説明

水溶性ポリウレアウレタン分散液を含む物品

水に分散させたポリウレタン粒子を使用して、他の材料で作製された手袋に比べて皮膚に対する化学的および生物学的アレルギー反応の可能性が低減され、耐破壊性および耐引裂性が改善された商品を作製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水に分散させたポリウレタン粒子を使用して、他の材料で作製された手袋に比べて皮膚に対する化学的および生物学的アレルギー反応の可能性が低減され、耐破壊性および耐引裂性が改善された商品を作製することができる。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年2月20日出願の米国仮特許出願第60/448,971号明細書、および2002年11月4日出願の米国仮特許出願第60/423,617号明細書の利益を主張し、それぞれをあらゆる目的のため、本明細書の部分として、その全体を組み込む。
【背景技術】
【0003】
エラストマー材料の生成は、当技術分野でよく記載されている(例えば、(非特許文献1)を参照のこと)。エラストマー材料、具体的にはスパンデックスは、以下の繰返し構造のウレタン結合を含む。
【0004】
【化1】

【0005】
スパンデックスの製造に現時点で使用されているウレタンポリマーの多くは、ヒドロキシを末端基とするポリエーテルまたはポリエステルとジイソシアナートをモル比約1:1.4〜1:2.5で反応させ、続いて得られたイソシアナートを末端基とするプレポリマーと1つまたは複数のジアミンを反応させて、高分子量ウレタンポリマーを生成することによって作製される。少量の単官能性アミンを導入して、ポリマー分子量を制御することもできる。使用する特定のポリエステルまたはポリエーテルグリコール、ジイソシアナート、ジアミン、およびモノアミンを変更することによって、機械的諸特性に影響を与えることができる。さらに、グリコールの分子量を変更し、グリコール−ジイソシアナートのモル比を変更することによって改変することもできる。
【0006】
スパンデックス中の長鎖ウレタンポリマー分子は、分子間相互作用の弱い比較的長いブロックが相互作用の強いより短いブロックによって連結された、実質的に線状ブロックコポリマーである。一般に軟質セグメントと呼ばれるこの相互作用の弱いブロックは、ポリエーテルまたはポリエステルグリコール成分からのものであるが、硬質セグメントと呼ばれる相互作用の強いブロックは、ジイソシアナートと連鎖延長剤の反応によって生じる。連鎖延長反応は、通常イソシアナートと二官能性アミンのカップリング反応であり、ウレア結合を生成する。従って、硬質および軟質セグメントを組合せて得られたポリマーは、ポリウレアウレタンとして知られている。
【0007】
ポリイソシアナートポリマーを使用して、水溶性ポリウレタン分散液を調製できることが知られている。ポリウレタン分散液は、通常は有機ジイソシアナートまたはポリイソシアナートと、ポリアルキレンエーテルグリコール、ポリ(アルキレンエーテル)グリコール、アルキド樹脂、ポリエステル、およびポリエステルアミドなど2つ以上の活性水素原子を有する有機化合物との反応生成物を、しばしば少量の有機溶媒を使用して連鎖延長することによって調製される。ジイソシアナートを化学量論的に過剰に使用して、ポリウレタン/ウレアプレポリマーとも呼ばれる反応生成物の末端基をイソシアナートとする。ポリウレタンプレポリマー調製の例は、とりわけ米国特許公報(特許文献1)、米国特許公報(特許文献2)、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)、および米国特許公報(特許文献5)に記載されている。
【0008】
ポリウレタン分散液は、米国特許公報(特許文献6)では、コーティングおよび接着層(bond);米国特許公報(特許文献7)では、柔軟な溶媒バリヤー;米国特許公報(特許文献8)では、接着剤;米国特許公報(特許文献9)では、フィルムなどの多様性材料を調製するのに有用であると報告されている。フィルム、厳密に言えばフィルムを作製するための浸漬方法は、多数の物品を作製する方法の一部分となることができる。フィルム応用例には、手袋、器官袋、コンドーム、ストーマ袋(ostomy bag)などが含まれる。このような応用例は、ポリウレタン分散液で作製できることが知られているが、通常のポリウレタン分散液は、このような応用例向けに好ましい材料とするには物理的または取扱い特性が不十分であることが判明することもある。また、N−メチル−2−ピロリドンなどのある種の比較的高沸点の溶媒を使用すると、いくつかの応用例では悪影響をもたらす恐れがある。
【0009】
ポリウレタンは、ポリアルコールとポリイソシアナートの反応生成物である。一般に、水溶性ポリウレタン分散液を調製するために使用するポリイソシアナートは、米国特許公報(特許文献10)に開示されているものなどの脂肪族イソシアナートである。トルエンジイソシアナート(TDI)やメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)、およびポリメチレンポリフェニルイソシアナート(PMDI)などの芳香族ポリイソシアナートも有用であることが知られているが、脂肪族イソシアナートのほうが加水分解に対する安定性がはるかに高く、プレポリマーは水に分散される。従って、通常は、イソシアナートと二官能性アミンの反応は、より制御された予測可能な方式で行われると考えられる。
【0010】
天然ゴムラテックスから調製されたフィルムが一般的であり、快適性および有用性の見地から望ましい諸特性を有すると見なされている。残念なことに、天然ゴムラテックスは、タンパク質、ならびに皮膚に対して刺激性のある恐れがあり一部の人には重症アレルギー反応を引き起こすかもしれない硫黄含有硬化剤などの他の材料も含んでいる。
【0011】
2000年10月19日公開の(特許文献11)は、ポリウレタンフィルムおよびその調整用分散液を開示している。分散液は、ジイソシアナートおよび活性水素含有材料を含むポリウレタンプレポリマー配合物から調製されている。分散液は、第1工程で、プレポリマーが形成され、その後の工程で、プレポリマーの水溶性分散液がアニオン性界面活性剤の存在下で形成され、両工程が有機溶媒の実質的に存在しないところで行われる、2工程以上の方法で形成されている。
【0012】
良好な水分管理を行っている弾性フィルムは、細菌や化学物質などの環境からの保護を提供することができる。特に、化学的および生物学的試剤からの潜在的脅威が増大して、このような材料の必要性は高まる一方である。最近の出来事は、警察官および郵便作業員が長期間はめておくことができる快適な手袋の必要性を示している。ラテックス手袋は通常、耐破壊性が低くし、さらに、ある種の個人の致命的なアレルギー反応を含めて、追加の健康上のリスクを招く恐れがある。ニトリル手袋は、良好な耐破壊性を有しているが、モジュラスが高く、したがって長期使用によって疲れを引き起こす可能性がある。
【0013】
ポリウレタンエラストマーは、代替材料として選択することができるが、ポリウレタン手袋のいくつかは水または消毒用アルコールに暴露すると弱くなることがわかる。これは、このような手袋の長期使用を妨げることになる。
【0014】
【特許文献1】米国特許第3,178,310号明細書
【特許文献2】米国特許第3,919,173号明細書
【特許文献3】米国特許第4,442,259号明細書
【特許文献4】米国特許第4,444,976号明細書
【特許文献5】米国特許第4,742,095号明細書
【特許文献6】米国特許第4,292,226号明細書
【特許文献7】米国特許第4,431,763号明細書
【特許文献8】米国特許第4,433,095号明細書
【特許文献9】米国特許第4,501,852号明細書
【特許文献10】米国特許第5,494,960号明細書
【特許文献11】国際公開第00/61651号パンフレット
【特許文献12】米国仮出願第60/423,478号明細書
【特許文献13】米国特許出願第10/701,317号明細書
【特許文献14】米国特許第4,127,513号明細書
【特許文献15】米国特許第4,139,567号明細書
【特許文献16】米国特許第4,153,186号明細書
【特許文献17】米国特許第4,228,272号明細書
【特許文献18】米国特許第4,235,751号明細書
【特許文献19】独国特許出願第86−3606479号明細書
【特許文献20】独国特許出願第83−3346136号明細書
【特許文献21】米国特許出願第10/700,859号明細書
【非特許文献1】カークオスマー工業化学百科事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、第4版、10巻、1993年、624〜638頁、ニューヨーク(New York)のジョンワイリー&サンズ(John Wiley & Sons, Inc.)
【非特許文献2】B. K. Kim、Colloid. Polym. Sci.、1996年、274巻、599〜611ページ
【非特許文献3】J. M. Hammondら、J. Polym. Sci., Part A、1971年、9巻、295ページ
【非特許文献4】Hongzhi Zhangら、J. Appl. Polym. Sci.、1999年、73巻、2303ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ポリウレタンを慎重に配合すれば、多数の所望の特性を有する手袋が得られることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、水溶性ポリウレアウレタン分散液を含む商品を開示する。これらの物品は、引張強度が2030psiより高く、破壊強度が200ポンド/インチより高く、厚さ当たりの引裂強度が20N/mmより高い。これらは、改善された耐溶媒性も示す。これらの物品を製造する方法も開示され、前記方法は
a)金型を凝固剤溶液に浸漬し、高温で乾燥させる工程と、
b)凝固剤溶液をコーティングした金型を、水溶性ポリウレアウレタン分散液に浸漬し、乾燥させる工程と、
c)コーティングした金型を、塩浸出浴にかける工程と、
d)金型から物品を取り出す前に、コーティングした金型を高温で乾燥させる工程とを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、グリコールとしてのTHFホモポリマーおよび/またはコポリマー、ならびに芳香族ジイソシアナートを使用した、安定な水溶性ポリウレアウレタン分散液の使用を開示するが、連鎖延長剤、硬化剤、または架橋剤の使用を必要としない。この分散方法では、幅広い有用性を有するエラストマーポリウレタンの安定なコロイド粒子を生成する。この方法は堅牢であり、先の研究(例えば(特許文献11)を参照)に記載するような一連の分離工程を必要しないという点で比較的複雑ではない。通常は、水溶性ポリウレタンコロイドの生成の場合、脂肪族イソシアナートが好ましい(一般に、(非特許文献2)を参照のこと)。これら脂肪族イソシアナートと様々なグリコールを反応させて、オリゴマープレポリマーを形成し、次いで当量のジアミンを含有する水に分散させる。ジアミンの量は、n−ブチルアミン滴定、および逆算によって決定して、NCOパーセントと当量を添加する。脂肪族イソシアナートは、水中における安定性が比較的高く、したがってジアミンはイソシアナートと反応し、ウレア結合を介してプレポリマーが連鎖延長される。本明細書にその全体が組み込まれる、他の水溶性ポリウレアウレタン分散液を記載する2002年11月4日出願の米国特許公報(特許文献12)である2003年11月4日出願の本願出願人所有の同時係属の米国特許公報(特許文献13)も参照のこと。
【0018】
しかし、試薬および条件を慎重に選択すると、加水分解を受けるイソシアナートを所望量に制御することができ、続いて追加のイソシアナートと反応させて、(非特許文献2)に記載されているエチレンジアミンや他のジアミンなど一般的な脂肪族ジアミンを添加することなく高分子体(例えば、独立膜形成に適切な分子量、典型的には100,000超、好ましくは200,000超)を形成できることが判明した。これは重要なことである。というのは、水中におけるジイソシアナートとジアミンの反応は拡散が律速であり、添加されたアミンがすべて反応中に消費されるとは保障できないからである。他の方法によって作製された材料に残存する未反応のアミンはどれも、ある種の用途で皮膚刺激または感作を引き起こす恐れがある。
【0019】
芳香族ジイソシアナートを適切な反応温度および分散条件下で使用すれば、本発明の分散液の作製に適するであろうことが判明した。芳香族ジイソシアナートの例は、MDI、TDI、PMDIなどである。プレポリマー中のNCO%量によって、分散液から生成される最終フィルムの物理的諸特性が決まる。好ましい範囲のNCO%は、2〜4%である。
【0020】
この方法の安定性および簡便さを可能にする別のクリティカルな要素は、極性の軟質セグメントの慎重な操作である。水溶性分散液および適切な硬質セグメントの条件と組み合わせて、良好な分散液を提供する1種の軟質セグメントは、選択された酸官能基を含むジオールを有する低分子量PTMEGである。別の適用可能なものは、コモノマーとして適量(通常は25〜60重量パーセント)のエチレングリコールを含有するTHFコポリマー軟質セグメントである。このようなコポリマーを調製する方法は、米国特許公報(特許文献14)、米国特許公報(特許文献15)、米国特許公報(特許文献16)、米国特許公報(特許文献17)、米国特許公報(特許文献18);(特許文献19)および(特許文献20);(非特許文献3)および(非特許文献4)に開示されている。酸官能基を含むジオールの例は、2,2’ジメタノールプロピオン酸(DMPA)である。PTMEG中のエチレンオキシドコモノマー含量は、25〜60重量%である。
【0021】
このような分散液は、親水性軟質セグメントを使用すれば作製することができる。親水性軟質セグメントは、ポリウレタンプレポリマーを、エチレングリコール含量が20%より高いTHFのエチレングリコールコポリマーと、またはポリウレタンプレポリマーを、少量の立体的に込み合った酸含有ジオールを含むPTMEGと反応させて作製されることを意味する。コポリマー中のEO含量の好ましい範囲は、25%〜60重量%である。好ましい込み合った酸ジオールは、DMPAである。好ましいDMPAの範囲は、3〜5重量%である。ポリ(EO−co−THF)の好ましい分子量は1000〜3500であり、最も好ましい分子量は2000である。PTMEGの好ましい分子量は700〜1500であり、最も好ましい分子量は1000である。
【0022】
一般には、本発明の分散液は、イソシアナートとグリコールを、窒素中において約90℃(80℃〜100℃)の温度で数時間混合して、プレポリマーを形成することによって作製する。分散液混合物に施されるせん断速度および力は重要であり、図1に記載する。過大なせん断力を加える場合、分散液は不安定になり、ばらばらに壊れる恐れがある。一般には、せん断力の好ましい範囲は、500〜1700ニュートンである。混合時間は、通常は2〜5分である。込み合った酸ジオール(例えば、(非特許文献2)の表1に挙げたDMPAおよび他のもの)を同様にこの工程で添加することができる。イオン性内容物を添加する他の方法は、込み合った酸ジオール塩(例えば、ジメチロールプロピオン酸ナトリウム)の添加、スルホナート(例えば、2−ナトリウム 1,4 ブタンジオール)の添加、またはアルキル基1個およびアルキロール基2個を有する第三級アミンの添加のようなカチオン中心の添加によるものである。混合時間の終わりに、n−ブチルアミン滴定および逆算によって、プレポリマー中の過剰なイソシアナートの量を決定することができる。反応生成物を室温に冷却した後、溶媒(一般に、アセトンやメチルエチルケトン(MEK)などの水混和性有機溶媒)を場合によっては使用して、プレポリマーを約75重量パーセント溶液に希釈することができる。この溶液を、アニオン性でも、カチオン性でも、非イオン性でもよい界面活性剤を含む冷却した(すなわち、0〜10℃)水溶液に投入する。好ましい界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、またはトリトン(Triton)X100(米国ミシガン州ミッドランドのダウケミカル(Dow Chemical Co., Midland, MI))である。界面活性剤の好ましい量は0.1〜2重量%であり、最も好ましい量は0.5〜1重量%である。酸含有ジオールを使用する場合、無機の比較的弱い塩基(例えば、NaHCO、Na(CO、NaAc(ただし、Acはアセタートを表す)、NaHPOなど)を添加して、分散を向上させることもできる。これら無機塩基は、臭気が比較的少なく、皮膚刺激性でもない傾向にある。あるいは、トリエチルアミンを塩基として使用することができる。この場合は、潜在的臭気を最小限に抑えるため、酸に対して1当量未満のアミンを使用することが推奨される。分散水は一般に、DMPA中の酸を中和するための1当量未満のアミンを含有し、この1モル水溶液のpHは10を超えない。小粒子形成には、分散温度が重要である。好ましい分散温度は、0〜10℃である。分散液の固形分は、10〜60%、典型的には10〜30%である。得られた分散液の固形分は、一般に、試料を、オーブン中において100℃で2時間乾燥し、乾燥前後の重量を比較することによって決定して、約10〜30重量パーセントである。
【0023】
本発明は、ポリエステルポリオール、DMPA、およびジイソシアナートを含み、−R−N(R)−C(O)−N(R)−R(ただし、Rは芳香族基であり、Rは脂肪族基であり、RはH、またはC(O)−N(R)−R−と指定することができるアミド基である)で記述されるウレア単位を含まない、実質的には含まない、あるいは2パーセント未満しか含まないウレタンポリマーも使用する。
【0024】
本発明は、参照により本明細書にその全体が組み込まれる2003年11月4日出願の本願出願人所有の同時係属の米国特許公報(特許文献21)および2003年11月4日出願の米国特許公報(特許文献13)に記載する水溶性分散液から作製されたこれら物品に関する。
【0025】
フィルムおよび手袋として使用する場合、これらの材料は、イソプロピルアルコールおよびDMAcを含めた、溶媒に対して改善された抵抗性を示す。また、フィルム材料のオフガスが低減され、これらフィルムおよび手袋がクリーンルームでの使用に一般に許容可能になる。下記の実施例で示すように、これらフィルムおよび手袋は、改善された耐化学薬品および耐溶媒性を示すだけでなく、改善された耐破壊性および耐引裂性も示す。これらは、通常は、100%伸び率のモジュラス(すなわち、約200〜500psi)を有し、フィルムまたは手袋が容易に延伸されるようになる。これはまた、低い残留歪(set)を示し、延伸後にその元の形状に戻るようになる。手袋の好ましい厚さは、3〜6ミルであるが、他の厚さを使用してもよい。
【0026】
下記のデータによって、本発明の材料は、天然ゴムに近い他の試験物品より柔軟な延伸または平坦な応力−歪曲線を有することが示されている。
【0027】
(定義)
別段の指定のない限り、化学薬品および試薬はすべて、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company, Milwaukee, WI)から入手したものを使用した。
【0028】
【表1】

【実施例】
【0029】
通常は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2003年11月4日出願の本願出願人所有の同時係属の米国特許公報(特許文献21)および2003年11月4日出願の米国特許公報(特許文献13)に記載するように、分散液を調製した。
【0030】
(材料)
米国特許公報(特許文献14)、米国特許公報(特許文献15)、米国特許公報(特許文献16)、米国特許公報(特許文献17)、米国特許公報(特許文献18);(特許文献19)および(特許文献20);(非特許文献3)および(非特許文献4)に開示された方法によって、ポリ(エチレングリコール−co−THF)を得た。PTMEG−1000およびPTMEG−1800は、デュポンテラタン(DuPont Terathane(登録商標))製品である。グリコールはすべて、使用前に、真空下において90℃で12時間乾燥させた。MDIは、50℃に加熱することによって精製した。DMPA、MEK、TEA、およびSDBSを購入し、さらに精製することなく使用した。分散液を作製するために使用した混合装置は、IKA(登録商標) Works, IncのIKA(登録商標)ミキサー、モデルT25 BASIC SI、およびチャールズ・ロス・アンド・サンカンパニー(Charles Ross and Son Company)のロス(Ross)ミキサー/乳化機、モデルHSM−100LCである。IKA(登録商標)ミキサーは、11,000rpmで操作し、ロス(Ross)ミキサーは、7,000〜8,000rpmで操作した。
【0031】
(水溶性ポリウレタン分散液の一般的な調製手順)
MDI、グリコール(および必要なら、DMPA)を、窒素中において90℃で3〜5時間混合することによって、プレポリマーを調製した。カップリング反応後に残留する過剰のNCOの量を滴定で決定した。溶媒を使用して、プレポリマーを希釈する場合、反応生成物を室温に冷却した後、溶媒を添加して、典型的には75重量%溶液を作製した。プレポリマーをチューブに入れ、界面活性剤、および場合によっては塩基を含む冷却した水溶液に、空気ポンプによって徐々に添加した。分散液の固形分は、約10〜30%である。
【0032】
(手袋の形成方法)
手袋を形成するために、金型を凝固剤溶液に浸漬する。凝固剤溶液は、典型的には10〜20%Ca(NOおよび0〜10%CaCOである。次いで、この金型を100℃で5分間乾燥する。次いで、この金型を10〜50℃で水溶性ポリウレタン分散液に浸漬し、次いで、10〜40℃で冷却する。次いで、コーティングされた金型を20〜70℃で水に浸漬することによって、塩浸出を行い、次いで、90〜150℃で30分間乾燥する。次いで、手袋を金型から取り出す。
【0033】
(実施例1)
ドライボックス中、三つ口丸底フラスコ内で、MDI156.4g(0.624モル)を、PTMEG−1000グリコール391g(0.391モル)およびDMPA19.9g(0.149モル)(全量の3.5wt%となる)と混合した。次いで、フラスコをフード内に移動し、頭上撹拌装置を装備した。混合物を窒素中で90℃で4時間撹拌した。混合物の滴定によって、NCO含量が5.32%であるとわかる。
【0034】
この混合物にMEK200mlを添加し、固形分74%のMEK溶液を作製する。次いで、このグリコール/MEK溶液を0℃で、コーキングチューブを介して、TEA15gを含む2%SDBS溶液4リットルに徐々に添加した。TEAとDMPAの比は、1:1であった。ロス(Ross)ミキサーを用いて分散を行い、少量の沈殿が観察された。沈殿物をろ過した後、最終固形分11.5%の分散液を得た。沈殿物の粒径は、コールターN4MDアナライザー(Coulter N4MD Analyzer)で測定して、1063nmであった。得られた材料の分子量は、GPC(ポリスチレン標準)で測定して、237,000であった。
【0035】
(比較例A)
SDBS界面活性剤を添加せず、NaHCO1.7gを塩基として使用した点以外は、上記の実施例3に記載したように混合物を作製した。NaHCOとDMPAの比は1:1である。分散液は得られなかった。
【0036】
同様の混合物をもう一度作製したが、今回は、NaHCOを含む2wt%SDBS界面活性剤を添加した。沈殿が観察された。沈殿物をろ別した後、固形分8.2wt%の分散液を得た。フィルムをキャストしたが、強度がわずかしかなかった。
【0037】
(比較例B)
ドライボックス中、三つ口丸底フラスコ内で、MDI78g(0.624モル)を、PTMEG−1800グリコール360gおよびDMPA16g(全量の3.5wt%となる)をと混合した。次いで、フラスコをフード内に移動し、頭上撹拌装置を装備した。窒素内で、混合物を90℃で4時間撹拌した。混合物の滴定によって、NCO含量が5.32%であるとわかる。
【0038】
この混合物にMEK400mlを添加した。次いで、グリコール/MEK溶液204gを0℃で、コーキングチューブを介して、TEA2.85gを含む2%SDBS溶液1.1リットルに徐々に添加した。TEAとDMPAの比は、1:1である。この混合物から分散液は得られなかった。
【0039】
NaHCOを塩基として使用した点以外は同じ手順を使用すると、スポンジタイプのポリマーが形成された。
【0040】
(比較例C)
30%EO/THF材料(三洋(Sanyo))を使用した点以外は、上記の比較例Bに記載したのと同様に実験を行った。2%界面活性剤/TEAを使用すると、分散液は作製されず、多量の沈殿物が認められた。
【0041】
また、上記のパラグラフに記載した実験を0.5%界面活性剤/NaHCOを用いて行うと、分散液は認められなかった。多量の沈殿物が認められた。
【0042】
(比較例D)
1.25%界面活性剤/NaHCO溶液を使用した点以外は、上記の実施例3に記載したように手順を実施した。沈殿が観察された。沈殿物をろ別した後、固形分10.1%の分散液を得た。水を蒸発させた後、フィルムをキャストした。フィルムは不十分な弾性を示した。
【0043】
(水溶性分散液から作製された物品の試験結果)
ASTM法F1342に従って、上記に記載した方法によって分散液から作製された手袋の破壊強度を測定した。この材料の伸びおよび厚さを測定した。破壊負荷(puncture load)をポンド/厚さ(インチ)で算出した。結果は下記の表1で見出される。
【0044】
【表2】

【0045】
ASTM法D−624−98を使用して、本発明によって作製された手袋の引裂強度を試験した。この試験は、フィルムを抜型で切断し、次いでその試料をインストロン(Instron(登録商標))装置に入れ、引き裂く必要がある。負荷対伸びを記録する。抜型BおよびCを使用した。初期の引裂の位置を保証するために、抜型B用の試験片にかみそりで切り込みを入れた。抜型Cは、引き裂くための位置として90度の急角を有しており、切り込みを入れなかった。試験結果は下記の表2で見出され、単位厚さ当たりの引裂強度(N/mm)を示す。
【0046】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリウレアウレタン分散液から作製されることを特徴とする物品。
【請求項2】
前記物品が手袋、指サック、およびコンドームよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項3】
2030psiより高い引張強度を有することを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項4】
少なくとも200ポンド/インチの破壊強度を有することを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項5】
材料の厚さあたりの引裂強度が少なくとも20ニュートン/mmであることを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項6】
溶媒の攻撃に対する抵抗性が改善されたことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項7】
a)金型を凝固剤溶液に浸漬し、高温で乾燥させる工程と、
b)凝固剤溶液をコーティングした金型を水溶性ポリウレアウレタン分散液に浸漬し、乾燥させる工程と、
c)前記コーティングした金型を塩浸出浴にかける工程と、
d)前記金型から物品を取り出す前に、前記コーティングした金型を高温で乾燥させる工程と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の物品の製造方法。

【公表番号】特表2006−520412(P2006−520412A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503695(P2006−503695)
【出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/004857
【国際公開番号】WO2004/074341
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【Fターム(参考)】