説明

水性系および物体上における微生物の成育を抑制する方法および組成物

微生物の成育を支える恐れのある水性系または物体上において微生物を殺滅、防止、または成育阻害する方法および組成物を提供するために、ラクトペルオキシダーゼ、過酸化水素または過酸化物源、塩化物以外のハロゲン化物、またはチオシアン酸塩、および任意にアンモニウム源を供給し、その供給の条件として、ラクトペルオキシダーゼ、過酸化水素または過酸化物源由来の過酸化物、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、およびアンモニウム源由来のアンモニウムが相互に反応して水性系または物体に抗菌剤が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性系または物体上、例えば物体の1つ以上の表面における微生物の成育を抑制する組成物および方法に関する。また本発明は、ラクトペルオキシダーゼと他の成分との相互反応によって抗菌剤を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシダーゼは自然界に広く分布する酵素群である。自然界における第一の機能は酸化反応への触媒作用であって、その酸化反応の間に過酸化水素或いは他の酸化剤が消費される。その酸化反応を前進させるためには、一般に電子供与体(還元剤)が必要である。
【0003】
電子供与体としての、過酸化水素の存在下およびハロゲン化物またはチオシアン酸塩の存在下ではペルオキシダーゼによって、範囲の広い抗菌特性を有する生産物が得られる。ペルオキシダーゼの種類が変わる毎にそれらが反応し得るハロゲン化物またはチオシアン酸塩は特定される。例えば、ミエロペルオキシダーゼは電子供与体としてCl、Br、I、またはSCNを利用し、それらを酸化して抗菌性のヒポハロゲン化物またはヒポチオシアン酸塩を形成する。しかしラクトペルオキシダーゼはBr、I、またはSCNの酸化を触媒して抗菌性の生産物を生ずるが、Clの酸化は触媒しない。ホースラディッシュペルオキシダーゼは電子供与体としてIのみを利用してI、HIO、およびIOを産生する。ペルオキシダーゼ−ハロゲン化物−Hの抗菌系を利用している応用領域には食品、乳製品、パーソナルケア、および家畜用製品がある。
【0004】
Allenの米国特許第 5,451,402号(特許文献1)には酵母および芽胞微生物をハロペロキシダーゼ含有組成物で殺滅する方法が記載されており、この組成物はヒトまたは動物での防腐剤による治療処置および植物微生物および黴胞子の消毒殺菌のための生体内投与において有用であると言われている。
【0005】
Johansenによる米国特許出願公開第
2002/0119136(Al)号明細書(特許文献2)は、カプリナスペルオキシダーゼ、過酸化水素、および増強剤、例えば電子供与体を含有する抗菌組成物に関する。この組成物は、洗濯物、人や動物の皮膚、毛髪、粘膜、口腔、歯、傷口、傷、および固い表面に存在する微生物を阻害または殺滅するのに有用と言われている。またこの組成物は化粧品の保存剤としても、また水処理、食品加工、化学的薬剤的操作、紙パルプ処理で使用する加工装置の上や水の衛生設備の上を洗浄、消毒あるいは微生物の成育阻害をするのにも使用できる。
【0006】
Johansenの米国特許第6,251,386号(特許文献3)
および米国特許第6,818,212(B2)号(特許文献4)明細書は、ハロペロキシダーゼ、過酸化水素源、ハロゲン化物源、およびアンモニウム源を含有する抗菌組成物、および微生物の成育を殺滅阻害するためにこの組成物を使用する方法に関する。またこの特許には、ハロゲン化物とアンモニウム源の間には未知の相乗効果があると記載している。
【0007】
Claessonらの米国特許第6,149,908号(特許文献5)は、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)感染の治療薬剤の製造にあたり、ラクトペロキシダーゼ、過酸化物供給体、およびチオシアン酸塩を使用することに関する。
【0008】
Galleyらの米国特許第5,607,681号(特許文献6)には、ヨウ化物またはチオシアン酸塩アニオン、グルコースオキシダーゼおよびD−グルコース、およびラクトペルオキシダーゼを含有する抗菌組成物が記載されている。この特許では、組成物は濃厚な反応性のない形態、例えば乾燥粉末や非水溶液で提供されてもよいと述べられている。この組成物は、口腔衛生、除臭、および頭髪ふけ防止の各製品で使用すると強力な抗菌活性を呈する保存剤としてあるいは活性剤として有用であると述べられている。
【0009】
Goodらの米国特許第5,250,299号(特許文献7)は、pHを約1.5と約5の間に調整したヒポチオシアン酸塩生成系とジカルボン酸またはトリカルボン酸との相乗作用による抗菌組成物に関する。ヒポチオシアン酸塩生成系はラクトペルオキシダーゼ、チオシアン酸塩および過酸化水素から構成される。この特許には食品製造に係る表面の消毒方法、および家禽類に付着のサルモネラ菌および食品の表面に汚染している他のグラム陰性微生物の殺滅方法が記載されている。
【0010】
Montgomeryの米国特許第5,176,899号(特許文献8)には、安定で抗菌性のある水性の歯磨き組成物が記載されており、これにはオキシドレダクターゼ酵素とそれの特異基質である過酸化水素産生基質が含有されている。ペルオキシダーゼは過酸化水素に作用して唾液に含まれているチオシアネートイオンを酸化し、抗菌濃度のヒポチオシアナイトイオンを産生する。
【0011】
Guthrie(Knoll Aktiengesellschaft)らによる国際公開第98/49272号明細書(特許文献9)は、安定化された水性の抗菌性酵素組成物に関し、これにはラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ハロゲン化アルカリ金属塩、およびこの組成物に特定のpHを与えるキレート能を有する緩衝剤が含有されている。この組成物は乳製品、食品素材、医薬品に使用する抗菌剤として有用であると記載されている。
【0012】
Bycroftらの米国特許第5,043,176号(特許文献10)は、抗菌性のポリペプチドとヒポシアン酸成分との相乗作用による抗菌性組成物に関する。組成物を約30〜40℃の間、pH約3〜約5の間で投与する場合に相乗活性が見られる。この組成物はグラム陰性菌、例えばサルモネラ菌に対して有用であると言われている。好ましい組成物はナイシン、ラクトペルオキシダーゼ、チオシアン酸塩、および過酸化水素である。この組成物はサルモネラ生細胞の数を10〜20分間で6を超える対数で減少することができると述べられている。
【0013】
Kesslerらの米国特許第4,937,072号(特許文献11)には、ペルオキシダーゼ、過酸化物または過酸化物発生材料、およびヨウ化塩を含有するイン サイツー(in situ)で胞子を殺滅する消毒剤が記載されている。この三つの成分は反応しない状態で保存されているので、抗胞子性は不活性状態に維持される。三つの成分を水性の媒体中で混合すると、ペルオキシダーゼによって反応が触媒され抗菌性のないラジカルおよび/または副生物が生じてしまう。
【特許文献1】米国特許第 5,451,402号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第 2002/0119136(Al)号明細書
【特許文献3】米国特許第6,251,386号明細書
【特許文献4】米国特許第6,818,212号明細書
【特許文献5】米国特許第6,149,908号明細書
【特許文献6】米国特許第5,607,681号明細書
【特許文献7】米国特許第5,250,299号明細書
【特許文献8】米国特許第5,176,899号明細書
【特許文献9】国際公開第98/49272号明細書
【特許文献10】米国特許第5,043,176号明細書
【特許文献11】米国特許第4,937,072号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
工業的な工程、例えば製紙およびパルプ処理の工程では大量の水を使用するので、そのような処理の間およびそのような工程のための水の導入および貯蔵の設備では微生物の成育を阻害することが望ましい。
【0015】
したがって、微生物の成育を防止、殺滅および/または阻害する方法であって、安価であり、低濃度で有効な組成物を使用し、しかも容易に入手可能な成分を利用する方法が望まれる。
【0016】
また、微生物の成育を防止、殺滅および/または阻害する方法であって、塩化物または他の環境上望ましくない成分を使用しない方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
微生物の成育を支える恐れのある水性系および物体上において微生物の成育を抑制する強力な抗菌性溶液を得るためには、ラクトペルオキシダーゼ(本明細書で「LP」と呼ぶ)、過酸化水素または過酸化物源、例えば過炭酸塩または酵素反応により過酸化物を発生する系、例えばグルコースオキシダーゼ/グルコース系(GO/glu)、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意にアンモニウム源を供給するのがよく、その供給の条件としてラクトペルオキシダーゼ、過酸化水素または過酸化物源由来の過酸化物、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、およびアンモニウム源が存在するならそれ由来のアンモニウムが相互に反応して水性系または物体に抗菌剤が供給されるのがよいことが判った。(ラクトペルオキシダーゼを含有する本明細書に記載の抗菌系または抗菌溶液は、本明細書では[LP系]または「LP抗菌系」と互換的に呼称してもよい)。各成分は水中に予め混合して溶液としておいてもよく、その場合にはそれら成分は相互に反応して抗菌剤を形成するので、得られる溶液の有効量を処理すべき水性系等の系または物体に投与すればよい。あるいは、処理すべき水性系等の系または物体上に各成分を個別に(または組み合わせて)加え、各成分の濃度を選択することによって活性な抗菌性組成物をイン サイツー(in situ)に形成し、処理すべき水性系等の系または物体上に所望期間維持させることもできる。
【0018】
更に、本発明は、ラクトペルオキシダーゼ(LP)、過酸化水素または過酸化物源、例えばカルバマイド過酸化物、過炭酸塩、過ホウ酸塩、または過硫酸塩、または酵素反応により過酸化物を発生する系、例えばグルコースオキシダーゼ/グルコース系(GO/glu)、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意にアンモニウム源を含有する組成物を提供する。
【0019】
更に、本発明は、少なくとも、ラクトペルオキシダーゼ、臭化アンモニウム、および酵素により過酸化物を発生する系の酵素基質、例えばグルコースの固体状混合物を1つの水溶解性容器に、また過酸化物を生成する固体状酵素、例えばグルコースオキシダーゼを別の水溶解性容器に含有する全て固体状の組成物を提供する。あるいは、この第一の水溶解性容器中の全て固体状の組成物は、ラクトペルオキシダーゼ、ヨウ化カリウム、および酵素基質の固体状混合物でも、ラクトペルオキシダーゼ、臭化ナトリウム、硫酸アンモニウム、および酵素基質の固体状混合物でもよい。本発明の別の方法では、強力な抗菌性溶液を形成するために、上記二つの容器の全固体を所望量の水に溶解してもよい。次に得られる溶液の有効量を処理すべき系または物体に投与すればよい。あるいは、上記二つの容器の内容物を別々に水に溶解して二つの別個の濃厚液を形成し、一の溶液には少なくともLP、臭化アンモニウム、およびグルコースを含有させ、他の溶液には少なくともグルコースオキシダーゼを含有させればよい。次に得られる溶液の有効量を処理すべき系または物体に別々に加えてもよく、この場合には二つの溶液が水性系において反応し抗菌性組成物を形成する。
【0020】
本明細書に記載のLP系により強力な抗菌性組成物が生成されるが、これは過酸化水素が単独で作用するよりも遥かに強力であるのが好ましい。本発明は各種の工業用流体の系(例えば水性系)と工程において利用することができ、例えば限定されないが、製紙用の水系、パルプスラリー、製紙工程での白色水、冷却水系(冷却水、取り込み冷却水、および排出冷却水)、排水系、リサイクル用の水系、温泉浴、水泳プール、リクレーション用の水系、食品加工系、飲料水系、皮革なめし用の水系、金属加工用液体、および他の工業用水系が挙げられる。また、本発明方法は各種物体上での微生物の成育を抑制するのにも利用してよく、例えば限定されないが、表面被覆、金属、高分子材料、天然物体(例えば、石)、加工石、コンクリート、木材、ペイント、種子、植物、動物の皮、プラスチック、化粧料、パーソナルケア製品、医薬品、および他の工業材料が挙げられる。
【0021】
本発明の更なる特徴と利点は、一部は以下の説明に記述されるが、一部は説明から自明であり、あるいは本発明の実施要領により知得してもよい。本発明の対象と他の利点は説明および添付の特許請求の範囲において具体的に指摘する要素および組合せによって実現達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下の概略説明および以下の詳細説明は単なる例示にすぎず、これらによって特許請求に係る本発明が限定されることはないと了解する必要がある。上に記載したおよび本出願書を通じて記載された特許、特許出願書類、および刊行物はそれらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0023】
付随の図面は、本願に編入されかつそれの一部を構成して、本発明の幾つかの実施態様を描出するものであり、説明と一体となって本発明の要旨説明に役立つ。
【0024】
本発明は、水性系または物体上で微生物の成育を抑制する方法および組成物を提供し、a)ラクトペルオキシダーゼ(LP)、b)過酸化水素または過酸化水素源、およびc)ハロゲン化物と任意にアンモニウム塩のようなアンモニウム源を使用する。ハロゲン化物とアンモニウム源の供給は臭化アンモニウムの形態でもよい。例えば、LP、過酸化水素、およびハロゲン化物の組合せ、またはLP、過酸化水素、ハロゲン化物、およびアンモニウム塩の組合せによって、強力な抗菌性組成物が形成されるが、この組成物は過酸化水素が単独で機能するよりも遥かに活性であるのが好ましい。本発明は、微生物に侵襲されやすい製品、材料、または媒体の中または上で少なくとも1つの微生物の成育を抑制する方法を提供する。この方法には、製品、材料、または媒体に微生物の成育を抑制するのに有効な量の本発明組成物を加える段階がある。この有効量は、処理すべき製品、材料、または媒体に応じて変化し、具体的な投与ケースに応じて当業者が本明細書に記載の開示事項を参照しながら日常的に決定することができる。本発明組成物は、微生物に侵襲されやすい各種の工業用の製品、媒体、または材料において保存または少なくとも1つの微生物の成育抑制に有用である。そのような媒体または材料には、例えば限定されないが、染料、ペースト、木材、皮革、敷物、パルプ、木片、なめし用液、紙粉砕液、高分子乳化液、ペイント、紙等をコーティングおよび糊付けする薬剤、金属加工液、地面堀削用潤滑剤、石油化学品、冷却水系、リクレーション用の水、プラント用の流水、排水、滅菌水、レトルト式の加熱調理器具、医薬品製剤、化粧品製剤、および洗面用製剤が挙げられる。この組成物は種子や穀物を微生物による損傷から防護する目的で農業用製剤にも利用可能である。
【0025】
この組成物は、広範な微生物に対し低濃度で優れた抗菌活性を呈するので好ましい。
【0026】
本発明組成物は、微生物に侵襲されやすい製品、材料、または媒体の中または上で少なくとも1つの微生物の成育を抑制する方法において使用することができる。この方法には、製品、材料、または媒体に本発明組成物を加える段階があり、この場合にこの組成物の成分は微生物の成育を抑制するのに有効な量存在する。
【0027】
前述のように、本発明組成物は、少なくとも1つの微生物に侵襲されやすい工業用の各種製品、材料、または媒体を保存するのに有用である。また本発明組成物は、種子や穀物を微生物による損傷から防護する目的で農業用製剤にも有用である。これらの保存および防護の方法を完璧にするために、製品、材料、または媒体に本発明組成物を加えるが、その量は製品、材料、または媒体を少なくとも1つの微生物による侵襲から防護し、あるいは種子や穀物を微生物による損傷から効果的に防護するのに有効な量である。
【0028】
本発明方法により少なくとも1つの微生物の成育を抑制または阻害するとは、その成育を減少および/または防止することが含まれる。
【0029】
少なくとも1つの微生物の成育を「抑制」(例えば、防止)すればその微生物の成育は阻害されたと理解する必要がある。換言すれば、その微生物の成育が存在しない、あるいは実質的に存在しない。少なくとも1つの微生物の成育を「抑制」すれば、その微生物集団は所望のレベルに維持され、集団は所望のレベル(検出不能限界、例えばゼロ集団まで)に減少され、および/または成育を阻害される。したがって、本発明の一実施態様では、少なくとも1つの微生物に侵襲されやすい製品、材料、または媒体が、その侵襲とその結果としての損傷およびこの微生物が原因の他の被害効果から保護されている。また、少なくとも1つの微生物の成育を「抑制」するとは、少なくとも1つの微生物を生物的に静かに減少し、および/またはその微生物のレベルを低く維持し、その結果としてその微生物の侵襲およびそれによる何かの損傷または他の被害効果が緩和されること、すなわちその微生物の成育速度または侵襲速度がスローダウンする、および/または皆無になることを含意すると理解する必要がある。
【0030】
これら微生物の例には、黴類、菌類、藻類およびこれらの混合物が挙げられ、例えば限定されないが、トリコデルマビリデ(Trichodermaviride)、アスペルギルスニゲル(Aspergillusniger)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎杆菌クレブシエラニューモニア(Klebsiella pneumoniae)、およびクロレラエスピー(Chlorellasp)がある。本発明の組成物の毒性は低い。
【0031】
ラクトペルオキシダーゼは糖タンパク質であり、非共有結合による1個のヘム基を有する。ミルク中の非免疫防御系の構成部分であり、ミルク中に約30mg/Lの濃度で存在する。これはまた各種体液、例えば唾液、涙液、および鼻および腸の分泌液にも存在する。
【0032】
LPがハロペルオキシダーゼと相違する点は、LPが酪農のナチュラル製品として牛乳から得られる酵素であるのに対し、ハロペルオキシダーゼは黴または細菌から発酵またはDNA組換え技術により得る酵素である。LPとハロペルオキシダーゼの間の別の相違点は、ハロペルオキシダーゼがClの酸化を触媒できるが、LPはできない。現在、LPは工業規模でかつ非常に精製された形態で入手できるが、ハロペルオキシダーゼは量的には実験規模でしか入手できない。したがって、LPはハロペルオキシダーゼより安価であり、したがってLPがハロペルオキシダーゼに優る利点は、大量入手が可能であり、かつ価格が比較的に低いことである。
【0033】
ラクトペルオキシダーゼ自体には抗菌活性がないが、Hが存在するとBr、I、またはSCNの酸化を触媒して抗菌性産物を生ずるが、Clの酸化は触媒しない。LP、Hおよび酸化可能な基質、例えばBr、I、またはSCNは、一体となれば強力な抗菌系を形成する。ラクトペルオキシダーゼ抗菌系(「LP抗菌系」)の抗菌効果が達成されるには、Br、I、またはSCNの酸化産物、主にヒポハロゲン化物およびヒポチオシアン酸塩が生成することである。LP抗菌系が抗菌性産物を産生するには極めて低レベルのHおよび電子供給体が必要である。本明細書に記載のごとく、アンモニウムイオンが追加されて、これがLP抗菌系の中に包含されれば、抗菌活性は更に増強される。特に、ラクトペルオキシダーゼ、過酸化物または過酸化物源、および臭化アンモニウムが組み合わされれば、格別に有用でかつ経済的な抗菌系が提供される。
【0034】
本発明のラクトペルオキシダーゼは哺乳動物源、例えば哺乳動物の乳、特に牛乳から取得してよい。更にラクトペルオキシダーゼは市販品から容易に入手可能であり、乾燥粉末の形態でもよく、水溶液中であってもよい。商品の具体的な形態ではLPは緑褐色粉末であり、タンパク質含量は90%を超える。この酵素は安定pHのプロフィルが広く(pH3〜10)、至適pHは5.0〜6.5であることが示されている。この酵素は室温で保存してよく、最初の封入包装、例えば市販品の入手形態のままであれば、LPの保存期間は20℃で少なくとも1年、8℃では2年である。この酵素を上昇した温度(>65℃)に短時間(10分)曝せばタンパク質変性して活性を失う。
【0035】
本発明のLP抗菌系で使用する過酸化水素(これは過酸化物源と考えてもよい)は多様な態様で入手してよく、過酸化水素の濃厚溶液でも希薄溶液でもよく、あるいは過酸化水素の前駆体、例えば過炭酸塩、過ホウ酸塩、カルバマイド過酸化物(尿素過酸化水素とも言われる)、または過硫酸塩から得てもよい。酵素反応により過酸化水素を生成する系、例えばグルコースオキシダーゼとグルコース、あるいはアミラーゼ/デンプン(これからグルコースが生成される)とグルコースオキシダーゼから得てもよい。過酸化水素を生成する他の酵素/基質の組合せを利用してもよい。酵素反応により生成した過酸化水素を利用するのが有利である。関係する材料が全て環境的にグリーン(green)だからである。これらの材料は過酸化水素自体よりも運搬と処理が遥かに容易である。
【0036】
本発明のLP抗菌系で使用するハロゲン化物はどのようなハロゲン化物源またはハロゲン化物生成源から得てもよく、異なる取得源は多数可能である。臭化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化カルシウム、および/またはヨウ化マグネシウムが可能である。アルカリ金属またはアルカリ土類金属のどのようなハロゲン化塩であってもよい。本発明のLP抗菌系では、好ましくは塩化物化合物はハロゲン化物源としては除外される。ラクトペルオキシダーゼがCLの酸化を触媒しないからである。LP抗菌系におけるハロゲン化物に代わる電子供与体として、チオシアン酸塩、例えばチオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウムを使用することもできる。
【0037】
アンモニウムは、LP抗菌系で使用してもよくそれによって本発明の相乗的な抗菌効果は更に増大し、どのようなアンモニウム源から取得してもよい。アンモニウム源はアンモニウム塩が可能である。非限定的な実施例として、ハロゲン化物とアンモニウムの両方を供給するにあたり、ハロゲン化アンモニウム、例えば臭化アンモニウム(NHBr)によってもよい。別の非限定的な実施例として、ハロゲン化物とアンモニウムを供給するにあたり、それぞれ臭化ナトリウムと硫酸アンモニウムによってもよい。別の非限定的な実施例として、ハロゲン化物がヨウ化カリウムでよく、アンモニウム源は省略されてよい。
【0038】
微生物の成育を支える恐れのある水性系または物体上において微生物を殺滅、防止、成育阻害する方法として、ラクトペルオキシダーゼ、過酸化水素または過酸化物源、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意にアンモニウム源を微生物の成育を支える恐れのあるこの水性系または物体に供給し、その供給の条件としてラクトペルオキシダーゼ、過酸化水素または過酸化物源由来の過酸化物、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、およびアンモニウム源(存在する場合に)由来のアンモニウムが相互に反応することによってこの水性系または物体上において微生物を殺滅、防止、成育阻害する抗菌剤が供給されるのがよい。
【0039】
当業者が、侵襲された物体または系を処理する前に特定投与に有用な本発明の各種組成物の有効量を容易に決定するには、各種濃度を簡単にテストすれば可能である。例えば、水性系を処理する場合には、ラクトペルオキシダーゼの有効量濃度は、例えば約0.01〜約1000ppmの範囲、好ましくは約0.1〜約50ppmの範囲にあるのがよい。
【0040】
水性系に存在する過酸化物源の有効量は、例えば過酸化水素の水性系での濃度が約0.01〜約1000ppmの範囲、好ましくは約0.1〜約200ppmの範囲になるのに十分な量がよい。
【0041】
水性系に存在するハロゲン化物またはチオシアン酸塩の有効量は、例えば水性系での濃度が約0.1〜約10000ppmの範囲、好ましくは約1〜約500ppmの範囲となるのがよい。
【0042】
水性系に存在するアンモニウム源の有効量は、例えば水性系でのアンモニウムイオン濃度が約0.0〜約10000ppmの範囲または約0.1〜約10000ppmの範囲、好ましくは約0〜約500ppmの範囲または約1〜約500ppmの範囲になるのに十分な濃度がよい。
【0043】
LP抗菌系の成分、例えば本出願明細書の各所に記載のラクトペルオキシダーゼ、過酸化水素、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、およびアンモニウムの濃度は、これらを組合せまたは水性系に加えた時点での初期濃度であってもよいし、および/またはこれらが相互に反応した後の時点の濃度であってもよい。
【0044】
本発明は、組成物の成分を製品、材料、または媒体に別々に加えることも包含している。この実施態様によれば、成分を製品、材料、または媒体に個別に加えるが、使用時に存在する各成分の最終量は少なくとも1つの微生物の成育を抑制するのに効果的な量である。本発明の態様によって、ラクトペルオキシダーゼ、過酸化水素または過酸化物源、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意のアンモニウム源を処理対象の水性系に個別に加えてよい。例えば、ハロゲン化物および任意のアンモニウム源を最初に処理対象の水性系に加え、次にラクトペルオキシダーゼを加え、最後に過酸化水素を加えてもよい。成分を加える順序は厳密ではなく、どのような順序も利用可能である。好ましくは、加える順序は、1)ハロゲン化物/アンモニウム、2)LP、3)過酸化水素または他の過酸化物源である。
【0045】
本発明の他の態様によれば、本明細書に記載のLP抗菌系の成分を水中(水性系と呼ぶこともある)で予め混合して濃厚水溶液を形成しておくことができる。次にこの濃厚水溶液を処理対象の水性系または物体に投与すればよい。ラクトペルオキシダーゼ、過酸化水素または過酸化物源、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意のアンモニウム源の濃度を選択してLP抗菌系の抗菌活性を最適化すればよい。
【0046】
予め混合した水溶液中(水性系と呼ぶこともある)のLPの濃度は約0.01重量%〜約5重量%の範囲、好ましくは約0.05重量%〜0.5重量%の範囲にあるのがよい。重量%は全て予め混合した溶液中の重量による。予め混合した溶液中に存在する過酸化物源の量は、予め混合した溶液中の過酸化水素の濃度が約0.03重量%〜約15重量%の範囲、好ましくは約0.15重量%〜1.5重量%の範囲になるのに十分な量がよい。予め混合した溶液中に存在するハロゲン化物またはチオシアン酸塩の量は、予め混合した溶液中のハロゲン化物またはチオシアン酸塩の濃度が約0.1重量%〜約50重量%の範囲、好ましくは約0.5重量%〜5重量%の範囲になるのに十分な量がよい。予め混合した溶液中に存在するアンモニウム源の量は、予め混合した溶液中のアンモニウムの濃度が約0.0重量%〜約50重量%、または約0.1重量%〜約50重量%の範囲、好ましくは約0.0重量%〜5重量、または約0.5重量%〜約5重量%の範囲になるのに十分な量がよい。
【0047】
例えば、ラクトペルオキシダーゼ、臭化アンモニウム、過酸化水素、および水(水性系と呼ぶこともある)を組み合わせて〈例えば混合して)活性な濃厚抗菌性溶液を形成するのがよい。重量%は全て抗菌性溶液中の重量による。濃厚抗菌性溶液において、ラクトペルオキシダーゼは約0.01重量%〜約5重量%の範囲、好ましくは約0.05重量%〜0.5重量%の範囲がよく、過酸化水素は約0.03重量%〜約15重量%の範囲、好ましくは約0.15重量%〜1.5重量%の範囲がよく、臭化アンモニウムは約0.1重量%〜約50重量%の範囲、好ましくは約0.5重量%〜5重量%の範囲がよい。LP:H−NHBrの重量比は、約1:1:5〜約1:10:100の範囲がよく、好ましい重量比は約1:3:10である。濃厚溶液は処理対象の水性系または物体に投与すればよい。
【0048】
予め混合した濃厚溶液としてのLP抗菌系の成分を混合するには、公知の方法によればよい。例えば、臭化塩とラクトペルオキシダーゼを固体で水(水性系と呼ぶこともある)に加えて水溶液を形成し、次に過酸化水素溶液を加えて最終組成物を形成すればよい。あるいは、臭化塩水溶液をまず調製し、後に固体のLPを加え、次に過酸化水素溶液を加えればよい。あるいは、過酸化水素源が固体状の前駆体、例えば過炭酸塩または過ホウ酸塩または酵素反応によりHを生成する系である場合には、LP抗菌系の成分は固体形で水に加えればよい。
【0049】
更に他の代替案では、LP抗菌系の成分を各溶液(水性系と呼ぶこともある)で組み合わせてもよい。例えば、臭化アンモニウム水溶液とLP水溶液を組み合わせてLP/NHBrの混合水溶液を形成し、次にH水溶液を加えればよい。H水溶液を得るには、濃厚H水溶液を希釈するか、または固体状のH前駆体、例えば過炭酸塩または過ホウ酸塩または酵素反応によりHを生成する系を水に溶解することにより可能である。この代替案によれば水性系または物体を処理する方法が容易になる。臭化アンモニウム水溶液とLP水溶液を別々のタンクに調製し、次に所望量を混合タンクに組み合わせてもよく、これにより貯蔵可能なLP/NHBrの不活性溶液が形成される。抗菌剤が必要になった時に、このLP/NHBr溶液をH水溶液と組み合わせれば使用すべき活性な抗菌性溶液が形成可能になる。LP/NHBrの混合溶液を1個のタンクに調整し、次にH水溶液を加えてLP抗菌系を活性化するのが好ましい。
【0050】
更に本発明では全て固体の組成物が提供され、この組成物ではLP抗菌系の成分が不反応の状態で貯蔵維持されるので、次に必要時に水と組み合わせれば抗菌剤が形成可能となる。例えば、ラクトペルオキシダーゼ、ハロゲン化物源、任意のアンモニウム源を含有する抗菌系、および酵素反応により過酸化水素を生成する系、例えばグルコースオキシダーゼとグルコース、またはアミラーゼ/デンプンとグルコースオキシダーゼを提供するために、ラクトペルオキシダーゼ、ハロゲン化物源、任意のアンモニウム源、および酵素反応により過酸化水素を生成する基質からなる固体状の混合物を1個の容器に貯蔵することができ、他方、酵素反応により過酸化水素を生成する酵素を別の容器に別に貯蔵することができる。使用する容器が水溶解性であれば、抗菌剤を産生するには、容器類を水と組み合わせて容器中の成分を溶解し濃厚溶液を形成するか、または容器類を水性系に直接加えれば可能である。あるいは、容器類を別々に処理対象の水性系に加えることも可能である。
【0051】
特別な例として、ラクトペルオキシダーゼ、臭化アンモニウム、およびグルコースの固体状の混合物を水溶解性の袋または容器に供給し、固体のグルコースオキシダーゼを別の水溶解性の袋または容器に供給してもよい。上の二つの水溶解性の袋の中で全ての固体を所望量の水に溶解すれば強力な抗菌性溶液が形成される。次に得られる溶液の有効量を処理対象の水性系または物体に投与すればよい。あるいは、両方の袋を処理対象の水性系に直接加えることができるし、あるいは二つの袋を別々に水性系に加えることもできる。別の特別な例として、二つの別々の袋に固体成分を貯蔵する代わりに、別々に分離された部屋がある1個の容器を使用することができる。ただしLP抗菌系の成分が十分に分離され、水に曝されるまで固体状の不活性な形態のまま保持されなければならない。例えば、一つの部屋にはラクトペルオキシダーゼ、臭化アンモニウム、およびグルコースの固体状の混合物が含有され、他の部屋には固体のグルコースオキシダーゼが含有される。LP抗菌系の全ての成分が、水と混合される以前は不反応の形態に保持されるのが好ましい。グルコースオキシダーゼを固体形で分離保持している貯蔵系では、好ましくはグルコースオキシダーゼは空気から遮断された条件で保持可能なので、酸素はグルコースオキシダーゼから物理的に分離され、したがってグルコースオキシダーゼは実質的に不反応の形態に維持される。
【0052】
グルコースオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、臭化アンモニウム、およびグルコースからなるLP抗菌系の全固体状の組成物〈グルコースオキシダーゼは他の成分から分離して貯蔵される)では、四つの成分の重量比、グルコースオキシダーゼ:LP:NHBr:グルコースは、約1:1:10:100〜約1:5:100:5000の範囲にあってよく、好ましい重量比は約1:4:100:2000である。
【0053】
特定の投与に応じて、組成物を液体形に調製するには組成物を水中にまたは有機溶媒中に溶解して可能であり、また組成物を乾燥形に調製するには適当な担体上に吸着し、または錠剤形に製剤化して可能である。本発明組成物を含有する保存剤を乳化形に調製するにはそれを水中に乳化する、または必要であれば乳化剤を加えればよい。追加の化学物質、例えば殺虫剤を前記の調製物に加えるにはその調製物が意図している用途に応ずる。
【0054】
本発明組成物を投与する方式および比率は意図している用途に応じて変化可能である。組成物を投与する場合に材料や製品にスプレーイングやブラッシングをすることができる。また、疑念のある材料や製品を処理する場合には適当に調製した組成物中に浸漬することができる。液体または液体様の媒体の場合に、その媒体中に組成物を加えるには、組成物を注ぎまたは適当な装置で計量して溶液状または懸濁状の組成物を生産することができる。
【0055】
例えば、抗菌性の濃厚溶液を上記の全固体の溶液から得るには、グルコースオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、臭化アンモニウムおよびグルコースを水に溶解する。次に得られた溶液を処理対象の水性系または物体に投与すればよい。水性系の場合には、LP抗菌系の成分は別々にまたは予め混合した溶液で加えてよく、系の有効量は次のようになる。
(a)LP:約0.01〜約1000ppm、好ましくは約0.1〜約50ppmの範囲。
(b)NHBr:約0.1〜約10000ppm、好ましくは約1〜約500ppmの範囲。
(c)グルコースオキシダーゼ:約0.01〜約500ppm、好ましくは約0.05〜約50ppmの範囲。
(d)グルコース:約1〜約10000ppm、好ましくは約10〜約5000ppmの範囲。
【0056】
別の非限定的な例として、LP抗菌系は、LP、過酸化物源、ヨウ化カリウム、および任意のアンモニウム源を含んでよい。更に別の非限定的な例として、LP抗菌系は、LP、H、およびKIを含んでよい。これら各成分の量は、LP抗菌系のLP、過酸化物源、ハロゲン化物源、および任意のアンモニウム源の量として一般的に上記した量と同様でよい。特に、KI含有LP抗菌系で使用されるKIの量は、上記したNHBr含有LP抗菌系におけるNHBrの量と同じでよい。このようなKI含有LP抗菌系は、LP抗菌系用として上記した物理的形態のいずれであってもよい。
【0057】
更に別の非限定的な例として、LP抗菌系は、LP、過酸化物源、臭化ナトリウム、および硫酸アンモニウムを含んでよい。これら各成分の量は、LP抗菌系のLP、過酸化物源、ハロゲン化物源、および任意のアンモニウム源の量として一般的に上記した量と同様でよい。特に、NaBrおよび(NHSO含有LP抗菌系で使用されるNaBrおよび(NHSOの量は、NHおよびBrの量が上記したNHBr含有LP抗菌系で供給されたと同じ量になるように選択すればよい。NaBrおよび(NHSOを含有するそのようなLP抗菌系は、LP抗菌系用として上記した物理的形態のいずれであってもよい。
【0058】
本発明方法は、任意のpH、例えば約2〜約11のpH範囲、好ましくは約5〜約9のpH範囲で実施してよい。LP抗菌系の予め混合した溶液のpHを調整するには、公知の酸または塩基を加えればよい。加える酸または塩基は系中のどの成分とも反応しないのを選択するのが望ましい。しかし、LP系の成分を水中で混合してpHを調整しないのが好ましい。LP−H−NHBrの予め混合した溶液のpHは、pH調整をしなければ、約6.9である。中性(7.0)域のpHでは、LP抗菌系の活性は最大になる。
【0059】
本発明方法は、微生物抑制が必要な産業用またはレクレーション用のどのような水性系で使用してもよい。そのような水性系は、例えば限定されないが、金属加工液、冷却水系〈冷却塔、取水冷却水、および放流冷却水)、排水系、例えば水中の廃棄物処理、例えば下水処理を受ける廃水または下水、循環水系、水泳プール、浴槽、食品加工系、飲料水系、皮革加工用水系、白濁水系、パルプスラリーおよび他の製紙用または紙加工用水系が挙げられる。一般に、産業用またはレクレーション用のどのような水性系も本発明から利益を受けることができる。また、本発明方法は、各種の産業工程またはリクレーション設備での取水処理において使用してよい。取水を最初に本発明方法で処理すれば、取水は微生物の成育を阻害されてから産業工程またはレクレーション設備に入れることが出来る。
【0060】
また、本発明方法を適用することによって、微生物の成育を支える恐れのある何かの物体上で微生物の成育を防止または阻害できる。物体の例は、例えば限定されないが、表面被膜、木材、金属、高分子、天然物(例えば、石)、石造物、セメント、板材、種子、植物、皮革、プラスチック、化粧品、パーソナルケア製品、医薬品、および他の産業材料が挙げられる。更に物体には、水性系における硬い表面、食品加工プラントおよび病院および製紙設備および農業設備が挙げられる。
【0061】
本発明を以下の実施例によって更に明瞭にするが、実施例は本発明を例示する意図のものと理解される。
【実施例1】
【0062】
リン酸緩衝液(pH6.0)中での緑膿菌(P. aeruginosa)に対する各種ラクトペルオキシダーゼ系の抗菌効果
【0063】
LP、H、および電子供給体としてのKI、NHBr、NaSCN、またはNaBrのいずれかを所望の濃度で別々に試験管中のリン酸緩衝液に加え、各種のLP抗菌系を形成した。次にこの緩衝液を3x 106細胞/mlの緑膿菌と共に接種した。接種後の接触(または処理)時間4時間後に液1.0mlを試験管から取り出し、栄養寒天上に植え殺菌不活化溶液を希釈ブランクにして10−2、10−3、および10−4倍希釈した。寒天プレートを37℃で2〜3時間インキュベートし、コロニー数をカウントした。コントロール培地のcfu/mlに基づいて殺菌率および対数減少値(logreduction)を計算した。コントロール培地にはリン酸緩衝液5ml中の細菌のみが含有された。
【0064】
図1には、上記したリン酸緩衝液中4時間の処理による、各種電子供与体を含むLP系の緑膿菌に対する抗菌活性をまとめてある。全ての系についてLP濃度は200ppmとし、各電子供与体の濃度は0.02Mとした。H濃度を図1に示すごとく変化させた。LPをHおよび電子供与体、すなわちKI、NHBr、またはNaSCNと組み合わせると強力な抗菌性のLP系が形成された。抗菌活性は、この系で各種電子供与体を使用するに応じて変化した。結果から、テストしたLP系の中でLP−H−KI系が活性に関して最強であったのが判る。その次に強力な抗菌系はLP−H−NHBrであり、Hの濃度が5ppm以上の場合には対数減少値が4.5を超えた。Hの濃度が5ppmを超える場合にはLP−H−NHBr系の結果はLP−H−KI系に匹敵するとの判明は重要である。理由は、NHBrはKIよりも遥かに安価で広く入手可能だからである。したがって、各種産業用の酵素ベース抗菌系を開発する上でLP−H−NHBr系には大きな潜在能がある。他の二つの系、すなわちLP−H−NaBrおよびLP−H−NaSCNでは、LP−H−NHBr系程の好結果が効果に関して生じなかった。それらの活性はH単独とほぼ同じまたは以下であった〈図2参照)。特に、LP−H−NHBr系の結果をLP−H−NaBr系の結果と比較するデータから判明するごとく、NaBrの代わりにNHBrを使用する場合に改良は劇的である。
【0065】
比較実験として、緩衝液中にH単独を使用し電子供与体および酵素を加えないテスト、およびHとNHBrとを使用し酵素を加えないテストを緑膿菌に対してリン酸緩衝液(pH6)中4時間の処理で実施した。上記のごとく、LP濃度はLP−H−NHBr系について200ppmとした。NHBr濃度はLP−H−NHBrおよびH−NHBrの両方の系について0.02Mとした。H濃度は図2に示すように変化させた。図2から、LP−H−NHBr系がH−NHBrおよびH単独に優る有利が明瞭である。特にH−NHBrにLPが加わると、この酵素のないH−NHBrの活性に比べて活性が2対数を超えて増加している。この酵素の働きにより、H+NHBr→Br+(HOBr)+NHBr+HOの反応が右手側に押しやられ、更に多くの強力な抗菌性産生物が生ずることが考えられる。
【実施例2】
【0066】
パルプスラリー中での緑膿菌に対する各種ラクトペルオキシダーゼの抗菌効果
【0067】
LP系の成分を別々にパルプスラリーに加えて各種LP抗菌系を形成した。この評価実験には実施例1に記載と同様なテスト手順を使用した。唯一の変更点としてリン酸緩衝に代えてパルプスラリーを使用した。パルプスラリーは、白色に漂白された乾燥パルプを5g/L、陽イオンでんぷんを0.025g/L、CaCOを0.75g/L、ASAサイズを0.01g/L、保持助剤を0.0025g/L、脱泡剤を0.0012g/Lを含有していた。パルプスラリーの稠度は固体の約0.5〜0.7%であった。滅菌後のパルプスラリーの最終pHは約7.5〜8.0であった。
【0068】
パルプスラリー中18時間の処理による、LP−H−NHBr系の緑膿菌に対する抗菌活性を、H−NHBrおよびH単独の活性との比較で図3に示す。LP濃度は200ppmとした。NHBr濃度はLP−H−NHBrおよびH−NHBrの両系について1000ppmとした。H濃度は図のように変化させた。図3から、LP−H−NHBr系ではH濃度が5ppm以上の場合に18時間以内に対数減少値が5.8を超えたことが判る。LPが加わると系の活性は、この酵素のないH−NHBrまたはH単独の活性に比べて劇的に増大した。パルプスラリー中でのLP−H−NHBr系の結果はリン酸緩衝液中での(実施例1での)結果と一致した。
【0069】
同じテスト手順を実施して、パルプスラリー中30分の処理による、LP−H−KI系の緑膿菌に対する抗菌活性を、H−KIおよびH単独の活性との比較で対比した。LP濃度は200ppmとした。KI濃度はLP−H−KIおよびH−KIの両系について1000ppmとした。図4から、LP−H−KI系はLP−H−NHBr系よりも強力な活性をより短時間にかつより低い過酸化物濃度(1〜2ppm)にて生じたことが判る。
【実施例3】
【0070】
LP抗菌系における酸化剤としての過ホウ酸塩、過炭酸塩、およびカルバマイド過酸化物の効果
【0071】
過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、およびカルバマイド過酸化物がLP系において抗菌活性を生ずる効果をテストするために、NHBrを電子供与体として使用した。
【0072】
酸化剤、LP、およびvを別々にパルプスラリーに加えた。テスト手順は実施例2に記載と同じにした。図5、6および7に、酸化剤として過ホウ酸塩(NaBO)、過炭酸塩(NaPerC)、およびカルバマイド過酸化物(CP)を使用した場合のLP系の抗菌活性を示す。図5に、パルプスラリー中18時間処理によるLP−NaBO−NHBr系の緑膿菌に対する抗菌活性を、NaBO−NHBr単独の活性との対比で示す。LP濃度は200ppmとし、NHBr濃度は1000ppmとした。NaBO濃度は図に示すように変化させた。図6に、パルプスラリー中18時間処理によるLP−NaPerC−NHBr系の緑膿菌に対する抗菌活性を、NaPerC−NHBr単独の活性との対比で示す。LP濃度は200ppmとし、NHBr濃度は1000ppmとした。NaPerC濃度は図に示すように変化させた。図7に、パルプスラリー中24時間処理によるLP−CP−NHBr系の緑膿菌に対する抗菌活性を、CP単独の活性との対比で示す。LP濃度は2ppmとし、NHBr濃度は60ppmとした。CP濃度は図に示すように変化させた。過ホウ酸塩および過炭酸塩の系では、同レベルの活性が生じ、それらは過酸化水素の系に匹敵したが、酸化剤の濃度は高くなった。LP−NaBO−NHBrおよびLP−NaPerC−NHBrの系では活性は10ppmの過ホウ酸塩または過炭酸塩から出現開始した(図5および6)が、LP−H−NHBrの系では活性は5ppmのHから始まった(図3)。このことは、過炭酸ナトリウムの過酸化水素含量が重量で約25%に過ぎない事実によって説明可能である。LP−CP−NHBr系では、1〜2ppmのカルバマイド過酸化物から強力な活性が生じた〈図7〉。LP−CP−NHBr系は、使用する酸化剤濃度が他の三つの系、すなわちLP−NaBO−NHBr(図5)、LP−NaPerC−NHBr(図6)、およびLP−H−NHBr(図3)よりもかなり低いが、生ずる活性は強い。これの理由は、LP−CP−NHBr系で使用したLP濃度(2ppm)およびNHBr濃度(60ppm)が他の三つの系で使用した200ppmのLPおよび1000ppmのNHBrよりも遥かに低かったからである。他の三つの系でのLPおよびNHBrの濃度は最適ではなかったので、過剰量のLPおよびNHBrが系中のHの一部を消費することができた。次の実施例4ではLP系の最適化を検討する。
【実施例4】
【0073】
LP系の成分を最適濃度で個別に添加
【0074】
LP−H−NHBr系の各成分の最適濃度を決定するために、1つの成分の濃度を変化させ、他の二つの成分の濃度を過剰に保持した。例えば、ラクトペルオキシダーゼの最適濃度を決定するために、H濃度を5ppmに保持し、NHBr濃度を1000ppmに保持し、LP濃度を0.1から200ppmまで変化させた。NHBrの最適濃度を決定するために、H濃度を5ppmに保持し、LP濃度を200ppmに保持し、NHBr濃度を1から200ppmまで変化させた。Hの最適濃度を決定するために、NHBr濃度を100ppmに保持し、LP濃度を1ppmに保持し、H濃度を0.1から5ppmまで変化させた。LP系の抗菌効果を評価するテスト手順は実施例1および2に記載されている。
【0075】
実施例2のデータから、LP−H−NHBrの抗菌系は、200ppmのLP、5ppmのH、および1000ppmのNHBrを組み合わせた場合に緑膿菌の対数減少値は5.5を超えたことが判る。前の評価実験の間中、系のこれら三つの成分は全て〈特に、LPおよびNHBr)量的に過剰であったと考えられた。各成分の最小有効濃度(対数減少値を>5とするための)を求めるために、上記のように組合せの一つの成分濃度を変化させ、他の二つの成分を過剰に保持した。図8はLP濃度に対するLP−H−NHBr系の抗菌活性を示す。テストでは、H濃度(5ppm)およびNHBr濃度(1000ppm)を過剰に保持し、LP濃度を0.1ppmから200ppmまで変化させた。図8のデータから、LP濃度が0.2ppm以上である限りLP−H−NHBr系によって対数減少値が5を超えたことが示されている。LPが0.1ppmで系は対数減少値が4.4に達した。したがって、対数減少値が>5に達するためのLPの最小有効濃度は0.2ppmであると結論された。同様に、NHBrの最小有効濃度は50ppmであると判った〈図9)。NHBr濃度が更に増大して50ppmを超えても、系の効果は有意に上昇しなかった。また、対数減少値が>5を達成するためのHの最小有効濃度は図10に示されるように0.5ppmであることが判った。H濃度が更に増大して0.5ppmを超えても系の活性は上昇しなかった。各成分の最小有効濃度は、これらを組み合わせた系が最大活性を達成するための各最低濃度と考えられる。濃度を更に増大して最小有効濃度を超えても、系の抗菌活性の上昇に有意に寄与せず、したがって過剰と考えられる。
【0076】
図8、9、および10から、対数減少値が>5を達成するための各成分、すなわちLP、H、およびNHBrの最小有効濃度はそれぞれ0.2、0.5、および50ppmであることが証明される。各成分の最小有効濃度を得るためには、組合せの他の二つの成分をテストの間は過剰に保持する。表1から、系の最適組合せは、LP=1ppm/H=1ppm/NHBr=40ppmであることが判った。LP−H−NHBr系が組合せの最適濃度である場合に対数減少値が>5.5となった。この系の三成分の比は、重量でLP:H−NHBr=1:1:40であった。表1の他のいくつかの組合せも最適組合せと考えることができた。それらは、(1)LP:H−NHBr=0.5:0.5:60、(2)LP:H−NHBr=0.5:1:60である。

パルプスラリー中(18時間処理)緑膿菌に対するLP−H−NHBr系の各種濃度の組合せでの抗菌活性
【表1】

【実施例5】
【0077】
予めの混合によるLP抗菌系
【0078】
LP抗菌系をイン サイツー(in situ)に作成可能にするために各成分を別々に投与部位に加える。あるいは、LP系を作成可能にするためにすべての成分を予め混合して濃厚液にする。次にこの混合液を処理対象部位に投与してもよい。以下の実施例はLP−H−NHBr抗菌系を予めの混合により作成するのを示す。
【0079】
LP−H−NHBrの典型的な予めの混合による溶液を次のように調製した。0.05gのLPと0.5gのNHBrを1オンスのガラス瓶に加えた。10mlのDI水を瓶に加えて全ての内容物を溶解した。次に、0.5gの30%Hを瓶に加え溶液中に三成分を一体に混合させた。この混合液には0.5%(W/V)LP、1.5%H、および5%NHBrが含有された。この溶液の重量比はLP:H−NHBrとして1:3:10であった。他の比率と濃度の混合液も調製した。溶液を調製後直ちに(0時間とする)、混合液10μlを10mLのパルプスラリーに加え、パルプスラリー中の最終濃度をLPは5ppm、Hは15ppm、およびNHBrは50ppmにした。微生物テストを実施するために実施例2に記載の手順を利用し、混合溶液についての抗菌テストを混合後1、2、4、6および8時間目に繰り返した。
【0080】
LP−H−NHBr混合物の効果が水溶液中で保たれる期間をテストするために、三成分をDI水中に一体に混合し、パルプスラリー中での混合液の抗菌活性を混合後の各時間にテストした。混合物は三つの異なる重量比、LP:H−NHBr=(1)1:1:40、(2)1:1:10、(3)1:3:10、についてテストした。それぞれの比について高濃度での混合および低濃度での混合を行った(表2)。混合液の抗菌活性の結果を表2に示す。

混合後の時間に対するLP/H/NHBr混合液の抗菌活性(パルプスラリー中での緑膿菌に対するテスト)
【表2】

# パルプスラリー中の各成分の最終濃度は以下の通りである:
(1)1:1:40比−LP=10ppm;H=10ppm;NHBr=400ppm。
(2)1:1:10比−LP=10ppm;H=10ppm;NHBr=100ppm。
(3)1:3:10比−LP=5ppm;H=15ppm;NHBr=50ppm。
*(H)−高濃度混合,(L)−低濃度混合
【0081】
三成分を混合した後、混合液の抗菌活性を安定に維持するには成分の比率が重要であることが判った。混合物中の成分の濃度は重要でないことが判った。1:3:10の比率では高濃度でも低濃度でも混合後少なくとも8時間は強力な抗菌活性が維持された。実施例4の上記データから、各成分を別々にパルプスラリーに加えた場合に1:1:40が最良の比率であることが示された。しかし、1:1:40の比率は三成分を予め一体に混合し次に混合物としてテスト系に投与する場合には有効でないことが判った。予め混合する溶液ではHを1:3:10の比率に増加するのが好ましく、好ましい活性が安定に保持された。
【実施例6】
【0082】
パルプ物体中に別々に加えたLP−NHBr−グルコースオキシダーゼ(GO)/グルコースの緑膿菌に対する抗菌活性
【0083】
LP−NHBr−グルコースオキシダーゼ(GO)/グルコース系の抗菌効果を求めるために以下の手順を行った。0.04gのグルコースを1/2オンスのガラス瓶中の10mlの無菌パルプ物体に加えて0.4%(W/V)グルコースをテスト系に供給した。100ppmのNHBrと5ppmのLPを10mlのパルプ物体に加え、最後にGOをパルプスラリーに2.5単位/Lから5、10、20、40、50、100、および200単位/Lまでの各濃度で加えた。同じ手順をGO−グルコース系をテストするのに行った。ただしこの系ではNHBrとLPがパルプスラリーに加えられていない。全て加えた後に内容物を十分に混合し、接種材料緑膿菌を瓶中に入れて約3×10細胞/mlの濃度にした。接種後24時間目に1.0mlの内容物を各瓶から取り出し、栄養寒天培地上に植え、希釈ブランクとしての抗菌不活性化溶液を使用して10−2、10−3、および10−4倍に希釈した。全プレートを37℃で2〜3日間インキュベートし、プレートのコロニー数をカウントした。コントロールおよび処理培地のcfu/mlを基に殺滅率と対数減少値を計算した。コントロール培地には10mlパルプスラリー中の細菌細胞のみを含有させた。
【0084】
LP、NHBr、およびグルコースの濃度を固定し、GO濃度を2.5〜200ppmの範囲で変化させたLP−NHBr−GO/Glu系をパルプスラリー中で24時間テストした。結果を表3に示す。

パルプスラリー中(24時間処理)各GO濃度でのLP−NH4Br−GO/Glu系の緑膿菌に対する効果
【表3】

【0085】
GO濃度が5および10U/Lに上昇するのに応じて、系は抗菌活性を生じた(2.6〜3.6対数減少値)。GO濃度が更に上昇して20U/L以上になるに応じて、系は強力な抗菌活性を生じ、対数減少値が>5.6となった〈表3)。したがって、>5の対数減少値を達成するにはGO濃度が約20U/L(0.5ppm相当)以上であるのが好ましい。
【0086】
LP−NHBr−GO/Glu系とGO/Glu単独との抗菌効果の比較を図11に示す。二つの系を同一のGO濃度範囲で比較した。LP−NHBr−GO/Glu系は5U/LのGOで生ずるのに対し、GO/Glu単独では効果発生を開始するにはかなり高いGO濃度(80U/L)が必要であるのが判った。LP−NHBr−GO/Glu系では僅か20U/LのGOによって>5の対数減少値が達成されるのに対し、GO/Gluのみを使用する場合には200U/LのGOによって>5の対数減少値が達成される〈図11〉。LP−NHBr−GO/Glu系は、GO/Gluが単独で作用するよりも遥かに強力な抗菌活性を示した。GO/Glu系は抗菌剤としてHのみを生ずるので、これらの結果から、LP−NHBr−GO/Glu系は、Hよりも強力な臭素が関連する抗菌性化合物を生ずるのが示唆される。
【0087】
LP−NHBr−GO/グルコース系およびGO−グルコース系について時間−殺菌の検討を実施するために以下の手順を行った。0.04gのグルコース、50ppmのNHBr、および2ppmのLPを1/2オンスのガラス瓶中の無菌パルプ物体10mlに加え、最後にこのパルプスラリーに20単位/LのGOを加えた。GO/Gluのみの系については、0.04gのグルコースと200単位/LのGOのみを10mlのパルプスラリーに加えた。全てを加えた後、内容物を十分に混合し、接種のために約3×10細胞/mlの緑膿菌を瓶中に入れた。接種後の所定の接触時間(1分から5、10、20、30分、および1時間、2、4、6、8、および24時間)に1.0mlの内容物を処理培地から取り出し、栄養寒天培地上に植え、希釈ブランクとしての抗菌不活性化溶液を使用して10−2、10−3、および10−4倍に希釈した。プレートを37℃で2〜3日間インキュベートした。プレートのコロニー数をカウントし、コントロールおよび処理培地のcfu/mlを基に殺滅率と対数減少値を計算した。
【0088】
パルプ物体中GOの最適濃度(20U/L)にてLP−NHBr−GO/Glu系を接触時間〈処理時間)に対応してテストし、殺滅速度を求めた。対数減少値を接種後の各接触時間にて測定した。GO=200U/LでのGO/Glu系を比較のために加えた。テスト結果を図12に示す。図に示すごとく、LP−NHBr−GO/Glu系は迅速な殺滅作用を示し、接触時間10分で対数減少値が4に達した。この系は2時間の処理後に対数減少値が>5.5になった。GO/Glu系は、抗菌剤としてはHを生じているので、殺滅速度はかなり緩慢であった。GO/Glu系では、GO濃度が10倍大きくても〈200対20U/L)2時間接触後の対数減少値は僅か1.0であった。それが>5.5の対数減少値に到達したのは24時間処理後であったので、LP−NHBr−GO/Glu系よりも22時間遅い。この結果から、LP−NHBr−GO/Glu系から生ずる臭素化合物、例えばブロマミンおよびHOBrが呈する殺滅速度はGO/Glu系から生ずる過酸化水素よりもかなり急速であると示唆される。LP−NHBr−GO/Glu系には、その迅速な殺滅挙動により衛生剤/消毒剤としての潜在的な用途がある。
【実施例7】
【0089】
LP−NHBr−H系の抗菌活性へのpH効果
【0090】
LP−NHBr−Hの抗菌活性へのpHの効果を次のように求めた。LPをNHBrと共に水道水中に予め混合して溶液とした。次にこの溶液を水酸化ナトリウムまたは塩酸でいろいろなpH値に調整した。次にこのpH調整したLP/NHBr溶液を希薄H溶液と混合し、三成分を含有し抗菌活性を有する最終の混合液とした。この最終混合液をパルプスラリーに加え、LP系の抗菌活性を評価するのに望ましい濃度の成分とした。
【0091】
予め混合しpH調節したLP−NHBr−H溶液を具体的に調製するのを以下に記載してもよい。0.5gのNHBrおよび0.05gのLPを4オンスのガラス瓶中の水道水50mLに加え、よく混合してpH6.95の溶液を得た。塩酸(1N)を使用してこのLP−NHBr溶液をpH2.92に調製した。別の4オンス瓶にて0.5gのH(30%)を50mLの水道水に加えて希薄H溶液(pH〜6.5)を作った。希薄H溶液をLP−NHBr溶液中にゆっくり注ぎ、緩やかに混合して三成分を全て含む混合溶液とした。最終の混合液はpHが3.4で、0.05%LP、0.15%H、および0.5%NHBrを含有した。全三成分を混合して溶液とした後直ちにLP−NHBr−Hの混合液0.2mLを10mLのパルプスラリーに加えてパルプ物体に10ppmのLP、30ppmのH、および100ppmのNHBrとした。抗菌テストを実施例1に記載の手順により実施した。結果を表4に示す。
【0092】
上記のごとく、予め混合したLP−NHBr−Hの溶液のpHは系の抗菌効果に影響可能である。最良の条件は三成分を水中にpH調整せずに混合するか、またはpHを僅かにアルカリ条件に調節することである。pH調整せずに予め混合した溶液のpHは中性域である。

パルプスラリー中18時間処理におけるLP−NHBr−Hの緑膿菌に対する抗菌効果へのpH効果
【表4】

*pH6.9のLP−NHBr−H混合液を調製するために三成分をpH調製せずに混合した。
【実施例8】
【0093】
LP系のハロゲン化物源とアンモニウム源としてのNaBr/(NHSOとNHBrの抗菌効果の比較
【0094】
ハロゲン化物源とアンモニウム源としてのNaBr/(NHSOを含有するLP系の抗菌活性をパルプスラリー中において評価し、NHBrを含有するLP系と比較した。LP系の成分を別々にパルプスラリーに加えて各種LP抗菌系を形成した。実施例2に記載と同様なテスト手順を使用して本評価実験を行った。パルプスラリー中でのLP−H−NaBr/(NHSO系とLP−H−NHBr系の緑膿菌に対する抗菌活性の比較を表5に示す。LP−H−NaBr/(NHSO系により生ずる活性レベルは、LP−H−NHBr系の活性と同じまたは僅かに上であることが判った。

パルプスラリー中(別々に加えて24時間処理)による、LP−H−NaBr/(NHSO系とLP−H−NHBr系の緑膿菌に対する抗菌活性の比較
【表5】

【0095】
同様に、NaBr/(NHSOをLP−GO/グルコース系におけるNHBrと比較した。表6は、パルプスラリー中別々に加えることによる、LP−GO/glu−NaBr/(NHSO系とLP−GO/glu−NHBr系の緑膿菌に対する抗菌活性を示す。LP−GO/glu−NaBr/(NHSO系により生ずる活性レベルは、LP−GO/glu−NHBr系の活性と同じまたは僅かにより良であった〈表6)。
【0096】
LP系に抗菌剤を作成するためのハロゲン化物源およびアンモニウム源としての二つの水溶性塩、すなわちNaBrと(NHSOを組み合わせると、その有効性はNHBrと同じまたは僅かにより良であると結論される。

パルプスラリー中(別々に加えて24時間処理)による、LP−GO/glu−NaBr/(NHSOとLP−GO/glu−NHBrの緑膿菌に対する抗菌効果の比較
【表6】

【0097】
本明細書に引用された全ての参照文献の全内容は出願人が特別に編入するものである。更に、量、濃度、あるいは他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲、あるいは好ましい上方値と好ましい下方値のリストとして提示されている場合には、これは上方の範囲限界または好ましい値と下方の範囲限界または好ましい値との対によって形成される全ての範囲を特定的に開示しており、範囲が分離して開示されているか否かには係わらないと理解すべきである。本明細書において数値の範囲が挙げられている場合は、特に言及しない限り、その範囲には、範囲の末端点が包含され、また範囲内の全ての整数および分数が包含されるものとする。ある範囲を定義する際に挙げた特別の値に本発明の範囲が限定されるものとしてはならない。
【0098】
本明細書に開示した本発明の説明と実施要領を参酌すれば、本発明の他の実施態様は当業者にとって自明である。本説明と実施例は単なる例示と考えるべきであり、本発明の範囲および要旨は以下の特許請求の範囲およびそれの均等物によって示されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】燐酸緩衝液(pH6.0)中、各種濃度のHでの緑膿菌(P. aeruginosa)に対する抗菌効果を各種ラクトペルオキシダーゼ系について比較したグラフである。
【図2】燐酸緩衝液(pH6.0)中、各種濃度のHでの緑膿菌に対する抗菌効果をH単独、H−NHBr、およびLP−H−NHBrについて比較したグラフである。
【図3】パルプスラリー中、各種濃度のHでの緑膿菌に対する抗菌効果をH単独、H−NHBr、およびLP−H−NHBrについて18時間処理してから比較したグラフである。
【図4】パルプスラリー中、各種濃度のHでの緑膿菌に対する抗菌効果をH単独、H−KI,およびLP−H−KIについて30分処理してから比較したグラフである。
【図5】パルプスラリー中、各種濃度のNaBO3での緑膿菌に対する抗菌効果をLP−NaBO−NHBrおよびNaBO−NHBrについて18時間処理してから比較したグラフである。
【図6】パルプスラリー中、各種濃度のNaPerCでの緑膿菌に対する抗菌効果をLP−NaPerC−NHBrおよびNaPerC−NHBrについて18時間処理してから比較したグラフである。
【図7】パルプスラリー中、各種濃度のCPでの緑膿菌に対する抗菌効果をLP−CP−NHBrおよびCP(カルバマイド過酸化物)単独について24時間処理してから比較したグラフである。
【図8】パルプスラリー中、一定濃度のHおよびNHBrでの緑膿菌に対する抗菌効果をLP−H−NHBrについてLP濃度の関数として示すグラフである。
【図9】パルプスラリー中、一定濃度のHおよびLPでの緑膿菌に対する抗菌効果をLP−H−NHBrについてNHBr濃度の関数として示すグラフである。
【図10】パルプスラリー中、一定濃度のNHBrおよびLPでの緑膿菌に対する抗菌効果をLP−H−NHBrについてH濃度の関数として示すグラフである。
【図11】パルプスラリー中、各種濃度のGOでの緑膿菌に対する抗菌効果をLP−NHBr−GO/GluおよびGO/Glu単独について24時間処理してから比較したグラフである。
【図12】パルプスラリー中、緑膿菌に対する抗菌効果をLP−NHBr−GO/GluおよびGO/Glu単独について比較した時間−殺滅グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの微生物の成育を、該微生物の成育を支える恐れのある水性系または物体上において抑制する方法であって、
(a)ラクトペルオキシダーゼ、(b)過酸化物源、(c)ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、ただしハロゲン化物から塩化物を除く、および任意に(d)アンモニウム源、を供給し、その供給の条件として、ラクトペルオキシダーゼ、過酸化物源由来の過酸化物、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意に供給されるアンモニウム源由来のアンモニウムが相互に反応して該水性系または物体上に抗菌剤が供給され、かつ該抗菌剤によって少なくとも1つの微生物の成育がその水性系または物体上において抑制されることを特徴とする方法。
【請求項2】
ラクトペルオキシダーゼを哺乳類の乳汁から得る請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ラクトペルオキシダーゼをウシの乳汁から得る請求項1に記載の方法。
【請求項4】
過酸化物が過酸化水素である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
過酸化物源がカルバマイド過酸化物、過炭酸塩、過ホウ酸塩、または過硫酸塩、またはこれらの組合せ物である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
過酸化物源が過酸化水素を酵素反応により生成する系であって、その系に過酸化水素を生成する酵素およびその酵素により活性化されて過酸化水素を産生する酵素基質が含まれる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
過酸化水素を生成する酵素がグルコースオキシダーゼであり、酵素基質がグルコースである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ハロゲン化物の形態がアルカリ類金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化塩である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ハロゲン化物が臭化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化カルシウム、またはヨウ化マグネシウム、またはこれらの組合せ物である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ハロゲン化物がヨウ化カリウムである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
チオシアン酸塩がチオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、またはチオシアン酸カリウム、またはこれらの組合せ物である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
アンモニウム源がアンモニウム塩である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ハロゲン化物およびアンモニウム源が共にハロゲン化アンモニウムによって提供される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ハロゲン化物およびアンモニウム源が共に臭化アンモニウムによって供給される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ハロゲン化物が臭化ナトリウムであり、アンモニウム源が硫酸アンモニウムである請求項1に記載の方法。
【請求項16】
抗菌剤を水性系に供給するにあたり、ラクトペルオキシダーゼ、過酸化物源、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、およびアンモニウム源を水性系に加え、ラクトペルオキシダーゼの水性系における濃度を約0.01〜約1000ppmの範囲、過酸化物源により得られる過酸化水素の水性系における濃度を約0.01〜約1000ppmの範囲、ハロゲン化物の水性系における濃度を約0.1〜約10,000ppmの範囲、アンモニウム源により得られるアンモニウムイオンの水性系における濃度を約0.0〜約10,000ppmの範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ラクトペルオキシダーゼの水性系における濃度を約0.1〜約50ppmの範囲、過酸化物源により得られる過酸化水素の水性系における濃度を約0.1〜約200ppmの範囲、ハロゲン化物の水性系における濃度を約1〜約500ppmの範囲、アンモニウム源により得られるアンモニウムイオンの水性系における濃度を約0〜約500ppmの範囲とすることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
過酸化物源が過酸化水素を酵素反応により生成する系であって、その系にグルコースオキシダーゼおよびグルコースが含まれ、ハロゲン化物およびアンモニウム源が共にNHBrによって供給され、かつ抗菌剤を水性系に供給するにあたり、ラクトペルオキシダーゼ、NHBr、グルコースオキシダーゼおよびグルコースを水性系に加え、ラクトペルオキシダーゼの水性系における濃度を約0.01〜約1000ppmの範囲、NHBrの水性系における濃度を約0.1〜約10000ppmの範囲、グルコースオキシダーゼの水性系における濃度を約0.01〜約500ppmの範囲、グルコースの水性系における濃度を約1〜約10,000ppmの範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
ラクトペルオキシダーゼの水性系における濃度を約0.1〜約50ppmの範囲、NHBrの水性系における濃度を約1〜約500ppmの範囲、グルコースオキシダーゼの水性系における濃度を約0.05〜約50ppmの範囲、グルコースの水性系における濃度を約10〜約5000ppmの範囲とすることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
過酸化物源が過酸化水素を酵素反応により生成する系であって、その系にグルコースオキシダーゼおよびグルコースが含まれ、ハロゲン化物がNaBrであり、アンモニウム源が(NHSOであり、かつ抗菌剤を水性系に供給するにあたり、ラクトペルオキシダーゼ、NaBr、(NHSO、グルコースオキシダーゼおよびグルコースを水性系に加え、ラクトペルオキシダーゼの水性系における濃度を約0.01〜約1000ppmの範囲、NaBrの水性系における濃度を約0.1〜約10000ppmの範囲、(NHSOの水性系における濃度を約0.1〜約10000ppmの範囲、グルコースオキシダーゼの水性系における濃度を約0.01〜約500ppmの範囲、グルコースの水性系における濃度を約1〜約10,000ppmの範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
ラクトペルオキシダーゼの水性系における濃度を約0.1〜約50ppmの範囲、NaBrの水性系における濃度を約1〜約500ppmの範囲、(NHSOの水性系における濃度を約1〜約500ppmの範囲、グルコースオキシダーゼの水性系における濃度を約0.05〜約50ppmの範囲、グルコースの水性系における濃度を約10〜約5000ppmの範囲とすることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
過酸化物源が過酸化水素を酵素反応により生成する系であって、その系にグルコースオキシダーゼおよびグルコースが含まれ、ハロゲン化物がKIであり、かつ抗菌剤を水性系に供給するにあたり、ラクトペルオキシダーゼ、KI、グルコースオキシダーゼおよびグルコースを水性系に加え、ラクトペルオキシダーゼの水性系における濃度を約0.01〜約1000ppmの範囲、KIの水性系における濃度を約0.1〜約10000ppmの範囲、グルコースオキシダーゼの水性系における濃度を約0.01〜約500ppmの範囲、グルコースの水性系における濃度を約1〜約10,000ppmの範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
ラクトペルオキシダーゼの水性系における濃度を約0.1〜約50ppmの範囲、KIの水性系における濃度を約1〜約500ppmの範囲、グルコースオキシダーゼの水性系における濃度を約0.05〜約50ppmの範囲、グルコースの水性系における濃度を約10〜約5000ppmの範囲とすることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
抗菌剤を水性系または物体に供給するにあたり、ラクトペルオキシダーゼ、過酸化物源、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意のアンモニウム源を水と共に組み合わせて濃厚液を作成し、その濃厚液中でラクトペルオキシダーゼ、過酸化物源由来の過酸化物、ハロゲン化物、および任意のアンモニウム源由来のアンモニウムを相互に反応させてその濃厚液中に抗菌剤を提供し、次にこの濃厚液を水性系または物体に加えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
濃厚液中に、濃厚液の重量に対しラクトペルオキシダーゼが約0.01重量%〜約5重量%の濃度範囲で、NHBrが約0.1重量%〜約50重量%の濃度範囲で、およびHが約0.03重量%〜約15重量%の濃度範囲で含まれることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
濃厚液中に、濃厚液の重量に対しラクトペルオキシダーゼが約0.05重量%〜約0.5重量%の濃度範囲で、NHBrが約0.5重量%〜約5重量%の濃度範囲で、およびHが約0.15重量%〜約1.5重量%の濃度範囲で含まれることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ラクトペルオキシダーゼ、HおよびNHBrが濃厚液中に重量比で約1:1:5〜1:10:100の範囲で存在することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項28】
ラクトペルオキシダーゼ、HおよびNHBrが濃厚液中に重量比で約1:3:10の範囲で存在することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項29】
濃厚液中に、濃厚液の重量に対しラクトペルオキシダーゼが約0.01重量%〜約5重量%の濃度範囲で、NaBrが約0.1重量%〜約50重量%の濃度範囲で、(NHSOが約0.1重量%〜約50重量%の濃度範囲で、およびHが約0.03重量%〜約15重量%の濃度範囲で含まれることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項30】
濃厚液中に、濃厚液の重量に対しラクトペルオキシダーゼが約0.05重量%〜約0.5重量%の濃度範囲で、NaBrが約0.5重量%〜約5重量%の濃度範囲で、(NHSOが約0.5重量%〜約5重量%の濃度範囲で、およびHが約0.15重量%〜約1.5重量%の濃度範囲で含まれることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項31】
ラクトペルオキシダーゼ、H、NaBr,および(NHSOが濃厚液中に重量比で約1:1:5:5〜1:10:100:100の範囲で存在することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項32】
ラクトペルオキシダーゼ、H、NaBr,および(NHSOが濃厚液中に重量比で約1:3:10:10の範囲で存在することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項33】
濃厚液中に、濃厚液の重量に対しラクトペルオキシダーゼが約0.01重量%〜約5重量%の濃度範囲で、KIが約0.1重量%〜約50重量%の濃度範囲で、およびHが約0.03重量%〜約15重量%の濃度範囲で含まれることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項34】
濃厚液中に、濃厚液の重量に対しラクトペルオキシダーゼが約0.05重量%〜約0.5重量%の濃度範囲で、KIが約0.5重量%〜約5重量%の濃度範囲で、およびHが約0.15重量%〜約1.5重量%の濃度範囲で含まれることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項35】
ラクトペルオキシダーゼ、H、およびKIが濃厚液中に重量比で約1:1:5〜1:10:100の範囲で存在することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項36】
ラクトペルオキシダーゼ、H、およびKIが濃厚液中に重量比で約1:3:10の範囲で存在することを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項37】
抗菌剤を水性系または物体に供給するにあたり、ラクトペルオキシダーゼ、過酸化物源、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意にアンモニウム源を水性系または物体に別々に加え、その加える条件として抗菌剤が水性系または物体においてインサイツー(in situ)に形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項38】
水性系が、金属加工系、冷却水系、排水系、食品加工系、飲料水系、皮革加工水系、洗浄水系、製紙系または紙加工系である請求項1に記載の方法。
【請求項39】
水性系における微生物の成育の抑制が、上記抗菌剤を、金属加工系、冷却水系、排水系、食品加工系、飲料水系、皮革加工水系、製紙用白濁水系、製紙系または紙加工系の水取り入れ口(intake water)に供給することによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項40】
微生物の成育を支える恐れのある水性系または物体上において微生物を殺害または成育阻害する方法であって、以下:
ラクトペルオキシダーゼ、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、ただしハロゲン化物から塩化物を除く、任意に供給するアンモニウム源、および酵素基質に作用して過酸化水素を産生する特性を有する酵素の酵素基質を固体形で含有する第一の水溶解性容器を用意する、
酵素基質に作用して過酸化水素を産生する特性を有する酵素を固体形で含有する第二の水溶解性容器を用意する、
第一の水溶解性容器および第二の水溶解性容器を水に投入し、その条件として、酵素基質に作用して過酸化水素を産生する特性を有する酵素が酵素基質に作用して過酸化水素が産生され、かつラクトペルオキシダーゼ、過酸化水素、ハロゲン化物、任意に供給するアンモニウム源由来のアンモニウムが相互に反応して抗菌剤を形成し、
水性系または物体に抗菌剤が供給され、この抗菌剤によって水性系または物体上における微生物の成育が阻害されること、
を特徴とする方法。
【請求項41】
第一の水溶解性容器および第二の水溶解性容器を水に投入し、その条件として、酵素基質に作用して過酸化水素を産生する特性を有する酵素が酵素基質に作用して過酸化水素が産生され、かつラクトペルオキシダーゼ、過酸化水素、ハロゲン化物、任意に供給するアンモニウム源由来のアンモニウムが相互に反応して抗菌剤を形成する工程を実施するにあたり、以下の諸工程:
第一の水溶解性容器を水に溶解して、ラクトペルオキシダーゼ、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、任意に供給するアンモニウム源、および酵素反応により過酸化水素を生成する系の酵素基質を含有する第一の濃厚液を形成する、
第二の水溶解性容器を水に溶解して、酵素基質に作用して過酸化水素を産生する特性を有する酵素を含有する第二の濃厚液を形成する、ただし第二の濃厚液を第一の濃厚液と接触させない、
次に、第一の濃厚液および第二の濃厚液を別々に水性系または物体に加え、処理し、その処理の条件として抗菌剤をその水性系または物体上にインサイツー(in situ)で形成する、
によって行うことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
酵素基質に作用して過酸化水素を産生する特性を有する酵素がグルコースオキシダーゼであり、酵素基質がグルコースである請求項40に記載の方法。
【請求項43】
ラクトペルオキシダーゼ、過酸化物源、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、ただしハロゲン化物から塩化物を除く、および任意に供給するアンモニウム源を含む組成物。
【請求項44】
過酸化物源が過酸化水素である請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
過酸化物源がカルバマイド過酸化物、過炭酸塩、過ホウ酸塩、または過硫酸塩、またはこれらの組合せ物である請求項43に記載の組成物。
【請求項46】
過酸化物源が過酸化水素を酵素反応により生成する系であって、その系に過酸化水素を生成する酵素およびその酵素により活性化されて過酸化水素を産生する酵素基質が含まれる請求項43に記載の組成物。
【請求項47】
過酸化水素を生成する酵素がグルコースオキシダーゼであり、酵素基質がグルコースである請求項43に記載の組成物。
【請求項48】
ハロゲン化物の形態がアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化塩である請求項43に記載の組成物。
【請求項49】
ハロゲン化物が臭化アンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化カルシウム、またはヨウ化マグネシウム、またはこれらの組合せ物である請求項43に記載の組成物。
【請求項50】
ハロゲン化物がヨウ化カリウムである請求項43に記載の組成物。
【請求項51】
チオシアン酸塩がチオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、またはチオシアン酸カリウム、またはこれらの組合せ物である請求項43に記載の組成物。
【請求項52】
アンモニウム源がアンモニウム塩である請求項43に記載の組成物。
【請求項53】
ハロゲン化物およびアンモニウム源が共にハロゲン化アンモニウムによって供給される請求項43に記載の組成物。
【請求項54】
ハロゲン化物およびアンモニウム源が共に臭化アンモニウムによって供給される請求項43に記載の組成物。
【請求項55】
ハロゲン化物が臭化ナトリウムであり、アンモニウム源が硫酸アンモニウムである請求項43に記載の組成物。
【請求項56】
ラクトペルオキシダーゼの水性系(aqueous system)における濃度(使用時)が約0.01〜約1000ppmの範囲、過酸化物源により得られる過酸化水素の水性系における濃度が約0.01〜約1000ppmの範囲、ハロゲン化物の水性系における濃度が約0.1〜約10,000ppmの範囲、任意のアンモニウム源により得られるアンモニウムイオンの水性系における濃度が約0.0〜約10,000ppmの範囲である請求項43に記載の組成物。
【請求項57】
ラクトペルオキシダーゼおよび臭化アンモニウムを含む組成物。
【請求項58】
ラクトペルオキシダーゼ、臭化ナトリウム、および硫酸アンモニウムを含む組成物。
【請求項59】
該組成物の重量に対しラクトペルオキシダーゼを約0.01重量%〜約5重量%の濃度で、NHBrを約0.1重量%〜約50重量%の濃度で、およびHを約0.03重量%〜約15重量%の濃度で含有する水性系(aqueous system)を含む請求項54に記載の組成物。
【請求項60】
該組成物の重量に対しラクトペルオキシダーゼを約0.05重量%〜約0.5重量%の濃度で、NHBrを約0.5重量%〜約5重量%の濃度で、およびHを約0.15重量%〜約1.5重量%の濃度で含有する水性系(aqueous system)を含む請求項54に記載の組成物。
【請求項61】
ラクトペルオキシダーゼ、HおよびNHBrが約1:1:5〜1:10:100の重量比で存在する請求項54に記載の組成物。
【請求項62】
ラクトペルオキシダーゼ、HおよびNHBrが約1:3:10の重量比で存在する請求項54に記載の組成物。
【請求項63】
該組成物の重量に対しラクトペルオキシダーゼを約0.01重量%〜約5重量%の濃度で、NaBrを約0.1重量%〜約50重量%の濃度で、(NHSOを約0.1重量%〜約50重量%の濃度で、およびHを約0.03重量%〜約15重量%の濃度で含有する水性系(aqueous system)を含む請求項55に記載の組成物。
【請求項64】
該組成物の重量に対しラクトペルオキシダーゼを約0.05重量%〜約0.5重量%の濃度で、NaBrを約0.5重量%〜約5重量%の濃度で、(NHSOを約0.5重量%〜約5重量%の濃度で、およびHを約0.15重量%〜約1.5重量%の濃度で含有する水性系(aqueous system)を含む請求項55に記載の組成物。
【請求項65】
ラクトペルオキシダーゼ、H、NaBr、および(NHSOが約1:1:5:5〜1:10:100:100の重量比で存在する請求項55に記載の組成物。
【請求項66】
ラクトペルオキシダーゼ、H、NaBr,および(NHSOが重量比で約1:3:10:10で存在する請求項55に記載の組成物。
【請求項67】
該組成物の重量に対しラクトペルオキシダーゼを約0.01重量%〜約5重量%の濃度で、KIを約0.1重量%〜約50重量%の濃度で、およびHを約0.03重量%〜約15重量%の濃度で含有する水性系(aqueous system)を含む請求項49に記載の組成物。
【請求項68】
該組成物の重量に対しラクトペルオキシダーゼを約0.05重量%〜約0.5重量%の濃度で、KIを約0.5重量%〜約5重量%の濃度で、およびHを約0.15重量%〜約1.5重量%の濃度で含有する水性系(aqueous system)を含む請求項50に記載の組成物。
【請求項69】
ラクトペルオキシダーゼ、H、およびKIが約1:1:5〜1:10:100の重量比で存在する請求項50に記載の組成物。
【請求項70】
ラクトペルオキシダーゼ、H、およびKIが約1:3:10の重量比で存在する請求項50に記載の組成物。
【請求項71】
ラクトペルオキシダーゼを約0.01〜約1000ppmの濃度範囲、NHBrを約0.1〜約10,000ppmの濃度範囲、グルコースオキシダーゼを約0.01〜約500ppmの濃度範囲、グルコースを約1〜約10,000ppmの濃度範囲で含有する水性系(aqueous system)を含む請求項43に記載の組成物。
【請求項72】
ラクトペルオキシダーゼを約0.01〜約1000ppmの濃度範囲、NaBrを約0.1〜約10,000ppmの濃度範囲、(NHSOを約0.1〜約10,000ppmの濃度範囲、グルコースオキシダーゼを約0.01〜約500ppmの濃度範囲、グルコースを約1〜約10,000ppmの濃度範囲で含有する水性系(aqueous system)を含む請求項43に記載の組成物。
【請求項73】
ラクトペルオキシダーゼを約0.01〜約1000ppmの濃度範囲、KIを約0.1〜約10,000ppmの濃度範囲、グルコースオキシダーゼを約0.01〜約500ppmの濃度範囲、グルコースを約1〜約10,000ppmの濃度範囲で含有する水性系(aqueous system)を含む???請求項43に記載の組成物。
【請求項74】
請求項47に記載の組成物であって、この組成物を実質的に反応の起こらない形態に所定期間維持するために、グルコースオキシダーゼをラクトペルオキシダーゼ、グルコース、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意のアンモニウム源から物理的に分離してある組成物。
【請求項75】
グルコースオキシダーゼが空気から遮断される条件下に保持される請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
ラクトペルオキシダーゼ、グルコース、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意のアンモニウム源は第一の水溶解性容器に保持しグルコースオキシダーゼは第二の水溶解性容器に保持する、あるいはラクトペルオキシダーゼ、グルコース、グルコースオキシダーゼ、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意のアンモニウム源を少なくとも1つの仕切り区画を有する容器に収納し、グルコースオキシダーゼがラクトペルオキシダーゼ、グルコース、ハロゲン化物またはチオシアン酸塩、および任意のアンモニウム源から物理的に分離されている請求項74に記載の組成物。
【請求項77】
グルコースオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、臭化アンモニウム、およびグルコースを約1:1:10:100〜約1:5:100:5000の範囲の重量比で含有する請求項43に記載の組成物。
【請求項78】
グルコースオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、臭化ナトリウム、硫酸アンモニウム、およびグルコースを約1:1:10:10:100〜約1:5:100:100:5000の範囲の重量比で含有する請求項43に記載の組成物。
【請求項79】
グルコースオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ヨウ化カリウム、およびグルコースを約1:1:10:100〜約1:5:100:5000の範囲の重量比で含有する請求項43に記載の組成物。
【請求項80】
微生物による侵襲を受けやすい製品、材料、または媒体の中または上において少なくとも1つの微生物の成育を抑制する方法であって、その製品、材料、または媒体に請求項43に記載の組成物を加えることを特徴とする方法。
【請求項81】
材料または媒体が固体、分散体、乳化体、または溶液体の形態である請求項80に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−543850(P2008−543850A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517003(P2008−517003)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/022928
【国際公開番号】WO2006/138271
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(590003238)バックマン・ラボラトリーズ・インターナショナル・インコーポレーテッド (18)
【氏名又は名称原語表記】BUCKMAN LABORATORIES INTERNATIONAL INCORPORATED
【Fターム(参考)】