説明

水性塗料組成物

低汚染化剤の保存を簡素化することができ、低汚染化剤をエマルション樹脂塗料と混合した場合の塗料安定性に優れ、しかも耐汚染性にも優れた水性塗料組成物を提供する。pHが4.0以上10.0以下である合成樹脂エマルション(A)、及び粒子径が1〜200nmであり、pHが5.0以上8.5未満である中性シリカゾル(B)を必須成分とし、合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、中性シリカゾル(B)成分を固形分換算で0.1〜50重量部含む水性塗料組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐汚染性を有する水性塗料組成物に関するものである。本発明組成物は、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成型板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用することができ、主に建築物、土木構造物等の躯体保護に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、建築・土木構造物に使用する塗料分野においては有機溶剤を溶媒とする溶剤型塗料から、水を溶媒とする水性塗料への転換が図られつつある。これは、塗装作業者や居住者の健康被害を低減するためや、大気環境汚染を低減する目的で行われているものであり、年々水性化が進んできている。
【0003】
公知の水性塗料の中には、耐候性、耐水性などに関しては溶剤型塗料と同等レベルの性能を有するものもある。しかし、特に汚染性に着目してみると、低汚染型と唱われる水性塗料でさえ、溶剤型の低汚染型塗料のレベルには遠く及ばないのが現状である。
【0004】
また、水性塗料による塗膜は一般的に溶剤型の塗料による塗膜に比べて、塗膜硬度が低く、汚染物質が付着した時の染み込み性が高い傾向にある。従って、一度汚染物質が付着すると、塗膜表面からその汚れを除去することは困難な場合が多い。
【0005】
建築・土木構造物に使用することができる溶剤型の低汚染型塗料として、塗料中にオルガノシリケート及び/又はその縮合物(以下「オルガノシリケート等」という)を配合する技術が開示されている(特許文献1)。特許文献1の技術は、有機溶剤系の塗料中にオルガノシリケート等を配合し、塗膜形成後に酸処理することによって塗膜表面を親水性にし、油性の汚染物質を付着しにくくし、さらに付着した汚染物質を降雨等の水滴とともに洗い流してしまう性能を有することを特徴としている。
【0006】
特許文献1に記載の塗料において使用されるオルガノシリケート等は、水との反応性を有するアルコキシシリル基を有しており、水系塗料に添加すると、オルガノシリケート等の加水分解縮合反応を制御することができないため、短時間で急激に塗料粘度が上昇し、さらには塗料全体がゲル化してしまい、塗装作業に支障をきたしてしまうという問題や、水性塗料とオルガノシリケート等との相溶性が悪く、混合後に凝集物を生じるという問題も有している。特に、一般につや有り塗料と呼ばれる高光沢の水性塗料においては、この相溶性の悪さによって、表面光沢が極端に低下してしまうという欠点もある。さらに、たとえ混合後直ちに塗装を行い、塗膜を形成した場合においても、十分な耐汚染性を得ることができないという欠点がある。特に、塗膜形成初期段階においては、オルガノシリケート等に起因する粘着性によって、却って汚染物質が付着しやすくなるという問題が発生してしまう。
【0007】
特許文献2には、合成樹脂エマルション、及び天然石粉砕物等の骨材を含む水性塗料において、その耐汚染性を改善する目的で、低汚染化剤としてオルガノシリケート等を混合することが記載されているが、この塗料でも上述の特許文献1と同様の問題を有している。特に、特許文献2の塗料では、塗膜の鮮映性が損われるという問題もある。
【0008】
係る問題を解決する水性塗料として、ポリオキシアルキレン基を有するアルコキシシラン縮合物を低汚染化剤として使用する塗料が公知である(特許文献3)。特許文献3に記載の水性低汚染型塗料は、ポリオキシアルキレン基を有するアルコキシシラン縮合物とエマルション樹脂塗料の2液型の塗料であり、アルコキシシラン縮合物のエマルション樹脂塗料との相溶性が改善された水性低汚染型塗料である。
【特許文献1】WO94/06870号公報
【特許文献2】特開2003−128998号公報
【特許文献3】WO99/05228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3に記載の水性低汚染型塗料は、低汚染化剤にポリオキシアルキレン基を付与することによってアルコキシシラン縮合物とエマルション塗料との相溶性が改善されており、形成される塗膜は光沢が比較的良好であり、耐汚染性も有する。
【0010】
しかし、特許文献3の水性低汚染型塗料においてもポリオキシアルキレン基含有アルコキシシラン縮合物は、水との反応性を有するアルコキシシリル基が残存しており、加水分解縮合反応性は大きく変化していない。このため、特許文献3の水性低汚染型塗料を市場で流通させるにはエマルション樹脂塗料と低汚染化剤であるアルコキシシラン縮合物とを別成分とし、塗装時に混合する2成分タイプの塗料としなければならず、水との反応性を有するアルコキシシラン縮合物は、水分を吸収しないように特別の保存形態とすることが必要であり、改善が求められていた。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、低汚染化剤の保存を簡素化することができ、低汚染化剤をエマルション樹脂塗料と混合した場合の塗料安定性に優れ、しかも耐汚染性にも優れた水性塗料組成物を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、これらの課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の合成樹脂エマルションと中性シリカゾルを必須成分とする水性塗料組成物が安定性に優れ、しかも耐汚染性にも優れた水性塗料組成物であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の水性塗料組成物に関するものである。
1.pHが4.0以上10.0以下である合成樹脂エマルション(A)、及び粒子径が1〜200nmであり、pHが5.0以上8.5未満である中性シリカゾル(B)を必須成分とし、前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記中性シリカゾル(B)成分を固形分換算で0.1〜50重量部含むことを特徴とする水性塗料組成物。
2.さらに粒子径が0.05mm以上5mm以下の骨材(E)を、前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、100〜4000重量部含むことを特徴とする上記1.の水性塗料組成物。
3.さらに、着色顔料(C)、体質顔料(D)及び粒子径が0.05mm以上5mm以下の骨材(E)を、前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記着色顔料(C)を1〜300重量部、前記体質顔料(D)を10〜1000重量部、前記骨材(E)を10〜2000重量部含むことを特徴とする上記1.の水性塗料組成物。
4.さらに、少なくとも1種以上の着色塗料(F)が粒状に分散されていることを特徴とする上記1.の水性塗料組成物。
5.前記中性シリカゾルは、疎水化処理が施されたものであることを特徴とする上記1.〜4.のいずれかに記載の水性塗料組成物。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明の水性塗料組成物では、塗料粘度の上昇が抑制されており、塗装作業における取扱いが容易であり、塗装作業の効率を高めることができる。また、つや有り塗料に適用した場合には、光沢値の高い塗膜を得ることができる。
【0015】
さらに、本発明の水性塗料組成物により形成された塗膜は、優れた耐汚染性を発揮するものである。特に、塗膜形成初期段階においても汚染物質が付着しにくい、という特徴を有する。
【0016】
本発明によれば、低汚染化剤である(B)成分とエマルション樹脂塗料とからなる2成分型の塗料とした場合であっても低汚染化剤(B)の保存形態を簡素化することができ、さらには(A)成分と(B)成分とを予め混合した1液型低汚染塗料を設計することも可能である。
【0017】
本発明の水性塗料組成物は、クリヤー塗料、つや有り塗料、つや消し塗料のほか、自然石調塗材、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、多彩模様塗料等に適用することもできる。即ち、上記2.の発明によれば、塗料の安定性と塗膜の耐汚染性に優れた自然石調塗材が得られ、上記3.の発明によれば、塗料の安定性と塗膜の耐汚染性に優れた砂壁状、ゆず肌状、繊維壁状、スタッコ状、さざ波状等の各種テクスチャーを与える薄付け仕上塗材ないし厚付け仕上塗材が得られ、上記4.の発明によれば、塗料の安定性と塗膜の耐汚染性に優れた多彩模様塗料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<(A)成分>
本発明を構成する(A)成分は、pHが4.0以上10.0以下の合成樹脂エマルション(以下「(A)成分」という)である。この(A)成分は結合剤として作用するものである。
【0019】
(A)成分のpHは通常4.0以上10.0以下、好ましくは5.0以上9.5以下、より好ましくは6.0以上9.0以下、さらに好ましくは7.0以上8.5以下である。このようなpHの(A)成分を使用することにより、(B)成分を混合しても良好な塗料安定性を確保することができる。pHが上記範囲外である場合は、(A)成分と後述(B)成分とを混合した際に、凝集物が発生したり、短時間で塗料粘度が上昇したりする。極端な場合には、塗料がゲル化してしまうおそれもある。
【0020】
(A)成分としては、pHが上記範囲内であれば、各種合成樹脂エマルションを使用することができる。具体的には、例えば、アクリル樹脂系エマルション、アクリルシリコン樹脂系エマルション、フッ素樹脂系エマルション、ウレタン樹脂系エマルション等が挙げられる。
【0021】
〔アクリル樹脂系エマルション〕
アクリル樹脂系エマルションとしては、アクリル系単量体、およびアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
【0022】
アクリル系単量体は、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート(メチルアクリレートまたはメチルメタアクリレートのいずれかであることを示す。以下において同じ。)、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド含有(メタ)アクリル系単量体;アクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体等を例示できる。
【0023】
アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有ビニル単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレンなどの塩素含有単量体;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどの水酸基含有アルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテルジエチレングリコールモノアリルエーテルなどのアルキレングリコールモノアリルエーテル;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテルなどのアリルエーテル等を例示できる。
【0024】
合成樹脂エマルションとして、アクリル樹脂系エマルションを用いた場合は、耐久性、コスト面、樹脂設計の自由度の高さなどが優れている点で有利である。
【0025】
〔アクリルシリコン樹脂系エマルション〕
アクリルシリコン樹脂系エマルションとしては、珪素含有アクリル系単量体、および珪素含有アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
【0026】
珪素含有アクリル系単量体としては、特に限定されないが、たとえば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの加水分解性シリル基含有ビニル系単量体等を例示できる。
【0027】
珪素含有アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、たとえば、前述のアクリル樹脂系エマルションで使用される単量体等を、特に限定なく使用できる。
【0028】
合成樹脂エマルションとして、アクリルシリコン樹脂系エマルションを用いた場合は、耐候性、耐黄変性、耐久性、耐薬品性、耐汚染性などが優れている点で有利である。
【0029】
〔フッ素樹脂系エマルション〕
フッ素樹脂系エマルションとしては、フッ素含有単量体、およびフッ素含有単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用できる。
【0030】
フッ素含有単量体としては、たとえば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのフルオロオレフィン;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリレート等が例示される。
【0031】
フッ素含有単量体と共重合可能な他の単量体としては、たとえば、前述のアクリル樹脂系エマルションで使用される単量体等を、特に限定なく使用できる。
【0032】
合成樹脂エマルションとして、フッ素樹脂系エマルションを用いた場合は、耐候性、耐黄変性、耐久性、耐薬品性、耐汚染性などが優れている点で有利である。
【0033】
〔ウレタン樹脂系エマルション〕
ウレタン樹脂系エマルションとは、塗膜形成後の塗膜中にウレタン結合を持つようになるエマルションを総称する。即ち、塗膜形成前からウレタン結合を有するものでもよいし、塗膜形成後の反応によりウレタン架橋を形成するものでもよい。エマルションの形態としては、1液型でもよいし、2液型であってもよい。
【0034】
1液型としては、ウレタン結合を有する重合性単量体を他の共重合可能な単量体と共重合する方法、ウレタン結合を有する水性樹脂の存在下に重合性不飽和単量体を重合する方法、反応基を有する水性ウレタン樹脂と、該反応基と反応することのできる基を含むエマルションとを混合する方法等が挙げられる。
【0035】
2液型としては、水分散性イソシアネートと水酸基含有エマルションとの組み合わせ等が挙げられる。
【0036】
合成樹脂エマルションとして、ウレタン樹脂系エマルションを用いた場合は、耐久性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性などが優れている点で有利である。
【0037】
〔その他の架橋反応型エマルション〕
合成樹脂エマルションの中で、前記の水酸基とイソシアネート化合物による架橋反応以外に、カルボニル基とヒドラジド基、カルボン酸と金属イオン、エポキシ基とアミン、エポキシ基とカルボキシル基、カルボン酸とアジリジン、カルボン酸とカルボジイミド、カルボン酸とオキサゾリン、アセトアセテートとケチミンなどを利用した架橋反応を形成するエマルションを使用することも可能である。架橋反応型エマルションは、1液タイプであっても、2成分以上の多成分タイプであってもよい。
【0038】
合成樹脂エマルションとして、架橋反応型エマルションを用いた場合は、耐久性、耐溶剤性、耐薬品性、耐汚染性などが優れており、有利である。
【0039】
(A)成分は、上述の条件を満たす限り、公知の方法で製造することができる。例えば、水性媒体中での乳化重合、懸濁重合、分散重合、溶液重合、酸化還元重合等で製造することができ、必要に応じ、多段階重合で製造することもできる。この際に、必要に応じ、乳化剤、開始剤、分散剤、連鎖移動剤、緩衝剤等またはその他の添加剤等を適宜使用することができる。
【0040】
<(B)成分>
本発明における(B)成分は、粒子径が1〜200nmであり、pHが5.0以上8.5未満である中性シリカゾル(以下「(B)成分」という)である。
【0041】
(B)成分を構成する粒子は、シリケートの加水分解縮合によって形成されるものであり、シリカを主成分とするため硬度が高く、かつその粒子表面にシラノール基(Si−OH)を有する化合物である。本発明では、このような(B)成分粒子の硬度と表面官能基の相乗的作用によって、優れた耐汚染性を発揮することができる。その具体的な作用機構は明らかではないが、塗膜形成時に(B)成分が塗膜表面に配向し、塗膜表面の硬度と親水性を高めているものと推測される。
【0042】
(B)成分の粒子径は、1次粒子径として通常1〜200nm、好ましくは5〜100nm、より好ましくは10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。粒子径が大きすぎる場合、クリヤー塗料においては塗膜の透明性が損われ、つや有り塗料においては光沢が不十分となり、自然石調塗材等では塗膜の鮮映性が損われる等、形成塗膜の外観に悪影響を及ぼすおそれがある。粒子径が小さすぎる場合は、耐汚染性において十分な効果が得られないおそれがある。(B)成分の平均1次粒子径は、5〜100nm、より好ましくは10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。本発明では、平均1次粒子径が異なる2種以上の中性シリカゾル(B)を使用することによって、耐汚染効果を高めることもできる。なお、(B)成分の粒子径は、光散乱法によって測定される値である。
【0043】
(B)成分のpHは5.0以上8.5未満であることが必要であり、6.0以上8.5未満であることが好ましく、6.5以上8.0以下であることがより好ましく、7.0以上8.0以下であることがさらに好ましい。(B)成分がこのようなpHに調製されたものであれば、その粒子表面のシラノール基によって、優れた耐汚染効果が発揮される。pHが上記範囲外である場合は、耐汚染性が不十分となり、また耐水性、耐候性等の点においても不利となる。
【0044】
本発明における(B)成分と類似するものとしてコロイダルシリカが挙げられる。通常のコロイダルシリカは、pHが2〜4の酸性タイプ、pHが9〜11のアルカリ性タイプに大別される。これらコロイダルシリカの粒子表面では、いずれもSi−OHが解離した状態となっている。具体的に、酸性タイプのコロイダルシリカの粒子表面はSi−O・Hとなっている。アルカリ性タイプのコロイダルシリカは、粒子表面がSi−O・NであるNa型と、Si−O・NHであるNH型に分類される。
【0045】
これに対し、本発明における(B)成分は、粒子表面においてSi−OHの大半が解離せずに残存した状態となっているものであり、上記コロイダルシリカとは別異の化合物である。本発明では、この(B)成分の粒子表面特性によって、優れた耐汚染性能が発揮されるものと推測される。また本発明では、(B)成分の粒子表面特性により、耐水性、耐白華性等の塗膜物性において、優れた性能を発揮することも可能となる。
【0046】
(B)成分としては、電気伝導度が3mS/cm以下(好ましくは2mS/cm以下、さらに好ましくは1mS/cm以下)のものが好適である。なお、ここに言う電気伝導度は、「Model SC82パーソナルSCメータSC 8221−J」(横河電機社製)を用いて測定される値である(測定温度25℃)。
【0047】
このような(B)成分を使用することによって、形成塗膜の耐水性、耐汚染性等をより高めることができる。
【0048】
(B)成分は、シリケート化合物を原料として製造することができる。シリケート化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等、あるいはこれらの縮合物等が挙げられる。この他、ジメトキシジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物を併せて使用することもできる。製造時には触媒等を使用することもできる。また、製造過程あるいは製造後に、触媒等に含まれる金属をイオン交換処理等によって除去することもできる。
【0049】
(B)成分の媒体としては、水及び/または水溶性溶剤が使用できる。水溶性溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。本発明では、特に媒体が水のみからなることが望ましい。このような(B)成分を使用することにより、塗料の低揮発性有機溶剤(低VOC)化を図ることができる。また、(A)成分と混合した際の凝集物発生を抑制することもできる。
【0050】
(B)成分の固形分は、通常5〜50重量%であり、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜30重量%である。(B)成分の固形分がこのような範囲内であれば、(B)成分自体の安定性、さらには(A)成分と(B)成分を混合したときの安定性を確保することができる。固形分が大きすぎる場合は、(B)成分自体が不安定化したり、(A)成分との混合時に塗料が不安定化したりするおそれがある。固形分が小さすぎる場合は、十分な耐汚染効果を得るために、多量の(B)成分を混合しなければならず、塗料設計上、実用的ではない。
【0051】
本発明における(B)成分としては、疎水化処理を施した中性シリカゾル(以下「(B−1)成分」という)が好適である。このような(B−1)成分を使用することにより、耐汚染性をいっそう高めることができる。
【0052】
疎水化処理は、アルコキシル基、水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物(以下「(p)成分」という)と、前記中性シリカゾルとの複合化によって行うことが望ましい。
【0053】
(p)成分としては、中性シリカゾルの疎水化効果を有する化合物であれば限定なく使用可能であるが、例えば下記の化合物が例示される。
【0054】
1)アルコキシシラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリプロポキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等。
【0055】
2)アルコール類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、n−ヘプタノール、イソヘプチルアルコール、n−オクタノール、2−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデシルアルコール、n−ドデシルアルコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ジアセトンアルコール等。
【0056】
3)グリコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等。
【0057】
4)グリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等。
【0058】
5)フッ素アルコール類;トリフルオロエタノール、ペンタフルオロプロパノール、2,2,3,3,−テトラフルオロプロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、ノナフルオロ−t−ブチルアルコール、1,1,3,3−テトラフルオロイソプロパノール、1,1−ビス(トリフルオロメチル)エタノール、1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロ−2−ブタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1,1−ビス(トリフルオロメチル)プロパノール、2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)−1−トリルエタノール等。
【0059】
上記に例示された化合物の中でも、(p)成分としては、特にフッ素アルコールが好適である。
【0060】
(p)成分は、中性シリカゾルの固形分100重量部に対し、0.01〜50重量部(好ましくは0.02〜30重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部)の比率で混合することが望ましい。このような比率であれば、十分に耐汚染性を高めることができる。
【0061】
(p)成分を中性シリカゾルに混合する際には、必要に応じ(p)成分を水や水溶性溶剤等で希釈しておいてもよい。(p)成分と中性シリカゾル(B)とを混合して疎水化処理する際には、必要に応じて触媒を使用することもできる。
【0062】
(p)成分によって中性シリカゾルを疎水化処理する場合、(p)成分にシランカップリング剤を混合して得られたものと、中性シリカゾルとの複合化によって疎水化処理を行うこともできる。また、中性シリカゾルをシランカップリング剤で処理した後に(p)成分を混合することによって疎水化処理することもできる。このような場合、シランカップリング剤としては、(p)成分と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤が使用できる。例えば(p)成分がフッ素アルコールである場合には、アミノ基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤等が使用できる。
【0063】
中性シリカゾル(B)と(p)成分との混合・処理時の温度は、下限が10℃以上であり、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上に設定することが望ましく、上限は200℃以下程度、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下に設定することが望ましい。このような温度設定によって、(p)成分と中性シリカゾルとの反応性が高まり、耐汚染効果発現の点においても好ましいものとなる。加温時間は特に限定されないが、通常1〜24時間程度である。
【0064】
本発明では、ポリオキシアルキレン基含有化合物を複合化した中性シリカゾルを使用することによって、耐汚染性を高めることもできる。ポリオキシアルキレン基含有化合物(以下「(q)成分」という)としては、アルコキシル基、水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基と、ポリオキシアルキレン基とを有する化合物が好適である。
【0065】
このような(q)成分としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−プロピレングリコール、ポリオキシエチレン−テトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシエチレンジグリコール酸、ポリオキシエチレングリコールビニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールアリルエーテル、ポリオキシエチレングリコールジアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。(q)成分の平均分子量は、通常150〜2000程度であることが好ましい。
【0066】
中性シリカゾルに(q)成分を複合化するには、中性シリカゾルと(q)成分を混合し、必要に応じ加温すればよい。(q)成分の混合比率は、中性シリカゾルの固形分100重量部に対し、0.01〜50重量部(好ましくは0.02〜30重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部)の比率とすることが望ましい。加温時の温度は、下限を10℃以上(好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上)、上限を200℃以下(好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下)に設定すればよい。加温時間は特に限定されないが、通常1〜24時間程度である。
【0067】
本発明における(B)成分としては、疎水化処理を施すとともに上記ポリオキシアルキレン基含有化合物(q)を複合化した中性シリカゾルが特に好適である。このような中性シリカゾルを使用すれば、形成塗膜の耐汚染性をいっそう高めることができる。
【0068】
本発明における(B)成分として、平均1次粒子径が異なる2種以上の中性シリカゾルを使用する場合は、少なくとも1種が疎水化処理を施したものであることが望ましい。さらには、少なくとも1種が、疎水化処理を施すとともに上記(q)成分を複合化したものであることがより望ましい。
【0069】
(B)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、固形分換算で通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部である。このような混合比率であれば、本発明の効果を十分に発揮することができる。(B)成分が少なすぎる場合は、十分な耐汚染性を得ることができない。(B)成分が多すぎる場合は、塗膜にひび割れが生じやすくなり、また、つや有り塗料においては、高光沢の塗膜が得られにくくなる。
【0070】
<(C)〜(F)成分>
本発明の水性塗料組成物には、上記成分以外に、着色顔料(C)、体質顔料(D)、骨材(E)、その他通常塗料に使用可能な各種成分、例えば、造膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、消泡剤、顔料分散剤、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、pH調整剤、繊維類、つや消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、吸着剤、触媒、架橋剤等を混合することができる。
【0071】
このうち、着色顔料(C)(以下「(C)成分」という)としては、一般的に塗料に配合可能なものを使用することができる。具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0072】
体質顔料(D)(以下「(D)成分」という)としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0073】
(D)成分の粒子径は、通常50μm未満(好ましくは0.5μm以上50μm未満、より好ましくは1μm以上30μm以下)である。
【0074】
本発明における骨材としては、粒子径が0.05mm以上5mm以下の骨材(E)(以下「(E)成分」という)が使用できる。特に(E)成分としては、自然石、自然石の粉砕物等の天然骨材、及び着色骨材等の人工骨材から選ばれる少なくとも1種以上を好適に使用することができる。具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、石灰石、珪石、珪砂、砕石、雲母、珪質頁岩、及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、ゴム粒、金属粒等が挙げられる。また、貝殻、珊瑚、木材、炭、活性炭等の粉砕物を使用することもできる。さらに、これらの表面を、顔料、染料、釉薬等で表面処理を行うことにより着色コーティングしたもの等も使用できる。
【0075】
また、本発明において1液型の塗料を設計する場合には、ポリオキシアルキレンオキサイド鎖含有化合物、アミノアルコール化合物等を添加することが好ましい。アミノアルコール化合物としては、1−アミノエタノール、2−アミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−(メチルアミノ)−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等が例示される。このような化合物の添加により、塗料の安定性、塗膜の光沢・鮮映性等を高めることができる。
【0076】
本発明では、以上のような成分を組み合わせて混合することにより、種々の形態の塗料を設計することができる。具体的な塗料の形態としては、例えば、クリヤー塗料、つや有り塗料、つや消し塗料、自然石調塗材、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、多彩模様塗料等が挙げられる。なお、いずれの形態の塗料も、常法により各成分を混合して製造することができ、最終的にそれぞれの塗料が製造可能である限り、各成分の配合順等は特に制限されない。
【0077】
1)クリヤー塗料
クリヤー塗料は、(A)成分、(B)成分を必須成分として含み、その形成塗膜が透明性を有するものである。形成塗膜の透明性が確保できる範囲内であれば、着色顔料(C)等により着色を施すこともできる。また、体質顔料(D)等により、形成塗膜のつやを調整することもできる。
【0078】
2)つや有り塗料
つや有り塗料は、有色かつ有光沢の塗膜が形成可能な塗料であり、(A)成分、(B)成分、及び着色顔料(C)を必須成分として含む。つや有り塗料は、JIS K5660「つや有合成樹脂エマルションペイント」に規定されており、その鏡面光沢度は70以上(好ましくは75以上、より好ましくは80以上)である。つや有り塗料では、(C)成分の種類や配合比率を適宜設定することにより、所望の色彩を表出することができる。
【0079】
つや有り塗料における(C)成分の混合比率は、(C)成分の種類にもよるが、通常(A)成分の固形分100重量部に対し3〜150重量部、好ましくは5〜100重量部である。
【0080】
このようなつや有り塗料では、光沢度が損われない範囲内であれば、体質顔料(D)等を混合することにより、厚膜型の塗材を設計することもできる。
【0081】
3)つや消し塗料
つや消し塗料は、光沢が低減された有色の塗膜が形成可能な塗料であり、(A)成分、(B)成分、着色顔料(C)、及び体質顔料(D)を必須成分として含む。つや消し塗料の形成塗膜における鏡面光沢度は、通常40以下(好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下)である。つや消し塗料の光沢度は、使用する(D)成分の種類、粒子径、混合比率等によって適宜調整することができる。このような調整により、一般につや消しと呼ばれるものの他に、3分つや、5分つや等と呼ばれる塗料を設計することもできる。
【0082】
つや消し塗料における(C)成分の混合比率は、通常(A)成分の固形分100重量部に対し3〜500重量部、好ましくは5〜400重量部である。(D)成分の混合比率は、所望のつやの程度に応じ適宜設定することができるが、通常(A)成分の固形分100重量部に対し10〜1000重量部、好ましくは50〜800重量部である。
【0083】
4)自然石調塗材
自然石調塗材は、(A)成分、(B)成分、及び粒子径が0.05mm以上5mm以下の骨材(E)を必須成分として得ることができる。この自然石調塗材では、(E)成分の2種以上を適宜組み合せて使用することにより、種々の色彩を表出することができる。
【0084】
自然石調塗材においては(E)成分を、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常100〜4000重量部、好ましくは150〜3000重量部、より好ましくは200〜2000重量部の比率で混合する。(E)成分の混合比率がこのような範囲内であれば、形成塗膜の意匠性、耐汚染性等の点において好適である。(E)成分が少なすぎる場合は、自然石調の意匠性を表出することが困難となる。(E)成分が多すぎる場合は、形成塗膜に汚染物質が入り込みやすくなり、耐汚染効果が損なわれるおそれがある。
【0085】
また、自然石調塗材には、必要に応じて着色顔料(C)を混合することもできる。ただし、(C)成分を多量に混合すると、(E)成分の発色による意匠性が損なわれるため、その混合比率は(A)成分の固形分100重量部に対し、通常1重量部未満(好ましくは0.5重量部以下)とすることが望ましい。
【0086】
5)薄付け仕上塗材・厚付け仕上塗材
本発明では、(A)成分、(B)成分、着色顔料(C)、体質顔料(D)、及び粒子径が0.05mm以上5mm以下の骨材(E)を必須成分とすることにより、一般にリシン、スタッコ等と呼ばれる塗材を設計することができる。このようなリシン、スタッコは、JIS A6909「建築用仕上塗材」において、それぞれ「薄付け仕上塗材」「厚付け仕上塗材」に分類されている。
【0087】
このような塗材では、(C)成分の種類及び配合量を適宜調整することにより、所望の色相の塗膜を得ることができる。(C)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常1〜300重量部、好ましくは2〜200重量部、より好ましくは3〜150重量部である。
【0088】
(D)成分は、主に増量剤として作用するものであり、厚膜の塗膜形成に有効にはたらく成分である。(D)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、固形分換算で通常10〜1000重量部、好ましくは20〜500重量部、より好ましくは30〜300重量部である。
【0089】
(E)成分は、(A)成分の固形分100重量部に対し、通常10〜2000重量部、好ましくは30〜1500重量部、より好ましくは50〜1000重量部の比率で混合する。(E)成分の混合比率がこのような範囲内であれば、形成塗膜の意匠性、耐汚染性等の点において好適である。
【0090】
6)多彩模様塗料
多彩模様塗料は、一回の塗装により多彩模様が表出可能な塗料組成物であり、一般には(1)水中油型(O/W型)、(2)油中水型(W/O型)、(3)油中油型(O/O型)、(4)水中水型(W/W型)に分類される。このうち、本発明では、分散媒が水性である水中油型(O/W型)または水中水型(W/W型)の多彩模様塗料を設計することができる。
【0091】
本発明における多彩模様塗料は、(A)成分を固形分換算にて100重量部、(B)を固形分換算にて0.1〜50重量部含む水性分散媒中に、少なくとも1種以上の着色塗料(F)を粒状に分散させて得られるものである。
【0092】
このうち、着色塗料(F)は、樹脂、着色顔料(C)、及び必要に応じ各種添加剤等を含むものである。着色塗料(F)は、これらの成分を均一に混合することによって得ることができる。この際、着色塗料(F)の種類に応じた希釈剤(水または溶剤)を適宜使用することもできる。
【0093】
着色塗料(F)中の樹脂としては、塗料のビヒクルとして作用するものであればよく、公知の樹脂を特に制限なく使用することができる。このような樹脂としては、例えば、アクリル、ウレタン、酢酸ビニル、アクリル酢酸ビニル、アクリルウレタン、アクリルシリコン、フッ素、ポリビニルアルコール、バイオガム、ガラクトマンナン誘導体、アルギン酸誘導体、セルロース誘導体等が挙げられる。これら樹脂の形態は、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、水溶性樹脂、水分散性樹脂等のいずれであってもよい。また、これら樹脂は、硬化剤や硬化触媒によって架橋可能な官能基を有するものであってもよい。
【0094】
なお、上記樹脂が溶剤可溶型樹脂及び/または非水分散型樹脂である場合は、溶剤型着色塗料(F)が得られ、これを水性分散媒に分散させると水中油型(O/W型)の多彩模様塗料となる。また、上記樹脂が水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂である場合は、水性着色塗料(F)が得られ、これを水性分散媒に分散させると水中水型(W/W型)の多彩模様塗料となる。
【0095】
着色塗料(F)を粒状に分散させる方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的な製造方法としては、例えば、
(A)成分、(B)成分、及び分散安定剤等を含む水性分散媒に、着色塗料(F)を分散させる方法;
(A)成分及び分散安定剤等を含む水性分散媒に着色塗料(F)を分散させた後、(B)成分を混合する方法;
分散安定剤等を含む水性分散媒に着色塗料(F)を分散させた後、(A)成分、(B)成分を混合する方法;
等を採用することができる。いずれの方法においても、最終的には、(A)成分及び(B)成分を必須成分とする水性分散媒に、着色塗料(F)によって形成された着色粒子が分散した状態の多彩模様塗料を得ることができる。着色粒子の形態は、特に限定されず、着色塗料(F)が液状のまま内包されたタイプ、あるいは着色粒子全体がゲル化されたタイプのいずれであってもよい。また、水性分散媒は、着色粒子の発色性を阻害しない程度の透明性を有するものであればよい。
【0096】
上述の分散安定剤は、着色塗料(F)を粒状に安定化せしめる成分であり、着色塗料(F)の種類等に応じて選定することができる。分散安定剤の具体例としては、例えば、着色塗料(F)の架橋剤として作用する成分等が挙げられる。このような成分としては、例えば、エポキシ類、イソシアネート類、アミン類、アルコシシシラン類、有機チタネート類、アルミニウムキレート類、マグネシウム塩類、カルシウム塩類、バリウム塩類、アルミニウム塩類、ナトリウム塩類、カリウム塩類、ホウ酸塩類、リン酸塩類等が挙げられる。この他、分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、セルロースアセテートフタレート、ベントナイト、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ペクチン、キサンタンガム、澱粉等を使用することもできる。
【0097】
着色塗料(F)にて形成される着色粒子の粒子径や形状を調整にするには、撹拌羽根の形状、撹拌槽に対する撹拌羽根の大きさや位置、撹拌羽根の回転速度、着色塗料(F)の粘性、分散安定剤の添加方法や濃度、水性分散媒の粘性等を適宜選択・調整すればよい。
【0098】
着色粒子の粒子径は、特に限定されないが、通常0.01〜10mm(好ましくは0.1〜5mm)程度である。
【0099】
本発明における多彩模様塗料では、多彩な模様面を表出するために、色相の異なる2種以上の着色粒子が含まれることが望ましい。着色粒子の色相は、所望の模様に応じ適宜設定することができる。着色粒子として、透明性を有する粒子を含むこともできる。
【0100】
着色粒子の混合比率は、特に限定されないが、水性分散媒における(A)成分の固形分100重量部に対し、通常50〜1000重量部(好ましくは100〜900重量部)程度である。
【0101】
以上のような本発明の水性塗料組成物は、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、プラスチック、合板、金属、ガラス、磁器タイル等の各種素材の表面仕上げに使用することができる。特に、建築物、土木構築物等の躯体の保護・美装に好適である。この際、本発明の水性塗料組成物は、最終の仕上面に施されるものであり、基材に直接塗装することもできるし、何らかの表面処理(シーラー処理、フィラー処理、サーフェーサ処理、パテ処理等)を施した上に塗装することも可能である。
【0102】
塗装方法としては、刷毛塗り、スプレー塗り、ローラー塗り、コテ塗り等の種々の方法を採用することができる。建材を工場内で塗装する場合は、ロールコーター、フローコーター等によって塗装することも可能である。
【0103】
自然石調塗材、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材等に適用する場合は、塗装器具の種類とその使用方法を適宜選定することで、種々の表面模様を形成することができる。表面模様としては、例えば砂壁状、ゆず肌状、さざ波状、スタッコ状、凹凸状、月面状、櫛引状、虫喰状等が挙げられる。表面模様の高低差は、概ね0.2〜5mmの範囲内で適宜設定すればよい。この際、塗装器具としては、例えばスプレー、ローラー、コテ、刷毛等を採用することができる。これらの塗装器具は複数を組み合せて使用してもよい。また、塗装後の塗膜が未乾燥のうちに、デザインローラー、デザイン刷毛、くし、くしべら、くしごて等によって表面模様を形成させることもできる。
【0104】
本発明組成物を塗装する際の塗付量は、塗料の種類や用途により適宜選択すればよく、例えばクリヤー塗料、つや有り塗料、つや消し塗料の場合は0.1〜0.5kg/m程度、自然石調塗材、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材の場合は0.5〜10kg/m程度、多彩模様塗料の場合は0.2〜1.6kg/m程度である。塗付時には水等で希釈することによって、塗料の粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、通常0〜20重量%程度である。
【0105】
本発明組成物を塗装した後の乾燥は通常、常温で行えばよいが、必要に応じ適宜加熱することも可能である。
【実施例】
【0106】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。なお、実施例においては、以下に示す各原料を用いて塗料を製造した。
・エマルションA:アクリル樹脂エマルション(メチルメタクリレート−スチレン−2−エチルヘキシルアクリレート−メタクリル酸共重合体、pH7.5、固形分50重量%、最低造膜温度25℃)
・エマルションB:アクリル樹脂エマルション(メチルメタクリレート−スチレン−シクロヘキシルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)−メタクリル酸共重合体、pH7.4、固形分50重量%、最低造膜温度22℃)
・エマルションC:アクリル系樹脂エマルション(スチレン−メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、最低造膜温度20℃、pH7.8、固形分50重量%)
・水溶性樹脂A:ヒドロキシエチルセルロース粉
・水溶性樹脂B:ガラクトマンナン3重量%水溶液
・着色顔料:酸化チタン分散液(固形分70重量%)
・分散剤A:スチレン−マレイン酸共重合物
・分散剤B:ポリオキシアルキレン系化合物
・造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
・増粘剤:ポリウレタン系増粘剤
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
・低汚染化剤A:中性シリカゾル(pH7.6、固形分20重量%、平均1次粒子径27nm、電気伝導度0.6mS/cm)
・低汚染化剤B:合成例1参照
・低汚染化剤C:合成例2参照
・低汚染化剤D:合成例3参照
・低汚染化剤E:合成例4参照
・低汚染化剤F:合成例5参照
・低汚染化剤G:中性シリカゾル(pH7.8、固形分12重量%、平均1次粒子径12nm、電気伝導度0.3mS/cm)
・低汚染化剤H:塩基性コロイダルシリカ(pH9.5、固形分20重量%、平均1次粒子径20nm、電気伝導度1.7mS/cm)
・低汚染化剤I:エチルシリケート縮合物(平均分子量750)
・触媒:ジブチルスズジラウレート
・骨材A:粒子径0.1〜2mmの着色骨材混合物(白色:灰色:黒色=3:3:1)
・骨材B:粒子径0.1〜0.3mmの寒水石。
【0107】
(合成例1)
還流冷却器と撹拌羽根を備えた反応容器に、低汚染化剤Aを500重量部仕込み、撹拌しながらトリフルオロエタノール0.3重量部を徐々に滴下した。次いで、80℃まで昇温して24時間撹拌を継続した後、室温まで放冷し、低汚染化剤Bを得た。
【0108】
(合成例2)
還流冷却器と撹拌羽根を備えた反応容器に、低汚染化剤Aを500重量部仕込み、撹拌しながらテトラメトキシシラン1.0重量部を徐々に滴下した。次いで、80℃まで昇温して24時間撹拌を継続した後、室温まで放冷し、低汚染化剤Cを得た。
【0109】
(合成例3)
還流冷却器と撹拌羽根を備えた反応容器に、低汚染化剤Aを500重量部仕込み、撹拌しながらメチルトリメトキシシラン1.0重量部を徐々に滴下した。次いで、80℃まで昇温して24時間撹拌を継続した後、室温まで放冷し、低汚染化剤Dを得た。
【0110】
(合成例4)
還流冷却器と撹拌羽根を備えた反応容器に、低汚染化剤Aを500重量部仕込み、撹拌しながらトリフルオロエタノール0.3重量部を徐々に滴下した後、メトキシポリエチレングリコール(平均分子量200)0.15重量部を徐々に滴下した。次いで、80℃まで昇温して24時間撹拌を継続した後、室温まで放冷し、低汚染化剤Eを得た。
【0111】
(合成例5)
還流冷却器と撹拌羽根を備えた反応容器に、低汚染化剤Aを500重量部仕込み、撹拌しながら、トリフルオロエタノール0.3重量部とγ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3重量部との混合溶液を徐々に滴下した。次いで、80℃まで昇温して24時間撹拌を継続した後、室温まで放冷し、低汚染化剤Fを得た。
【0112】
〔試験例1〕(つや有り塗料)
<塗料の製造>
表1に示す配合に従い、常法により各原料を均一に混合して塗料を製造した。表1の配合量は重量部にて表示した。
【0113】
【表1】

【0114】
<試験方法>
(1)貯蔵安定性
塗料を製造した後、直ちに粘度を測定した。次に、塗料を容器に入れて密閉し、50℃雰囲気で30日間貯蔵した後、再び粘度を測定した。
【0115】
以上の操作による粘度変化を調べた。評価基準は以下の通りである。なお、粘度の測定にはBH型粘度計を用い、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で行った。
○:粘度変化10%未満
△:粘度変化10%以上50%未満
×:粘度変化50%以上
(2)鏡面光沢度
150×120×3mmの透明なガラス板に、すきま150μmのフィルムアプリケータを用いて塗料組成物を塗付し、ガラス板を水平に置いて標準状態で48時間乾燥養生した後、JIS K 5600−4−7により鏡面光沢度を測定した。測定角度は60度とした。鏡面光沢度は、数値が大きいほど光沢が良好であり、好ましい塗膜であることを示す。
【0116】
(3)タックフリー時間
150×120×3mmの透明なガラス板に、すきま150μmのフィルムアプリケータを用いて塗料組成物を塗付し、ガラス板を水平に置いて標準状態で所定時間静置した。次に、ガラス板を水平に置いた状態で塗膜表面に珪砂をふりかけ、その直後にガラス板を垂直に立てて珪砂を自然落下させた。このとき、珪砂が塗膜表面に残存しなくなるまでの時間を測定した。この時間は短いほど好ましいものである。
【0117】
(4)水流滴下面積
150×75×0.8mmのアルミニウム板に、SK#1000プライマー(エポキシ樹脂系プライマー;エスケー化研株式会社製)を乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥させた。次に、塗料組成物を乾燥膜厚が40μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で7日間養生することにより試験体を作製した。
【0118】
以上の方法で得られた試験体を、水平面から60度の角度で固定した後、試験体上端から30mmの位置に水流を連続的に滴下し、その際形成される水膜の面積を測定した。なお、水流の滴下は、試験体上端から約20mm上方に設置された塩化ビニル管(口径3mm)により行った。流量は140ml/minとした。この面積は数値が大きいほど親水性が高く好ましい塗膜であることを示す。
【0119】
(5)耐雨筋汚染性
300×150×3mmのアルミニウム板を、上端から3分の1の位置で、内角度が135度になるように折り曲げたものを試験基材とした。この試験基材の凸面に、SK#1000プライマーを乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥させた。次に、塗料組成物を乾燥膜厚が40μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で7日間乾燥養生した。
【0120】
以上の方法で得られた試験体を、面積の広い面を垂直にして大阪府茨木市で南面向きに設置し、3ヵ月間屋外曝露を行った。このとき垂直面における雨筋汚れ状態を目視観察し、汚れの程度に応じて5段階(優:5>4>3>2>1:劣)で評価した。
【0121】
<試験結果>
試験結果を表2に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
実施例1−1〜1−7は、いずれの試験においても良好な結果を得ることができた。これに対し、低汚染化剤を添加しなかった比較例1−1では塗料の安定性は良好であるが耐雨筋汚染性は問題外であった。一般的なコロイダルシリカを添加した比較例1−2の塗料組成物は、鏡面光沢度、耐雨筋汚染性において満足できるものではなかった。また一般的なオルガノシリケートを添加した比較例1−3の塗料組成物は貯蔵安定性、鏡面光沢度、耐雨筋汚染性において満足すべきものではなかった。
〔試験例2〕(自然石調塗材)
<塗材の製造>
表3に示す配合に従い、常法により各原料を均一に混合して塗材を製造した。表3の配合量は重量部にて表示した。
【0124】
【表3】

【0125】
<試験方法>
(1)貯蔵安定性
各塗材を製造した後、直ちに粘度を測定した。次に、塗材を容器に入れて密閉し、50℃雰囲気で30日間貯蔵した後、再び粘度を測定した。以上の操作による粘度変化を調べた。評価基準は以下の通りである。なお、粘度の測定にはBH型粘度計を用い、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で行った。
○:粘度変化10%未満
△:粘度変化10%以上50%未満
×:粘度変化50%以上。
【0126】
(2)水流滴下面積
150×75×0.8mmのアルミニウム板に、SK#1000プライマー(エポキシ樹脂系プライマー;エスケー化研株式会社製)を乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥させた。次に、各塗材を乾燥膜厚が1mmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で7日間養生することにより試験体を作製した。
【0127】
以上の方法で得られた試験体を、水平面から60度の角度で固定した後、試験体上端から30mmの位置に水流を連続的に滴下し、その際形成される水膜の面積を測定した。なお、水流の滴下は、試験体上端から約20mm上方に設置された塩化ビニル管(口径3mm)により行った。流量は140ml/minとした。
【0128】
(3)耐汚染性
300×150×3mmのアルミニウム板を、上端から3分の1の位置で、内角度が135度になるように折り曲げたものを試験基材とした。この試験基材の凸面に、SK#1000プライマーを乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥させた。次に、各塗材を乾燥膜厚が1mmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で7日間乾燥養生した。
【0129】
以上の方法で得られた試験体を、面積の広い面を垂直にして大阪府茨木市で南面向きに設置し、3ヵ月間屋外曝露を行った。このとき垂直面における汚染状態を目視観察し、汚れの程度に応じて5段階(優:5>4>3>2>1:劣)で評価した。
【0130】
<試験結果>
試験結果を表4に示す。実施例2−1〜2−7では、いずれの試験においても良好な結果を得ることができた。
【0131】
【表4】

【0132】
〔試験例3〕(厚付け仕上塗材)
<塗材の製造>
表5に示す配合に従い、常法により各原料を均一に混合して塗材を製造した。表5の配合量は重量部にて表示した。
【0133】
【表5】

【0134】
<試験方法>
(1)貯蔵安定性
各塗材を製造した後、直ちに粘度を測定した。次に、塗材を容器に入れて密閉し、50℃雰囲気で30日間貯蔵した後、再び粘度を測定した。
【0135】
以上の操作による粘度変化を調べた。評価基準は以下の通りである。なお、粘度の測定にはBH型粘度計を用い、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で行った。
○:粘度変化10%未満
△:粘度変化10%以上50%未満
×:粘度変化50%以上。
【0136】
(2)水流滴下面積
150×75×0.8mmのアルミニウム板に、SK#1000プライマー(エポキシ樹脂系プライマー;エスケー化研株式会社製)を乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥させた。次に、各塗材を乾燥膜厚が1mmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で7日間養生することにより試験体を作製した。
【0137】
以上の方法で得られた試験体を、水平面から60度の角度で固定した後、試験体上端から30mmの位置に水流を連続的に滴下し、その際形成される水膜の面積を測定した。なお、水流の滴下は、試験体上端から約20mm上方に設置された塩化ビニル管(口径3mm)により行った。流量は140ml/minとした。
【0138】
(3)耐汚染性
300×150×3mmのアルミニウム板を、上端から3分の1の位置で、内角度が135度になるように折り曲げたものを試験基材とした。この試験基材の凸面に、SK#1000プライマーを乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥させた。次に、各塗材を乾燥膜厚が1mmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で7日間乾燥養生した。
【0139】
以上の方法で得られた試験体を、面積の広い面を垂直にして大阪府茨木市で南面向きに設置し、3ヵ月間屋外曝露を行った。このとき垂直面における汚染状態を目視観察し、汚れの程度に応じて5段階(優:5>4>3>2>1:劣)で評価した。
【0140】
<試験結果>
試験結果を表6に示す。実施例3−1〜3−7では、いずれの試験においても良好な結果を得ることができた。
【0141】
【表6】

【0142】
〔試験例4〕(多彩模様塗料)
<白色粒子分散塗料の製造>
容器内にエマルションC200重量部を仕込み、撹拌羽根の回転速度を1800rpmとして撹拌を行いながら、水溶性樹脂A4重量部と、造膜助剤12重量部と、消泡剤1重量部と、水380重量部とを均一に混合することにより、水性分散媒を製造した。
【0143】
次に、別の容器内にエマルションC100重量部を仕込み、撹拌羽根の回転速度を1800rpmとして撹拌を行いながら、水溶性樹脂B200重量部と、白色顔料液(酸化チタン60重量%分散液)100重量部と、造膜助剤5重量部と、消泡剤5重量部と、水70重量部とを均一に混合することにより白色塗料を製造した。
【0144】
上述の水性分散媒597重量部に対し、分散安定剤としてホウ酸アンモニウム5重量%水溶液を8重量部加え、撹拌羽根の回転速度を900rpmとして均一に混合した後、さらに撹拌を継続しながら上記白色塗料480重量部を徐々に添加・分散することにより、0.8〜1.2mmの白色粒子が分散した塗料を得た。
【0145】
<灰色粒子分散塗料の製造>
容器内にエマルションC200重量部を仕込み、撹拌羽根の回転速度を1800rpmとして撹拌を行いながら、水溶性樹脂A4重量部と、造膜助剤12重量部と、消泡剤1重量部と、水380重量部とを均一に混合することにより、水性分散媒を製造した。
【0146】
次に、別の容器内にエマルションC85重量部を仕込み、撹拌羽根の回転速度を1800rpmとして撹拌を行いながら、水溶性樹脂B250重量部と、白色顔料液(酸化チタン60重量%分散液)80重量部と、黒色顔料液(黒色酸化鉄15重量%分散液)20重量部と、造膜助剤5重量部と、消泡剤5重量部と、水50重量部とを均一に混合することにより灰色塗料を製造した。
【0147】
上述の水性分散媒597重量部に対し、分散安定剤としてホウ酸アンモニウム5重量%水溶液を8重量部加え、撹拌羽根の回転速度を900rpmとして均一に混合した後、さらに撹拌を継続しながら上記灰色塗料495重量部を徐々に添加・分散することにより、0.8〜1.2mmの灰色粒子が分散した塗料を得た。
【0148】
<多彩模様塗料の製造>
上記方法によって得られた灰色粒子分散塗料と黒色粒子分散塗料、さらに低汚染化剤を表7に示す配合比率で均一に混合した。
【0149】
【表7】

【0150】
<試験方法>
(1)貯蔵安定性
各塗料を製造した後、直ちに粘度を測定した。次に、塗料を容器に入れて密閉し、50℃雰囲気で30日間貯蔵した後、再び粘度を測定した。
【0151】
以上の操作による粘度変化を調べた。評価基準は以下の通りである。なお、粘度の測定にはBH型粘度計を用い、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で行った。
○:粘度変化10%未満
△:粘度変化10%以上50%未満
×:粘度変化50%以上。
【0152】
(2)水流滴下面積
150×75×0.8mmのアルミニウム板に、SK#1000プライマー(エポキシ樹脂系プライマー;エスケー化研株式会社製)を乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥させた。次に、各塗料を乾燥膜厚が約0.2mmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で7日間養生することにより試験体を作製した。
【0153】
以上の方法で得られた試験体を、水平面から60度の角度で固定した後、試験体上端から30mmの位置に水流を連続的に滴下し、その際形成される水膜の面積を測定した。なお、水流の滴下は、試験体上端から約20mm上方に設置された塩化ビニル管(口径3mm)により行った。流量は140ml/minとした。
【0154】
(3)耐汚染性
300×150×3mmのアルミニウム板を、上端から3分の1の位置で、内角度が135度になるように折り曲げたものを試験基材とした。この試験基材の凸面に、SK#1000プライマーを乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で8時間乾燥させた。次に、各塗料を乾燥膜厚が約0.2mmとなるようにスプレー塗装し、標準状態で7日間乾燥養生した。
【0155】
以上の方法で得られた試験体を、面積の広い面を垂直にして大阪府茨木市で南面向きに設置し、3ヵ月間屋外曝露を行った。このとき垂直面における汚染状態を目視観察し、汚れの程度に応じて5段階(優:5>4>3>2>1:劣)で評価した。
【0156】
<試験結果>
試験結果を表8に示す。実施例4−1〜4−7では、いずれの試験においても良好な結果を得ることができた。
【0157】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明組成物は、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成型板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用することができ、主に建築物、土木構造物等の躯体保護に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが4.0以上10.0以下である合成樹脂エマルション(A)、及び粒子径が1〜200nmであり、pHが5.0以上8.5未満である中性シリカゾル(B)を必須成分とし、前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記中性シリカゾル(B)成分を固形分換算で0.1〜50重量部含むことを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
さらに粒子径が0.05mm以上5mm以下の骨材(E)を、前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、100〜4000重量部含むことを特徴とする請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
さらに、着色顔料(C)、体質顔料(D)及び粒子径が0.05mm以上5mm以下の骨材(E)を、前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記着色顔料(C)を1〜300重量部、前記体質顔料(D)を10〜1000重量部、前記骨材(E)を10〜2000重量部含むことを特徴とする請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
さらに、少なくとも1種以上の着色塗料(F)が粒状に分散されていることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
前記中性シリカゾルは、疎水化処理が施されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水性塗料組成物。

【国際公開番号】WO2005/063899
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516647(P2005−516647)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019361
【国際出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】