説明

水性リチウム−空気バッテリセル

【解決手段】リチウム/空気バッテリセルは非常に高いエネルギイ密度を達成するように構成可能である。セルにはリチウム金属又は合金の保護付き陽極と陰極コンパートメント内の水性陰極液とが含まれる。水性陰極液に加え、陰極コンパートメントの成分には空気陰極(例えば酸素陰極)及び種々の他の元素が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は2009年3月12日に出願された米国特許仮出願61/159786(HIGH ENERGY DENSITY AQUEOUS LITHIUM/AIR CELLS)、及び2008年7月3日に出願された米国特許仮出願61/078294(AQUEOUS LI/AIR CELLS)、及び2008年6月16日に出願された米国特許仮出願(AQUEOUS LI/AIR CELLS)に基づいて優先権を主張するものであり、この両者は本発明の以降の開示に参照して統合されるものとする。
【背景技術】
【0002】
この発明は一般的には活性金属の電気化学装置に関し、更に詳述すれば、高エネルギイ密度を達成可能なリチウム/空気バッテリセルに関するものである。
リチウムと酸素の反応における自由エネルギイの大きなことは数十年に亘ってバッテリの研究者の興味を惹いてきたことである。リチウム/空気化学特性の理論的重量エネルギイ密度はリチウム−イオンバッテリ化学特性を遥かに凌駕するものである。金属/空気化学特性における高重量エネルギイ密度は、亜鉛/空気バッテリの開発及び商業的成功に見られる如く、長年に亘って認識されていることである。しかし、リチウム/空気化学特性には特別なチャレンジが導入される。
【0003】
リチウムは活性的なアルカリ金属であり、水性電解質と適合性がない。水性電解質の中での金属陽極と水及び酸素の反応による陰極の腐食は明らかに亜鉛に関するよりリチウムに関して重要な問題である。水性電解質におけるリチウム金属の腐食率は中性電解質の場合数アンペア/cm2であり、高塩基性の媒体の場合数十mA/cm2に落ちるものである。従って、初期におけるLittauerによるリチウム/水バッテリに関する研究を除き、リチウム/空気バッテリの歴史的開発は非プロトン性の非水性電解質の使用が主なものであった。
【0004】
水性リチウム/空気バッテリの開発に不可欠なものは水と酸素の存在においてリチウム陽極を安定化させる特性である。Viscoの米国特許7282296号、7282302号、7282295号、及び米国特許出願2004/0197641には水中で安定であり水性電解質内へ放電可能な保護膜を有する保護付きリチウム陽極及び保護膜構成が開示されている。
【0005】
本発明は陰極における化学特性を通じるリチウム/空気バッテリセルの開発及び総合的性能の更なる向上に関するものである。
【発明の概要】
【0006】
この発明はリチウム/空気バッテリセルに関する。セルは陰極コンパートメントの中に保護付きリチウム電極と水性電解質を含むものである。発明の種々の面において、セルは高エネルギイ密度を達成するように構成可能である。陰極に接する電解質として定義される水性カソライト(陰極液)に加え、陰極コンパートメントの成分には酸素分子の還元用の空気陰極(例えば酸素電極)が含まれる。
【0007】
種々の面に於いて、本発明は対象のリチウム/空気セルの化学特性、特にセルの運行期間に周囲の空気にコンパートメントが露出される時に陰極コンパートメントの中で起こる化学特性に関する。
【0008】
本発明のリチウム/空気セル及び上記の面に従えば、種々の実施形態において陰極液に溶解した活性物質はセルの反応に関与して陰極コンパートメントに吸湿性を与えることになる反応物を生成する。これが便宜となり、陰極コンパートメントはセルの運行の間に周囲の空気から水分をかき集め、これが陰極液の乾燥化を防ぐとか、放電を延長するとか、セルのエネルギイ密度(Wh/kg及びWh/l)を向上させるなど種々の利点を齎すことになる。
【0009】
本発明によれば、水性陰極液はそれに溶解された物質が試薬としてセルの放電反応に関与すると言う意味で活性である。
【0010】
種々の実施形態において、活性陰極液は水とそれに溶解した活性物質とから成り、この溶解によってセルの放電反応に試薬として関与する活性物質を生成する。典型的にこの活性物質は活性塩又は固体の活性化合物である。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、或る実施形態においては有機液体を含む活性な液体である。
活性及び不活性な塩を適当な濃度とすることにより、セルに多くの利点が生じる。その例としては、(イ)セルの運行中、陰極コンパートメントに吸湿性を与える、(ロ)初回の放電に先立って陰極液上の水に非常に低い蒸気圧を加える、(ハ)放電の各段階における陰極液の導電性を向上又は維持する、及び(ニ)開回路の条件下での貯蔵の間、保護膜/陰極液インタフェイスを安定化する、などがある。
【0011】
或る実施形態においては、初回の放電以前ではコンパートメントに吸湿性を与え、放電の間には陰極液の湿度に対する平衡度(ERH)を周囲の空気から水分を陰極コンパートメントへ導入させるのに十分なほど低下させる可能性があるので、溶解された活性塩の高密度が望まれる。特種の実施形態において、活性塩の濃度は少なくとも1M,又は少なくとも2M、又は少なくとも3M、又は少なくとも4M、例えば約2M、又は約3M、又は約4Mであることが適当である。或る実施形態の場合、溶解された活性塩で飽和された、又は殆ど飽和された陰極液が使用され、それが好適とされる。
【0012】
種々の実施形態の場合、初回の放電以前において、陰極コンパートメントは陰極液と接触して機能的に溶解する水溶性固体相の活性塩を含み、従って、この工程においてセル反応に試薬として関与する溶解した活性塩を生成する。従って、固体相活性塩はセルの運行中相対的に多量の溶解された活性塩類をそれから陰極液の中に形成する源泉を供するものである。ここで「機能的に溶解する」又は「機能的溶解」とは物質がセルの運行中に溶解することを意味する。
【0013】
種々の実施形態の場合、陰極液は少なくとも二種の異なる溶解塩から成るものである。例えば、活性第一塩と異なる第二塩である。塩(第一及び第二)は活性であっても不活性であってもよい。種々の実施形態の場合、第一塩が活性であり、不活性の第二塩がリチウム塩、好適には臭化リチウム(例えばLiBr)、沃化リチウム(例えばLiI)、塩化リチウム(例えばLiCl)及び硝酸リチウム(例えばLiNO3)を含むハライドのようなものであってよいが、これに限定されるものではない。
【0014】
種々の実施形態の場合、初回の放電以前において、陰極液は湿度に対する平衡度(ERH)が低いものである。初回の放電以前又はセルの活性化以前において、陰極液のERHは室温(約20°C)で50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、又は15%未満であることが望ましい。更に、これは陰極コンパートメントを吸湿性なものにする程度に低いことが望ましい。ERHを低下させるには陰極液(活性と不活性の塩のコンビネイション)内の溶解された塩の濃度を高くすること、或いは陰極液を塩で、殊に吸湿性を有する塩で飽和させることなどがあり、又、固体相の活性塩と固体相の不活性塩及びそのコンビネイションの場合を含む固体相活性塩を陰極コンパートメントに導入することで達成される。特別の実施形態の場合、陰極液のERHは溶解された活性及び不活性の塩のコンビネイションによって低下される。例えば、高濃度(例えば最低3M(例えば約4M)の溶解された活性塩とそれより低濃度(例えば最低2M(例えば2M))の溶解されたリチウム塩である。
【0015】
特別な実施形態の場合、初回の放電以前開回路の状態での貯蔵による抵抗増加を防止するように、塩は十分な濃度として陰極液に溶解される。この観点において、初期(初回の放電以前)のリチウム塩(イオン)濃度として最小2M、例えば2M、が効果的に使用され得る。
【0016】
種々の実施形態において、本発明のリチウム/空気セルは溶解された活性塩種が試薬として放電反応に関与する第一段階として放電し、溶解された活性塩種が関与しない第二段階として放電する。典型的に、水分子が放電の第一段階で生成され、第二段階で試薬として消費される。
【0017】
種々の実施形態において、反応生成物は吸湿性のあるものとして陰極液の乾燥化防止を含む陰極コンパートメントにおける水分の管理に使用できる。更に種々の実施形態において、陰極コンパートメントの吸収能力により、本発明のセルは評価より少量の水分で製造することが出来る。これらの実施形態によれば、最初水分が不十分のセルであっても、運行中に周囲の空気から必要量の水分を吸収する。
【0018】
その他の面において、本発明は陰極コンパートメントに統合された貯蔵構造体を含むリチウム/空気セルを提供するものであって、これは陰極液及び存在するならば固体相活性塩用の多孔性物理的構造体の提供、周囲の空気から機能的に吸収した水分の保持、及び液体固体両方の放電生成物の適合を含む種々の機能を果たすものである。種々の実施形態において、この貯蔵構造体は層状であり、多孔性金属酸化物構造体、炭素質構造体、又は放電に際して伸びることが出来るほど十分に弾性を有する重合体構造体であってよい。或る実施形態の場合、固体の放電生成物の形成位置に適合するため、コンパートメントには例えば陰極に隣接した第一貯蔵構造体及び保護された陽極に隣接した第二貯蔵構造体など、複数の貯蔵構造体があってもよい。
【0019】
更にその他の面において、本発明はセルにおいて有利に使用可能なヒドロゲル又はヒドロゲル層から成るリチウム/空気セルを提供するものであり、この利点には陰極液の中で溶解又は溶解しない固体の形態で存在する活性及び支持電解質塩(例えば活性固体相塩及び固体支持塩(例えばLiCl,LiBr及びLiIなどのリチウム塩))を高度に搭載することによる重量エネルギイ密度の改良が含まれる。種々の実施形態において、ヒドロゲルは陰極コンパートメントの中で陽極と陰極の間に位置され、その膨張特性は放電の際陰極液が吸収する多量の水分を保持するのに好適であり、この特性により陰極液の漏洩が防止できる。
【0020】
更にその他の面において、本発明は多量の放電生成物に適合可能な新規な空気陰極を有するリチウム/空気セルを提供するものである。この新規な空気陰極の更に別の新規な特徴は、活性炭素層が陰極のバルクに設置され、この陰極が放電に際して膨張することである。この特性により、この新規な空気陰極は放電に際して形成されてゆく大量の固体生成物に連続的に適合してゆくので、大容量リチウム/空気セル用として好適である。
【0021】
本発明は保護付きリチウム電極(PLE)及び酸素分子や此処において陰極と接触する水性電解質溶液と定義される水性陰極の還元用の陰極(例えば空気陰極)から成る陰極コンパートメントを有するリチウム/空気セルを提供するものである。本発明において水性陰極液が活性であるというのはそれ又はその成分(例えば溶解した活性塩及び/又は水)が放電に際してセルの反応に関与すると言うことである。
【0022】
本発明の種々の実施形態において、バッテリセルは以下のものも一個以上有するものである:活性塩、又は不活性塩、又はリチウム化合物、又は以上のもののコンビネイションで飽和又はほぼ飽和された陰極液;高密度の第一活性塩及び低密度の第二吸湿性リチウム塩(例えばLiCl)を含む少なくとも二種の異なる溶解した塩のコンビネイションから成る陰極液;リチウム以外の金属のハライド活性塩から成る陰極液;活性硝酸塩(例えば硝酸アンモニア)から成る陰極液;2モルLi以上又は初回の放電以前開回路の状態での貯蔵による抵抗増加を防止するのに十分な濃度の支持リチウム塩から成る陰極液;陰極液の中の溶解された活性及び支持塩のコンビネイション;多孔性無機固体の貯蔵構造体;炭素質の多孔性構造体から成る固体貯蔵構造体;放電に際して拡張するように構成された固体貯蔵構造体;ヒドロゲルの貯蔵構造体;実質的に放電が完了する以前のセルの運行中絶がないように不溶性放電生成物が適合されるような陰極孔構造体;及び、放電生成物に適合されて拡張するように構成された陰極。
【0023】
保護付き陽極は第一と第二の面を有するリチウムイオン透過性の保護膜から成る。この膜は液体と空気にとって不浸透性であり、活性リチウムと陰極コンパートメントの成分とが直接接触することを防止するように構成され、殊にリチウム陽極が水性陰極液と接触し、周囲の空気に露出されることを防止する。膜の第一面はリチウム陽極に面し、第二面は陰極コンパートメントに面している。種々の実施形態において、陰極に接触している陰極液は保護膜第二面にも接触し、少なくともその一部を実質上覆っている。接触するこの保護膜は水性陰極液と化学的に適合性を有するものである。
【0024】
初回の放電以前において、陰極コンパートメントは水とそれに溶解された塩とから成る水性陰極液から成る。保護膜と陰極とに接触した陰極液は放電に際して陽極と陰極の間を流れる電流を支持するに十分なイオン導通性の媒体を提供するものである。二次セルである場合、この導通性は充電用の電流に十分である。
【0025】
種々の実施形態において、陰極液塩は活性でも不活性でもハロゲン(例えば塩素、臭素、又は沃素)又は硝酸塩、又はアンモニウムである。或る実施形態の場合、活性塩は硝酸塩(例えばNH4NO3)、又はハライド、又はアンモニウム化合物、又は陰極液内で加水分解によって溶解する化合物(例えば金属から成る化合物(例えばAlCl3))である。特別な実施形態の場合、ハライド塩はアンモニウムハライド塩(NH4Br,NH4Cl,NH4I)、又は金属がリチウム以外のもので例えばアルミニウム又はチタン又は更に一般的にはアルカリ金属や遷移金属である金属ハライド塩(例えばMgCl2)である。典型的に、活性塩が金属ハライドである場合、これはリチウムを含まない。
【0026】
種々の実施形態において、初回の放電以前、陰極液は一種以上の溶解された塩から成るものである。例えば、陰極液は一種以上の活性塩、又は活性塩と不活性塩(例えばリチウム塩)とのコンビネイションから成る。或いは陰極液は二種以上の活性塩から成るものであり、任意的に少なくとも一種の支持電解質が溶解されているものでよい。特別な実施形態として陰極液は異なる二種のリチウム塩から成るものであり、第一リチウム塩(LiCl)は非常に吸湿性であり溶解性を有し、第二リチウム塩(LiBr)は第一リチウム塩よりかなり重いが極めて吸湿性であり、従って吸水をコンパートメントを駆動する容易さはその陰イオンの重量をオフセットするものであり、この総合された塩のシステムはこれらの効果を効率的に平衡させる機構となる。
【0027】
特種の実施形態において、陰極液は活性塩と不活性塩とから成り、活性塩が不活性塩より濃度が高いものであり、例えば、高密度の活性塩と低密度のリチウム塩とから成るものである。或る実施形態の陰極液は一種以上の活性塩と一種以上のリチウム塩とが溶解されて成るものである。
【0028】
種々の実施形態において、水性陰極液は放電に際してセル又は陰極反応に関与する少なくとも一種の溶解した活性塩(例えばNH4Cl)であって対応するリチウム塩(例えばLiCl)を形成するものから成り、ある場合にはセル反応が水分を生成する。
【0029】
或る実施形態の場合、放電に際して形成するリチウム塩は陰極液内で高度に溶解性があり、又は吸湿性があるので周囲の空気から湿気を吸収し、又は溶解性と吸湿性が共に高度である。セルの放電の結果形成されるリチウム塩は溶液の中に残ることもあり(即ち溶解した塩)、又は固体として溶液から沈殿することもある。種々の実施形態において、放電反応の結果形成された対応するリチウム塩は高度に溶解性であり、溶解された活性塩より水の中で実質上高度の溶解度を有する。
【0030】
種々の実施形態において、陰極液は溶解した活性塩から成る。或る実施形態において、この溶解した活性塩は弱酸である。或る実施形態において、この弱酸塩は濃度2モル又はそれ以上で陰極液に溶解する。
【0031】
或る実施形態において、溶解した活性塩はアンモニウムハライド塩(例えばNH4Cl,NH4Br,及びNH4I)又は金属ハライド塩(例えばAlCl3)のようなハライド塩である。或る実施形態において、溶解した活性塩は例えばNH4NO3の硝酸塩、又はアンモニウムチオシアネート(即ちNH4CNS)である。
【0032】
種々の実施形態において、初回の放電以前活性固体相塩は陰極コンパートメントの水と接触して反応(又はその他の様相で作用)し、又は水性陰極液と接触して反応して陰極液の中の溶解した活性塩を形成する陰極コンパートメント、典型的には貯蔵構造体の中に存在する。種々の実施形態において、固体相活性塩は潮解性である。種々の実施形態において、活性固体物質はマイクロカプセル型である。種々の実施形態において、固体相活性塩は一種以上のハロゲン(例えば塩素、臭素、沃素)又は硝酸塩、又はアンモニウムから成る。或る実施形態において、固体相活性塩はハライド塩である。その或る実施形態において、それはアンモニウムハライド塩(例えばNH4Cl,NH4Br,又はNH4I)である。特別な実施形態において、固体相活性塩は硝酸塩(例えばNH4NO3)である。それの他の実施形態において、それはリチウム以外の金属のハライド塩である。その特種実施形態において、金属ハライド塩はリチウム金属を含まないものである(例えばAlCl3)。特種実施形態において、固体相活性塩は陰極液内で加水分解的に溶解する金属化合物であり、化合物の金属はリチウムではない。種々の実施形態において、初回の放電以前陰極液は固体相活性塩と接触した飽和塩溶液である。この飽和塩溶液は活性塩、不活性塩、リチウム塩、これらのコンビネイションの中の少なくとも一つで飽和したものであってよい。
【0033】
セル放電の間、各種は陰極液で形成され、又は固体として陰極液外へ沈殿し、これらは以後一般に放電産物と言及される。種々の実施形態において、放電産物は吸湿性であり、陰極コンパートメントを吸湿性にさせ、又は維持し、又は周囲の相対的湿度と平衡を保つのに十分だけ陰極液上の蒸気圧を降下させる。
【0034】
種々の実施形態において、放電産物の少なくとも一つはリチウムカチオンと活性塩のアニオンとから成るリチウム化合物、典型的にはリチウム塩である。従って、場合によっては、放電産物は対応するリチウム塩とみなされ、時としては、そのように言及されるが、このことは、放電産物がリチウムイオン(例えば放電の間陽極から陰極液へ入り込むもの)及び活性塩のアニオンの間に形成される種であることを意味する。例えば、活性塩がハライド(例えばNH4Cl又はNH4Br)である場合、放電産物はリチウムハライド塩(例えばLiCl又はLiBr)であってよい。
【0035】
本発明は更に種々のセル製造テクニク及び構成を提供するものである。
【0036】
発明に関するこれら及びその他の特徴は以下の詳細な記載によって例示される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1A】本発明のリチウム/空気バッテリセルの概要を示す説明図。
【図1B】セルケースに包まれた本発明のリチウム/空気バッテリセルの断面及び斜視図である。
【図2A】本発明の保護膜構成の種々の構成の一つを示す説明図。
【図2B】本発明の保護膜構成の種々の構成の一つを示す説明図。
【図2C】本発明の保護膜構成の種々の構成の一つを示す説明図。
【図2D】本発明の保護膜構成の種々の構成の一つを示す説明図。
【図3】4M NH4Cl,2M LiCl陰極液及びジルコニアフェルト貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの作用を例示する説明図。
【図4】4M NH4Cl,2M LiCl陰極液及び黒鉛フェルト貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの作用を例示する説明図。
【図5】4M NH4Cl,2M LiCl陰極液と接触する固体電解質保護膜の長期間貯蔵後の安定性を示す説明図。
【図6】4M NH4NO3,2M LiNO3 及び1M LiOH陰極液を有するリチウム/空気セルの相対的性能を示す説明図。
【図7】2.7M AlCl3,1M LiCl陰極液及びアルミナフェルト貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの性能を示す説明図。
【図8】2.7M AlCl3,1M LiCl陰極液及び黒鉛フェルト貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの性能を示す説明図。
【図9】固体NH4Cl塩で浸透され、追加的に4M NH4Cl,2M LiCl陰極液で充満されたアルミナフェルト貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの性能を示す説明図。
【図10】アルミナ粉末とワットマン(Whatman)マイクロ繊維GF/Aを4M NH4Cl,2M LiCl陰極液で充満された第二貯蔵構造体層として混合されたNH4Cl塩の圧縮ペレットを有するリチウム/空気セルの性能を示す説明図。
【図11】溶解された4M NH4Cl及び2M LiClを含む架橋ポリアクリルアミドヒドロゲル貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの性能を示す説明図。
【図12】溶解された2M LiClを含み固体NH4Clで負荷された架橋ポリアクリルアミドヒドロゲル貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの性能を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下特種な実施形態を参照して本発明が説明される。特種実施形態の例は図を参照して示される。発明はこれらの実施形態を参照して説明されるが、発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。その逆であって、これらの代替、変更、均等例などは、請求項の均等とともに発明の範囲内に入るものとする。以下の記述に於いて、多くの詳細事項が発明の理解のために提示される。発明の実施に当たって、これら詳細事項の一部は不要であるかも知れない。その一方、記述を曖昧化しない目的から、周知の工程などの詳細な記述は省略してある。
【0039】
[序論]
本発明はリチウム/空気バッテリセルに関する。種々の面において、本発明に関するセルは、例えば陰極液内に活性塩が含まれない場合に可能であるより高い非常に高エネルギイ密度を達成するように構成されたものである。セルには保護付きリチウム電極(例えば保護付きリチウム金属又は合金、又は層間陽極)及び水性陰極液が陰極コンパートメント内に含まれる。陰極に接触する電解質として定義される水性陰極液に加えて、陰極コンパートメントの成分には酸素分子を還元するための空気陰極(例えば酸素電極)が含まれる。
【0040】
本発明の種々の実施形態において、バッテリセルは以下のものも一個以上有するものである:初回の放電以前又はセルの初回活性化以前又は初回の放電以後、陰極コンパートメント内の固体相活性塩;飽和された塩溶液又はほぼ飽和された塩溶液から成る陰極液;高密度の活性塩及び低密度の第二吸湿性支持塩(例えばリチウム塩)を含む少なくとも二種の異なる溶解した塩のコンビネイションから成る陰極液;リチウム以外の金属のハライド又はアンモニウムハライド活性塩又は塩から成る陰極液;活性硝酸塩(例えば硝酸アンモニア)から成る陰極液;2モルLi以上又は初回の放電以前開回路の状態での貯蔵による抵抗増加を防止するのに十分な濃度の支持リチウム塩から成る陰極液;陰極液の中の溶解された活性及び支持塩のコンビネイション;多孔性無機固体の貯蔵構造体;炭素質の多孔性構造体から成る貯蔵構造体;放電に際して拡張するように構成された固体貯蔵構造体;ヒドロゲルの貯蔵構造体;実質的に放電が完了する以前のセルの運行中絶がないように不溶性放電生成物が適合されるような陰極孔構造体。
【0041】
[定義]
本発明の範囲を限定するためでなく、その理解を容易にするため、以下用語の定義を提供する。
【0042】
以下の記述において、「活性物質」とは典型的には水である溶媒に溶解するとセルの放電反応に関与する溶解した活性種を生成する塩のように物質のことである。更に、活性物質の溶解によって生成された溶解された活性種は塩の溶解によって得られてもよく、又は塩が加水分解で溶解又は溶解及び反応して活性陰極液種を形成してもよい。
【0043】
以下の記述において、「固体相活性物質」とは陰極液の溶媒に溶解して、陰極液に溶解してセル放電反応に試薬として関与する活性種を生成又は形成する固体物質のことである。ここで「固体相」とはこれが固体相の状態にあることを強調するためのものである。典型的に固体相活性物質は固体相活性塩であり、一般的に固体相活性化合物である。
【0044】
以下の記述及び請求項において、「溶解」、「溶解する」、「溶解した」などの表現は限定的な意図はなく、固体物質(例えば塩)が完全に分解するか否かを問わず溶け、又は加水分解で溶け、又は溶けた挙句反応して例えば陰極液内に溶解した活性種を生成することを意味する。
【0045】
「セル活性化」とは水分を周囲の空気及び/又は酸素分子から吸収する明確な意図によって陰極コンパートメントを周囲の空気に初めて露出することを指す。
【0046】
固体相活性塩に言及する場合、「機能的に溶解する」とは電流が陰極と陽極の間を流れる場合の活性放電に対応する作用期間及び/又はセル活性化後開回路の状態で放置されたセルに対応する作用期間を含むセル運行の間に固体相活性塩が陰極液の溶媒に溶解することを意味する。
【0047】
[セル構造]
本発明によるバッテリセルが図1Aに示されて居る。セルはリチウム陽極1を有し、この陽極はリチウム金属、又はリチウム金属合金、又はリチウム層間物質(例えばリチウム遷移炭素)であってよい。一例としてリチウム金属箔が使用されてよい。層間陽極及びリチウム合金及びリチウム金属陽極を含めてリチウム陽極はリチウムバッテリの分野で公知である。好適な実施形態として、陽極はリチウム金属(例えば箔もしくは焼結形式)であり、セルがその評価放電容量を達成可能であるように十分の厚さ(即ち容量)をしている。陽極は適宜な形態であってよく、グリーン又は焼結されたコンパクト(例えばウエファ又はペレット)、シート、フィルム、又は箔状でもよく、更に多孔性であっても密であってもよい。限定されることなく、このリチウム陽極はセルのリード線との間の電子の流通を向上させるため、電流コレクタ(例えば銅箔又は適当な伸張性金属)が圧接その他の方法で接着されてあってよい。限定されることなく、セルは陽極或いは陰極限定であってよい。陽極限定である場合、完全放電(評価容量に対応)によって実質上陽極のリチウムが使用尽くされる。陰極限定の場合、セルが評価容量を供給した後でも活性リチウムが多少残留する。
【0048】
陽極は陽極及び隣接する陰極コンパートメント(4)の環境の両方に対して化学的に安定な保護膜構成によって保護されている。保護膜構成は典型的に固体電解質保護膜2及び中間層3とから成る。保護膜構成はリチウム陽極1とイオン的に連続性であり、陽極外部の環境には不浸透性のバリヤを提供すると同時に、リチウムイオンを選択的に陰極コンパートメント4と流通させるように構成されている。本発明に好適に使用可能な保護膜構成は本出願者による公開米国特許出願US2004/0197641及びUS2005/0175894、及びこれらに対応する国際特許出願WO2005/038953及びWO2005/083829に記載されており、これらは本願に参照により統合されるものとする。
【0049】
図1Bは本発明によるリチウム/空気バッテリセル10を示すものである(断面(左)及び透視図(右))このセルはケース11(例えば金属或いは重合体のケースで、この目的に使用される熱接着性多層構成物を含む)の中である。ケースには周囲の空気から酸素及び湿気を通すための一個以上のポート12がある。図1Bに示されるように陰極及び陰極コンパートメントに効果的に到達できるように、ポートを有するケースの側面が陰極に隣接している。
【0050】
必ずしも全部ではないが、多くの実施形態において、セルはセルの活性化以前に早計もしくは過度に陰極コンパートメントが周囲の空気に露出されないようにポートを覆うバリヤ物質(図示なし)を除去することによって活性化される。セルはこのバリヤ物質を除去する(例えばバリヤ物質としてのタブを剥ぎ取る)ことで活性化される。
【0051】
ケースにはセルが製造された後、陰極コンパートメントに水や陰極液を導入するための追加的なポート(図示なし)があってもよい。限定されることなく、陰極液(又は水)は、セル活性化又は初回の放電の一方または両方の前又は後に導入されるものでもよい。
【0052】
図2Aないし図2Dは本発明に好適に使用される代表的な保護膜構成を示す。保護膜構成はリチウム金属イオンが陽極の内外へ流通するのを許容する一方、リチウム陽極を周囲及び/又はセルの陰極側から隔離するバリヤを提供するものである。この構成は種々の形態であり得る。一般的にこれは外部の環境(例えば空気又は水)又は陰極の環境に対して実質上不浸透性であり、イオン的に導通性であり、化学的に適合性である固体電解質層から成る。
【0053】
図2Aのように、保護膜構成はイオンを導通させ活性陽極201と外部環境の両方に対して化学的に安定である一体的固体電解質202であり得る。このような物質の例にはNa−β”アルミナ、LiHfPO4及びNASICON,Nasiglass,Li5La3Ta212及びLa5La3Nb2O12,Na5MSi412 (M:Nd,Dy,Gdのような稀土)。
【0054】
より一般的に、保護膜構成は、異なる化学的適合性条件を持つ異なる物質の二つ以上の成分からなる組成物であり、その一方は陽極との化学的適合性、他方は外部、即ち一般的には周囲の空気或は水、及び/又はバッテリ電解質/陰極液との化学的適合性のことである。ここで「化学的適合性」とは、言及されたバッテリセル成分の一つ以上と接触した場合にその物質が反応して、バッテリセルの操作に悪影響を及ぼす物質を生成しないと言うこと、或は製造、操作、貯蔵、外部環境条件のことである。組成物の中で異なるイオン導通体の特徴が結合し、イオン伝通性、陽極、陰極並びにバッテリ製造時の周囲の条件などに対する化学的安定性などの望ましい特徴を得る。この組成物は、バッテリの他の成分とか周囲の条件との悪影響のある反応から活性金属陽極を保護することが出来ると同時に、高レベルのイオン伝通性を付与することによって製造を容易にし、及び/又はこの組成物が組み込まれたバッテリセルの性能を向上させることが出来る。
【0055】
図2Bを参照するに、保護膜構成は、第一物質層212(以下「中間層」とも言及される)が活性金属陽極201に対して安定であり、第二物質層214が外部環境に対して安定あるように、独立分離した層から成る複合固体電解質210から成る。別例として、図2Cが示す保護膜構成は同一物質の固体電解質組成物220から成るが、独立分離した層でなく、段階的な物質遷移となって居る。
【0056】
一般的に、固体相組成物の保護膜構成は(図B及びCを参照して記述された如く)第一物質層と第二物質層を有する。組成物の第一物質層(或は第一層物質)はイオン伝導性があり、活性金属陽極物質と化学的適合性がある。発明のこの面に於いて、化学的適合性とは化学的に安定であり、従って活性金属の陽極物質と接触しても実質上反応しないと言うことである。また、空気と安定であり貯蔵や操作に便利な一方、活性金属電極物質と反応して活性金属陽極物質に対して安定し、イオン伝導性の高い物質(即ち第一層物質)を生成することでもある。このような反応性物質は「前駆体」物質と呼ばれることもある。組成物の第二物質層は第一物質に対して実質上不浸透性があり、イオン伝導性があり、化学的に適合性を有する。これらの目的を果たすため、又電極の安定性や機能を向上させるため、これ以外の層があってもよい。組成物の総ての層はイオン伝導率が高く、少なくても10−7S/cm、一般には少なくとも、10−6S/cm、例えば、10−3S/cm−10−4S/cmであり、10−3S/cm以上であってもよく、多層保護構成の全体的イオン伝導率は少なくとも10−7S/cm、そして10−3S/cm以上でもよい。
【0057】
保護膜構成の第四の好適例が、図2Dに示されて居る。この構成は固体電解質234と活性金属陽極201の間に中間層232を有する組成物230であり、この中間層は陽極液で満たされて居る。即ち、この構成は、非水性の陽極液(即ち陽極の周りの電解質)を有し、活性金属と化学的適合性を持ち、陽極と接触している活性金属イオン伝導性の隔離層と、実質上不浸透性があり(ピンホールやクラックがない)、イオン伝導性があり、隔離層と水性環境に対して化学的適合性を持ち、隔離層と接触して居る固体電解質層とから成る。この構成(図2D)での固体電解質層は、図B及びCでの組成物固体構成の第二物質層の特質の多くを持って居るので、以降の記述に於いてこれら三例の構成の固体電解質層はすべて第二物質層、あるいは第二層と言及することにする。
【0058】
上記の原則により、本発明に従って保護用組成物を製造するに当たっては、各種の物質が使用可能である。例えば図B及びCに於いて、活性金属と接触している第一層(物質成分)の一部乃至全部は活性金属の窒化物、活性金属のリン化物、活性金属のハロゲン化物、活性金属の硫化物、活性金属のリン酸硫化物、或は活性金属のリン酸オクシニトライドのガラスから成ってもよい。これらの特種例は、Li3N,Li3P,LiI,LiBr,LiCl,LiF,Li2S−P25,Li2S−P25−LiI及びLIPONを含む。活性金属電極物質(例えばリチウム)は、これらの物質に付けられてもよいし、金属窒化物、金属リン化物、金属ハロゲン化物、赤燐、沃素、窒素、有機物や重合体を含むリン化物などのような前駆体をリチウムに接触させてもとの位置で生成してもよい。殊に好適な前駆体物質はCu3Nである。第一層は、前駆体の不十分なリチウム遷移類似物への変換の結果である場合もあるが、本発明での保護用組成物の第一層の条件が満たされるのであるから、かかる不十分な変換によるものも、本発明の範囲に入るものとする。
【0059】
陽極液層間組成物保護構成の実施例(図2D)に於いて、保護膜構成は、陽極の活性金属と化学的適合性を持ち、陽極と接触し、非水性陽極液から成る活性金属イオン伝導性の隔離層と、隔離層と接触し、隔離層及び陽極の外部と化学的適合性を持つ、実質上不浸透性でイオン伝導性がある層(第二層)とから成る。隔離層は有機陽極液を満たした半浸透性の膜であってもよい。このような半浸透性の膜は、例えばセルガード社(Celgard, Inc.)より購入可能のミクロ多孔性の重合体であってもよい。有機陽極液は液体でもゲル相であってもよい。例えば、陽極液は、EC,PC,DEC,DBC,EMC,1,2−DME,叉は高級グライムのような、有機炭酸塩、エーテル、ラクトン、スルフォンなど、及びこれらの結合から選ばれる溶媒を含んでもよい。1,3-ジオクソレインも特に、又それに限らず、構成を組み込んだセルの安全性の向上の為に使用する場合には、陽極液溶媒として使用出来る。陽極液がゲル相の場合、溶媒をゲル化するために、ポリビニリディンフルオライド(PVdF)化合物、ヘキサフロロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体(PVdf−HFP)、ポリアクリロニトリル化合物、架橋ポリエーテル化合物、ポリアルキレンオキサイド化合物、ポリエチレンオキサイド化合物、これらの組み合わせと類似のもののようなゲル化剤を加えてもよい。適当な陽極液の例としては、勿論活性金属塩が含まれ、リチウムの場合、例えばLiPF6,LiBF4,LiAsF6,LiSO3CF3,又はLiN(SO2252 が含まれる。ナトリウムの場合、適当な陽極液の例には、NaClO4,NaPF4,NaAsF6,NaBF4,NaSO3CF3,NaN(CF3SO22又はNaN(SO2252のような活性金属塩が含まれる。好適な隔離層の一例は、プロピレンカーボネイトに溶解し、Celgardのミクロ多孔性重合体膜を満たす1M LiPF6である。
【0060】
保護用組成物の第二層(物質成分)は実質上不浸透性であり、イオン伝導性があり、第一物質或は前駆体と化学的適合性のある物質から成るものでよく、その例としては、リン系ガラス、オキサイド系ガラス、リン−オキシニトライド系ガラス、硫黄系ガラス、オキサイド/スルファイド系ガラス、セレナイド系ガラス、ガリウム系ガラス、ゲルマニウム系ガラス、ナシガラス(Nasiglass)、リチウムベータ−アルミナ、ナトリウムベータ−アルミナ、リチウムス−パイオン導体(LISICON)、ナトリウム超イオン導体(NASICON)などのセラミク活性金属イオン導体、ガラス−セラミク活性金属イオン導体が含まれる。特別例として、LiPON,Li3PO3.Li2S.SiS2,Li2S.GeS2.Ga23,Li2O.11Al23,Na2O.11Al23,(Na,Li)1+xTi2-
xAlx(PO43 (0.1≦x≦0.9) 及び結晶学的に関連した構成、Li1+xHf2−xAlx(PO43(0.1≦x≦0.9),Na3Zr2Si2PO12,Li3Zr2Si2PO12,Na5ZrP312,Na5TiP212,Na3Fe2312,Na4NbP312,Na−シリケイト,Li0.3La0.5TiO3,Na5MSi412(M:Nd,Gd,Dyのような稀土)、Li5ZrP312,Li5TiP312,Li3Fe2312,及びLi4NbP312 , これらの組み合わせ、選択的に焼結または溶解されたものがある。適当なセラミク活性金属イオン導体については、例えば米国特許4985317(Adachi,et al)に記載されてあり、この文書の全体は本発明の以降の開示に参照して統合されるものとする。
【0061】
保護用組成物の第二層として殊に好適なガラス−セラミク物質は、リチウムイオン伝導性のガラス−セラミクであって、以下の組成であり、
成分 モル比
25 26〜55%
SiO2 0〜15%
GeO2 + TiO2 25〜50%
この中GeO2 0〜50
TiO2 0〜50%
ZrO2 0〜10%
23 0<10%
Al23 0〜15%
Ga23 0〜15%
Li2 O 3〜25%
そして更に、Li1+x(M,Al,Ga)x( Ge1−yTiy2−x(PO43 (ここでX≦0.8,0≦Y≦1.0,MはNd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Tb 及び/又はLi1+x+yxTi2−xSiy3−y12から選ばれる元素であり、0<X≦0.4,0<Y≦0.6,Q はAl 或はGa)。このガラス−セラミクは原材料を溶解してメルトを得た後、このメルトをガラスに鋳造し、このガラスを熱処理して製造する。このような物質は日本のOHARA Corporation から入手可能であり、米国特許5702995,6030909,6315881,6485622に記載されてある。これらの文書は本発明の以降の開示に参照して統合するものとする。
【0062】
保護用組成物の第二層としてその他の特に好適な物質はリチウムイオン導通性のガーネットのような構成を有する酸化物である。その例としてはLi6BaLa2Ta212;Li7La3Zr212,Li5La3Nb212,Li5La3212(M=Nb,Ta)Li7+xxLa3−xZr212が含まれ、ここでAはZnであり得る。これらの物質及びそれらの製法は米国特許出願公開2007/0148533(出願番号10/591714)に記載されて居り、これは全体として本願に参照して統合されるものとする。好適なガーネットのような構成物は国際特許出願WO/2009/003695に記載されており、この内容全体は本願に参照して統合されるものとする。
【0063】
この組成物は内在的に高いイオン導電率でなくてはならない。一般的に、この組成物のイオン導電率は最低10−7S/cm以上であり、一般に約10−6 〜 10−5S/cm、そして10−4 〜 10−3S/cm以上であってもよい。第一前駆体物質層の厚さは第二物質層と隣接した物質或は層、殊に陽極の活性金属との接触を妨げるのに十分でなくてはならない。例えば、固体相膜用の第一物質層の厚さは0.1から5ミクロン、0.2から1ミクロン、或は約0.25ミクロンであり得る。第四例の陽極液中間層の好適な厚さは例えば5から50ミクロン、Celgardの典型的な厚さは25ミクロンである。
【0064】
第二物質層の厚さは好適に0.1から1000ミクロン、或は第二物質層のイオン導電率が約10−7S/cmの時には約0.25から1ミクロン、第二物質層のイオン導電率が約10−4- 約10−3S/cmの時には約10から1000ミクロン、好適には1から500ミクロンの間、更に好適には10と100ミクロンの間で、例えば約20ミクロンである。
【0065】
コンプライアント及びリジッドシールを含め、上記及び他所に記載された保護付き陽極を密閉するのに殊に好適なシール及びその製法は米国特許出願2007/0037058及びUS2007/0051620(Visco)にフルに記載されており、これらの全体は本願に参照して統合されるものとする。
【0066】
[陰極コンパートメント]
再び図1を参照し、陰極コンパートメント4は空気陰極5(「空気電解質」とも言及される)及び陰極5と固体電解質保護膜2の間に位置して酸素分子の還元のため陰極5と直接接触している水性陰極液6とから成る。陰極コンパートメント4は更に固体電解質保護膜2と空気陰極5の間に位置される一個以上の多孔性固体貯蔵体構成7から成るものであってよい。図示の便宜上,図1では水性陰極液6と多孔性固体貯蔵体7とが別の層としてあるが、これらは同延であってもよく、発明の多くの実施形態において同延である。
【0067】
後述するように、種々の実施形態において、水性陰極液(陰極(例えば酸素電極)と接触する電解質と定義される)は少なくとも或る場合において溶解された活性陰極液塩を含む。
【0068】
[水性陰極液]
種々の実施形態において、本発明の水性陰極液は以下の成分から成る:
(1)陰極放電に関与する溶解した活性陰極液塩;
(2)陰極放電に直接関与しない溶解した支持リチウム塩;
(3)任意的に、溶解していない陰極液塩;
(4)任意的に、追加的吸湿剤;
(5)任意的に、セルの性能向上用の追加剤。
【0069】
本発明の活性陰極液塩の一つのクラスはMHalnの式で表され、ここでMはNH4,Al,Ti又はMg;HalはCl,Br,又はI;nはMの原子価による適当な化学量論的の値である。好適例の塩はNH4Cl及びAlCl3である。この場合「塩」というのは反応(例えば溶解又は加水分解)して溶解した活性塩を形成する化合物を含む意図である。リチウム/空気セルに効果的に使用可能なその他の活性陰極液塩の例としてNH4NO3,NH4Br,NH4CNSがある。これらの塩はすべて陰極工程に関与して対応するリチウム塩を形成する。陰極放電の間、これらに対応する吸湿性のリチウム塩が形成され、空気中の湿気を吸収することにより、セルの乾燥が防止される。
【0070】
本発明の代表的な活性塩としてNH4Clがある。陰極液に溶解して活性塩はセル反応に関与する。希釈された状態にあって、塩化アンモニウムの放電反応は以下のようになる:
2Li+2NH4Cl+1/2O2=H2O+2NH3+2LiCl
【0071】
この反応によれば、水及びアンモニア(及び/又は水酸化アンモニウム)が活性塩として生成されて放電反応に関与し、対応するリチウム塩の反応生成物( LiCl)に変換される。対応するリチウム塩は陰極液での溶解度の高いことが望ましく、活性塩より溶解度の高いことがより望ましい。活性塩乃至それに対応するリチウム塩の溶解度の評価基準として水の溶解度がある。従って、種々の実施形態において、対応リチウム塩の溶解度はそれが変換される前の活性塩の水の溶解度より大きいものである。種々の実施形態において、放電の間陰極液に低度の平衡相対湿度を与えるような対応吸湿性リチウム塩に変換するような活性塩を使用することが望ましい。例えばLiClの飽和水溶液の平衡相対湿度は室温(20°C)で約11%であり、LiBrは約6%である。
【0072】
吸湿性固体相放電産物が収集する水分の量を増加するため、従来例の金属/空気(例えば亜鉛/空気)セルで典型的に使用されるより遥かに高密度の活性陰極液塩が望ましい。最低1M、又は最低2M、例えば4Mの濃度が好適である。特別の実施形態において、陰極液内活性塩の飽和した、又は殆ど飽和した溶液が使用可能である。
【0073】
[特別な塩]
NH4Cl,NH4Br,及びNH4
NH4Clの室温における水中の溶解度は約28重量%であり、温度と共に上昇し、これはLiOHの溶解度(室温で約11重量%)より有意義的に高い。ところで、LiClとNH3の両方の放電産物は溶解度が非常に高い。LiClは吸湿性があり、セルの貯蔵及び放電の間に雰囲気中の湿気を吸収する。重要なことは、セルの放電の間、1モルの NH4Clが半モルのH2Oを生成し、これがLiOHの形成に関する放電に使用可能であると言うことである。NH3は蒸発して陰極コンパートメントの重量を軽減することができる。 NH4BrやNH4Iを使用するとLiBrやLiIが生成され、これらはLiClより多分に吸湿性が高いため、これらの塩は使用可能であり、セルが低湿度で使用される場合有用かもしれない。
【0074】
その他のNH4Cl塩の利点はセルの貯蔵及び初回の放電の際の陰極液の緩和に関する。固体電解質保護膜はNH4Clに基づく電解質において化学的に安定なので、活性塩としてNH4Clを使用することでバッテリセルの貯蔵性能が向上する。
【0075】
NH4NO3
NH4NO3は溶解度が高く、室温で68重量%であり、この放電産物であるLiNO3は非常に吸湿性であり、溶解度もLiClより高い。しかも、NiはLiNO3を含む溶液内で安定なので、NH4NO3活性塩を有するセル内の空気陰極は従来例の安価なNi電流コレクタが使用可能である。
【0076】
AlCl3
AlCl3は31重量%の高い溶解度を持ち、放電産物は吸湿性であり、セルの乾燥を防止する。この塩を有するセルは増加した放電の深さを有することが知られている。
【0077】
[支持塩]
本発明の支持Li塩は放電の各段階において陰極液の導電性を維持するものである。初回の放電以前に従来例のLi塩濃度より実質的に高程度の濃度のLi塩を陰極液内へ導入すると、開回路状態でのセル貯蔵の間セルの成功の増加が防止されることも知られている。これにより、初期(初回の放電以前)Li塩(イオン)濃度として、最低2M、例えば2Mが効果的に使用可能である。本発明は作用に関する理論によって限定されるものではないが、この効果は保護膜と液体陰極液との間のインタフェイスでのイオン交換の抑制の結果とされる。吸湿性支持Li塩は放電開始以前のセル内の湿気のバランスを維持するのに使用可能である。これは支持Li塩の機能の一つである。
【0078】
特種な場合として、本発明の陰極液は同じアニオン(共通なアニオン)を有する活性塩と支持塩から成るものであり、即ち、NH4Cl及び/又はAlCl3がLiCl又はLiBrとのコンビネイション(例えばNH4ClとLiBr)として、NH4NO3とLiNO3、及びNH4CNSとLiCNSとして使用される。特種の応用及びバッテリが運行される条件により、本発明の陰極液は活性塩のみ成って、支持塩の濃度から成らないものでもよく、また、支持塩のみから成って、活性塩の濃度から成らないものであってもよい。例えばセル放電に際してNH3ガスの発生が望ましくない応用の場合、陰極液はLiCl及び/又はLiNO3を含むがNH4ClやNH4NO3を含まないものでよい。本発明による陰極液の特種例には以下のものが含まれる:水中における4M NH4Cl+2M LiCl;水中における4M NH4NO3+2M LiNO3;水中における4M NH4CNS+2M LiCNS;水中における2M AlCl3 =2M LiCl;水中における2.7M AlCl3+1M LiCl。
【0079】
或る実施形態においては、異なるアニオンを有する活性塩と支持塩とが使用される。一実施形態において、低湿度の放電でのセルの乾燥を防止するため、NH4Cl及び NH4NO3活性塩と共にLi支持塩として吸湿性LiBr又はLiIが使用される。或る実施形態においては、Li塩以外に追加的吸湿剤又は共溶媒が陰極液に含まれる。このような共溶媒の一例はエチレングリコールであり、これは100%の相対湿度において200%の自己重量もの水分を吸収することが出来る。
或る場合には、シリカ又はアルミナのような不活性固体化合物の微粒子が陰極表面付近、陰極液貯蔵構造体のバルク中、保護膜面の付近など、陰極液又は陰極コンパートメントの異なる位置に追加される。これらの粒子は結晶化の中心を形成し、放電産物の沈殿を制御する。
【0080】
他の実施形態において、陰極液は更に陰極液の水分と反応してセル反応に試薬として関与する溶解した活性種を形成する非プロトン性及びプロトン性有機及び無機液体(TiCl4)から成る。
【0081】
種々の実施形態において、初回の放電以前、陰極液は塀仔相対湿度(ERH)が低い。初回の放電以前、陰極液のERHは室温(20C)において好適に50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は15%以下である。好適に、これはセルの活性化において陰極コンパートメントを吸湿性にする程度のものである。
【0082】
陰極液のERHを低くするためには、活性塩を高濃度とする、又は、陰極液を活性塩で飽和させる、又は、溶解された活性塩と不活性塩、ことに不活性Li塩及びことに極めて吸湿性のあるリチウムハライドを使用する。種々の実施形態において、 陰極液は高濃度の活性塩(例えばNH4Cl)及び低濃度のリチウムハライド塩(例えばLiCl、LiBr又はLiI)から成る。塩のコンビネイションはこれらの塩の一方又は両方の溶解限度を効果的に低下するのに使用可能である。例えば高密度の活性第一塩は第二塩(例えばリチウム塩)の溶解度の低下に使用可能であり、この特性により、リチウム塩は純水内での溶解限度以下の溶解限度にその濃度の陰極液内で到達するかもしれない。効果的な濃度において、第一と第二の塩、又はそれ以上の塩のコンビネイションは溶解した形態で反応し、水中での溶解限度に基づいて予想されるより低濃度で早期に飽和に到達可能である。
【0083】
種々の実施形態において、溶解された活性塩から成るものも含め、水性陰極液はバッテリセルの製造にあたり、貯蔵構造体の孔を充填し、陰極活性層を濡らし、保護膜面を濡らし、存在するならばヒドロゲルを吸収するに十分な量で陰極コンパートメントに合体される。
【0084】
或る実施形態において、陰極液はセルの製造後、しかし初回の放電以前にコンパートメントに導入される。これにより、バッテリセルは「乾燥状態」(即ち陰極液及び水分が実質上存在しない、又は存在しない、又は除外された状態)又は孔の充填、濡らしなどに最適であるより以下又は実質上それ以下の陰極液(又は水分)の半乾燥状態で組み立てられ、貯蔵され、及び運搬され得る。乾燥状態のセルを組み立て、貯蔵、運搬する利点は非常に軽い運搬、最適な輸送安全性、及び向上された貯蔵期間などがある。或る実施形態においては操作員(典型的にはシステム又は装置に動力を付与するためにバッテリを使用する人員のことであるが、そのように限定されるものではなく、此処で機械的道具はその目的で考慮されて居る)が陰極液又は水分をバッテリセルのケースのポートを通じて導入することを考慮している。ポートは水、活性陰極液、又は塩の導入を含め、種々の目的で外部から陰極コンパートメントへアクセスするためのものである。例えば或る実施形態において、陰極コンパートメントは活性固体相塩、固体リチウム塩、その両方の中の少なくも一つを含んでおり、バッテリの操作員は入り口ポートを通じて水及び/又は陰極液を陰極コンパートメントに導入する。
【0085】
或る実施形態において、陰極液は陰極コンパートメントが周囲の空気に露出されることによってその場所で完全に又は部分的に形成される。例えば少なくとも一種の固体相塩、例えばセルの活性化の後周囲の空気から吸収した水分と接触して溶解する活性固体相塩及び/又は固体相支持電解質塩(例えば LiCl)から成る陰極コンパートメントである。この或る実施形態において、 陰極コンパートメントはセルの活性化以前実質上水分のないものである。特別の実施形態において、セル放電に必要な水分は全部周囲の空気からの吸収によって獲得されるものである。
【0086】
[本発明の陰極液の利点]
本発明のリチウム/空気セルは或る意味においてアルカリKOH水性電解質を有する旧来の亜鉛/空気セルに類似するものである。類推によるならば、リチウム/空気セルに最も自然な選択はLiOHであろう。本発明の中性乃至やや酸性の陰極液はLiOH系の電解質より数個の有利点がある。
【0087】
第一に、室温における水中のLiOHの溶解度は11重量%でしかなく、水性KOH又は本発明の活性陰極液塩より遥かに低い。そのような陰極液の空気セルはLiOHが沈殿開始するまで容量が僅少である。本発明の陰極液を使用することにより、固体の放電産物が形成される以前得られる容量が増加する。
【0088】
第二に、LiCl、LiNO3及びLiCNSのような本発明の陰極液を有するセルの放電産物はLiOHより遥かに吸湿性であり、従ってセルの乾燥を好適に防止する。重要なことに、固体電解質保護膜はLiOHとの接触より本発明の陰極液との接触によって遥かに安定である。その結果、セルの貯蔵安定性が向上する。
【0089】
更に、此処に記載された陰極液を有するセルが十分放電されLiOHの沈殿が起こる場合、得られた総容量は活性塩の放電の容量(即ちNH4ClがLiClに変換する場合)をLiOHの放電の容量に加えたものより遥かに大きいことが知られて居る。本発明は特種な理論に限定されるものではないが、この相乗的効果は導電性の増加及びLiOHとLiClの共沈殿により形成される固体放電産物の形態学的向上で説明される。この効果の別の説明には、水を吸収してLiOH及びLiOHが雰囲気中のCO2と反応して形成されるLi2CO3を希釈する放電産物の高吸湿性が関係する。
【0090】
[陰極コンパートメントへの固体活性陰極液塩の導入]
本発明の別の特種実施形態において、活性塩は固体総活性塩として陰極コンパートメントに導入される。陰極液が存在する場合には、この固体総活性塩の少なくとも一部が陰極液に接触し、それに機能的に溶解する。或る実施形態において、活性固体相塩は陰極コンパートメントの中へ、陰極液内での溶解限度以上の濃度で導入される。これにより、セル放電に必要な水分は最初にセル内に搭載されなくてもよく、放電に際して形成される吸湿性産物により雰囲気より陰極コンパートメントへと吸収されるものでよい。或る活性固体相塩の重要な利点はバッテリの重量が軽減できることである。活性固体相塩は、更にセルの運行中陰極液内の活性塩の濃度を維持する役を果たす。
【0091】
種々の実施形態において、固体相活性塩の或る量(少なくともその一部)は初回の放電の後固体として陰極液に接触して残り、典型的にはその一部は固体として残り、その後の放電のかなりの部分溶解せずに残る。或る実施形態の場合、セルが既定容量の少なくとも10%、又は少なくとも30%、又は少なくとも50%、 又は少なくとも75%、又は既定容量の事実上100%を配達した後、陰極コンパートメントの中に活性固体相塩の一部又は少なくとも或る量が溶解せずに陰極液と接触して居る。
【0092】
セルの運行中、陰極コンパートメントの中に活性固体相塩が存在すると、陰極液は平衡相対湿度が非常に低下することがあり、吸湿性固体放電産物が連続的に形成されると、陰極液は放電の期間の中かなりの期間中この低い値を維持することがある。
種々の実施形態において、陰極液の平衡相対湿度の低値は50%以下、又は40%以下、又は30%以下、又は20%以下、又は15%以下となり、或る実施形態では陰極液がかように低いERH値を維持するのは放電の期間のなかの有意義的な部分であり、セルが既定容量の50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は放電の全期間に亘ることもある。
【0093】
種々の実施形態において、陰極液の平衡相対湿度が周囲の相対湿度以下又は実質的に同様であるのはセルの運行の全期間(TTP)の有意義的な部分である。ここで全期間とは初回の放電の開始から放電が実質上完了するまでのことであり、セルが開回路の状態で休止して居る期間を含む。陰極液のERHが周囲の空気の相対湿度以下又は同じである期間はTTPの50%以上が好適であり、より好適には75%以上、それより更に好適には90%以上である。或る実施形態においては、ERHが相対的湿度以下であるのがセル運行の全期間に亘る(100%TTP)。
【0094】
典型的に、活性固体相物質(活性固体相塩)はセルの製造の期間陰極コンパートメントに合体されているが、これは発明を限定するものではなく、活性固体相塩が搭載されるのは製造の後であることも意図されて居り、例えば製造の後でセル活性化の前、セル活性化の後で初回放電の前、或は初回放電の後に活性固体相が陰極コンパートメントに搭載されることさえ意図されて居る。留意されるべきこととして、本発明によれば活性固体相物質(活性固体相塩)は意図的に固体(即ち物質の固体相)として陰極コンパートメントに搭載されるのであって、従ってこれは例えば固体塩がその溶解された溶液が例えば室温より下がった場合などに沈殿するなどの低温沈殿反応或はその他の原因により、非意図的であり、望ましくないとさえされた結果のみではないと言うことである。室温以下の温度で本発明のセルが貯蔵されて居る場合には、事実、低温沈殿減少は起こるものであるが、陰極コンパートメントに存在する活性固体相塩の大部分は非意図的な機構によって形成されるものではなく、より典型的には90%以上の固体相活性塩は一般的には意図的にセルの製造期間中又は初回のセル活性化以前に陰極コンパートメントに組み込まれる。
【0095】
種々の実施形態において、活性固体相物質(典型的には活性固体相)は陰極コンパートメントにおいて初回放電以前又は或る場合にはセル活性化以前において相対的に多量に存在するものである。種々の実施形態において、セル活性化又は初回の放電以前、活性固体相塩は陰極液に溶解されている活性塩より多量に陰極コンパートメントの中に存在する。種々の実施形態において、活性固体相塩の陰極液に溶解された活性塩とのモル比は1以上、又は2以上であり、又は10以上でさえある。
【0096】
特種実施形態において、このモル比の範囲は2と3の間、3と4の間、4と5の間、5と6の間、6と7の間、7と8の間、8と9の間、又は9と10の間である。
【0097】
[NH4Cl及びその他の本発明の固体活性塩を陰極コンパートメントに搭載する方法]
(1)貯蔵構造体層の孔をエアスプレイ法によってNH4Cl又はその他の活性塩で充填。本発明では、溶液又はスラリは水又は一種以上の共溶媒に基づいたものである。プロトン性でも非プロトン性であっても、これらの共溶媒は活性塩の溶解性を向上し、貯蔵構造体層の濡れ性を改善し、又は固体塩粒子を分散させるために使用可能である。殊に有意義的な一実施形態においては、メタノールが含浸工程の間スラリに添加されて多孔性貯蔵構造体層を濡らせる。含浸/乾燥の1サイクル以上が貯蔵構造体層の充填に使用される。特種の一実施形態において、含浸工程の間貯蔵構造体層は加熱される。
【0098】
(2)水性及び非水性溶媒及びその混合物の中で溶液又はスラリを使用することによる貯蔵構造体層のNH4Cl又はその他の活性塩による真空含浸工程。
【0099】
(3)貯蔵構造体をスラリ又は溶液の浴槽に入れることによる貯蔵構造体層のNH4Cl又はその他の活性塩による真空含浸工程の後冷却及び結晶化。一実施形態において、スラリ又は溶液で満たされた貯蔵構造体は氷晶点まで冷却される。その結果、溶液はNH4Clと氷の二相に分かれる。次いでNH4Clの溶解度が無視可能な程度の溶媒(アセトン)を使用して水分が抽出される。
【0100】
(4)空気陰極の面をNH4Cl又はその他の活性塩のスラリで被覆。
【0101】
(5)NH4Cl又はその他の活性塩をペレット又は薄層に加圧し、空気陰極に接触する陰極コンパートメント内に設置。一実施形態において、活性塩は加圧工程前にバインダと混合される。別の殊に重要な実施形態において、活性塩は多結晶活性塩の粒子境界を増加し、イオン導通性を向上するため、加圧工程前にシリカ、アルミナなどの不活性無機粉末と混合される。炭素の短い繊維のような他種類の充填物も使用可能である。別の実施形態において、加圧工程前に活性塩は孔形成剤の粉末と混合される。加圧の後、孔形成剤は熱分解又は非水性溶媒による選択的可溶化により除去される。その結果、多孔性活性塩ペレットが形成される。特種一実施形態において、低分解温度の60°Cの重炭酸アンモニウムが孔形成剤として使用される。
【0102】
種々の実施形態において、固体活性塩が陰極コンパートメントに導入される時、Li支持塩又はLi支持塩と活性塩の水性溶液も陰極コンパートメントに導入される。これは固体活性塩のペレット又は第一貯蔵構造体層(既に固体活性塩で含浸されている)をLi支持塩又はLi支持塩と活性塩の水性溶液で満たすことで達成可能である。代行的又は追加的に、これは保護膜と第一貯蔵構造体層の間に位置する第二貯蔵構造体層を同じ水性溶液で満たすことで達成可能である。その結果、陰極コンパートメントの成分と保護膜とは液相を通じて接触する。
【0103】
重要な一実施形態において、陰極コンパートメントに固体として導入される活性塩の量は初回放電以前溶解状態にある活性塩の量より有意義的に大きい。
【0104】
[放電の段階]
種々の実施形態において、放電は溶解された活性塩種が試薬として放電反応に関与するか否かによって異なる段階によって起こるものと記述可能である。即ち、第一段階はそれが行われる場合の放電の部分に対応し、第二段階はそれが行われない部分に対応し、例えば第二段階は溶解された活性塩種が事実上全部使用された場合、又はこれらの種が陰極液に存在していない場合に到達される。そのように限定されることでないが、典型的に水分は第一段階でセル反応によって生成され、第二段階の反応によって消費される。
【0105】
種々の実施形態において、本発明のリチウム/空気セルは第一と第二段階の放電の両方を含むものである。従って、種々の実施形態において、バッテリセルの規定容量は放電の第一と第二段階に亘る容量から成るものである。そして、或る実施形態において、セルの規定容量は第一と第二段階に関する容量の総和に対応するものである。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、或る実施形態の場合、セルは第一と第二段階のどちらか一方にのみ放電されることもある。更に、第二段階が第一段階の後に来るのが通常ではあるが、第一及び第二との用語は必ずしも第二段階が第一段階の後に来るとの意図ではなく、第一段階が第二段階に必要であるとの意図でもないことに留意されるべきものである。
【0106】
そのように限定される意図ではないが、放電の第一段階で生成された水分子は陰極液の中の水分と合体し、又は陰極液の成分と複合して構造的水化物(例えば水分が構造的な水化された固体塩)を形成する。第一段階放電で反応的に生成される水分の総量は放電に反応物として関与する活性陰極液種の総量に比例する。
【0107】
本発明の実施形態に従い、固体相活性塩及び/又は溶解した活性塩から成る陰極コンパートメントは陰極液の乾燥防止及び重量エネルギイ密度の向上を含むセル性能の向上を目的として組織化されてよい。上記の如く、高濃度又は飽和した陰極液塩溶液、又は陰極液内の塩の或るコンビネイション、又は固体相活性塩、又はその或るコンビネイションを使用することにより、陰極コンパートメントは吸湿性とされ、放電の種々の期間において周囲の空気から吸収される水分を十分又は多量にすることが出来よう。これにより、セルのエネルギイ密度(Wh/kg及びWh/l)が向上され、これは初回放電前、或は或る実施形態ではセル活性化の前、セルがその規定放電容量を達成するのに必要な水分の量以下が陰極コンパートメントの中で必要とされることが一部の理由である。
【0108】
本発明の種々の実施形態に従えば、水分が陰極コンパートメントの中で如何に又は何時物質化するかによって、少なくとも三種の異なる水分子の量が区別される。第一の水分の量は初回放電以前陰極液に存在する量に対応し、第二の水分の量は放電反応で生成される量に対応し、第三の水分の量は初回放電の開始以後周囲の空気から陰極液によって吸収された量に対応する。此処において、放電反応で消費された水分の総量を第四の水分の量とする。第五の水分の量はセルの活性化以後、初回の放電以前に周囲から吸収された水量に対応するものである。種々の実施形態において、セルが規定容量を達成するのに第一の水分の量、又は第一と第二の水分の量の和で十分である。これらの実施形態の場合、十分な量の水の湿気の吸収、即ち第三の水分の量でセルは放電によって規定の容量を達成することができる。フル(完全)な放電に必要より以下の水分のセルを製造することにより、本発明のセルは重量を軽減し、体積上効果的なものとなる。種々の実施形態において、第三の水分の量は第一の水分の量より大きく、又は第一と第二の水分の量の和より大きい。或る実施形態において、第三の水分の量は少なくとも第一の水分の量の二倍、又は第一と第二の水分の量の和の二倍である。或る実施形態の場合、セル活性化以前においてセルには水分がなく、初回の放電以前にセルの運行開始に十分な水分(即ち第五の水分の量)を周囲から吸収する。
【0109】
[貯蔵構造体層としての固体多孔性構造物]
数種類の多孔性が本発明によるリチウム/空気水性セルの貯蔵構造体層として効果的に使用可能であることが知られている。これらの多孔性層は化学的に不活性であり、陰極及び水性陰極液と適合性である。殊にこれらは陰極液の成分と反応せず、陰極によって酸化されず、セルの放電に試薬として関与しない。陰極と保護膜との間に位置される多孔性貯蔵構造体の第一機能は液体陰極液及び/又は固体相塩が搭載されることである。貯蔵構造体層として使用される固体構造物は高度に多孔性である。貯蔵構造体層には液体と固体両方のセル放電産物を収容し、放電の深さを増加してセルの特性を向上させる第二の機能が可能であることも知られている。更に貯蔵構造体層の多孔性の空間はセル放電及び貯蔵期間に陰極液の吸湿性成分によって吸収された水分を保持し、放電反応において使用可能とする。
【0110】
[金属酸化物の多孔性貯蔵構造体]
金属酸化物の多孔性貯蔵構造体構成の種は以前本出願の米国特許公開出願US2004/0197641に開示された。この出願においては、多孔性ZrO2(殊にZircar Products, Inc.のZirconia布)がこの状況において注目される。現在、Zircar Zirconia Corpの高多孔性(95%以上)のジルコニアフェルトZYF−150,ZYF−100及びZYF−50を含む種々の特種ZrO2多孔性貯蔵構造体構成が好適であると決定されている。更に、フェルト、布、及びその他の多孔性構造物としてAl23,Y23,MgOなどを含む金属酸化物が好適である。殊に、Fuel Cells Materials
【0111】
Corp.からの高多孔性(95%以上)アルミナフェルトALF−100及びALF−50が使用可能である。
【0112】
本発明による多孔性貯蔵構造体の特性は、セルの機能に悪影響無く、又は少なくとも固体相放電産物の沈殿に拘らずセルの機能が許容程度に維持されるように固体相放電産物を収容する特性である。この達成のため、多孔性貯蔵構造体構成の厚さは市場で入手可能な最も類似したもので他の金属/空気バッテリのデザインに当たって開始点となる亜鉛/空気バッテリの場合に典型的に使用されるものより遥かに大きい。
【0113】
[炭素質の多孔性貯蔵構造体]
炭素及び黒鉛の布、炭素紙、及び他の多孔性構造物が本発明の多孔性貯蔵構造体構成として好適である。National Electric Carbon Products,Inc.のWDF黒鉛布、及びVD炭素フェルトが使用可能である。炭素質物質は、陰極液の貫通を最適化するように細く仕立てた多孔性又は段階的な多孔性、及び/又はセルの機能に悪影響無く、又は少なくとも固体相放電産物の沈殿に拘らずセルの機能が許容程度に維持されるように、固体相放電産物の沈殿を収容するように製造される。
【0114】
以前この観点から使用されなかったことであるが、炭素質貯蔵構造体構成にはリチウム/空気セルへの応用に追加的利点となる特性がある。炭素質構成は軽量であり、従って、セルのエネルギイ密度を向上する。電子的に導通性もある。これら貯蔵構造体構成の電子的導通性は固体相セル放電産物沈殿の量及び位置の制御に使用可能である。
【0115】
殊にホット酸(HCl或はH2SO4)での処理、炭素質貯蔵構造体の電気化学的プリサイクリング、又は酸素含有雰囲気での熱処理など中性又は塩基性陰極液とのコンビネイションで使用される場合、炭素質多孔性貯蔵構造体の濡れ性を向上するのに種々の方法が使用可能である。炭素フェルトを処理する特種な一方法は空気中2〜2.5時間、525〜565°Cで行う熱処理である。
【0116】
[重合体多孔性貯蔵構造体]
高多孔性(例えば最小50%、例えば90%)の重合体層は貯蔵構造体構成として使用可能である。 かような貯蔵構造体の一例はプロピレン繊維材料である。その他の重要な例としてポリウレタン泡体、殊に網状泡体がある。好適な一実施形態において、これらの物質は弾性があり、放電の間その多孔性構成を損傷することなく伸張可能であり、セル機能を許容可能な程度に維持する一方、液体及び固体の放電産物、並びにセル放電の間空気から吸収した水分を保持する。その他の好適な場合、重合体貯蔵構造体構成は放電中拡張できる程に弾性があり、セルの成分全部を互いに接触させておくので、組み立てられたバッテリセルの中でこの目的のために別のメカニズム(例えばスプリング)を必要としない。このような弾性的な重合体多孔性貯蔵構造体 構成は殊に好適に出願者による米国特許出願US2007/0037058(此処に参照して統合するものとする)に開示されたコンプライアントシールセル構成と結合することが出来る。
【0117】
任意的に、固体電解質保護膜と固体が含浸された場合の第一貯蔵構造体層との間の接触を向上するため、陰極コンパートメントの中に第二多孔性貯蔵構造体層が使用可能である。此の場合、第二多孔性層も液体陰極液で充填されている。第二貯蔵構造体層のその他の機能として、保護膜における固体放電産物の沈殿を防止又は最小化することがある。此の場合、第一及び第二貯蔵構造体層の多孔性構成は、固体相放電産物が選択的に第二貯蔵構造体層の方(即ち貯蔵構造体/陰極インタフェイスから離れる方向)に沈殿するように構成する。別の実施形態において、第二多孔性は保護層の面の近くの沈殿物の構成及び導通性を最適化する。従って第一多孔性貯蔵構造体層は第一成分物質から成り、第一孔構成を有し、第二多孔性貯蔵構造体層は第二成分物質から成り、第二孔構成を有する。種々の実施形態において、第一と第二の貯蔵構造体のいずれかに選択的沈殿を達成するため、第一孔構成は第二孔構成と異なり、第一成分物質も第二成分物質より異なるものであってよい。孔構成の孔サイズ及び形状は均一的或は変化的であってよい。陰極コンパートメントの多孔性固体成分は通常開状多孔度が最低30%で、好適には最低50%、より好適には最適70%、さらにより好適には最低90%である。
【0118】
[貯蔵構造体としてのヒドロゲル]
水分の吸収が可能な水和性重合体ネットワークであるヒドロゲルは本発明に従うリチウム/空気水性セルの貯蔵構造体層として効果的に使用可能であることが知られている。本発明のヒドロゲル層は陰極及び水性陰極液と適合性がある。殊に陰極液成分と反応せず、陰極によって酸化されず、セル放電に試薬として関与しない。陰極と固体電解質保護膜との間に位置されるヒドロゲル貯蔵構造体は活性及び支持陰極液塩で溶解された形態で搭載することが出来、叉恐らく溶解されていない固体の形態の陰極液塩で補足可能である。本発明のヒドロゲル貯蔵構造体層はその他数々の役に立ち、殊に、セル放電の液体と固体の両方の産物を収容できるので、放電の深さを向上することが出来る。更にヒドロゲル貯蔵構造体層は陰極液の吸湿性成分で吸収された水分及びセル放電の吸湿性産物を保持することが出来る。このことはヒドロゲル貯蔵構造体層に固体活性陰極液塩が搭載され、放電産物が高度に吸湿性である場合に有利である。此の場合、ヒドロゲル貯蔵構造体層は水分を吸収して膨張し、陰極コンパートメントからの漏れを防止する。
【0119】
ヒドロゲルの構成及び合成は多くの刊行物に記載されている。本発明の使用に便宜な文献のリストはI.R.Scott and W.J.Roff,”Handbood of Common Polymers”, CRC Press, 1971(此処にこの目的で参照して統合されるものとする)に見られる。本発明のヒドロゲルは天然及び合成重合体の両方に基づくものであってよく、物理的又化学的ゲルであってよい。ヒドロゲルマトリクスの合成に使用される水和性重合体及び物理的及び化学的ヒドロゲルの合成方法は下記の文献に記載されて居り、これらの教示内容はここに統合されるものとする:B.D.Ratner and A.S.Hoffman,”Hydrogels for Medical and Related Applications”, American Chemicl Society, Washington,D.C.1976,pp.1−36;A.S.Hoffman,”Advanced Drug Delivery Reviews” Vol.43,pp.3−12(2002).好適な水和性重合体には限定的でなく、ポリエステル、ポリ(ビニルアルコール)及びポリアクリルアミドがある。特種な一実施形態において、架橋ポリアクリルアミド系ヒドロゲル貯蔵構造体層は過硫酸アンモニウム(重合開始剤として)とN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン(加速剤として)を水に溶解したアクリルアミド単体とビスーアクリルアミド架橋剤に加えて調製したゲル電解質のキャスティングによって作成される。一例においては、活性塩と支持Li塩も、形成されたヒドロゲル電解質層が完全に溶解された活性及び支持塩を含むような濃度でこの溶液に加えられる。別の例においては、架橋の前に溶液に固体活性塩が搭載され、その濃度を塩の溶解限度以上とすることによって結果として得られるヒドロゲル層が非溶解の固体活性塩と溶解した支持塩を含む。一実施形態において、固体活性塩の濃度は一定でなく、貯蔵構造体ヒドロゲル層に亘って変化している。別の実施形態においては、塩の濃度が陰極の近辺で高く、保護膜の近辺で低い。
【0120】
本発明においては、バッテリセルの特性向上のために多層ヒドロゲルが使用可能である。此の場合、貯蔵構造体層は異なる又は同じ重合体系で異なる又は同じ活性及び支持陰極液塩を含む二層以上のヒドロゲルから成る。一実施形態においては、陰極と固体活性塩粒子が搭載されたヒドロゲル層の間の接触を向上させるため、この層は陰極と直接接触し、固体活性塩を含まない別の薄いヒドロゲル層でコーティングされている。別の実施形態においては、固体活性塩を含まない別の薄いヒドロゲル層が固体活性塩の搭載されたヒドロゲル層と陰極の間のみでなく、固体活性塩の搭載されたヒドロゲル層と固体電解質保護膜との間にも設置される。
【0121】
[空気陰極]
数々の実施形態において、亜鉛/空気バッテリ又は低温燃料セル(例えばPEM)に使用されたものに類似して居り。当業者に既知の空気陰極が此処に記載される本発明のリチウム/空気バッテリセルに使用可能である。
種々の実施形態において、本リチウム/空気セルは少なくとも第一ガス拡散(例えばテフロン(登録商標))バッキング層から成る第一部分層(これはセル内の空気側に近接して設置される)、例えばテフロン及びアセチレンブラックから成る濡れないガス供給層、金属スクリーン電流コレクタ、及び活性炭素層とから成る本発明の空気陰極から成るものである。
【0122】
電流コレクタに使用される金属の種類はセルにおけるその化学的安定性、殊にその水性陰極液との接触における安定性に基づいて選択される。特別の実施形態において、金属スクリーン電流コレクタはチタンである。
【0123】
活性炭素層は電気触媒を含んでも 非触媒化(uncatalyzed)のものであってもよい。本発明の空気陰極には下記の触媒が使用可能である:Mn,Co及びRuの酸化物、及び他の金属酸化物、コバルトフタルシアニン、鉄フタルシアニン、及びマンガンフタルシアニン。
【0124】
或る実施形態において、本発明の空気陰極は第一部分層及び典型的にはそれに隣接した多孔性炭素質層である第二部分層とから成る。特種実施形態では、活性層が第二部分とのインタフェイスを形成する第一部分面を供し、これによって活性層は空気陰極のバルク内に位置される。
【0125】
第二部分面として殊に好適に使用可能な多孔性炭素構成には黒鉛布及びフェルト、及び炭素紙その他がある。
【0126】
種々の実施形態において、第一及び第二部分層はインタフェイスで密着又は溶着されており、それにより此処で一体化陰極構成と言及されるものを形成する。代行的に、これらの部分は放電によって互いに接着されるようにセル内に並べられてもよく、これにより、この場所において一体化構成となる。上記の如く、第一及び第二部分層は接触した一体化構成を形成してもよいが、本発明はこれに限定されるものではなく、追加的物質層が第一及び第二部分層の間に一体化構成内の成分物質層として配置されてもよい。
【0127】
本発明の陰極は放電でセル内に形成される固体産物を収容する役を果たす。本発明の空気陰極のその他の興味ある特徴は、陰極の電気還元が起こる活性炭素層が陰極のバルク内に配置されており、陰極は放電で拡張すると言うことである。これにより、本発明の陰極は放電により例えば厚さが2倍に、又は10倍以上に増加するので固体産物が形成されるにつれて連続的に収集し続け、従って高容量リチウム/空気セルに殊に好適である。
【0128】
一実施形態において、活性陰極液塩がMHaln(殊にNH4Cl及びAlCl3)のタイプである場合、腐食防止のため、従来例のニッケル電流コレクタの代わりにチタンの電流コレクタが使用される。
【0129】
リチウム/空気セルにおいて、放電産物は陰極コンパートメント内に収容されなくてはならない。亜鉛/空気セルの空気陰極と同構成の空気陰極が多量の放電産物の収集に使用可能である。従来構成の陰極が本発明に記載された多孔性貯蔵構造体とのコンビネイションとして使用可能である。代行的に、酸素電極は不可溶性放電産物を収集するような多孔性構成であり、セルの運行は事実上完全に放電されるまでに中断されることがない。
【0130】
貯蔵構造体層が活性層と直接接触した炭素質多孔性構成である場合、我々は新しい炭素系空気陰極を効果的に形成する。結果的に得られる空気陰極は構成が独特である。用いられる活性層は従来例の空気陰極が表面上であったのと異なり、電極の深さにある。炭素質多孔性貯蔵構造体は非触媒化のものであっても、比較的抵抗が大きくてもよく、従って、電気還元は主として電極の深さの活性層の表面で起こり、放電産物は保護固体電解質膜から離れた方向に保持する。結果として得られる陰極は同時にガス拡散電極及び炭素質多孔性貯蔵構造体として機能する。提案の新陰極は本発明の題目の一つである。
一実施形態において、陰極はセルの組み立て以前、その外側で作成される。別の重要な一実施形態において、陰極はガス拡散電極と炭素質多孔性貯蔵構造体とをセルの組み立て期間中密接に接触させて作成される。
【0131】
[実施例]
以下の諸例は本発明のセルの有利的特性を詳細に開示するものである。これらの例は本発明の各面を明確に説明するためのものであって、限定的なものではない。
【0132】
放電テストはフレキシブルなシール付き二側面の固体保護付き電解質のLi陽極及び本発明の陰極コンパートメント成分を使用するリチウム/空気セルの中で行われた。セルは25°Cで相対湿度50%の環境チェンバ内に設置された。セルの各々は成分を同じとする二個の陰極コンパートメントの間に二側面陽極を有するものであった。固体電解質膜のサイズは25.4mmx25.4mmであった。陰極コンパートメントの成分のサイズは以下の通りであった:空気陰極:26mmx26mm;多孔性陰極液貯蔵構造体層またはヒドロゲル貯蔵構造体層:25.4mmx25.4mm。空気陰極はガーリ数(Gurley number)2000のガス拡散テフロンバッキング層を使用するものであった。
【0133】
例1:図3は4M NH4Cl,2M LiCl陰極液及びジルコニアフェルト貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの作用を例示する。
例2:図4は4M NH4Cl,2M LiCl陰極液及び黒鉛フェルト貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの作用を例示する。
例3:図5は4M NH4Cl,2M LiCl陰極液と接触する固体電解質保護膜の長期間貯蔵後の安定性を示す。
例4:図6は4M NH4NO3,2M LiNO3 及び1M LiOH陰極液を有するリチウム/空気セルの相対的性能を示す。
例5:図7は2.7M AlCl3,1M LiCl陰極液及びアルミナフェルト貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの性能を示す。
例6:図8は2.7M AlCl3,1M LiCl陰極液及び黒鉛フェルト貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの性能を示す。
例7:図9は固体NH4Cl塩で浸透され、追加的に4M NH4Cl,2M LiCl陰極液で充満されたアルミナフェルト貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの性能を示す。
例8:図10はアルミナ粉末とワットマン(Whatman)マイクロ繊維GF/Aを4M NH4Cl,2M LiCl陰極液で充満された第二貯蔵構造体層として混合されたNH4Cl塩の圧縮ペレットを有するリチウム/空気セルの性能を示す。
例9:図11は溶解された4M NH4Cl及び2M LiClを含む架橋ポリアクリルアミドヒドロゲル貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの性能を示す。
例10:図12は溶解された2M LiClを含み固体NH4Clで負荷された架橋ポリアクリルアミドヒドロゲル貯蔵構造体層を有するリチウム/空気セルの性能を示す。
【0134】
[代行的実施形態]
本発明は 主としてLi及びLi合金の陽極について記述されたが、他のアルカリ金属の陽極、殊にナトリウムも代行的実施形態において使用可能である。そのような代行的実施形態の場合、陽極上の保護膜構成は陽極材料のアルカリ金属イオンの高度のイオン導通性に合わせて構成される。例えば、ナトリウム金属陽極用の保護膜構成にはNasiconから成る固体電解質層が含まれもよい。
【0135】
[結論]
上記の発明は明確に理解されるべく詳細に記述されたものであるが、発明の範囲内で或る程度の変更が可能であることは明瞭であろう。本発明の装置及び方法の両方に関して、その実施には多くの代行的な方法の存在することは銘記されるべきことである。従って、此処における実施形態は例示の為であり限定が目的ではなく、本発明は此処における開示の詳細に限定されるものではない。請求される発明範囲を完全に網羅して居ない請求項を以下に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリセルであって、
第一面と第二面を有するリチウム陽極と該陽極の少なくとも第一面の上にある保護膜構成とから成る保護付き陽極と、
初回放電の前分子酸素を還元するための陰極と水及びその中に溶解された活性第一物質とから成る水性陰極液となら成る陰極コンパートメントとから成り、
該保護膜構成が該電極と接触するアルカリ金属陽極と化学的適合性をもつ第一膜面及び該陰極コンパートメントの成分に事実上不浸透性であり化学的適合性をもつ第二膜面を提供するように構成された一個以上の物質から成るものである、バッテリセル。
【請求項2】
該活性第一物質が活性第一塩である、請求項1に記載のセル。
【請求項3】
該活性第一塩がハロゲン成分から成るものである、請求項2に記載のセル。
【請求項4】
該活性第一塩の濃度が少なくとも2モルである、請求項2に記載のセル。
【請求項5】
該活性第一塩が硝酸塩、臭素、塩素、及びアンモニウムから選ばれる成分から成るものである、請求項2に記載のセル。
【請求項6】
該活性第一塩が硝酸塩である、請求項2に記載のセル。
【請求項7】
該活性第一塩がNH4NO3である、請求項2に記載のセル。
【請求項8】
該活性第一塩が金属ハライドであり、該ハライドの該金属がリチウム以外である、請求項2に記載のセル。
【請求項9】
該ハライドの該金属が遷移金属である、請求項8に記載のセル。
【請求項10】
該ハライドの該金属がアルミニウム、マンガン、及びチタンから成るグループから選ばれるものである、請求項9に記載のセル。
【請求項11】
該活性第一塩がAlCl3である、請求項1に記載のセル。
【請求項12】
該活性第一物質が該陰極液の水中に加水分解的に溶解するものである、請求項1に記載のセル。
【請求項13】
該陰極液が該第一活性塩と異なる第二塩とから更に成るものである、請求項1に記載のセル。
【請求項14】
該第二塩が不活性塩である、請求項13に記載のセル。
【請求項15】
該第二塩がリチウム塩である、請求項13に記載のセル。
【請求項16】
該第二塩がリチウムハライド塩である、請求項13に記載のセル。
【請求項17】
該第二塩がLiC,LiBr及びLiIから成るグループから選ばれるものである、請求項13に記載のセル。
【請求項18】
該活性第一塩の濃度がリチウム塩の濃度以上である、請求項15に記載のセル。
【請求項19】
該活性第一塩の濃度がリチウム塩の溶解度、塩で飽和した陰極液の抑制に十分である、請求項15に記載のセル。
【請求項20】
該活性第一塩と該第二塩とが共通の塩成分を有するものである、請求項13に記載のセル。
【請求項21】
該共通塩成分がハロゲンである、請求項20に記載のセル。
【請求項22】
該陰極液内のハロゲン濃度が少なくとも6モルである、請求項20に記載のセル。
【請求項23】
該共通塩成分が硝酸塩である、請求項20に記載のセル。
【請求項24】
該陰極液内の硝酸塩濃度が少なくとも6モルである、請求項20に記載のセル。
【請求項25】
該活性第一塩と該第二塩がハライド塩である、請求項13に記載のセル。
【請求項26】
該活性第一ハライド塩と該第二ハライド塩が共通ハロゲンアニオンを有するものである、請求項25に記載のセル。
【請求項27】
該活性第一ハライド塩と該第二ハライド塩が共通ハロゲンアニオンを有さないものである、請求項25に記載のセル。
【請求項28】
該第二塩がリチウムハライドであり、該活性第一塩がアンモニウムハライドである、請求項13に記載のセル。
【請求項29】
該第二塩が塩化リチウムであり、該活性第一塩が塩化アンモニウムである、請求項13に記載のセル。
【請求項30】
該第二塩が臭化リチウムであり、該陰極液が更に塩化リチウムから成るものである、請求項13に記載のセル。
【請求項31】
該第二塩が硝酸リチウムであり、該活性第一塩が硝酸アンモニウムである、請求項13に記載のセル。
【請求項32】
該陰極液の初回の放電以前のハロゲン濃度が少なくとも6モルでありリチウム濃度が少なくとも2モルである、請求項13に記載のセル。
【請求項33】
該陰極液の初回の放電以前の硝酸塩濃度が少なくとも6モルでありリチウム濃度が少なくとも2モルである、請求項13に記載のセル。
【請求項34】
該陰極液の初回の放電以前の平衡相対湿度が、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、及び10%以下から成るグループから選ばれる値である、請求項1に記載のセル。
【請求項35】
該陰極液が飽和した塩溶液である、請求項1に記載のセル。
【請求項36】
該飽和陰極液の第一活性塩がハライドと硝酸塩から成るグループから選ばれるものである、請求項35に記載のセル。
【請求項37】
該飽和陰極液の第一活性塩がアンモニウムハライド、硝酸アンモニウム、及びリチウム以外の金属のハライドから成るグループから選ばれるものである、請求項35に記載のセル。
【請求項38】
該飽和陰極液の第一活性塩がNH4Br,NH4Cl,NH4I、NH4NO3,NH4CNS及びAlCl3から成るグループから選ばれるものである、請求項35に記載のセル。
【請求項39】
該陰極液が該第一活性塩で飽和したものである、請求項35に記載のセル。
【請求項40】
該飽和陰極液が更に第二塩から成るものである、請求項35に記載のセル。
【請求項41】
該第二塩が塩化物、臭化物、及び沃化物から成るグループから選ばれるものである、請求項40に記載のセル。
【請求項42】
該第二塩がリチウム塩である、請求項41に記載のセル。
【請求項43】
該第二塩が塩化リチウム、臭化リチウム、及び沃化リチウムから成るグループから選ばれるものである、請求項42に記載のセル。
【請求項44】
該陰極液が該第二塩で飽和したものである、請求項40に記載のセル。
【請求項45】
該飽和陰極液の初回の放電以前の平衡相対湿度が、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、及び10%以下から成るグループから選ばれる値である、請求項35に記載のセル。
【請求項46】
該第一量の水分はセルが既定放電容量を配達するのを可能にするのに十分でないものである、請求項45に記載のセル。
【請求項47】
放電産物の少なくとも一つは該活性塩のアニオンから成るものである、請求項1に記載のセル。
【請求項48】
該放電産物のアニオンがハロゲンと硝酸塩とから成るグループから選ばれるものである、請求項47に記載のセル。
【請求項49】
該陰極液は放電産物で飽和し、該放電産物が該陰極液の外部へ固体産物として沈殿するものである、請求項47に記載のセル。
【請求項50】
該固体放電産物が更にリチウムから成るものである、請求項49に記載のセル。
【請求項51】
該陰極液は少なくとも該リチウム化合物で飽和している、請求項50に記載のセル。
【請求項52】
該陰極液は初回の放電の後平衡相対湿度が50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、15%以下、及び10%以下から成るグループから選ばれる値に到達するものである、請求項51記載のセル。
【請求項53】
水酸化リチウムが放電産物として形成されない、請求項1記載のセル。
【請求項54】
該セルは、溶解された活性塩種が放電反応に試薬として関与する第一段階を通じて放電し、叉、溶解された活性塩種が放電に試薬として関与せず、水分がその間消費される試薬である第二段階を通じてセルは放電するものである、請求項1記載のバッテリセル。
【請求項55】
該第一活性塩がアンモニウム成分から成るものである、請求項2に記載のバッテリセル。
【請求項56】
該第一活性塩がアンモニウム塩である、請求項55に記載のバッテリセル。
【請求項57】
該アンモニウム第一活性塩がNH4Br,NH4Cl,NH4I、 NH4NO3,NH4CNSからなるグループから選ばれるものである、請求項56に記載のバッテリセル。
【請求項58】
該アンモニウム第一活性塩の濃度が少なくとも2Mである、請求項56に記載のバッテリセル。
【請求項59】
該アンモニウム第一活性塩の濃度が約4Mである、請求項56に記載のバッテリセル。
【請求項60】
バッテリセルであって、
第一面と第二面を有するリチウム陽極と該陽極の少なくとも第一面の上にある保護膜構成とから成る保護付き陽極と、
初回放電の前分子酸素を還元するための陰極と水及びその中に溶解された塩とから成る水性陰極液となら成る陰極コンパートメントとから成り、
該塩の濃度は初回の放電前開回路の状態での貯蔵の間の抵抗増加を防止するのに十分であり、
該保護膜構成が該電極と接触するアルカリ金属陽極と化学的適合性をもつ第一膜面及び該陰極コンパートメントの成分に事実上不浸透性であり化学的適合性をもつ第二膜面を提供するように構成された一個以上の物質から成るものである、バッテリセル。
【請求項61】
該塩がリチウム塩である、請求項60に記載のバッテリセル。
【請求項62】
該塩がリチウムハライド塩である、請求項60に記載のバッテリセル。
【請求項63】
該塩が塩化リチウム、臭化リチウム、沃化リチウム、硝酸リチウムから成るグループから選ばれるものである、請求項60に記載のバッテリセル。
【請求項64】
該リチウム塩のリチウムイオン濃度が該陰極液の中で少なくとも2モルである、請求項61に記載のバッテリセル。
【請求項65】
該陰極液のリチウムイオン濃度が少なくとも2モルである、請求項61に記載のバッテリセル。
【請求項66】
バッテリセルであって、
第一面と第二面を有するリチウム陽極と該陽極の少なくとも第一面の上にある保護膜構成とから成る保護付き陽極と、
初回放電の前、分子酸素を還元するための陰極、水性陰極液、及び水溶性であって該水性陰極液と接触する固体相活性物質とから成るなら陰極コンパートメントとから成り、
該保護膜構成が該電極と接触するアルカリ金属陽極と化学的適合性をもつ第一膜面及び該陰極コンパートメントの成分に事実上不浸透性であり化学的適合性をもつ第二膜面を提供するように構成された一個以上の物質から成るものである
バッテリセル。
【請求項67】
該固体相活性物質が固体相活性塩である、請求項66に記載のセル。
【請求項68】
該陰極液に接触する該固体相活性塩が機能的にその中に溶解するものである、請求項67に記載のセル。
【請求項69】
該陰極液への該固体相活性塩の機能的溶解により、セル反応に試薬として関与する溶解した活性電解質種を生成するものである、請求項67に記載のセル。
【請求項70】
該固体相活性塩が吸湿性である、請求項66に記載のセル。
【請求項71】
該固体相活性塩が潮解性である、請求項66に記載のセル。
【請求項72】
該固体相活性塩物質がハロゲンから成るものである、請求項66に記載のセル。
【請求項73】
該固体相活性塩が硝酸塩から成るものである、請求項66に記載のセル。
【請求項74】
該固体相活性塩がアンモニウムから成るものである、請求項66に記載のセル。
【請求項75】
該固体相活性塩がリチウム以外の金属から成り、該固体物質が該陰極液の水分の中に機能的に溶解するものである、請求項66に記載のセル。
【請求項76】
該固体相活性塩がハライドである、請求項75に記載のセル。
【請求項77】
該ハライドがアンモニウムハライドである、請求項75に記載のセル。
【請求項78】
該固体相活性塩が硝酸塩である、請求項75に記載のセル。
【請求項79】
固体相活性塩がリチウム以外の金属のハライドである、請求項11に記載のセル。
【請求項80】
該固体相活性塩が NH4Cl,NH4Br,AlCl3,NH4NO3,NH4CNS、MgCl2から成るグループから選ばれるものである、請求項75に記載のセル。
【請求項81】
該陰極液が該塩で飽和されているものである、請求項66に記載のセル。
【請求項82】
該塩が活性塩である、請求項66に記載のセル。
【請求項83】
該塩が不活性塩である、請求項66に記載のセル。
【請求項84】
該塩がリチウム塩である、請求項66に記載のセル。
【請求項85】
該陰極コンパートメントが該陰極と該保護付き陽極との間に位置される貯蔵構造体から更に成るものである、請求項66に記載のセル。
【請求項86】
該貯蔵構造体が該陰極液と化学的に適合性であり該陰極と化学的及び電気化学的に適合性である多孔性固体構成から成るものである、請求項66に記載のセル。
【請求項87】
該貯蔵構造体構成の表面又は孔構成の少なくとも一部が固体相活性物質で実質上覆われ、又は固体相活性物質を含み、及び/又は固体相活性物質と接触するものである、請求項66に記載のセル。
【請求項88】
該固体相活性物質は該固体多孔性貯蔵構造体の孔構成の少なくとも一部に存在又は含まれ、該固体相活性物質が該多孔性構成に接触するものである、請求項87に記載のセル。
【請求項89】
該水性陰極液は実質上該陰極コンパートメントが外部に露出した後その場所で形成されるものであり、周囲の空気の湿気が該陰極コンパートメントに入って該固体相活性物質を溶解して水性陰極液を形成するものである、請求項66に記載のセル。
【請求項90】
該陰極コンパートメントを周囲の空気に露出する前、該コンパートメントは固体リチウム支持電解質塩から更に成るものである、請求項66に記載のセル。
【請求項91】
該水性陰極液は実質上該陰極コンパートメントが外部に露出した後その場所で形成されるものであり、周囲の空気の湿気が該陰極コンパートメントに入って該固体リチウム支持塩を溶解して水性陰極液を形成するものである、請求項90に記載のセル。
【請求項92】
該活性固体相活性物質はコンパクトの形状である、請求項66に記載のセル。
【請求項93】
該活性固体相活性物質コンパクトは更に第二成分物質から成るものである、請求項92に記載のセル。
【請求項94】
該第二成分物質が無機粉末から成るものである、請求項93に記載のセル。
【請求項95】
該無機粉末がシリカ、アルミナ、及びチタニアから成るグループから選ばれるものである、請求項94に記載のセル。
【請求項96】
該コンパクトが多孔性である、請求項92に記載のセル。
【請求項97】
該コンパクトの孔が陰極液を含むものである、請求項96に記載のセル。
【請求項98】
該陰極コンパートメントが空気に開放するものである、請求項66に記載のセル。
【請求項99】
該活性固体物質が空気陰極に接触する、請求項66に記載のセル。
【請求項100】
該セルの初回の活性化以前、貯蔵構造体が固体相活性物資から成り、実質的に陰極液は無く、該陰極液は活性化でその場所で形成されるものである、請求項66に記載のセル。
【請求項101】
該貯蔵構造体は実質上空であり、活性固体物質はセル組み立て前又はセル組み立後で初回のセル放電前に該貯蔵構造体へ導入されるものである、請求項66に記載のセル。
【請求項102】
セルの活性化以前、該コンパートメントには実質上液体水分が空である、請求項66に記載のセル。
【請求項103】
該活性固体物質がマイクロカプセル型である、請求項102に記載のセル。
【請求項104】
該陰極コンパートメントが更にヒドロゲルから成るものである、請求項66に記載のセル。
【請求項105】
該陰極が多孔質固体構成から成るものである、請求項66に記載のセル。
【請求項106】
該活性固体物質がセルの製造の間に陰極コンパートメントに統合され、初回の放電の後、有意義的な量の該活性固体相物質が溶解しない固体として該陰極コンパートメントの中に残るものである、請求項66に記載のセル。
【請求項107】
セルがその放電容量の或る百分比を配達した後、該活性固体相物質の或る量が陰極コンパートメントの中に溶解しない固体として残り、この百分比がこの規定放電容量の25%又は50%又は75%又は90%から成るグループから選ばれるものである、請求項106に記載のセル。
【請求項108】
セルの活性化以前、活性固体相物質の陰極液に溶解した活性塩のモル比が1以上、2以上及び10以上から成るグループから選ばれる値である、請求項84に記載のセル。
【請求項109】
上記モル比の値が2から3、3から4、4から5、5から6、6から7、7から8、8から9、9から10から成るグループから選ばれる範囲の中にある、請求項84に記載のセル。
【請求項110】
バッテリセルを作成する方法であって、
第一面と第二面を有するリチウム金属の陽極と該陽極の少なくとも第一面の上にある保護膜構成とから成る保護付き陽極と、
初回の放電以前、分子酸素を還元するための陰極、水とそれに溶解した塩とから成る水性陰極液、及び固体相活性物質とから成るなら陰極コンパートメントとを準備する工程から成り、
該保護膜構成が該電極と接触するアルカリ金属陽極と化学的適合性をもつ第一膜面及び該陰極コンパートメントの成分に事実上不浸透性であり化学的適合性をもつ第二膜面を提供するように構成された一個以上の物質から成るものである、方法。
【請求項111】
バッテリセルであって、
第一面と第二面を有するリチウム金属の陽極と該陽極の少なくとも第一面の上にある保護膜構成とから成る保護付き陽極と、
分子酸素を還元するための陰極、水性陰極液、及び該保護付き陽極と該陰極の間に位置する多孔性無機固体貯蔵構造体構成とから成るなら陰極コンパートメントとから成り、
該多孔性無機固体の一部は導電性であり、
該陰極と該陽極の間のイオン交通を十分に維持するに十分な陰極液が貯蔵構造体の孔に存在し、
該保護膜構成が該電極と接触するアルカリ金属陽極と化学的適合性をもつ第一膜面及び該陰極コンパートメントの成分に事実上不浸透性であり化学的適合性をもつ第二膜面を提供するように構成された一個以上の物質から成るものである、バッテリセル。
【請求項112】
多孔性無機固体が酸化物である、 請求項111に記載のセル。
【請求項113】
該酸化物が金属酸化物である、 請求項112に記載のセル。
【請求項114】
該多孔性固体が遷移金属酸化物である、 請求項112に記載のセル。
【請求項115】
該多孔性無機固体の一部が電子的に絶縁体である、 請求項111に記載のセル。
【請求項116】
該多孔性無機固体の一部が電子的に伝導性である、 請求項111に記載のセル。
【請求項117】
該多孔性無機固体の電子導電率が保護付き陽極から陰極へと変化するものである、請求項111に記載のセル。
【請求項118】
該多孔性固体の一区域が電子的絶縁体であり、異なる区域が電子的導電性である、請求項111に記載のセル。
【請求項119】
該保護膜に接触する多孔性構成の区域が電子的絶縁体であり、該陰極に接触する多孔性構成の区域が電子的導電性である、請求項118に記載のセル。
【請求項120】
該多孔性固体が均一的な構成である、請求項111に記載のセル。
【請求項121】
該多孔性固体が非均一的な構成である、請求項111に記載のセル。
【請求項122】
該金属酸化物がAl23,Y23及びMgOから成るグループから選ばれるものである、請求項111に記載のセル。
【請求項123】
該多孔性貯蔵構造体が保護膜と陰極の一方、又は他方、又は両方と密接に接触し、膜と陰極に接触する多孔性貯蔵構造体が化学的安定性であり、電気化学的に不活性である、請求項111に記載のセル。
【請求項124】
該多孔性貯蔵構造体構成が陰極液と接触して化学的に不活性である、請求項111に記載のセル。
【請求項125】
該多孔性貯蔵構造体構成が陰極と保護膜と接触して化学的に安定である、請求項113に記載のセル。
【請求項126】
該多孔性構成がフェルト、布、及びメッシュから成るグループから選ばれる形態のものである、請求項111に記載のセル。
【請求項127】
バッテリセルであって、
第一面と第二面を有するリチウム金属陽極と該陽極の少なくとも第一面の上にある保護膜構成とから成る保護付き陽極と、
分子酸素を還元するための陰極、活性水性陰極液、及び固体多孔性貯蔵構造体構成とから成るなら陰極コンパートメントとから成り、
該保護膜構成が該電極と接触するアルカリ金属陽極と化学的適合性をもつ第一膜面及び該陰極コンパートメントの成分に事実上不浸透性であり化学的適合性をもつ第二膜面を提供するように構成された一個以上の物質から成るものであり、
該固体多孔性貯蔵構造体構成が炭素質多孔性構成から成るものである、バッテリセル。
【請求項128】
該炭素質多孔性構成がフェルト、布、網状構成、泡体、紙類、不織物、及び紙から成るグループから選ばれる形態のものである、請求項127に記載のセル。
【請求項129】
該炭素質多孔性構成が電子的に導通性である、請求項127に記載のセル。
【請求項130】
該多孔性構成の電子導通率が空気陰極のそれ以下である、請求項127に記載のセル。
【請求項131】
バッテリセルであって、
第一面と第二面を有するリチウム金属の陽極と該陽極の少なくとも第一面の上にある保護膜構成とから成る保護付き陽極と、
分子酸素を還元するための陰極、水性陰極液、及び固体多孔性貯蔵構造体構成とから成るなら陰極コンパートメントとから成り、
該保護膜構成が該電極と接触するアルカリ金属陽極と化学的適合性をもつ第一膜面及び該陰極コンパートメントの成分に事実上不浸透性であり化学的適合性をもつ第二膜面を提供するように構成された一個以上の物質から成り、
該固体多孔性貯蔵構造体構成がセル放電の間膨張するものである、バッテリセル。
【請求項132】
該固体多孔性貯蔵構造体構成が周囲の空気から水分を吸収して該陰極液と適合するように膨張するものである、請求項131に記載のセル。
【請求項133】
該固体多孔性貯蔵構造体が放電で膨張するように構成された弾性的重合体多孔性構成である、又はそれから成るものである、請求項131に記載のセル。
【請求項134】
バッテリセルであって、
第一面と第二面を有するリチウム陽極と該陽極の少なくとも第一面の上にある保護膜構成とから成る保護付き陽極と、
分子酸素を還元するための陰極、及び活性水性陰極液とから成るなら陰極コンパートメントとから成り、
該保護膜構成が該電極と接触するアルカリ金属陽極と化学的適合性をもつ第一膜面及び該陰極コンパートメントの成分に事実上不浸透性であり化学的適合性をもつ第二膜面を提供するように構成された一個以上の物質から成り、
該陰極はセルの運行が放電の実質上完全な完了以前に中絶されないため、不溶解の放電産物を収容するように構成された孔構成を有するものである、バッテリセル。
【請求項135】
該陰極が電流コレクタと活性層から成り周囲の空気に隣接するる第一部分層、及び保護層に隣接する開口多孔性構成を有する第二部分層とから成るものである、請求項134に記載のセル。
【請求項136】
該電流コレクタは水性陰極液と接触して腐食しない物質である、請求項135に記載のセル。
【請求項137】
該電流コレクタはチタンである、請求項136に記載のセル。
【請求項138】
該第二部分層が多孔性炭素構成から成るものである、請求項138に記載のセル。
【請求項139】
該第二部分層が多孔性炭素質固体である、請求項134に記載のセル。
【請求項140】
該陰極が放電で厚さの方向に膨張するものである、請求項134に記載のセル。
【請求項141】
該陰極が完全放電で厚さが少なくとも二倍に膨張するものである、請求項140に記載のセル。
【請求項142】
バッテリッセルを製造する方法であって、請求項134に記載のセルを準備する工程から成る、方法。
【請求項143】
バッテリッセルを製造する方法であって、請求項127に記載のセルを準備する工程から成る、方法。
【請求項144】
バッテリセルであって、
第一面と第二面を有するリチウム金属の陽極と該陽極の少なくとも第一面の上にある保護膜構成とから成る保護付き陽極と、
分子酸素を還元するための陰極、水性陰極液、及びヒドロゲル貯蔵構造体構成とから成るなら陰極コンパートメントとから成り、
該保護膜構成が該電極と接触するアルカリ金属陽極と化学的適合性をもつ第一膜面及び該陰極コンパートメントの成分に事実上不浸透性であり化学的適合性をもつ第二膜面を提供するように構成された一個以上の物質から成るものである、バッテリセル。
【請求項145】
該ヒドロゲル構成が水和性重合体から成るものである、請求項135に記載のセル。
【請求項146】
該ヒドロゲル構成が装置運行の間周囲の空気から湿気を吸収するものである、請求項144に記載のセル。
【請求項147】
該ヒドロゲル構成が固体相活性塩から成るものである、請求項144に記載のセル。
【請求項148】
該ヒドロゲル構成が水性陰極液から成るものである、請求項144に記載のセル。
【請求項149】
該ヒドロゲル構成が放電の固体産物を収容するものである、請求項144に記載のセル。
【請求項150】
該ヒドロゲル構成が陰極液を保持し、周囲の空気から湿気を吸収して膨張するものである、請求項144に記載のセル。
【請求項151】
該ヒドロゲル構成が天然重合体である、又は天然重合体から成るものである、請求項144に記載のセル。
【請求項152】
該ヒドロゲル構成の固体相一成分が合成重合体である、請求項144に記載のセル。
【請求項153】
該ヒドロゲル構成が物理的又は化学的ゲルである、請求項144に記載のセル。
【請求項154】
該ヒドロゲル構成が二種以上のヒドロゲル構成物から成る多成分ヒドロゲル構成である、請求項144に記載のセル。
【請求項155】
該ヒドロゲル構成がバルクヒドロゲルとは異なる構成物を有するヒドロゲルコンタクト層から更に成るものである、請求項144に記載のセル。
【請求項156】
該貯蔵構造体がヒドロゲルである、請求項144に記載のセル。
【請求項157】
該ヒドロゲル構成は周囲の空気からの水分が陰極コンパートメントに吸収されてその場所で形成されるものである、請求項144に記載のセル。
【請求項158】
該ヒドロゲル構成は陰極液を保持し、放電と共にセル反応で生成された水分子によって膨張するものである、請求項144に記載のセル。
【請求項159】
該ヒドロゲル構成は陽極に隣接する第一ヒドロゲル層と陰極に隣接する他の第二ヒドロゲル層とから成る多層である、請求項144に記載のセル。
【請求項160】
バッテリッセルを製造する方法であって、請求項144に記載のセルを準備する工程から成る、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−524611(P2011−524611A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513742(P2011−513742)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/047278
【国際公開番号】WO2010/005686
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(500163551)ポリプラス バッテリー カンパニー (5)
【氏名又は名称原語表記】PolyPlus Battery Company
【Fターム(参考)】