説明

水抜き管、水抜き管の設置方法及び水抜き方法

【課題】集水性を長期に維持することができる水抜き管、水抜き管の設置方法及び水抜き方法を提供する。
【解決手段】水抜き管1は、排水口1aが設けられた一端を地盤から露出させて地盤中に設置され、地盤中の水を集めて排水口1aから排出する水抜き管である。水抜き管1は、管壁が生分解性材料からなると共に、多数の取水孔5が形成された管壁を通じて地盤中の水を中空部3aに取り込む外管と、外管3の中空部3a内に充填され、当該中空部3a内に取り込んだ水を流通させる帯水層11を形成する礫7と、外管3に沿って延在し外管3を加熱するための熱水搬送パイプ13と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中の水を集めて排出する水抜き管、水抜き管の設置方法及び水抜き方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水抜きボーリング用の水抜き管としては、例えばVP40の塩ビ管の管壁に所定の間隔で径5mm程度の取水孔が形成されてなる有孔塩ビ管が広く用いられている。この有孔塩ビ管を地盤に埋設し、地盤中に含まれる地下水を、取水孔を通じて有孔塩ビ管の中空部に導入し、その後、地下水を有孔塩ビ管の下端の排水口から排出する。また、下記特許文献1のように、地盤に埋設する透水性の管の外側に生分解性樹脂からなる被覆層を設ける技術も知られている。管の外側に生分解性樹脂の被覆層を設けることにより、埋設作業時の損傷を抑制することができ、埋設後には被覆層が土中の微生物により分解されるので、透水性の障害にもなりにくいといった提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−057363号公報
【特許文献2】特開平11−209906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水抜きボーリング用の水抜き管にあっては、地盤中の水を内部に導入する集水性が重要である。しかしながら、上記の有孔塩ビ管では、土砂が取水孔に詰まったり、植物の根が取水孔に侵入したり、土砂の細粒分が取水孔付近に集まったりすることで、集水性が劣化するおそれもある。また、地盤中で管が潰れたり折れたりして集水性が失われるというおそれもある。また、上記特許文献1のように、生分解性樹脂の被覆層をもつ管では、被覆層の生分解の進行状態によっては十分な集水性が発揮されないという問題がある。このように、水抜き管においては、集水性を長期に亘って維持することが課題となっている。
【0005】
本発明は、集水性を長期に維持することができる水抜き管、水抜き管の設置方法及び水抜き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水抜き管は、排水口が設けられた一端を地盤から露出させて地盤中に設置され、地盤中の水を集めて排水口から排出する水抜き管であって、管壁の少なくとも一部が生分解性材料からなると共に、管壁を通じて地盤中の水を中空部に取り込む外管と、外管の中空部内に充填されると共に、当該中空部内に取り込んだ水を流通させる帯水層を形成する帯水層形成材と、外管に沿って延在し外管を加熱する加熱手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この水抜き管では、外管の管壁を通じて地盤中の水が中空部に導入され、この水が中空部内を流通して排水口から排出される。この水抜き管の長期の使用にあっては、集水性が劣化する可能性があるが、外管の管壁の少なくとも一部が生分解性材料からなるので、生分解性材料からなる管壁の部位が地中の微生物で分解される。そうすると、分解された当該部位に孔が空く等の現象が生じることで集水性が回復する。また、加熱手段で外管を加熱することにより、管壁の加水分解が促進され、その後の微生物による生分解を促進することができるので、必要な時期に集水性の回復を促進することができる。また、外管の中空部には帯水層形成材が充填されているので、地盤中で外管が潰れたり折れたりする可能性も低減される。また、外管が破損したとしても、帯水層自体によって集水が行われる。従って、この水抜き管は、集水性を長期に維持することができる。
【0008】
具体的には、加熱手段は、外管の中空部内に延在し排水口側の一端から供給される熱水を搬送する熱水搬送パイプを有し、熱水搬送パイプから排出される熱水を帯水層に流通させることで外管を加熱することとしてもよい。この構成によれば、地盤から露出した排水口側にある熱水搬送パイプの一端に熱水を供給するといった簡易な手法で外管を加熱することができる。
【0009】
また、加熱手段は、熱水に加えて供給されるアルカリ水を熱水搬送パイプで搬送し、アルカリ水を熱水と一緒に帯水層に流通させることとしてもよい。この場合、アルカリ水が外管に接触することにより、外管の生分解が更に促進される。
【0010】
また、加熱手段は、外管の中空部内に延在し放熱することで外管を加熱することとしてもよい。この場合、外管を加熱する際に、熱水等の水分を外管中空部に放出する必要がなくなり、地盤中の水を排出するといった水抜き管の本来の目的に反することがなくなる。また、生分解性材料の生分解は、その前段階として加水分解反応が必要であるので、水分を必要とする。放熱による外管の加熱によれば、外管のうち地盤中の水に元々接している部位において、この水を積極的に利用し、当該部位において特に集中的に加水分解反応が促進される。すなわち、本来、集水性が特に必要とされる部分(水が存在する部分)で集中的に外管の加水分解反応を促進させ、ひいては外管の生分解を促進させ、集中的に集水性の回復を図ることができる。
【0011】
また、加熱手段は、排出口側に形成される熱水入口と熱水出口とを有し外管の中空部内を往復して延在する熱水循環パイプを有し、熱水循環パイプに熱水を循環させることにより中空部内で放熱することとしてもよい。この構成によれば、地盤から露出した排水口側にある熱水循環パイプの熱水入口から熱水を供給するといった簡易な手法で外管を加熱することができる。そして、排水口側にある熱水循環パイプの熱水出口から循環済みの熱水が排出されるので、熱水等の水分が外管中空部に放出される必要がなく、地盤中の水を排出するといった水抜き管の本来の目的に反することがなくなる。また、絶えず高温の熱を中空部内に供給することができるので、効率的に外管の加熱を行うことができる。
【0012】
また、帯水層形成材は、複数の通水性の袋に小分け収納された状態で、中空部に設置されていることとしてもよい。この構成によれば、中空部に帯水層形成材を充填する作業の作業性が向上する。
【0013】
本発明の水抜き管の設置方法は、上述の水抜き管を地盤中に設置するための水抜き管の設置方法であって、地盤にボーリング孔を形成する工程と、長手方向に複数連結されることで外管を形成するための単位管を準備し、当該単位管の中空部に帯水層形成材を設置する工程と、中空部に帯水層形成材が設置された状態の単位管を、長手方向に順次接続しながら複数ボーリング孔に挿入していく工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明の水抜き管の設置方法は、上述の水抜き管を地盤中に設置するための水抜き管の設置方法であって、地盤にボーリング孔を形成する工程と、長手方向に複数連結されることで外管を形成するための複数の単位管を、長手方向に順次接続しながらボーリング孔に複数挿入していき、地盤中に外管を形成する工程と、帯水層形成材を収納した通水性の袋を複数数珠繋ぎに接続した状態で準備する工程と、地盤中に形成された外管の中空部に、数珠繋ぎに接続された状態の通水性の袋を挿入していく工程と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
これらの設置方法によれば、地盤中に上述の水抜き管を設置することができる。
【0016】
本発明の水抜き方法は、排水口が設けられた一端を地盤から露出させた状態で水抜き管を地盤中に設置し、地盤中の水を集めて排水口から排出させる水抜き方法であって、水抜き管は、管壁の少なくとも一部が生分解性材料からなると共に、管壁を通じて地盤中の水を中空部に取り込む外管と、外管の中空部内に充填されると共に、当該中空部内に取り込んだ水を流通させる帯水層を形成する帯水層形成材と、を備えており、水抜き管を地盤中に設置する水抜き管設置工程と、水抜き管設置工程で設置された水抜き管の外管を加熱する外管加熱工程と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この水抜き方法では、外管の管壁を通じて地盤中の水が中空部に導入され、この水が中空部内を流通して排水口から排出される。この水抜き管の長期の使用にあっては、集水性が劣化する可能性があるが、外管の管壁の少なくとも一部が生分解性材料からなるので、生分解性材料からなる管壁の部位が地中の微生物で分解される。そうすると、分解された当該部位に孔が空く等の現象が生じることで集水性が回復する。また、外管加熱工程で外管を加熱することにより、管壁の加水分解が促進され、その後の微生物による生分解を促進することができるので、必要な時期に集水性の回復を促進することができる。また、外管の中空部には帯水層形成材が充填されているので、地盤中で外管が潰れたり折れたりする可能性も低減される。また、外管が破損したとしても、帯水層自体によって集水が行われる。従って、この水抜き方法では、集水性を長期に維持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、集水性を長期に維持することができる水抜き管、水抜き管の設置方法及び水抜き方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る水抜き管の使用状態を示す地盤の断面図である。
【図2】本発明に係る水抜き管の第1実施形態を示す一部破断斜視図である。
【図3】図2の水抜き管の断面図である。
【図4】複数の生分解有孔管を繋いでなる外管を示す斜視図である。
【図5】熱水搬送パイプの他の形態を示す水抜き管の断面図である。
【図6】本発明に係る水抜き管の第2実施形態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る水抜き管の第3実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る水抜き管の第4実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る水抜き管の第5実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る水抜き管、水抜き管の設置方法及び水抜き方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の各実施形態において、互いに同様又は同等の構成要素については図面に同一の符号を付すこととし、重複する説明を省略する。
【0021】
(第1実施形態)
図1に示す水抜き管1は、土木工事において地下水や堤体内の水位を低下させる(或いは水位を上昇させない)目的で施工される水抜きボーリングに用いられるものである。水抜きボーリングでは、地盤100の斜面103(法面)に、5°程度の水平に近い角度で傾斜したボーリング孔101が設けられ、水抜き管1はボーリング孔101の保孔管として用いられる。
【0022】
水抜き管1は、5°程度の水平に近い角度で傾斜してボーリング孔101内に埋設され、一端の排水口1aを斜面103から露出させている。水抜き管1は、地盤100に含まれる地下水を集め、集めた地下水を傾斜によって排水口1aまで導き地盤100の外に排出する。一般的には、水抜き管1の長さは40m程度である。なお、ボーリング孔101の傾斜、すなわち使用状態における水抜き管1の傾斜は、5°程度といった略水平の傾斜には限られず、諸条件に応じて約40〜50°程度まで適宜調整される。
【0023】
図2及び図3に示すように、水抜き管1は、内径40mm程度の外管3を有している。外管3の管壁は、硬質の生分解性樹脂からなる。生分解性樹脂としては、ポリ乳酸、デンプン系、酢酸セルロース系、ポリヒドロキシブチレート等を採用することができる。外管3の管壁には径5mm程度の多数の取水孔5が設けられており、外管3の中空部3aと外管3の外部とが取水孔5によって連通されている。取水孔5は、周方向に2箇所対向して配置され長手方向に100mm程度のピッチで千鳥配置される。なお、外管3は、図4に示すように、例えば、長さ2m程度の生分解性有孔管(単位管)4を長手方向に必要な本数だけ接続して形成される。生分解性有孔管4同士の接続は、公知の管同士の接続方法を用いて行えばよい。
【0024】
外管3の中空部3aには、礫7が充填されている。礫7の粒子同士の間には空隙が形成されるので、中空部3aには、水を含んだり水を流通させたりすることが可能な帯水層11が形成される。すなわち、礫7は、中空部3aに帯水層11を形成する帯水層形成材として機能する。帯水層11は、水抜き管1の周辺の地盤よりも高い透水係数を有する必要があり、そのような帯水層11を形成するために、礫7の粒径の仕様は、下式(1)と(2)とを両方満たすことが好ましい。
D15drain> 5×D15soil …(1)
D15drain< 5×D85soil …(2)
但し、D85soilは地盤100の85%粒径、D15soilは地盤100の15%粒径、D15drainは礫7の15%粒径である。式(1)が満たされることにより、帯水層11の透水性が確保される。式(2)が満たされることにより、パイピング(浸透水によって土粒子が流出し地盤内にパイプ状の孔や水みちができる現象)の抑制が図られる。
【0025】
上記仕様の礫7を外管3の中空部3aに設置することで、地盤100の流出を防止することができ、かつ、透水性を妨げない効果も確保される。従って、外管3に設ける孔径(中空部3aの径)については、透水性の確保さえできれば、長距離にわたるボーリング孔101への挿入を確実に行うことができるように配慮すればよい。また、中空部3aに充填する作業の作業性向上のため、パーライト等の軽量土の礫7を採用することが好ましい。
【0026】
中空部3aに礫7が充填されることにより、外管3が外圧で押し潰されたり折れたりする可能性が低減する。地盤100中の地下水は、外管3の取水孔5を通じて中空部3aの帯水層11に侵入し、その後、下り傾斜に従って帯水層11内を流動し、最下端の排水口1aから排出される。なお、礫7が排水口1aから流れ出ないように、排水口1aをメッシュ状の部材で塞いでもよい。また、礫7が排水口1aから流れ出ないようにするためには、後述するように、礫7を通水性の袋17に収納した状態で(図7参照)中空部3a内に設置しておいてもよい。
【0027】
更に、水抜き管1は、中空部3a内に挿通された熱水搬送パイプ(加熱手段)13を備えている。熱水搬送パイプ13は、排水口1aから他端の口1bのやや手前の位置まで延在している。熱水搬送パイプ13の排水口1a側の一端は熱水の供給口として機能する熱水入口13aであり、熱水搬送パイプ13の他端は熱水を排出する熱水出口13bである。すなわち、熱水入口13aから熱水を供給すると、熱水は熱水搬送パイプ13内を搬送され、熱水出口13bから排出される。熱水出口13bから排出された熱水は、帯水層11内を下り傾斜に従って流動し、排水口1aから排出される。このように、供給された熱水が帯水層11内を流動することにより、外管3が加熱される。また、熱水を搬送する際に熱水搬送パイプ13自体が放熱することで、周囲の外管3を加熱する作用もある。なお、熱水搬送パイプ13の上端の排水口1aから熱水を排出する方式に代えて、熱水搬送パイプ13の途中の管壁に小孔を設け、当該小孔から熱水を放出するようにしてもよい。熱水入口13aから供給する熱水の温度は、周辺地盤よりも高い温度であればよい。例えば、ポリ乳酸を原料とした生分解性樹脂を外管3の材料として用いた場合、熱水入口13aから供給する熱水の温度は、一般的に60℃以上とすることが特に好ましい。
【0028】
続いて、水抜き管1を地盤100中に設置するための工法について説明する(水抜き管設置工程)。まず、地盤100の斜面103にボーリング孔101を形成する。その一方、外管3を構成するために必要な本数の生分解性有孔管4を準備する。次に、1本目の生分解性有孔管4の中空部に熱水搬送パイプ13を敷設し、更に中空部には礫7を充填する。その後、管の接続作業を可能とする程度の長さを残して、1本目の生分解性有孔管4をボーリング孔101に挿入する。次に、2本目の生分解性有孔管4の中空部に熱水搬送パイプ13を敷設し礫7を充填する。次に、2本目の生分解性有孔管4を1本目の生分解性有孔管4に接続すると共に、熱水搬送パイプ13を接続する。そして、1本目の生分解性有孔管4を押し込むようにして、2本目の生分解性有孔管4をボーリング孔101に挿入する。以上を必要回数繰り返すことで、ボーリング孔101内に水抜き管1が完成する。
【0029】
続いて、水抜き管1及び水抜き管1を用いる水抜き方法が奏する作用効果について説明する。水抜き管1を長期使用した場合、土砂が取水孔5に詰まったり、植物の根が取水孔5に侵入したり、土砂の細粒分が取水孔5付近に集まったりすることで、集水性が劣化するおそれもある。ところが、外管3の材料は生分解性樹脂であるので、使用開始時から徐々に、地中の微生物により外管3の管壁が分解されていく。そして、分解により管壁に孔が空く等の現象が生じることで、外管3に新たな取水孔が形成されることとなり集水性が回復する。
【0030】
また、熱水搬送パイプ13で熱水供給を行うことより、外管3を加熱することができる。外管3を加熱すると、外管3の管壁の加水分解が促進され、その後の微生物による管壁の生分解を促進することができるので、必要な時期に集水性の回復を促進することができる。従って、水抜き管1の排水量の低下が見られたときに、熱水供給(外管加熱工程)を行って集水性を回復させるといった運用も可能になる。また、熱水搬送パイプ13によれば、地盤100から露出した排水口1a側の熱水入口13aに熱水を供給するといった簡易な手法で外管3を加熱することができる。
【0031】
また、外管3の中空部3aには礫7が充填されているので、地盤100中で外管3が潰れたり折れたりする可能性も低減される。また、仮に外管3が破損した場合にも、帯水層11が維持されることで集水が可能であり、帯水層11により排水口1aに通じる水路が確保される。また、最終的に外管3のすべてが生分解で消滅した後も、残された帯水層11の作用により、地盤100中の水を集水し斜面103に排水することが可能である。以上により、この水抜き管1は、排水機能を長期に維持することができる。
【0032】
なお、本実施形態では1本の熱水搬送パイプ13を外管3の中空部3aに設置する例を説明したが、熱水搬送パイプは、外管3の外壁面に沿って外管3の外側に設置してもよい。また、熱水搬送パイプ13は、複数本を設置してもよい。熱水搬送パイプ13は、中空部3aの中央に設置されることが好ましい。また、図5に示すように、長手方向に延びる断面コ字状の隔壁21を外管3の内壁面に設けることで、中空部3aから区画された通水領域23を設けてもよい。この構成では、外管3の管壁の一部及び隔壁21によって熱水搬送パイプが構成され、上記通水領域23に熱水を流通させ搬送することができる。この場合、生分解性有孔管4同士を長手方向に接続する工程においては、通水領域23の位置を合わせながら管同士を接続する必要がある。
【0033】
また、外管3の生分解を促進するためには、外管3にアルカリ水を接触させることも有効である。従って、熱水搬送パイプ13から供給する熱水にアルカリ水を加えることで、帯水層11にアルカリ水を送り込んでもよい。この場合、熱水搬送パイプ13から排出されるアルカリ水が、熱水と一緒に帯水層11を流通しながら外管3の内壁面に接触し、外管3の生分解を更に促進する。アルカリ水としては、アルカリ性を示すものであれば何でもよく、例えば、アンモニア水、石鹸水、炭酸ナトリウム溶液等を用いることができる。アルカリ水はpH8.0以上であればよいが、例えば、ポリ乳酸を原料とする生分解性樹脂の外管3を用いる場合で1日以内の分解を期待する場合には、pHが10よりも高い(pH10よりもアルカリ性が強い)アルカリ水を用いることが好ましい。なお、熱水にアルカリ水を加える方法に代えて、搬送パイプ13にアルカリ水のみを送り込んでもよい。
【0034】
また、管壁に取水孔5を形成した外管3に代えて、図6に示すように、管壁をメッシュ構造とした生分解性樹脂の外管53を採用してもよい。また、この管壁は生分解性樹脂の織物であってもよい。このような外管53によれば、管壁面全体が地盤100中の地下水を透過させて中空部に導く。そして、長期使用によりメッシュの目詰まりが進行してきた場合にも、管壁の生分解により集水性が回復する。
【0035】
(第2実施形態)
続いて、本発明に係る水抜き管の第2実施形態を説明する。図7に示すように、水抜き管201では、礫7が袋17に小分け収納された状態で中空部3aに充填されている。袋17は、外管3の管壁よりも高い通水性を有しており、また、帯水層11の通水性の妨げともならないように高い通水性を有することが好ましい。袋17の材料としては、例えば不織布が用いられる。この構成によれば、中空部3aに礫7を充填する作業における作業性が向上する。なお、袋17の材料として生分解性材料を用いてもよい。
【0036】
また、図7に示されるように、袋17同士を長手方向に数珠繋ぎの状態に接続してもよい。この数珠繋ぎの構成によれば、水抜き管201を地盤100中に形成するにあたり、ボーリング孔101内にまず外管3を形成した後、中空部3aに礫7をまとめて挿入する工法も可能になる。具体的な水抜き管201の設置方法は次の通りである。まず、ボーリング孔101を形成した後、管の接続作業を可能とする程度の長さを残して、1本目の生分解性有孔管4をボーリング孔101に挿入する。次に、2本目の生分解性有孔管4を1本目の生分解性有孔管4に接続しボーリング孔101に挿入する。以上を必要回数繰り返すことで、ボーリング孔101内に外管3を形成する。その一方、礫7を必要数の袋17に小分け収納し、袋17同士を数珠繋ぎに接続する。
【0037】
そして、図7に示すように、数珠繋ぎの袋17を、排水口1a側から外管3の中空部3aに挿入していく。このとき、各袋17同士を密着させるように中空部3aに押し込むことで、礫7を隙間無く中空部3a内に充填することができる。また、このとき、熱水搬送パイプ13も数珠繋ぎの袋17に付随させておき、袋17と一緒に中空部3a内に送り出す。なお、熱水搬送パイプ13が硬質の材料であれば、数珠繋ぎの袋17を中空部3aに押し込み易く好ましい。以上を繰り返して必要数の袋17を中空部3aに挿入し、先頭の袋17と熱水搬送パイプ13の熱水出口13bとが他端の口1b近傍まで到達すれば、水抜き管201が完成する。
【0038】
なお、数珠繋ぎの袋17や熱水搬送パイプ13を外管3の孔奥に挿入するにあたり、引き込み線を利用する方式を採用してもよい。この場合、生分解性有孔管4を繋いで外管3を設置するときに同時に引き込み線を設置しておく。この引き込み線に数珠繋ぎの袋17や熱水搬送パイプ13をつなぎ、ボーリング孔101の口元で引き込み線の一端を引っ張ることで、数珠繋ぎの袋17や熱水搬送パイプ13を外管3の孔奥に挿入することができる。また、水抜き管201の外管加熱工程は、水抜き管1における外管加熱工程と同様に行うことができる。
【0039】
(第3実施形態)
続いて、本発明に係る水抜き管の第3実施形態を説明する。図8に示すように、水抜き管301は、熱水搬送パイプ13に代えて、熱水循環パイプ(加熱手段)61を備えている。熱水循環パイプ61は、中空部3a内で排水口1aから他の口1bの近傍までの間を往復して延在している。熱水循環パイプ61の両端は、排水口1a側に位置しており、その一方は熱水入口61aであり他方は熱水出口61bである。水抜き管301の設置工程は、水抜き管1又は水抜き管201の設置工程と同様に行うことができる。
【0040】
この水抜き管301の構成に基づき、熱水入口61aから熱水を供給すると、熱水は、熱水循環パイプ61内を搬送され中空部3a内を循環した後、熱水出口61bから排出される。このとき、熱水循環パイプ61から外管3へは熱のみが付与される。すなわち、熱水の熱により熱水循環パイプ61が放熱することで、外管3が加熱される(外管加熱工程)。熱水循環パイプ61の材料としては、放熱性が高い材料が好ましい。
【0041】
このように、熱水循環パイプ61によれば、帯水層11に熱水を放出することなく、熱のみを中空部3a内に付与して、外管3の加熱を実現することができる。すなわち、熱水等の水分を中空部3aに放出する必要がないので、中空部3aを通じて地盤100中の水を排出するといった水抜き管301の本来の目的に反することもない。
【0042】
また、生分解性樹脂の生分解は、その前段階として加水分解反応が必要であるので、水分を必要とする。熱水循環パイプ61の加熱によれば、外管3のうち地盤100中の地下水に元々接している部位において、特に集中的に加水分解反応が促進される。すなわち、本来、集水性が特に必要とされる部分(地下水が存在する部分)で集中的に管壁の加水分解反応を促進させ、ひいては管壁の生分解を促進させ、集中的に集水性の回復を図ることができる。
【0043】
なお、中空部3aに水分を導入せずに外管3を加熱可能とする構成としては、例えば、外管3に沿って延在する電熱線を設ける構成も考えられる。しかしながら、熱水循環パイプ61は電熱線よりも断線に強い点において優れている。すなわち、電熱線が断線すれば加熱機能が喪失される場合もあるが、熱水循環パイプ61では、多少の熱水漏れがあったとしても、加熱機能が喪失される可能性は比較的低い。
【0044】
(第4実施形態)
続いて、本発明に係る水抜き管の第4実施形態を説明する。図9に示すように、水抜き管401は、外管3に代えて、管壁の一部のみを生分解性樹脂とした外管63を備えている。すなわち、外管63は、多数の取水孔5を形成した塩ビ(ポリ塩化ビニル)製の管と、上記多数の取水孔5のうちの一部の取水孔5を塞ぐシール部65とを備えている。そして、シール部65は生分解性樹脂を材料とするシール材からなる。図9の例では、取水孔5のうちの半数がシール部65によって塞がれている。水抜き管401の設置工程は、水抜き管1又は水抜き管201の設置工程と同様に行うことができ、水抜き管401の外管加熱工程は、水抜き管1における外管加熱工程と同様に行うことができる。
【0045】
この構成の水抜き管401によれば、使用開始当初は、シール部65で塞がれていない取水孔5の存在により、集水性が発揮される。水抜き管401の長期使用により、シール部65で塞がれていない取水孔5の集水性が低下してきた場合にも、シール部65が生分解されることにより新たな取水孔5が現れ集水性が回復する。このように、水抜き管401も水抜き管1と同様の作用効果を奏する。
【0046】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。各実施形態で説明した各水抜き管が備える各構成要素は、適宜組み合わせて採用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1,201,301,401…水抜き管、1a…排水口、3,53,63…外管、3a…中空部、4…生分解性有孔管(単位管)、11…帯水層、13…熱水搬送パイプ(加熱手段)、13a…熱水搬送パイプの一端、13b…熱水搬送パイプの他端、17…袋、61…熱水循環パイプ、61a…熱水入口、61b…熱水出口、65…シール部、100…地盤。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口が設けられた一端を地盤から露出させて前記地盤中に設置され、前記地盤中の水を集めて前記排水口から排出する水抜き管であって、
管壁の少なくとも一部が生分解性材料からなると共に、前記管壁を通じて前記地盤中の前記水を中空部に取り込む外管と、
前記外管の前記中空部内に充填されると共に、当該中空部内に取り込んだ前記水を流通させる帯水層を形成する帯水層形成材と、
前記外管に沿って延在し前記外管を加熱する加熱手段と、
を備えたことを特徴とする水抜き管。
【請求項2】
前記加熱手段は、
前記外管の前記中空部内に延在し前記排水口側の一端から供給される熱水を搬送する熱水搬送パイプを有し、
前記熱水搬送パイプから排出される前記熱水を前記帯水層に流通させることで前記外管を加熱することを特徴とする請求項1に記載の水抜き管。
【請求項3】
前記加熱手段は、
前記熱水に加えて供給されるアルカリ水を前記熱水搬送パイプで搬送し、
前記アルカリ水を前記熱水と一緒に前記帯水層に流通させることを特徴とする請求項2に記載の水抜き管。
【請求項4】
前記加熱手段は、
前記外管の前記中空部内に延在し放熱することで前記外管を加熱することを特徴とする請求項1に記載の水抜き管。
【請求項5】
前記加熱手段は、
前記排出口側に形成される熱水入口と熱水出口とを有し前記外管の前記中空部内を往復して延在する熱水循環パイプを有し、
前記熱水循環パイプに熱水を循環させることにより前記中空部内で放熱することを特徴とする請求項4に記載の水抜き管。
【請求項6】
前記帯水層形成材は、複数の通水性の袋に小分け収納された状態で、前記中空部に設置されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の水抜き管。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の水抜き管を前記地盤中に設置するための水抜き管の設置方法であって、
前記地盤にボーリング孔を形成する工程と、
長手方向に複数連結されることで前記外管を形成するための単位管を準備し、当該単位管の中空部に前記帯水層形成材を設置する工程と、
前記中空部に前記帯水層形成材が設置された状態の前記単位管を、長手方向に順次接続しながら複数前記ボーリング孔に挿入していく工程と、
を備えたことを特徴とする水抜き管の設置方法。
【請求項8】
請求項6に記載の水抜き管を前記地盤中に設置するための水抜き管の設置方法であって、
前記地盤にボーリング孔を形成する工程と、
長手方向に複数連結されることで前記外管を形成するための複数の単位管を、長手方向に順次接続しながら前記ボーリング孔に複数挿入していき、前記地盤中に前記外管を形成する工程と、
前記帯水層形成材を収納した前記通水性の袋を複数数珠繋ぎに接続した状態で準備する工程と、
前記地盤中に形成された前記外管の中空部に、数珠繋ぎに接続された状態の前記通水性の袋を挿入していく工程と、
を備えたことを特徴とする水抜き管の設置方法。
【請求項9】
排水口が設けられた一端を地盤から露出させた状態で水抜き管を前記地盤中に設置し、前記地盤中の水を集めて前記排水口から排出させる水抜き方法であって、
前記水抜き管は、
管壁の少なくとも一部が生分解性材料からなると共に、前記管壁を通じて前記地盤中の前記水を中空部に取り込む外管と、
前記外管の前記中空部内に充填されると共に、当該中空部内に取り込んだ前記水を流通させる帯水層を形成する帯水層形成材と、を備えており、
前記水抜き管を前記地盤中に設置する水抜き管設置工程と、
前記水抜き管設置工程で設置された前記水抜き管の前記外管を加熱する外管加熱工程と、
を備えたことを特徴とする水抜き方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−46892(P2012−46892A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187406(P2010−187406)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】