説明

水浄化装置

【課題】本発明は、低コストで水を浄化することができる水浄化装置を提供する。
【解決手段】本発明の水浄化装置は、大気中における正コロナ放電により発生させる正イオンを含む空気を生成する第1空気生成部と、大気中における負コロナ放電により発生させる負イオンを含む空気を生成する第2空気生成部と、第1空気生成部により生成した空気の気泡を水中に生成する第1気泡生成部と、第2空気生成部により生成した空気の気泡を水中に生成する第2気泡生成部とを備え、第1および第2気泡生成部は、第1および第2気泡生成部においてそれぞれ生成された気泡が浄化対象の水中に供給されるように設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浄化されていない水には有機物や細菌などが含まれており、浄化水を得るためには、これらの有機物や細菌などを除去する必要がある。水中の有機物は、一般的にプラスかマイナスに帯電し、水中の細菌は、一般的に負に帯電している。
水中の有機物や細菌を除去する水の浄化は、一般的に水中に薬剤等の物質を拡散させることにより行われている。しかし、薬剤を水中に拡散させて水を浄化した場合、薬剤の一部が浄化した水中に残留してしまうという問題がある。また、薬剤を浄化する水中に投入し、浄化後、投入した薬剤を浄化水から除去するという処理が必要となるため、浄化装置が大型化し、浄化コストが上昇するという問題がある。
そこで、気泡と銀イオンを水に拡散させ殺菌水を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、正コロナ放電により発生させた正イオンと負コロナ放電により発生させた負イオンとを空気中の浮遊するカビ菌などに付着させ、発生させた活性種によりカビ菌を除去する空気浄化装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4584168号
【特許文献2】特許第4503085号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の気泡を水に拡散させる水浄化方法では、気泡と共に銀や塩素などの物質を拡散させる必要があるため、これらの物質を浄化水から除去する必要がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低コストで水を浄化することができる水浄化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、大気中における正コロナ放電により発生させる正イオンを含む空気を生成する第1空気生成部と、大気中における負コロナ放電により発生させる負イオンを含む空気を生成する第2空気生成部と、第1空気生成部により生成した空気の気泡を水中に生成する第1気泡生成部と、第2空気生成部により生成した空気の気泡を水中に生成する第2気泡生成部とを備え、第1および第2気泡生成部は、第1および第2気泡生成部においてそれぞれ生成された気泡が浄化対象の水中に供給されるように設けられたことを特徴とする水浄化装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、大気中における正コロナ放電により発生させる正イオンを含む空気を生成する第1空気生成部と、第1空気生成部により生成した空気の気泡を水中に生成する第1気泡生成部とを備えるため、水中に正イオンを含む空気の気泡を生成することができる。
本発明によれば、大気中における負コロナ放電により発生させる負イオンを含む空気を生成する第2空気生成部と、第2空気生成部により生成した空気の気泡を水中に生成する第2気泡生成部とを備えるため、水中に負イオンを含む空気の気泡を生成することができる。
本発明によれば、第1および第2気泡生成部は、第1および第2気泡生成部においてそれぞれ生成された気泡が浄化対象の水中に供給されるように設けられるため、正イオンを含む気泡と、負イオンを含む気泡とを浄化対象の処理水中に供給することができる。このことにより、処理水中で正イオンを含む気泡と負イオンを含む気泡とを合体させることができる。これらの気泡が合体すると、処理水中で気泡中の正イオンと負イオンとを反応させることができ、処理水中に活性種を発生させることができる。この活性種により処理水中の有機物や細菌を酸化除去することにより、処理水を浄化することができる。浄化に用いた正イオン、負イオン、活性種は残留性がないため、これらを除去する必要がなく低コストで処理水を浄化することができる。
また、正イオンを含む気泡を生成する第1気泡生成部と、負イオンを含む気泡を生成する第2気泡生成部とを別々に設けることにより、正イオンと負イオンとを狭い空間に閉じ込めることなく正イオンを含む気泡と負イオンを含む気泡とを生成することができる。このため、気泡を生成する前に正イオンと負イオンとが会合し失活することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態の水浄化装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の水浄化装置の構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の水浄化装置の構成を示す概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の水浄化装置の構成を示す概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の水浄化装置の構成を示す概略断面図である。
【図6】水浄化実験の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水浄化装置は、大気中における正コロナ放電により発生させる正イオンを含む空気を生成する第1空気生成部と、大気中における負コロナ放電により発生させる負イオンを含む空気を生成する第2空気生成部と、第1空気生成部により生成した空気の気泡を水中に生成する第1気泡生成部と、第2空気生成部により生成した空気の気泡を水中に生成する第2気泡生成部とを備え、第1および第2気泡生成部は、第1および第2気泡生成部においてそれぞれ生成された気泡が浄化対象の水中に供給されるように設けられたことを特徴とする。
【0009】
本発明の水浄化装置において、第1および第2気泡生成部は、水中にマイクロバブルを生成することが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2気泡生成部が生成する気泡を長時間水中に滞在させることができ、本発明の水浄化装置の浄化能力を高くすることができる。
本発明の水浄化装置において、第1空気生成部で生成した空気を第1気泡生成部に供給する第1空気流路と、第2空気生成部で生成した空気を第2気泡生成部に供給する第2空気流路とをさらに備え、第1空気流路は、正の電位に維持できる内壁を有し、第2空気流路は、負の電位に維持できる内壁を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1または第2空気生成部と第1または第2気泡生成部とを間隔をおいて設けることができる。このことにより、第1または第2空気生成部に水が浸入することによる漏電や故障を防止することができる。また、第1または第2空気流路の内壁に正イオンまたは負イオンが接触することによる正イオンまたは負イオンの失活を抑制することができる。
【0010】
本発明の水浄化装置において、第1または第2空気流路は、その内壁に高い電気抵抗を有する帯電層を有することが好ましい。
このような構成によれば、第1空気流路の内壁に正イオンが付着することにより、第1空気流路の内壁を正の電位に維持することができ、第2空気流路の内壁に負イオンが付着することにより、第2空気流路の内壁を負の電位に維持することができる。
本発明の水浄化装置において、第1または第2空気流路の内壁に電圧を印加する電源回路をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、電源回路により印加される電圧により、第1空気流路の内壁を正の電位に維持することができ、第2空気流路の内壁を負の電位に維持することができる。
【0011】
本発明の水浄化装置において、浄化槽をさらに備え、第1および第2気泡生成部は、第1および第2気泡生成部においてそれぞれ生成された気泡が前記浄化槽に供給されるように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、第1および第2気泡生成部においてそれぞれ生成された気泡を浄化槽中の処理水に供給することができ、浄化槽中の処理水を浄化することができる。
本発明の水浄化装置において、前記浄化槽は、浄化する水が流れる浄化槽流路を内部に備え、第1および第2気泡生成部は、前記浄化槽流路に並んで生成した気泡を供給することが好ましい。
このような構成によれば、浄化槽の処理水中の有機物や細菌に正イオンを含む気泡または負イオンを含む気泡のうち一方を先に吸着させ、その後正イオンを含む気泡と負イオンを含む気泡とを合体させることができるため、有機物や細菌の表面近傍で活性種を発生させることができる。このことにより、有機物や細菌を効率よく除去することができる。
【0012】
本発明の水浄化装置において、前記浄化槽は、前記浄化槽流路を形成する仕切り板を有することが好ましい。
このような構成によれば、仕切り板により浄化槽流路を形成することができる。また、浄化槽流路を長くすることができ、水浄化装置の浄化能力を高くすることができる。
本発明の水浄化装置において、第1および第2気泡生成部は、前記浄化槽流路に交互に並んで生成した気泡を供給することが好ましい。
このような構成によれば、浄化槽の処理水中の有機物や細菌に正イオンを含む気泡または負イオンを含む気泡のうち一方を先に吸着させ、その後正イオンを含む気泡と負イオンを含む気泡とを合体させることができるため、有機物や細菌の表面近傍で活性種を発生させることができる。このことにより、有機物や細菌を効率よく除去することができる。
【0013】
本発明の水浄化装置において、前記浄化槽は、攪拌器を備えることが好ましい。
このような構成によれば、攪拌器により浄化槽の処理水を攪拌することができ、正イオンを含む気泡および負イオンを含む気泡により処理水中の有機物や細菌を効率よく除去することができる。
本発明の水浄化装置において、前記浄化槽は、浄化する水を循環させる循環流路を備えることが好ましい。
このような構成によれば、処理水を浄化槽により繰り返し浄化することが可能になる。
本発明の水浄化装置において、前記浄化槽は、内壁に光触媒層を有し、かつ、前記光触媒層に光を照射する光源を有することが好ましい。
このような構成によれば、正イオンを含む気泡および負イオンを含む気泡により発生させる活性種による浄化に加え、浄化槽内壁の光触媒層で発生させる活性種により処理水を浄化することができる。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0014】
水浄化装置の構成
図1〜5は、それぞれ本発明の一実施形態の水浄化装置の構成を示す概略断面図などである。なお、図1〜4は、水浄化装置25に含まれる浄化槽1の処理水の水面に垂直な断面の図であり、図5は、水浄化装置25に含まれる浄化槽1の処理水の水面に平行な断面の図である。
本実施形態の水浄化装置25は、大気中における正コロナ放電により発生させる正イオンを含む空気を生成する第1空気生成部3と、大気中における負コロナ放電により発生させる負イオンを含む空気を生成する第2空気生成部4と、第1空気生成部3により生成した空気の気泡を水中に生成する第1気泡生成部6と、第2空気生成部4により生成した空気の気泡を水中に生成する第2気泡生成部7とを備え、第1および第2気泡生成部6、7は、第1および第2気泡生成部6、7においてそれぞれ生成された気泡が浄化対象の水中に供給されるように設けられたことを特徴とする。
また、本実施形態の水浄化装置25は、浄化槽1をさらに有してもよい。
以下、本実施形態の水浄化装置25について説明する。
【0015】
1.第1空気生成部および第2空気生成部
第1空気生成部3は、大気中における正コロナ放電により発生させる正イオンを含む空気を生成する部分であり、第2空気生成部4は、大気中における負コロナ放電により発生させる負イオンを含む空気を生成する部分である。
「大気中における正コロナ放電により発生させる正イオン」とは、大気中に正極性コロナを発生させることにより生じる正イオンであり、水素イオン(H+)の周囲に複数の水分子が集合したクラスターイオンであると考えられる。また、この正イオンは、H+(H2O)m(mは自然数)で表すことができると考えられる。このような正イオンは、大気中で正極放電電極と負極放電電極との間に電圧を印加し、正極放電電極の近傍で正極性コロナを発生させることにより、空気中に発生させることができる。
【0016】
第1空気生成部3は、例えば針状の正極放電電極と、針状の正極放電電極の周囲に電界集中が生じるように設けられた負極放電電極とを有することができる。このことにより、正極放電電極の周囲に正極性コロナを発生させることができ、正イオンを発生させることができる。また、第1空気生成部3は、正極放電電極と負極放電電極との間に電圧を印加するための高電圧回路、高圧トランス、電源回路などを備えてもよい。なお、高圧トランス、電源回路は、第2空気生成部4と共用であってもよい。
また、第1空気生成部3は筐体を備えることができる。このことにより、前記正イオンを含む空気を漏れなく第1気泡生成部6に供給することができる。なお、この筐体の内壁は、高い電気抵抗を有してもよい。このことにより、筐体の内壁が正の電位に帯電することができ、正イオンが筐体の内壁に接触し失活することを防止することができる。
さらに、図2のように第1空気生成部3と第1気泡生成部6は、一体化されていてもよい。
【0017】
「大気中における負コロナ放電により発生させる負イオン」とは、大気中に負極性コロナを発生させることにより生じる負イオンであり、酸素イオン(O2-)の周囲に複数の水分子が集合したクラスターイオンであると考えられる。また、この負イオンは、O2-(H2O)n(nは自然数)で表すことができると考えられる。このような負イオンは、大気中で正極放電電極と負極放電電極との間に電圧を印加し、負極放電電極の近傍で負極性コロナを発生させることにより、空気中に発生させることができる。
【0018】
第2空気生成部4は、例えば針状の負極放電電極と、針状の負極放電電極の周囲に電界集中が生じるように設けられた正極放電電極とを有することができる。このことにより、負極放電電極の周囲に負極性コロナを発生させることができ、負イオンを発生させることができる。また、第2空気生成部4は、正極放電電極と負極放電電極との間に電圧を印加するための高電圧回路、高圧トランス、電源回路などを備えてもよい。なお、高圧トランス、電源回路は、第1空気生成部3と共用であってもよい。
また、第2空気生成部4は筐体を備えることができる。このことにより、前記負イオンを含む空気を漏れなく第2気泡生成部7に供給することができる。なお、この筐体の内壁は、高い電気抵抗を有してもよい。このことにより、筐体の内壁が負の電位に帯電することができ、負イオンが筐体の内壁に接触し失活することを防止することができる。
さらに、図2のように第2空気生成部4と第2気泡生成部7は、一体化されていてもよい。
【0019】
また、水浄化装置25は、第1空気生成部3および第2空気生成部4にそれぞれ空気を供給できるように設けられた空気供給部10を備えてもよい。また、空気供給部10は、第1空気生成部3が備える筐体内、第2空気生成部4が備える筐体内にそれぞれ空気を供給できるように設けられてもよい。このことにより、空気供給部10から供給された空気を連続的に前記正イオンを含む空気または前記負イオンを含む空気とすることができる。また、前記正イオンを含む空気を第1気泡生成部6に供給することができ、前記負イオンを含む空気を第2気泡生成部7に供給することができる。
また、空気供給部10は、第1空気生成部3内および第2空気生成部4内の圧力が大気圧より高くなるように設けることができる。このことにより、第1空気生成部3で生成した空気を第1気泡生成部6により気泡とすることができ、第2空気生成部4で生成した空気を第2気泡生成部7により気泡とすることができる。
空気供給部10は、例えば、エアコンプレッサーやファンなどである。
【0020】
図1、3〜5に示した水浄化装置25のように、第1空気生成部3は第1空気流路13を介して第1気泡生成部6に空気を供給できるように設けられてもよく、第2空気生成部4は第2空気流路14を介して第2気泡生成部7に空気を供給できるように設けられてもよい。このことにより、第1または第2空気生成部3、4と第1または第2気泡生成部6、7とを間隔をおいて設けることができ、第1または第2空気生成部3、4に水が浸入することによる漏電や故障を防止することができる。
また、図5に示した水浄化装置25のように1つの第1空気生成部3に対して複数の第1気泡生成部6を設けることができ、また、1つの第2空気生成部4に対して複数の第2気泡生成部7を設けることができる。このことにより、浄化する処理水中に供給する気泡の量を多くすることができ、水浄化装置25の浄化能力を高くすることができる。
【0021】
第1空気流路13は正の電位に維持できる内壁を有してもよく、第2空気流路14は負の電位に維持できる内壁を有してもよい。このことにより、第1空気流路13の内壁に正イオンが接触することによる正イオンの失活を抑制することができ、第2空気流路14の内壁に負イオンが接触することによる負イオンの失活を抑制することができる。第1空気流路13の内壁を正の電位に維持し第2空気流路14の内壁を負の電位に維持する方法は、特に限定されないが、例えば、第1空気流路13および第2空気流路14の内壁に高い電気抵抗を有する帯電層を設けることが挙げられる。このことにより、第1空気流路13の帯電層に正イオンが接触すると、帯電層が正の電位となり維持され、第2空気流路14の帯電層に負イオンが接触すると、帯電層が負の電位となり維持される。この帯電層は、低耐圧とすることができる。このことにより、帯電層の電位が必要以上に高くまたは低くなることを防止することができる。なお、帯電層とは、帯電することができる層である。
帯電層は、例えば、高い電気抵抗を有する材料からなるフィルムまたは絶縁体からなる薄いフィルムであってもよい。
【0022】
また、第1空気流路13の内壁を正の電位に維持し第2空気流路14の内壁を負の電位に維持する方法としては、電源回路により第1空気流路13の内壁が正の電位となり、第2空気流路14の内壁が負の電位となるように電圧を印加する方法が挙げられる。この方法によると電源回路により第1空気流路13の内壁の電位と第2空気流路14の電位を制御することができる。
【0023】
2.第1気泡生成部および第2気泡生成部
第1気泡生成部6は、第1空気生成部3により生成した空気の気泡23を水中に生成する部分であり、第2気泡生成部7は、第2空気生成部4により生成した空気の気泡24を水中に生成する部分である。
水浄化装置25は、図1〜3のように第1気泡生成部6および第2気泡生成部7とそれぞれ1つずつ有してもよく、図4のように第1気泡生成部6および第2気泡生成部7のうちどちらか一方を複数有してもよく、第1気泡生成部6および第2気泡生成部7をそれぞれ複数有してもよい。
【0024】
第1気泡生成部6および第2気泡生成部7は、例えば、多孔性フィルターを備えることができる。このことにより多孔性フィルターの一方の側を水とし、他方の側から第1空気生成部3または第2空気生成部4から供給された空気とし、この空気を水側に多孔性フィルターを介して供給することにより水中にこの空気の気泡を形成することができる。
また、第1気泡生成部6および第2気泡生成部7は、水を渦流させその中に第1空気生成部6または第2空気生成部4により供給された空気を巻き込みファンなどにより気泡を切断するように設けられてもよい。
【0025】
第1および第2気泡生成部6、7により生成する気泡が有する直径分布は、特に限定されないが、10μm以上50μm以下にピークを有してもよい。このことにより、第1および第2気泡生成部6、7により生成する気泡は、マイクロバブルを含むことができる。マイクロバブルは、長時間水中に滞在させることができるため、気泡が処理水中の有機物や細菌に吸着する効率を高くすることができ、処理水を効率よく浄化することができる。
なお、本発明においてマイクロバブルとは、直径分布のピークが50μm以下の気泡をいう。
【0026】
第1気泡生成部6および第2気泡生成部7は、水浄化装置25が浄化する水に気泡を形成する部分であってもよく、他の水に気泡を形成する部分であってもよい。
また、第1気泡生成部6および第2気泡生成部7は、気泡が形成された水を浄化する水中に供給するように設けられてもよく、気泡を直接浄化する水中に形成するように設けられてもよい。
【0027】
第1および第2気泡生成部6、7は、第1および第2気泡生成部に6、7おいてそれぞれ生成された気泡が浄化する水中に供給されるように設けられる。このことにより、浄化する水中に第1気泡生成部6により形成した正イオンを含む気泡23と、第2気泡生成部7により形成した負イオンを含む気泡24とを存在させることができる。このことにより浄化する処理水中で正イオンを含む気泡23と負イオンを含む気泡24とを合体させることができる。これらの気泡が合体することにより気泡中で正イオンと負イオンとを反応させることができ活性種を発生させることができる。この活性種により処理水中の有機物や細菌を除去することができ、処理水を浄化することができる。正イオンと負イオンとが反応することにより生成する活性種は、水酸基ラジカル(・OH)と考えられる。
また、第1気泡生成部6により生成した気泡23を含む水と、第2気泡生成部7により生成した気泡24を含む水は、混合して浄化する水に供給してもよい。このことにより正イオンを含む気泡23と負イオンを含む気泡24とが浄化する水中で合体しやすくなり、活性種を発生しやすくなる。
【0028】
3. 浄化槽
水浄化装置25は浄化槽1を備えることができる。水浄化装置25が浄化槽1を備えない場合、水浄化装置25は、水に接触するように設置できるように設けることができる。例えば、浴槽、水槽、池、川、海などの水に水浄化装置25を接触するように設置することにより、これらの水中に正イオンを含む気泡23と負イオンを含む気泡24とを供給することができ、これらの水を浄化することができる。
【0029】
浄化槽1は、処理水を浄化するための水槽である。浄化槽1は、処理水を溜めるまたは流すことができれば特に限定されない。浄化槽1は、例えば、金属製、樹脂製、強化プラスチック製、ガラス製、陶器製である。水浄化装置25が浄化槽1を備えることにより、浄化槽1中の処理水を浄化することができる。
浄化槽1は処理水流入口17と処理水排出口18とを備えることができる。処理水流入口17から浄化前の処理水を浄化槽1に流入させることができ、処理水排出口18から浄化後の処理水を浄化槽1から排出させることができる。このことにより、水浄化装置25により連続的に処理水を浄化することができる。
【0030】
浄化槽1は、図1のように攪拌器20を備えることができる。このことにより、浄化槽1内の処理水を攪拌することができ、第1および第2気泡生成部6、7により供給した気泡と、処理水中の有機物または細菌とを効率よく接触させることができる。このことにより、処理水を効率よく浄化することができる。
【0031】
浄化槽1は、図3〜5のように浄化槽流路31を有することができる。このことにより、浄化槽流路31の上流において正イオンを含む気泡23および負イオンを含む気泡24のうちいずれか一方の気泡を供給し、その下流において他方の気泡を供給することができる。また、正イオンを含む気泡23の供給と、負イオンを含む気泡24の供給とが浄化槽流路31に沿って交互に並ぶように浄化槽流路31が設けられてもよい。このことにより、浄化槽流路31の上流において、処理水に含まれる有機物や細菌に前記一方の気泡を吸着させ、浄化槽流路の下流において、この吸着させた気泡に前記他方の気泡を合体させることができる。このことにより、処理水に含まれる有機物や細菌の近傍で活性種を発生させることができ、処理水を効率的に浄化することができる。処理水中の有機物は一般的にプラスかマイナスに帯電しているため、このように正イオンを含む気泡23または負イオンを含む気泡24のうち一方を先に吸着させることにより、効率的に有機物を除去することができる。また、処理水中の細菌はマイナスに帯電したものが多いため、正イオンを含む気泡23を先に吸着させその後、吸着させた正イオンを含む気泡23に負イオンを含む気泡24を吸着させることにより、細菌を効率的に除去することができる。
なお、浄化槽流路31は、例えば、図3、4のように浄化槽1内に仕切り板30を設けることにより形成することができる。また、図5のように、浄化槽1を細長い形状にすることにより浄化槽流路31を形成してもよい。また、浄化槽流路31を長くすることにより、処理水に含まれる有機物や細菌と、正イオンを含む気泡23または負イオンを含む気泡24とが接触する確率を高くすることができる。
【0032】
水浄化装置25は、処理水排出口18から排出された処理水を再び浄化槽1内に循環させる循環流路33を備えてもよい。循環流路33は、例えば、図3に示した水浄化装置25のように、処理水排出口18と処理水流入口17とを導通させるような流路であてもよい。このことにより、処理水を繰り返し浄化槽1に流通させることができ、処理水を十分に浄化することができる。
【0033】
水浄化装置25は、例えば図2のように、内壁に光触媒層26を備える浄化槽1を有してもよく、光触媒層26に光を照射する光源28を有してもよい。このことにより、光触媒層26に光源28の光を照射することができ、光触媒層26が光触媒活性を有することができる。この光触媒活性により浄化槽1内の処理水を浄化することができるため、水浄化装置25の浄化能力をさらに高くすることができる。
【0034】
光触媒層26は、光触媒を含む層であり、受光することにより光触媒活性を有する。光触媒層26に含まれる光触媒は、例えば、TiO2、SnO2、WO3、Fe23、ZnO、Nb25、SrTiO3、KTaO3、ZrO2、GaP、BiVO4、Bi2MoO6、Ag3PO4であり、また、これらの表面にPt、Pd、Ru、Rh、Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Zn、Ga、Ge、InおよびSnのうち少なくとも1つの金属が担持されたものであってもよい。光触媒層26に含まれる光触媒は、好ましくは酸化チタンである。
光触媒層26は、光触媒を含む薄膜であってもよく厚膜であってもよい。また、光触媒を含むフィルム、光触媒が担持されたガラスや繊維体などであってもよい。光触媒層26が光触媒を含む薄膜である場合、例えば、CVD法やスパッタ法により形成することができ、光触媒層26が光触媒を含む厚膜である場合、例えば、微粒子状の光触媒を含むペースト、コーティング剤を浄化槽1の内壁に設置する基体上に塗布、乾燥または焼成することにより形成することができる。
【0035】
光源28は、光触媒層26に光触媒活性を生じさせることができるものであれば特に限定されないが、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、ブラックライト、紫外線LEDなどである。
【0036】
水浄化実験
本発明の水浄化装置の効果を調べるために水浄化実験を行った。
本実験では、まず、純水中に武藤化学(株)製のメチレン青原液を添加し、約10mg/lのメチレンブルー水溶液を調製した。このメチレンブルー水溶液約100mlに正イオンを含むバブルと負イオンを含むバブルを約40時間供給した(実施例)。また、比較例1として、調製したメチレンブルー水溶液約100mlを正イオンと負イオンとを含む空気を供給し続けた密閉空間中に約40時間放置した。さらに比較例2として、正イオンを含む空気と負イオンを含む空気の混合気体のバブルを、調製したメチレンブルー水溶液約100mlに約40時間供給した。
【0037】
実施例、比較例1、2の処理を行ったメチレンブルー水溶液をそれぞれサンプルホルダーに入れ、島津製作所製MultiSpec-1500を用い650nmの光について透過率測定を行った。この測定結果を図6に示す。また、図6には、比較のために、調製したメチレンブルー水溶液および純水について透過率測定を行った結果も示している。図6を見ると、比較例1、2では透過率が50%以下でありこれらの処理ではメチレンブルーの分解量が少ないことがわかった。これに対し、実施例では透過率が70%以上であり、実施例の処理ではメチレンブルーの分解量が多いことがわかった。
この実験により、本発明の水浄化装置による浄化処理では、メチレンブルーの分解量が多いことがわかった。このことにより、本発明の水浄化装置は高い水浄化能力を有することがわかった。
【符号の説明】
【0038】
1: 浄化槽 3:第1空気生成部 4:第2空気生成部 6:第1気泡生成部 7:第2気泡生成部 10:空気供給部 12:空気流路 13:第1空気流路 14:第2空気流路 17:処理水流入口 18:処理水排出口 20:攪拌器 22:処理水 23:正イオンを含む気泡 24:負イオンを含む気泡 25:水浄化装置 26:光触媒層 27:透光性部材 28:光源 30:仕切り板 31:浄化槽流路 33:循環流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中における正コロナ放電により発生させる正イオンを含む空気を生成する第1空気生成部と、大気中における負コロナ放電により発生させる負イオンを含む空気を生成する第2空気生成部と、第1空気生成部により生成した空気の気泡を水中に生成する第1気泡生成部と、第2空気生成部により生成した空気の気泡を水中に生成する第2気泡生成部とを備え、
第1および第2気泡生成部は、第1および第2気泡生成部においてそれぞれ生成された気泡が浄化対象の水中に供給されるように設けられたことを特徴とする水浄化装置。
【請求項2】
第1および第2気泡生成部は、水中にマイクロバブルを生成する請求項1に記載の水浄化装置。
【請求項3】
第1空気生成部で生成した空気を第1気泡生成部に供給する第1空気流路と、第2空気生成部で生成した空気を第2気泡生成部に供給する第2空気流路とをさらに備え、
第1空気流路は、正の電位に維持できる内壁を有し、
第2空気流路は、負の電位に維持できる内壁を有する請求項1または2に記載の水浄化装置。
【請求項4】
第1または第2空気流路は、その内壁に高い電気抵抗を有する帯電層を有する請求項3に記載の水浄化装置。
【請求項5】
第1または第2空気流路の内壁に電圧を印加する電源回路をさらに備える請求項3に記載の水浄化装置。
【請求項6】
浄化槽をさらに備え、
第1および第2気泡生成部は、第1および第2気泡生成部においてそれぞれ生成された気泡が前記浄化槽に供給されるように設けられた請求項1〜5のいずれか1つに記載の水浄化装置。
【請求項7】
前記浄化槽は、浄化する水が流れる浄化槽流路を内部に備え、
第1および第2気泡生成部は、前記浄化槽流路に並んで生成した気泡を供給する請求項6に記載の水浄化装置。
【請求項8】
前記浄化槽は、前記浄化槽流路を形成する仕切り板を有する請求項7に記載の水浄化装置。
【請求項9】
第1および第2気泡生成部は、前記浄化槽流路に交互に並んで生成した気泡を供給する請求項7または8に記載の水浄化装置。
【請求項10】
前記浄化槽は、攪拌器を備える請求項6〜9のいずれか1つに記載の水浄化装置。
【請求項11】
前記浄化槽は、浄化する水を循環させる循環流路を備える請求項6〜10のいずれか1つに記載の水浄化装置。
【請求項12】
前記浄化槽は、内壁に光触媒層を有し、かつ、前記光触媒層に光を照射する光源を有する請求項6〜11のいずれか1つに記載の水浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103193(P2013−103193A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249773(P2011−249773)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】