説明

水溶性内服液剤の収容容器及び該収容容器への水溶性内服液剤の充填方法

【課題】 安定性を有し、呈味性に優れたファモチジンを有効成分とする水溶性内服液剤を長期保存することができる水溶性内服液剤の収容容器及び該収容容器への水溶性内服液剤の充填方法の提供。
【解決手段】 薬液を収容するための薬液収容部11と、薬液収容部11に収容される薬液を容易に服用できるようにするための飲み口部12と、飲み口部12の排出口を閉塞するキャップ部13と、このキャップ部13に接合されるつまみ部14と、から構成される収容容器10に水溶性内服液剤を窒素ガスの置換下で充填するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性内服液剤の収容容器及び水溶性内服液剤の収容容器への充填方法に関し、特に、ファモチジンを有効成分とする水溶性内服液剤の市場流通に耐えうる保存安定性を実現した収容容器及び該収容容器への水溶性内服液剤の充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファモチジンを有効成分とする錠剤、散剤は優れた潰瘍、胃炎治療薬として市場に流通しているものの、内服液剤としての開発又は販売がされていない。その理由として、ファモチジンは塩基性化合物であり、酸性領域では可溶であるが安定性が低く、安定な中性領域では溶解度が極端に低下するといった特有の性質を有するからである。
【0003】
もちろん、液剤の一つである注射液剤の開発は行なわれている。しかし、内服液剤の場合には、注射液剤と異なり、市場流通に耐えうる安定性と呈味性を考慮する必要がある。そこで、この安定性と呈味性の問題を解決した水溶性内服液剤が特許文献1で提案されている。
【0004】
特許文献1の水溶性内服液は、ファモチジンにエデト酸又はその塩と添加するようにしたものである。この水溶性内服液によれば、室温12月保存後もファモチジンの残存率が97%以上である低濃度のファモチジン内服液剤を提供することができる。即ち、ファモチジンが低濃度で含有しており、通常の内服液剤のように各種添加剤を加えることができるので、呈味性をクリアすることができ、市場流通に耐えることが可能な水溶性内服液剤を提供することができる。
【特許文献1】国際公開WO02/41892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1によれば、市場流通に耐えうる安定性と呈味性を改善したものの、その保存性において以下のような未解決の問題があった。
(1)この水溶性内服液剤を製品化するに当たって、安定性を維持しつつ長期保存可能な水溶性内服液剤の収容形態が未だ明らかではなかった。
(2)内服液剤を収容する容器としては、褐色のガラス容器が一般に流通しているものの、製造過程においてガラス容器に内服液剤を充填する際に、空気が混入して内服液剤が劣化するおそれがあるため防腐剤を添加して製品化することが一般的となっているが、ファモチジンを有効成分とする水溶性内服液剤に防腐剤を添加することは安定性を低下させてしまうという問題を発明者らが見出した。
【0006】
従って、本発明の目的は、安定性を有し、呈味性に優れたファモチジンを有効成分とする水溶性内服液剤を長期保存することができる水溶性内服液剤の収容容器及び該収容容器への水溶性内服液剤の充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、水溶性内服液剤を収容する薬液収容部と、前記薬液収容部の上部に連設され前記水溶性内服液剤の飲み口となる飲み口部と、前記飲み口部を閉塞するキャップ部と、前記キャップ部に薄肉領域部を介して接合されるつまみ部と、を備え、前記つまみ部をねじ切ることで該飲み口部を開口させるようにした水溶性内服液剤の収容容器であって、前記水溶性内服液剤は、窒素ガスの置換下で前記薬液収容部に充填されることを特徴とする水溶性内服液剤の収容容器を提供するものである。
【0008】
以上の構成において、前記水溶性内服液剤は、ファモチジンにエデト酸又はその塩を添加したものであることが望ましい。
【0009】
また、前記収容容器は、脱酸素剤と共に包装袋に密封されることが望ましい。
【0010】
また、前記包装袋は、酸素バリア性の樹脂フィルムで成形されていることが望ましい。
【0011】
また、本発明は、上記目的を達成するために、容器本体部分を成形する左右一対の本体金型と、該本体金型の上部に設けられ容器上部を成形する左右一対の上部金型とが離間した間に筒状の樹脂成形体を垂下させ、前記本体金型によって前記樹脂成形体を挟み込み、前記樹脂成形体内部に圧縮された窒素ガスを吹き込んで前記容器本体部分を成形すると同時に、成形された容器本体部分に水溶性内服液剤を充填し、前記上部金型で前記樹脂成形体を挟み込み、該上部金型内部を真空状態にして前記容器上部を成形して密封する、ことを特徴とする収容容器への水溶性内服液剤の充填方法を提供するものである。
【0012】
前記水溶性内服液剤は、ファモチジンにエデト酸又はその塩が添加されたものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、窒素ガス置換下でファモチジンにエデト酸又はその塩が添加された水溶性内服液剤を収容容器に充填するようにしたため、薬液を空気に接触させることがない。このため、防腐剤を必要とせず、ファモチジンの安定性を確保しながら、長期保存が可能で、水溶液内服液剤自体の保存安定性を高めることができる。
【0014】
また、水溶性内服液剤が収容された収容容器を脱酸素剤と共に、酸素バリア性の樹脂フィルムで成形された包装袋に封入することで、さらに長期保存が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図面を参照しながら、本実施の形態に係る水溶性内服液剤の収容容器及び収容容器への水溶液内服液剤の充填方法について説明する。
<収容容器の構成>
図1は、水溶性内服液剤を収容する収容容器の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は、正面図である。
図1(a)および(b)に示すように、収容容器10は、薬液を収容するための薬液収容部11と、薬液収容部11に収容される薬液を容易に服用できるようにするための飲み口部12と、飲み口部12の排出口を閉塞するキャップ部13と、このキャップ部13に接合されるつまみ部14と、から構成されている。
【0016】
以上の構成において、収容容器10はつまみ部14をねじ切って開封されるツイストオフ構成となっている。そのために、薬液収容部11の中心軸15に沿った長手方向において底部16と対向する一端に開口部11aを形成し、その開口部11aに飲み口部12を連設し、この飲み口部12にキャップ部13を連設し、このキャップ部13とつまみ部14を薄肉領域部14aによって接合している。そして、つまみ部14をツイストオフ開封でねじ切ることにより、飲み口部12の開口が出現する。
【0017】
なお、この収容容器10自体は、ブローフィルシール(BFS)成形によって成形されるものであり、合成樹脂製である。BFS成形は、樹脂容器を成形機で成形し、直ちに薬液を充填・密封する成形方法であって成形と充填と密封を一連の作業で行うことができる成形方法である。このため、例えば、無菌環境下で薬液を充填、密封することが可能となる。なお、BFS成形の際に用いられる収容容器10の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0018】
図2は、図1(a)のA−A線断面図であり、図3は、図1(b)のB−B線断面図である。
図2に示すように、つまみ部14は、薄肉領域部14aを介してキャップ部13に接合されている。また、図3に示すように、飲み口部12とつまみ部14の薄肉領域部14aとの間にはわずかな空隙が介在している。このわずかな空隙が存在するため、薬液収容部11とつまみ部14を把持して、互いに反対方向に捻じることで、薬液収容部11とつまみ部14がツイストオフ開封される。
【0019】
図4は、つまみ部14が薬液収容部11から分離した状態を示す図である。
図に示すように、薬液収容部11とつまみ部14を把持して、互いに反対方向に捻じると、キャップ部13がつまみ部14と一体になって飲み口部12から分離する。キャップ部13が飲み口部12から分離することにより、飲み口部12の上部が開口し、この開口から薬液を排出し服用する。
【0020】
図5は、本実施の形態に係る水溶性内服液剤の収容容器を複数連結した構成を示す図である。
図に示すように、収容容器10を2個連結した状態で成形することも可能である。この場合、薬液収容部11の側面とつまみ部14の側面が、隣り合う別の収容容器10の薬液収容部11の側面とつまみ部14の側面と一部連結した状態で成形し、成形後に互いを反対方向に捻ることにより分離できるように成形する。なお、図では、2個の収容容器が連結した状態を示したが、これに限られるものではなく、2個以上の収容容器を連結した状態で成形することができる。そうすることで、大量の収容容器を短時間で製造することができる。
【0021】
<収容容器の製造方法及び薬液の充填・密封方法>
次に、上記の収容容器10の製造方法及び薬液の充填・密封方法について、図6〜図9を参照して説明する。
まず、図6に示すように、薬液は調整タンク20で所定の調整法によって調整され保存タンク30へ送られる。この時、薬液は滅菌フィルタ21を介して調整タンク20から保存タンク30へ送られる。
【0022】
次に、保存タンク30に保存された薬液は、薬液を収容容器10へ充填するために貯留する充填タンク40へ送られる。この時も薬液は2回の滅菌フィルタ31,32を介して充填タンク40へ送られる。これにより、薬液の調整から充填するまでに、十分な滅菌を行うことができ、品質保持の向上を図ることができる。そして、充填タンク40から収容容器10への薬液の充填を窒素ガスの置換下で行う。
【0023】
なお、この薬液の充填と収容容器10の製造とは略同時に行なわれるので、収容容器の製造方法と薬液の充填・密封方法とを工程順に説明する。
(1)円筒状の合成樹脂成形体100の押出し
まず、ブロー成形する前に、押出機200によって離間した状態の金型300の間に下端が閉鎖状態の合成樹脂成形体100を押し出し垂下させる(図7(a))。
なお、この円筒状の合成樹脂成形体100をブロー成形する際に用いる金型300は、左右一対の本体金型301と左右一対の上部金型302とから構成されている。本体金型301は、収容容器10の薬液収容部11の形状をした凹部301aが形成されており、上部金型302には、収容容器10の飲み口部12、キャップ部13及びつまみ部14の形状をした凹部302aが形成されている。
【0024】
(2)薬液収容部11の成形及び薬液の充填
次に、離間した状態の本体金型301を型締めして合成樹脂成形体100を金型300内に固定し、金型300の上方の位置で加熱したナイフ等(図示せず)で切断する(図7(b))。そして、切断によって形成された開口端からエアーノズル400によって圧縮空気(窒素ガス)を吹き込み(図8(a))、合成樹脂成形体100を本体金型301内部で膨張させ、薬液収容部11の形状を成形する(図8(b))。次いで、薬液注入ノズル500を、成形された薬液収容部11の底部近傍まで下降させ、薬液注入ノズル500から薬液を注入する(図9(a))。
【0025】
(3)飲み口部12の成形
次に、薬液注入ノズル500を金型300から取り出し、離間した状態の上部金型302を型締めする。上部金型302の内壁には吸入口302bが設けられており、上部金型302が型締めされた際に上部金型302の内部を真空状態とする。これによって合成樹脂形成体100は、上部金型302の形成された凹部302aの形状に沿って真空成形されると共に、同時に密封がなされ、飲み口部12及びつまみ部14が成形される(図9(b))。そして、本体金型300を再び離間させ、成形された収容容器10を取り出す(図10)。
【0026】
このように製造された薬液が充填された収容容器10を、さらに、酸素非透過性の多層フィルムで形成された包装袋(図示せず)に封入することで、充填された薬液の長期保存が可能となる。また、収容容器10と共に、脱酸素剤(図示せず)を封入する又は、窒素ガス置換された包装袋に収容容器10と脱酸素剤を封入すると、なお良い。
【0027】
ここで示す包装袋は、酸素ガスバリア性の樹脂フィルムであれば特に限定することなく、一般的にアルミラミネートフィルム、酸化ケイ素蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルムをヒートシールにより袋状に成形したものである。
また、脱酸素剤は、周囲の酸素を吸着するものであれば特に限定することなく、例えば、公知の脱酸素剤(商品名「エージレス」)が好適である。
さらに、窒素ガス置換された包装袋とは、窒素ガス中に保持して空気中の酸素による変化を防止する包装技術であり、公知の包装技術を採用する。
【0028】
<充填する薬液について>
上記した収容容器10に収容される薬液について説明する。
なお、本発明を実施例及び試験例、並びに比較例について説明するが、本発明は、下記に示す実施例及び試験例、ならびに比較例によって限定されるものではない。
収容容器10に収容される薬液の例として、ファモチジンを有効成分とする水溶性内服液剤が挙げられ、室温12ヶ月保存後もファモチジンの残存率が97%以上である安定なファモチジンの内服液剤である。
この内服液剤は、ファモチジンと、エデト酸又はその塩を含有してなる水溶性内服液剤であり、下記実施例1〜10において、水溶性内服液剤の生成例を示す。
【0029】
(実施例1)
精製水900mlを40℃に加温し、エデト酸2ナトリウム1g及びファモチジン1gを溶解し、マンニトール2.5gを加え、冷後精製水を加えて1000mlとした。この水溶性内服液製剤のpHは6.7であり、40℃の条件化に2ヶ月保存したときのファモチジンの残存率は97.4%であった。
【0030】
(実施例2)
精製水900mlを40℃に加温し、エデト酸2ナトリウム1g及びファモチジン1gを溶解し、冷後精製水を加えて1000mlとした。この水溶性内服液製剤のpHは6.7であり、40℃の条件下に2ヶ月保存したときのファモチジンの残存率は97.5%であった。
【0031】
(実施例3)
精製水90mlを40℃に加温し、エデト酸ナトリウム二ナトリウム100mg及びファモチジン100mgを溶解し、冷後適量の1%クエン酸溶液及び精製水を加えてpHは6.0の水溶性内服液製剤100mlを製した。この製剤の室温の条件化に12ヶ月保存したときのファモチジンの残存率は98.0%であった。
【0032】
(実施例4)
精製水90mlを40℃に加温し、エデト酸ナトリウム二ナトリウム100mg及びファモチジン100mgを溶解し、冷後適量の1%クエン酸溶液及び精製水を加えてpHは6.25の水溶性内服液製剤100mlを製した。この製剤の室温の条件化に12ヶ月保存したときのファモチジンの残存率は97.7%であった。
【0033】
(実施例5)
精製水90mlを40℃に加温し、エデト酸ナトリウム二ナトリウム100mg及びファモチジン100mgを溶解し、冷後適量の1%クエン酸溶液及び精製水を加えてpHは6.5の水溶性内服液製剤100mlを製した。この製剤の室温の条件化に12ヶ月保存したときのファモチジンの残存率は98.7%であった。
【0034】
(実施例6)
精製水90mlを40℃に加温し、メチルパラベン44mg、プロピルパラベン6mg、エデト酸ナトリウム二ナトリウム100mg及びファモチジン100mgを溶解し、冷後適量の1%クエン酸溶液及び精製水を加えてpHは5.75の水溶性内服液製剤100mlを製した。この製剤の室温の条件化に12ヶ月保存したときのファモチジンの残存率は98.1%であった。
【0035】
(実施例7)
精製水90mlを40℃に加温し、メチルパラベン44mg、プロピルパラベン6mg、エデト酸ナトリウム二ナトリウム100mg及びファモチジン100mgを溶解し、冷後適量の1%クエン酸溶液及び精製水を加えてpHは6.25の水溶性内服液製剤100mlを製した。この製剤の室温の条件化に12ヶ月保存したときのファモチジンの残存率は98.0%であった。
【0036】
(実施例8)
精製水90mlを40℃に加温し、メチルパラベン44mg、プロピルパラベン6mg、エデト酸ナトリウム二ナトリウム100mg及びファモチジン100mgを溶解し、冷後適量の1%のクエン酸溶液及び精製水を加えてpHは7.0の水溶性内服液製剤100mlを製した。この製剤の室温の条件化に12ヶ月保存したときのファモチジンの残存率は97.6%であった。
【0037】
(実施例9)
精製水90mlを40℃に加温し、メチルパラベン44mg、プロピルパラベン6mg、エデト酸ナトリウム二ナトリウム10mg及びファモチジン100gを溶解し、スクラロース15mgを加えて、冷後適量の1%乳酸溶液及び精製水を加えてpHは6.5の水溶性内服液製剤100mlを製した。この製剤の室温の条件下に12ヶ月保存したときのファモチジンの残存率は99.0%であった。
【0038】
(実施例10)
精製水90mを40℃に加温し、メチルパラベン44mg、プロピルパラベン6mg、エデト酸ナトリウム二ナトリウム10mg及びファモチジン50mgを溶解し、スクラロース15mgを加えて、冷後適量の1%乳酸溶液及び精製水を加えてpHは6.5の水溶性内服液製剤100mlを製した。この製剤の室温の条件下に12ヶ月保存したときのファモチジンの残存率は98.8%であった。
【0039】
上記実施例1〜10によれば、ファモチジンの残存率が、市場流通に耐えるのに十分な安定性、即ち、室温12ヶ月後の残存率が97%以上の十分な安定性を確保することができる。
【0040】
次に、収容容器10に収容したファモチジンを含有する水溶性内服液剤の保存安定性について説明する。
【0041】
試験に用いるファモチジン内服液剤の成分分量を下記に示す。
製法は日局製剤総則「液剤」の項に準じて液剤を製造した。

(10ml中)
ファモチジン 10mg
エデト酸ナトリウム二ナトリウム 適量
スクラロース 適量
香料 微量
乳酸 適量
精製水 残部
【0042】
(試験例1)
上記により得られたファモチジン内服液剤を、上記した製造方法によって成形し、窒素ガス置換下にて10ml充填・密封した後、アルミナ蒸着ポリエステルフィルム製の袋中に脱酸素剤とともに密封封入した。
【0043】
(比較例1)
上記により得られたファモチジン液剤を、褐色ガラス瓶に10ml充填・密封した。
【0044】
(加速経時試験)
試験例1及び比較例1の製剤を温度40℃、相対湿度75%の条件化で6ヶ月保存した。1,3,6ヶ月時点でのファモチジンの残存率を表1に示す
なお、本加速経時試験の6ヶ月時点のデータは、通常条件の3年間の保管に相当する。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、ファモチジン液剤を褐色ガラス瓶に充填・密封した場合と比較して、プラスチックボトルにファモチジン液剤を充填・密封した場合の方が保存安定性を有することが明らかとなった。
【0047】
また、再現性の試験例として、上記した製造方法によって製造されたプラスチックボトルにファモチジン液剤を10ml充填・密封した後、アルミナ蒸着ポリエステルフィルム製の袋中に脱酸素剤とともに密封封入し、上記と同様の条件化で加速経時試験を行った。
試験結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2に示すように、再現性の試験例においても、プラスチックボトルに充填・密封されたファモチジン液剤の保存安定性が高いことが示された。
【0050】
以上の説明から明らかなように、BFS成形によって窒素ガスの置換下で水溶性内服液剤が収容容器に充填されるため、水溶性内服液剤が空気に接触することがない。そのため、防腐剤が無添加でも長期保存と、ファモチジンの保存安定性を可能とする。
【0051】
また、水溶性内服液剤が収容された収容容器をさらに、窒素ガスの置換下で酸素ガスバリア性の樹脂フィルムで成形された包装袋に脱酸素剤と共に密封・封入することで、さらに、長期保存が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1(a)は、水溶性内服液剤を収容する収容容器の構成を示した斜視図であり、図1(b)は、水溶性内服液剤を収容する収容容器の構成を示した正面図である。
【図2】図1(a)のA−A線断面図である。
【図3】図1(b)のB−B線断面図である。
【図4】つまみ部が薬液収容部から分離した状態を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る水溶性内服液剤の収容容器を複数連結した構成を示す図である。
【図6】薬液の製造方法及び充填の過程を示した図である。
【図7】収容容器の製造方法を示す図であり、(a)は、離間した金型の間に樹脂成形体が垂下状態を示した図であり、(b)は、本体金型が樹脂成形体を挟んだ状態を示した図である。
【図8】収容容器の製造方法を示す図であり、(a)は、樹脂成形体内部に窒素ガスを吹き込んだ状態を示した図であり、(b)は、本体金型の凹部に薬液収容部が成形された状態を示した図である。
【図9】収容容器に薬液を充填・注入する方法を示す図であり、(a)は、薬液収容部に薬液が注入された状態を示した図であり、(b)は、上部金型が樹脂成形体を挟みこむことで、薬液排出部及びつまみ部を成形した状態を示した図である。
【図10】成形され、薬液が充填・注入された収容容器が取り出される状態を示した図である。
【符号の説明】
【0053】
10 収容容器
11 薬液収容部
12 飲み口部
13 キャップ部
14 つまみ部
14a 薄肉領域部
15 中心軸
16 底部
20 調整タンク
21、31、32 滅菌フィルタ
30 保存タンク
40 充填タンク
100 樹脂成形体
200 押出機
300 金型
301 本体金型
301a,302a 凹部
302 上部金型
400 エアーノズル
500 薬液注入ノズル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性内服液剤を収容する薬液収容部と、前記薬液収容部の上部に連設され前記水溶性内服液剤の飲み口となる飲み口部と、前記飲み口部を閉塞するキャップ部と、前記キャップ部に薄肉領域部を介して接合されるつまみ部と、を備え、前記つまみ部をねじ切ることで該飲み口部を開口させるようにした水溶性内服液剤の収容容器であって、
前記水溶性内服液剤は、窒素ガスの置換下で前記薬液収容部に充填されることを特徴とする水溶性内服液剤の収容容器。
【請求項2】
前記水溶性内服液剤は、ファモチジンにエデト酸又はその塩を添加したものであることを特徴とする請求項1に記載の水溶性内服液剤の収容容器。
【請求項3】
前記収容容器は、脱酸素剤と共に包装袋に密封されることを特徴とする請求項1または2に記載の水溶性内服液剤の収容容器。
【請求項4】
前記包装袋は、酸素バリア性の樹脂フィルムで成形されていることを特徴とする請求項3に記載の水溶性内服液剤の収容容器。
【請求項5】
容器本体部分を成形する左右一対の本体金型と、該本体金型の上部に設けられ容器上部を成形する左右一対の上部金型とが離間した間に筒状の樹脂成形体を垂下させ、
前記本体金型によって前記樹脂成形体を挟み込み、
前記樹脂成形体内部に圧縮された窒素ガスを吹き込んで前記容器本体部分を成形すると同時に、成形された容器本体部分に水溶性内服液剤を充填し、
前記上部金型で前記樹脂成形体を挟み込み、該上部金型内部を真空状態にして前記容器上部を成形して密封する、
ことを特徴とする収容容器への水溶性内服液剤の充填方法。
【請求項6】
前記水溶性内服液剤は、ファモチジンにエデト酸又はその塩が添加されたものであることを特徴とする請求項6記載の収容容器への水溶性内服液剤の充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−88502(P2010−88502A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258618(P2008−258618)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】