説明

水栓用部材の組付構造及び水栓用部材

【課題】 水栓用部材の組付の際、シール部材の破損を防止する。
【解決手段】 シャワースタンド20の組付用空間部25aに対し、支持部材30を挿入しつつ組み付けて構成される組付構造である。シャワースタンド20では、組付用空間部25aの軸心が傾斜状等とされ、下部に組付用空間部25aを外部に開放する開放孔26が形成される。支持部材30の外周部のうちで、開放孔26よりも奥側に挿入される部位には周回状の奥側装着部33が設けられる。そして、この奥側装着部33は、円弧状部分33eと、弦状部分33gと備える周回状の経路を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓用部材の組付構造及び水栓用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
水栓用部材の中には、通水部材(通水を行うための部材)を、内部に挿通させるものが存在する。例えば、シャワーヘッドを支持するためのシャワースタンドの中には、パイプ状に構成されるスタンド本体(水栓部材の具体例を構成する。)内に、シャワーヘッドへの通水を行うためのシャワーホース(通水部材の具体例を示す。)を、挿通させたものが存在する(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平10−237911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の水栓用部材においては、シャワーヘッドから伝わる水が、通水部材の外周部を伝わり、この水栓用部材の内部に浸入することがある。このため、本出願人は、この種の水栓用部材を備える水栓において以下のような改良を試みた。つまり、図11に示すように、スタンド本体(水栓部材)80の周壁部の下部に、スタンド本体(水栓部材)80の内部空間部81を、下方に向かって開放する開放孔83を形成する。
【0004】
また、軸心の方向に挿入空間部85aを備える支持部材85を用意する。この支持部材85は、軸心方向に沿った中間部に挿入空間部85aを下方に向かって開放する排水孔85bを備える。また、外周部において排水孔85bの両側の部位に装着部85c、85dを備える。そして、挿入空間部85aに対してシャワーホース5を引き出し自在に挿入し、両装着部85c、85dにシール部材(パッキン)86a、86bを外嵌状に装着した状態にて、この支持部材85をスタンド本体(水栓部材)80の内部空間部81に挿入する。このとき、排水孔85bと開放孔83とを上下方向に位置合わせすると、シャワーホース5を伝って、スタンド本体80に浸入した水を、排水孔85b、開放孔83の順に通過させ、スタンド本体80外に排出することができる。
【0005】
しかし、この種の水栓用部材(スタンド本体80、支持部材85)の組付を行うと、以下の問題を生ずる。つまり、開放孔83は、通常、鋳物や樹脂成形等で成形された水栓用部材に対して、機械加工(切削等)によって事後的に形成されるのが一般的である。このため、水栓用部材(スタンド本体80)の内周部87のうちで開放孔83の周辺に位置する部位には、機械加工によって「無用の突起部(「バリ」や「カエリ」)88」を生ずることがある。尚、水栓用部材を、開放孔83付きのものとして一体成形することも考えられるが、この場合においても、水栓用部材の内周部のうちで開放孔の周辺に位置する部位には、無用の突起部を生ずることがある。
【0006】
従って、開放孔83が設けられた水栓用部材(スタンド本体80)に対して、他の水栓用部材(支持部材85)を組み付ける過程で、開放孔83よりも奥側に配置されるシール部材(パッキン)86bが突起部88と接触する。そして、このシール部材(パッキン)86bに破損(切れ、キズ等)を生ずる可能性がある。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、「開放孔を備える水栓用部材」に対して、「シール部材が装着された水栓用部材」を組み付ける際に、このシール部材に破損を生ずることを防止したり、破損を生ずる可能性を低くできる、水栓用部材の組付構造と、このような組付構造を構成するための水栓用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の水栓用部材の組付構造は、
第1の水栓用部材に設けられる組付部における空間断面が略円形の組付用空間部に対して、第2の水栓用部材の一部若しくは全体を構成する挿入部を挿入しつつ、前記第1の水栓用部材に前記第2の水栓用部材を組み付けて構成される、水栓用部材の組付構造であって、
前記組付部では、前記組付用空間部の軸心が水平若しくは傾斜状とされると共に、該軸心の方向に沿った所定の位置の下部に前記組付用空間部を外部に開放する開放孔が形成され、
前記挿入部の外周部のうちで、前記組付部における前記開放孔の形成箇所よりも奥側に挿入される部位には奥側装着部が周回状に設けられ、
該奥側装着部に対して、前記挿入部の外周部と前記組付部の内周部との間に水密部を形成するためのシール部材が装着され、
前記奥側装着部は、仮想的な基準円の円周部に沿った円弧状部分と、該基準円の円周部の内側に位置する逃がし部分と、を備える周回状の経路を備え、
前記組付用空間部内において下方側に位置する部位に前記円弧状部分が配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によると、組付用空間部の空間断面の形状(組付用空間部の軸心に直交する断面の形状)が略円形とされる。つまり、組付用空間部は、略円柱形状等とされるため、組付用空間部の内部において、挿入部をその軸心周りに回転可能となる。しかも、請求項1の発明では、奥側装着部が、その周回状の経路の一部を逃がし部分とする。換言すると、奥側装着部の描く経路の形状を円形状ではなく、当該円形状の一部をその中心方向に凹ませた形状とする。このため、奥側装着部にシール部材が装着(外嵌)されると、このシール部材の外周部は、奥側装着部の経路に倣った形状とされる。具体的には、このシール部材の外周部も、円弧状部分と、逃がし部分とを備えた形状となる。
【0010】
このため、請求項1の発明では、挿入部の挿入作業を、例えば、以下のように行うことで、奥側装着部に装着されたシール部材に破損を生ずることを防止したり、破損を生ずる可能性を低くできる。即ち、シール部材(奥側装着部)が開放孔を通過する際に(組付用空間部において、開放孔が形成された空間断面を通過する際に)、奥側装着部と開放孔との間に作為的な「位置ズレ(組付用空間部の半径の方向に沿った位置ズレ)」を生じさせる。これによって、シール部材が、開放孔の周辺の突起部(バリ、カエリ等)と接触することを防止したり、接触する可能性を低くできる。そして、シール部材(奥側装着部)が開放孔を通過した後、挿入部と組付部との間の「作為的な位置ズレ」を解消すればよい。
【0011】
尚、本発明においては、奥側装着部に装着されるシール部材の一部が、逃がし部分とされるため、このシール部材は、その外周部の全周によってシールを行わない。但し、組付用空間部の内部は、開放孔によって大気開放されるため、このように、「シール部材の一部に、逃がし部分が設けられても(つまり、シールを行わない部分が存在しても)」、水栓用部材の組付構造として必要なシール性能は確保されている。
【0012】
各請求項の発明において、第1の水栓用部材は組付部のみで構成されても、第1の水栓用部材は組付部と他の部分とで構成されてもよい。また、第2の水栓用部材は挿入部のみで構成されても、第2の水栓用部材は挿入部と他の部分とで構成されてもよい。
【0013】
各請求項の発明において、「開放孔」の形成目的は特に問わない。例えば、この「開放孔」を、「組付構造内(組付用空間部内)に浸入する水を、組付構造外(組付用空間部外)へ排水するための排水口」として形成する場合を例示できる。尚、請求項1〜5の発明において、「組付部において、組付用空間部の軸心の方向に沿った所定の位置の下部」とは、例えば、「組付部において組付用空間部の軸心の方向に沿った中間部のうちで、組付部の内周部を周回する方向に沿った最下端部」を例示できる。また、請求項1〜5の発明の「開放孔」は、この「下部」に止まらず、「下部を含む、下部よりも広範な部位」に設けられてもよい。つまり、「最下端部を含みつつも、組付部の内周部を周回する方向に沿った円弧状の部分」に設けられてもよい。
【0014】
各請求項の発明において「開放孔」の形成方法は特に問わず、例えば、切削加工を例示できる。特に、組付部の外部から切削工具(ドリル等)を用いた機械加工によって、孔開け加工を施す場合、「組付部の内周部のうちで、開放孔の周囲の部位」には、「バリ」等の突起部を生じ易いため、各請求項の発明が、より一層、有意義なものとなる。
【0015】
各請求項の発明において、「奥側装着部が描く、周回状の経路」の具体的な形状としては以下の形状を例示できる。即ち、(1)仮想的な基準円の円周部に沿った円弧状部分と、この円弧状部分の端部間を接続する直線状部分(弦状部分)と、を備える経路形状(特に、D字形状)、(2)仮想的な基準円の円周部に沿った円弧状部分と、円弧状部分の端部間を接続すると共に仮想的な基準円の円周部の内側に位置する曲線状部分(凹んだ曲線状部分)、を備える経路形状、等を例示できる。尚、各請求項の発明においては、「奥側装着部において、仮想的な基準円の円周部に沿った部位」が、シール部材を組付部の内周部と水密状に接触させ、このシール部材によってシールを実行させる部分であり、逃がし部分が、シール部材を組付部の内周部と非接触とさせる部分である。
【0016】
各請求項の発明において、「奥側装着部が描く、周回状の経路」を、1つの円弧状部分と、この円弧状部分の端部間を接続する逃がし部分と、で構成する場合、「円弧状部分の中心角」を60度〜350度のうちの何れかとすることが望ましい。中心角が60度未満であると、シール部材によるシール範囲が過小となり、シール部材のシール能力が不十分となる。一方、350度を超えると、奥側装着部に逃がし部分が存在するにも関わらず、シール部材の外周部が真円状となるおそれがあるからである。尚、この「円弧状部分の中心角」を、120度〜340度のうちの何れかとすることが更に好ましく、180度〜320度のうちの何れかとすることが更に一層好ましく、200度〜300度のうちの何れかとすることが更により一層好ましい。
【0017】
尚、請求項1〜5の発明において、「組付用空間部内において下方側に位置する部位」とは、例えば、「組付用空間部内において、組付部の内周部を周回する方向に沿った最下端部側に位置する部位」を例示できる。つまり、請求項1〜5の発明において円弧状部分は、この「最下端部」、若しくは、「最下端部を含む、最下端部よりも広範な部位」に配置される。
【0018】
各請求項の発明においては、挿入部が複数個の「奥側装着部」を備え、各「奥側装着部」が、「仮想的な基準円の円周部に沿った円弧状部分と、該基準円の円周部の内側に位置する逃がし部分と、を備える周回状の経路」を備てもよい。また、各請求項の発明においては、挿入部が、「奥側装着部」以外の「装着部」、つまり、「挿入部の外周部のうちで、組付部における開放孔の形成箇所よりも、入口側(組付部の入口側)に挿入される部位」に、周回状の装着部(以下、「入口側装着部」という。)が設けられてもよい。この「入口側装着部」が、円形(真円形)の周回状の経路」を備てもよいし、「奥側装着部」と同様な「周回状の経路(円弧状部分と、逃がし部分と、を備える周回状の経路)」を備えてもよい。
【0019】
請求項2の発明の水栓用部材の組付構造は、請求項1に記載の水栓用部材の組付構造において、
前記挿入部は軸心の方向に沿って挿通用空間部を備え、該挿通用空間部に吐水用ホースを引き出し自在に挿通しつつ、該吐水用ホースを保持すると共に、
前記第1の水栓用部材は、前記挿入部に保持された前記吐水用ホースを支持し、
前記挿入部の軸心の方向に沿った中間部には、前記挿通空間部内に浸入した水を、前記挿通空間部外に排水するための排水部が設けられ、該排水部と前記開放孔とが上下方向に位置合わせされることを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明は、第1の水栓用部材と、第2の水栓用部材の具体的な内容を例示するものである。つまり、挿入部によって、吐水用ホースを引き出し自在に挿通されると共に、この吐水用ホースを保持する(収納する)保持部材(収納部材)を構成する。そして、第1の水栓用部材、若しくは、その一部によって、「吐水用ホースを保持している挿入部」を支持する支持部材(例えば、スタンド本体)を構成する態様を例示している。
【0021】
請求項2の発明では、吐水用ホースを伝わって組付用空間部に浸入する水は、挿通空間部内に浸入し、排水部を通じて挿通空間部外に排水させる。このとき、排水部よりも、組付用空間部の奥側において、奥側装着部に装着されたシール部材が、組付部における内周部の下部側に水密状に接触し、挿通空間部外に排水される水がせき止められ、組付用空間部の更に下方に浸入することが阻止される。そして、このシール部材によって、せき止められた水は、開放孔を通じて、組付部(第1の水栓用部材)の外部に排出される。つまり、奥側装着部に装着されたシール部材は、吐水用ホースを伝わった水を「水切り」して、組付部(第1の水栓用部材)の外部に排出させるための「水切り部材」として機能する。
【0022】
ここで、吐水用ホースとは、給水源(水栓本体、元配管の端末部、若しくは、給湯器等)と、「吐水具」との間に介在されるホースを指す。尚、この「吐水具」は、シャワー吐水を行うためのシャワーヘッドに限定されるものでなく、種々の態様の吐水(通常吐水、泡沫吐水等)を行うための吐水ヘッド等が含まれる。また、この吐水用ホースを挿通用空間部に挿通させ、引き出し、若しくは、挿入(収納)する際に、この吐水用ホースが、内周部(挿通用空間部を取り囲む内周部)と摺動することとしてもよい。
【0023】
請求項3の発明の水栓用部材の組付構造は、請求項1又は請求項2に記載の水栓用部材の組付構造において、
前記挿入部は、前記排水部を基準とした前記挿入部の軸心の方向に沿った両側に装着部を備え、各装着部に前記挿入部の外周部と前記組付部の内周部との間に水密部を形成するためのシール部材が装着されると共に、
前記挿入部において前記排水部よりも奥側に位置する装着部が、前記奥側装着部を構成することを特徴とする。
【0024】
請求項3の発明は、第2の水栓用部材の具体的な内容を例示するものである。この請求項3の発明によると、両装着部と、それらに装着されるシール部材の作用によって、挿入部の軸心と、組付用空間部の軸心とを同軸状に位置合わせすることが容易である。尚、請求項3の発明が、請求項2の発明に従属する場合、挿入部は、吐水用ホースの軸心を、組付用空間部の軸心とを同軸状に位置合わせし、吐水用ホースの円滑な引き出しと、挿入とを可能とするための部材として機能する。
【0025】
請求項4の発明の水栓用部材の組付構造は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の水栓用部材の組付構造において、
前記組付部に被係合部が設けられ、前記挿入部には係合部が設けられ、
前記係合部を前記被係合部に係合することで、前記挿入部の前記組付部への位置決めと、前記挿入部の前記組付部への固定が行われる。
【0026】
請求項4の発明によると、係合部を被係合部に係合することで、挿入部の組付部への位置決めと、挿入部の組付部への固定を行うことができるので、第1の水栓用部材と、第2の水栓用部材との組付作業を円滑に行うことができる。
【0027】
ここで、「被係合部」の具体例として、組付部の内周部で開口する「被係合孔」を例示でき、「挿入部」の具体例として、挿入部の半径外側方向に突出すると共に、挿入部の半径内側方向に弾性変形可能な係合突起(具体的には、挿入部から片持ち梁部を突出させた状態で、この片持ち梁部の自由端から、挿入部の半径外側方向に突出する係合突起)を例示できる。この場合、組付部と挿入部とを、挿入部の軸心周りに相対回転させて、係合部を被係合部に係合させることができる。
【0028】
請求項5の発明の水栓用部材は、
空間断面が略円形で、軸心が略水平、若しくは、傾斜状とされる組付用空間部を内部に形成すると共に、軸心の方向に沿った所定の位置の下部に前記組付用空間部を下方に向かって開放する開放孔が形成された組付部を具備する他の水栓部品に対して、一部若しくは全体を構成する挿入部を前記組付用空間部に挿入しつつ、組み付けられる水栓用部材であって、
前記挿入部の外周部のうちで、前記組付部における前記開放孔の形成箇所よりも奥側に挿入される部位には奥側装着部が周回状に設けられ、
該奥側装着部に対して、前記挿入部の外周部と前記組付部の内周部との間に水密部を形成するためのシール部材が装着されると共に、
前記奥側装着部は、仮想的な基準円の円周部に沿った円弧状部分と、該基準円の円周部の内側に位置する逃がし部分と、を備える周回状の経路を備え、
前記組付用空間部内において下方側に位置する部位に前記円弧状部分が配置されることを特徴とする。
【0029】
ここで、請求項5の発明の「水栓用部材」は、請求項1の発明の「第2の水栓用部材」に相当し、請求項5の発明の「他の水栓用部材」は、請求項1の発明の「第1の水栓用部材」に相当する。この請求項5の発明によっても、請求項1の発明と同様な効果を得ることができる。尚、請求項5の発明が、前述の請求項2〜請求項4の発明と同様な内容の発明を、従属発明としてもよい。
【0030】
請求項6の発明の水栓用部材の組付構造は、
第1の水栓用部材に設けられる組付部における空間断面が略円形の組付用空間部に対して、第2の水栓用部材の一部若しくは全体を構成する挿入部を挿入しつつ、前記第1の水栓用部材に前記第2の水栓用部材を組み付けて構成される、水栓用部材の組付構造であって、
前記組付部において前記組付用空間部の軸心の方向に沿った所定の位置には、前記組付部を肉厚方向に貫通し、前記組付用空間部を前記組付部の外部に開放する開放孔が形成され、
前記挿入部の外周部のうちで、前記組付部における前記開放孔の形成箇所よりも奥側に挿入される部位には奥側装着部が周回状に設けられ、
該奥側装着部に対して、前記挿入部の外周部と前記組付部の内周部との間に水密部を形成するためのシール部材が装着されると共に、
前記奥側装着部は、仮想的な基準円の円周部に沿った円弧状部分と、該基準円の円周部の内側に位置する逃がし部分と、を備える周回状の経路を備えることを特徴とする。
【0031】
請求項6の発明は、請求項5の発明の上位概念に相当する。つまり、組付部における開放孔の形成箇所を限定しない点と、逃がし部分の形成位置を限定しない点とが請求項1の発明と異なっている。この請求項6の発明によっても、請求項1の発明と同様に、組付部に挿入部を挿入する作業の際に、奥側装着部に装着されたシール部材に破損を生ずることを防止したり、破損を生ずる可能性を低くできる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、請求項1〜4及び6の各発明によると、「開放孔を備える水栓用部材」に対して、「シール部材が装着された水栓用部材」を組み付ける際に、このシール部材に破損を生ずることを防止したり、破損を生ずる可能性を低くできる、水栓用部材の組付構造を得ることができる。また、請求項5の発明によると、このような組付構造を構成するための水栓用部材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本各発明に係わる「水栓用部材の組付構造(以下、「組付構造」という。)K」の最良の形態(以下、「実施例」という。)を図面に従って詳細に説明する。この組付構造Kは、図1に示すように、キッチンの台部(デッキ部)Dに設置される湯水混合水栓1に対して適用されるものである。
【0034】
この湯水混合水栓1は、所謂「シングルレバータイプ」の湯水混合水栓1であり、台部(デッキ部)D上に設置される水栓本体10と、水栓本体10の上部に配置された操作部(レバータイプ)11と、水栓本体10の側面部から斜め上方に突出するスタンド本体20と、支持部材30と、第1のシール部材40と、第2のシール部材50と、シャワーホース5と、シャワーヘッド6と、を備えている。
【0035】
尚、水栓本体10は、流路形成体(詳細な図示を省略)10aと、流路形成体(詳細な図示を省略)10aを被覆する外装体12と、を備えている。このうち、流路形成体10aは、快削黄銅によって構成されると共に内部に流路を形成している。また、外装体12は、流路形成体10aの下端部10bを除く略全体に対して同軸状に外嵌されると共に、流路形成体10aの軸心周りに回動可能とされている。
【0036】
スタンド本体20は、第1の水栓用部材の具体例を構成するものである。このスタンド本体20は、継目無管によって構成されている。そして、このスタンド本体20は、下端部21を水栓本体10(外装体12)に一体化させ、軸心を斜め上方に向けた状態とされている。尚、スタンド本体20の内部空間は、水栓本体10(流路形成体10a)内の「ホース通過用空間部(図示を省略)」と連通する状態となっている。
【0037】
このスタンド本体20は、図2に示すように、上端部22を斜め上方に開放し、後述するシャワーヘッド6の「受け入れ口」を構成している。このスタンド本体20においては、その軸心Jの方向に沿った各位置の下部(最下部)24kが、このスタンド本体20の下方に位置する稜線部(直線状の稜線部)24rによって構成されている。尚、スタンド本体20の上端部22は、段差部22dを構成している。
【0038】
このスタンド本体20において、上端部22側に位置する所定の幅(軸心Jの方向に沿った幅であって、具体的には、後述する挿入部Sの軸心長に相当する幅)の部位が、組付部25を構成している。この組付部25は、内部に略円柱状の組付用空間部25aを構成している。つまり、この組付用空間部25aは、その軸心(本実施例では、スタンド本体20の軸心Jに一致)を、スタンド本体20の上端部22に向かって上がり傾斜としつつ、この軸心に直交する空間断面(空間の断面)を略円形としている。
【0039】
図2に示すように、組付部25において、その軸心(スタンド本体20の軸心J)方向に沿った中間の位置(上下方向に沿った中間の位置)であって、組付部(スタンド本体20)25の下部24kに相当する位置には、開放孔26が形成されている。この開放孔26は、組付用空間部25aを、組付部(スタンド本体20)25よりも下方に開放する状態に設けられている。この開放孔26は、組付部(スタンド本体20)25の周方向に沿って円弧状に設けられ、その円弧状の中心部を、組付部25の下部24kに配置している。
【0040】
この組付部25において、その軸心(スタンド本体20の軸心J)方向に沿った後端(下端)の位置(上下方向に沿った下端の位置)であって、しかも、組付部(スタンド本体20)25の下部24kに相当する位置には、被係合孔27が形成されている。この被係合孔27も、組付用空間部25aを、組付部(スタンド本体20)25よりも下方に開放する状態に設けられている。この被係合孔27は、組付部(スタンド本体20)25の下部に略矩形状に形成されている。
【0041】
開放孔26及び被係合孔27は、何れも、組付部25の外部から機械加工(切削加工)を施して形成されたものである。このため、組付部25の内周部25bにおいて、開放孔26及び被係合孔27の周囲に位置する部位には、バリ等の突起部(好ましからざる突起部)Bが形成される可能性が高くなっている(図8を参照)。
【0042】
シャワーホース5は、図1に示すように、「吐水用ホース」の具体例を構成するものである。そして、金属製の螺旋管及び樹脂製チューブとを備える多層ホースを備える二重管を主体に構成されている。つまり、このシャワーホース5は、所謂「メタルホース」と称されるホースであり、略蛇腹状で、金属製の螺旋管を用いて構成されるアウター管と、樹脂製チューブによって構成されると共にアウター管に挿通させるインナー管と、を備える。このシャワーホース5は、適度な弾性を備えている。
【0043】
このシャワーホース5は、その2次の端部(下流の端部)側の部分及び中間部を、スタンド本体20内に挿通させ、1次の端部(上流の端部)側の部分を、水栓本体10の内部(ホース通過用空間部の内部)に挿通させている。また、シャワーホース5の1次側の端部(上流側の端部)は、水栓本体10の流出口(図示を省略)に接続されている。尚、この流出口からは、(1)水栓本体10に供給された水(以下、「元水」という。)と、水栓本体10に供給された湯(以下、「元湯」という。)とを、水栓本体10に内蔵された弁装置で適温に混合して構成される水(以下、「混合水」という。)、(2)水栓本体10に内蔵された弁装置をそのまま通過した「元水(元湯との混合がなされない元水)」、若しくは、(3)水栓本体10に内蔵された弁装置をそのまま通過した「元湯(元水との混合がなされない元湯)」が流出する。
【0044】
シャワーヘッド6は、図1に示すように、略筒状のヘッド本体6aと、ヘッド本体6aの上端部から下方に垂下する吐水部6bとを備えている。このヘッド本体6aの下端部の内周部には、スペーサ部材6cが嵌合されている。このスペーサ部材6cの上端部側の内周部には、雌型のセレーション6dが形成されている。
【0045】
シャワーホース5の2次の端部(下流の端部)は、このスペーサ部材6cの内部空間を軸心方向に通過した後、このシャワーヘッド6の内部流路(図示を省略)に接続されている。そして、前述の操作部(レバータイプ)11に吐水操作を施すと、水栓本体10から流出して、シャワーホース5を通過した「混合水」、「元湯」、若しくは、「元水」が、このシャワーヘッド6の内部流路に流入する。このシャワーヘッド6は、その吐水部6bの下面部から吐水(シャワー吐水)される構造となっている。尚、このシャワーヘッド6は、スタンド本体20の上端部22に支持されるか、使用者の手に保持されつつ、使用される。そして、このシャワーヘッド6においては、吐水部6bの下面部から滴る「混合水」、「元湯」、若しくは、「元水」が、ヘッド本体6aの外周部、シャワーホース5の順に伝わることがある。
【0046】
支持部材30は、第2の水栓用部材の具体例を構成するものであり、その一部を用いて挿入部の具体例を構成している。この支持部材30は、樹脂を用いて構成される一体成形品であると共に、組付用空間部25aに一部を挿入可能な略筒状体を用いて構成されている。
【0047】
この支持部材30は、図3に示すように、略円筒状に構成される本体部31と、本体部31の中間部の外周面に設けられた第1の装着部32と、本体部31の後端部側の外周面に設けられた第2の装着部33と、本体部31の後端面から後方に突出する係合脚35と、を備えている。
【0048】
本体部31は、シャワーホース5を摺動状態にて挿入可能な挿通用空間部31aを軸心に沿って備える(図2を参照)。この挿通用空間部31aは、本体部31の前端面と後端面で開口する略円柱状の空間形状を備える。また、本体部31の外周部のうちで、本体部31の前端側に位置する部位には、前述の雌型のセレーション6dとセレーション嵌合可能な雄型のセレーション31bが形成されている。
【0049】
支持部材30において、「第1の装着部32を含む、後方側の部分(第1の装着部32から、第2の装着部33に至る部分)」が、挿入部Sの具体例を構成している。また、本体部31の外周部において、第1の装着部32と第2の装着部33との間に位置する部位の上下部には、各々、開口部31c、31dが形成されている。また、何れの開口部31c、31dも、本体部31を肉厚方向に貫通する状態に設けられ、挿通用空間部31aをその半径外側方向に開放するものである。そして、下方に配置される開口部31dが、排水部の具体例を構成する。この開口部31dは、挿通用空間部31a内に浸入した水(「混合水」、「元湯」、若しくは、「元水」)を、挿通用空間部31a外に排出するための排出口として機能する。
【0050】
図4に示すように、本体部31の中間部の外周面において、所定の間隔(後述する第1のシール部材40の直径と略等しいか、この直径よりも僅かに狭い間隔)をおいた部位からは、一対のフランジ部32a、32aが突出している。これらのフランジ部32aは、本体部31の半径外側方向に突出する状態に形成されている。そして、本体部31の中間部の外周面において、一対のフランジ部32a、32aによって挟まれた部位が、第1のシール部材40の装着される装着部、つまり、第1の装着部32を構成している。
【0051】
この第1の装着部32は、「入口側装着部」の具体例を構成すると共に、図5(a)に示すように、真円状に構成される周回状の経路32kを備えている。そして、図5(b)に示すように、この第1の装着部32には、第1のシール部材(パッキン)40が外嵌状に装着されている。これにより、第1のシール部材40は自身の弾性を用いて、内周部40aを第1の装着部32に圧着させると共に、左右の側周部(図示を省略)を対向するフランジ部32aに圧着させる。そして、第1のシール部材40の外周部40bは、両フランジ部32a、32aの突端部321aよりも、更に、本体部31の半径外側方向に突出する状態とされる。尚、図5(b)では、説明の便宜のため、第1のシール部材40の外周部40bと、フランジ部32aの突端部321aの位置関係を誇張して図示している(外周部40bの突端部321aからの突出量を誇張して図示している。)。
【0052】
図4に示すように、本体部31の後端部側の外周面において、所定の間隔(後述する第2のシール部材50の直径と略等しいか、この直径よりも僅かに狭い間隔)をおいた部位からも、一対のフランジ部33a、33aが突出している。これらのフランジ部33aも、本体部31の半径外側方向に突出する状態に形成されている。そして、本体部31の後端部側の外周面において、一対のフランジ部33a、33aによって挟まれた部位が、第2のシール部材50の装着される装着部、つまり、第2の装着部33を構成している。そして、この第2の装着部33が、奥側装着部の具体例を構成している。
【0053】
この第2の装着部33は、図6(a)に示すように、円弧状部分33eと、弦状部分33gとを備える周回状の経路33kを備える。ここで、弦状部分33gは、逃がし部分の具体例を構成する。また、円弧状部分33eは、仮想的な基準円(第2の装着部33が真円状の経路を描くと仮定した場合に、この経路が描く、真円である。)Cに円周部に沿って円弧状に形成される部分である。また、弦状部分33gは、円弧状部分33eの両端部間を接続する部分であり、前述の「仮想的な基準円C」の円周部の内側に位置している。尚、本実施例では、円弧状部分33eの中心角Aを、約270度に設定している。
【0054】
この第2の装着部33には、図6(b)に示すように、第2のシール部材(パッキン)50が外嵌状に装着されている。これにより、第2のシール部材50は自身の弾性を用いて、内周部50aを第2の装着部33に圧着させると共に、左右の側周部(図示を省略)を対向するフランジ部33aに圧着させる。
【0055】
このように、第2の装着部(奥側装着部)33に、第2のシール部材50が装着(外嵌)されると、第2のシール部材50の外周部50bは、第2の装着部(奥側装着部)33の経路に倣った形状となる。具体的には、装着前には、真円状であった第2のシール部材50の外周部50bは、第2の装着部(奥側装着部)33への装着後に、「円弧状部分33eに倣った円弧状部分E」と、「弦状部分33gに倣った弦状部分(逃がし部分)G」とを備える状態となる。
【0056】
第2のシール部材50を、第2の装着部(奥側装着部)33に装着すると、第2のシール部材50の外周部50bを構成する円弧状部分Eは、両フランジ部33a、33aの突端部331aよりも、更に、本体部31の半径外側方向に突出する状態とされる。尚、図6(b)においても、説明の便宜のため、第2のシール部材50の外周部50bと、フランジ部33aの突端部331aの位置関係を誇張して図示している(外周部50bの突端部331aからの突出量を誇張して図示している。)。また、第2のシール部材50の外周部50bを構成する弦状部分(逃がし部分)Gは、両フランジ部33a、33aの突端部331aよりも、本体部31の半径内側方向に後退する状態とされる。
【0057】
係合脚35は、図3及び図4に示すように、本体部31の後端面における下方側の部位から、本体部31の軸心方向に沿って後方に突出する片持ち梁部35aと、片持ち梁部35aの自由端側から、本体部31の半径外側方向に突出する係合突起部35bと、を備えている。この係合脚35は、本体部31の後端面を固定端とした状態で、本体部31の半径外側方向と、半径内側方向とに弾性変形(撓み)を生じさせることが可能となっている。
【0058】
以上の組付構造Kにおいては、各部材(スタンド本体20、支持部材30)が、例えば、以下の手順で組み付けられる。先ず、第1の装着部32に対して、第1のシール部材40を装着し、第2の装着部(奥側装着部)33に対して、第2のシール部材50を装着する。そして、挿通用空間部31a内に、シャワーホース5を挿通した後に、支持部材30を組付用空間部25aに挿入する。
【0059】
この支持部材30の組付用空間部25aへの挿入作業は、支持部材30の後端部を、スタンド本体20の上端部22の斜め上方に同軸状に位置合わせし、しかも、支持部材30をその軸心周りに180度回転させた状態(以下、「反転状態」という。)で開始される(図7を参照)。尚、この「反転状態」は、「支持部材30を、その最終的な組み付け状態を基準に、軸心周りに180度回転させた状態」である。この反転状態では、図8に示すように、第2の装着部(奥側装着部)33の弦状部分33gと、第2のシール部材50の外周部50bの弦状部分Gが下方に配置された状態となる。また、係合脚35が上方に配置された状態となる。
【0060】
そして、この反転状態のまま、支持部材30の組付用空間部25aへの挿入量を増加させ、第2のシール部材50及び第2の装着部(奥側装着部)33を、開放孔26の形成箇所よりも奥側に到達させる作業を行う。この作業の際には、前述のように、第2のシール部材50の外周部50bの弦状部分Gが下方に配置され、この弦状部分Gと、組付部25の内周部25bとの間には、空き空間部25cが形成される。このため、図8に示すように、組付部25の内周部25bにおいて、開放孔26の周囲に位置する部位に、たとえ、バリ等の突起部(好ましからざる突起部)Bが形成されていても、第2のシール部材50の外周部50bと、突起部Bとの接触を回避できる。
【0061】
そして、支持部材30の組付用空間部25aへの挿入量を更に多くし、「第1の装着部32の両側のフランジ部32a、32aのうちの前方側のものの後面部」が、「スタンド本体20の上端部22の段差部22d」に当接したところで、支持部材30の挿入を完了する。そして、支持部材30をその軸心周りに180度回転させ、支持部材30の状態を本来の状態とする。つまり、第2の装着部(奥側装着部)33の弦状部分33gと、第2のシール部材50の外周部50bの弦状部分Gが上方に配置される状態とすると共に、係合脚35が下方に配置された状態とする。そして、係合脚35の係合突起部35bが、被係合孔27に位置合わせされるように、支持部材30の回転量を調節し、係合突起部35bが被係合孔27に位置合わせされ、係合突起部35bが被係合孔27に係合したところで、支持部材30のスタンド本体20への組み付けを完了する(図2を参照)。このとき、支持部材30のスタンド本体20へ位置決めと、支持部材30のスタンド本体20への固定を行うことができる。
【0062】
このように、支持部材30のスタンド本体20への組み付けを完了した後、シャワーホース5のスタンド本体20外への引き出しと、スタンド本体20内への収納とが行われる。また、支持部材30のスタンド本体20への組み付けを完了すると、本体部31の外周部において、下方に形成された開口部31dが、開放孔26の上方に配置される。
【0063】
また、組付部25の内周部25bにおいて、開放孔26の形成箇所よりも奥側の部位においては、「第2のシール部材50」の弦状部分Gが上方に配置されるつまり、この「奥側の部位」では、上方側の一部がシールを行わないものとされている。但し、組付用空間部25aの内部は、開放孔26によって大気開放されている。しかも、この「奥側の部位」において、下方部側を中心とした広範な部位が、「第2のシール部材50」を用いて、シールされている。このため、組付構造Kにおいては、必要なシール性能が確保されている。
【0064】
尚、本実施例では、両装着部32、33と、それらに装着されるシール部材40、50の作用によって、支持部材30の軸心と、組付用空間部25aの軸心とが同軸状に位置合わせされている。しかも、この支持部材30は、シャワーホース5の軸心を、組付用空間部25aの軸心とを同軸状に位置合わせし、シャワーホース5の円滑な引き出しと、挿入とを可能としている。
【0065】
以上のように、本実施例によると、第2の装着部(奥側装着部)33に装着された「第2のシール部材50」に破損を生ずることを防止することができる。また、本支持部材30は、シャワーホース5を引き出し自在に挿通されると共に、このシャワーホース5を保持する(収納する)保持部材(収納部材)として機能する。
【0066】
しかも、この支持部材30は、このように、「水切り(シャワーホース5を伝わった「混合水」、「元湯」、若しくは、「元水」を、開放孔26を通じて、スタンド本体20の外部に排出することをいう。)」を、実行する上で必要となる部分(円弧状部分E)に破損を生ずることを確実に防止し、この「水切り」を確実に行うことを可能とする。このため、シャワーホース5を伝わった「混合水」、「元湯」、若しくは、「元水」が、スタンド本体20のより下方側へ到達することを防止できる。このため、本実施例では、従来においては、水栓本体10の下方(台部D等の下方)に配置されることが多い「水受け部材(水受けタンク、水受け容器等)」を、省略することもできる。
【0067】
尚、本各発明の範囲は前記各実施例に示す具体的な態様に限定されず、本各発明の範囲内で種々の変形例を例示できる。
【0068】
つまり、第2の装着部(奥側装着部)33が描く、周回状の経路33kの態様は、実施例に例示する態様に限定されない。例えば、図9(a)の第1の変形例に示す経路33kのように、仮想的な基準円Cに円周部に沿って円弧状に形成される円弧状部分33eと、基準円Cに円周部の内側に位置し、基準円Cの中心部の方向に凹む曲線状部分33hと、によって構成してもよい。また、図9(b)の第2の変形例に示す経路33kのように、円弧状部分33e及び弦状部分33gのうちの少なくとも一方を、複数個としてもよい。更に、また、図9(c)の第3の変形例に示す経路33kのように、円弧状部分33eと、凹み部331gを備える弦状部分33gとを備えてもよい。
【0069】
また、本実施例では、組付用空間部25aの空間面積を、組付用空間部25aの空間断面を軸心方向に沿って一定としたが(組付用空間部25aの空間形状を円柱状としたが)、図10(a)に示す第4の変形例や、図10(b)に示す第5の変形例のように、組付用空間部25aの空間断面を面積を軸心方向に沿って変化させてもよい。
【0070】
また、本実施例では、挿入部Sを、組付用空間部25aの上方から、この組付用空間部25aに挿入する態様を例示したが、図10(b)に示す第5の変形例のように、挿入部Sを、組付用空間部25aの下方から、この組付用空間部25aに挿入してもよい。この場合、奥側装着部(第2の装着部)33が上方に配置される。更に、第1の水栓用部材と、第2の水栓用部材の態様は本実施例で例示する態様に限定されない。例えば、相互に挿嵌される複数の管状体を備える共に、挿嵌量を調節することで、全高を変化させる「吐水スタンド」において、雌側の管状体を第1の水栓用部材とし、雄側の管状体を第2の水栓用部材とする態様を例示することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、例えば、水栓の製造、販売、施工、加工等を行う分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例の組付構造が適用された湯水混合水栓の側面図(一部に縦断面を示す。)である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】支持部材を示す斜視図である。
【図4】支持部材を示す縦断面図である。
【図5】(a)は図4の5−5断面図であり、(b)は図4の5−5断面図に、第1のシール部材を装着した状態を示す断面図である。
【図6】(a)は図4の6−6断面図であり、(b)は図4の6−6断面図に、第2のシール部材を装着した状態を示す断面図である。
【図7】支持部材の装着方法を説明するための縦断面図である。
【図8】(a)は実施例の要部を説明するための説明図あり、(b)は図8(a)の拡大図である。
【図9】(a)は第1の変形例を示す断面図であり、(b)は第2の変形例を示す断面図であり、(c)は第3の変形例を示す断面図である。
【図10】(a)は第4の変形例を説明するための縦断面図であり、(b)は第5の変形例を説明するための縦断面図である。
【図11】(a)及び(b)は従来例を説明するための縦断面図である。
【符号の説明】
【0073】
K;組付構造、
S;挿入部、
5;シャワーホース(吐水用ホース)、
6;シャワーヘッド、
20;シャワースタンド(第1の水栓用部材)、
25;組付部、
25a;組付用空間部、
26;開放孔、
27;被係合孔(被係合部)、
30;支持部材(第2の水栓用部材)、
35;係合脚(係合部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の水栓用部材に設けられる組付部における空間断面が略円形の組付用空間部に対して、第2の水栓用部材の一部若しくは全体を構成する挿入部を挿入しつつ、前記第1の水栓用部材に前記第2の水栓用部材を組み付けて構成される、水栓用部材の組付構造であって、
前記組付部では、前記組付用空間部の軸心が水平若しくは傾斜状とされると共に、該軸心の方向に沿った所定の位置の下部に前記組付用空間部を外部に開放する開放孔が形成され、
前記挿入部の外周部のうちで、前記組付部における前記開放孔の形成箇所よりも奥側に挿入される部位には奥側装着部が周回状に設けられ、
該奥側装着部に対して、前記挿入部の外周部と前記組付部の内周部との間に水密部を形成するためのシール部材が装着され、
前記奥側装着部は、仮想的な基準円の円周部に沿った円弧状部分と、該基準円の円周部の内側に位置する逃がし部分と、を備える周回状の経路を備え、
前記組付用空間部内において下方側に位置する部位に前記円弧状部分が配置されることを特徴とする水栓用部材の組付構造。
【請求項2】
前記挿入部は軸心の方向に沿って挿通用空間部を備え、該挿通用空間部に吐水用ホースを引き出し自在に挿通しつつ、該吐水用ホースを保持すると共に、
前記第1の水栓用部材は、前記挿入部に保持された前記吐水用ホースを支持し、
前記挿入部の軸心の方向に沿った中間部には、前記挿通空間部内に浸入した水を、前記挿通空間部外に排水するための排水部が設けられ、該排水部と前記開放孔とが上下方向に位置合わせされることを特徴とする請求項1に記載の水栓用部材の組付構造。
【請求項3】
前記挿入部は、前記排水部を基準とした前記挿入部の軸心の方向に沿った両側に装着部を備え、各装着部に前記挿入部の外周部と前記組付部の内周部との間に水密部を形成するためのシール部材が装着されると共に、
前記挿入部において前記排水部よりも奥側に位置する装着部が、前記奥側装着部を構成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水栓用部材の組付構造。
【請求項4】
前記組付部に被係合部が設けられ、前記挿入部には係合部が設けられ、
前記係合部を前記被係合部に係合することで、前記挿入部の前記組付部への位置決めと、前記挿入部の前記組付部への固定が行われる請求項1乃至請求項3の何れかに記載の水栓用部材の組付構造。
【請求項5】
空間断面が略円形で、軸心が略水平、若しくは、傾斜状とされる組付用空間部を内部に形成すると共に、軸心の方向に沿った所定の位置の下部に前記組付用空間部を下方に向かって開放する開放孔が形成された組付部を具備する他の水栓部品に対して、一部若しくは全体を構成する挿入部を前記組付用空間部に挿入しつつ、組み付けられる水栓用部材であって、
前記挿入部の外周部のうちで、前記組付部における前記開放孔の形成箇所よりも奥側に挿入される部位には奥側装着部が周回状に設けられ、
該奥側装着部に対して、前記挿入部の外周部と前記組付部の内周部との間に水密部を形成するためのシール部材が装着されると共に、
前記奥側装着部は、仮想的な基準円の円周部に沿った円弧状部分と、該基準円の円周部の内側に位置する逃がし部分と、を備える周回状の経路を備え、
前記組付用空間部内において下方側に位置する部位に前記円弧状部分が配置されることを特徴とする水栓用部材。
【請求項6】
第1の水栓用部材に設けられる組付部における空間断面が略円形の組付用空間部に対して、第2の水栓用部材の一部若しくは全体を構成する挿入部を挿入しつつ、前記第1の水栓用部材に前記第2の水栓用部材を組み付けて構成される、水栓用部材の組付構造であって、
前記組付部において前記組付用空間部の軸心の方向に沿った所定の位置には、前記組付部を肉厚方向に貫通し、前記組付用空間部を前記組付部の外部に開放する開放孔が形成され、
前記挿入部の外周部のうちで、前記組付部における前記開放孔の形成箇所よりも奥側に挿入される部位には奥側装着部が周回状に設けられ、
該奥側装着部に対して、前記挿入部の外周部と前記組付部の内周部との間に水密部を形成するためのシール部材が装着されると共に、
前記奥側装着部は、仮想的な基準円の円周部に沿った円弧状部分と、該基準円の円周部の内側に位置する逃がし部分と、を備える周回状の経路を備えることを特徴とする水栓用部材の組付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−77762(P2007−77762A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270245(P2005−270245)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【Fターム(参考)】