説明

水泳補助用具

【目的】 身体の自由がきかない者であっても、着脱が容易である水泳補助用具を提供する。
【構成】 チョッキ形であって、その後ろ身頃1と前身頃2,2とにそれぞれ板状ないし盤状の浮き3,5,5を内装し、そのうちの背浮き3と左右胸浮き5,5との間隔M,Mが弾力的に伸び得るように、縦横のうち少なくとも横へ伸縮自在な生地により縫製した。これにより、腕通し16,16に腕を通しやすくなる。浮き3,5,5を挿入する各ポケット13,15,15を背面で表地9、10,10に対し面離れ可能に特立に形成すると、さらに着用しやすくなる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
この考案は、リハビリのために水泳を行う者、幼い子供等が着用するのに特に適し、また、泳げることの可否にかゝわらずその補助として簡易に着用するのにも適する水泳補助用具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水泳補助用具として数々の提案がなされている。これには、例えば、浮きを上体の前後に装着するものを挙げることができる(実開昭57−103300号公報)、これは、浮きを身体に保持する必要から、長いベルトが幾つか装着してあるので、着用するときには、ベルトの取扱いが煩わしく、また、身体との密着性に欠けるために、水中において浮力の安定性が得られないという欠点がある。
【0003】
次に、ジャケット式の着衣に平たい浮きを内装したものを挙げることができる(実開昭55−146398号公報)。これであると、浮力の安定性が比較的得られるが、前が開かないジャケット形であることから、着用する際に首から挿入する必要があり、これも着脱が容易ではない。この点については、浮きには発泡プラスチック等の強張ったものが使用されるから、言わば鎧の如く融通性に欠け、腕通しも極めて困難であって、殊に、リハビリを目的とする身体障害者や幼稚な子供であると、手助けにも困難が伴うという問題があった。そこで、曲がりやすくするために浮きの入れ箇所も部分的となり、大きな浮力を得るのには適しなかった。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
この考案は、上記のような実情に鑑みて、たとえ、身体の自由に乏しい者であっても、着脱が容易であり、しかも、浮力に安定性が得られ、大きな浮力を得られやすい水泳補助用具を提供することを目的とした。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この考案は、後ろ身頃と、前が完全に開き得る左右前身頃との間に腕通しがあり、前で止めて着用するチョッキ型であって、後ろ身頃と前身頃とに、それぞれ板状ないし盤状の浮きを内装し、そのうちの背中当りの背浮きと、胸当りの左右胸浮きとの間隔が弾力的に伸び得るように、縦横のうち少なくとも横へ伸縮自在な生地により縫製したことを特徴とする水泳補助用具を提供するものである。
【0006】
水泳補助用具を上記のように構成したから、これを着用するときには、胴体や脚に通すという困難な動作が省けることはもちろん、伸縮性により左右前身頃を腕がつかえないように左右へ大きく開くことができるだけでなく、これによって腕通しが横へ大きく開かれるので、着用動作が簡潔にして容易である。また、伸縮性により浮きが身体に密着するので、これによって浮力に安定性が得られる。
さらに、強張った浮きの障碍が極めて少なくなるので、それに広いものを使用できる。
【0007】
後ろ身頃と前身頃とに、それぞれ浮きを出し入れ自在に挿入するポケットを形成すると、洗濯する際に好都合である。
【0008】
また、浮きを挿入する各ポケットを、背面で表地と独立に形成し、表地が各ポケットに対して横へ自由に伸縮するように構成すると、伸縮の度合いが大きくなるので、さらに着用が容易となる。
【0009】
【考案の実施の形態】
次に、この考案の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【0010】
図1および図2は第一の実施例を、図3および図4は第二の実施例を、図5は第三の実施例を示す。また、図6は共通の着用状態を示す。
【0011】
いずれの実施例においても、その水泳補助用具Pは、後ろ身頃1と左右前身頃2,2とからなるチョッキ形であって、そのため両前身頃2,2の間が完全に開くようになっている。そして、後ろ身頃1と両前身頃2,2に、それぞれと対応して相似形に近い盤状ないし板状の背浮き3と胸浮き5,5とが内装される。また、両前身頃2,2は、スライドファスナー7で止めるようになっている。これはボタン等であっても良い。また、下端をバンドで締めるようにしても良い。
【0012】
浮き3,5,5の入れ方については、図1および図2に示す実施例においては、表地9、10,10と裏地11,12,12との間を背ポケット13,前ポケット15,15として構成した。なお、縫製等の都合から、表地9、10,10と裏地11,12,12とは、後ろ身頃1と前身頃2,2とで別々に裁断され、縫い合わせてある。腕通し16の真ん中位置においてその縫い目18,18が設けられる。
【0013】
背ポケット13については、両側において腕通し16,16の下端部内側縁から下端縁に至るまで表地9と裏地11とを逢着し、両逢着部19,19の間に浮き3が保持される。また、出し入れできるようにするために、脊柱当りにおいて裏地11を分離するとともに、分離縁13a,13bを二つ合わせに重ね、下端部を逢着し、その逢着部20よりも上を浮き3を挿入する開き口23とした。このポケット13の構成については、様々に考えられ、例えば、分離縁13a,13bを斜め交差としても良い(図5の実施例)。また、上下に分離するようにしても良い。
【0014】
左右の前ポケット15,15については、腕通し16の下端部外側縁から下端縁にいたるまで表地10と裏地12とを逢着し、その逢着部21と前身頃2の縁との間において構成される。この場合は、上下分離形であって、上端部において裏地15を分離するとともに、下の生地の分離縁15aを上の生地の分離縁15bの上に重ね、その間が浮き5を挿入する開き口25となっている。
【0015】
背浮き3および胸浮き5,5の形状については、それぞれ後ろ身頃1および前身頃2,2とほゞ同じ大きさの相似形である。そして、前記逢着部19,21によって規制されるために、背浮き3と胸浮き5,5との間に相当の間隔M,Mが生じるようにしてある。
【0016】
表地9、10,10と裏地11,12,12には、縦横に伸縮するトリコット生地が使用されている。そのため、全体的に生地が横へ伸びることによって、前記の間隔M,Mが開かれ、同時に腕通し16,16も横へ開かれるために、それに腕を通しやすい。しかし、浮き3,5,5や身体との摩擦があるために、主に間隔M,Mにおいて生地が伸びやすい。この摩擦をできるだけ少なくして横へ特に大きく伸びやすくしたのが後記する第二の実施例である。
【0017】
浮き3,5,5については、独立気泡の軟質プラスチックフォームのスポンジ状板を使用したが、板状ないし盤状に保持されるならば、空気袋等の他の浮きであっても良い。また、浮力の調整のために、一枚ばかりでなく、二枚重、三枚重というように、複数枚重ねて入れるようになされる(図2二点鎖線参照)。
【0018】
図3および図4に示す第二の実施例における水泳補助用具Pは、各ポケット13,15,15に対して表地9、10,10を自由にしたものである。つまり、背ポケット13では、内外両生地33a,33bにより構成され、それが上下両端縁と、腕通し16,16の内側縁とでは逢着により表地9と接続しているが、その他においては逢着されていなく面離れ可能である。また、左右の前ポケット15,15では、同じく内外両生地35a,35bにより構成され、それが表地10,10に対して、上下両端縁と、外側端縁と、腕通し16の外側縁とでは接続しているが、その他の箇所においては逢着されていない。
【0019】
そこで、腕通し16,16の位置より下では、図4に示すように、表地9、10,10は、両端で前ポケット15,15でのみ接続しており、そのため、伸縮について浮き3,5,5との摩擦がなく、ポケット13,15,15との摩擦があってもわずかであり、また、身体との接触がないために、表地9、10,10のみの伸縮性により大きく開き、腕通し16,16も同時に大きく開くために、腕を通す動作が非常になしやすくなる。
【0020】
なお、表地9、10,10は、一枚の生地により構成することも可能である。
また、上半身にのみ着用するチョッキ型であるので、着用に際しては(図6)、水着Wが必要である。
【0021】
【考案の効果】
以上説明したように、この考案の水泳補助用具によれば、前が完全に開くチョッキ型であって、しかも、生地の伸縮性により前身頃と共に腕通しが大きく開くために、強張った融通性のきかない浮きが内装されていても、それに妨げられることなく、腕通しの動作をなしやすく、着用が容易であり、殊に、リハビリを目的とする身体の自由がきかない者や、幼稚な子供等が着用する際の困難が解消される。また、浮きを広く取ることができ、それによって大きな浮力が得られ、さらに、身体に密着するために、浮力に安定性が得られやすいという優れた効果がある。
【0022】
殊に、表地に自由度を持たせた場合には(請求項3)、着用がさらに容易となり効果が顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一の実施例による水泳補助用具を開いて一部破断して示す斜視図である。
【図2】同水泳補助用具の横断面図である。
【図3】第二の実施例による水泳補助用具を開いて一部破断して示す斜視図である。
【図4】同水泳補助用具の横断面図である。
【図5】第三の実施例による背ポケットを内側から見た説明図である。
【図6】各実施例に共通の着用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
P 水泳補助用具
M 間隔
1 後ろ身頃
2 前身頃
3 背浮き
5 胸浮き
9,10 表地
13,15 ポケット
16 腕通し

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 後ろ身頃1と、前が完全に開き得る左右前身頃2,2との間に腕通し16,16があり、前で止めて着用するチョッキ型であって、後ろ身頃1と前身頃2,2とに、それぞれ板状ないし盤状の浮き3,5,5を内装し、そのうちの背中当りの背浮き3と、胸当りの左右胸浮き5,5との間隔M,Mが弾力的に伸び得るように、縦横のうち少なくとも横へ伸縮自在な生地により縫製したことを特徴とする水泳補助用具。
【請求項2】 後ろ身頃1と前身頃2,2とに、それぞれ浮き3,5,5を出し入れ自在に挿入するポケット13,15,15を形成したことを特徴とする請求項1記載の水泳補助用具。
【請求項3】 浮き3,5,5を挿入する各ポケット13,15,15を、背面で表地9、10,10に対し面離れ可能に独立に形成し、表地9、10,10が各ポケット13,15,15に対して横へ自由に伸縮するように構成したことを特徴とする請求項2記載の水泳補助用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【登録番号】第3048684号
【登録日】平成10年(1998)3月4日
【発行日】平成10年(1998)5月22日
【考案の名称】水泳補助用具
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−5650
【出願日】平成9年(1997)5月26日
【出願人】(596003410)株式会社高岡機業場 (1)