説明

水栓装置

【課題】コンパクトでありながら、オゾンガスの発生効率を十分に保持するための乾燥剤の再生を簡便に実現することのできる水栓装置を提供すること。
【解決手段】放電電極16を備え、供給される空気または酸素ガスを原料としてオゾンガスを発生させるオゾン発生ブロック15と、このオゾン発生ブロックで生成したオゾンガスを吐水部8に供給し、オゾンガスを湯水中に混入させるオゾンガス供給路17と、空気または酸素ガスの供給方向に関し、オゾン発生ブロックの上流側に配置され、空気または酸素ガス中の水分を除去する乾燥剤を有する乾燥ブロック19とを備え、この乾燥ブロックは、給湯配管12との間で熱交換可能に設けられ、給湯配管の放熱により乾燥剤の再生が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンガスを用いて湯水の殺菌を行う水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは、殺菌力に優れているのに加え、耐性菌が出現してなく、また、残留性が低く、環境に優しいという理由から、非常に有効な殺菌手段の一つとされている。これまでも水の殺菌のためにオゾンガスを水中に吹き込むことが行われている。
【0003】
ところで、オゾンガスを生成する、放電電極を備えたオゾン生成手段におけるオゾンガスの発生効率は、オゾン生成手段に供給される空気または酸素ガスの湿度により大きく変化する。一般に、空気または酸素ガスの湿度が高い場合、放電効率が低下し、オゾンガスの濃度が低下する傾向にある。そこで従来では、シリカゲルなどの乾燥剤により、供給する空気または酸素ガスを乾燥させたり、オゾンガスの発生効率を高めるために、酸素濃縮機を設け、高濃度の酸素ガスを供給したりすることなどが行われている。
【0004】
たとえば、下記特許文献1には、浄水場のオゾン処理設備が記載され、このオゾン処理設備では、乾燥剤としての活性アルミナを充填した乾燥剤筒が設けられ、この乾燥剤筒に通過させて除湿した乾燥空気をオゾン発生器に供給する。除湿にともない活性アルミナの乾燥能力が次第に低下するため、上記オゾン処理設備では、ブロアにより空気を送りながら、電気ヒータにより空気を加熱し、加熱した空気を乾燥剤筒に供給して活性アルミナの再生を行う。
【0005】
また、上記オゾン処理設備では、オゾン発生器を冷却する熱媒体として用いられる水の帰路排水側に蒸発器を設け、ヒートポンプにより凝集器を介して温水を生成し、この温水を乾燥剤筒の内部に供給し、活性アルミナの再生を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−315804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたオゾン処理設備は、あくまで浄水場用の設備であるので、装置の規模として大型であり、家庭用などの水栓装置にそのまま応用することは難しい。つまり、乾燥剤を再生させるために、加熱した空気や温水を生成するための装置が必要であり、家庭用などの水栓装置の周辺におけるスペースは、当然ながら浄水場と比較してかなり小さく、それらの装置を組み込む余裕はほとんどない。
【0008】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、コンパクトでありながら、オゾンガスの発生効率を十分に保持するための乾燥剤の再生を簡便に実現することのできる水栓装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の水栓装置は、給水配管と給湯配管に接続され、給水配管を通じて供給される水と給湯配管を通じて供給される湯とが混合された湯水を吐水部から吐水する水栓装置において、放電電極を備え、供給される空気または酸素ガスを原料としてオゾンガスを発生させるオゾン発生ブロックと、このオゾン発生ブロックで生成したオゾンガスを吐水部に供給し、オゾンガスを湯水中に混入させるオゾンガス供給路と、空気または酸素ガスの供給方向に関し、オゾン発生ブロックの上流側に配置され、空気または酸素ガス中の水分を除去する乾燥剤を有する乾燥ブロックとを備え、この乾燥ブロックは、給湯配管との間で熱交換可能に設けられ、給湯配管の放熱により乾燥剤の再生が行われることを特徴とする。
【0010】
この水栓装置においては、乾燥ブロックは、通電により発熱する発熱体を備え、この発熱体の発熱によっても乾燥剤の再生が可能とされていることが好ましい。
【0011】
この水栓装置においては、乾燥ブロックは、温風を生成し、生成した温風を乾燥剤に吹付け可能とした温風生成部を備え、この温風生成部が生成する温風の吹付けによっても乾燥剤の再生が可能とされていることが好ましい。
【0012】
この水栓装置においては、空気または酸素ガスの供給方向に関し、乾燥ブロックの下流側に湿度センサが設けられ、この湿度センサが検知する空気または酸素ガスの湿度に基づいて乾燥剤の再生を制御する制御部を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水栓装置によれば、コンパクトでありながら、オゾンガスの発生効率を十分に保持するための乾燥剤の再生を簡便に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の水栓装置の一実施形態を概略的に示した構成図である。
【図2】(a)(b)は、それぞれ、図1に示した水栓装置の乾燥ブロックの一形態を示した正面図である。
【図3】(a)(b)は、それぞれ、図1に示した水栓装置の乾燥ブロックの別の形態を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の水栓装置の一実施形態を概略的に示した構成図である。
【0016】
水栓装置1は、カラン1aとして例示しており、流し台や洗面化粧台などの天面を形成するカウンターまたはシンクのフランジ部2に取り付けられる、上方に垂設された中空の立ち上がり管部3と、立ち上がり管部3の上端部に接続され、立ち上がり管部3と連通する中空な水平管部4とを備えている。水平管部4の先端部には、下端に吐水口5を有する中空な吐水端部6が垂直下方に接続され、水平管部4と連通している。
【0017】
カラン1aの内部には、カウンターまたはフランジ部2を貫通して吐水管7が導入され、立ち上がり管部3、水平管部4および吐水端部6内に配管されている。吐水管7の先端には、吐水部8を形成する吐水ノズル8aが接続され、吐水ノズル8aは、吐水管7と連通し、その先端は、吐水口5に向かっている。吐水管7の立ち上がり管部3内に位置する部分には、吐水の開始および停止を行う開閉弁9が設けられている。開閉弁9には、手動弁または電動弁などを採用することができ、吐水の手動式または自動式の操作が可能である。
【0018】
また、吐水管7は、カウンターまたはフランジ部2の下側において混合弁10を介して給水配管11および給湯配管12に接続されている。給水配管11は、水道水などの水13を吐水管7に供給し、給湯配管12は、予め設定され、また、適当な温度に変更することもできる湯14を吐水管7に供給する。混合弁10には、開閉弁9と同様に、手動弁または電動弁などを採用することができ、水13および湯14の供給量を調節し、所定温度または所望温度の湯水を吐水管7に供給する。
【0019】
また、水栓装置1は、雰囲気である空気または酸素ガスを原料としてオゾンガスを発生させるオゾン発生ブロック15を備えている。オゾン発生ブロック15では、放電電極16を備え、無声放電などによって原料である空気または酸素からオゾンガスを生成するオゾン生成部15aと、オゾン生成部15aの動作などを制御する制御部15bとが設けられている。家庭用の電源AC100VやDC12Vは、制御部15bに電気的に接続可能とされ、オゾン発生ブロック15に供給されるようになっている。
【0020】
オゾン発生ブロック15のオゾン生成部15aには、一端を吐水ノズル8aに接続した管状のオゾンガス供給路17の他端が接続され、オゾン生成部15aは、オゾンガス供給路17を介して吐水ノズル8aに連通している。オゾンガス供給路17は、カウンターまたはフランジ部2の下側から立ち上がってカウンターまたはフランジ部2を貫通し、カラン1aの立ち上がり管部3および水平管部4の内部を通って吐水ノズル8aまで延びている。オゾン生成部15aの作動および停止は、吐水ノズル8aの立ち上がり管部3の側面に設けられたスイッチ18からのON/OFF信号の入力により行われ、このため、スイッチ18は、オゾン発生ブロック15の制御部15bに電気的に接続されている。
【0021】
スイッチ18がONとされると、その信号入力に基づいて制御部15bがオゾン生成部15aを作動させ、雰囲気である空気または酸素ガスを吸い込み、放電電極16によってオゾンガスを発生させる。オゾン生成部15aで発生したオゾンガスは、オゾンガス供給路17を通じて吐水ノズル8aに供給され、吐水管7を通じて吐水ノズル8aに供給される湯水中に気泡として混入され、湯水は殺菌作用を持つ。スイッチ18がOFFにされると、その信号入力に基づいて制御部15bがオゾン生成部15aの作動を停止させる。オゾン生成部15aにおけるオゾンガスの生成が停止する。
【0022】
このようなスイッチ18によるON/OFF制御に加え、制御部15bは、スイッチ18がONにされたときから一定時間オゾン生成部15aを作動させ、一定時間経過後、自動的にオゾン生成部15aの作動を停止させるようなタイマーを組み込むことも可能である。
【0023】
また、水栓装置1では、空気または酸素ガスの供給方向に関し、オゾン発生ブロック15の上流側に乾燥ブロック19が設けられている。乾燥ブロック19は、空気または酸素ガスを取り込む通気孔20が側面に多数形成された中空な箱体21を備え、箱体21の内部に乾燥剤としてシリカゲルが充填されている。箱体21の形状については特に制限はなく、四角柱、円柱などの各種のものが例示される。シリカゲルは、空気または酸素ガス中の水分を除去するために設けられている。乾燥剤の種類についてもシリカゲルに限定されることはない。空気または酸素ガスと接触してその中に含まれる水分を吸収し、除去することができるものであれば特に制限されない。
【0024】
箱体21は、その上端において一端が接続された空気または酸素ガスの供給路22と連通し、供給路22の他端は、オゾン発生ブロック15のオゾン生成部15aに接続され、オゾン生成部15aは、乾燥ブロック19と連通している。供給路22の途中には、空気または酸素ガスの供給方向に関し、乾燥ブロック19の下流側に湿度センサ23が設けられている。湿度センサ23は、乾燥ブロック19を通過した後の空気または酸素ガス中に含まれる水分を検出するものであり、検出した湿度に関する信号は、オゾン発生ブロック15の制御部15bに入力されるように、湿度センサ23は、制御部15bに電気的に接続されている。制御部15bは、乾燥ブロック19を通過した後の空気または酸素ガスの湿度を常時監視する。
【0025】
このような乾燥ブロック19は、給湯配管12との間で熱交換可能に設けられている。具体的には、箱体21が、給湯配管12に接して設けられている。給湯配管12を湯14が流れるとき、湯14から熱が給湯配管12に伝導し、給湯配管12の外部に放熱される。放熱された熱は、乾燥ブロック19の箱体21の内部に伝導する。水栓装置1では、このように伝導する給湯配管12の放熱を、乾燥ブロック19に設けた乾燥剤としてのシリカゲルの再生に利用する。シリカゲルは、給湯配管12の放熱によって加熱され、吸収した水分を通気孔20を通じて外部に放出する。オゾン発生ブロック15の制御部15bは、乾燥ブロック19を通過した後の空気または酸素ガスの湿度を常時監視しているので、そのようなシリカゲルの再生によっても、あらかじめ制御部15bに設定されたオゾンガスの発生に適当とされる空気または酸素ガスの湿度を上回るときは、シリカゲルの交換時期であることをユーザに報知することができる。
【0026】
このように、水栓装置1では、コンパクトでありながら、乾燥ブロック19に設けた乾燥剤の再生を行い、原料となる空気または酸素ガスの湿度をオゾンガスの発生に支障のないように下げることができ、オゾンガスの発生効率を十分に保持するための乾燥剤の再生を簡便に実現することができる。乾燥剤の再生は、給湯配管12の放熱を利用しており、廃熱利用であるため、エネルギー効率に優れ、コストの面からも有利である。
【0027】
図2(a)(b)は、それぞれ、図1に示した水栓装置の乾燥ブロックの一形態を示した正面図である。
【0028】
図2(a)に示した乾燥ブロック19は、図1に示した乾燥ブロック19を拡大して図示したものであり、箱体21の側面に多数の通気孔20が形成されている。乾燥ブロック19には、通気孔20を通じてオゾンガスの原料となる空気または酸素ガスが取り込まれ、箱体21の内部に充填された乾燥剤としてのシリカゲルと接触し、通過する際に、空気または酸素ガス中に含まれる水分がシリカゲルによって除去される。除去した水分はシリカゲルに吸収される。通気孔20の大きさは、箱体21の内部に充填するシリカゲルが外部に流出しない程度の大きさとされている。再生時にシリカゲルから放出される水分は、通気孔20を通じて外部の雰囲気中に放出される。
【0029】
図2(b)に示した乾燥ブロック19は、図2(a)に示した乾燥ブロック19の通気孔20が、スリット24に変更されたものである。スリット24は、正面視において左下から右上にかけて斜めに延びており、その大きさも、箱体21の内部に充填するシリカゲルが外部に流出しない程度の大きさとされている。このようなスリット24も、通気孔20と同様に、空気または酸素ガスの取り込みと、再生時の水分の放出とが可能である。
【0030】
図3(a)(b)は、それぞれ、図1に示した水栓装置の乾燥ブロックの別の形態を示した正面図である。
【0031】
図3(a)に示した乾燥ブロック19は、図1および図2(a)に示した乾燥ブロック19を基本とするものであるが、通電により発熱する発熱体25が追加されている。発熱体25は、導電性を有する金属などから帯状に形成され、箱体21の側周面にコイル状に巻き付けられている。発熱体25は、図1に示したオゾン発生ブロック15の制御部15bに電気的に接続されている。上記のとおり、制御部15bは、湿度センサ23が検出する湿度に関する信号が入力され、乾燥ブロック19を通過した後の空気または酸素ガスの湿度を常時監視している。乾燥ブロック19の箱体21内に充填された乾燥剤としてのシリカゲルの再生は、主に給湯配管12の放熱を熱源として行われるが、湿度センサ23が検出する湿度があらかじめ設定された湿度を超えると、制御部15bは、発熱体25に通電し、発熱させる。発熱体25の発熱によって、箱体21を介して内部に充填されているシリカゲルが加熱され、シリカゲルの再生がより一層進行する。また、発熱体25の通電加熱は、電気エネルギーを必要とするものであるので、節電などの観点から、また、乾燥剤の交換の頻度を極力少なくするなどの観点からは、制御部15bにタイマーを組み込み、一定時間毎に通電が行われるように、制御部15bに設定しておくことも好ましい。
【0032】
図3(b)に示した乾燥ブロック19も、図1および図2(a)に示した乾燥ブロック19を基本とするものであるが、温風26を生成し、生成した温風26を箱体21の内部の乾燥剤に吹付け可能とした温風生成部27が追加されている。温風生成部27は、具体的にはブロア27aとして実現可能なものであり、箱体21の底部に設けられ、生成する温風26を箱体21の底部から上方に吹き付けることができる。温風生成部27は、図3(a)に示した発熱体25と同様に、図1に示したオゾン発生ブロック15の制御部15bに電気的に接続されている。したがって、湿度センサ23が検出する湿度があらかじめ設定された湿度を超えると、制御部15bは、温風生成部27を作動させ、生成した温風26を箱体21を介して内部に充填されているシリカゲルに吹き付けて加熱し、シリカゲルの再生をより一層進行させる。このような温風生成部27によるシリカゲルの再生も、電気エネルギーを必要とするものであるので、節電などの観点から、また、乾燥剤の交換の頻度を極力少なくするなどの観点からは、制御部15bにタイマーを組み込み、一定時間毎に通電が行われるように、制御部15bに設定しておくことも好ましい。
【0033】
本発明は、以上の実施形態によって制限されるものではない。オゾン発生ブロックの構成および構造や乾燥ブロックの構成および構造、乾燥剤の種類などの細部については、様々な態様が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 水栓装置
8 吐水部
11 給水配管
12 給湯配管
13 水
14 湯
15 オゾン発生ブロック
15b 制御部
16 放電電極
17 オゾンガス供給路
19 乾燥ブロック
23 湿度センサ
25 発熱体
26 温風
27 温風生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水配管と給湯配管に接続され、給水配管を通じて供給される水と給湯配管を通じて供給される湯とが混合された湯水を吐水部から吐水する水栓装置において、
放電電極を備え、供給される空気または酸素ガスを原料としてオゾンガスを発生させるオゾン発生ブロックと、このオゾン発生ブロックで生成したオゾンガスを前記吐水部に供給し、オゾンガスを湯水中に混入させるオゾンガス供給路と、空気または酸素ガスの供給方向に関し、前記オゾン発生ブロックの上流側に配置され、空気または酸素ガス中の水分を除去する乾燥剤を有する乾燥ブロックとを備え、この乾燥ブロックは、前記給湯配管との間で熱交換可能に設けられ、給湯配管の放熱により前記乾燥剤の再生が行われる
ことを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記乾燥ブロックは、通電により発熱する発熱体を備え、この発熱体の発熱によっても前記乾燥剤の再生が可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記乾燥ブロックは、温風を生成し、生成した温風を乾燥剤に吹付け可能とした温風生成部を備え、この温風生成部が生成する温風の吹付けによっても前記乾燥剤の再生が可能とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の水栓装置。
【請求項4】
空気または酸素ガスの供給方向に関し、前記乾燥ブロックの下流側に湿度センサが設けられ、この湿度センサが検知する空気または酸素ガスの湿度に基づいて前記乾燥剤の再生を制御する制御部を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−225039(P2012−225039A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92955(P2011−92955)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】