水栓及びその組立て方法
【課題】水栓本体に対する吐水部材の取付けを外観上においても品質上においても良好に行うことができ、吐水部材の吐水口を所定の向きに容易に向かせることができ、構造はシンプルでありながら吐水部材を水栓本体に対して強固に取り付けることができる水栓及びその組立て方法を提供すること。
【解決手段】水栓本体1と、水栓本体に装着された吐水部材2とを備え、水栓本体は内部に連接管13が配置された後向き開口部Hを備え、水栓本体内に導入された水が連接管の内部を経て水栓本体の後側に導出されるように構成され、吐水部材は、連接管に外嵌される筒部54と、筒部内から水栓本体の後方及び上方をこの順に経て前方に至る水路と、水路の下流部に設けられた横長の吐水口3とを備え、筒部の外周面にはテーパ溝55が設けられ、後向き開口部にはテーパ溝の溝壁に先端部が当接する固定ねじ45が螺合するねじ孔43が連通している。
【解決手段】水栓本体1と、水栓本体に装着された吐水部材2とを備え、水栓本体は内部に連接管13が配置された後向き開口部Hを備え、水栓本体内に導入された水が連接管の内部を経て水栓本体の後側に導出されるように構成され、吐水部材は、連接管に外嵌される筒部54と、筒部内から水栓本体の後方及び上方をこの順に経て前方に至る水路と、水路の下流部に設けられた横長の吐水口3とを備え、筒部の外周面にはテーパ溝55が設けられ、後向き開口部にはテーパ溝の溝壁に先端部が当接する固定ねじ45が螺合するねじ孔43が連通している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、横長の吐水口を備え、この吐水口から幅広で帯状(膜状)の吐水を行う水栓及びその組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の水栓として、水栓本体に対して、吐水部材をろう付により一体にしたものがある。この水栓では、ろう付の際に、ろう材料が接合部分からはみ出したり接合部分が変形したりし、外観上あるいは品質上の問題が生じる懸念がある。
【0003】
【特許文献1】特開2001−26954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、特許文献1が示すように、ろう付に代えて接続管を用いることにより、吐水部材(吐出管)を水栓本体(水栓胴部)に接続することも考えられる。すなわち、後端側に雄ねじを有する接続管を水栓本体に挿入し、雄ねじのみが水栓本体外に突出した状態にして接続管を水栓本体に固定した後、この接続管の雄ねじに吐水部材の一端側に設けた雌ねじを螺着する方法である。しかし、この方法では、水栓本体の外面と吐水部材の一端部との間に隙間が形成されてしまうおそれがある。また、吐水部材は湾曲しており、その他端側の吐水口を所定の向き(通常は下向き)に向けておく必要があるが、接続管に対して吐水部材を螺着接続した時点でこの吐水口が所定の向きに向かない懸念もある。
【0005】
また、特に横長の吐水口を有する吐水部材を備えた水栓では、人が吐水口の左右端部を誤ってあるいは意図的に下方に押圧しても、その押圧力により吐水部材の取付け姿勢が簡単には歪んだりしないように吐水部材の水栓本体に対する取付けを強固にしておく必要があるが、このような取付け強度の向上は水栓構造の複雑化を招来する原因になりかねないという問題もある。
【0006】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、水栓本体に対する吐水部材の取付けを外観上においても品質上においても良好に行うことができ、また、吐水部材の吐水口を所定の向きに容易に向かせることができ、さらに、構造はシンプルでありながら吐水部材を水栓本体に対して強固に取り付けることができる水栓及びその組立て方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る水栓は、水栓本体と、該水栓本体に装着された吐水部材とを備えた水栓であって、前記水栓本体は、該水栓本体の後側に開口し、内部に該水栓本体の後側に向けて延びる連接管が配置された後向き開口部を備え、該水栓本体内に導入された水が前記連接管の内部を経て該水栓本体の後側に導出されるように構成され、前記吐水部材は、前記後向き開口部の内側において前記連接管に外嵌される筒部と、該筒部内から前記水栓本体の後方及び上方をこの順に経て該水栓本体の前方に至る水路と、該水路の下流部に設けられた横長の吐水口とを備え、また、前記筒部の外周面には該外周面の周方向に沿って環状のテーパ溝が設けられ、前記水栓本体の前記後向き開口部には、前記テーパ溝の溝壁に先端部が当接する固定ねじが螺合するねじ孔が連通している(請求項1)。
【0008】
上記水栓において、前記ねじ孔が前記水栓本体に対して左右対称に二つ設けられていてもよい(請求項2)。
【0009】
また、上記水栓において、前記水栓本体の後面に凹部が設けられ、前記吐水部材の前面に前記凹部に嵌入される凸部が設けられていてもよい(請求項3)。
【0010】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る水栓の組立て方法は、請求項1〜3の何れかに記載の水栓の前記吐水部材を前記水栓本体に接続する水栓の組立て方法であって、前記吐水部材の前記筒部を前記水栓本体の前記連接管に外嵌した後、前記ねじ孔内に前記固定ねじを螺進させ、該固定ねじの先端部を前記筒部の前記テーパ溝の溝壁に当接させる(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜4に係る発明では、水栓本体に対する吐水部材の取付けを外観上においても品質上においても良好に行うことができ、また、吐水部材の吐水口を所定の向きに容易に向かせることができ、さらに、構造はシンプルでありながら吐水部材を水栓本体に対して強固に取り付けることができる水栓及びその組立て方法が得られる。
【0012】
すなわち、請求項1に係る発明では、水栓本体に対して吐水部材を接続するに際して、従来の水栓のようにろう付するのではなく、固定ねじを用いて接続するようにしてあるので、ろう材料のはみ出しや接合部分の変形の問題が生じず、外観及び品質の両方を向上することができる。
【0013】
しかも、請求項1に係る発明では、固定ねじを筒部のテーパ溝の溝壁に対して強固に当接させるだけで、吐水部材を水栓本体に対して強固に取り付けることができ、また、吐水部材を水栓本体に取り付けるための構造が極めてシンプルなものとなる。
【0014】
加えて、請求項2に係る発明では、二つの固定ねじが筒部のテーパ溝の溝壁に対して左右対称に当接するので、人が吐水口の左右端部を誤ってあるいは意図的に下方に押圧しても、その押圧力により吐水部材の取付け姿勢が歪むことはない。
【0015】
さらに、請求項3に係る発明では、水栓本体の後面の凹部に吐水部材の前面の凸部を嵌入するという簡単な作業を行うだけで、吐水部材の吐水口を所定の向きに向かせることができる。
【0016】
そして、請求項4に係る発明では、前記吐水部材を前記水栓本体に対して極めて容易に取り付けることができるので、上記の効果を奏する水栓を簡単に組み立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る水栓の使用状態を概略的に示す斜視図、図2は前記水栓の構成を概略的に示す分解斜視図、図3(A)は前記水栓の構成を概略的に示す部分断面側面図、図3(B)は図3(A)におけるA−A線断面図、図4は前記水栓の構成を概略的に示す縦断面図、図5は前記水栓の水栓本体の構成を概略的に示す部分断面側面図、図6(A)は前記水栓本体の本体部の構成を概略的に示す部分断面正面図、図6(B)は図6(A)のX−X線断面図、図6(C)は図6(A)のY−Y線断面図、図6(D)は図6(A)のZ−Z線断面図、図7(A)及び(B)は前記水栓本体の連接管の構成を概略的に示す縦断面図及び側面図、図8(A)〜(D)は前記水栓本体の弁ユニットの構成を概略的に示す正面図、縦断面図、平面図及び底面図、図9(A)は前記水栓本体のハウジングの構成を概略的に示す平面図、図9(B)は図9(A)のP−P線断面図、図9(C)は図9(A)のQ−Q線断面図、図9(D)及び(E)は前記ハウジングの構成を概略的に示す部分透視背面図及び底面図、図10(A)及び(B)は前記水栓本体の固定ねじの構成を概略的に示す部分透視正面図及び底面図、図11(A)は前記水栓の吐水部材の構成を概略的に示す縦断面図、図11(B)は図11(A)におけるB−B線断面図である。
【0018】
この実施の形態(以下、本例という)に係る水栓は、図1に示すように、洗面台Sに設置されたシングルレバー式の湯水混合水栓であり、水栓本体1内で湯(熱水)及び水(冷水)を任意の比率で混合した混合水Mを形成し、この混合水Mを吐水部材2の吐水口3から吐出する。すなわち、水栓は、図2に示すように、水栓本体1と、これに装着される吐水部材2とを備えている。
【0019】
まず、水栓本体1の構成について説明する。
【0020】
水栓本体1は、図3(A)、図4〜図6(特に図6参照)に示すように、金属(本例では銅合金)製で略円柱状の本体部4を備えている。この本体部4は、上部側面に弁ユニット20(詳細は後述する)を装着するためのシート部5を有し、本体部4内には、湯流路6、水流路7及び混合水流路8が設けられている。
【0021】
湯流路6、水流路7及び混合水流路8の一端部6a,7a,8aはそれぞれシート部5に連通している。そして、湯流路6及び水流路7は本体部4の下部にまで延び、湯流路6の他端部には給湯路をなす配管9が接続され、水流路7の他端部には給水路をなす配管10が接続されている。一方、混合水流路8も本体部4の下部にまで延びており、この混合水流路8と、本体部4の下部背面に開口した背面開口部11とは連通している。尚、図4、図6(A)、(C)、(D)には、混合水流路8が本体部4の下方に開通した状態を図示してあるが、混合水流路8の下端部は、図3(A)及び図5に示すように閉塞部材12によって閉塞されるのであり、図4、図6(A)、(C)、(D)ではこの閉塞部材12の図示を省略してある。
【0022】
そして、本体部4の背面に設けられた背面開口部11には、図7(A)及び(B)に示す金属製(本例では銅合金製)の連接管13が挿入接続される。図7(A)に示すように、この連接管13の先端側は後端側よりも外径が小さく、また、先端側の外周面には雄ねじ13aが形成されており、この雄ねじ13aは、背面開口部11に形成された雌ねじ11aに螺着可能である(図3(A)及び図5参照)。すなわち、連接管13の雄ねじ13aを背面開口部11の雌ねじ11aに螺着することにより、背面開口部11に対して連接管13が接続される。尚、この接続状態におけるシール性を確保するために、連接管13には三つのシール部材(本例では合成ゴム製のOリング)13bが装着されている。
【0023】
さらに、図7(A)及び(B)に示すように、連接管13の後端側の内周壁部分13cは、断面視が非円形状(本例では正六角形状)となっている。これにより、内周壁部分13cに対してこれに係合する適宜の工具(本例では六角レンチ)を挿入し、この工具を回動操作すれば、連接管13を背面開口部11に容易に接続することができる。
【0024】
図4及び図8(A)〜(D)に示すように、シート部5には、カートリッジタイプの弁ユニット20が横向きに装着される。この弁ユニット20は、セラミック製の固定ディスク21及び可動ディスク22と、合成樹脂製のガイド23とを収容した合成樹脂製のケース体24を備えている。
【0025】
固定ディスク21には、図8(B)及び(D)に示すように、湯流路6に連通する給湯用貫通孔25と、水流路7に連通する給水用貫通孔26と、混合水流路8に連通する混合水用貫通孔27とが設けられ、可動ディスク22には、図8(B)に示すように、凹部28が形成され、この凹部28は固定ディスク21に向けて開放されている。
【0026】
また、ガイド23には、図8(B)に示す金属製(本例ではステンレス製)のピン29が固定され、このピン29は、図8(A)〜(C)に示すように、ケース体24の外部に突出する合成樹脂製の栓棒30を枢支する。そして、この栓棒30には、図4に示すようにレバー31が固定されている。
【0027】
弁ユニット20の作動について説明すると、まず、固定ディスク21の給湯用貫通孔25及び給水用貫通孔26には、本体部4の湯流路6及び水流路7を経た湯及び水が流入する。そして、可動ディスク22の凹部28が、給湯用貫通孔25、給水用貫通孔26及び混合水用貫通孔27に跨がる位置にあれば、給湯用貫通孔25及び給水用貫通孔26に流入した湯水が凹部28において合流して混合水Mとなり、その後、この混合水Mは固定ディスク21の混合水用貫通孔27を経て、本体部4の混合水流路8に至る。
【0028】
ここで、レバー31が図4に示す状態にある場合、可動ディスク22はケース体24内の一方側に寄った位置にあり、この可動ディスク22の凹部28は固定ディスク21の混合水用貫通孔27のみに連通し、給湯用貫通孔25及び給水用貫通孔26には跨がっていないため、凹部28に湯水が流入することはなく、止水状態となる。そして、レバー31が図4に示す矢印T方向に傾動すると(このとき、栓棒30はピン29回りに回動する)、栓棒30の作用により可動ディスク22がケース体24の他方側に向けて移動し、この移動量が所定以上であれば、凹部28が給湯用貫通孔25、給水用貫通孔26にも跨がり、吐水状態となる。尚、可動ディスク22がケース体24の他方側に移動するほど、給湯用貫通孔25、給水用貫通孔26から凹部28に流入する湯水の流量が上昇し、従って、本体部4の混合水流路8に至る湯水(混合水M)の流量が上昇する。
【0029】
また、レバー31が図3(A)に示す矢印H方向に回動されるに伴って、可動ディスク22の凹部28と給湯用貫通孔25との連通度合いが、凹部28と給水用貫通孔26との連通度合いよりも大きくなり、混合水Mにおける湯の割合が増える。また、レバー7を逆方向(矢印C方向)に回動させれば、凹部28と給水用貫通孔26との連通度合いが凹部28と給湯用貫通孔25との連通度合いよりも大きくなり、混合水Mにおける水の割合が増える。
【0030】
尚、弁ユニット20は、本体部4の湯流路6及び水流路7から導入された湯水を混合水流路8に導出する際に、湯水の混合比率及び導出流量の調整を、レバー31により行えればよいのであって、そのための機構には、例えば本出願人の先願に係る特開2005−282658号公報の図3に記載の構成等、公知の構成を採用することができるのであり、弁ユニット20のより詳細な説明はここでは省略する。
【0031】
そして、本体部4及び弁ユニット20は、図2、図3(A)、図4、図5、図9(A)〜(E)(特に図9(A)〜(E)参照)に示す鋳物(本例では銅合金製)からなるハウジング40に収容、装着される。このハウジング40の側方には、図9(C)及び(D)に示すように、弁ユニット20の装着に用いられる突出筒部41が設けられている。また、ハウジング40の背面(後面)には、図2及び図9(D)に示すように、略円形状の後側開口部42が設けられ、この後側開口部42は本体部4の背面開口部11に連通し、背面開口部11と後側開口部42とによって一つの開口部(後向き開口部)Hが形成される(図5参照)。
【0032】
また、ハウジング40には、図2、図3(A)及び図9(D)に示すように、上端が後側開口部42の内側空間に連通し、下端がハウジング40の下方に開放された斜めに延びる二つのねじ孔43が左右対称に形成されている。尚、図2に示すように、ハウジング40の背面の左右には後方に突出する段部44が設けられているため、各ねじ孔43がハウジング40の側方に表れることはない。
【0033】
図3(B)に示すように、各ねじ孔43の内壁面には雌ねじ43aが設けられ、この雌ねじ43aに螺着する雄ねじ45aを有する固定ねじ45が、それぞれねじ孔43に螺着される。
【0034】
固定ねじ45の先端部には、図10(A)及び(B)に示すように、窪み部45bと、この窪み部45bの周縁から後端側に向かうテーパ面45cとが設けられている。また、固定ねじ45には、その後端面から先端側に向けて延び断面視非円形状(本例では正六角形状)の内周壁部分を有する凹入部45dが設けられている。これにより、凹入部45dに対してその内周壁部分に係合する適宜の工具(本例では六角レンチ)を挿入し、この工具を回動操作すれば、固定ねじ45をねじ孔43に容易に螺着することができる。
【0035】
さらに、図9(D)に示すように、ハウジング40の背面上部(後側開口部42よりも上方)には、凹部46が設けられている。
【0036】
次に、吐水部材2の構成について説明する。
【0037】
吐水部材2は、金属製(本例ではステンレス製)の部材であり、図2、図3(A)、図11(A)及び(B)に示すように、曲げ板状の外観を呈する吐水管51を備え、この吐水管51は、略鉛直方向に延びる基部52と、この基部52の上方から基部52の前方に向かって山なりに延びる山形部53とを有し、山形部53の先端側に横長の吐水口3が設けられている。
【0038】
また、図2、図3(A)、図11(A)及び(B)に示すように、基部52の前面下部に金属製(本例ではステンレス製)で略円筒状の筒部54が設けられている。尚、この筒部54は、例えば溶接により基部52に接合されている。そして、筒部54の内部と基部52(吐水管51)の内部とが連通するように、基部52の前面において筒部54が接合される箇所には開口が形成されている。
【0039】
ここで、図11(A)に示すように、筒部54の外周面にはこの外周面の周方向に沿って環状のテーパ溝55が設けられている。
【0040】
また、図2、図3(A)、図11(A)及び(B)に示すように、基部52の前面上部に金属製(本例ではステンレス製)で略円筒状の凸部56が設けられている。尚、この凸部56は、例えば溶接により基部52に接合されている。
【0041】
次に、水栓本体1に吐水部材2を取り付ける方法について説明する。
【0042】
(1)予め、図2に示すように水栓本体1、吐水部材2をそれぞれ組み立てておく。このとき、水栓本体1のねじ孔43に固定ねじ45は螺着していない状態としておく。
【0043】
(2)まず、水栓本体1の凹部46、後向き開口部Hに、吐水部材2の凸部56、筒部54を各々挿入する(図2及び図3(A)参照)。
【0044】
これにより、吐水部材2のおおよその位置決めがなされる。尚、凹部46と凸部56との間には若干の間隙があり、また、後向き開口部Hと筒部54との間にも隙間があるので、吐水部材2が完全に位置決めされるわけではない。
【0045】
また、このとき、図3(A)に示すように、筒部54は、後向き開口部Hの内側において、水栓本体1の後側に向けて延びる連接管13に外嵌されることになる。
【0046】
(3)続いて、二つの固定ねじ45を二つのねじ孔43内に対して各々の下方からそれぞれ螺進させ、各固定ねじ45の先端部(テーパ面45c)を筒部54のテーパ溝55の溝壁に当接させる(図2及び図3(B)参照)。
【0047】
すなわち、二つの固定ねじ45を螺進させるに伴って、各固定ねじ45の先端部(テーパ面45c)がテーパ溝55の溝壁に当接してからもこの溝壁上を滑り、やがて水栓本体1の背面と吐水部材2の基部52の前面との間の隙間がなくなって吐水部材2が完全に位置決めされるとともに、筒部54ひいては吐水部材2が水栓本体1に対して強固に固定されることになる。
【0048】
以上で水栓本体1に対する吐水部材2の取付けが完了し、このようにして組み立てられた水栓では、吐水口3からの幅広で帯状(膜状)の吐水を良好に行うことができる。すなわち、従来の幅広吐水を行わせる水栓では、この幅広吐水を確実に行わせるために、吐水口の上流側に堰を形成するための部材が別途設けられていたので、吐水口周辺の構造が複雑化したり大型化するという問題があった。
【0049】
しかし、本例の水栓では、吐水部材2が、吐水口3の上流側に、筒部54内から水栓本体1の後方及び上方をこの順に経て水栓本体1の前方に至る水路を形成しており、吐水部材2の基部52から山形部53の最上部53aまでの流路が堰としての役割も同時に果たすため、従来のような堰を形成するための部材を別途設ける必要がなく、従って、それだけ吐水口3周辺の構造をシンプルかつ小型化、薄型化することができる。
【0050】
また、二つの固定ねじ45が筒部54に対して左右対称にかつ強固に当接しているので、人が吐水口3の左右端部を誤ってあるいは意図的に下方に押圧しても、その押圧力により吐水部材2の取付け姿勢が歪むことはない。
【0051】
さらに、吐水部材2の筒部54にテーパ溝55を設け、このテーパ溝55の溝壁に固定ねじ45を当接させることにより吐水部材2を水栓本体1に固定する構成を採用しているので、二つのねじ孔43を設けるために高精度な加工が要求されず、それだけ本例の水栓は低コストで製造することができる。
【0052】
尚、本例の水栓は、各部材の材料や形状等の構成要素を適宜変更することができる。そこで、以下に本例の変形例を示す。
【0053】
本例では水栓を湯水混合水栓としてあるが、これに限らず、単水栓であってもよい。
【0054】
また、本例では水栓をシングルレバー式の水栓としてあるが、図12(A)及び(B)に示すように、二つのハンドル(湯流量調整ハンドル61及び水流量調整ハンドル62)を有するタイプの水栓であってもよい。
【0055】
また、本例では水栓を洗面台Sに設置してあるが、図12(B)に示すように、水栓を浴槽Uに設置してあってもよい。
【0056】
また、本例では吐水部材2をステンレス製としてあり、材料強度があるので吐水部材の中間部分が撓むことがない。しかし、吐水部材2を樹脂製としてもよく、この場合、吐水部材2の中間部分が撓むことを防止するために、適宜の箇所にリブを設ければよい。
【0057】
また、本例では凹部46と凸部56とを一つずつのみ設けてあるが、二つ以上ずつ設けてあってもよい。
【0058】
また、本例ではねじ孔43及び固定ねじ45を左右対称に2対設けてあるが、1対のみ設けてあってもよく、左右対称に3対以上設けてあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施の形態に係る水栓の使用状態を概略的に示す斜視図である。
【図2】前記水栓の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】(A)は前記水栓の構成を概略的に示す部分断面側面図、(B)は(A)におけるA−A線断面図である。
【図4】前記水栓の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図5】前記水栓の水栓本体の構成を概略的に示す部分断面側面図である。
【図6】(A)は前記水栓本体の本体部の構成を概略的に示す部分断面正面図、(B)は(A)のX−X線断面図、(C)は(A)のY−Y線断面図、(D)は(A)のZ−Z線断面図である。
【図7】(A)及び(B)は前記水栓本体の連接管の構成を概略的に示す縦断面図及び側面図である。
【図8】(A)〜(D)は前記水栓本体の弁ユニットの構成を概略的に示す正面図、縦断面図、平面図及び底面図である。
【図9】(A)は前記水栓本体のハウジングの構成を概略的に示す平面図、(B)は(A)のP−P線断面図、(C)は(A)のQ−Q線断面図、(D)及び(E)は前記ハウジングの構成を概略的に示す部分透視背面図及び底面図である。
【図10】(A)及び(B)は前記水栓本体の固定ねじの構成を概略的に示す部分透視正面図及び底面図である。
【図11】(A)は前記水栓の吐水部材の構成を概略的に示す縦断面図、(B)は(A)におけるB−B線断面図である。
【図12】(A)は前記水栓の変形例の構成を概略的に示す斜視図、(B)はその使用状態を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 水栓本体
2 吐水部材
3 吐水口
13 連接管
43 ねじ孔
45 固定ねじ
46 凹部
54 筒部
55 テーパ溝
56 凸部
H 後向き開口部
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、横長の吐水口を備え、この吐水口から幅広で帯状(膜状)の吐水を行う水栓及びその組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の水栓として、水栓本体に対して、吐水部材をろう付により一体にしたものがある。この水栓では、ろう付の際に、ろう材料が接合部分からはみ出したり接合部分が変形したりし、外観上あるいは品質上の問題が生じる懸念がある。
【0003】
【特許文献1】特開2001−26954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、特許文献1が示すように、ろう付に代えて接続管を用いることにより、吐水部材(吐出管)を水栓本体(水栓胴部)に接続することも考えられる。すなわち、後端側に雄ねじを有する接続管を水栓本体に挿入し、雄ねじのみが水栓本体外に突出した状態にして接続管を水栓本体に固定した後、この接続管の雄ねじに吐水部材の一端側に設けた雌ねじを螺着する方法である。しかし、この方法では、水栓本体の外面と吐水部材の一端部との間に隙間が形成されてしまうおそれがある。また、吐水部材は湾曲しており、その他端側の吐水口を所定の向き(通常は下向き)に向けておく必要があるが、接続管に対して吐水部材を螺着接続した時点でこの吐水口が所定の向きに向かない懸念もある。
【0005】
また、特に横長の吐水口を有する吐水部材を備えた水栓では、人が吐水口の左右端部を誤ってあるいは意図的に下方に押圧しても、その押圧力により吐水部材の取付け姿勢が簡単には歪んだりしないように吐水部材の水栓本体に対する取付けを強固にしておく必要があるが、このような取付け強度の向上は水栓構造の複雑化を招来する原因になりかねないという問題もある。
【0006】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、水栓本体に対する吐水部材の取付けを外観上においても品質上においても良好に行うことができ、また、吐水部材の吐水口を所定の向きに容易に向かせることができ、さらに、構造はシンプルでありながら吐水部材を水栓本体に対して強固に取り付けることができる水栓及びその組立て方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る水栓は、水栓本体と、該水栓本体に装着された吐水部材とを備えた水栓であって、前記水栓本体は、該水栓本体の後側に開口し、内部に該水栓本体の後側に向けて延びる連接管が配置された後向き開口部を備え、該水栓本体内に導入された水が前記連接管の内部を経て該水栓本体の後側に導出されるように構成され、前記吐水部材は、前記後向き開口部の内側において前記連接管に外嵌される筒部と、該筒部内から前記水栓本体の後方及び上方をこの順に経て該水栓本体の前方に至る水路と、該水路の下流部に設けられた横長の吐水口とを備え、また、前記筒部の外周面には該外周面の周方向に沿って環状のテーパ溝が設けられ、前記水栓本体の前記後向き開口部には、前記テーパ溝の溝壁に先端部が当接する固定ねじが螺合するねじ孔が連通している(請求項1)。
【0008】
上記水栓において、前記ねじ孔が前記水栓本体に対して左右対称に二つ設けられていてもよい(請求項2)。
【0009】
また、上記水栓において、前記水栓本体の後面に凹部が設けられ、前記吐水部材の前面に前記凹部に嵌入される凸部が設けられていてもよい(請求項3)。
【0010】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る水栓の組立て方法は、請求項1〜3の何れかに記載の水栓の前記吐水部材を前記水栓本体に接続する水栓の組立て方法であって、前記吐水部材の前記筒部を前記水栓本体の前記連接管に外嵌した後、前記ねじ孔内に前記固定ねじを螺進させ、該固定ねじの先端部を前記筒部の前記テーパ溝の溝壁に当接させる(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜4に係る発明では、水栓本体に対する吐水部材の取付けを外観上においても品質上においても良好に行うことができ、また、吐水部材の吐水口を所定の向きに容易に向かせることができ、さらに、構造はシンプルでありながら吐水部材を水栓本体に対して強固に取り付けることができる水栓及びその組立て方法が得られる。
【0012】
すなわち、請求項1に係る発明では、水栓本体に対して吐水部材を接続するに際して、従来の水栓のようにろう付するのではなく、固定ねじを用いて接続するようにしてあるので、ろう材料のはみ出しや接合部分の変形の問題が生じず、外観及び品質の両方を向上することができる。
【0013】
しかも、請求項1に係る発明では、固定ねじを筒部のテーパ溝の溝壁に対して強固に当接させるだけで、吐水部材を水栓本体に対して強固に取り付けることができ、また、吐水部材を水栓本体に取り付けるための構造が極めてシンプルなものとなる。
【0014】
加えて、請求項2に係る発明では、二つの固定ねじが筒部のテーパ溝の溝壁に対して左右対称に当接するので、人が吐水口の左右端部を誤ってあるいは意図的に下方に押圧しても、その押圧力により吐水部材の取付け姿勢が歪むことはない。
【0015】
さらに、請求項3に係る発明では、水栓本体の後面の凹部に吐水部材の前面の凸部を嵌入するという簡単な作業を行うだけで、吐水部材の吐水口を所定の向きに向かせることができる。
【0016】
そして、請求項4に係る発明では、前記吐水部材を前記水栓本体に対して極めて容易に取り付けることができるので、上記の効果を奏する水栓を簡単に組み立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る水栓の使用状態を概略的に示す斜視図、図2は前記水栓の構成を概略的に示す分解斜視図、図3(A)は前記水栓の構成を概略的に示す部分断面側面図、図3(B)は図3(A)におけるA−A線断面図、図4は前記水栓の構成を概略的に示す縦断面図、図5は前記水栓の水栓本体の構成を概略的に示す部分断面側面図、図6(A)は前記水栓本体の本体部の構成を概略的に示す部分断面正面図、図6(B)は図6(A)のX−X線断面図、図6(C)は図6(A)のY−Y線断面図、図6(D)は図6(A)のZ−Z線断面図、図7(A)及び(B)は前記水栓本体の連接管の構成を概略的に示す縦断面図及び側面図、図8(A)〜(D)は前記水栓本体の弁ユニットの構成を概略的に示す正面図、縦断面図、平面図及び底面図、図9(A)は前記水栓本体のハウジングの構成を概略的に示す平面図、図9(B)は図9(A)のP−P線断面図、図9(C)は図9(A)のQ−Q線断面図、図9(D)及び(E)は前記ハウジングの構成を概略的に示す部分透視背面図及び底面図、図10(A)及び(B)は前記水栓本体の固定ねじの構成を概略的に示す部分透視正面図及び底面図、図11(A)は前記水栓の吐水部材の構成を概略的に示す縦断面図、図11(B)は図11(A)におけるB−B線断面図である。
【0018】
この実施の形態(以下、本例という)に係る水栓は、図1に示すように、洗面台Sに設置されたシングルレバー式の湯水混合水栓であり、水栓本体1内で湯(熱水)及び水(冷水)を任意の比率で混合した混合水Mを形成し、この混合水Mを吐水部材2の吐水口3から吐出する。すなわち、水栓は、図2に示すように、水栓本体1と、これに装着される吐水部材2とを備えている。
【0019】
まず、水栓本体1の構成について説明する。
【0020】
水栓本体1は、図3(A)、図4〜図6(特に図6参照)に示すように、金属(本例では銅合金)製で略円柱状の本体部4を備えている。この本体部4は、上部側面に弁ユニット20(詳細は後述する)を装着するためのシート部5を有し、本体部4内には、湯流路6、水流路7及び混合水流路8が設けられている。
【0021】
湯流路6、水流路7及び混合水流路8の一端部6a,7a,8aはそれぞれシート部5に連通している。そして、湯流路6及び水流路7は本体部4の下部にまで延び、湯流路6の他端部には給湯路をなす配管9が接続され、水流路7の他端部には給水路をなす配管10が接続されている。一方、混合水流路8も本体部4の下部にまで延びており、この混合水流路8と、本体部4の下部背面に開口した背面開口部11とは連通している。尚、図4、図6(A)、(C)、(D)には、混合水流路8が本体部4の下方に開通した状態を図示してあるが、混合水流路8の下端部は、図3(A)及び図5に示すように閉塞部材12によって閉塞されるのであり、図4、図6(A)、(C)、(D)ではこの閉塞部材12の図示を省略してある。
【0022】
そして、本体部4の背面に設けられた背面開口部11には、図7(A)及び(B)に示す金属製(本例では銅合金製)の連接管13が挿入接続される。図7(A)に示すように、この連接管13の先端側は後端側よりも外径が小さく、また、先端側の外周面には雄ねじ13aが形成されており、この雄ねじ13aは、背面開口部11に形成された雌ねじ11aに螺着可能である(図3(A)及び図5参照)。すなわち、連接管13の雄ねじ13aを背面開口部11の雌ねじ11aに螺着することにより、背面開口部11に対して連接管13が接続される。尚、この接続状態におけるシール性を確保するために、連接管13には三つのシール部材(本例では合成ゴム製のOリング)13bが装着されている。
【0023】
さらに、図7(A)及び(B)に示すように、連接管13の後端側の内周壁部分13cは、断面視が非円形状(本例では正六角形状)となっている。これにより、内周壁部分13cに対してこれに係合する適宜の工具(本例では六角レンチ)を挿入し、この工具を回動操作すれば、連接管13を背面開口部11に容易に接続することができる。
【0024】
図4及び図8(A)〜(D)に示すように、シート部5には、カートリッジタイプの弁ユニット20が横向きに装着される。この弁ユニット20は、セラミック製の固定ディスク21及び可動ディスク22と、合成樹脂製のガイド23とを収容した合成樹脂製のケース体24を備えている。
【0025】
固定ディスク21には、図8(B)及び(D)に示すように、湯流路6に連通する給湯用貫通孔25と、水流路7に連通する給水用貫通孔26と、混合水流路8に連通する混合水用貫通孔27とが設けられ、可動ディスク22には、図8(B)に示すように、凹部28が形成され、この凹部28は固定ディスク21に向けて開放されている。
【0026】
また、ガイド23には、図8(B)に示す金属製(本例ではステンレス製)のピン29が固定され、このピン29は、図8(A)〜(C)に示すように、ケース体24の外部に突出する合成樹脂製の栓棒30を枢支する。そして、この栓棒30には、図4に示すようにレバー31が固定されている。
【0027】
弁ユニット20の作動について説明すると、まず、固定ディスク21の給湯用貫通孔25及び給水用貫通孔26には、本体部4の湯流路6及び水流路7を経た湯及び水が流入する。そして、可動ディスク22の凹部28が、給湯用貫通孔25、給水用貫通孔26及び混合水用貫通孔27に跨がる位置にあれば、給湯用貫通孔25及び給水用貫通孔26に流入した湯水が凹部28において合流して混合水Mとなり、その後、この混合水Mは固定ディスク21の混合水用貫通孔27を経て、本体部4の混合水流路8に至る。
【0028】
ここで、レバー31が図4に示す状態にある場合、可動ディスク22はケース体24内の一方側に寄った位置にあり、この可動ディスク22の凹部28は固定ディスク21の混合水用貫通孔27のみに連通し、給湯用貫通孔25及び給水用貫通孔26には跨がっていないため、凹部28に湯水が流入することはなく、止水状態となる。そして、レバー31が図4に示す矢印T方向に傾動すると(このとき、栓棒30はピン29回りに回動する)、栓棒30の作用により可動ディスク22がケース体24の他方側に向けて移動し、この移動量が所定以上であれば、凹部28が給湯用貫通孔25、給水用貫通孔26にも跨がり、吐水状態となる。尚、可動ディスク22がケース体24の他方側に移動するほど、給湯用貫通孔25、給水用貫通孔26から凹部28に流入する湯水の流量が上昇し、従って、本体部4の混合水流路8に至る湯水(混合水M)の流量が上昇する。
【0029】
また、レバー31が図3(A)に示す矢印H方向に回動されるに伴って、可動ディスク22の凹部28と給湯用貫通孔25との連通度合いが、凹部28と給水用貫通孔26との連通度合いよりも大きくなり、混合水Mにおける湯の割合が増える。また、レバー7を逆方向(矢印C方向)に回動させれば、凹部28と給水用貫通孔26との連通度合いが凹部28と給湯用貫通孔25との連通度合いよりも大きくなり、混合水Mにおける水の割合が増える。
【0030】
尚、弁ユニット20は、本体部4の湯流路6及び水流路7から導入された湯水を混合水流路8に導出する際に、湯水の混合比率及び導出流量の調整を、レバー31により行えればよいのであって、そのための機構には、例えば本出願人の先願に係る特開2005−282658号公報の図3に記載の構成等、公知の構成を採用することができるのであり、弁ユニット20のより詳細な説明はここでは省略する。
【0031】
そして、本体部4及び弁ユニット20は、図2、図3(A)、図4、図5、図9(A)〜(E)(特に図9(A)〜(E)参照)に示す鋳物(本例では銅合金製)からなるハウジング40に収容、装着される。このハウジング40の側方には、図9(C)及び(D)に示すように、弁ユニット20の装着に用いられる突出筒部41が設けられている。また、ハウジング40の背面(後面)には、図2及び図9(D)に示すように、略円形状の後側開口部42が設けられ、この後側開口部42は本体部4の背面開口部11に連通し、背面開口部11と後側開口部42とによって一つの開口部(後向き開口部)Hが形成される(図5参照)。
【0032】
また、ハウジング40には、図2、図3(A)及び図9(D)に示すように、上端が後側開口部42の内側空間に連通し、下端がハウジング40の下方に開放された斜めに延びる二つのねじ孔43が左右対称に形成されている。尚、図2に示すように、ハウジング40の背面の左右には後方に突出する段部44が設けられているため、各ねじ孔43がハウジング40の側方に表れることはない。
【0033】
図3(B)に示すように、各ねじ孔43の内壁面には雌ねじ43aが設けられ、この雌ねじ43aに螺着する雄ねじ45aを有する固定ねじ45が、それぞれねじ孔43に螺着される。
【0034】
固定ねじ45の先端部には、図10(A)及び(B)に示すように、窪み部45bと、この窪み部45bの周縁から後端側に向かうテーパ面45cとが設けられている。また、固定ねじ45には、その後端面から先端側に向けて延び断面視非円形状(本例では正六角形状)の内周壁部分を有する凹入部45dが設けられている。これにより、凹入部45dに対してその内周壁部分に係合する適宜の工具(本例では六角レンチ)を挿入し、この工具を回動操作すれば、固定ねじ45をねじ孔43に容易に螺着することができる。
【0035】
さらに、図9(D)に示すように、ハウジング40の背面上部(後側開口部42よりも上方)には、凹部46が設けられている。
【0036】
次に、吐水部材2の構成について説明する。
【0037】
吐水部材2は、金属製(本例ではステンレス製)の部材であり、図2、図3(A)、図11(A)及び(B)に示すように、曲げ板状の外観を呈する吐水管51を備え、この吐水管51は、略鉛直方向に延びる基部52と、この基部52の上方から基部52の前方に向かって山なりに延びる山形部53とを有し、山形部53の先端側に横長の吐水口3が設けられている。
【0038】
また、図2、図3(A)、図11(A)及び(B)に示すように、基部52の前面下部に金属製(本例ではステンレス製)で略円筒状の筒部54が設けられている。尚、この筒部54は、例えば溶接により基部52に接合されている。そして、筒部54の内部と基部52(吐水管51)の内部とが連通するように、基部52の前面において筒部54が接合される箇所には開口が形成されている。
【0039】
ここで、図11(A)に示すように、筒部54の外周面にはこの外周面の周方向に沿って環状のテーパ溝55が設けられている。
【0040】
また、図2、図3(A)、図11(A)及び(B)に示すように、基部52の前面上部に金属製(本例ではステンレス製)で略円筒状の凸部56が設けられている。尚、この凸部56は、例えば溶接により基部52に接合されている。
【0041】
次に、水栓本体1に吐水部材2を取り付ける方法について説明する。
【0042】
(1)予め、図2に示すように水栓本体1、吐水部材2をそれぞれ組み立てておく。このとき、水栓本体1のねじ孔43に固定ねじ45は螺着していない状態としておく。
【0043】
(2)まず、水栓本体1の凹部46、後向き開口部Hに、吐水部材2の凸部56、筒部54を各々挿入する(図2及び図3(A)参照)。
【0044】
これにより、吐水部材2のおおよその位置決めがなされる。尚、凹部46と凸部56との間には若干の間隙があり、また、後向き開口部Hと筒部54との間にも隙間があるので、吐水部材2が完全に位置決めされるわけではない。
【0045】
また、このとき、図3(A)に示すように、筒部54は、後向き開口部Hの内側において、水栓本体1の後側に向けて延びる連接管13に外嵌されることになる。
【0046】
(3)続いて、二つの固定ねじ45を二つのねじ孔43内に対して各々の下方からそれぞれ螺進させ、各固定ねじ45の先端部(テーパ面45c)を筒部54のテーパ溝55の溝壁に当接させる(図2及び図3(B)参照)。
【0047】
すなわち、二つの固定ねじ45を螺進させるに伴って、各固定ねじ45の先端部(テーパ面45c)がテーパ溝55の溝壁に当接してからもこの溝壁上を滑り、やがて水栓本体1の背面と吐水部材2の基部52の前面との間の隙間がなくなって吐水部材2が完全に位置決めされるとともに、筒部54ひいては吐水部材2が水栓本体1に対して強固に固定されることになる。
【0048】
以上で水栓本体1に対する吐水部材2の取付けが完了し、このようにして組み立てられた水栓では、吐水口3からの幅広で帯状(膜状)の吐水を良好に行うことができる。すなわち、従来の幅広吐水を行わせる水栓では、この幅広吐水を確実に行わせるために、吐水口の上流側に堰を形成するための部材が別途設けられていたので、吐水口周辺の構造が複雑化したり大型化するという問題があった。
【0049】
しかし、本例の水栓では、吐水部材2が、吐水口3の上流側に、筒部54内から水栓本体1の後方及び上方をこの順に経て水栓本体1の前方に至る水路を形成しており、吐水部材2の基部52から山形部53の最上部53aまでの流路が堰としての役割も同時に果たすため、従来のような堰を形成するための部材を別途設ける必要がなく、従って、それだけ吐水口3周辺の構造をシンプルかつ小型化、薄型化することができる。
【0050】
また、二つの固定ねじ45が筒部54に対して左右対称にかつ強固に当接しているので、人が吐水口3の左右端部を誤ってあるいは意図的に下方に押圧しても、その押圧力により吐水部材2の取付け姿勢が歪むことはない。
【0051】
さらに、吐水部材2の筒部54にテーパ溝55を設け、このテーパ溝55の溝壁に固定ねじ45を当接させることにより吐水部材2を水栓本体1に固定する構成を採用しているので、二つのねじ孔43を設けるために高精度な加工が要求されず、それだけ本例の水栓は低コストで製造することができる。
【0052】
尚、本例の水栓は、各部材の材料や形状等の構成要素を適宜変更することができる。そこで、以下に本例の変形例を示す。
【0053】
本例では水栓を湯水混合水栓としてあるが、これに限らず、単水栓であってもよい。
【0054】
また、本例では水栓をシングルレバー式の水栓としてあるが、図12(A)及び(B)に示すように、二つのハンドル(湯流量調整ハンドル61及び水流量調整ハンドル62)を有するタイプの水栓であってもよい。
【0055】
また、本例では水栓を洗面台Sに設置してあるが、図12(B)に示すように、水栓を浴槽Uに設置してあってもよい。
【0056】
また、本例では吐水部材2をステンレス製としてあり、材料強度があるので吐水部材の中間部分が撓むことがない。しかし、吐水部材2を樹脂製としてもよく、この場合、吐水部材2の中間部分が撓むことを防止するために、適宜の箇所にリブを設ければよい。
【0057】
また、本例では凹部46と凸部56とを一つずつのみ設けてあるが、二つ以上ずつ設けてあってもよい。
【0058】
また、本例ではねじ孔43及び固定ねじ45を左右対称に2対設けてあるが、1対のみ設けてあってもよく、左右対称に3対以上設けてあってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施の形態に係る水栓の使用状態を概略的に示す斜視図である。
【図2】前記水栓の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】(A)は前記水栓の構成を概略的に示す部分断面側面図、(B)は(A)におけるA−A線断面図である。
【図4】前記水栓の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図5】前記水栓の水栓本体の構成を概略的に示す部分断面側面図である。
【図6】(A)は前記水栓本体の本体部の構成を概略的に示す部分断面正面図、(B)は(A)のX−X線断面図、(C)は(A)のY−Y線断面図、(D)は(A)のZ−Z線断面図である。
【図7】(A)及び(B)は前記水栓本体の連接管の構成を概略的に示す縦断面図及び側面図である。
【図8】(A)〜(D)は前記水栓本体の弁ユニットの構成を概略的に示す正面図、縦断面図、平面図及び底面図である。
【図9】(A)は前記水栓本体のハウジングの構成を概略的に示す平面図、(B)は(A)のP−P線断面図、(C)は(A)のQ−Q線断面図、(D)及び(E)は前記ハウジングの構成を概略的に示す部分透視背面図及び底面図である。
【図10】(A)及び(B)は前記水栓本体の固定ねじの構成を概略的に示す部分透視正面図及び底面図である。
【図11】(A)は前記水栓の吐水部材の構成を概略的に示す縦断面図、(B)は(A)におけるB−B線断面図である。
【図12】(A)は前記水栓の変形例の構成を概略的に示す斜視図、(B)はその使用状態を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 水栓本体
2 吐水部材
3 吐水口
13 連接管
43 ねじ孔
45 固定ねじ
46 凹部
54 筒部
55 テーパ溝
56 凸部
H 後向き開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体と、該水栓本体に装着された吐水部材とを備えた水栓であって、
前記水栓本体は、該水栓本体の後側に開口し、内部に該水栓本体の後側に向けて延びる連接管が配置された後向き開口部を備え、該水栓本体内に導入された水が前記連接管の内部を経て該水栓本体の後側に導出されるように構成され、
前記吐水部材は、前記後向き開口部の内側において前記連接管に外嵌される筒部と、該筒部内から前記水栓本体の後方及び上方をこの順に経て該水栓本体の前方に至る水路と、該水路の下流部に設けられた横長の吐水口とを備え、
また、前記筒部の外周面には該外周面の周方向に沿って環状のテーパ溝が設けられ、前記水栓本体の前記後向き開口部には、前記テーパ溝の溝壁に先端部が当接する固定ねじが螺合するねじ孔が連通している水栓。
【請求項2】
前記ねじ孔が前記水栓本体に対して左右対称に二つ設けられている請求項1に記載の水栓。
【請求項3】
前記水栓本体の後面に凹部が設けられ、前記吐水部材の前面に前記凹部に嵌入される凸部が設けられている請求項1または2に記載の水栓。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の水栓の前記吐水部材を前記水栓本体に接続する水栓の組立て方法であって、
前記吐水部材の前記筒部を前記水栓本体の前記連接管に外嵌した後、前記ねじ孔内に前記固定ねじを螺進させ、該固定ねじの先端部を前記筒部の前記テーパ溝の溝壁に当接させる水栓の組立て方法。
【請求項1】
水栓本体と、該水栓本体に装着された吐水部材とを備えた水栓であって、
前記水栓本体は、該水栓本体の後側に開口し、内部に該水栓本体の後側に向けて延びる連接管が配置された後向き開口部を備え、該水栓本体内に導入された水が前記連接管の内部を経て該水栓本体の後側に導出されるように構成され、
前記吐水部材は、前記後向き開口部の内側において前記連接管に外嵌される筒部と、該筒部内から前記水栓本体の後方及び上方をこの順に経て該水栓本体の前方に至る水路と、該水路の下流部に設けられた横長の吐水口とを備え、
また、前記筒部の外周面には該外周面の周方向に沿って環状のテーパ溝が設けられ、前記水栓本体の前記後向き開口部には、前記テーパ溝の溝壁に先端部が当接する固定ねじが螺合するねじ孔が連通している水栓。
【請求項2】
前記ねじ孔が前記水栓本体に対して左右対称に二つ設けられている請求項1に記載の水栓。
【請求項3】
前記水栓本体の後面に凹部が設けられ、前記吐水部材の前面に前記凹部に嵌入される凸部が設けられている請求項1または2に記載の水栓。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の水栓の前記吐水部材を前記水栓本体に接続する水栓の組立て方法であって、
前記吐水部材の前記筒部を前記水栓本体の前記連接管に外嵌した後、前記ねじ孔内に前記固定ねじを螺進させ、該固定ねじの先端部を前記筒部の前記テーパ溝の溝壁に当接させる水栓の組立て方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−126930(P2010−126930A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300454(P2008−300454)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)
【Fターム(参考)】
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