説明

水栓の浸入水排出構造

【課題】
ホース外周面を伝わる浸入水を減少させ、また、浸入水の水勢を抑えて排出口を飛び越える浸入水を減少させ、排出口から効率よく浸入水を排出させることのできる水栓の浸入水排出構造を提供すること。
【解決手段】
ホース18が引き出し自在に挿通される水栓10の本体11内部に浸入した浸入水を排出するための水栓10の浸入水排出構造1において、ホース18が収容される本体11の挿通孔20には第二排出口26が形成され、第二排出口26よりも挿通孔20先端寄りの挿通孔20の内周面下部には、その上方にホース18を支持するリブ40が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースが引き出し自在に取り付けられた水栓の本体内に浸入する湯水等の浸入水を排出するための水栓の浸入水排出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流し台や洗面台等にシャワー装置等を収容保持するための水栓が用いられており、このような水栓には、シャワーヘッド等の吐水具に接続されたホースが水栓の本体から引き出し自在に取り付けられ、流し台シンクや洗面ボウル等内の所望の位置でシャワー散水を得ることができるホース引き出し式の水栓も知られている。このような水栓では、ホースが挿通される水栓の開口部の隙間等から水栓本体内部に湯水が浸入し、ホースを伝って流し台や洗面台下側のキャビネット内等に湯水が垂れるおそれがある。そこで、従来、ホースに伝わって滴下する湯水を水栓本体途中からその外部に排出するための排出口を設けるなどの、水栓の浸入水排出構造が用いられている。
【0003】
このような水栓の浸入水排出構造としては、例えば、図7に示すように、水栓10の本体11に排出口60を形成するとともに、この排出口60の上流側に、ホース18に直接接触するとともに表面に多数の通孔を有する表面材62と、その下側に重ねられたスポンジ等の吸水材64とからなる水切部材66を用いるものが知られている。この浸入水排出構造68では、水栓10内に斜めに収容されるホース18の表面に付着する浸入水を、ホース18出し入れの際に表面材62によってしごくように取り除くとともに、取り除いた浸入水を吸水材64によって吸収させて排出口60から確実に排出させるものである。また、表面材62によって吸水材64を保護することにより、ホース18の出し入れによって吸水材64がすり切れて水切り能力の低下することが防止されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−364036号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この水栓10の浸入水排出構造68では、上記したように、ホース18と直接摺接する水切部材66がホース18の引き出し・収納の際にホース18外周面の浸入水をしごくようにして取り除くことができるが、ホース18が引き出された状態、又は、ホース18が収納された状態のままでは効率良く水切りを行うことができない。よって、ホース18を引き出した状態で吐水を行っている場合に浸入した浸入水や、ホース18を収納した状態で流れ落ちる浸入水は十分に水切りを行うことができず、ホース18外周面を伝ったまま水栓10下方に流れ落ちてしまう。また、勢い良く水栓10内に湯水が浸入した場合などには、浸入水は、水切部材66を乗り越えてホース18外周面の側方や上側に跳ね上がって、排出口60を越えて水栓10内部の下方へ流れ落ちていってしまうおそれもある。
【0006】
本発明は上記した従来の水栓の浸入水排出構造の問題点を解消するものであり、ホース外周面を伝わる浸入水を減少させ、また、浸入水の水勢を抑えて排出口を飛び越える浸入水を減少させ、排出口から効率よく浸入水を排出させることのできる水栓の浸入水排出構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の採った手段を以下に説明する。本発明の水栓の浸入水排出構造は、ホースが引き出し自在に挿通される水栓の本体内部に浸入した浸入水を排出するための水栓の浸入水排出構造であって、前記ホースが収容される前記本体の挿通孔には排出口が形成され、該排出口よりも挿通孔先端寄りの前記挿通孔の内周面下部には、その上方に前記ホースを支持するリブが形成されたことを特徴とする水栓の浸入水排出構造(請求項1)。
【0008】
このように挿通孔内でホースを支持するリブが形成されることにより、ホースの外周面は挿通孔内周面の下部から離れて挿通孔の上方に位置される。よって、ホースを伝う浸入水をホース外周面から分離させて下方に滴下させることができる。このようにして、ホース外周面を伝う浸入水を減少させ、浸入水を効率よく排出口から排出させることができる。また、リブによって、浸入水がリブの両側に分流されることにより、ホース外周面から滴下された浸入水の水勢を弱めることができ、浸入水が水勢によって排出口を飛び越えることを防止することができる。
【0009】
また、前記の浸入水排出構造において、前記リブの基端部が先端部よりも低く形成されたものとすることもできる(請求項2)。
【0010】
排出口の近傍のリブ基端部が、リブの先端部よりも低く形成されることにより、排出口の直前においてリブとホース外周面との間にも隙間を設けることができる。ここで、リブの先端部とは、吐水口における先端側の部位を言い、リブの基端部とは、吐水口における基端側の部位を言う。よって、ホースとリブとの間に伝わる浸入水についても、この隙間によって挿通孔下部に滴下させることが容易となり、より一層浸入水の排出を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記のようにリブが設けられているので、ホース外周面を伝わる浸入水を減少させるとともに、浸入水の水勢を抑えて排出口を飛び越える浸入水を減少させ、排出口から効率よく浸入水を排出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の水栓の浸入水排出構造の実施の形態を図を参考にして詳細に説明する。図1に示すように、水栓の浸入水排出構造1は、流し台や洗面台のデッキ面(図示省略)上に設置される水栓10の本体11に設けられるものである。本体11のボデーユニット12の上部には、レバーハンドル13が取り付けられ、また、ボデーユニット12の側面中央付近には、吐水口15が水平方向に回動自在に取り付けられている。そして、この水栓10は、レバーハンドル13を操作することにより、吐水口15先端に着脱自在に保持されるシャワーヘッド14からの吐止水及び吐水量の調整を行うことができるものである。
【0013】
シャワーヘッド14は、吐水口15の先端開口部16に着脱自在に保持されている。また、シャワーヘッド14に接続されたホース18は、先端開口部16奥の挿通孔20内に引き出し自在に収容挿通されており、シャワーヘッド14をホース18ごと引き出すことにより、流し台シンクや洗面ボウル(図示省略)内の所望の位置においてシャワーヘッド14からの吐水を得ることができるように構成されている。そして、図示は省略するが、水栓10下方に引き回されるホース18は、引き出しが可能な十分な長さに水栓10の下方に垂れ下げられ、さらにその端部は、水栓10の本体11内に内蔵された弁装置に接続されている。また、ホース18は、外周面が蛇腹状に形成されたいわゆるフレキシブル管から構成され、一定の剛性を備えるとともにある程度自由に可撓可能に設けられており、ホース18を円滑に引き出し・収容できるように構成されている。なお、本例のホース18の外径は約14mmに設けられている。
【0014】
吐水口15は、ボデーユニット12から斜め上方にその先端が向けられて取り付けられている。また、その全体が、先端に行くにしたがって下方に緩やかに湾曲した形状とされている。吐水口15の横断面形状は、先端に行くにしたがって先細となるように形成されている。また、後述するように、吐水口15内部の挿通孔20の横断面形状も先端に行くにしたがって先細となる形状に形成されており、基端側の最も大径の部位で約35mmに、先端側で約24mmに設けられている。
【0015】
また、斜め上方に突設された吐水口15の側面部の下側に向けられる部位には、吐水口15の先端寄りに、先端側から順に、第一排出口22と係止孔24とが穿設されている。また、吐水口15の基端寄りには第二排出口26が穿設されている。第一排出口22は、先端開口部16から浸入した浸入水を、第二排出口26に先だって排出するために形成されるものである。また、係止孔24は、後述する水切部材30の係止突起38が係止されて、水切部材30を吐水口15内に固定するために設けられており、平面視が係止突起38とほぼ同形状に形成されている。第二排出口26は、傾斜して突設される吐水口15の外側壁に対して、鉛直方向に穿設されており、同じく鉛直方向に突設される壁部50と相まって、浸入水を確実に排出できるように形成されている。また、第二排出口26の後方側の挿通孔20の内周面の下部部分には、上部が半円状に切り欠かれた壁部50が設けられている。そして、この壁部50の上部にホース18が載置されるとともに、ホース18の引き出し・収納の際にはこの壁部50上をホース18が移動される。
【0016】
吐水口15の先端開口部16内には、ほぼ円筒状の水切部材30が挿嵌固定されており、ホース18は、この水切部材30内に挿通されて吐水口15内に挿通されている。水切部材30の先端外周面にはセレーション32が刻設されており、シャワーヘッド14が吐水口15に保持される際には、シャワーヘッド14が水切部材30の先端に挿嵌接続されるとともにシャワーヘッド14の基端部内周面のセレーション17が水切部材30側のセレーション32に噛合することにより、吐水口15に対するシャワーヘッド14の回動が防止されている。また、吐水口15に取り付けられた状態で下方に向けられる水切部材30の側面の中央付近には開口部34が形成されている。この開口部34は、吐水口15内に取り付けられた状態で第一排出口22に臨む位置に配置され、ホース18を伝う浸入水が、この開口部34から第一排出口22に導かれるように構成されている。また、水切部材30の基端部には、片持ち梁状に突設された係止片36が設けられており、この係止片36の先端に設けられた係止突起38が、上記したように、吐水口15の係止孔24に係止される。
【0017】
次いで、吐水口15の挿通孔20内に形成されたリブ40について説明する。リブ40は、図1に示すように、挿通孔20の長手方向に沿って、その中央付近から第二排出口26の直前にかけて、挿通孔20の内周面下部から上方に向けて突設されている。図2及び図3に示すように、リブ40は、挿通孔20の内周面下部中央から、挿通孔20の中心に向かって突設されている。挿通孔20の内周面からのリブ40の高さは約5mmに設けられている。また、リブ40は、図3に示すようにその横断面形状が、上端が先細となる約20度の角度に開いた扇状に形成されており、また、その上端部42の幅は約2mmに設けられている。また、リブ40の第二排出口26側の約6mmの長さの基端部44は、挿通孔20の内周面からの高さが約2mmとされており、約5mmの高さに設けられたリブ40の先端部46よりもその高さが低く設けられている。
【0018】
このように構成された浸入水排出構造1では、以下のように浸入水を効率よく排出させることができる。まず、吐水口15の先端開口部16から、ホース18との間から挿通孔20内に浸入する浸入水は、ホース18外周面から下方へ流れ、上記したように、水切部材30の開口部34を経て、第一排出口22から一定量が排出される。第一排出口22周辺に流れ落ちず、ホース18外周面を伝って挿通孔20下方へ流下する浸入水や、第一排出口22周辺に流れ落ちたが、第一排出口22を越えてしまった浸入水は、さらに挿通孔20内を流下する。この際に、図2及び図3に示すように、ホース18がリブ40によって挿通孔20の上方に支持されており、挿通孔20の内周面下部から一定の距離がおかれている。よって、ホース18の下部を伝う浸入水は、ホース18下方の挿通孔20の内周面下部に落下し、ホース18外周面から容易に滴下させることができる。そして、図3に示すように、このようにホース18から分離された浸入水Bは、リブ40の両脇いずれかを通って第二排出口26方向へと流れ落ちる。また、図2に示すように、リブ40の基端側は、先端部46よりも低く形成された基端部44とされているため、特に先端部46の上端部42とホース18外周面との間を伝わってきた浸入水なども、基端部44とホース18外周面との間に設けられる隙間48によって、ホース18外周面から容易に滴下させることができる。なお、同時に、基端部44を設けておくことにより、第二排出口26直前でリブ40の左右の浸入水が合流して水勢が増すことを防止することもできる。そして、ホース18から滴下された浸入水は、第二排出口26から吐水口18外に排出される。また、壁部50によって、第二排出口26を飛び越えて挿通孔20下方へと流下しようとする浸入水は第二排出口26に強制的に導かれる。
【0019】
また、浸入水がいったんリブ40の両側に分けられて第二排出口26方向へ流下されるようにすることにより、浸入水が多量に集まり水流が強まることを防止でき、浸入水が第二排出口26を容易には飛び越えないようにすることができる。なお、本例の水栓10のように、吐水口15が湾曲した形状とされているために、型抜きの支障となる場合など、壁部を挿通孔20全周に渡って形成できない場合には、挿通孔20上方寄りの、壁部50が形成されない部位からの浸入水の流下を抑制できるので好適である。このようにして、挿通孔20内に浸入した浸入水を効率よく排出させることができる。
【0020】
次に、本発明の水栓の浸入水排出構造の別の実施の形態を図を参考にして詳細に説明する。なお、上記した第一の実施の形態と共通する構成については、第一の実施の形態と同一の符号を図に付して説明を省略する。図4に示すのは、挿通孔20内に2条のリブ40を並設した浸入水排出構造2である。この浸入水排出構造2によれば、2条のリブ40によって浸入水を3つに分散できるので、より一層浸入水の水流を弱めることができ、浸入水を第二排出口26から確実に排出させることができる。
【0021】
また、図5に示す浸入水排出構造3では、リブ40の上端部42に凹部52が形成されている。この浸入水排出構造3によれば、ホース18外周面と上端部42との間に隙間を設けることができるので、ホース18外周面の下部を伝う浸入水をホース18外周面から分離させやすくすることもできる。また同様に、図6に示す浸入水排出構造4のように、リブ40の上端部42にブラシ54を設けることにより、ホース18外周面と上端部42との間に隙間を設け、ホース18外周面の下部を伝う浸入水をホース18外周面から分離させやすくすることができる。また、リブ自体をブラシとすることとしても良い。
【0022】
なお、本発明は上記した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、リブ40の形状は他のものでも良く、長さ、厚み、高さなどは適宜変更することができる。また、吐水口の形状によっては、挿通孔20内の別の部位にリブ40を設けることもできる。また、リブ40を吐水口15とは別体に形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の水栓の浸入水排出構造を用いた水栓の側面視縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大図面である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】別の浸入水排出構造の要部拡大図である。
【図5】さらに別の浸入水排出構造の要部拡大図である。
【図6】さらに別の浸入水排出構造の要部拡大図である。
【図7】従来の水栓の浸入水排出構造を用いた水栓の側面視縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1,2,3,4;浸入水排出構造、10;水栓、11;本体、12;ボデーユニット、13;レバーハンドル、14;シャワーヘッド、15;吐水口、16;先端開口部、17;セレーション、18;ホース、20;挿通孔、22;第一排出口、24;係止孔、26;第二排出口、30;水切部材、32;セレーション、34;開口部、36;係止片、38;係止突起、40;リブ、42;上端部、44;基端部、46;先端部、48;隙間、50;壁部、52;凹部、54;ブラシ、60;排出口、62;表面材、64;吸水材、66;水切部材、68;浸入水排出構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースが引き出し自在に挿通される水栓の本体内部に浸入した浸入水を排出するための水栓の浸入水排出構造であって、
前記ホースが収容される前記本体の挿通孔には排出口が形成され、該排出口よりも挿通孔先端寄りの前記挿通孔の内周面下部には、その上方に前記ホースを支持するリブが形成されたことを特徴とする水栓の浸入水排出構造。
【請求項2】
前記リブの基端部が先端部よりも低く形成されたことを特徴とする請求項1に記載の水栓の浸入水排出構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−32183(P2007−32183A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220060(P2005−220060)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【Fターム(参考)】