説明

水槽内給餌装置

【課題】簡易な構造で誰でも手軽に幅広い水生生物に適用でき、しかも、水槽に餌が散乱することなく、且つ、力の強い水生生物も力の弱い水生生物も満遍なく餌を補食することが可能な水槽内給餌装置を提供する。
【解決手段】水槽50内で育成する水性生物に対して餌70を与える給餌装置1であって、棒状に成形された本体部10と、該本体部10の一端に設けられ水槽50内に敷設された土壌54に差し込む差し込み部12と、差し込み部12に対して長手方向にスライド可能且つ下方に開口するように設けられた傘状部材20、22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観賞魚をはじめ、広く水槽内で育成する水性生物に対する給餌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱帯魚や金魚などに代表される水槽内で育成する水生生物に対する給餌装置として以下のように種々のものが公知である。
【0003】
例えば特許文献1では、ホッパ内に予め蓄えておいた餌を所定の条件下で水槽内に投下・投入するという給餌装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では餌収容ケースをフロートと錘とでバランスさせ、水中内の所望の位置で給餌を行うといった給餌装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3では魚(水生生物)に対して餌を過不足なく与えるために磁石等を利用して給餌量等をコントロールする給餌装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-102322号公報
【特許文献2】実公昭48-22387号公報
【特許文献3】特開2002−50269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている給餌装置は、水槽内に直接餌を投下・投入することから、水槽内に餌が散乱してしまう。また、必ずしも投下・投入した餌の全てが直ちに捕食されるわけではないため、かかる場合散乱した餌が水槽内を漂い鑑賞者に汚れた印象を与えてしまう。更に、動作には動力源が必要であり、また複雑な機構も必要である。
【0008】
特許文献2に記載されている給餌装置は、動力源は不要であるが、餌収容ケースが上方に向かって開口していることから、投入後、餌の捕食に応じて餌が餌収容ケース外(水槽内)に広く散乱してしまう。
【0009】
また、特許文献3に記載されている給餌装置は、水槽内に餌が散乱するといった懸念は少ないものの、感磁性スイッチなどの複雑な機構が必要であり、誰もが手軽に使える給餌装置とは言い難く、また、対応できる水生生物の種類が少ないといった問題がある。
【0010】
更に、特許文献1〜3の給餌装置に共通して、力の強い魚(例えば相対的に大きな体格の魚)ばかりが餌を捕食する可能性が高く、力の弱い魚(例えば相対的に小さな体格の魚)は殆ど捕食することができないといった問題が残っている。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するべく生み出された発明である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するべく、本発明は、水槽内で育成する水性生物に対して餌を与える給餌装置であって、棒状に成形された本体部と、該本体部の一端に設けられ前記水槽内に敷設された土壌に差し込む差し込み部と、該差し込み部又は前記本体部に対して長手方向にスライド可能且つ下方に開口するように設けられた傘状部材と、を備えることを特徴としている。
【0013】
このような構成により餌が水槽内に散乱することなく、且つ、力の強い水生生物(例えば相対的に体格の大きな水生生物)ばかりでなく、例えば稚魚等の力の弱い水生生物に対しても満遍なく給餌することが可能となった。もちろん複雑な機構や動力源は不要であり、誰でも手軽に利用することができる。
【0014】
即ち、下方に向かって開口している傘状部材の下方に与えるべき餌を配置し、この傘状部材の下端(傘で言う露先部分)が水槽内に敷設されている土壌表面から所定の隙間となるように差し込み部を土壌に差し込んで使用する。このように使用すると、所定の隙間を通り抜けることができる水生生物(体格の小さな個体)のみが餌の近くまで入り込んで捕食でき、当該隙間を通り抜けることができない水性生物(体格の大きな個体)は当該傘状部材の外側で、餌が漏れ出て来るのを待って初めて捕食することができる。これにより力の優劣なく公平に捕食することが可能となる。また、餌は傘状部材の下側に配置されるので、餌が水に溶け出したとしても水槽内に広く拡散することはなく、給餌した餌が原因となって水槽内が汚れることはない。また、傘状部材はスライド可能に設置されているので、水槽内の土壌の厚みに自由に対応できると共に、土壌表面からの距離(隙間)を自由に設定できるので、給餌したい水性生物の種類等に応じて所望の隙間を設定できる。即ち、幅広い水性生物に対する給餌装置として使用することができる。更に、餌が傘状部材の下方に配置されており、力の強い個体の餌への直接のアクセスを遮断でき、また餌周辺の水流をある程度遮断できることから、餌持ちが良くなるといった特有の利点もある。
【0015】
なお、本明細書及び特許請求の範囲でいう「水性生物」とは魚類に限らず、カニやエビなどの甲殻類はもちろん、カメ、イモリ、カエル、サンショウウオ、メキシコサラマンダー(別名:ウーパールーパー)など水槽内に一定程度水を張って育成する水性生物を広く含んだ概念である。
【0016】
また、本発明は、前記本体部の他端に、浮体が設けられていることを特徴としている。この浮体が設けられていることによって、万が一当該水槽内給餌装置を水槽内に落としてしまった場合や、差し込み部の差し込みが弱く当該給餌装置が倒れてしまった場合でも、給餌装置全体が水槽の底に沈んでしまうことはない。即ち、倒れた等の場合でも少なくとも浮体の部分が水面に顔を出しているので、手をそれほど濡らすことなく給餌装置を拾い上げることができる。また、水槽内に敷設された土壌近くに手を入れる必要がないので、手を入れた際の水流の乱れによって土壌をみだりに巻き上げることがなく、水槽内の水を不用意に濁すことが無い。
【0017】
また、前記差し込み部を、前記本体部から取り外し可能として構成することもできる。このように構成すれば、例えば、本体部や差し込み部の長さや太さ、更には色や模様などで様々なバリエーションを用意しておき、最適なものを選択して組み合わせて使用することができる。より具体的には、例えば、本体部を長さの異なるバリエーションとしておくことにより、水槽内の水の深さに応じて最適な長さのものを選択できる。短すぎれば装置全体が水面下に沈み取り扱いが不便であるし、反対に長すぎると土壌に差し込まれて水槽内に設置される当該装置が不安定となってしまう。また、差し込み部を長さや太さの異なるバリエーションとしておくことにより、水槽内に敷設している土壌の深さや種類、固さに応じて最適なものを選択できる。
【0018】
また、前記傘状部材を、それぞれ大きさの異なる第1、第2の傘状部材として構成し、相対的に大きな第1の傘状部材を上方に、相対的に小さな第2の傘状部材を下方に設けて構成することもできる。このように構成すれば、水槽内への餌の散乱をより防止できるとともに、2つの傘状部材のスライド位置を適宜変化させることによって、餌を与える水性生物の特性に応じた給餌が可能となる。
【0019】
また、前記第1の傘状部材に、エア抜き穴を設けて構成することもできる。第1の傘状部材は、相対的に大きなサイズであるため、水槽内に当該給餌装置を設置(差し込み部を土壌に差しこんで設置する。)する際に、傘状部材の内側に相当程度の空気を含んでしまう。そうすると浮力が生じて差し込み部の差し込み力に対する反作用となり、装置の設置状態が不安定となる場合がある。そこでエア抜き穴を設けておくことでかかる不具合を防止するのである。更にこのエア抜き穴を、エアは抜けるが溶け出した餌は通過し難いサイズとしておくことによって、餌の散乱を防止できる。更に、このエア抜き穴が存在することによって、水槽内に設置後、当該エア抜き穴を通ってある程度の水が対流する。これにより、例えば餌として生き餌を使用する場合でも、生き餌の鮮度がより長く保たれるといった特有の利点もある。なお、このエア抜き穴を第2の傘状部材に設けることも可能である。また、2つの傘状部材のみならず、3つ以上の傘状部材で構成することも可能である。
【0020】
また、少なくとも前記傘状部材を透明又は半透明の材料で構成することもできる。このように構成すれば、水性生物の捕食状態を観察することができる。
【0021】
また、当該装置の全体又は一部をアクリル材料で構成することもできる。特に観賞魚などを扱う水槽においては、見栄えを良くするために観賞魚等用の照明(水草育成のために紫外線が含まれる場合が多い)が利用されることが多いが、アクリル材料は照明ランプの光照射に対して耐久性があり好適である。また、水槽が上下に重ねられて設置されている場合など、当該装置を水槽内に入れるスペースに制約がある場合も多いところ、例えば本体部をアクリル材料で構成すれば、相当程度の湾曲状態に耐えられることから、狭いスペースであっても本体部を湾曲させて水槽内に入れることができ便利である。
【0022】
また、前記差し込み部を先細に構成することもできる。このように構成すれば、差し込み部を土壌に差し込みやすくなることは勿論、例えば固形の乾燥餌(乾燥ミミズなど)を崩すことなく差し込んで傘状部材の下方に固定することが可能となる。
【0023】
また、前記傘状部材を上下方向反転して取り付け可能に構成することもできる。このような構成としておくことで、多くの種類の餌に対応することができる。即ち、より多種類の水性生物の給餌装置として機能させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の水槽内給餌装置を利用することにより、簡易な構造で誰でも手軽に利用でき、幅広い水生生物に適用でき、しかも、水槽に餌が散乱することなく、且つ、力の強い水生生物も力の弱い水生生物も満遍なく餌を補食することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】水槽内給餌装置の全体斜視図である。
【図2】同組立図である。
【図3】(a)が浮体の中央縦断面図、(b)が継ぎ手部分の中央縦断面図である。
【図4】継ぎ手の他の実施例を示した図であって、(a)が部分拡大図、(b)が中央縦断面図である。
【図5】傘状部材の中央縦断面図であって、(a)が第1の傘状部材、(b)が第2の傘状部材である。
【図6】水槽内給餌装置に餌(乾燥ミミズ)を取り付けた状体を示した図である。
【図7】本発明にかかる水槽内給餌装置により給餌をしている状態の一例を示した使用状態図である。
【図8】餌(乾燥ミミズ)を取り付けた状態の差し込み部の拡大図である。
【図9】本発明にかかる水槽内給餌装置の第2の使用例を示した使用状態図である。
【図10】本発明にかかる水槽内給餌装置の第3の使用例を示した使用状態図である。
【図11】本発明にかかる水槽内給餌装置の第4の使用例を示した使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態につき詳細に説明を加える。なお、図面上は理解容易のため、各種部分の大きさや位置などを誇張して表現している部分があり、必ずしも実際の製品と一致しない場合がある。
【0027】
〈水槽内給餌装置の構造〉
本発明の実施形態の一例として示す水槽内給餌装置1(以下単に「給餌装置」という場合がある。)は、水槽内に敷設された土壌に対して差し込んで使用する給餌装置であり、長手方向に直交する方向の断面形状が略真円に形成された棒状の本体部10と、この本体部10の下端側に設けられて水槽内に敷設された土壌に差し込む差し込み部12と、この差し込み部12に対して長手方向(上下方向)にスライド可能且つ下方に開口するように設けられた傘状部材20、22と、を備えた構成とされている。
【0028】
本体部10と差し込み部12とは、継ぎ手14によって取り外し可能に連結されている。また、本体部10の上端には、浮体16が取り付けられている。
【0029】
差し込み部12にスライド可能に設置されている傘状部材20、22は、相対的に大きな第1の傘状部材20がより上方に配置され、相対的に小さな第2の傘状部材22がより下方に配置されている。これら第1、第2の傘状部材20、22は、図2で示している通り、差し込み部12のスライド可能範囲W1の範囲内においてスライド可能であると共に、任意の位置で固定することができる。差し込み部12の先端(下端)は緩やかなテーパにより先細(但し最先端部は面取り(丸め処理)がなされているため、指先等を誤って刺すなどの怪我は未然に防止される。)となるように構成されているので、傘状部材のスライドは可能であるが、任意の位置で固定することはできない。
【0030】
なお図面上では把握できないが、本実施形態では上記全ての構成部品が無色透明なアクリル材料で構成されている。
【0031】
図3(a)に示しているように、浮体16は、浮き部16aとジョイント部16bとで構成されている。ジョイント部16bは円筒形状を成しており、丁度本体部10が嵌合して固定される大きさとされている。一方浮き部16aは中空部16cを有する球体として構成されている。
【0032】
図3(b)に示しているように、本体部10と差し込み部12とは継ぎ手14によって接続されている。本実施形態における継ぎ手14は、中空部14a、14bを有する筒状の部材であり、当該中空部14a、14bの丁度中程に仕切り14cが設けられている。勿論この仕切り14cは必須ではなく、本体部10の端面と差し込み部12の端面とが当接するような構成であっても良い。また、本実施形態でのこの接続部14は、差し込み部12と接着固定さており、一方、本体部10とは抜き差しすることで取り外し可能に構成されている。勿論逆であってもよいし、いずれも抜き差し可能な構成であってもよい。更にはいずれも接着固定されていることを妨げるものではない。
【0033】
なお、本体部10と差し込み部12との接続は、上記の継ぎ手14以外にも、図4に示しているように、雄部112aと雌部110aとを備えた「ほぞ」構造によって接続することもできる。更に、図示していないが、本体部に設けた雌部112aに対して、差し込み部全体を直接的に差し込むような「ほぞ」構造であってもよい。
【0034】
図5に示しているように、本実施形態における傘状部材は、同図(a)の第1の傘状部材20と、同図(b)の第2の傘状部材とから構成されている。第1の傘状部材20は差し込み部12が丁度嵌合することができる大きさの貫通孔20bを備えたスライド部20aと、このスライド部20aから傘状に広がるスカート部20cとから構成されている。当該スカート部20cは、断面視、上面が水平であり、一定程度水平方向に広がった位置から直線的に折れ曲がって末広がり状に斜め方向に延在している。また、スカート部20cには多数のエア抜き穴20dが上下方向に形成されている。
【0035】
一方、第2の傘状部材22は、差し込み部12が丁度嵌合することができる大きさの貫通孔22bを備えたスライド部22aと、このスライド部22aから傘状に広がるスカート部22cとから構成されている。当該スカート部22cは、断面視、略円弧の形をなしている。また、図示したとおり、第2の傘状部材にはエア抜き穴は設けられておらず、サイズも第1の傘状部材20に比べて小さく構成されている。
【0036】
〈水槽内給餌装置の作用・機能〉
給餌装置1の最も基本的な使い方は、図6に示しているように第1の傘状部材20と第2の傘状部材22との間に所定の間隔W2を保った状態で、差し込み部12の先端(下端)から餌(ここでは乾燥ミミズ)70を差し込んで取り付ける。この餌70は、第2の傘状部材22に突き当たる程度まで押し込んでおく。
【0037】
なおこれに先立ち、餌を取り付けていない状態で一端所望の水槽内に給餌装置1を差し込み、傘状部材20、22の取り付け位置を確認しておくことが望ましい。
【0038】
続いて餌を取り付けた状態で、図7に示しているように、給餌装置1を水槽50内に敷設された土壌54に対して差し込んで給餌装置1を立設させる。具体的には差し込み部12が土壌に差し込まれる。このとき、第2の傘状部材22のスカート部22cの下端面22e(図5を参照のこと)から土壌54表面までの隙間を意識しながら所望の差し込み位置で固定する。この隙間は、例えば、稚魚(図面では「エビ」として表している)などの幼体であれば通り抜けることができる程度の隙間に調整する。このようにすることで、稚魚などが優先的に捕食することができ、体格の大きな個体は、この第2の傘状部材22の外で、漏れ出てくる餌を待って捕食することになる。即ち、全ての個体が力関係によらずに公平に餌を捕食することができる。
【0039】
取り付けた餌70が乾燥ミミズの場合、図8に示しているように、餌70の内部に多くの気泡80を含んでいる。餌70を取り付けて水槽内に沈めると、この気泡80が徐々に第2の傘状部材22の下に溜まって気泡溜まり82を形成する。この気泡溜まり82が形成されることによって、餌70の崩れ(浸水による崩れ)の程度が減少し、餌持ちがよくなるといった効果もある。
【0040】
即ち、下方に向かって開口している第2の傘状部材22の下方に与えるべき餌70を配置し、この第2の傘状部材22の下端面22eが水槽50内に敷設されている土壌54表面から所定の隙間となるように差し込み部12を土壌54に差し込んで使用するので、この隙間を通り抜けることができる水生生物(体格の小さな個体)のみが餌70の近くまで入り込んで捕食でき、当該隙間を通り抜けることができない水性生物(体格の大きな個体)は当該第2の傘状部材22の外側で、餌70が崩れて漏れ出て来るのを待って初めて捕食することができる。これにより力の優劣なく公平に捕食することが可能となる。また、餌70は第2の傘状部材22の下側に配置されるので、餌70が水に溶け出したとしても水槽50内に広く拡散することはなく、更に第2の傘状部材22の上方にはより大きな第1の傘状部材20が配置されているので、与えた餌70が原因となって水槽内が汚れることを効果的に防止している。なお、これら第1、第2の傘状部材20、22はいずれもスライド可能に設置されているので、水槽50内の土壌54の厚み(高さ)に自由に対応できると共に、土壌54表面からの距離(隙間)を自由に設定できるので、給餌したい水性生物の種類等に応じて所望の隙間を設定できる。即ち、幅広い水性生物に対する給餌装置として使用することができる。更に、餌70が傘状部材の下方に配置されており、力の強い個体の餌70への直接のアクセスを遮断でき、また餌70周辺の水流をある程度遮断できることから、餌持ちが良くなるといった特有の利点もある。
【0041】
また、給餌装置1では、本体部10の上端に、浮体16が設けられている。この浮体16が設けられていることによって、万が一当該給餌装置1を水槽50内に落としてしまった場合や、差し込み部12の土壌54への差し込みが弱く当該給餌装置1が倒れてしまった場合でも、給餌装置1全体が水槽50の底に沈んでしまうことはない。即ち、倒れた等の場合でも少なくとも浮体16の部分が水面に顔を出しているので、手をそれほど濡らすことなく給餌装置1を拾い上げることができる。また、水槽50の土壌54近くにまで手を入れる必要がないので、手を入れた際の水流の乱れによって土壌54をみだりに巻き上げることがなく、水槽50内の水52を不用意に濁すことが無い。
【0042】
また、給餌装置1では、差し込み部12が、本体部10から取り外し可能として構成されているので、例えば、本体部10や差し込み部12の長さや太さ、更には色や模様などで様々なバリエーションを用意しておき、最適なものを選択して組み合わせて使用することができる。より具体的には、例えば、本体部10を長さの異なるバリエーションとして用意しておくことにより、水槽50内の水52の深さに応じて最適な長さのものを選択できる。短すぎれば装置1全体が水面下に沈み取り扱いが不便であるし、反対に長すぎると土壌54に差し込まれて水槽50内に設置される当該装置1が不安定となってしまう。また、差し込み部12を長さや太さの異なるバリエーションとして用意しておくことにより、水槽50内に敷設している土壌54の深さや種類、固さに応じて最適なものを選択可能となっている。
【0043】
また、給餌装置1では、傘状部材を、それぞれ大きさの異なる第1、第2の傘状部材20、22として構成し、相対的に大きな第1の傘状部材20を上方に、相対的に小さな第2の傘状部材22を下方に設けて構成しているので、水槽50内への餌70の散乱をより防止できる(第2の傘状部材22から上方に餌70が漏れ出た場合でも、より大きく上方に位置する第1の傘状部材20により拡散が防止される。)とともに、2つの傘状部材20、22のスライド位置を適宜変化させることによって、餌70を与える水性生物の特性に応じた給餌が可能となっている。
【0044】
また、給餌装置1では、第1の傘状部材20に、エア抜き穴20dを設けて構成している。これは、第1の傘状部材20は、相対的に大きなサイズであるため、水槽50内に給餌装置1を設置する際に、第1の傘状部材20の内側に相当程度の空気を含んでしまう。そうすると浮力が生じて差し込み部12の差し込み力に対する反作用となり、装置1の設置状態が不安定となる場合がある。そこでエア抜き穴20dを設けておくことでかかる不具合を防止するのである。更にこのエア抜き穴20dは、エアは抜けるが溶け出した餌70は通過し難いサイズ(例えば直径1mm程度)とされているので、餌70の散乱は防止される。更に、このエア抜き穴20dが存在することによって、水槽50内に設置後、当該エア抜き穴20dを通ってある程度の水が対流する。これにより、例えば餌として生き餌を使用する場合(後述)でも、生き餌の鮮度がより長く保たれるといった特有の利点もある。なお、このエア抜き穴20dを第2の傘状部材22に設けることも可能である。なお、3つ以上の傘状部材で構成することも勿論可能である。
【0045】
また、給餌装置1では、第1、第2の傘状部材20、22が透明のアクリル材で構成されていたので、水性生物の捕食状態を観察することができる。
【0046】
また、給餌装置1では、当該装置1の全体がアクリル材料で構成されている。特に観賞魚などを扱う水槽50においては、見栄えを良くするために観賞魚等用の照明(水草育成のために紫外線が含まれる場合が多い)が利用されることが多いが、アクリル材料は照明ランプの光照射に対して耐久性があり好適である。また、水槽50が上下に重ねられて設置されている場合など、当該装置1を水槽50内に入れるスペースに制約がある場合も多いところ、例えば本体部10をアクリル材料で構成すれば、相当程度の湾曲状態に耐えられることから、狭いスペースであっても本体部10を湾曲させて水槽50内に入れることができ便利である。
【0047】
また、給餌装置1では、差し込み部12を先細に構成しているので、差し込み部12を土壌54に差し込みやすくなることは勿論、例えば固形の乾燥餌(乾燥ミミズなど)を崩すことなく差し込んで第2の傘状部材22の下方に固定することが可能となる。
【0048】
また、装置1を構成する材料は無色透明のアクリルに限定されず、有色であってもよいし、半透明、不透明更には模様等が付されていてもよい。更にはアクリル以外の樹脂、木材、金属など必要に応じて材質を変えて構成することは勿論可能である。特に観賞性の強い水生生物に対して給餌する場合には、給餌装置自体も鑑賞に耐えうるほどに審美性の高いものが望まれることから、種々のカラーバリエーションやデザインのバリエーションで使用することができる。この点本発明にかかる給餌装置1は、各部(本体部10、差し込み部1、傘状部材20、22、浮体16などがそれぞれパーツとして取り外し可能であり、その一部のみを他の材質や色に変更するなど、個人の趣味に幅広く対応することができる。
【0049】
なお、上記給餌装置1においては、第1、第2の傘状部材20、22が、差し込み部12にスライド可能に設置されていたが、必要に応じて本体部10にスライド可能に設置されていてもよい。
【0050】
〈その他の実施例・使用例〉
また、給餌装置1では、第1、第2の傘状部材20、22が下方に開口するようにして使用されているが、必要に応じて、両方又は一方を上下方向反転して取り付けて使用することも可能に構成されている。即ち、差し込み部12から一端抜き取って上で上下方向を反転させて取り付ければよく、このように取り付けた上で給餌することも可能である。
【0051】
例えば、図9では、第1の傘状部材20が上下方向反転して取り付けられている。ここでは反転して取り付けた第1の傘状部材20を「皿」のように機能させ、この皿の上にポリエステル製の綿状体18を取り付け、この綿状体18上に「生き餌」を載せて給餌している。綿状体18は必須ではないもの、この綿状体18の存在によってミミズなどの生き餌が当該綿状体18を足場として利用するので、生き餌が水槽内に散乱し難いといった特徴がある。またここでは第2の傘状部材22が、土壌54に対するストッパとして機能している。即ち、当該第2の傘状部材22のスカート部22cの下端面22eが土壌54の表面に当接することによって、差し込み深さのストッパとなると共に、半径方向に広がった位置で、当該給餌装置の立設を補助し、水生生物の接触等による位置ずれや転倒などが起こり難くなっている。
【0052】
また、図10に示しているように、第1の傘状部材20を上下反転させた上で、丁度第1の傘状部材22の中程(高さ方向中程)に水面が位置するようにして給餌に使用することもできる。例えばカメやカエル、イモリ等の生物を育成する場合に好適である。
【0053】
また、図11に示しているように、第1の傘状部材20に対して第2の傘状部材22を反転させて使用することも可能である。即ち、餌70を上下から第1の傘状部材20と第2の傘状部材22とで内包するようにして使用することで、餌70の散乱を防止すると共に、2つの傘状部材の(露先部分の)隙間を適宜調整することによって、直接入り込める水性生物の大きさを制限することができる。
【0054】
また、特に図示していないが、例えば、水槽内に土壌が敷設されていない場合であっても当該給餌装置を使用することができる。例えば、水槽の壁面に寄りかかるように設置して使用することもできる。また、水槽の底面に、差し込み部の先端を差し込むことができるアダプタを設置しておき、当該アダプタに差し込んで使用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・水槽内給餌装置
10・・・本体部
12・・・差し込み部
14・・・継ぎ手
16・・・浮体
20・・・第1の傘状部材
22・・・第2の傘状部材
50・・・水槽
52・・・水
54・・・土壌
60、62・・・水性生物
70、72、74・・・餌



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内で育成する水性生物に対して餌を与える給餌装置であって、
棒状に成形された本体部と、
該本体部の一端に設けられ前記水槽内に敷設された土壌に差し込む差し込み部と、
該差し込み部又は前記本体部に対して長手方向にスライド可能且つ下方に開口するように設けられた傘状部材と、を備える
ことを特徴とする水槽内給餌装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記本体部の他端には、浮体が設けられている
ことを特徴とする水槽内給餌装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記差し込み部が、前記本体部から取り外し可能とされている
ことを特徴とする水槽内給餌装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記傘状部材が、それぞれ大きさの異なる第1、第2の傘状部材として構成され、相対的に大きな第1の傘状部材が上方に、相対的に小さな第2の傘状部材が下方に設けられている
ことを特徴とする水槽内給餌装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の傘状部材には、エア抜き穴が設けられている
ことを特徴とする水槽内給餌装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
少なくとも前記傘状部材が透明又は半透明の材料で構成されている
ことを特徴とする水槽内給餌装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
アクリル材料で構成されている
ことを特徴とする水槽内給餌装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記差し込み部が先細に構成されている
ことを特徴とする水槽内給餌装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記傘状部材を上下方向反転して取り付け可能である
ことを特徴とする水槽内給餌装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−83253(P2011−83253A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240067(P2009−240067)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【特許番号】特許第4458440号(P4458440)
【特許公報発行日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(309032371)
【Fターム(参考)】