説明

水改質手段およびそれを備えた給湯装置

【課題】電気回路を必要とせず、コンパクトかつ低ランニングコストで無機化合物等を湯水等に溶解する水改質手段およびそれを備えた給湯装置を提供すること。
【解決手段】水回路17と、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状の混合物である無機化合物25を収納する収納手段26とを備え、前記無機化合物25を溶解させた湯水を、前記水回路17から流出させるとともに、前記収納手段26の収納容積を60mL以上としたことを特徴とする水改質手段21で、水改質手段の耐用年数を通して、水改質手段の収納容積に充填した無機化合物をコンパクトな構成で安価に溶解することができる水改質手段を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機化合物等を湯水等に溶解する水改質手段およびそれを備えた給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の装置は、目的の成分を含む材料を電気分解にて水中に溶解させ、この溶解した水を目的とする回路へ供給している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された従来の給湯装置を示すものである。図7に示すように、亜鉛陽極41と、陰極42と、ケーシング43と、直流電源44から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−190882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、目的とする成分(亜鉛陽極1)の水への溶解方法は、電気分解の原理によるため、直流電源9と、回路を流れる水への漏電を防止するための絶縁回路(図示せず)が必要となる。従って、装置のサイズアップ、コストアップと共に、直流電源9においては電力を必要とするため消費電力量が増加する。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電気回路を必要とせず、コンパクトかつ低ランニングコストで無機化合物等を湯水等に溶解する水改質手段およびそれを備えた給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の水改質手段は、水回路と、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状の混合物である無機化合物を収納する収納手段とを備え、前記無機化合物を溶解させた水を、前記水回路から流出させるとともに、前記収納手段の収納容積を60mL以上としたことを特徴とするものである。
【0008】
これによって、水と無機化合物の間の溶解濃度差で物質が移動する物質拡散(フィックの法則)の原理で、水に無機化合物を溶解させることが可能となる。従って、これまで必要としていた電源回路と絶縁回路が削減でき、コンパクト化と低コスト化を実現することができる。電力不要の原理であるため、消費電力量を抑えることができる。
【0009】
また、耐用年数の約10年間にわたって、水改質手段の収納容積に充填した無機化合物をコンパクトな構成で安価に溶解することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気回路を必要とせず、コンパクトかつ低ランニングコストで無機化合物等を湯水等に溶解する水改質手段およびそれを備えた給湯装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯装置の構成図
【図2】同実施の形態における水改質手段の詳細構成図
【図3】同実施の形態における無機化合物の表面の濃度分布および速度境界層を示す図
【図4】同実施の形態における水改質手段の無機化合物と小穴体との関係を示す図
【図5】(a)本発明の実施の形態1における濾過手段の小穴体の構成図(b)同他の濾過手段の小穴体の構成図(c)同他の濾過手段の小穴体の構成図
【図6】従来の給湯装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、水回路と、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状の混合物である無機化合物を収納する収納手段とを備え、前記無機化合物を溶解させた水を、前記水回路から流出させるとともに、前記収納手段の収納容積を60mL以上としたことを特徴とする水改質手段である。
【0013】
これによって、水改質手段の耐用年数を通して、水改質手段の収納容積に充填した無機化合物をコンパクトな構成で安価に溶解することができる水改質手段を提供することができる。
【0014】
第2の発明は、湯水を浴槽へ供給する浴槽水注湯回路と、前記浴槽水注湯回路を開閉する浴槽水注湯弁とを備え、前記水改質手段を、前記浴槽水注湯回路の前記浴槽水注湯弁の下流側に配設したことを特徴とする給湯装置である。
【0015】
これによって、水改質手段は浴槽への湯はり停止時などに生じるウォーターハンマー現象(浴槽水注湯回路等の水圧上昇)の影響を受けないため、水改質手段の耐圧構造を簡素化することができる。さらに、浴槽への湯はりの水流を利用するため、湯はりと同時に無機化合物を溶解させた湯水を浴槽へ供給できるので、利便性が向上する。
【0016】
第3の発明は、湯水を浴槽へ供給する浴槽水注湯回路と、前記浴槽水注湯回路を開閉する浴槽水注湯弁とを備え、前記水改質手段の収納手段の相当直径を、前記浴槽水注湯回路の相当直径よりも大きく形成したことを特徴とする給湯装置である。
【0017】
これによって、通水するさいの断面積は水改質手段が浴槽水注湯回路より増加し、水改質手段を流れる水の流速は浴槽水注湯回路を流れる水より低減させることができる。水改質手段の溶解していない無機化合物が通水時に流され難くなり、また、水改質手段の断面積が増加するので、溶解していない無機化合物の一部が流された場合であっても、濾過手段が無機化合物により閉塞することを防ぐことができる。
【0018】
第4の発明は、貯湯タンクを備え、前記水改質手段を、前記貯湯タンクと共に本体筐体内に配設したことを特徴とする給湯装置である。
【0019】
これによって、低外気温時であっても貯湯タンク、電源回路などからの僅かな放熱により筐体内の雰囲気は常時加温されているため、水改質手段の凍結防止などの断熱が簡素化、または不要となり、また、別途水改質手段の筐体を必要としないため、簡単な構成かつ低コストで給湯装置を提供することができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における給湯装置の構成図を示すものである。
【0022】
図1において、圧縮機1、給湯熱交換器2、減圧手段3、蒸発器4を冷媒回路5で順に環状に接続してヒートポンプユニット6を構成している。貯湯ユニット7の貯湯タンク8には水が貯留されており、出湯回路9は貯湯タンク8、給湯水ポンプ10、給湯熱交換器2、貯湯タンク8を順に接続する回路である。浴槽水加熱回路11は、貯湯タンク8、風呂熱交換器12、浴槽水加熱ポンプ13、貯湯タンク8を順に接続する回路であり、風呂熱交換器12の他方の回路には浴槽14が接続されている。
【0023】
浴槽水循環回路15は、浴槽14、浴槽水を搬送する浴槽水循環ポンプ16、風呂熱交換器12を順に接続する回路である。浴槽水注湯回路17(水回路)は、貯湯タンク8の湯水を、浴槽水循環回路15を経由して浴槽14へ注湯する回路である。この回路には貯湯タンク8の高温の水と水道水を混合する浴槽水混合弁18、注湯する水温を検知する温度検知手段19、浴槽水注湯回路17の開閉を行う浴槽水注湯弁20を順に備える。
【0024】
水改質手段21は、浴槽水注湯回路17から分岐した水改質回路22によって連通され、水改質回路22への通水の有無を制御する水改質弁23を配置している。水改質手段21は、浴槽水注湯弁20の下流側の浴槽水注湯回路17上に、貯湯ユニット7の筐体内に貯湯タンク8と共に収納するように設けた。
【0025】
ヒートポンプユニット6で貯湯タンク8に貯留された水を加熱する運転は、以下のような動作となる。貯湯タンク8の水は、給湯水ポンプ10によって給湯熱交換器2へ搬送され、ヒートポンプサイクル動作によって加熱される。給湯水ポンプ10は給湯熱交換器2で加熱された給湯水の温度が予め決定した温度になる様に、出湯回路9の流量を制御する。
【0026】
浴槽14への湯張り、並びに、浴槽水の加熱は以下のような動作となる。浴槽水注湯回路17の浴槽水混合弁18は、温度検知手段19で検知する注湯温度がリモコン等(図示せず)で予め設定された温度となるように、貯湯タンク8に貯留された高温の湯と水道水の混合割合を調整する。所定温度となった浴槽水は、浴槽水注湯回路17、浴槽水循環回路15を順に経由して浴槽14へ流出する。
【0027】
一方、浴槽14の浴槽水を加熱する場合は、貯湯タンク8に貯留された高温の水を、浴槽水加熱ポンプ13によって風呂熱交換器12へ搬送し、浴槽水循環ポンプ16より搬送された浴槽水を加熱する。風呂熱交換器12で浴槽水を加熱して温度が低下した給湯水は、給湯水下部回路24が接続する貯湯タンク8の下部より内部へ流入する。
【0028】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0029】
利用者が浴槽14へ湯はりを行う場合は、リモコン等で無機化合物の投入の有無を選択し、湯はり動作の指示操作を行う。リモコン操作後、予め設定された温度に浴槽水混合弁18で調整された水が、浴槽水注湯弁20を閉から開に制御した場合に、浴槽水注湯回路17、浴槽水循環回路15を経由して浴槽14に流出する。
【0030】
浴槽14への無機化合物の投入を選択した場合は、水改質弁23は開となり、浴槽水注湯回路17を流れる水の一部が水改質回路22に分岐して流入し、水が水改質手段21を通過する際に、無機化合物が水に溶解して、浴槽14への湯はり動作と同時に、浴槽14に流入する。一方、浴槽14への無機化合物の投入を選択しない場合は、水改質弁23は閉となり、浴槽水注湯回路17を流れる水に無機化合物が溶解することなく、浴槽14に流入する。浴槽14への無機化合物の投入の有無を容易に選択でき、操作性が向上することから、利便性が向上する。
【0031】
水改質手段21は、浴槽水注湯弁20の下流側に配置した。浴槽水注湯弁20が開から閉へ制御された場合は、ウォーターハンマー現象が発生し、上流側の回路に設けている、浴槽水混合弁18、貯湯タンク8等は水道圧以上の水圧負荷を与える。下流側に設けることによって、水改質手段21は、ウォーターハンマー現象による水圧負荷が掛かることがない。
【0032】
以上のように、本実施の形態においては、浴槽水注湯回路17と、浴槽水注湯弁20とを備え、浴槽水注湯弁20、水改質手段21の順に浴槽水注湯回路17に備えた給湯装置とした。これにより、水改質手段21は浴槽14への湯はり停止時などに生じるウォーターハンマー現象(浴槽水注湯回路等の水圧上昇)の影響を受けないため、水改質手段21の耐圧構造を簡素化することができる。
【0033】
さらに、浴槽14への湯はりの水流を利用するため、湯はりと同時に無機化合物を溶解させた水を浴槽14へ供給できるので、特別な操作を追加する必要がなく利便性が向上し、また、別途ポンプ等の動力を必要とせず構成を簡単にできるので安価な給湯装置を提供することができる。
【0034】
図2は、同実施の形態における水改質手段の詳細構成図を示すものである。
【0035】
図2において、水改質手段21は、無機化合物収納容器(収納手段)26の上流と下流にそれぞれ濾過手段27を配置し、濾過手段27の間に挟まれた無機化合物25の収納容積である無機化合物収納容器(収納容積)26を構成している。
【0036】
水改質手段21は、二重管構造であり、内筒は略円柱状、外筒は略円錐状で断面積が大きくなる方向を鉛直上方に向け配置し無機化合物収納容器26を構成している。無機化合物25は、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状との混合物であり、無機化合物収納容器26に収納される。無機化合物25は、水に対して溶解性を持つ。
【0037】
図2中の無機化合物25は径が異なる顆粒状のものであり、これを多層状となるように構成すると、無機化合物収納容器26内には多孔質の空間が形成される。無機化合物収納容器26は、水改質回路22により浴槽水注湯回路17に連通され、水改質手段21を構成する。
【0038】
濾過手段は、ステンレス、銅、真鍮等の金属、または、PPS、PTFE、PP、PE等の樹脂により構成し、メッシュ、不織布、多孔体、発泡体等の形状で通過する水を濾過することにより、水に溶解していない無機化合物25の流出を防止する。
【0039】
以上のように構成された水改質手段21について、以下その動作、作用を説明する。
【0040】
浴槽水注湯回路17から分岐した水は、2重管の内筒を略鉛直下方へ流れた後、二重管の外筒の無機化合物収納容器26に無機化合物25により形成される多孔質の空間を略鉛直上方に流れ、再び浴槽水注湯回路17と合流する。
【0041】
水には粘性があるため、多孔質の空間を通過する際に無機化合物25の表面から表面近傍の領域には速度境界層が生成される。図3はその速度境界層の状態を示す図である。無機化合物25の表面近傍の速度境界層の流速は小さく、多孔質空間の中心部を通過する流速は大きい分布となる。
【0042】
無機化合物25は水に対して溶解性を持つため、無機化合物25の表面近傍の分子は、表面近傍の水に溶解し、水の溶解濃度が上昇する。表面近傍の水は流速が小さいため、溶
解濃度は高い値となる。
【0043】
これに対して流速の大きい多孔質空間の中心部の流れる水の溶解濃度は低い。このとき、水中に溶解する無機化合物の濃度差が生じた場合は、濃度差に応じて高い方から低い物質が移動する(フィックの法則)ため、表面近傍の水に溶解した無機化合物25は濃度の低い中心の水に移動する。この物質拡散の原理を利用することで、無機化合物25を多孔質空間内の水に溶解させることができる。
【0044】
また、無機化合物収納容器26を略鉛直上方に通水した際、無機化合物25は水流によって略鉛直上方へ移動する力と、自重によって略鉛直下方へ落下する力が均衡し、ある高さで浮遊し激しく動きまわる流動層を形成する。流動層を形成することで無機化合物25同士の接点が離れ、単独に水中を浮遊するので、表面積全てが水に接するため、少ない無機化合物25の充填量で、通水する水に対して溶解量を増加することができる。
【0045】
水改質手段21の無機化合物収納容器26の相当直径d1は、水改質手段21に連結した浴槽水注湯回路17の相当直径d2より大きく構成したことにより、断面積が大きくなったことから線流速(単位時間あたりの流れる水が移動する距離)は減少する。
【0046】
水改質手段21内の溶解していない無機化合物25が、水改質手段21に通水時する際に流され難くなり、また、水改質手段の断面積が増加するので、溶解していない無機化合物の一部が流された場合であっても、濾過手段27が無機化合物25により閉塞することを防ぐことができる。
【0047】
また、水改質手段21から濾過手段27を通過した無機化合物25は、浴槽水循環回路15に合流した際に無機化合物収納容器26内部より流速の早い水流により流されるため、浴槽水注湯回路17および浴槽水循環回路15で滞留、蓄積、閉塞することがないので、メンテナンスを必要とせず、信頼性が高い給湯装置を提供することができる。
【0048】
図5は、水改質手段の無機化合物25と濾過手段の小穴体28の寸法の関係を示す図である。図5において、小穴体28は径の異なる複数の小穴28a、28b、28cから構成される。
【0049】
図6は、小穴体28の構成図である。(a)は、線形状の繊維で角状の小穴を形成したものである。(b)は、所定の厚さの板に、複数種の径の小穴を施したものである。(c)は、粒状の非溶解材料を多層状として多孔質空間を形成したものである。
【0050】
何れも、無機化合物収納容器26内の水勢によって無機化合物25の顆粒が無機化合物収納容器26から流出しようとした場合、これを防止するものであるが、この構成と形状の限りではない。
【0051】
水改質手段21を流出する溶解濃度は、無機化合物収納容器26を通過する水流速と、無機化合物25の水と接触する表面積等で決定される。水改質手段21の溶解濃度を所定値とする場合は、無機化合物25の全表面積をある範囲とする必要があるため、図5の無機化合物収納容器26に収納する無機化合物25の粒径をある一定の範囲内のサイズに選別したものを利用する必要がある。
【0052】
選別を行うと、コストアップの要因となるため、複数の径を有する無機化合物25の中において、無機化合物25の最大粒径D1に対して、小穴体28の最大の小穴28aの径D2は、D2<D1とした場合、以下の効果を得ることができる。D2未満の粒径の無機化合物25は、小穴28a、28b、28cから流出する。
【0053】
利用初期は粒径の小さいものは、水改質手段21外へ流出するが、所定時間経過後は、D2以上の粒径の無機化合物25は無機化合物収納容器26内に貯留され続ける。この状態が形成された場合、無機化合物25の粒径をある一定の範囲内のサイズに選別したことと同等となる。従って、サイズが混在する無機化合物25を用いても、目的とする濃度を水に溶解させる構造となる。
【0054】
濾過手段の小穴体28の最大の開口寸法D2は、0.5mm未満としたことから、水改質手段21を通過した湯水には、無機化合物25が必ず0.5mm未満の大きさに溶解して投入される。水改質手段21より下流側では、無機化合物25は、0.5mm未満であるので、貯湯ユニットから浴槽14まで湯水を導く浴槽水循環回路15の、給湯装置を設置する施工時の配設状態によらず、無機化合物25が、浴槽水循環回路15の途中で滞留堆積することがなく浴槽14に溶解した無機化合物25を確実に投入することができる。
【0055】
また、水改質手段21より下流側では無機化合物25は0.5mm未満であることから、浴槽水循環回路15上の風呂熱交換器12、配管分岐部や接続部等に滞留堆積閉塞せず、かつ、浴槽水循環ポンプ13の駆動部に噛み込みロックすることがないので、メンテナンスの必要がなく、信頼性が高い給湯装置を提供することができる。
【0056】
無機化合物25について説明する。無機化合物25は、水に対する溶解度が、使用温度範囲また使用pH範囲において15ppm(無機化合物[mg]/水[L])以下のものを用いることが望ましい。
【0057】
溶解度は、溶媒である水の体積1[L]に対して、溶質である無機化合物が飽和まで溶解した時の質量[mg]として表される。水改質手段21に通水したさいの無機化合物25の消費量を少なくすることができるので、無機化合物25の充填量を少なくすることができ、無機化合物収納容器26の容積を小さくすることができ、水改質手段21をコンパクト化、給湯装置の本体筐体内に水改質手段21を収納することができるので、別途溶解抑制手段等を必要とせず、コンパクトかつ簡単な構成で信頼性を向上することが可能となり、低コスト化を実現することができる。
【0058】
なお、無機化合物25として用いることが出来る材料は酸化亜鉛や亜鉛化合物として、酸化亜鉛(ZnO)、塩基性炭酸亜鉛(mZnCO・nZn(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、亜鉛置換型ゼオライト、亜鉛置換型キレート、亜鉛シリカゲル担持物等であり、これらを単一または組み合わせて用いることができる。
【0059】
また、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、鉄化合物(酸化鉄、水酸化鉄)、酸化銅、酸化ケイ素、二酸化マンガン、水酸化コバルト、酸化チタン、塩化銀、硫酸バリウム等を用いることができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態においては、無機化合物25と、無機化合物収納容器26とを有し、無機化合物収納容器26を浴槽水注湯回路17で接続した水改質手段21を備えた給湯装置とした。これによって、水と無機化合物の間の溶解濃度差で物質が移動する、物質拡散(フィックの法則)の原理で、水に無機化合物を溶解させることが可能となる。
【0061】
尚、無機化合物25を、亜鉛を含む亜鉛化合物(酸化亜鉛、炭酸亜鉛など)とした場合、以下の効果を得ることができる。亜鉛は比較的要求量の多いヒトの必須元素の一つであり、通常の食事からの供給では欠乏しやすく、栄養強化目的で、食品に添加、また、栄養補助食品やサプリメントと摂取される元素である。
【0062】
これに対しては、浴槽に亜鉛を溶解させた水を供給することで、入浴中に経皮吸収による栄養強化を行うことができる。また、水に溶解した亜鉛イオンは、肌を引き締め、収れんさせる効果があるので、肌からの水分蒸散を抑えることができることから、入浴後のサッパリ感が長続きし、また、水分が失われないために肌のうるおいを向上させ、また、気化熱を奪われないので、入浴後の温まり感が長続きする。
【0063】
また、亜鉛は細菌に対して抑制効果があり、亜鉛を含んだ水を供給することから、水改質手段より下流側に位置する浴槽循環回路および浴槽の細菌を減少、また、増殖を抑制することができ、清潔で衛生的な入浴ができる給湯装置を提供することができる。
【0064】
亜鉛化合物の酸化亜鉛は、日本薬局方や旧化粧品原料基準に定められた規格に準拠することで、医薬品や化粧品として使用することができる材料であり、主にヒトの肌の角質層に対して収斂作用、消炎作用などの作用を与え、肌の角質層の状態を良好に保つことができる。
【0065】
水改質手段21について説明する。水改質手段21に収納する無機化合物25は、粉体を造粒、また、粗大結晶や粗大析出物を破砕することにより、0.5〜2.0mm程度に造粒した顆粒を含むことが望ましい。無機化合物25を顆粒状にすることにより、水改質手段21に通水する水によって、溶解していない無機化合物25が水改質手段21から流出することがないので、長期に渡って水改質手段21に通水する際に確実に無機化合物25を溶解させる機能を保つことができる。
【0066】
無機化合物25を酸化亜鉛とした場合、酸化亜鉛の真比重は5.6g/mLであるが、酸化亜鉛を顆粒化した際のかさ比重は、1.0〜3.0g/mLの範囲となり、おおよそ2.0mg/mL程度となる。無機化合物収納容器26に酸化亜鉛を約50mL投入することにより、約100g相当の酸化亜鉛を充填するとこができる。
【0067】
酸化亜鉛の溶解度は、室温で1.6mg/Lであることから、水改質手段21の耐用年数である10年以上に渡って、無機化合物収納容器26から溶解していない無機化合物25の流出を防止できると共に、水改質手段21の収納容積に充填した無機化合物25をコンパクトな構成で安価に溶解することができる給湯装置を提供することができる。
【0068】
浴槽14の設置高さや給湯装置からの距離により浴槽水循環回路15の長さや屈曲状態等が変化するため、浴槽14への注湯流量が変化し、それに伴って、水改質手段21の流量が変化する。水改質手段21の無機化合物収納容器26の相当直径d1を、浴槽水注湯回路17の相当直径d2より大きく構成したことにより、貯湯ユニット7と浴槽14が近接し注湯流量が増加した場合であっても、水改質手段21内の流速を低下させることができ顆粒の流出を防止することができる。
【0069】
また、無機化合物収納容器26を鉛直下方から鉛直情報に水が流れる際、無機化合物に充填した顆粒が浮遊懸濁する流動層を形成し、通水していない場合の固定層を形成した場合と比べ、無機化合物収納容器26の内部に占める顆粒の体積が増加する。
【0070】
無機化合物収納容器26を60mL以上としたことで、給湯装置の注湯流量の変化の範囲で、水改質手段21内の流速が最も増加した場合であっても、無機化合物25が固定層に対し約20%体積増加した流動層を形成することでき、水改質手段21に充填した顆粒の流動層の形成を省スペースで確保できるので、水改質手段21の通水時に無機化合物25を確実に溶解することができる。
【0071】
これにより、水改質手段21の耐用年数に十分な必要量を充填することができ、水改質手段21を小さく構成することができ、安価で長期間無機化合物を溶解することができる給湯装置を提供することができる。
【0072】
本発明において、水改質手段21は給湯装置の貯湯ユニット7筐体に収納し、浴槽水注湯回路17に配置している。貯湯ユニット7筐体内部の雰囲気温度は、低外気温時であっても貯湯タンク8からの放熱や、電源回路から僅かな放熱により、貯湯ユニット7筐体内部の雰囲気は常時加温されるため、断熱材や凍結防止ヒータ等の凍結防止手段を必要とせず、水改質手段21を簡素化できる。
【0073】
また、別途水改質手段の筐体を必要としないため、簡単な構成で低コストで給湯装置を提供することができる。なお、水改質手段21は、浴槽水循環回路15に設けても貯湯ユニット7内部に配置することで、凍結防止手段や別途筐体を必要とせず、簡単な構成で低コストで給湯装置を提供することができることに変わりはない。
【0074】
また、給湯装置を貯湯式給湯機とした場合、貯湯タンク8には高温の湯を貯湯するので、この高温の湯を水改質手段21へ供給することによって機器の殺菌、滅菌を行うことができる。また、水中に溶け込んでいる残留塩素が貯留中に少なくなるので、給湯装置本体の材質は耐腐食性材料ではなく、安価な汎用部品を使うことができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、水改質手段21を浴槽水注湯回路17上に配置したが、この限りではなく、浴室のカランやシャワー、キッチンのカラン等に出湯するカラン回路29に水改質手段21を配置することで、カラン回路を流れる水に無機化合物25を溶解することができ、浴室のカランやキッチンで無機化合物25が溶解した湯水を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明にかかる水改質手段は、コンパクト化、構成の簡素化、低コスト化、信頼性向上、利便性向上に繋がり、貯湯式給湯機の他、ガス熱源の給湯機にも利用できる。
【符号の説明】
【0077】
17 浴槽水注湯回路(水回路)
21 水改質手段
25 無機化合物
26 無機化合物収納容器
27 濾過手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水回路と、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状の混合物である無機化合物を収納する収納手段とを備え、前記無機化合物を溶解させた水を、前記水回路から流出させるとともに、前記収納手段の収納容積を60mL以上としたことを特徴とする水改質手段。
【請求項2】
湯水を浴槽へ供給する浴槽水注湯回路と、前記浴槽水注湯回路を開閉する浴槽水注湯弁とを備え、前記請求項1記載の水改質手段を、前記浴槽水注湯回路の前記浴槽水注湯弁の下流側に配設したことを特徴とする給湯装置。
【請求項3】
湯水を浴槽へ供給する浴槽水注湯回路と、前記浴槽水注湯回路を開閉する浴槽水注湯弁とを備え、前記請求項1記載の収納手段の相当直径を、前記浴槽水注湯回路の相当直径よりも大きく形成したことを特徴とする給湯装置。
【請求項4】
貯湯タンクを備え、前記請求項1記載の水改質手段を、前記貯湯タンクとともに本体筐体内に配設したことを特徴とする給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−236173(P2012−236173A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108015(P2011−108015)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】