溶液)の供給速度や鎖伸長剤の供給速度は、ノニオン性基含有プレポリマーと鎖伸長剤との当量比が上記割合となれば、特に制限されず、装置スケールに応じて適宜選択される。また、反応温度は、0〜40℃、好ましくは、10〜35℃に設定され、通液時間は、0.1〜10分、好ましくは、0.1〜2分に設定される。
【0071】
乳化液(水溶液)と鎖伸長剤とは、それぞれ上記した送液ポンプによって、上記した供給速度にて連続式混合装置へ送液することができる。この場合において、乳化液(水溶液)の供給ラインおよび鎖伸長剤の供給ラインを、ともに連続式混合装置の上流側に直接接続してもよく、または、一方を連続式混合装置の上流側に直接接続し、他方を連続式混合装置の通液方向途中側に接続することもできる。さらには、連続式混合装置の上流側にT型ラインを接続して、そのT型ラインに、乳化液(水溶液)の供給ライン、鎖伸長剤の供給ラインおよび連続式混合装置への供給ラインを接続することもできる。
【0072】
これにより、ノニオン性基含有プレポリマーと鎖伸長剤とが鎖伸長反応して、水性ポリウレタン樹脂が生成する。水性ポリウレタン樹脂は、乳化液中で生成する場合には、水中に分散する水分散液として調製され、また、ノニオン性基含有プレポリマーの水溶液中で生成する場合には、水性ポリウレタン樹脂の水溶液として調製される。
調製された水分散液(水溶液)の固形分濃度は、通常、例えば、9〜80質量%、好ましくは、20〜70質量%に調整される。
【0073】
また、調製された水性ポリウレタン樹脂において、固形分当たりの側鎖に導入されるノニオン性基濃度は、側鎖に導入されるノニオン性基の含有量が、上記した通り、例えば、0.9質量%以上、好ましくは、0.9〜30質量%、より好ましくは、2〜20質量%、さらに好ましくは、2〜10質量%である。また、標準ポリスチレンを検量線として得られるGPC測定による数平均分子量は、例えば、2000〜200000、好ましくは、3000〜150000である。
【0074】
また、水性ポリウレタン樹脂は、上記の通り、無溶媒下、ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物とを、直接、攪拌混合して反応させることにより、ノニオン性基含有プレポリマーを得て、そのノニオン性基含有プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることにより、実質的に有機溶剤を含まないように、具体的には、水分散液(水溶液)当たりの有機溶剤の含有量が、質量基準として、例えば、100ppm以下、好ましくは、50ppm以下、さらに好ましくは、10ppm以下となるように、調製されている。
【0075】
さらに、分散液中の水性ポリウレタン樹脂の平均粒子径は、例えば、2〜700nm、好ましくは、5〜500nmである。平均粒子径が上記範囲の下限より小さいと、水性ポリウレタン樹脂の粘度が高くなることがあり、一方、上記範囲の上限より大きいと、沈降が生じるなど、貯蔵安定性が低下する場合がある。そして、水性ポリウレタン樹脂の平均粒子径が上記範囲(ナノメートルオーダの平均粒子径)であれば、薄く均一な塗膜を得ることができる。
【0076】
そして、上記した水性ウレタン樹脂の製造方法によれば、有機溶剤を使用しないので、脱溶媒工程が不要であり、操作の容易性および経済性に優れ、生産性を向上させることができる。また、乳化/溶解時のノニオン性基含有プレポリマーの粘度が比較的高粘度であっても、乳化剤などを配合することなく、良好に乳化分散/溶解させることができ、かつ、振動式攪拌装置内に、ノニオン性基含有プレポリマーを付着・体積させることなく、連続的に乳化分散/溶解させることができる。さらに、溶融混練することなく、比較的低温度で乳化分散/溶解させることができる。
【0077】
そのため、得られた水性ポリウレタン樹脂は、環境にやさしく、つまり、微量の有機溶剤に起因する、環境汚染、安全性、臭気などの不具合を解消することができる。また、得られた水性ポリウレタン樹脂は、微細で、沈降/分離を生じることなく均一に乳化/溶解されていることから、貯蔵安定性に優れ、さらには、耐水性の向上、機械強度の向上を図ることができる。
【0078】
とりわけ、ノニオン性基を有する活性水素基含有化合物として、ノニオン性基を有し、40℃で固体および/または粘度が5Pa・s以上の活性水素基含有化合物を使用する場合には、そのような活性水素基含有化合物は、ポリオールに対する溶解度が低いため、有機溶剤を使用しない場合には、ノニオン性基含有プレポリマーの粘度が極端に高くなる(例えば、40℃の粘度が、10〜2000Pa・s)。そのため、通常の方法では、ノニオン性基含有プレポリマーを合成することができず、たとえできたとしても、平均粒子径が大きく、不均一な粒子として乳化/溶解される。
【0079】
しかし、上記の方法によれば、40℃で固体および/または粘度が5Pa・s以上の活性水素基含有化合物を使用しても、上記した通り、微細で、沈降/分離を生じることなく均一に乳化/溶解することができる。
そのため、得られた水性ポリウレタン樹脂は、被着体(被塗物)に塗工すれば、良好に密着する塗膜(フィルム)を形成することができる。よって、塗料、接着剤、バインダーまたはコーティング剤などの種々の分野で有効に用いることができる。
【0080】
なお、フィルムを作成する際には、水性ポリウレタン樹脂を、基材の上に、例えば、アプリケーターなどを用いて塗布し、乾燥させる。
なお、本発明の水性ウレタン樹脂または水分散液/水溶液には、その目的および用途によって、必要に応じて、例えば、消泡剤、レベリング剤、フィラー、顔料、染料、珪素化合物、ロジン類、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、増白剤、増粘剤、安定剤などの各種の添加剤を、適宜、添加することができる。
【実施例】
【0081】
次に、本発明を合成例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。また、実施例などに用いられる製造装置、分析方法および測定方法を、以下に示す。
(製造装置)
図1に示す装置を採用した。図1において、プラネタリーミキサー1(温度計、窒素導入管、遊星運動する撹拌ブレードを装備、PLM−15型、井上製作所社製)に、ラムプレス2(PH−15型、井上製作所社製)を併設し、そのラムプレス2の下流側(「下流側」または「上流側」は送液方向を基準とする。)に、モーノポンプ3(3NELS10PL型ヘイシンモーノポンプ、兵神装備社製)を接続した。一方、水槽4の下流側に、プランジャーポンプ5(ダブルプランジャーポンプ、日本精密科学社製)を接続した。そして、モーノポンプ3の下流側およびプランジャーポンプ5の下流側を、バイブロミキサー6(振動エレメントのハウジング内径35mmφ、エレメント数6段、冷化工業社製)の上流側(下部)に接続した。
【0082】
バイブロミキサー6の上流側においては、モーノポンプ3の接続位置に対して、プランジャーポンプ5の接続位置が上流側(下部)となるように、それらを接続した。
バイブロミキサー6の下流側(最上部)に、攪拌機付容器7(窒素導入管を装備、底部に抜取口が開口されている)を接続し、その攪拌機付容器7の下流側に、プランジャーポンプ8(ダブルプランジャーポンプ、日本精密科学社製)を接続した。一方、鎖伸長剤槽9の下流側に、プランジャーポンプ10(ダブルプランジャーポンプ、日本精密科学社製)を接続した。そして、プランジャーポンプ8の下流側およびプランジャーポンプ10の下流側を、インジェクションTライン11の上流側に接続した。
【0083】
そして、インジェクションTライン11の下流側を、スタティックミキサー12(T4−21R−S型、ノリタケ社製)の上流側に接続し、スタティックミキサー12の下流側に攪拌機付容器13を接続した。
(イソシアネート基含有量(NCO%))
ジブチルアミンの塩酸による逆滴定法(JIS K 1556:ポリウレタン原料−トルエンジイソシアネート試験方法(附属書1)に準拠)により、ノニオン性基含有プレポリマーのイソシアネート基含有量(質量%)を測定した。
(沈降/分離有無)
水性ポリウレタン樹脂をサンプル瓶に取り、23℃、55%RHの恒温恒湿の部屋に静置し、1ヵ月後にサンプル瓶の底に沈降/分離物が見られるかどうかを目視にて判定した。
【0084】
沈降/分離が確認されたものを“有”、確認できなかったものを“無”とした。
(装置内部の汚染有無)
2時間の連続乳化/溶解試験を実施後、振動式撹拌装置を分解し、エレメント部(攪拌羽根)の汚染状況を目視にて確認した。評価基準を下記に示す。
×:ノニオン性基含有プレポリマーが乳化/溶解せず、エレメント内に付着、堆積している状態
×:水とノニオン性基含有プレポリマーが反応した硬いウレタン樹脂がエレメントに付着、堆積している状態
△:付着物が確認できるが、乳化液の流れを妨げるほどの付着量ではない状態
○:ほとんど付着物がない状態
原料製造例1(ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール(PEGOH−1)の合成)
温度計、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応器において、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:タケネート700、HDI、三井化学ポリウレタン社製)627.1部、50℃に加温した数平均分子量1000のメトキシポリエチレングリコール(商品名:メトキシPEG−1000、東邦化学工業社製)372.9部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、80℃で6時間反応させた。所定のイソシアネート基含有量に到達した後、スミス式薄膜蒸留器にて未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去し、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネート(PEGNCO−1)を得た。
【0085】
次いで、温度計、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応器において、室温下、ジエタノールアミン99.2部を仕込んだ。窒素ガスを導入しつつ、冷却しながら、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネート(PEGNCO−1)900.8部を添加し、60℃で3時間反応させた。赤外吸収スペクトルにて尿素結合の生成を確認し、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール(PEGOH−1)を得た。このポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール(PEGOH−1)の計算上の数平均分子量は、1060であった。
【0086】
合成例1(合成工程:ノニオン性基含有プレポリマー(A)の合成)
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(商品名:タケネート600、三井化学ポリウレタン社製)657.7部、ポリエチレングリコール(PEG1000)(商品名:トーホーポリエチレングリコール1000、東邦化学工業社製、水酸基価118.1mgKOH/g)1915.0部、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール(PEGOH−1)427.4部をプラネタリーミキサー1に仕込み、窒素雰囲気下、75℃まで昇温した。昇温後、オクチル酸第一錫(商品名:スタノクト、APIコーポレーション社製)を微量添加し、75℃にて所定のイソシアネート基含有量(%)に到達するまで反応した。次いで、30℃まで冷却し、ノニオン性基含有プレポリマー(A)を得た。
【0087】
なお、上記合成条件の詳細、および、ノニオン性基含有プレポリマー(A)の性状を表1に示す。
合成例2(合成工程:ノニオン性基含有プレポリマー(B)の合成)
表1に示す原料を使用した以外は、合成例1と同様の操作にて、ノニオン性基含有プレポリマー(B)を得た。得られたノニオン性基含有プレポリマー(B)の合成条件の詳細、および、ノニオン性基含有プレポリマー(B)の性状を表1に示す。
【0088】
合成例3(合成工程:ノニオン性基含有プレポリマー(C)の合成)
表1に示す原料を使用した以外は、合成例1と同様の操作にて、ノニオン性基含有プレポリマー(C)を得た。得られたノニオン性基含有プレポリマー(C)の合成条件の詳細、および、ノニオン性基含有プレポリマー(C)の性状を表1に示す。
合成例4(合成工程:ノニオン性基含有プレポリマー(D)の合成)
表1に示す原料を使用した以外は、合成例1と同様の操作にて、ノニオン性基含有プレポリマー(D)を得た。得られたノニオン性基含有プレポリマー(D)の合成条件の詳細、および、ノニオン性基含有プレポリマー(D)の性状を表1に示す。
【0089】
なお、ノニオン性基含有プレポリマー(D)は、25℃において分離(不均一化)し、乳化/溶解工程を実施できなかった。
合成例5(合成工程:ノニオン性基含有プレポリマー(E)の合成)
表1に示す原料を使用した以外は、合成例1と同様の操作にて、ノニオン性基含有プレポリマー(E)を得た。得られたノニオン性基含有プレポリマー(E)の合成条件の詳細、および、ノニオン性基含有プレポリマー(E)の性状を表1に示す。
【0090】
合成例6(合成工程:ノニオン性基含有プレポリマー(F)の合成)
表1に示す原料を使用した以外は、合成例1と同様の操作にて、ノニオン性基含有プレポリマー(F)を得た。得られたノニオン性基含有プレポリマー(F)の合成条件の詳細、および、ノニオン性基含有プレポリマー(F)の性状を表1に示す。
なお、ノニオン性基含有プレポリマー(F)は、25℃においてゲル化し、乳化/溶解工程を実施できなかった。
【0091】
実施例1(水性ポリウレタン樹脂(A)の合成)
(乳化(分散)/溶解工程)
プラネタリーミキサー1からノニオン性基含有プレポリマー(A)を容器ごとラムプレス2に移動させた。ラムプレス2にて、油圧0.4MPa(ゲージ圧)の圧力をかけ、釜の下部にある排出口よりモーノポンプ3にノニオン性基含有プレポリマー(A)を送液した。
【0092】
送液と同時にモーノポンプ3を稼動させて、モーノポンプ3により112.6g/分の供給速度で、24℃のノニオン性基含有プレポリマー(A)をバイブロミキサー6の下部に定量的に送液した。
一方、バイブロミキサー6には、ノニオン性基含有プレポリマー(A)を供給する以前から、プランジャーポンプ5により、水槽4から259.0g/分の供給速度で、24℃の蒸留水をバイブロミキサー6の下部(モーノポンプ3の接続位置より下部)に定量的に送液した。バイブロミキサー6内部滞留時間(乳化(分散)/溶解時間)は26秒であった。バイブロミキサー6のエレメント部の振動数は30ストローク/秒とした。
【0093】
なお、滞留時間は、ノニオン性基含有プレポリマーの比重を1(密度を1(g/ml))として、下記式(2)により算出した。(なお、バイブロミキサー内の容積は160.8mlとした。)
滞留時間(秒)=〔160.8(ml)×1(g/ml)〕/〔(ノニオン性基含有プレポリマーの供給速度)(g/分)+(水の供給速度)(g/分)〕×60(秒/分)・・・(2)
バイブロミキサー6の最上部より、ノニオン性基含有プレポリマー(A)の水溶液を連続的に排出させて、撹拌機付容器7に連続的に装入し、撹拌機付容器7において、水溶液の泡抜き、および、濃度むらの均一化を図った。
【0094】
得られた水溶液には、沈降/分離は認められず、溶解状態は良好であった。
また、連続溶解後のバイブロミキサー6のエレメント部に対する付着物を確認したが、付着物はほとんど認められなかった。
(鎖伸長工程)
撹拌機付容器7から、プランジャーポンプ8により、100.0g/分の供給速度で、ノニオン性基含有プレポリマーの水溶液を、インジェクションTライン11に送液した。
【0095】
一方、鎖伸長剤槽9から、プランジャーポンプ10により、3.15g/分の供給速度で、20%モノエタノールアミン(MEA、2−アミノエタノール)水溶液0.83部と20%エチレンジアミン(EDA)水溶液2.32部とを混合した液を、インジェクションTライン11に送液した。その後、水溶液と、20%モノエタノールアミン(MEA、2−アミノエタノール)水溶液および20%エチレンジアミン(EDA)水溶液との混合液を、スタティックミキサー12に送液し、均一に混合し、鎖伸長反応させて、水性ポリウレタン樹脂(A)の水溶液を得た。
【0096】
得られた水溶液を撹拌機付容器13に連続的に送液し、緩やかな撹拌下、鎖伸長反応を完結させた。
得られた水溶液は1ヶ月経過しても、沈降/分離は認められなかった。
得られた水性ポリウレタン樹脂(A)の性状を表2に示す。
実施例2(水性ポリウレタン樹脂(B)の合成)
表2に示す条件で合成した以外は、実施例1と同様の操作にて、水性ポリウレタン樹脂(B)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂(B)の合成条件の詳細、および、水性ポリウレタン樹脂(B)の性状を表2に示す。
【0097】
実施例3(水性ポリウレタン樹脂(C)の合成)
ノニオン性基含有プレポリマー(B)を用いた以外は、実施例1と同様の条件にて、水性ポリウレタン樹脂(C)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂(C)の合成条件の詳細、および、水性ポリウレタン樹脂(C)の性状を表2に示す。
実施例4(水性ポリウレタン樹脂(D)の合成)
ノニオン性基含有プレポリマー(C)を用いた以外は、実施例1と同様の条件にて、水性ポリウレタン樹脂(D)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂(D)の合成条件の詳細、および、水性ポリウレタン樹脂(D)の性状を表2に示す。
【0098】
実施例5(水性ポリウレタン樹脂(E)の合成)
ノニオン性基含有プレポリマー(A)の温度を10℃とした以外は、実施例1と同様の条件にて、水性ポリウレタン樹脂(E)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂(E)の合成条件の詳細、および、水性ポリウレタン樹脂(E)の性状を表2に示す。溶解後の装置内には、白いウレタン樹脂が付着していたが、乳化液の流れを妨げるほどの付着量ではなかった。
【0099】
実施例6(水性ポリウレタン樹脂(F)の合成)
ノニオン性基含有プレポリマー(A)の温度を70℃とした以外は、実施例1と同様の条件にて、水性ポリウレタン樹脂(F)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂(F)の合成条件の詳細、および、水性ポリウレタン樹脂(F)の性状を表3に示す。溶解後の装置内には、白いウレタン樹脂が付着していたが、乳化液の流れを妨げるほどの付着量ではなかった。
【0100】
実施例7(水性ポリウレタン樹脂(G)の合成)
水の温度を2℃とした以外は、実施例1と同様の条件にて、水性ポリウレタン樹脂(G)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂(G)の合成条件の詳細、および、水性ポリウレタン樹脂(G)の性状を表3に示す。溶解後の装置内には、白いウレタン樹脂が付着していたが、乳化液の流れを妨げるほどの付着量ではなかった。
【0101】
実施例8(水性ポリウレタン樹脂(H)の合成)
水の温度を60℃とした以外は、実施例1と同様の条件にて、水性ポリウレタン樹脂(H)を得た。得られた水性ポリウレタン樹脂(H)の合成条件の詳細、および、水性ポリウレタン樹脂(H)の性状を表3に示す。溶解後の装置内には、白いウレタン樹脂が付着していたが、乳化液の流れを妨げるほどの付着量ではなかった。
【0102】
比較例1
バイブロミキサー6のエレメント部の振動数を0ストローク/秒とした以外は、実施例2と同様の条件にて、溶解した。その条件の詳細を表3に示す。しかし、溶解直後にノニオン性基含有プレポリマー(A)が沈降/分離し、水性ポリウレタン樹脂を得ることができなかった。
【0103】
比較例2
ノニオン性基含有プレポリマー(E)を用いた以外は、実施例1と同様の条件にて、溶解した。その条件の詳細を表3に示す。しかし、バイブロミキサー6から排出されるノニオン性基含有プレポリマー(E)の水溶液に発泡が見られ、20%MEA水溶液および20%EDA水溶液を連続的に加えると、スタティックミキサー12内で詰まりが発生し、鎖伸長反応を継続できなかった。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に有機溶剤を使用しない水性ポリウレタン樹脂の製造方法であって、
少なくともいずれかにノニオン性基の側鎖が導入されているポリイソシアネートおよび複数の活性水素基を有する活性水素基含有化合物を、活性水素基含有化合物の活性水素基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比が1.2〜4の割合で反応させることにより、側鎖に導入されるノニオン性基の濃度が0.9質量%以上のノニオン性基含有プレポリマーを合成する合成工程と、
ノニオン性基含有プレポリマーと水とを、振動式撹拌装置を使用して攪拌することにより、ノニオン性基含有プレポリマーの乳化液または水溶液を得る乳化/溶解工程と
を備えていることを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項2】
ノニオン性基含有プレポリマーの乳化液または水溶液と、鎖伸長剤とを、振動式撹拌装置、静止型混合器、インラインミキサーからなる群から選択される少なくとも1種の装置に送液して、反応させる鎖伸長工程
をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水性ポリウレタン樹脂の製造方法により得られることを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
請求項3記載の水性ポリウレタン樹脂から得られることを特徴とする、フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−215803(P2010−215803A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64850(P2009−64850)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】