説明

水栓

【課題】押しボタンのストロークに連動して流路の切換状態を表示する表示装置を備えた水栓において、押しボタンのストロークに表示部の表示面積が制限されにくい構造にすることで、十分な表示面積を確保し、視認性の良好な表示装置を提供する。
【解決手段】ヘッド部内にて垂直方向の軸部材に枢支され、水平面内で回動して流路の切換状態をヘッド部に設けた透視窓に表示する表示板と、この表示板と上記押しボタンのいずれか一方に設けた長孔と、他方に設けこの長孔に嵌入するピンとからなり、上記押しボタンのストロークに連動して表示板を水平方向に回動させるスライド部とを有するプッシュスイッチの表示装置を備えた水栓を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタンのストロークに連動して、原水と、浄水(または温水)などの切換状態を表示する表示装置を備えた水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つの吐出口で例えば浄水流路と原水流路の流路を選択して切り換える流路切換機構には、押しボタンの停止位置に応じて弁開となる流路を切り換えることができるものがある。
【0003】
このような押しボタン式の流路切換機構を備えた水栓に取り付けられ、使用者が流路の切換状態を視認できるようにするための表示装置として、特許文献1には、押しボタンスイッチの内部に側面形状が扇型の表示回転体が組み込まれ、押しボタンスイッチの操作部に透視窓を設けて、押しボタンスイッチのプッシュ動作に従い動作内容に合う表示を透視窓に出すようになっているものが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、プッシュボタンを1回プッシュ操作するごとに異なった吐水状態を保持するスラストロック機構を有しており、前記プッシュボタンのプッシュ操作により該スラストロック機構の回転筒に設けた表示部が回転することによって、表示部外側に位置するプッシュボタンに設けた透視窓を通して流路の切換状態を表示するものが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、ケース本体から突出して部材側面に軸孔を穿設した2つの表示体支持部材と、扇型に形成された両側面から前記各軸孔にそれぞれ挿通する軸部材を突出するとともに曲面部に必要な表示内容を表示した可動表示体と、この可動表示体の回動方向先端側に位置する端面に当接する傾斜面形成部材を後端部中央の外面側に突設した押しボタンと、前記表示体支持部材と前記可動表示体との間に介装して前記軸部材を中心に前記可動表示体を前記押しボタン側へ回動するための回転力を与える弾性部材とからなるプッシュスイッチの表示装置で、構成が簡素で、浄水器の吐出口やシャワーヘッドのヘッド部等に適用することができる程度に小型化されたものが記載されている。
【0006】
さらに、特許文献4には、押しボタンとこの押しボタンの動作に連動して表示面の向きを変化させる可動表示体とからなり、前記押しボタンの外面と前記可動表示体の当接部との当接離間動作により、前記押しボタンの往復動に対して前記可動表示体の表示面の変向動作を連動させたことにより、弾性部材を使用せずに流路の切換状態を表示することができる表示装置が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−299030号公報
【特許文献2】特開2004−250894号公報
【特許文献3】特開2004−082031号公報
【特許文献4】特開2005−087886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような従来の技術のうち、特許文献1、3及び4においては、底面を扇形とする筒状に形成した表示体が、要部分にある水平方向の回転軸を中心に回動するため、表示体の体積及び表示体曲面部に位置する表示部の面積が押しボタンのストロークに設計上大きく拘束され、十分な表示面積を確保できないという問題点があった。
【0009】
また、特許文献2においても、円柱状の回転筒の底面部に設けた表示部が一方向にのみ回転する構造であるため、表示部のうち透視窓を通して流路の切換状態を表示する部分の面積はごく一部に限られ、やはり十分な表示面積を確保できないという問題点があった。
【0010】
本発明の課題は、押しボタンのストロークに表示部の表示面積が制限されにくい構造にすることで、十分な表示面積を確保し、視認性の良好なプッシュスイッチの表示装置を備えた水栓を提供することにある。
【0011】
また、他の課題は、押しボタンのストローク上死点と深い停止位置との間の余剰移動及び浅い停止位置におけるがたつきといった動作に連動して表示板が余分に回動し表示部が見づらくなることを防止し、確実な表示内容を提供するプッシュスイッチの表示装置を備えた水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において、前記課題が解決される手段は以下の通りである。
水栓に係る第1の発明は、水栓本体を経てヘッド部に達する少なくとも2つの流路と、浅い停止位置と深い停止位置とに交互にストローク可能な押しボタンと、この押しボタンの両停止位置に応じていずれか1つの流路内の水が下流に流れるように切り換える弁を有するスイッチ機構と、からなる押しボタン式の流路切換機構を備える水栓において、上記ヘッド部内にて水平面内で回動自在に支持され、流路の切換状態をヘッド部に設けた透視窓に表示する表示板と、この表示板と上記押しボタンのいずれか一方に設けた長孔と、他方に設けこの長孔に嵌入するピンとからなり、上記押しボタンのストロークに連動して表示板を水平方向に回動させるスライド部とを有するプッシュスイッチの表示装置を備えたことを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、上記スイッチ機構が、上記押しボタンの停止位置に応じていずれか1つの流路を選択して弁開とすることで流路を切り換える弁を有することを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、上記スイッチ機構が、上記押しボタンの停止位置に応じて2つの流路のうち圧力損失の小さな流路を開閉することで2つの流路を切り換える弁を有することを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、上記スライド部の長孔を上記表示板の回動中心部近傍からほぼ半径方向に沿って外側に向かう直線状に穿設したことを特徴とする。
【0016】
第5の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、上記スライド部の長孔を上記表示板の回動中心部近傍から外側に向かうくの字状に穿設したことを特徴とする。
【0017】
第6の発明は、第1乃至第5の発明のいずれかにおいて、上記押しボタンの浅い停止位置で上記ピンが当接する位置に、長孔の孔幅をピンの径より広くした逃がし部分を穿設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、水栓本体を経てヘッド部に達する少なくとも2つの流路と、浅い停止位置と深い停止位置とに交互にストローク可能な押しボタンと、この押しボタンの両停止位置に応じていずれか1つの流路内の水が下流に流れるように切り換える弁を有するスイッチ機構と、からなる押しボタン式の流路切換機構を備える水栓において、上記ヘッド部内にて水平面内で回動自在に支持され、流路の切換状態をヘッド部に設けた透視窓に表示する表示板と、この表示板と上記押しボタンのいずれか一方に設けた長孔と、他方に設けこの長孔に嵌入するピンとからなり、上記押しボタンのストロークに連動して表示板を水平方向に回動させるスライド部とを有するプッシュスイッチの表示装置を備えたことにより、表示板が水平面内で回動するため、表示面積を押しボタンのストロークに制限されにくくすることができる。これにより、表示板の表示面積を大きく確保することができ、表示内容の視認性を向上させることができる。
【0019】
第2の発明によれば、上記押しボタンの停止位置に応じていずれか1つの流路を選択して弁開とすることで流路を切り換える弁を有することにより、押しボタンの停止位置に応じた流路の切り換えを確実に行うことができる。
【0020】
第3の発明によれば、上記スイッチ機構が、上記押しボタンの停止位置に応じて2つの流路のうち圧力損失の小さな流路を開閉することで2つの流路を切り換える弁を有することにより、2つの流路の圧力損失の違いを利用して、圧力損失の小さな流路を開閉するだけで2つの流路を切り換えることができる。これにより、弁機構の構造を簡素化することができる。
【0021】
第4の発明によれば、上記スライド部の長孔を上記表示板の回動中心部近傍からほぼ半径方向に沿って外側に向かう直線状に穿設したことにより、押しボタンのストロークに連動して表示板を確実に回動させる力を与え、第1の発明の効果を確実に達成することができる。
【0022】
第5の発明によれば、上記スライド部の長孔を上記表示板の回動中心部近傍から外側に向かうくの字状に穿設したことにより、押しボタンをストロークさせる際の、深い停止位置とストローク上死点との間での押しボタンの余剰移動分を表示板の回動に反映させなくすることができる。これにより、適切な表示箇所が透視窓を一旦通り過ぎて所定の停止位置に戻るというような表示板の余分な動きを無くすことができ、透視窓には常に適切な表示箇所を表示することができて、使用者に確実な表示内容を提供することができる。
【0023】
第6の発明によれば、上記押しボタンの浅い停止位置で上記ピンが当接する位置に、長孔の孔幅をピンの径より広くした逃がし部分を穿設したことにより、浅い停止位置での押しボタンのがたつきを表示板の回動に反映させなくすることができる。これにより、押しボタンのがたつきに連動して表示板ががたつくことを防止し、透視窓には常に適切な表示箇所を表示することができ、使用者に確実な表示内容を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態にかかるプッシュスイッチの表示装置を備えたシャワーヘッドを説明する。
図1から図3に示すように、流路切換表示付きシャワーヘッドのヘッド部1は、ヘッド本体2の外壁上面の略中央部に表示板5を支持するための表示板支持部材3を設け、外壁前面側中央に押しボタン4を配置し、この表示板支持部材3及び押しボタン4の上部に表示板5を取り付けた状態で、外面を覆うヘッドカバー6を取り付けて構成される。
【0025】
図9に示すように、押しボタン4は、ヘッド本体2内部に配置したコイルスプリング21、28及びこのコイルスプリング21とコイルスプリング28との間に位置するスラストロック機構7により、浅い停止位置と深い停止位置を交互にストロークするよう構成されている。
また、図6に示すように、ヘッド本体2内には各別に構成された原水流路22と浄水流路23の2つの流路と弁機構を有し、押しボタン4の停止位置によって弁開となり吐水する流路を切り換えることができるようになっている。
その他の実施態様として、たとえば原水・温水の2つの流路を押しボタンによって切り換えることのできる水栓に構成してもよい。
【0026】
図3に示すように、表示板支持部材3上面には上方に突出した円柱状の軸部材31を設け、軸部材31の奥側には、同じく上方に突出したストッパー32を設ける。
軸部材31は表示板5の軸孔53に軸通されて、表示板5の回動の中心となる。
【0027】
図4に示すように、押しボタン4には、上面に上案内板41、右側面に右案内板42、左側面に左案内板43を、奥側に向かってそれぞれ突設する。上案内板41、右案内板42、及び左案内板43はヘッド本体2外面に当接し、ストロークの際に押しボタン4を押し込み方向へ案内するガイドとなる。
また、浅い停止位置で上記軸部材31の側方近傍となる上案内板41上面の部位に、表示板5との取り付け部分となるピン41aを設ける。
【0028】
図5に示すように、表示板5は全体として略扇状で、下方に傾斜する湾曲面である表示部51と、略円盤状の結合部52を有する板材からなる。
表示部51には、異なる切換状態を表示する表示51a、51bが左右に分けて設けられている。
結合部52には、表示板5の要部分に前記軸部材31を軸通する軸孔53を穿設し、軸孔53近傍には上案内板41のピン41aとスライドする長孔54を穿設し、表示部51と反対方向の端部には切欠き部55を設ける。図2に示すように、この軸孔53に前記軸部材31を軸通させ、この長孔54に前記ピン41aを嵌入させることで、表示板5を表示板支持部材3及び押しボタン4の上部に取り付ける。
【0029】
上記長孔54は、押しボタン4の浅い停止位置で軸孔53に近い側から途中まで半径方向に沿ってのびる直線部54aと、途中でわずかに奥方向に折れ曲がった屈折部54bを設けた、くの字状に穿設する。これにより、表示板5を表示板支持部材3及び押しボタン4に取り付けた状態で押しボタン4を深い停止位置にストロークしたとき、前記ピン41aの押し込み方向奥に屈折部54bが位置し、押しボタン4のストローク上死点までの余剰移動分に表示板5の回動を連動させないようにする。
また、浅い停止位置でピン41aが当接する直線部54aも、幅をピン41aの径より広めに穿設して逃がし部分を設け、浅い停止位置での押しボタン4のがたつきに表示板5が連動しないようにする。
【0030】
前記切欠き部55の両端は、それぞれ押しボタン4の浅い停止位置または深い停止位置で表示板支持部材3のストッパー32と当接することで、表示板5が所定の角度以上回動してしまい表示51a、51bが見づらくなることを防止する。
【0031】
図1、図2に示すように、表示板支持部材3及び押しボタン4に表示板5を取り付けた状態で取り付けられるヘッドカバー6には、押しボタン4を外部から操作可能に貫通させる孔61を穿設する。また、前記孔61の上方には透視窓62を設け、表示51a、51bのうち現在の流路の切換状態を表示する片方のみが透視窓62を通して表示されるようにする。
【0032】
図6に示すように、ヘッド本体2内部にはフィルター9を備え、原水流路22とこのフィルター9を通過した浄水の浄水流路23とが各別の遮断弁24、25にそれぞれ連通する。各遮断弁の下流側は1つの集合部に形成され、この集合部は吐出口に連通する。遮断弁24、25の弁座24a、25aは左右に並んで、押しボタン4の押し込み方向に相対的にずれた位置に配置されており、押しボタン4の押し込み量によって一方の弁のみが開かれるようになっている。
このように構成したことにより、押しボタン4の停止位置に応じて流路の切り換えを確実に行うことができる。
【0033】
図9に示すように、弁体24b、25bは鉄球等の硬い球体に形成し、それぞれ弁座24a、25aに載せることにより遮断弁24、25を弁閉にする。
押しボタン4と遮断弁24、25との間には2本のプッシュロッド26を備えた切換軸27を設け、押しボタン4を押し込むと切換軸27によって弁体24b、25bが押し込み方向に押し込まれるようにする。
切換カバー29には、切換軸27及びプッシュロッド26を挿通する孔を中央及び両脇に設けて、切換軸27の奥に配置する。また、切換カバー29のプッシュロッド挿通孔とヘッド本体2に設けたプッシュロッド挿通孔との間に、Oリング8を介装する。
【0034】
切換軸27の手前には、切換リング71、第1切換こま72、第2切換こま73を組み合わせてなるスラストロック機構7を配置する。
【0035】
図10に示すように、切換リング71は、円筒の周上に浅い溝71aと深い溝71bを交互に各3本刻設し、溝でない部分の先端を傾斜させて形成する。図11に示すように、第1切換こま72は細軸部72aと太軸部72bからなり、軸方向にのびる3本のリブ72cを太軸部外周に等間隔に設置し、このリブ72cの先端面は前記切換リング71の先端の傾斜面と同じ方向に傾斜させる。図12に示すように、第2切換こま73は、一端には第1切換こま72の細軸部72aが回転可能に挿入され、他端には押しボタン4の内側中央部に突出した位置決め支持棒44が挿入される円筒状の部材に形成し、第1切換こま72側の外周には、等間隔に6本のリブ73aを設置するとともに端面に傾斜した凹部73bを形成する。
【0036】
切換軸27より奥のヘッド本体2内中央にはコイルスプリング21を配置して、切換軸27をヘッド本体2から離間する方向へばね付勢する。また、押しボタン4とスラストロック機構7との間にもコイルスプリング28を配置して、スラストロック機構7をヘッド本体2の奥側へばね付勢する。
【0037】
以下、このように形成した流路切換表示付きシャワーヘッドにおける、プッシュ操作に伴う流路の切り換え及び流路の表示の切り換えについて説明する。
押しボタン4の浅い停止位置では浄水流路23の弁座25aに弁体25bが押し付けられて弁閉となっており、原水流路22では弁体24bが弁座24aからずれており遮断弁24が開いて原水が集合部に連通している。スラストロック機構7では、第1切換こま72のリブ72cが切換リング71の深い溝71bに嵌合している。一方ヘッド本体2上側では、表示板支持部材3上面に設けた軸部材31と押しボタン4のピン41aが近傍にあり、表示板5の右側の表示51aがヘッド本体2中央に位置しており、右側の表示内容(たとえば、「原水」)が透視窓62を通して視認できる(図8(a))。
【0038】
この状態でコイルスプリング21の付勢力に抗して押しボタン4をプッシュ操作すると、第1切換こま72のリブ72cが切換リング71の深い溝71bを摺動して、溝から外れるまで移動すると(ストローク上死点)、第2切換こま73に押されている第1切換こま72は当接している第2切換こま73の先端の傾斜面の形状に従って回転し、第2切換こま73の前記凹部73bに当接して止まる。その後、コイルスプリング21の付勢力によって第1切換こま72及び第2切換こま73が押し戻され、第1切換こま72のリブ72cが再び切換リング71の傾斜面に当接して回転し、浅い溝71aに嵌まるところで位置固定される(深い停止位置)。
【0039】
この際、押しボタン4上に設けた前記ピン41aも押し込み方向へ移動し、このピン41aと軸部材31は徐々に遠ざかる。ピン41aは軸部材31から遠い直線部54aの外側へとスライドし、結果として表示板5を逆時計回りに回動させる力を与える。
表示板5を回動させながらスライドした結果、押しボタン4が深い停止位置まで押し込まれた状態では前記ピン41aは長孔54の曲がり角部にさしかかり、ピン41aの押し込み方向に長孔54の屈折部54bが位置する。このとき、表示板5の左側の表示51bがヘッド本体2中央に位置しており、左側の表示内容(たとえば、「浄水」)が透視窓62を通して視認できる(図8(b))。
押しボタン4の深い停止位置からストローク上死点までの押し込み及びストローク上死点から深い停止位置までの戻りの間、前記ピン41aは押し込み方向に位置する屈折部54bをスライドして押し込み方向に行き来するのみで、表示板5を回転させる力を与えない。このため、透視窓62には常に左側の表示51bの表示内容が適切な位置で表示される(図8(c)(d))。
【0040】
押しボタン4が深い停止位置で固定された状態では、原水流路22の弁座24aに弁体24bが押し付けられて弁閉となっており、浄水流路23では弁体25bが弁座25aからずれており遮断弁25が開いて浄水が集合部に連通している。スラストロック機構7では、第1切換こま72のリブ72cが切換リング71の浅い溝71aに嵌合している。一方ヘッド本体2上側では、表示板5の左側の表示51bがヘッド本体2中央に位置しており、左側の表示内容が透視窓62を通して視認できる(図8(d))。
【0041】
押しボタン4が深い停止位置で固定された状態で押しボタン4をプッシュ操作すると、第1切換こま72のリブ72cが切換リング71の浅い溝71aを摺動して、ストローク上死点で溝から外れるまで移動すると、第2切換こま73に押されている第1切換こま72は当接している第2切換こま73の傾斜面の形状に従って回転し、第2切換こま73の前記凹部73bに当接して止まる。その後、コイルスプリング21の付勢力によって第1切換こま72及び第2切換こま73が押し戻され、第1切換こま72のリブ72cが再び切換リング71の傾斜面に当接して回転し、深い溝71bに嵌まるところで位置固定される(浅い停止位置)。
【0042】
この際、押しボタン4上に設けた前記ピン41aも一旦ストローク上死点まで移動するが、前記ピン41aは押し込み方向に位置する屈折部54bをスライドして押し込み方向に行き来するのみで、表示板5を回動させる力を与えない(図8(e))。ストローク上死点から深い停止位置までの戻りの間も同様である。
押しボタン4が深い停止位置まで押し戻された状態では前記ピン41aは長孔54の曲がり角部にさしかかり、深い停止位置から浅い停止位置までの戻りの間、前記ピン41aは軸部材31に近い直線部54aの内側へとスライドし、結果として表示板5を時計回りに回動させる力を与える(図8(e)(f))。
【0043】
上記実施の形態では図8に示すようにスライド部の長孔54をくの字状に穿設して構成したが、図7に示すように直線状の長孔を設けてもよい。
この場合、押しボタン4の深い停止位置からストローク上死点までの押し込みおよびストローク上死点から深い停止位置までの戻りの間も、前記ピン41aが表示板を回動させる力を与えるため、その間透視窓62には、左側の表示の表示内容がわずかにずれた状態で表示されることになる(図7(c))が、押しボタン4が深い停止位置で固定された状態では、左側の表示の表示内容が適切な位置で表示される(図7(d))。押しボタン4を浅い停止位置に復帰させる際も同様である(図7(e)(f))。
【0044】
図7に示す実施の形態では、ヘッド部1内にて水平面内で回動自在に支持され、流路の切換状態をヘッドカバー6に設けた透視窓62に表示する表示板と、この表示板に設けた長孔と押しボタン4に設けこの長孔に嵌入するピン41aとからなり、上記押しボタン4のストロークに連動して表示板を水平方向に回動させるスライド部とを備えたことにより、表示板が水平面内で回動するため、表示面積を押しボタン4のストロークに制限されにくくすることができる。これにより、表示板の表示面積を大きく確保することができ、表示内容の視認性を向上させることができる。
【0045】
また、図8に示す実施の形態では、スライド部の長孔54を表示板5の回動中心部(軸孔53)近傍から外側に向かうくの字状に穿設したことにより、押しボタン4をストロークさせる際の、深い停止位置とストローク上死点との間での押しボタン4の余剰移動分を表示板5の回動に反映させなくすることができる。これにより、表示板5の表示面積を大きく確保できるとともに、図7に示す直線状の長孔を設けた場合に生じていた、適切な表示箇所が透視窓62を一旦通り過ぎて所定の停止位置に戻るというような表示板の余分な動きを無くすことができ、透視窓62には常に適切な表示箇所を表示することができ、使用者に確実な表示内容を提供することができる。
【0046】
また、前記押しボタン4の浅い停止位置で前記ピン41aが当接する位置に、長孔54の直線部54aの孔幅をピン41aの径より広く穿設して逃がし部分を設けたことにより、浅い停止位置での押しボタン4のがたつきを表示板5の回動に反映させなくすることができる。これにより、押しボタン4のがたつきに連動して表示板5ががたつくことを防止し、透視窓62には常に適切な表示箇所を表示することができ、使用者に確実な表示内容を提供することができる。
【0047】
[別形態]
なお、上記実施の形態では、表示板5を水平方向に回動させるスライド部を、表示板5に設けた長孔54と押しボタン4に設けたピン41aとによって構成したが、表示板にピンを設け、押しボタンに長孔を設けてもよい。
また、上記実施の形態では、表示板5を回動自在に支持する軸を、表示板支持部材3に設けた軸部材31と表示板5に穿設した軸孔53とによって構成したが、表示板支持部材に軸孔を穿設し、表示板に軸部材を設ける構成としてもよい。
また、上記実施の形態では、原水流路22を遮断する遮断弁24と、浄水流路23を遮断する遮断弁25とによって流路を切り換える構成としたが、原水流路と浄水流路のうち、圧力損失の小さな流路のみに遮断弁を設ける構成としてもよい。このような流路切換機構に構成することで、弁機構の構造を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態にかかるシャワーヘッドのヘッド部を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【図2】ヘッド部の、ヘッドカバーを外した状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図3】図2から表示板を外した状態を示す斜視図である。
【図4】押しボタンを示す図であり、(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)は側面図、(d)は斜視図である。
【図5】表示板を示す図であり、(a)は平面図、(b)は背面図、(c)は側面図、(d)は斜視図、(e)はB−B拡大断面図、(f)は長孔の拡大図である。
【図6】ヘッド部内を示す縦断面図である。
【図7】表示板の長孔を直線状に形成した場合の、表示の切換を示す図であり、(a)は浅い停止位置の図、(b)は深い停止位置まで押し込んだ図、(c)はストローク上死点まで押し込んだ図、(d)は深い停止位置で固定された図、(e)は深い停止位置からストローク上死点まで押し込んだ図、(f)は浅い停止位置まで戻った図である。
【図8】本発明の実施の形態にかかるシャワーヘッドの表示の切換を示す図であり、(a)は浅い停止位置の図、(b)は深い停止位置まで押し込んだ図、(c)はストローク上死点まで押し込んだ図、(d)は深い停止位置で固定された図、(e)は深い停止位置からストローク上死点まで押し込んだ図、(f)は浅い停止位置まで戻った図である。
【図9】ヘッド本体内の分解斜視図である。
【図10】切換リングを示す図であり、(a)は平面図、(b)左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は底面図である。
【図11】第1切換こまを示す図であり、(a)は平面図、(b)左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は底面図である。
【図12】第2切換こまを示す図であり、(a)は平面図、(b)左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は底面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 (シャワーヘッドの)ヘッド部
2 ヘッド本体
3 表示板支持部材
4 押しボタン
5 表示板
6 ヘッドカバー
7 スラストロック機構
8 Oリング
9 フィルター
21 コイルスプリング
22 原水流路
23 浄水流路
24 遮断弁
24a 弁座
24b 弁体
25 遮断弁
25a 弁座
25b 弁体
26 プッシュロッド
27 切換軸
28 コイルスプリング
29 切換カバー
31 軸部材
32 ストッパー
41 上案内板
41a ピン
42 右案内板
43 左案内板
44 位置決め支持棒
51 表示部
51a、51b 表示
52 結合部
53 軸孔
54 長孔
54a 直線部
54b 屈折部
55 切欠き部
61 孔
62 透視窓
71 切換リング
71a 浅い溝
71b 深い溝
72 第1切換こま
72a 細軸部
72b 太軸部
72c リブ
73 第2切換こま
73a リブ
73b 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓本体を経てヘッド部に達する少なくとも2つの流路と、
浅い停止位置と深い停止位置とに交互にストローク可能な押しボタンと、
この押しボタンの両停止位置に応じていずれか1つの流路内の水が下流に流れるように切り換える弁を有するスイッチ機構と、
からなる押しボタン式の流路切換機構を備える水栓において、
上記ヘッド部内にて水平面内で回動自在に支持され、流路の切換状態をヘッド部に設けた透視窓に表示する表示板と、
この表示板と上記押しボタンのいずれか一方に設けた長孔と、他方に設けこの長孔に嵌入するピンとからなり、上記押しボタンのストロークに連動して表示板を水平方向に回動させるスライド部とを有するプッシュスイッチの表示装置を備えたことを特徴とする水栓。
【請求項2】
上記スイッチ機構が、上記押しボタンの停止位置に応じていずれか1つの流路を選択して弁開とすることで流路を切り換える弁を有することを特徴とする請求項1記載の水栓。
【請求項3】
上記スイッチ機構が、上記押しボタンの停止位置に応じて2つの流路のうち圧力損失の小さな流路を開閉することで2つの流路を切り換える弁を有することを特徴とする請求項1記載の水栓。
【請求項4】
上記スライド部の長孔を上記表示板の回動中心部近傍からほぼ半径方向に沿って外側に向かう直線状に穿設したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水栓。
【請求項5】
上記スライド部の長孔を上記表示板の回動中心部近傍から外側に向かうくの字状に穿設したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水栓。
【請求項6】
上記押しボタンの浅い停止位置で上記ピンが当接する位置に、長孔の孔幅をピンの径より広くした逃がし部分を穿設したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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